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特開2019-2066001−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206600(P2019-206600A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20191108BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20191108BHJP
   C07C 17/354 20060101ALI20191108BHJP
   C07C 19/12 20060101ALI20191108BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20191108BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
   C07C17/354
   C07C19/12
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-168687(P2019-168687)
(22)【出願日】2019年9月17日
(62)【分割の表示】特願2018-527617(P2018-527617)の分割
【原出願日】2017年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-136600(P2016-136600)
(32)【優先日】2016年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大石 訓司
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC11
4H006AC13
4H006BA25
4H006BA55
4H006BB61
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BE20
4H006EA02
4H006EA03
4H039CA10
4H039CA50
4H039CB10
4H039CG20
(57)【要約】
【課題】低コストでかつ効率良く1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを製造することができる方法を提供する。
【解決手段】1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法であって、
一般式(1):CFClX−CHFX
[一般式(1)中、X及びXは互いに異なってH、F、又はClを示し、X及びXのいずれか一方がHである。]
で表されるクロロフルオロエタンを触媒の非存在下で脱ハロゲン化水素する工程
を含む、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法であって、
一般式(1):CFClX−CHFX
[一般式(1)中、X及びXは互いに異なってH、F、又はClを示し、X及びXのいずれか一方がHである。]
で表されるクロロフルオロエタンを触媒の非存在下で脱ハロゲン化水素する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記脱ハロゲン化水素工程が気相で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロロフルオロエタンが、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタン、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン、及び1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱ハロゲン化水素工程が200〜550℃の温度で行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記クロロフルオロエタンが、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン及び/又は1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンであり、かつ
前記脱ハロゲン化水素工程が、脱フッ化水素工程である、
請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法であって、
クロロトリフルオロエチレン及び/又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを還元することにより、
一般式(2):CFClX−CHFX
[一般式(2)中、X及びXは互いに異なってH又はFを示す。]
で表されるクロロトリフルオロエタンを生成する工程、及び
前記工程により得られたクロロトリフルオロエタンを触媒の非存在下で脱フッ化水素する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFCl=CHF;HCFO−1122a)は、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒として有望視されている(特許文献1参照)。
【0003】
1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法としては、例えば、式:CFClX−CHFX(式中、各XはCl、Br、又はIを示す。)で表されるハロゲン化エタンを原料として亜鉛等の触媒の存在下において脱ハロゲン反応を行う方法、1,2−ジクロロ−ジフルオロエチレン(CFCl=CFCl)をシラン化合物を用いて還元する方法などが知られている(特許文献2及び非特許文献1〜3参照)。しかしながら、当該方法では触媒として亜鉛を用いるため、反応により処理が煩雑な不溶性の廃棄物が当量発生する、バッチで反応させる必要があり高コストである等の問題が指摘されている。さらに、原料として用いられるハロゲン化エタン、例えば、1,1,2−トリクロロ−1,2−ジフルオロエタン(CFCl−CHFCl)は、トリクロロエチレン(CCl=CHCl)のF付加反応により製造されるが、当該反応では、F、CoF等の取り扱いに注意を要する物質を用いる必要があるなどの問題がある。
【0004】
また、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン(CHFCl−CHFCl;HCFC−132)を液相で脱塩化水素反応を行うことにより1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを得る方法なども知られている(特許文献3及び非特許文献4参照)。しかしながら、当該方法では脱塩化水素反応を行うための反応剤が当量必要であり、また、反応に再利用できない塩化物が当量発生するなどの問題がある。
【0005】
以上のような従来技術の問題点に鑑みて、低コストでかつ効率良く1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを製造することができる方法が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−141538号公報
【特許文献2】米国特許第2716109号明細書
【特許文献3】特開2015−120670号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society,1936,vol.58,p.403
【非特許文献2】Journal of the Chemical Society,1961,p.2204
【非特許文献3】Journal of Organic Chemistry,1970,vol.35,p.678
【非特許文献4】Zhurnal Organicheskoi Khimii,18(5),938−945,1982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、低コストでかつ効率良く1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(1):CFClX−CHFX[一般式(1)中、X及びXは互いに異なってH、F、又はClを示し、X及びXのいずれか一方がHである。]で表されるクロロフルオロエタンを脱ハロゲン化水素することによって、低コストでかつ効率良く1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを製造することができることを見出した。本発明者らは当該知見に基づいてさらなる研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、代表的には、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法であって、
一般式(1):CFClX−CHFX
[一般式(1)中、X及びXは互いに異なってH、F、又はClを示し、X及びXのいずれか一方がHである。]
で表されるクロロフルオロエタンを脱ハロゲン化水素する工程
を含む、方法。
項2.
前記脱ハロゲン化水素工程が気相で行われる、上記項1に記載の方法。
項3.
前記クロロフルオロエタンが、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタン、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン、及び1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタンからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1又は2に記載の方法。
項4.
前記脱ハロゲン化水素工程が触媒の存在下で行われる、上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5.
前記脱ハロゲン化水素工程が触媒の非存在下で行われる、上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
項6.
前記脱ハロゲン化水素工程が200〜550℃の温度で行われる、上記項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7.
前記クロロフルオロエタンが、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン及び/又は1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンであり、かつ
前記脱ハロゲン化水素工程が、脱フッ化水素工程である、
上記項1〜6のいずれかに記載の方法。
項8.
1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの製造方法であって、
クロロトリフルオロエチレン及び/又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを還元することにより、
一般式(2):CFClX−CHFX
[一般式(2)中、X及びXは互いに異なってH又はFを示す。]
で表されるクロロトリフルオロエタンを生成する工程、及び
前記工程により得られたクロロトリフルオロエタンを脱フッ化水素する工程
を含む、方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストでかつ効率良く1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
第1の発明
本発明は、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFCl=CHF;HCFO−1122a)を製造する方法を包含する。なお、本明細書において、当該方法を「本発明の第1方法」と記載する場合がある。
【0014】
本発明の第1方法における生成物である1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンには、シス(Z)体及びトランス(E)体の幾何異性体が存在する。本明細書において、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンのシス体を「シス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン」と、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンのトランス体を「トランス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン」と記載する場合があり、また、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンのシス体及びトランス体の混合物又はシス体及びトランス体を区別しない場合には単に「1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン」と記載する場合がある。
【0015】
本発明の第1方法は、
一般式(1):CFClX−CHFX
[一般式(1)中、X及びXは互いに異なってH、F、又はClを示し、X及びXのいずれか一方がHである。]
で表されるクロロフルオロエタンを脱ハロゲン化水素する工程を含む。なお、本明細書において、一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンを単に「クロロフルオロエタン」と記載する場合がある。また、本明細書において上記の工程を「脱ハロゲン化水素工程」と記載する場合がある。
【0016】
当該脱ハロゲン化水素工程により、一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンからハロゲン化水素が脱離し、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを得ることができる。なお、本明細書において「ハロゲン化水素」とは、フッ化水素(HF)又は塩化水素(HCl)を意味する。
【0017】
脱ハロゲン化水素工程は、気相で行うことが好ましい。また、脱ハロゲン化水素工程を気相で行うことにより、トランス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンがシス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンに比べて選択率良く生成されるという利点がある。
【0018】
上記一般式(1)において、X及びXは互いに異なってH、F、又はClを示し、X及びXのいずれか一方がHである。例えば、XがHである場合にはXはF又はClを示し、XがF又はClである場合にはXはHを示す。
【0019】
上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンとしては、例えば、式:CHFCl−CHFで表される1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−133)、式:CFCl−CHFで表される1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−133b)、式:CHFCl−CHFClで表される1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン(HCFC−132)、式:CFCl−CHFで表される1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン(HCFC−132c)などが挙げられる。
【0020】
脱ハロゲン化水素工程においては、原料として、一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンとして上記で例示した化合物1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合の各化合物の混合割合は特に限定的ではなく、適宜設定することができる。
【0021】
脱ハロゲン化水素工程は、用いる原料、即ち、一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンの種類に応じて、一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンからフッ化水素が脱離する脱フッ化水素反応と、一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンから塩化水素が脱離する脱塩化水素反応とに大別される。本明細書において、「脱ハロゲン化水素」とは、フッ化水素が脱離する脱フッ化水素反応と塩化水素が脱離する脱塩化水素反応とを含み、用いる原料に応じて脱フッ化水素反応及び脱塩化水素反応のいずれか一方のみ、あるいはその両方を意味する。例えば、原料として、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタン等を用いる場合には脱フッ化水素反応を意味し、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン等を用いる場合には脱塩化水素反応を意味し、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン及び1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンの少なくとも1種と1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン及び1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタンの少なくとも1種とを混合して用いる場合には脱フッ化水素反応及び脱塩化水素反応の両方を意味する。
【0022】
脱ハロゲン化水素工程は、触媒の存在下又は非存在下で行うことができる。脱ハロゲン化水素工程を触媒の存在下で行う場合には、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの選択率及び収率を向上させることができるため、好ましい。
【0023】
脱ハロゲン化水素工程を触媒の存在下で行う場合、用いる触媒としては特に限定的ではなく、脱ハロゲン化水素反応に対して触媒活性を有する公知の触媒を用いることができる。このような触媒としては脱ハロゲン化水素触媒を用いることができ、脱ハロゲン化水素触媒としては、例えば、脱フッ化水素反応に対して触媒活性を有する脱フッ化水素触媒、脱塩化水素反応に対して触媒活性を有する脱塩化水素触媒などが挙げられる。
【0024】
脱フッ化水素触媒としては、例えば、遷移金属、アルミニウム、14族元素金属、15族元素金属等の金属のハロゲン化物、酸化物、フッ素化された酸化物などが挙げられる。これらの脱フッ化水素触媒は、金属元素と脱離するフッ素原子との親和性が高いことから、脱フッ化水素反応を促進させる効果を有するものと考えられる。
【0025】
遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ニオブ、モリブデン、タンタル、ジルコニア等が挙げられる。14族元素金属としては、例えば、スズ、鉛等が挙げられる。15族元素金属としては、例えば、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。また、ハロゲン化物としては、例えば、フッ化物、塩化物等が挙げられる。
【0026】
上記した金属のハロゲン化物の具体例としては、例えば、塩化チタン(IV)、フッ化クロム(III)、塩化クロム(III)、塩化鉄(III)、塩化ニオブ(V)、塩化モリブデン(V)、塩化タンタル(V)、フッ化アルミニウム、塩化スズ(IV)、フッ化アンチモン(V)、塩化アンチモン(V)、塩化アンチモン(III)等が挙げられる。上記した金属の酸化物の具体例としては、例えば、酸化クロム(III)、酸化アルミニウム等が挙げられる。上記したフッ素化された金属酸化物としては、フッ素化された酸化クロム(III)、フッ素化された酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0027】
上記で例示した脱フッ化水素触媒の中でも、特に、酸化クロム(III)、酸化アルミニウム、フッ素化された酸化クロム(III)、及びフッ素化された酸化アルミニウムが好ましい。酸化クロム(III)及びフッ素化された酸化クロム(III)は、結晶質酸化クロム、アモルファス酸化クロム等を用いることができる。
【0028】
脱フッ化水素触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
脱塩化水素触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、2価以下の遷移金属等の金属のハロゲン化物、酸化物、フッ素化された酸化物、活性炭などが挙げられる。
【0030】
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。2価以下の遷移金属としては、例えば、コバルト、ニッケル(II)、銅(II)、亜鉛(II)、銀等が挙げられる。また、ハロゲン化物としては、例えば、フッ化物、塩化物等が挙げられる。
【0031】
上記した金属のハロゲン化物の具体例としては、例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、フッ化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、フッ化亜鉛(II)、塩化亜鉛(II)、フッ化銅(II)、塩化銅(II)等が挙げられる。上述した金属の酸化物の具体例としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化ニッケル(II)、酸化亜鉛(II)、酸化銅(II)等が挙げられる。上記したフッ素化された金属酸化物としては、例えば、フッ素化された酸化亜鉛(II)、フッ素化された酸化マグネシウム、フッ素化された酸化ニッケル(II)等が挙げられる。
【0032】
上記で例示した脱塩化水素触媒の中でも、特に、フッ化マグネシウム、酸化亜鉛(II)、酸化ニッケル(II)、及び活性炭が好ましい。
【0033】
脱塩化水素触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記した脱フッ化水素触媒及び脱塩化水素触媒は、組み合わせて用いることもできる。特に、原料として、脱フッ化水素反応により1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを生成するクロロフルオロエタン(例えば、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタン等)と、脱塩化水素反応により1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを生成するクロロフルオロエタン(例えば、1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタン等)とを組み合わせて用いる場合には、脱フッ化水素触媒及び脱塩化水素触媒を組み合わせて用いることが好ましい。
【0035】
上記した脱ハロゲン化水素触媒は、担体に担持して使用することもできる。担体としては特に限定的ではなく、脱ハロゲン化水素触媒に使用できる公知の担体を用いることができる。担体としては、例えば、ゼオライト等の多孔質アルミナシリケート、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭、酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化亜鉛、フッ化アルミニウム等が挙げられる。担体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて複合化して用いてもよい。脱ハロゲン化水素触媒と担体との組合せ(脱ハロゲン化水素触媒/担体)の例としては、酸化クロム(III)/酸化アルミニウム、酸化クロム(III)/フッ化アルミニウム、酸化クロム(III)/活性炭などが挙げられる。また、2種の脱ハロゲン化水素触媒と担体との組合せ(脱ハロゲン化水素触媒・脱ハロゲン化水素触媒/担体)の例としては、塩化コバルト(II)・酸化クロム(III)/酸化アルミニウム、塩化ニッケル(II)・酸化クロム(III)/酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0036】
脱ハロゲン化水素工程は、反応器中で行うことが好ましい。反応器としては特に限定的ではなく、例えば、断熱反応器、熱媒体を用いて加熱した多管型反応器等の流通型反応器を用いることができる。また、反応器としては、脱ハロゲン化水素工程により発生するフッ化水素又は塩化水素の有する腐食作用に抵抗性を有する材料によって構成されているものを用いることが好ましい。
【0037】
また、脱ハロゲン化水素工程において触媒を用いる場合、触媒を反応器内に存在させる方法としては特に限定的ではなく、原料が触媒と十分に接触し得るように存在させればよい。例えば、反応器内に触媒を充填する方法などが挙げられる。
【0038】
脱ハロゲン化水素工程において触媒を用いる場合、上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンと、触媒とを接触させる。上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンと、触媒とを接触させる方法としては特に限定的ではなく、例えば、気相において、上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンを反応器に供給することによって上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンと触媒とを接触させることができる。
【0039】
上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンは、そのまま反応器に供給してもよいし、反応性を制御する等の理由により希釈を行うことが必要である場合には、原料、触媒等に対して不活性なガスと共に反応器に供給することもできる。当該不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンと不活性ガスとを共に反応器に供給する場合、不活性ガスの濃度は特に限定的ではなく、例えば、反応器に供給される気体成分の合計量を基準として、不活性ガスの濃度が10〜99モル%とすることができる。
【0041】
また、脱ハロゲン化水素工程において触媒を用いる場合、長時間触媒活性を維持するために、反応器に酸素を供給することもできる。反応器に導入する酸素としては、酸素単体のガスであってもよいし、酸素を含む空気であってもよい。酸素の供給量は、反応器に供給される気体成分の合計量を基準として、例えば、0.1〜50モル%程度、好ましくは、1〜20モル%とすることができる。
【0042】
さらに、脱ハロゲン化水素工程において触媒を用いる場合、脱ハロゲン化水素触媒の触媒活性を向上させること等を目的として、反応器に無水フッ化水素を供給することもできる。無水フッ化水素の供給量は、反応器に供給される一般式(1)で表されるクロロフルオロエタン1モルに対して、1〜100モル程度とすることができる。
【0043】
脱ハロゲン化水素工程において、反応温度は上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンから1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンが生成する反応が起こり得る温度であれば特に限定的ではない。具体的な反応温度としては、例えば200〜550℃程度、好ましくは250〜450℃程度、より好ましくは300〜450℃程度とすることができる。かかる範囲内に設定することにより、原料の転化率を良好に維持するとともに、不純物の副生、触媒の変質による触媒活性の低下等を抑制し易い。なお、反応温度が高い方がトランス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンが生成する傾向にあるため、トランス体の選択率を上げたい場合には反応温度を300℃以上とすることが好ましい。
【0044】
脱ハロゲン化水素工程における反応時間は特に限定的ではなく、触媒の非存在下で行う場合には、反応器に供給されるガスの全流量F(0℃、0.1MPaでの流量:cc/sec)に対する加熱された反応器の体積V(cc)の比率(V/F)で表される滞留時間を1〜500sec程度とすることが好ましく、30〜300secとすることがより好ましい。また、触媒の存在下で行う場合には、反応器に供給されるガスの全流量F(0℃、0.1MPaでの流量:cc/sec)に対する触媒の充填量W(g)の比率(W/F)で表される接触時間を1〜500g・sec/cc程度とすることが好ましく、30〜300g・sec/cc程度とすることがより好ましい。なお、反応器に供給されるガスの全流量とは、上記一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンの流量に、不活性ガス、酸素、無水フッ化水素等を用いる場合にはこれらの流量を加えた量である。
【0045】
脱ハロゲン化水素工程における圧力としては特に限定的ではなく、大気圧、3MPaGまでの加圧、−0.1MPaGまでの減圧とすることができ、中でも大気圧、又は−0.1MPaGまでの減圧とすることが好ましい。
【0046】
脱ハロゲン化水素工程を、例えば、気相で行った場合、反応後のガスには、脱ハロゲン化水素反応により生成した目的物(1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン)の他、ハロゲン化水素、副生成物、さらには、反応条件によっては原料化合物(一般式(1)で表される化合物)が含まれている。なお、副生成物は、脱ハロゲン化水素工程に供する原料化合物(一般式(1)で表される化合物)に応じて異なり、例えば、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用いた場合には、式:CHCl=CFで表されるクロロ−2,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122)、式:CHF=CFで表されるトリフルオロエチレン(HFO−1123)が副生成物として生成され、1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンを用いた場合には、式:CHF=CFで表されるトリフルオロエチレン(HFO−1123)が副生成物として生成され、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタンを用いた場合には、式:CFCl=CHClで表される1,2−ジクロロ−1−フルオロエチレン(HCFO−1121)が副生成物として生成され、1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエタンを用いた場合には、CCl=CHFで表される1,1−ジクロロ−2−フルオロエチレン(HCFO−1121a)が副生成物として生成される。
【0047】
本発明の第1方法は、脱ハロゲン化水素工程の後、必要に応じて、反応後のガスに含まれるハロゲン化水素を分離する工程を含むことができる。ハロゲン化水素を分離する方法としては特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。ハロゲン化水素がフッ化水素である場合には、例えば、蒸留、分液等によって、フッ化水素と目的物を含む有機化合物とを分離することができる。ハロゲン化水素が塩化水素である場合には、例えば、反応後のガスを圧縮して加圧下で蒸留することによって、塩化水素と目的物を含む有機化合物とを分離することができる。また、脱塩化水素工程を加圧下で行い、そのまま加圧下で蒸留することによっても塩化水素と目的物を含む有機化合物とを分離することができる。さらに、例えば、ハロゲン化水素を水洗により除去することもできるし、水洗と蒸留とを適宜組み合わせることもできる。
【0048】
本発明の第1方法は、脱ハロゲン化水素工程の後、必要に応じて、反応後のガスに含まれる目的物(1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン)と、副生成物、及び反応条件によって含まれ得る原料化合物(一般式(1)で表される化合物)とを分離する工程を含むことができる。目的物と、副生成物及び原料化合物とを分離する方法としては特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、蒸留、分液、吸着などの方法が挙げられる。また、目的物と、副生成物、及び場合によっては含まれ得る原料化合物との沸点が近く、蒸留による分離が困難である場合には、目的物又は副生成物と共沸し得る任意の成分を添加して当該成分との共沸により蒸留して分離することも可能である。なお、分離した原料化合物は、再び脱ハロゲン化水素工程に供することができる(即ち、リサイクルすることができる)。
【0049】
また、本発明の第1方法は、脱ハロゲン化水素工程の後、必要に応じて、生成した1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンのシス体及びトランス体の混合物をトランス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンとシス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンとに分離する工程を含むことができる。シス体とトランス体とを分離する方法としては特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、上記で例示した目的物と、副生成物及び原料化合物とを分離する方法と同様の方法を採用することができる。分離されたシス体及びトランス体は、いずれか一方を使用することもできるし、シス体及びトランス体の両方をそれぞれ別の用途に使用することもできる。
【0050】
なお、上記した、反応後のガスに含まれるハロゲン化水素を分離する工程、目的物と副生成物及び原料化合物とを分離する工程、並びにシス体とトランス体とを分離する工程のうち2工程以上を含む場合、各工程の順序は特に限定されず、任意の順序で行うことができる。
【0051】
第2の発明
本発明は、クロロトリフルオロエチレン(CFCl=CF;CTFE)及び/又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CFCl−CFCl;CFC−113)を原料として、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFCl=CHF;HCFO−1122a)を製造する方法をも包含する。なお、本明細書において、当該方法を「本発明の第2方法」と記載する場合がある。
【0052】
本発明の第2方法は、クロロトリフルオロエチレン及び/又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを還元することにより、
一般式(2):CFClX−CHFX
[一般式(2)中、X及びXは互いに異なってH又はFを示す。]
で表されるクロロトリフルオロエタンを生成する工程を含む。なお、本明細書において、一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンを単に「クロロトリフルオロエタン」と記載する場合がある。また、本明細書において上記の工程を「第1工程」と記載する場合がある。
【0053】
さらに、本発明の第2方法は、前記第1工程により得られたクロロトリフルオロエタンを脱フッ化水素する工程を含む。なお、本明細書において、当該工程を「第2工程」と記載する場合がある。
【0054】
第1工程では、クロロトリフルオロエチレン及び/又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを還元することにより、一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンが生成される。
【0055】
第1工程では、原料化合物として、クロロトリフルオロエチレン及び/又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用いる。原料化合物として、クロロトリフルオロエチレン又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンの1種のみを用いてもよいし、これら2種を混合して用いてもよい。2種を混合して用いる場合の各化合物の混合割合は特に限定的ではなく、適宜設定することができる。
【0056】
上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンは、具体的には、式:CHFCl−CHFで表される1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−133)、又は式:CFCl−CHFで表される1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−133b)である。
【0057】
例えば、第1工程において、クロロトリフルオロエチレンを原料化合物として用い、還元剤として水素を用いた場合には、下記の反応式(1)で示される還元反応が進行する。
【0058】
CF2=CFCl + H2 (水素化触媒) → CHF2-CHFCl(1)
また、第1工程において、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用い、還元剤として水素を用いた場合には、下記の反応式(2)で示される還元反応が進行する。
【0059】
CF2ClCFCl2 + H2 (水素化触媒) → CHF2-CFCl2 + CF2Cl-CH2F + HCl(2)
第1工程は、液相又は気相で行うことができ、中でも気相で行うことが好ましい。
【0060】
第1工程では、還元剤を用いることが好ましい。還元剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、水素、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどが挙げられる。また、第1工程においては、還元触媒を用いることが好ましい。還元触媒としては特に限定的ではなく公知の触媒を用いることができる。例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒、及びニッケル、ジルコニウムなどの金属触媒のいずれも使用可能であり、中でも貴金属触媒が好ましい。また、安定した触媒活性を発揮させること等を目的として、予め還元触媒に水素で還元処理を施しておくことが好ましい。
【0061】
また、還元触媒は、担体に担持して使用することもできる。担体としては特に限定的ではなく、公知の担体を用いることができる。担体としては、例えば、アルミナ、活性炭、ゼオライト等が挙げられる。還元触媒を担体に担持させる方法は特に限定的ではなく公知の方法を採用することができる。例えば、従来の貴金属触媒の調製法を採用することができる。担体に担持した還元触媒としては、例えば、活性炭担持パラジウム触媒が好ましいものとして挙げられる。
【0062】
第1工程における原料化合物と還元剤との割合は使用する原料及び生成される目的物の種類等に応じて適宜決定することができる。例えば、原料化合物として1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用い、還元剤として水素を用いる場合、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタン及び/又は1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンを得るためには、通常、化学量論量として2倍モルの水素(H)を使用して1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンにおける2つの塩素原子を還元除去する。完全に反応を完結させるためには、原料化合物の全モル数に対して化学量論量より多い量、例えば、5倍モルを超える過剰の水素を使用することが必要であるが、化学量論量より多すぎる水素を用いる場合、必要以上の塩素原子又はフッ素原子が還元除去された副生成物が増加するため好ましくない。よって、2倍モル以上5倍モル以下の範囲で水素の使用量を設定することが好ましい。
【0063】
一方、原料化合物の全モル数に対して化学量論量より少ない量、例えば、2倍モル未満の水素を使用してもよい。例えば、1倍モル以上2倍モル未満である。この場合、原料化合物、塩素が1つだけ還元除去された中間物(例えば、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(CHCl−CF;HCFC−123))などが残存するが、これらは常法に従って回収して第1工程に供給することができる。
【0064】
また、原料化合物としてクロロトリフルオロエチレンを用い、還元剤として水素を用いる場合、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを得るためには、通常、化学量論量として1モルの水素を使用する。完全に反応を完結させるために、若干過剰量、例えば、1倍超〜2倍モルの水素を使用することが好ましい。なお、反応熱の発生を制御するため、水素の使用量を化学量論量以下にすることもできる。この場合、残存した原料化合物は回収して第1工程に供給することができる。
【0065】
第1工程を気相で行う場合、反応温度は、原料化合物から一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンが生成する反応が起こり得る温度であれば特に限定的ではなく、適宜設定することができる。例えば、第1工程を気相で行う場合、通常70〜350℃程度とすることができ、80〜200℃程度とすることが好ましい。また、原料化合物としてクロロトリフルオロエチレンを用いる場合には、原料化合物として1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用いる場合よりも、低い温度とすることが好ましい。
【0066】
第1工程における反応時間は特に限定的ではなく、例えば、第1工程を気相で行う場合、反応系に供給される原料ガスの全量F(0℃、1atmでの流量:cc/sec)に対する触媒の充填量W(g)の比率(W/F)で表される接触時間を0.1〜30g・sec/cc程度とすることができ、1〜20g・sec/cc程度とすることが好ましい。接触時間が短すぎると原料を十分に転化させることができず、また、接触時間が長すぎると還元が進み過ぎた化合物の副生、C1化合物への分解反応等が起こるため、上記した数値範囲内とすることが好ましい。
【0067】
また、第1工程を液相で行う場合、溶媒を用いることができる。溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸、酢酸エチル、ジグライム等のグライム類、ピリジン等が挙げられる。また、無溶媒で行うこともできる。第1工程を液相反応により行う場合の反応温度は、0〜150℃程度とすることが好ましく、また、反応圧力は常圧〜5MPa程度とすることが好ましい。
【0068】
第1工程を、例えば、気相で行った場合、反応後のガスには、還元反応により生成した目的物(一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタン)の他、塩化水素、副生成物、さらには、反応条件によっては水素、原料化合物(クロロトリフルオロエチレン及び/又は1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン)などが含まれている。なお、副生成物は、第1工程に供する原料化合物に応じて異なり、例えば、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用いた場合には、式:CHCl−CFで表される2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123)等が副生成物として生成され得る。また、クロロトリフルオロエチレンを用いた場合には、式:CHF−CHFで表される1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)等が副生成物として生成され得る。
【0069】
本発明の第2方法は、第1工程の後、必要に応じて、反応後のガスに含まれる塩化水素を分離する工程を含むことができる。塩化水素を分離する方法としては特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、反応後のガスを圧縮して加圧下で蒸留することによって、塩化水素と目的物を含む有機化合物とを分離することができる。また、第1工程を加圧下で行い、そのまま加圧下で蒸留することによっても塩化水素と目的物を含む有機化合物とを分離することができる。さらに、例えば、塩化化水素を水洗により除去することもできるし、水洗と蒸留とを適宜組み合わせることもできる。
【0070】
第2工程では、上記した第1工程により得られた一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンを脱フッ化水素することにより、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンを得ることができる。なお、第2工程は、気相で行うことが好ましい。
【0071】
第2工程では、一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンとして上記した化合物のうち1種のみを用いることもできるし、2種を混合して用いることもできる。2種を混合して用いる場合の各化合物の混合割合は特に限定的ではなく、適宜設定することができる。
【0072】
なお、第2工程は、上記した本発明の第1発明における脱ハロゲン化水素工程に相当する。より詳細には、上記した本発明の第1発明における原料である一般式(1)で表されるクロロフルオロエタンにおいて、一般式(1)におけるXがH、XがFである化合物、及び一般式(1)におけるXがF、XがHである化合物が一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンに相当する。
【0073】
第2工程は、触媒の存在下又は非存在下で行うことができる。第2工程を触媒の存在下で行う場合には、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンの選択率及び収率を向上させることができるため、好ましい。
【0074】
第2工程を触媒の存在下で行う場合、用いる触媒としては特に限定的ではなく、脱フッ化水素反応に対して触媒活性を有する公知の触媒を用いることができる。このような触媒としては脱フッ化水素触媒が挙げられる。
【0075】
脱フッ化水素触媒としては、例えば、遷移金属、アルミニウム、14族元素金属、15族元素金属等の金属のハロゲン化物、酸化物、フッ素化された酸化物などが挙げられる。これらの脱フッ化水素触媒は、金属元素と脱離するフッ素原子との親和性が高いことから、脱フッ化水素反応を促進させる効果を有するものと考えられる。
【0076】
遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ニオブ、モリブデン、タンタル、ジルコニア等が挙げられる。14族元素金属としては、例えば、スズ、鉛等が挙げられる。15族元素金属としては、例えば、ヒ素、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。また、ハロゲン化物としては、例えば、フッ化物、塩化物等が挙げられる。
【0077】
上記した金属のハロゲン化物の具体例としては、例えば、塩化チタン(IV)、フッ化クロム(III)、塩化クロム(III)、塩化鉄(III)、塩化ニオブ(V)、塩化モリブデン(V)、塩化タンタル(V)、フッ化アルミニウム、塩化スズ(IV)、フッ化アンチモン(V)、塩化アンチモン(V)、塩化アンチモン(III)等が挙げられる。上記した金属の酸化物の具体例としては、例えば、酸化クロム(III)、酸化アルミニウム等が挙げられる。上記したフッ素化された金属酸化物としては、フッ素化された酸化クロム(III)、フッ素化された酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0078】
上記で例示した脱フッ化水素触媒の中でも、特に、酸化クロム(III)、酸化アルミニウム、フッ素化された酸化クロム(III)、及びフッ素化された酸化アルミニウムが好ましい。酸化クロム(III)及びフッ素化された酸化クロム(III)は、結晶質酸化クロム、アモルファス酸化クロム等を用いることができる。
【0079】
脱フッ化水素触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
脱フッ化水素触媒は、担体に担持して使用することもできる。担体としては特に限定的ではなく、脱フッ化水素触媒に使用できる公知の担体を用いることができる。担体としては、例えば、ゼオライト等の多孔質アルミナシリケート、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭、酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化亜鉛、フッ化アルミニウム等が挙げられる。担体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて複合化して用いてもよい。脱フッ化水素触媒と担体との組合せ(脱フッ化水素触媒/担体)の例としては、酸化クロム(III)/酸化アルミニウム、酸化クロム(III)/フッ化アルミニウム、酸化クロム(III)/活性炭等が挙げられる。また、2種の脱フッ化水素触媒と担体との組合せ(脱フッ化水素触媒・脱フッ化水素触媒/担体)の例としては、塩化コバルト(II)・酸化クロム(III)/酸化アルミニウム、塩化ニッケル(II)・酸化クロム(III)/酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0081】
第2工程は、反応器中で行うことが好ましい。反応器としては特に限定的ではなく、例えば、断熱反応器、熱媒体を用いて加熱した多管型反応器等の流通型反応器を用いることができる。また、反応器としては、脱フッ化水素反応により発生するフッ化水素の有する腐食作用に抵抗性を有する材料によって構成されているものを用いることが好ましい。
【0082】
また、第2工程において触媒を用いる場合、触媒を反応器内に存在させる方法としては特に限定的ではなく、原料が触媒と十分に接触し得るように存在させればよい。例えば、反応器内に触媒を充填する方法などが挙げられる。
【0083】
第2工程において触媒を用いる場合、上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンと、触媒とを接触させる。上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンと、触媒とを接触させる方法としては特に限定的ではなく、例えば、気相において、上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンを反応器に供給することによって上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンと触媒とを接触させることができる。
【0084】
上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンは、そのまま反応器に供給してもよいし、反応性を制御する等の理由により希釈を行うことが必要である場合には、原料、触媒等に対して不活性なガスと共に反応器に供給することもできる。当該不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0085】
上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンと不活性ガスとを共に反応器に供給する場合、不活性ガスの濃度は特に限定的ではなく、例えば、反応器に供給される気体成分の合計量を基準として、不活性ガスの濃度が10〜99モル%とすることができる。
【0086】
また、第2工程において触媒を用いる場合、長時間触媒活性を維持するために、反応器に酸素を供給することもできる。反応器に導入する酸素としては、酸素単体のガスであってもよいし、酸素を含む空気であってもよい。酸素の供給量は、反応器に供給される気体成分の合計量を基準として、例えば、0.1〜50モル%程度、好ましくは、1〜20モル%とすることができる。
【0087】
さらに、第2工程において触媒を用いる場合、脱フッ化水素触媒の触媒活性を向上させること等を目的として、反応器に無水フッ化水素を供給することもできる。無水フッ化水素の供給量は、反応器に供給される一般式(1)で表されるクロロフルオロエタン1モルに対して、1〜100モル程度とすることができる。
【0088】
第2工程において、反応温度は上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオエロエタンから1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンが生成する反応が起こり得る温度であれば特に限定的ではない。具体的な反応温度としては、例えば200〜550℃程度、好ましくは250〜450℃程度、より好ましくは300〜450℃程度とすることができる。かかる範囲内に設定することにより、原料の転化率を良好に維持するとともに、不純物の副生、触媒の変質による触媒活性の低下等を抑制し易い。なお、反応温度が高い方がトランス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンが生成する傾向にあるため、トランス体の選択率を上げたい場合には反応温度を300℃以上とすることが好ましい。
【0089】
第2工程における反応時間は特に限定的ではなく、触媒の非存在下で行う場合には、反応器に供給されるガスの全流量F(0℃、0.1MPaでの流量:cc/sec)に対する加熱された反応器の体積V(cc)の比率(V/F)で表される滞留時間を1〜500sec程度とすることが好ましく、30〜300secとすることがより好ましい。また、触媒の存在下で行う場合には、反応器に供給されるガスの全流量F(0℃、0.1MPaでの流量:cc/sec)に対する触媒の充填量W(g)の比率(W/F)で表される接触時間を1〜500g・sec/cc程度とすることが好ましく、30〜300g・sec/cc程度とすることがより好ましい。なお、反応器に供給されるガスの全流量とは、上記一般式(2)で表されるクロロトリフルオロエタンの流量に、不活性ガス、酸素、無水フッ化水素等を用いる場合にはこれらの流量を加えた量である。
【0090】
第2工程における圧力としては特に限定的ではなく、大気圧、3MPaGまでの加圧、−0.1MPaGまでの減圧とすることができ、中でも大気圧、又は−0.1MPaGまでの減圧とすることが好ましい。
【0091】
第2工程を、例えば、気相で行った場合、反応後のガスには、脱フッ化水素反応により生成した目的物(1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン)の他、フッ化水素、副生成物、さらには、反応条件によっては原料化合物(一般式(2)で表される化合物)が含まれている。なお、副生成物は、第2工程に供する原料化合物(一般式(2)で表される化合物)に応じて異なり、例えば、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用いた場合には、式:CHCl=CFで表されるクロロ−2,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122)、及び式:CHF=CFで表されるトリフルオロエチレン(HFO−1123)が副生成物として生成され、1−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンを用いた場合には、式:CHF=CFで表されるトリフルオロエチレン(HFO−1123)が副生成物として生成される。
【0092】
本発明の第2方法は、第2工程の後、必要に応じて、反応後のガスに含まれるフッ化水素を分離する工程を含むことができる。フッ化水素を分離する方法としては特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、蒸留、分液等によって、フッ化水素と目的物を含む有機化合物とを分離することができる。さらに、例えば、フッ化水素を水洗により除去することもできるし、水洗と蒸留とを適宜組み合わせることもできる。
【0093】
本発明の第2方法は、第2工程の後、必要に応じて、反応後のガスに含まれる目的物(1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン)と、副生成物、及び反応条件によって含まれ得る原料化合物(一般式(2)で表される化合物)とを分離する工程を含むことができる。目的物と、副生成物及び原料化合物とを分離する方法としては特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、蒸留、分液、吸着などの方法が挙げられる。また、目的物と、副生成物、及び場合によっては含まれ得る原料化合物との沸点が近く、蒸留による分離が困難である場合には、目的物又は副生成物と共沸し得る任意の成分を添加して当該成分との共沸により蒸留して分離することも可能である。なお、分離した原料化合物は、再び脱フッ化水素工程に供することができる(即ち、リサイクルすることができる)。
【0094】
また、本発明の第2方法は、脱フッ化水素工程の後、必要に応じて、生成した1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンのシス体及びトランス体の混合物をトランス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンとシス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレンとに分離する工程を含むことができる。シス体とトランス体とを分離する方法としては特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、上記で例示した目的物と、副生成物及び原料化合物とを分離する方法と同様の方法を採用することができる。分離されたシス体及びトランス体は、いずれか一方を使用することもできるし、シス体及びトランス体の両方をそれぞれ別の用途に使用することもできる。
【0095】
なお、上記した、反応後のガスに含まれるフッ化水素を分離する工程、目的物と副生成物及び原料化合物とを分離する工程、並びにシス体とトランス体とを分離する工程のうち2工程以上を含む場合、各工程の順序は特に限定されず、任意の順序で行うことができる。
【0096】
また、第1工程と第2工程とは気相反応で連続して行うことができる。例えば、第1工程の生成物を貯蔵しておく設備などが不要になる点、第1工程で使用した熱エネルギーを第2工程で利用することで、使用する熱エネルギーを節約できる点など、様々な利点がある。
【実施例】
【0097】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の内容に限定されない。
【0098】
実施例1
活性炭担持パラジウム触媒20.0g(担持量0.5質量%)を、内径15mm、長さ1mの管状ハステロイ製反応器に充填した。この反応器を大気圧(0.1MPa)及び150℃に維持し、水素ガスを60cc/min(0℃、0.1MPaでの流量、以下同じ)の流速、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)ガスを60cc/minの流速、及び窒素ガスを480cc/minの流速で該反応器に供給して2時間維持した。反応器出口ガスをガスクロマトグラフ(GC)で分析したところ、CTFE転化率64%、CHFCHFCl:62%、CHFCHF:25%、CHFCHF:5%、その他:8%の選択率でCHFCHFClが得られた。
【0099】
実施例2
酸化アルミニウムであるγ−アルミナ触媒20.0g(比表面積400m/g)を、内径15mm、長さ1mの管状ハステロイ製反応器に充填した。この反応器を大気圧(0.1MPa)及び350℃に維持し、CHFCHFClガスを4cc/minの流速、及び窒素ガスを20cc/minの流速で該反応器に供給して2時間維持した。反応器出口ガスをGCで分析したところ、CHFCHFCl転化率82%、CHF=CFCl:80%、CHF=CHF:11%、その他:9%の選択率でCHF=CFClが得られた。
【0100】
実施例3
フッ化マグネシウム触媒20.0g(比表面積15m/g)を、内径15mm、長さ1mの管状ハステロイ製反応器に充填した。この反応器を大気圧(0.1MPa)及び450℃に維持し、CHFClCHFClガスを4cc/minの流速、及び窒素ガスを20cc/minの流速で該反応器に供給して2時間維持した。反応器出口ガスをGCで分析したところ、CHFClCHFCl転化率56%、CHF=CFCl:82%、CHF=CHF:12%、その他:6%の選択率でCHF=CFClが得られた。