特開2019-207621(P2019-207621A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-207621時空間イベントデータ推定装置、方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-207621(P2019-207621A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】時空間イベントデータ推定装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 7/00 20060101AFI20191108BHJP
【FI】
   G06N7/00 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-103533(P2018-103533)
(22)【出願日】2018年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 真耶
(72)【発明者】
【氏名】戸田 浩之
(57)【要約】
【課題】欠損値を含む複数種類の時空間イベントデータの発生確率を精度よく推定することができる。
【解決手段】パラメータ推定部16は、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、種類mの時空間イベントの時刻t及び地理空間上の位置sにおける発生確率と、過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、時刻t及び地理空間上の位置sを含む観測区間におけるイベント発生確率を表す強度関数の値と、観測区間に含まれる過去のイベント発生履歴の種類と種類mとの関係と、を用いてモデル化したときの、強度関数の尤度関数を最適化するように、各観測区間におけるイベント発生確率を表す強度関数の値、種類間の関係、及び前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の時空間イベントの各々についてイベント発生履歴を受け付ける受付部と、
前記受付部で受け付けた前記イベント発生履歴に基づいて、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、種類mの時空間イベントの前記時刻t及び前記位置sにおける発生確率と、前記時刻tより過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、種類毎に予め定められた複数の観測区間のうちの、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの観測区間におけるイベント発生確率を表す値と、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの前記観測区間に含まれる前記過去のイベント発生履歴の種類と前記種類mとの間の関係と、を用いてモデル化したときの、前記強度関数の尤度関数を最適化するように、前記複数の観測区間の各々におけるイベント発生確率を表す値、種類間の関係、及び前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定するパラメータ推定部と、
を含む時空間イベントデータ推定装置。
【請求項2】
前記種類mの時空間イベントについての前記時刻t及び前記位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数は、以下の式で表わされる請求項1記載の時空間イベントデータ推定装置。
【数1】

ただし、um(t,s)は、前記種類mの時空間イベントの前記時刻t及び前記位置sにおける発生確率を表し、gは、前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数を表し、

は、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの観測区間kにおけるイベント発生確率を表す値であり、

は、種類miと種類mとの間の関係であり、

は、前記観測区間kの時間範囲を表し、

は、前記観測区間kの空間領域を表す。
【請求項3】
受付部が、複数種類の時空間イベントの各々についてイベント発生履歴を受け付け、
パラメータ推定部が、前記受付部で受け付けた前記イベント発生履歴に基づいて、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、種類mの時空間イベントの前記時刻t及び前記位置sにおける発生確率と、前記時刻tより過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、種類毎に予め定められた複数の観測区間のうちの、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの観測区間におけるイベント発生確率を表す値と、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの前記観測区間に含まれる前記過去のイベント発生履歴の種類と前記種類mとの間の関係と、を用いてモデル化したときの、前記強度関数の尤度関数を最適化するように、前記複数の観測区間の各々におけるイベント発生確率を表す値、種類間の関係、及び前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定する
時空間イベントデータ推定方法。
【請求項4】
前記種類mの時空間イベントについての前記時刻t及び前記位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数は、以下の式で表わされる請求項3記載の時空間イベントデータ推定方法。
【数2】

ただし、um(t,s)は、前記種類mの時空間イベントの前記時刻t及び前記位置sにおける発生確率を表し、gは、前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数を表し、

は、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの観測区間kにおけるイベント発生確率を表す値であり、

は、種類miと種類mとの間の関係であり、

は、前記観測区間kの時間範囲を表し、

は、前記観測区間kの空間領域を表す。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1又は2記載の時空間イベントデータ推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時空間イベントデータを予測するための時空間イベントデータ推定装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
時間と空間上に連続的に広がるデータ(イベントデータ)をモデル化する技術として、時空間過程モデルがある。時空間点過程は地震、犯罪、疾病の伝搬等様々な現象のモデル化に用いられている。複数の時空間データを扱う点過程モデルとして、時空間Hawkes過程が提案されている(非特許文献1)。これはあるイベントが自分自身の過去のイベントと他データの過去のイベントの影響で起こるという仮定に基づいたモデルで、複数のデータ間の共起関係あるいは競合関係を学習することができる。
【0003】
しかし、上記非特許文献1の手法はデータの欠損値を扱えないという大きな欠点がある。この欠点は例えば交通分野への適用に際して大きな問題になる。人や車の移動軌跡等交通関係の時空間イベントデータには欠損値が含まれる。例えば車の軌跡は道路上のみで観測される。
【0004】
また、欠損値を考慮したHawkes点過程モデルとして時間Hawkes過程が知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】OGATA,Yosihiko. Space-time point-process models for earthquake occurrences. Annals of the Institute of Statistical Mathematics,1998, 50.2: 379-402.
【非特許文献2】LE, Triet M.A Multivariate Hawkes Process with Gaps in Observations. IEEE Transactions on Information Theory,2018, 64.3: 1800-1811.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来手法では、欠損値を含む時空間データを扱うことができない。そのため、データに欠損値が含まれる場合に誤った推定・予測をしてしまうという問題が存在した。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、欠損値を含む複数種類の時空間イベントデータの発生確率を精度よく推定することができる時空間イベントデータ推定装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る時空間イベントデータ推定装置は、複数種類の時空間イベントの各々についてイベント発生履歴を受け付ける受付部と、前記受付部で受け付けた前記イベント発生履歴に基づいて、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、種類mの時空間イベントの前記時刻t及び前記位置sにおける発生確率と、前記時刻tより過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、種類毎に予め定められた複数の観測区間のうちの、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの観測区間におけるイベント発生確率を表す値と、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの前記観測区間に含まれる前記過去のイベント発生履歴の種類と前記種類mとの間の関係と、を用いてモデル化したときの、前記強度関数の尤度関数を最適化するように、前記複数の観測区間の各々におけるイベント発生確率を表す値、種類間の関係、及び前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定するパラメータ推定部と、を含んで構成されている。
【0009】
また、本発明に係る時空間イベントデータ推定方法は、受付部が、複数種類の時空間イベントの各々についてイベント発生履歴を受け付け、パラメータ推定部が、前記受付部で受け付けた前記イベント発生履歴に基づいて、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、種類mの時空間イベントの前記時刻t及び前記位置sにおける発生確率と、前記時刻tより過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、種類毎に予め定められた複数の観測区間のうちの、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの観測区間におけるイベント発生確率を表す値と、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの前記観測区間に含まれる前記過去のイベント発生履歴の種類と前記種類mとの間の関係と、を用いてモデル化したときの、前記強度関数の尤度関数を最適化するように、前記複数の観測区間の各々におけるイベント発生確率を表す値、種類間の関係、及び前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定する。
【0010】
また、本発明のプログラムは、コンピュータを、上記の時空間イベントデータ推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の時空間イベントデータ推定装置、方法、及びプログラムによれば、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、種類mの時空間イベントの前記時刻t及び前記位置sにおける発生確率と、前記時刻tより過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、種類毎に予め定められた複数の観測区間のうちの、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの観測区間におけるイベント発生確率を表す値と、前記時刻t及び前記位置sを含む前記種類mの前記観測区間に含まれる前記過去のイベント発生履歴の種類と前記種類mとの間の関係と、を用いてモデル化したときの、前記強度関数の尤度関数を最適化するように、前記複数の観測区間の各々におけるイベント発生確率を表す値、種類間の関係、及び前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定することにより、欠損値を含む複数種類の時空間イベントデータの発生確率を精度よく推定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】複数種類の時空間イベントデータの発生履歴の例を示す図である。
図2】多変量Hawkes過程を説明するための図である。
図3】本発明の実施の形態における時空間イベントデータ推定装置のブロック図である。
図4】時空間イベントデータ格納装置に格納されている複数種類の時空間イベントデータの履歴情報の一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における時空間イベントデータ推定装置の学習処理ルーチンを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態における時空間イベントデータ推定装置のデータ予測処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
<概要>
本発明の実施の形態は、複数種類の不定間隔の時空間イベントデータが与えられた下で時空間イベントデータの種類間の共起性を推定し、各時空間イベントデータの欠損値補完・予測を行う技術に関する。ここで不定間隔の時空間イベントデータはランダムな現象(イベント)の生起位置と時刻のペアからなるデータで、交通流分野においては例えば車の出発時刻と出発地点の緯度経度のペアからなる系列である。
【0015】
本発明の実施の形態では欠損値を考慮した時空間Hawkes過程を提案する。欠損値を考慮したHawkes点過程モデルとして既に時間Hawkes過程が存在する(非特許文献2)が、本発明の実施の形態では、このモデルを時空間に拡張したものである。すわなち、時空間Hawkes過程を、欠損値を考慮した形に拡張する。点過程モデルにおいては、「強度関数」と呼ばれる時空間上の関数を用いてイベントの発生確率をモデル化する。時空間Hawkes過程の強度関数は次式で定義される。
【0016】
【数1】
【0017】
ここでtiはi番目のイベントの時刻、siは地点(緯度経度)である。Htは時刻t以前のイベントの発生時刻と地点の履歴である。um(t,s)は種類mの時空間イベントデータ(交通サービス)に固有のイベントの発生確率を表す関数(「バックグラウンドレート」) である。gは過去の履歴の影響を表す関数であり、通常カーネル関数やベキ減衰関数等の非負の関数が用いられる。
【0018】
本実施の形態では、複数種類の時空間イベントデータの履歴{(ti,si,mi)}Ni=1が与えられた場合を扱う(図1参照)。 前述の例では、tiは時刻、siは地理空間上の位置、miは交通サービスの種類のインデックス、Nはデータ数である。種類mの交通サービスにおける時空間イベントデータの発生確率は次式の強度関数で定義される多変量Hawkes過程でモデル化できる(図2参照)。
【0019】
【数2】
【0020】
ここで、miはデータ(例えば交通サービス)のインデックスである。上記式では、種類mの時空間イベントデータ(交通サービス)と種類miの時空間イベントデータ(交通サービス) の関係を表す新たなパラメータ

を導入した。これによって、時空間イベントデータの種類間の関係(例えば複数種類の交通サービス間の競合関係や共起関係)をモデル化することができる。しかし、このモデルには欠損値を扱うことができないという大きな問題が存在する。時空間イベントデータには、しばしば欠損値が含まれる。例えば、タクシーの出発イベントは道路沿いのみに集中しており、それ以外の地点には存在しない。上式のモデルはこのような欠損値を0として扱うため、適切なパラメータの推定ができないという問題が存在する。種類mの時空間イベントデータがKm個の観測区間を持つと仮定する。各観測区間における時間範囲を(cm,k,dm,k]Kmk=1、それに対応する空間領域を(gm,k,hm,k]Kmk=1とおく。これ以外の領域では観測が得られていないと仮定する。欠損値に対処するため、強度関数を次式で置き換える。
【0021】
【数3】
【0022】
ここで、um(t,s)は、種類mの時空間イベントの時刻t及び地理空間上の位置sにおける発生確率を表し、gは、時刻tより過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数を表し、

は、種類miと種類mとの間の関係であり、

は、種類mについて予め定められた複数の観測区間のうちの観測区間kの時間範囲を表し、

は、種類mの観測区間kの空間領域を表す。このように、観測区間は、時間範囲と空間領域との組み合わせで定義される。
【0023】
また、

は種類mについて定められたKm個の観測区間のうちの、時刻t及び地理空間上の位置sを含む観測区間kにおけるイベント発生確率を表す強度関数の値を表す未知パラメータである。この定式化により、欠損領域における強度関数の補完とパラメータ推定を同時に行うことができる。新たな強度関数を用いて尤度関数は次式で書き下せる。
【0024】
【数4】
【0025】
<本発明の実施の形態に係る時空間イベントデータ推定装置の構成>
次に、本発明の実施の形態に係る時空間イベントデータ推定装置の構成について説明する。図3に示すように、本発明の実施の形態に係る時空間イベントデータ推定装置100は、CPUと、RAMと、後述する各処理ルーチンを実行するためのプログラムや各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することが出来る。時空間イベントデータ推定装置100は、複数種類の時空間イベントデータの履歴情報に基づいて、時空間イベントデータの種類間の関係を推定すると共に、時空間イベントデータの時間発展を予測する。
【0026】
この時空間イベントデータ推定装置100は、機能的には図3に示すように、受付部10と、パラメータ推定部16と、パラメータ格納部18と、検索部20と、予測部22と、出力部24とを備えている。
【0027】
受付部10は、後述する時空間イベントデータ格納装置12に格納されているデータに対するユーザからの各種操作を受け付ける。各種操作とは、時空間イベントデータ格納装置12に格納された情報を登録、修正、削除する操作等である。
【0028】
受付部10の入力手段は、キーボードやマウス、メニュー画面、タッチパネルによるもの等、何でもよい。受付部10は、マウス等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェアで実現され得る。
【0029】
検索部20は、予測対象となる時間と場所の情報を受け付ける。検索部20の入力手段は、キーボードやマウスやメニュー画面やタッチパネルによるもの等、何でも良い。検索部20は、マウス等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェアで実現され得る。
【0030】
時空間イベントデータ格納装置12は、時空間イベントデータ推定装置100により解析される複数種類の時空間イベントデータの履歴情報を格納しており、時空間イベントデータ推定装置100からの要求に従って、複数種類の時空間イベントデータの履歴情報を読み出し、当該情報を時空間イベントデータ推定装置100に送信する。
【0031】
複数種類の時空間イベントデータは、例えば、複数種類の交通サービス(例えばタクシーとウーバー(登録商標))におけるトリップの出発履歴(出発イベント)であり、時間tiと地理空間上の位置si、交通サービスの種類のインデックスmi の組{(ti,si,mi)}Ni=1からなる(図4参照)。Nはデータの個数である。 交通サービスの種類のインデックスの集合をMとおく。このような文脈においては、空間的な欠損値が存在する。例えば、タクシーのトリップは主に道路沿いの地点で発生する。各々の交通サービスの種類mについて、出発イベントが観測された地理空間上の区域(例えば道路上の区域)の集合を

とおく。ここでKmは種類mについて予め定められた時空間イベントデータの観測区間の数を表す。時空間イベントデータ格納装置12は、Webページを保持するWebサーバや、データベースを具備するデータベースサーバ等である。
【0032】
パラメータ推定部16は、時空間イベントデータ格納装置12に格納されている情報に基づき、時空間イベントデータの種類間の関係を推定すると共に、これらの情報の低次元表現を抽出し、時間発展を推定する。前述の例を使って手順を説明する。複数種類の時空間イベントデータを多次元時空間Hawkes過程でモデル化することを考える。種類mの時空間イベントデータにおける出発イベントの発生確率を次式の強度関数でモデル化する。
【0033】
【数5】
【0034】
ここで過去の履歴の影響を表す関数g(・)としてベキ減衰関数を用いている。以下の議論はどのようなg(・)の形でも成り立つ。um>0は種類mの交通サービスの人気度を表すパラメータ、am,n>0は交通サービスの種類mと種類nの間の関係を表すパラメータ、bmはm番目のデータの時間減衰を制御するパラメータ、emはm番目のデータの空間減衰を制御するパラメータである。 各パラメータの集合を各々

とおく。欠損値を扱うため、強度関数を次式の通り書き換える。
【0035】
【数6】
【0036】
ここで

は新たな未知パラメータである。
【0037】
データの観測期間を(0、T]とおく。本モデルの尤度関数は次式の通り書き下せる。
【0038】
【数7】
【0039】
パラメータ推定においては、上式を最小化するようなパラメータの組

を見つける。上式の積分は解析的に計算できる。上式は全てのパラメータについて微分可能なため、例えば確率的降下勾配法(非特許文献3参照)を適用することができる。
【0040】
[非特許文献3]BOTTOU,Lon. Large-scale machine learning with stochastic gradient descent.In: Proceedings of COMPSTAT’2010. Physica-Verlag HD, 2010. p.177-186.
【0041】
以上説明したように、パラメータ推定部16は、イベント発生履歴に基づいて、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、上記(6)式に示すように、種類mの時空間イベントの時刻t及び地理空間上の位置sにおける発生確率と、過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、時刻t及び地理空間上の位置sを含む観測区間kにおけるイベント発生確率を表す値と、観測区間kに含まれる過去のイベント発生履歴の種類と種類mとの関係と、を用いてモデル化したときの、強度関数の尤度関数(上記(7)式)を最適化するように、各観測区間におけるイベント発生確率を表す強度関数の値、種類間の関係、及び前記過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定する。
【0042】
パラメータ格納部18は、パラメータ推定部16で得られた最適パラメータの組を格納する。パラメータ格納部18は、推定したパラメータの組が保存され、復元可能なものであれば、なんでも良い。例えば、データベースや、予め備えられた汎用的な記憶装置(メモリやハードディスク装置)の特定領域に記憶される。
【0043】
予測部22は、受付部10によって受け付けた予測対象の時間及び場所に関する情報と、パラメータ格納部18に格納されたパラメータの組とに基づいて、予測対象の時間及び場所に関する複数種類の時空間イベントデータの発生確率を予測する。
【0044】
出力部24は、予測部22によって予測された結果を出力する。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタへの印字、音出力、外部装置への送信等を含む概念である。出力部24は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部24は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0045】
<本発明の実施の形態に係る時空間イベントデータ推定装置の作用>
次に、本発明の実施の形態に係る時空間イベントデータ推定装置100の作用について説明する。
【0046】
<学習処理ルーチン>
まず、時空間イベントデータ推定装置100は、受付部10より複数種類の時空間イベントデータの履歴情報が入力されると、複数種類の時空間イベントデータの履歴情報を時空間イベントデータ格納装置12に格納する。そして、時空間イベントデータ推定装置100は、図5に示す学習処理ルーチンを実行する。
【0047】
まず、ステップS100では、パラメータの組

各々を初期化する。
【0048】
ステップS102では、上記(7)式の尤度関数を最小化するように、

各々を更新する。
【0049】
ステップS104では、予め定められた収束判定条件を満たしたか否かを判定し、収束判定条件を満たしていない場合には、上記ステップS102へ戻り、一方、収束判定条件を満たした場合には、ステップS106へ進む。
【0050】
なお、収束判定条件としては、推定された各パラメータの変化量が閾値以下となることや、予め定めた繰り返し回数に到達したことを用いればよい。
【0051】
ステップS106では、上記ステップS102で最終的に更新されたパラメータの組

をパラメータ格納部18に格納して、学習処理ルーチンを終了す る。
【0052】
<データ予測処理ルーチン>
次に、図6に示すデータ予測処理ルーチンについて説明する。
【0053】
上記学習処理ルーチンが実行され、パラメータ格納部18にパラメータの組

が格納され、予測対象の時間及び場所に関する情報が入力されると、時空間イベントデータ推定装置100は、図6に示すデータ予測処理ルーチンを実行する。
【0054】
ステップS120において、受付部10は、予測対象の時間及び場所に関する情報を受け付ける。
【0055】
ステップS122において、パラメータ格納部18に格納されたパラメータの組

を読み出す。
【0056】
ステップS124において、上記ステップS122で読み込まれたパラメータの組に基づいて、上記(6)式に従って、予測対象の時間及び場所における複数種類の時空間イベントの発生確率を予測する。
【0057】
ステップS126において、出力部24は、上記ステップS124で予測された予測結果を出力して、データ予測処理ルーチンを終了する。
【0058】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る時空間イベントデータ推定装置によれば、種類mの時空間イベントについての時刻t及び地理空間上の位置sにおけるイベント発生確率を表す強度関数を、種類mの時空間イベントの時刻t及び地理空間上の位置sにおける発生確率と、過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数と、時刻t及び地理空間上の位置sを含む観測区間におけるイベント発生確率を表す強度関数の値と、観測区間に含まれる過去のイベント発生履歴の種類と種類mとの関係と、を用いてモデル化したときの、強度関数の尤度関数を最適化するように、各観測区間におけるイベント発生確率を表す強度関数の値、種類間の関係、及び過去のイベント発生履歴からの影響を表す関数のパラメータを推定することにより、欠損値を含む複数種類の時空間イベントデータの発生確率を精度よく推定することができる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0060】
例えば、上記の実施の形態では、複数種類の時空間イベントデータが、複数種類の交通サービスの出発履歴である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の時空間イベントデータであってもよい。
【0061】
また、上述の時空間イベントデータ推定装置100は、内部にコンピュータシステムを有しているが、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0062】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能であるし、ネットワークを介して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 受付部
12 時空間イベントデータ格納装置
16 パラメータ推定部
18 パラメータ格納部
20 検索部
22 予測部
24 出力部
100 時空間イベントデータ推定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6