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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-207791(P2019-207791A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】正極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20191108BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20191108BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20191108BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20191108BHJP
   C01G 53/04 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/36 A
   C01G53/00 A
   C01G53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-102215(P2018-102215)
(22)【出願日】2018年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆太
(72)【発明者】
【氏名】相田 平
(72)【発明者】
【氏名】林 徹太郎
(72)【発明者】
【氏名】金田 理史
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AA05
4G048AC04
4G048AC06
4G048AC08
4G048AD03
4G048AD06
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA12
5H050FA13
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA19
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA06
5H050HA09
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】電池抵抗を低減することができる正極材料を提供する。
【解決手段】ここに開示される正極材料は、表面から少なくとも内部まで連通する空隙を有する正極活物質の粒子と、前記正極活物質の粒子の表面に存在する電子伝導体と、を含む。前記正極活物質は、層状岩塩構造を有し、かつ下記式(I)で表される組成を有する。前記電子伝導体は、下記式(II)で表される組成を有する。
Li1+uNiMnCo・・・(I)
La1−pMaCo1−qMb3−δ・・・(II)
(式中の各記号は、明細書に定義の通りである。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から少なくとも内部まで連通する空隙を有する正極活物質の粒子と、
前記正極活物質の粒子の表面に存在する電子伝導体と、
を含む正極材料であって、
前記正極活物質は、層状岩塩構造を有し、かつ下記式(I)で表される組成を有し、
前記電子伝導体は、下記式(II)で表される組成を有する、
正極材料。
Li1+uNiMnCo・・・(I)
(式(I)中、u、x、y、z、およびtは、−0.1≦u≦0.5、0.3≦x≦0.9、0≦y≦0.55、0≦z≦0.55、0≦t≦0.1、およびx+y+z+t=1を満たし、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Si、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
La1−pMaCo1−qMb3−δ・・・(II)
(式(II)中、pおよびqは、0≦p<1、および0<q<1を満たし、δは、電気的中性を得るための酸素欠損値であり、Maは、Ca、Sr、およびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mbは、MnおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
【請求項2】
DBP吸油量が、22mL/100g以上49mL/100g以下である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
DBP吸油量が、38mL/100g以上44mL/100g以下である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記式(II)において、0<p<1である、請求項1〜3のいずれかに記載の正極材料。
【請求項5】
前記正極活物質の粒子が、一次粒子が凝集した二次粒子の形態にあり、前記電子伝導体が、2個以上の隣接する前記一次粒子に接触している、請求項1〜4のいずれかに記載の正極材料。
【請求項6】
前記電子伝導体が、前記正極活物質の粒子の外表面上と内表面上の両方に存在している、請求項1〜5のいずれかに記載の正極材料。
【請求項7】
前記正極活物質の粒子の空隙の内径の平均が3μm以下であり、かつ前記空隙の中心線が、1つ以上の分岐を有している、請求項1〜6のいずれかに記載の正極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極材料に関する。詳しくは、リチウム二次電池等の二次電池の正極に用いられる材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
リチウム二次電池等の二次電池は、その普及に伴いさらなる高性能化が望まれている。一般的に、リチウム二次電池の正極には、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質が用いられている。リチウム二次電池の性能を向上させるために、特許文献1には、複数のリチウム遷移金属酸化物の一次粒子の集合体から構成される殻部と、当該二次粒子の内側に形成された中空部とを有する中空粒子であって、当該殻部には、外部から中空部まで貫通する貫通孔が形成されている中空粒子を、リチウム二次電池の正極活物質に用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−119092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウム二次電池等の二次電池には、さらなる低抵抗化が求められている。これに対し、本発明者が鋭意検討した結果、特許文献1に示されるような中空構造を有する正極活物質粒子を正極材料として用いて二次電池を構成した場合に、抵抗低減に改善の余地があることを見出した。
【0006】
そこで本発明は、電池抵抗を低減することができる正極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される正極材料は、表面から少なくとも内部まで連通する空隙を有する正極活物質の粒子と、前記正極活物質の粒子の表面に存在する電子伝導体と、を含む。前記正極活物質は、層状岩塩構造を有し、かつ下記式(I)で表される組成を有する。前記電子伝導体は、下記式(II)で表される組成を有する。
Li1+uNiMnCo・・・(I)
(式(I)中、u、x、y、z、およびtは、−0.1≦u≦0.5、0.3≦x≦0.9、0≦y≦0.55、0≦z≦0.55、0≦t≦0.1、およびx+y+z+t=1を満たし、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Si、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
La1−pMaCo1−qMb3−δ・・・(II)
(式(II)中、pおよびqは、0≦p<1、および0<q<1を満たし、δは、電気的中性を得るための酸素欠損値であり、Maは、Ca、Sr、およびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mbは、MnおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
このような構成によれば、電池抵抗を低減することができる。
【0008】
ここに開示される正極材料の好ましい一態様では、前記正極材料のDBP吸油量が、22mL/100g以上49mL/100g以下であり、より好ましくは38mL/100g以上44mL/100g以下である。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果が特に高くなる。
ここに開示される正極材料の好ましい一態様では、前記式(II)において、0<p<1である。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果が特に高くなる。
ここに開示される正極材料の好ましい一態様では、前記正極活物質の粒子が、一次粒子が凝集した二次粒子の形態にあり、前記電子伝導体が、2個以上の隣接する前記一次粒子に接触している。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果が特に高くなる。
ここに開示される正極材料の好ましい一態様では、前記電子伝導体が、前記正極活物質の粒子の外表面上と内表面上の両方に存在している。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果が特に高くなる。
ここに開示される正極材料の好ましい一態様では、前記正極活物質の粒子の空隙の内径の平均が3μm以下であり、かつ前記空隙の中心線が、1つ以上の分岐を有している。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果が特に高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る正極材料の一例の模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る正極材料の別の例の模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る正極材料を用いて構築されるリチウム二次電池の構成を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る正極材料を用いて構築されるリチウム二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない正極材料の一般的な構成)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0011】
本実施形態に係る正極材料は、表面から少なくとも内部まで連通する空隙を有する正極活物質の粒子と、当該正極活物質の粒子の表面に存在する電子伝導体と、を含む。当該正極活物質は、層状岩塩構造を有し、かつ下記式(I)で表される組成を有する。当該電子伝導体は、下記式(II)で表される組成を有する。
Li1+uNiMnCo・・・(I)
(式(I)中、u、x、y、z、およびtは、−0.1≦u≦0.5、0.3≦x≦0.9、0≦y≦0.55、0≦z≦0.55、0≦t≦0.1、およびx+y+z+t=1を満たし、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Si、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
La1−pMaCo1−qMb3−δ・・・(II)
(式(II)中、pおよびqは、0≦p<1、および0<q<1を満たし、δは、電気的中性を得るための酸素欠損値であり、Maは、Ca、Sr、およびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mbは、MnおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
【0012】
正極活物質は、その結晶構造として層状岩塩構造を有する。正極活物質が層状岩塩構造を有することは、公知方法(例えば、X線回折(XRD)測定等)に従い、確認することができる。
【0013】
正極活物質は、上記式(I)で表される組成を有するリチウム遷移金属複合酸化物である。上記式(I)において、x、y、zが概ね同程度(すなわち、NiとMnとCoの組成比が概ね同等)であることが好ましい。具体的には、0.3≦x≦0.5、0.20≦y≦0.4、0.20≦z≦0.4であることが好ましい。また、t=0であることが好ましい。このとき、リチウム遷移金属複合酸化物は、エネルギー密度が高く、熱安定性にも優れる。そのため、本発明の効果をより高いレベルで奏することができる。
【0014】
電子伝導体は、上記式(II)で表される組成を有する。電池抵抗低減効果および耐久性向上効果がより高いことから、電子伝導体は、Laの一部が、Ca、Sr、およびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていることが好ましい。すなわち、上記式(II)において、0<p<1であることが好ましく、0.4≦p≦0.6であることがより好ましい。
【0015】
正極活物質および電子伝導体の組成は、公知方法に従い、確認することができる。具体的に例えば、正極材料の断面に対し、走査型透過電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光分析および電子エネルギー損失分光分析(STEM−EDX/EELS)を行い、任意の点の組成分析を行うことで、正極活物質および電子伝導体の組成を確認することができる。あるいは、正極材料の誘導結合プラズマ(ICP)分析により求まる元素比率より、正極活物質および電子伝導体の組成を確認することができる。
【0016】
正極活物質は、表面から少なくとも内部まで連通する空隙を有する。空隙は、正極活物質粒子の中央部にまで達していることが好ましい。空隙は、表面上の一点から別の点まで連通している貫通孔であってよく、非貫通孔であってもよい。空隙の数には特に制限はなく、正極活物質粒子は、表面から少なくとも内部まで連通する複数の空隙を有する(すなわち、多孔質である)ことが好ましい。
電池抵抗低減効果がより高くなることから、空隙の内径の平均が3μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。なお、空隙の内径とは、空隙を最小面積で近似できる内接円の直径のことをいう。
電池抵抗低減効果がより高くなることから、空隙の中心線が、1つ以上の分岐を有していることが好ましく、2つまたは3つの分岐を有していることがより好ましい。なお、空隙の中心線とは、上記内接円の中心点をつないだ線のことをいう。
空隙の内径の平均が3μm以下であり、かつ空隙の中心線が、1つ以上の分岐を有している場合には、電池抵抗低減効果が特に高くなり、特に好ましい。
なお、一次粒子が単に凝集した二次粒子(いわゆる「中実粒子」)も一次粒子間に隙間を有するが、本明細書における空隙は、一次粒子間の隙間を意味しない。よって、空隙の内径の平均は、0.5μm以上が好ましく、1μm以上が好ましい。
【0017】
電子伝導体は、典型的には、正極活物質の粒子の表面上に点在している。電子伝導体は、正極活物質の粒子の表面上に層を形成していてもよい。電池抵抗低減効果および耐久性向上効果がより高くなることから、電子伝導体は、正極活物質の粒子の外表面上と内表面(すなわち、空隙部の表面)上の両方に存在していることが好ましい。電子伝導体は、正極活物質粒子の表面に、直接接触して固定化されていることが好ましい。
【0018】
図1は、本実施形態に係る正極材料の一例の模式断面図である。図1において、正極材料10Aは、不定形である。正極材料10Aに含まれる正極活物質12Aは、表面から内部まで連通する空隙14Aを有する。空隙14Aは、正極活物質12Aの粒子の中心部まで達する非貫通孔である。電子伝導体(図示せず)は、正極活物質12Aの粒子の外表面上および内表面上に点在している。図1においては、表面から内部まで連通する空隙14Aの数は1つであるが、別の角度で断面を見た場合には、表面から内部まで連通する別の空隙が存在し得る。
【0019】
図2は、本実施形態に係る正極材料の別の例の模式図である。正極材料10Bは、球状である。正極材料10Bに含まれる正極活物質12Bは、表面から内部まで連通する空隙14Bを有する。空隙14Bは、表面の1点から別の点まで連通する貫通孔である。空隙14Bである貫通孔は、2つの分岐を有する。具体的には、空隙14Bの中心線L上の点P1および点P2において、それぞれ分岐している。電子伝導体(図示せず)は、正極活物質12Bの粒子の外表面上および内表面上に点在している。
【0020】
なお、図1および図2は、例示であり、本実施形態に係る正極材料の形態は、図示したものに限られない。例えば、正極材料の形状は、不定形、球状に限られず、その他の形状(例、板状等)であってもよい。
【0021】
正極活物質の粒子は、一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。正極活物質の粒子は、一次粒子が凝集した二次粒子の形態あることが好ましい。このとき、電子伝導体(具体的には、電子伝導体のみにより構成される一つの領域)が、2個以上(特に、3個または4個)の隣接する前記一次粒子に接触していることが好ましい。この場合、電池抵抗低減効果がさらに高くなる。電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数は、公知方法(例えば、STEM−EDX分析)により、確認することができる。
【0022】
正極材料のDBP吸油量は、電池の電解液の浸入のし易さと相関がある指標である。電池抵抗低減効果および耐久性向上効果がより高いことから、本実施形態に係る正極材料のDBP吸油量は、好ましくは22mL/100g以上49mL/100g以下であり、より好ましくは38mL/100g以上44mL/100g以下である。DBP吸油量は、フタル酸ジブチルおよびアブソープトメータを用いて、JIS K6217−4(2008)に記載の方法に準拠して求めることができる。
【0023】
本実施形態に係る正極材料の平均粒子径(D50)は、特に制限はないが、例えば、0.05μm以上20μm以下であり、好ましくは0.5μm以上15μm以下であり、より好ましくは1μm以上12μm以下である。
なお、本実施形態に係る正極材料の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法等により求めることができる。
【0024】
本実施形態に係る正極材料の製造方法には特に制限はない。好適には、正極材料のリチウム以外の構成元素を含む複合水酸化物を晶析し、リチウム源とともに当該複合水酸化物を焼成する方法が挙げられる。この方法において、電子伝導体のみに含まれるLa源等を含有する複合水酸化物を作製し、これをリチウム源と共に焼成した場合には、電子伝導体を、正極活物質の表面に析出させることができる。
【0025】
本実施形態に係る正極材料を、電池(特にリチウム二次電池)に使用した場合には、正極活物質として空隙を有する粒子(中空粒子)を用いること、および当該正極活物質粒子の表面に電子伝導体を存在させることによって、電池抵抗が低くなる。その効果は、中空粒子を用いることの効果、および空隙を有しない中実粒子の表面に電子伝導体を存在させることの効果の足し合わせよりも大きい。また、電池の耐久性も高くなる。
【0026】
その理由は、次のように推測される。
中実粒子に比べ、中空粒子は、外表面のみならず内表面(空隙部分の表面)までLiイオン等の電荷担体の出入りに使用できるため、反応面積が大きく、これにより電荷移動の抵抗が小さくなる。一方で、固体内部を拡散する電子は、固体内部が複雑に入り組んだ形状になるため、移動しにくくなる。また外表面のすべてを集電面として活用できる中実粒子に対し、外表面に空孔を有する中空粒子は、集電面積が小さくなり、電子のやり取りがし難くなる。このため、中空粒子は、電子抵抗が高くなる。これに対し、活物質の表面に電子伝導性の高い電子伝導体を存在させた場合には、中実粒子に電子伝導体を存在させる場合の効果に加え、粒子の中空化による高抵抗化の背反を解決する効果も重畳するため、中空粒子を用いることによる効果と、電子伝導体を存在させることの効果の単純な足し算を上回る効果を得ることができる。また、複数の隣接する一次粒子に電子伝導体が接触する場合には、上記固体内の電子移動を促進する効果が長距離にわたって発現されるため、効果はより大きくなる。
また充放電に伴う体積変化により、正極活物質には粒界を中心にクラックが生じ、さらに粒子外部の導電助剤との接触も失われる。その際に、中実粒子は隣り合う粒子の存在確率が高いため、割れた正極活物質の一次粒子が電気的に孤立しにくく、また、外表面積が大きいため、周囲の導電助剤との接触も維持され易い。これに対し、中空粒子はクラックが生じると、隣接粒子数が少ないために電気的に孤立し易い。また、外表面積が小さいために、周囲の導電助剤との接触が切れ易い。よって、充放電を繰り返した際に容量劣化が大きくなり易い。しかしながら、中空粒子の表面に電子伝導体を存在させた場合、正極活物質の粒界にクラックが生じても、電子伝導体を介した導電パスは維持される。さらに粒子外表面の接触面積が小さくても、面積あたりの電流密度を高く維持することができる。これにより、充放電を繰り返した際の容量劣化を効果的に抑制することができる。すなわち、耐久性が向上する。
【0027】
本実施形態に係る正極材料は、電池用であり、特に好適には、リチウム二次電池用である。公知方法に従い、本実施形態に係る正極材料を用いて電池を構築することができる。そこで、以下、本実施形態に係る正極材料を用いたリチウム二次電池の具体的な構成例を、図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、いわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。
【0028】
図3に示すリチウム二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解質(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。正負極端子42,44はそれぞれ正負極集電板42a,44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質には、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0029】
捲回電極体20は、図3および図4に示すように、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された正極シート50と、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回されている。なお、捲回電極体20の捲回軸方向(上記長手方向に直交するシート幅方向をいう。)の両端から外方にはみ出すように形成された正極活物質層非形成部分52a(即ち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)と負極活物質層非形成部分62a(即ち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)には、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0030】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54は、正極活物質を含む材料である上述の本実施形態に係る正極材料を含む。また正極活物質層54は、導電材、バインダ等をさらに含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0031】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等をさらに含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0032】
セパレータ70としては、従来からリチウム二次電池に用いられるものと同様の各種微多孔質シートを用いることができ、その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0033】
非水電解質は従来のリチウム二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。或いは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F−DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒および支持塩以外の成分、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0034】
リチウム二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。リチウム二次電池100は、複数個が電気的に接続された組電池の形態で使用することもできる。
【0035】
以上、例として扁平形状の捲回電極体を備える角型のリチウム二次電池について説明した。しかしながら、本実施形態に係る正極材料は、公知方法に従い、他の種類のリチウム二次電池にも使用可能である。例えば、本実施形態に係る正極材料を用いて、積層型電極体を備えるリチウム二次電池を構築することもできる。また、本実施形態に係る正極材料を用いて、円筒型リチウム二次電池、ラミネート型リチウム二次電池等を構築することもできる。また、本実施形態に係る正極材料を用いて、全固体二次電池を構築することもできる。
【0036】
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
以下の実施例では、特に断りのない限り、遷移金属含有複合水酸化物および正極活物質の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の物質をそれぞれ使用した。また、核生成工程および粒子成長工程の実施中、反応水溶液のpH値は、pHコントローラ(株式会社日伸理化製、NPH−690D)により測定し、この測定値に基づき、水酸化ナトリウム水溶液の供給量を調整することで、それぞれの工程における反応水溶液のpH値を、それぞれの工程の設定値に対して、±0.2の範囲内で制御した。
【0037】
<正極材料A1の作製>
〔遷移金属複合水酸化物の製造〕
[核生成工程]
まず、6L反応槽内に水1.4Lを添加し、撹拌しながら槽内温度を70℃に設定した。この際、反応槽内に窒素ガスを30分間流通させ、反応槽内の空間の酸素濃度を1容量%以下とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を適量供給し、pH値が液温25℃基準で13.1となるように調整することで反応前水溶液を形成した。同時に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ランタンを、各金属元素のモル比がNi:Mn:Co:La=40.0:30.0:30.0:0.4となるように水に溶解し、濃度2mol/Lの原料水溶液を調製した。
次に、この原料水溶液を、反応前水溶液に10mL/分の流量で供給して反応水溶液を形成し、晶析反応によって、3分間の核生成を行った。この処理の間、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を適宜供給し、反応水溶液のpH値を上記範囲内に維持した。
【0038】
[粒子成長工程]
核生成工程終了後、反応槽内へのすべての水溶液の供給を一旦停止した。反応槽内に37質量%硫酸を加えて、反応槽内のpH値が、液温25℃基準で11.0となるように調整した。pH値が所定の値になったことを確認した後、原料水溶液を供給し、核生成工程で生成した核を成長させた。
粒子成長工程の開始時から50分(粒子成長工程の時間全体に対して20.8%)経過後、原料水溶液の供給を継続したまま、反応槽内に25質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応水溶液のpH値を液温25℃基準で11.8となるように調整した(切替操作1)。
切替操作1の開始から3分(粒子成長工程の時間全体に対して1.3%)経過後、原料水溶液の供給を継続したまま、反応槽内に37質量%硫酸を添加して反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で11.0となるように調整した(切替操作2)。
切替操作2の開始から187分(粒子成長工程の時間全体に対して77.9%)経過後、反応槽内へのすべての水溶液の供給を停止して、粒子成長工程を終了した。なお、粒子成長工程において、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適時供給し、反応水溶液のpH値を上記範囲内に維持した。
粒子成長工程の終了時において、反応水溶液中の生成物の濃度は、86g/Lであった。その後、得られ生成物を、水洗し、ろ別した後、乾燥させることによって、粉末状の複合水酸化物を得た。
【0039】
〔遷移金属複合水酸化物の評価〕
上記で得られた複合水酸化物を試料として、ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE−9000)を用いて元素分率を計測したところ、この複合水酸化物は、一般式:Ni0.40Mn0.30Co0.30La0.004(OH)2+δで表されるものであることを確認した。
【0040】
〔正極材料の作製〕
上記で得られた複合水酸化物を、熱処理工程として、大気(酸素濃度:21容量%)気流中120℃で12時間熱処理して熱処理粒子を得た。その後、混合工程として、熱処理された粒子と炭酸リチウムとをLi/(Ni+Co+Mn)の値が1.10となるように混合し、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製、TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合し、リチウム混合物を得た。
次いで、このリチウム混合物を、焼成工程として、大気(酸素濃度:21容量%)気流中、昇温速度2.5℃/分として室温から900℃まで昇温し、この温度で4時間保持して焼成した。その後、冷却速度約4℃/分で室温まで冷却した。このようにして得た正極材料には、凝集または軽度の焼結が生じていたため、解砕工程として、正極材料の解砕を行い、平均粒子径および粒度分布を調整した。
【0041】
〔正極材料の評価〕
この正極材料を試料として、ICP発光分光分析装置を用いて元素分率を計測したところ、この正極材料は、Li1.1Ni0.40Mn0.30Co0.30La0.0042+δで表されるものであることを確認した。
また、正極材料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、表面から内部に連通する空隙があることを確認した。
さらに、正極材料のDBP吸油量を、JIS K6217−4(2008)に記載の方法に準拠して測定したところ、DBP吸油量は、18mL/100gであった。
また、XRD測定により上記の方法で得られた正極材料が、層状岩塩型の結晶構造を有していることを確認した。
さらにSTEM−EDX/EESLを用いた分析により、LiNi0.40Mn0.30Co0.30で表される正極活物質の表面に、LaNi0.40Mn0.30Co0.30で表される電子伝導体が存在していることを確認した。
また、STEM−EDXを用いた分析より、電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数が1であることを確認した。
得られた正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0042】
<正極材料A2〜A9の作製>
上記の粒子成長工程において、切替操作1と切替操作2を実施するタイミングを変更することで複合水酸化物の構造を制御し、正極材料のDBP吸油量を調製した。このようにして、正極材料A1と同様の組成と構造を有し、DBP吸油量が異なる正極材料A2〜A9を得た。得られた正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0043】
<正極材料A10〜A12の作製>
正極材料の構成元素源の添加量比を変えて、正極材料A6の作製時と同様の条件により、正極材料A10〜A12を作製した。作製した正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0044】
<正極材料A13およびA14の作製>
硫酸マンガンの代わりに硫酸アルミニウムを用い、正極材料の構成元素源の添加量比を変えて、正極材料A6の作製時と同様の条件により、正極材料A13およびA14を作製した。作製した正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0045】
<正極材料A15〜A17の作製>
硫酸ランタンの使用量を減らしてCa源、Ba源およびSr源をそれぞれ添加して、正極材料A6の作製時と同様の条件により、正極材料A15〜A17を作製した。作製した正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0046】
<正極材料A18〜A20の作製>
硫酸ランタンの使用量を変更して、正極材料A6の作製時と同様の条件により、正極材料A18〜A20を作製した。作製した正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0047】
<正極材料B1>
常法に従い、内部に空隙のない一般式LiNi0.40Mn0.30Co0.30で表される層状岩塩構造の正極活物質を準備し、これを正極材料B1とした。この正極材料の正極活物質の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0048】
<正極材料B2およびB3>
内部に空隙のない一般式LiNi0.40Mn0.30Co0.30で表される層状岩塩構造の正極活物質の表面にLaNi0.40Mn0.30Co0.30で表される電子伝導体が存在する材料を準備し、これを正極材料B2およびB3とした。なお、正極材料B2およびB3は、DBP吸油量が異なる。これらの正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0049】
<正極材料B4>
硫酸ランタンを添加しなかった以外は、正極材料A1と同様にして、表面から内部に連通する空隙を有するが、電子伝導体を含まない正極材料B4を得た。得られた正極材料の正極活物質の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表1に示す。
【0050】
<正極材料A21〜A24の作製>
製造時の条件を適宜変更して、表面から内部に連通する空隙の状態が異なる正極材料を作製した。作製した正極材料の正極活物質および電子伝導体の組成、正極活物質の表面から内部に連通する空隙の有無、DBP吸油量(mL/100g)、および電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数(隣接一次粒子数)を表2に示す。
【0051】
<評価用リチウム二次電池の作製>
上記作製した正極材料と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、正極材料:AB:PVDF=84:12:4の質量比でN−メチルピロリドン(NMP)中でプラネタリミキサを用いて混合し、固形分濃度50wt%の正極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを、ダイコータを用いて長尺状のアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより正極シートを作製した。
また、負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比でイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを、長尺状の銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより負極シートを作製した。
また、2枚のセパレータシート(多孔性ポリオレフィンシート)を用意した。
作製した正極シートと負極シートと用意した2枚のセパレータシートとを重ね合わせ、捲回して捲回電極体を作製した。作製した捲回電極体の正極シートと負極シートにそれぞれ電極端子を溶接により取り付け、これを、注液口を有する電池ケースに収容した。
続いて、電池ケースの注液口から非水電解液を注入し、当該注液口を気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とを1:1:1の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0052】
<活性化および初期容量測定>
上記作製した各評価リチウム二次電池を25℃の環境下に置いた。活性化(初回充電)は、定電流−定電圧方式とし、各評価用リチウム二次電池を1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、各評価用リチウム二次電池を1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。そして、このときの放電容量を測定して初期容量を求めた。
【0053】
<電池抵抗測定>
活性化した各評価用リチウム二次電池を、SOC(State of charge)60%に調整した後、25℃の環境下に置いた。20Cの電流値で10秒間の放電を行い、放電開始から10秒後の電圧値を測定し、電池抵抗を算出した。正極材料B1を用いた評価用リチウム二次電池の抵抗を100とした場合の、他の評価用リチウム二次電池の抵抗の比を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0054】
<耐久性評価>
活性化した各評価用リチウム二次電池を60℃の環境下に置き、2Cで4.2Vまで定電流充電および2Cで3.0Vまで定電流放電を1サイクルとする充放電を500サイクル繰り返した。500サイクル目の放電容量を、初期容量と同様の方法で求めた。高温サイクル特性の指標として、(充放電500サイクル目の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
正極材料B1は、正極活物質が内部に空隙を有さず電子伝導体も含まない実験例である。正極材料B2およびB3は、正極活物質が内部に空隙を有さないが、電子伝導体を含む実験例である。正極材料B4は、正極活物質が内部に空隙を有するが、電子伝導体を含まない実験例である。
正極材料B1と正極材料B2およびB3との比較より、中実粒子に電子伝導体を付加した場合の効果が把握でき、抵抗低減および耐久性向上(容量維持率の増加)に効果があることがわかる。
正極材料B1と正極材料B4との比較より、粒子を中空化した場合の効果が把握でき、抵抗低減効果があるが、耐久性が低下することがわかる。
これに対し、正極材料A1〜A9は、正極活物質が内部に空隙を有し、電子伝導体を含む実験例である。正極材料A1〜A9(特に正極材料A1)の結果より、電子伝導体の付加および中空化のそれぞれの抵抗低減効量の単純加算を上回る、大きな抵抗低減効果が得られていることがわかる。また、中空化による耐久性悪化の背反を解決していることがわかる。この効果は、DBP吸油量を22mL/100g〜49mL/100gの範囲にした正極材料A2〜A8で特に高く、DBP吸油量を38mL/100g〜44mL/100gの範囲にした正極材料A5〜A7でさらに高くなることがわかる。
正極材料A10〜A14では、正極活物質および電子伝導体の組成を変更したが、高い抵抗低減効果が得られると共に、耐久性向上効果が見られた。
正極材料A15〜A17では、La置換元素を用いて電子伝導体の組成を変更したが、高い抵抗低減効果が得られると共に、耐久性向上効果が見られた。
正極材料A18〜A20では、電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数を変化させた。電子伝導体が接触している隣接する一次粒子の数が多い方が、より高い抵抗低減効果と耐久性向上効果が得られることがわかる。
【0058】
正極材料A21〜A24では、正極活物質の空隙の状態(具体的には、空隙の内径および空隙の分岐数)を変化させた。空隙の内径が小さくなるほど、より高い抵抗低減効果が得られることがわかる。また、空隙の分岐数が多いほど、より高い抵抗低減効果が得られることがわかる。
【0059】
正極材料A1〜A24が、本実施形態に係る正極材料の範囲内にある正極材料の試験例である。以上の結果から、本実施形態に係る正極材料によれば、電池抵抗を低減できることがわかる。また、本実施形態に係る正極材料によれば、電池の耐久性を向上できることがわかる。
【0060】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10A,10B 正極材料
12A,12B 正極活物質
14A,14B 空隙
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウム二次電池
図1
図2
図3
図4