特開2019-208316(P2019-208316A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-208316(P2019-208316A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20191108BHJP
【FI】
   H02M7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-102642(P2018-102642)
(22)【出願日】2018年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】居安 誠二
(72)【発明者】
【氏名】林 裕二
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006DA02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】電力変換装置に適用される制御装置において、交流電流の歪みを抑制しつつ、入力信号に対する制御装置のフルスケールの増加を抑制することができる電力変換装置の制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制御装置30は、交流電圧に基づいて、リアクトル13に流れるリアクトル電流の電流検出値を補正する電流補正値を設定する。制御装置30は、取得された電流検出値から補正値を減算することにより電流検出値を算出する。制御装置30は、算出した電流検出値を指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により駆動スイッチを操作する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトル(13)と、駆動スイッチ(SW〜SW42)とを有し、交流電圧及び直流電圧のうち、入力される一方の電圧を他方の電圧に変換して出力する電力変換装置(100)に適用される電力変換装置の制御装置(30)であって、
前記リアクトルに流れるリアクトル電流の検出値である電流検出値を取得する検出値取得部と、
前記交流電圧を取得する交流電圧取得部と、
取得した前記交流電圧に基づいて、正弦波状のリアクトル電流の指令値を算出する指令値算出部(34,35,36)と、
前記交流電圧に基づいて、取得された前記電流検出値の補正値を設定する補正値設定部(40)と、
取得された前記電流検出値から前記補正値を減算することにより、補正後検出値を算出する補正部(20,20a,20b)と、
前記補正後検出値を前記指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により前記駆動スイッチを操作する電流制御部(50,50a〜50d)と、を備える電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記電流検出値に加算されるスロープ補償信号の傾きを可変設定するスロープ量設定部(51)を備え、
前記補正値設定部は、前記交流電圧及び設定された前記スロープ補償信号の傾きに基づいて、前記補正値を設定し、
前記電流制御部は、前記補正後検出値に前記スロープ補償信号を加算した値を前記指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により前記駆動スイッチを操作する請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記電力変換装置は、前記直流電圧を前記交流電圧に変換し、
前記補正値設定部は、前記補正値を、前記交流電圧の1周期において正極性及び負極性となる期間それぞれで極大値を1つ取り、かつ前記正極性での極大値となるタイミングと前記負極性での極大値となるタイミングとの間で極小値を1つ取るように設定する請求項1又は2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記電力変換装置は、前記交流電圧を前記直流電圧に変換し、
前記補正値設定部は、前記補正値を、前記交流電圧の1周期において正極性及び負極性となる期間それぞれで極小値を1つ取り、かつ前記正極性での極小値となるタイミングと前記負極性での極小値となるタイミングとの間で極大値を1つ取るように設定する請求項1又は2に記載の電力変換装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に適用される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、リアクトルと、駆動スイッチとを有し、交流電圧を直流電圧に変換して出力する電力変換装置が開示されている。この電力変換装置に適用される制御装置は、リアクトルに流れるリアクトル電流を指令値に制御すべく、周知のピーク電流モード制御により駆動スイッチを操作する。また、制御装置は、補正値を指令値に加算することにより駆動スイッチの1スイッチング周期に対するオン操作期間の比を示すデューティ比を調整し、交流電流の歪みを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−198460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指令値に補正値を加算することにより交流電流の歪みを抑制する場合、補正後の指令値を考慮して、この指令値が入力される制御装置のフルスケールを予め大きな値に設定しておく必要がある。そのため、制御装置のフルスケールの増加により電流指令値の分解能が低くなることが懸念される。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、電力変換装置に適用される制御装置において、交流電流の歪みを抑制しつつ、入力信号に対する制御装置のフルスケールの増加を抑制することができる電力変換装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明では、リアクトルと、駆動スイッチとを有し、交流電圧及び直流電圧のうち、入力される一方の電圧を他方の電圧に変換して出力する電力変換装置に適用される電力変換装置の制御装置に関するものである。制御装置は、前記リアクトルに流れるリアクトル電流の検出値である電流検出値を取得する検出値取得部と、前記交流電圧を取得する交流電圧取得部と、取得された電流検出値から補正値を減算することにより、補正後検出値を算出する補正部と、前記補正後検出値を前記指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により前記駆動スイッチを操作する電流制御部とを備える。
【0007】
ピーク電流モード制御では、駆動スイッチのデューティ比は、1スイッチング周期においてリアクトル電流が指令値に達するまでの時間により設定される。そのため、指令値又は電流検出値を調整することにより、駆動スイッチのデューティ比を調整でき、ひいては交流電流の歪みを抑制することができる。ここで、発明者は、電流指令値に補正値を加算するのではなく、電流検出値から補正値を減算することにより、駆動スイッチのデューティ比を調整しつつ、入力信号に対する制御装置のフルスケールが増加するのを抑制できることに着目した。
【0008】
そこで、上記構成では、電流検出値から補正値を減算することにより、補正後検出値が算出される。そして、算出された補正後検出値を指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により駆動スイッチが操作される。この場合、交流電流の歪みを抑制しつつ、入力信号に対する制御装置のフルスケールの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図2】制御装置の機能ブロック図。
図3】交流電圧、指令電流、及びリアクトル電流の平均値の推移を示す図。
図4】電流補正部の構成図。
図5】高調波補正値を説明する図。
図6】乖離幅を説明する図。
図7】ピーク電流モード制御を用いた第5スイッチSW5の操作手順を示すフローチャート。
図8】電力変換装置のタイミングチャート。
図9】本実施形態の効果を説明する図。
図10】本実施形態の効果を説明する図。
図11】第2実施形態に係る制御装置の機能ブロック図。
図12】第3実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図13】制御装置の機能ブロック図。
図14】電力変換装置のタイミングチャート。
図15】第3実施形態の変形例1に係る電力変換装置の構成図。
図16】第4実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図17】制御装置の機能ブロック図。
図18】電力変換装置のタイミングチャート。
図19】第5実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図20】制御装置の機能ブロック図。
図21】高調波補正値を説明する図。
図22】電力変換装置のタイミングチャート。
図23】第6実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図24】制御装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置、及び電力変換装置に適用される制御装置の一態様について図を用いて説明する。
【0011】
本実施形態の電力変換装置100は、直流電圧を交流電圧に変換する。図1に示す電力変換装置100は、DC・AC変換器10を備えている。DC・AC変換器10は、第1交流端子TA1及び第2交流端子TA2を介して交流電源200に接続され、第1直流端子TD1及び第2直流端子TD2を介して不図示の機器に接続されている。交流電源200は、例えば、商用電源である。機器には、例えば、バッテリ等の直流電源及びDC・DCコンバータのうち少なくとも一方が含まれる。
【0012】
DC・AC変換器10は、フルブリッジ回路12と、リアクトル13と、ハーフブリッジ回路15と、コンデンサ16と、第1〜第6配線LP1〜LP6とを備えている。
【0013】
ハーフブリッジ回路15は、第5スイッチSW5と、第6スイッチSW6とを備えている。第5,第6スイッチSW5,SW6は、電圧駆動型のスイッチであり、本実施形態ではnチャネルMOSFETである。第5スイッチSW5のソースと第6スイッチSW6のドレインとが接続されている。第5スイッチSW5のドレインが第1配線LP1に接続され、第6スイッチSW6のソースが第2配線LP2に接続されている。第5,第6スイッチSW5,SW6それぞれは、逆並列接続された寄生ダイオードを備えている。本実施形態では、第5スイッチSW5が駆動スイッチに相当する。
【0014】
第5,第6スイッチSW5,SW6の第1接続点K1は、第3配線LP3の第1端に接続されている。第3配線LP3の一部にはリアクトル13が設けられている。また、第6スイッチSW6のソースは、第4配線LP4の第1端に接続されている。第3,4配線LP3,LP4それぞれの第2端は、フルブリッジ回路12に接続されている。
【0015】
フルブリッジ回路12は、第1〜第4スイッチSW1〜SW4を備えている。第1〜第4スイッチSW1〜SW4は、電圧駆動型のスイッチであり、本実施形態ではnチャネルMOSFETである。第3スイッチSW3のソースと、第4スイッチSW4のドレインとが接続されている。第1スイッチSW1のソースと、第2スイッチSW2のドレインとが接続されている。第1,第3スイッチSW1,SW3それぞれのドレインが第3配線LP3に接続され、第2,第4スイッチSW2,SW4それぞれのソースが第4配線LP4に接続されている。
【0016】
第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との第2接続点K2は、第5配線LP5の第1端に接続されており、第5配線LP5の第2端は第1交流端子TA1に接続されている。第3スイッチSW3と第4スイッチSW4との第3接続点K3は、第6配線LP6の第1端に接続されており、第6配線LP6の第2端は第2交流端子TA2に接続されている。コンデンサ16は、第1配線LP1と第2配線LP2との間に接続されている。
【0017】
電力変換装置100は、直流電圧センサ31と、電流センサ32と、交流電圧センサ33とを備えている。直流電圧センサ31は、第1配線LP1と第2配線LP2との間に接続されており、コンデンサ16の端子間電圧を直流電圧Vdcとして検出する。電流センサ32は、第4配線LP4に設けられており、リアクトル13に流れるリアクトル電流を電流検出値ILrとして検出する。交流電圧センサ33は、第5配線LP5と第6配線LP6との間に接続されており、交流電源200の電圧を交流電圧Vacとして検出する。
【0018】
本実施形態では、交流電流Iacが、第1交流端子TA1からフルブリッジ回路12の向きに流れる場合を正極性し、第2交流端子TA2からフルブリッジ回路12の向きに流れる場合を負極性とする。リアクトル13に実際に流れる電流と、電流検出値ILrとを区別するために、リアクトル13に流れる電流をリアクトル電流ILと記載する。
【0019】
電力変換装置100は、制御装置30を備えている。制御装置30が提供する各機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0020】
図2は、本実施形態に係る制御装置30の機能を説明する機能ブロック図である。制御装置30は、ピーク電流モード制御により第5スイッチSW5をオフ状態又はオン状態に操作する。本実施形態では、制御装置30は、波形生成部34と、乗算器35と、絶対値算出部36と、補正値設定部40と、電流制御部50と、補正部20とを備えている。本実施形態では、波形生成部34と、乗算器35と、絶対値算出部36とが指令値算出部に相当する。
【0021】
波形生成部34は、交流電源200の半周期(T/2)における電圧変化を示す基準波形sinωtを算出する。例えば、波形生成部34は、交流電圧センサ33により検出された交流電圧Vacが0となるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出し、交流電圧Vacが、ゼロクロスタイミングから次のゼロクロスタイミングまで変化する期間を、交流電源200の半周期(T/2)として設定する。そして、波形生成部34は、周期Tから交流電源200の角速度ω(=2π×(1/T))を算出する。波形生成部34は、振幅が1の正弦波信号の角速度を、算出した角速度ωに設定することにより、交流電圧Vacと同位相となる基準波形sinωtを算出する。
【0022】
乗算器35は、振幅指令値Ia*と基準波形sinωtとを乗算する。振幅指令値Ia*は、リアクトル13に流れるリアクトル電流の振幅を定める指令値であり、例えば、出力電圧である交流電圧Vacの指令値に基づいて定められる。絶対値算出部36は、乗算器35からの出力値の絶対値|Ia*×sinωt|を指令電流IL*として設定する。本実施形態では、指令電流IL*がリアクトル電流の指令値に相当する。
【0023】
補正値設定部40は、電流検出値ILrを補正する電流補正値Icを設定する。電流補正値Icは交流電流Iacの歪みを抑制するための補正値である。補正部20は、電流補正値Icにより電流検出値ILrを補正し、補正後の値を電流制御部50に出力する。以下では、補正部20による補正後の検出値を補正後検出値ILarと称す。
【0024】
電流制御部50は、補正後検出値ILarと指令電流IL*とに基づいて、第5スイッチSW5を操作する第5ゲート信号GS5を出力する。本実施形態では、電流制御部50は周知のピーク電流モード制御により第5ゲート信号GS5を出力する。
【0025】
電流制御部50は、DA変換器351と、コンパレータ352と、加算器353と、RSフリップフロップ357と、スロープ量設定部51と、を備えている。指令電流IL*は、DA変換器351によりデジタル値からアナログ値に変換される。アナログ値に変換された指令電流IL*は、コンパレータ352の反転入力端子に入力される。加算器353は、補正後検出値ILarと、スロープ量設定部51により設定されたスロープ補償信号Slopeとを加算する。加算器353からの出力は、コンパレータ352の非反転入力端子に入力される。なお、スロープ補償信号Slopeは、リアクトル13に流れる電流の変動に伴う発振を抑制するものである。
【0026】
コンパレータ352は、指令電流IL*とスロープ補償後の補正後検出値ILarとを比較し、スロープ補償後の補正後検出値ILarが指令電流IL*より小さい期間において、ローレベルの信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。また、コンパレータ352は、スロープ補償後の補正後検出値ILarが指令電流IL*より大きい期間において、ハイレベルの信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。更に、RSフリップフロップ357のS端子には、クロック信号が入力される。クロック信号がハイレベルに切り替えられてから、クロック信号が次回ハイレベルに切り替えられるまでの期間が、スイッチSWの1スイッチング周期Tswとなる。
【0027】
電流制御部50の出力端子は、第5スイッチSW5のゲートに接続されており、第5ゲート信号GS5を出力する。また、電流制御部50の出力端子は、反転器52を介して第6スイッチSW6のゲートに接続されている。そのため、反転器52を介して第6スイッチSW6のゲートに出力される信号が、第6スイッチSW6を操作する第6ゲート信号GS6となる。
【0028】
切替部55は、交流電圧Vacを正極性と判定した場合に、出力信号をハイレベルにし、交流電圧Vacを負極性と判定した場合に、出力信号をローレベルにする。切替部55は、第1,第4スイッチSW1,SW4の各ゲートに接続されており、第1,第4スイッチSW1,SW4を操作する第1,第4ゲート信号GS1,GS4を出力する。また、切替部55は、反転器53を介して第2,第3スイッチSW2,SW3の各ゲートに接続されており、反転器53を介して第2,第3スイッチSW2,SW3を操作する第2,第3ゲート信号GS2,GS3を出力する。第1,第4ゲート信号GS1,GS4は、第2,第3ゲート信号GS2,GS3を反転させた値となる。
【0029】
図3(a)は、交流電圧Vacの推移を示し、図3(b)は、指令電流IL*の推移を示す。図3(c)は、リアクトル電流の平均値Iaveの推移を示す。図3では、力率を1とする場合の各値の推移を示している。
【0030】
図3(a),(b)に示すように、指令電流IL*は、交流電圧Vacの変化に同期して正弦波の正の半波が繰り返されるように推移する。また、図3(c)に示すように、歪みのないリアクトル電流では、平均値Iaveが指令電流IL*と同様、交流電圧Vacの変化に同期して正弦波の正の半波が繰り返されるように推移する。
【0031】
一方、実際には、リアクトル電流に歪みが生じる場合があり、この場合、平均値Iaveが図3(c)に示した波形とならない場合がある。ピーク電流モード制御では、リアクトル電流が適正な値とならないことにより交流電流Iacに歪みが生じる。具体的には、DC・AC変換器10が直流電圧を交流電圧に変換する場合、歪みが生じているリアクトル電流の平均値Iaveと指令電流IL*との差を示す乖離幅は、ゼロクロスタイミング(t1,t3,t5)付近において最も小さくなる。また、乖離幅は交流電圧Vacのピークタイミング(t2,t4)付近において最も大きくなる。そこで、制御装置30は、乖離幅の変化傾向に応じて、第5スイッチSW5の1スイッチング周期に対するオン操作期間の比を示すデューティ比(Ton/Tsw)を設定することで、リアクトル電流の歪みを抑制している。
【0032】
具体的には、ピーク電流モード制御では、第5スイッチSW5のデューティ比は、1スイッチング周期Tswにおいてスロープ補償後の電流検出値ILrが指令電流IL*に達するまでの時間により設定される。そのため、指令電流IL*及び電流検出値ILrのいずれかを調整することにより、第5スイッチSW5のデューティ比を調整でき、リアクトル電流の歪みを抑制することができる。ここで、指令電流IL*に補正値を加算することにより第5スイッチSW5のデューティ比を調整する場合、補正後の指令電流IL*が入力されるコンパレータ352のフルレンジが補正値による増加分だけ大きくなることが想定される。コンパレータ352のフルレンジが大きくなることにより、例えば、コンパレータ352の分解能が低下し、指令電流IL*のS/N比が低下することも懸念される。
【0033】
一方、指令電流IL*に補正値を加算するのではなく、電流検出値ILrから補正値を減算することでも、デューティ比を調整することができる。この場合、指令電流IL*は増加せず、また、電流検出値ILrも増加しないため、コンパレータ352のフルスケールの増加を抑制することができる。そこで、本実施形態では、補正部20は、コンパレータ352のフルスケールの増加を抑制すべく、電流検出値ILrから電流補正値Icを減算した値をコンパレータ352に出力している。
【0034】
次に、本実施形態に係る補正値設定部40の構成について説明する。図4に示す補正値設定部40は、高調波成分生成部41と、係数設定部42と、積算部43と、を備えている。
【0035】
高調波成分生成部41は、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとに基づいて、高調波補正値Ihを設定する。図5(a)は交流電圧Vacの推移を示し、図5(b)は高調波補正値Ihの推移を示している。本実施形態では、交流電圧Vacが正極性となる第1期間P1及び交流電圧Vacが負極性となる第2期間P2それぞれで極大値を1つ取り、第1期間P1での極大値となるタイミングと第2期間P2での極大値となるタイミングとの間に極小値を1つ取るように高調波補正値Ihを設定している。具体的には、高調波成分生成部41は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングにおいて、電流検出値ILrから減算する高調波補正値Ihが最も小さな値となり、交流電圧Vacのピークタイミングにおいて、高調波補正値Ihが最も大きな値となるように高調波補正値Ihを設定する。
【0036】
本実施形態では、高調波成分生成部41は、高調波補正値Ihを0以上の値に設定している。また、電流検出値ILrから電流補正値Icを引いた値が負の値となると、コンパレータ352のフルスケールを負の範囲まで設定しておく必要が生じる。そこで、高調波成分生成部41は、高調波補正値Ihが交流電圧Vacに応じて想定される電流検出値ILrよりも小さな値となるように、高調波補正値Ihの値を設定している。
【0037】
本実施形態では、制御装置30の記憶部には、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとに対応付けられて高調波補正値Ihが規定された情報である補正値マップが記憶されている。そのため、高調波成分生成部41は、補正値マップを参照することにより交流電圧Vac及び直流電圧Vdcに応じた高調波補正値Ihを設定することができる。なお、記憶部には、各国の商用電源の実効値毎に補正値マップを記憶しておいてもよい。この場合、高調波成分生成部41は、交流電圧Vacの最大値に応じて実効値を判定し、判定した実効値に応じた補正値マップを参照することができる。
【0038】
図4に戻り、係数設定部42は、振幅指令値Ia*と交流電圧Vacとに基づいて、高調波補正値Ihに乗算する係数βを設定する。本実施形態では、係数βを、0より大きく、1以下の値に定めている。振幅指令値Ia*が小さい場合、リアクトル13に断続的に電流が流れる不連続モードとなるため、電流補正値Icにより補正すべき電流検出値ILrは小さくなる。そのため、係数設定部42は、振幅指令値Ia*が閾値TH1より小さい場合、振幅指令値Ia*が小さいほど係数βを小さな値に設定し、閾値TH1以上の場合、係数βを1に設定する。上記構成により、不連続モード時に、電流検出値ILrが過剰に減算されることにより、リアクトル13に過剰に電流が流れるのを抑制することができる。
【0039】
制御装置30は、メモリ等の記憶部を備え、記憶部には、交流電圧Vac及び各振幅指令値Ia*に対応付けられて係数βが規定された情報である制限値マップが記憶されている。例えば、制限値マップは、各国の商用電源の実効値毎に記憶部に記憶されている。例えば、係数設定部42は、交流電圧Vacの最大値に応じて実効値Vrmsを判定し、判定した実効値Vrms及び振幅指令値Ia*に応じた係数βを設定することができる。
【0040】
積算部43は、高調波補正値Ihに係数βを乗算した値を電流補正値Icとして出力する。そのため、振幅指令値Ia*が閾値TH1よりも小さい範囲において、振幅指令値Ia*が小さな値であるほど電流補正値Icが小さな値に設定される。振幅指令値Ia*が閾値TH1以上となる場合、電流補正値Icは高調波補正値Ihと同じ値となる。
【0041】
次に、振幅指令値Ia*と高調波補正値Ihとの対応関係を示す補正値マップの作成方法について図6を用いて説明する。
【0042】
図6は、乖離幅Δiを説明する図である。本実施形態では、乖離幅Δiを、リアクトル電流の平均値Iaveと指令電流IL*との差として定義している。そのため、1スイッチング周期Tswにおけるリアクトル電流の最大増加分をΔILとすると、乖離幅Δiは、平均値Iaveと最大増加分ΔILとの差(=ΔIL/2)に、スロープ補償信号Slopeの最大増加分ΔSlopeを加えた値となる。また、本実施形態では、乖離幅Δiを高調波補正値Ihとして設定しており、高調波補正値Ihは、リアクトル電流の増加時の傾きmbと、スロープ補償信号Slopeの傾きを示すスロープ量msとを用いた下記式(1)により算出される。下記式(1)において、Dは第5スイッチSW5のデューティ比である。
【0043】
Δi=Ih=mb×D×Tsw/2+ms×D×Tsw … (1)
リアクトル電流の増加時の傾きmbは、「mb=(Vdc−|Vac|)/L」の関係があり、この関係性を上記式(1)に代入することにより、高調波補正値Ihは下記式(2)により算出される。
【0044】
【数1】
電力変換装置100が直流電圧を交流電圧に変換する場合、デューティ比Dは下記式(3)により算出される。
【0045】
【数2】
本実施形態では、上記式(2),(3)を用いて、様々な交流電圧Vacと直流電圧Vdcとに応じた高調波補正値Ihを算出する。そして、算出した高調波補正値Ihを、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとの組合せ毎に対応付けることにより補正値マップを作成する。
【0046】
次に、図7を用いて、ピーク電流モード制御を用いた第5スイッチSW5の操作手順を説明する。図7に示す処理は、制御装置30により所定周期で繰り返し実施される。
【0047】
ステップS11では、電流センサ32により検出された電流検出値ILrを取得する。ステップS11が検出値取得部に相当する。ステップS12では、交流電圧センサ33により検出された交流電圧Vacを取得する。ステップS12が交流電圧取得部に相当する。
【0048】
ステップS13では、振幅指令値Ia*に交流電圧Vacの基準波形sinωtを乗算し、その乗算値の絶対値を指令電流IL*として算出する。ステップS13が指令値算出部に相当する。
【0049】
ステップS14では、交流電圧Vac及び直流電圧Vdcに基づいて、先の図4図5に示したように、電流補正値Icを設定する。具体的には、交流電圧Vac及び直流電圧Vdcに基づいて、高調波補正値Ihを設定し、設定した高調波補正値Ihに係数βを積算することにより電流補正値Icを算出する。
【0050】
ステップS15では、電流検出値ILrからステップS14で設定した電流補正値Icを減算することにより、補正後検出値ILarを算出する。
【0051】
ステップS16では、図2を用いて説明したように、補正後検出値ILarに基づいてピーク電流モード制御を実施する場合の第5,第6ゲート信号GS5,GS6を出力する。これにより、リアクトル電流がステップS13で設定した指令電流IL*に制御される。その結果、リアクトル13には交流電流Iacの歪みが抑制されたリアクトル電流が流れる。ステップS16の処理が終了すると、図7の処理を一旦終了する。
【0052】
次に、図8及び図9を用いて、本実施形態の作用効果を説明する。
【0053】
図8(a)は交流電圧Vac及び直流電圧Vdcの推移を示し、図8(b)は、第1,第4ゲート信号GS1,GS4の推移を示す。図8(c)は、第2,第3ゲート信号GS2,GS3の推移を示す。図8(d)は、第5ゲート信号GS5の推移を示し、図8(e)は第6ゲート信号GS6の推移を示す。図8(f)は電流補正値Icの推移を示し、図8(g)は指令電流IL*の推移を示す。図8(h)は、リアクトル電流ILの推移を示し、図8(i)は交流電流Iacの推移を示す。なお、図8(a)において、t11,t13,t15は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを示し、t12,t14は、交流電圧Vacが正,負のピーク値となるピークタイミングを示す。
【0054】
交流電圧Vacが正極性となる第1期間P1では、第1,第4ゲート信号GS1,GS4がハイレベルとなることにより、第1,第4スイッチSW1,SW4がオン状態となる。第2,第3ゲート信号GS2,GS3がローレベルとなることにより、第2,第3スイッチSW2,SW3がオフ状態となる。そのため、第1期間P1において、電流制御部50が実施するピーク電流モード制御により、第5ゲート信号GS5のデューティ比に応じたリアクトル電流ILが流れる。また、第1期間P1では、電力変換装置100には、正極性の交流電流Iacが流れる。
【0055】
交流電圧Vacが負極性となる第2期間P2では、第1,第4ゲート信号GS1,GS4がローレベルとなることにより、第1,第4スイッチSW1,SW4がオフ状態となる。また、第2,第3ゲート信号GS2,GS3がハイレベルとなることにより、第2,第3スイッチSW2,SW3がオン状態となる。そのため、第2期間P2において、電流制御部50が実施するピーク電流モード制御により第5ゲート信号GS5のデューティ比に応じたリアクトル電流ILが流れる。また、第2期間P2では、電力変換装置100には、負極性の交流電流Iacが流れる。
【0056】
第1,第2期間P1,P2において、電流補正値Icは、ゼロクロスタイミング(t11,t13,t15)で極小値を取り、ピークタイミング(t12,t14)で極大値を取るように変化する。即ち、乖離幅Δiが最も小さくなるゼロクロスタイミングでは、電流補正値Icが他のタイミングでの電流補正値Icよりも小さくなる。また、乖離幅Δiが最も大きくなるピークタイミング付近では、電流補正値Icが他のタイミングでの電流補正値Icよりも大きくなる。そのため、乖離幅の変化傾向に応じて、第5スイッチSW5のデューティ比が変化し、交流電流Iacの歪みが好適に抑制される。
【0057】
図9(a)は、本実施形態に係るコンパレータ352に入力される指令電流IL*の推移を示し、図9(b)は、比較例に係るコンパレータに入力される指令電流IL*の推移を示す。
【0058】
比較例では、コンパレータには、指令電流IL*に補正値が加算された値が入力される。そのため、図9(b)に示すように、コンパレータのフルスケールは、補正値による増加分を考慮した範囲で設定されている。
【0059】
これに対して、本実施形態では、コンパレータ352には、電流検出値ILrから電流補正値Icを減算した値が入力される。そのため、図9(a)に示すように、コンパレータ352のフルスケールは、比較例と比べて小さな値に設定されている。
【0060】
入力信号に対するコンパレータ352のフルスケールの増加を抑制することにより、出力電圧の範囲(例えば、0V〜5V)に対応する指令電流IL*の範囲が小さくなるため、比較例と比べてコンパレータ352の分解能が高い値となる。
【0061】
図10(a)は、本実施形態において、ランダム雑音を重畳した電流検出値ILrを用いてピーク電流モードを実施した場合の交流電流Iacの推移を示す図である。図10(b)は、比較例において、ランダム雑音を重畳した電流検出値ILrを用いてピーク電流モード制御を実施した場合の交流電流Iacの推移を示す図である。図10(a),(b)共に、交流電流Iacは交流電圧Vacの変化に同期して正弦波状に変化している。
【0062】
比較例では、交流電流Iacの電流歪み率THDは2.3パーセントであった。これに対して、本実施形態では、交流電流Iacの電流歪み率THDは、1.4パーセントであった。すなわち、本実施形態では、コンパレータ352の分解能が比較例と比べて高くなっているため、交流電流Iacの電流歪み率THDが比較例と比べて低減されている。
【0063】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏する。
【0064】
・制御装置30は、電流検出値ILrから電流補正値Icを減算することにより補正後検出値ILarを算出する。そして、制御装置30は、補正後検出値ILarを、指令電流IL*に制御すべく、ピーク電流モード制御により第5スイッチSW5を操作する。この場合、交流電流Iacの歪みを抑制しつつ、指令電流IL*に対するコンパレータ352のフルスケールの増加を抑制することができる。
【0065】
・電力変換装置100が直流電圧を交流電圧に変換する場合、交流電流の歪みの要因となる乖離幅は交流電圧のゼロクロスタイミングで最も小さくなり、ピークタイミングで最も大きくなる傾向がある。そこで、制御装置30は、電流補正値Icを、交流電圧の1周期において正極性及び負極性となる第1,第2期間P1,P2それぞれで極大値を1つ取り、かつ第1期間P1での極大値となるタイミングと、第2期間P2での極大値となるタイミングとの間で極小値を1つ取るように設定する。この場合、電流検出値ILrから減算する電流補正値Icが、ゼロクロスタイミングで最も小さな値となり、ピークタイミングで最も大きな値となる。その結果、乖離幅の変化傾向に応じて第5スイッチSW5のデューティ比が設定されるため、交流電流Iacの歪みが好適に抑制される。
【0066】
<第1実施形態の変形例1>
電流センサ32を、第5スイッチSW5のソースと、第6スイッチSW6のドレインとの間の内、第1接続点K1よりも第5スイッチSW5側に設けてもよい。この場合、第5スイッチSW5に流れる電流がリアクトル電流の電流検出値ILrとして取得される。
【0067】
<第1実施形態の変形例2>
制御装置30は、第6スイッチSW6が常時オフ状態となるように、第6ゲート信号GS6をローレベルに維持してもよい。
【0068】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0069】
スロープ量msを一定とした状態で、電流検出値ILrから電流補正値Icを減算するだけでは、高調波補正値Ihが交流電流Iacの歪みを好適に低減することができる値とならない場合がある。例えば、ゼロクロスタイミングの電流検出値ILrは他のタイミングの電流検出値ILrよりも小さな値となるため、電流補正値Icを電流検出値ILrよりも小さな値に設定すると、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングでの電流補正値Icは他のタイミングでの電流補正値Icよりも小さくなる。この場合、ゼロクロスタイミングにおいて、交流電流Icの歪みを好適に低減できるデューティ比を設定できない場合がある。そこで、本実施形態では、スロープ量設定部51は、補正後検出値ILarを補償するスロープ補償信号Slopeの傾きであるスロープ量msを可変設定する。そして、補正値設定部40は、設定されたスロープ量msと、交流電圧Vacとに基づいて高調波補正値Ihを設定する。
【0070】
図11は、第2実施形態に係る制御装置30の機能ブロック図である。本実施形態では、スロープ量設定部51は、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとに基づいてスロープ量msを設定する。
【0071】
補正値設定部40には、交流電圧Vac及び直流電圧Vdcに加えて、スロープ量設定部51により設定されたスロープ量msが入力される。補正値設定部40は、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとスロープ量msとに基づいて高調波補正値Ihを設定する。そして、高調波補正値Ihに係数βを積算した値を電流補正値Icとして出力する。本実施形態では、制御装置30は、交流電圧Vacと、スロープ量msと、高調波補正値Ihとの関係を示す補正値マップを記憶部に記憶している。例えば、上記式(2),(3)を用いて、様々な交流電圧Vac、直流電圧Vdc及びスロープ量msに応じた高調波補正値Ihを算出する。そして、算出した高調波補正値Ihを、交流電圧Vacとスロープ量msとの組合せ毎に対応付けることにより補正値マップを作成する。
【0072】
以上説明した本実施形態では、制御装置30は、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとに基づいてスロープ量msを設定する。そして、制御装置30は、設定したスロープ量msに基づいて、電流補正値Icを設定する。この場合、交流電圧Vacに応じて、スロープ量msと電流補正値Icとを調整することができるため、制御装置30のフルスケールの低減と、交流電流Iacの歪みの低減とを好適に両立させることができる。
【0073】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0074】
本実施形態では、第1実施形態に示すDC・AC変換器10と比べて、回路トポロジーが異なる。具体的には、本実施形態に係るDC・AC変換器10は、第1実施形態と異なり、ハーフブリッジ回路を備えていない。
【0075】
図12は、第3実施形態に係る電力変換装置100を示す図である。第1直流端子TD1とフルブリッジ回路12aとは、第1配線LP1を介して接続されている。第2直流端子TD2とフルブリッジ回路12aとは、第2配線LP2を介して接続されている。
【0076】
フルブリッジ回路12aは、第1〜第4スイッチSW11〜SW14を備えている。第1〜第4スイッチSW11〜SW14は、第1実施形態で示した第1〜第4スイッチSW1〜SW4に相当するためその説明を省略する。
【0077】
第3スイッチSW13と第4スイッチSW14との第4接続点K4は、第6配線LP6の第1端に接続されており、第6配線LP6の第2端は第2交流端子TA2に接続されている。第1スイッチSW11と第2スイッチSW12との第5接続点K5は、第5配線LP5の第1端に接続されており、第5配線LP5の第2端は第1交流端子TA1に接続されている。第6配線LP6の一部には、リアクトル13が設けられている。
【0078】
本実施形態では、フルブリッジ回路12aには、第1期間P1におけるリアクトル電流の電流検出値を第1検出値IL1rとして検出する第1電流センサ61と、第2期間P2におけるリアクトル電流ILの電流検出値を第2検出値IL2rとして検出する第2電流センサ62とが設けられている。第1電流センサ61は、第3,第4スイッチSW13,SW14のソースとドレインとを接続する配線において、第4接続点K4よりも第4スイッチSW14のドレイン側に設けられている。第1電流センサ61は、第4スイッチSW14に流れる電流を第1検出値IL1rとして検出する。第2電流センサ62は、第1,第2スイッチSW11,SW12のソースとドレインとを接続する配線において、第5接続点K5よりも第2スイッチSW12のドレイン側に設けられている。第2電流センサ62は、第2スイッチSW12に流れる電流を第2検出値IL2rとして検出する。
【0079】
図13は、第3実施形態に係る制御装置30の機能を示す機能ブロック図である。本実施形態においても、制御装置30は、ピーク電流モード制御によりDC・AC変換器10を制御する。
【0080】
制御装置30は、第1補正部20aと、第2補正部20bと、第1電流制御部50aと、第2電流制御部50bとを備えている。第1補正部20aは、第1検出値IL1rから電流補正値Icを減算することにより第1補正後検出値IL1arを算出する。第2補正部20bは、第2検出値IL2rから電流補正値Icを減算することにより第2補正後検出値IL2arを算出する。
【0081】
第1電流制御部50aは、第1期間P1において第1補正後検出値IL1arを指令電流IL*に制御すべく、ピーク電流モード制御により第3,第4スイッチSW13,SW14を操作する。第2電流制御部50bは、第2期間P2において第2補正後検出値IL2arを指令電流IL*に制御すべく、ピーク電流モード制御により第1,第2スイッチSW11,SW12を操作する。本実施形態では、第1,第2電流制御部50a,50bは、第1,第2補正部20a,20bから出力される第1,第2補正後検出値IL1ar,IL2arの下限値を制限するリミッタ354を備えている。第1,第2電流制御部50a,50bは、リミッタ354以外の構成が第1実施形態の電流制御部50と同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
第1電流制御部50aの出力は、第1AND回路382の一方の入力端子に接続されており、第2電流制御部50bの出力は、第2AND回路383の一方の入力端子に接続されている。切替部55の出力端子は、第2AND回路383の他方の入力端子と、反転器360の入力端子とに接続されている。反転器360の出力端子は、第1AND回路382の他方の入力端子に接続されている。
【0083】
本実施形態では、切替部55は、交流電圧Vacを正極性と判定した場合に、ローレベルの出力信号を出力し、交流電圧Vacを負極性と判定した場合に、ハイレベルの出力信号を出力する。
【0084】
第1AND回路382には、第1電流制御部50aからの出力信号と、切替部55からの出力信号とが入力される。第1AND回路382は、第4スイッチSW14のゲートに接続されており、第4ゲート信号GS14を出力する。また、第1AND回路382の出力端子は、反転器361を介して第3スイッチSW13のゲートに接続されている。第1AND回路382から反転器361を介して第3スイッチSW13のゲートに出力される信号が、第3スイッチSW13の開閉を操作する第3ゲート信号GS13となる。第3ゲート信号GS13は、第4ゲート信号GS14を反転させたものとなる。
【0085】
第2AND回路383には、第2電流制御部50bからの出力信号と、切替部55からの出力信号とが入力される。第2AND回路383は、第2スイッチSW12のゲートに接続されており、第2ゲート信号GS12を出力する。また、第2AND回路383の出力端子は、反転器362を介して第1スイッチSW11のゲートに接続されている。第2AND回路383から反転器362を介して第1スイッチSW11のゲートに出力される信号が、第1スイッチSW11の開閉を操作する第1ゲート信号GS11となる。第1ゲート信号GS11は、第2ゲート信号GS12を反転させたものとなる。
【0086】
第1AND回路382に、切替部55からのハイレベルの出力信号と第1電流制御部50aからのハイレベルの出力信号とが入力されることで、第4ゲート信号GS14がハイレベルとなり、第3ゲート信号GS13がローレベルとなる。また、第2AND回路383に、切替部55からのハイレベルの出力信号と第2電流制御部50bからのハイレベルの出力信号とが入力されることで、第2ゲート信号GS12がハイレベルとなり、第1ゲート信号GS11がローレベルとなる。
【0087】
図14は、第3実施形態に係るDC・AC変換器10のタイミングチャートである。図14(a)は、直流電圧Vdc及び交流電圧Vacの推移を示す。図14(b)は、第1ゲート信号GS11の推移を示し、図14(c)は、第2ゲート信号GS12の推移を示す。図14(d)は、第3ゲート信号GS13の推移を示し、図14(e)は、第4ゲート信号GS14の推移を示す。図14(f)は、電流補正値Icの推移を示し、図14(g)は、指令電流IL*の推移を示す。図14(h)はリアクトル電流ILの推移を示し、図14(i)は交流電流Iacの推移を示す。
【0088】
交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、第1ゲート信号GS11がハイレベルとなることにより第1スイッチSW11がオン状態となり、第2ゲート信号GS12がローレベルとなることにより第2スイッチSW12がオフ状態となる。第1期間P1では、リアクトル電流ILが第1補正後検出値IL1arとして検出され、第1検出値IL1rから電流補正値Icが減算された値が第1補正後検出値IL1arとなる。第1電流制御部50aは、第1補正後検出値IL1arを指令電流IL*に制御すべく、第4ゲート信号GS14をハイレベルとローレベルとに変化させる。なお、第3ゲート信号GS13は第4ゲート信号GS14を反転させた値となるように制御される。
【0089】
第1期間P1では、電流補正値Icはゼロクロスタイミング(t21,t23)において極小値を取り、ピークタイミング(t22)において極大値を取る。そのため、電流補正値Icによる第1検出値IL1rの減算量は、ピークタイミングにおいて最も小さな値となり、ゼロクロスタイミングにおいて最も大きな値となる。その結果、第1電流制御部50aにより設定される第4スイッチSW14のデューティ比は、乖離幅の変化傾向に応じて設定される。
【0090】
交流電圧Vacが負となる第2期間P2では、フルブリッジ回路12では、第3ゲート信号GS13がハイレベルとなることにより第3スイッチSW13がオン状態となり、第4ゲート信号GS14がローレベルとなることにより第4スイッチSW14がオフ状態となる。第2期間P2では、リアクトル電流ILが第2補正後検出値IL2arとして検出され、第2検出値IL2rから電流補正値Icが減算された値が、第2補正後検出値IL2arとなる。第2電流制御部50bは、第2補正後検出値IL2arを指令電流IL*に制御すべく、第2ゲート信号GS12をハイレベルとローレベルとに変化させる。なお、第1ゲート信号GS11は第2ゲート信号GS12を反転させた値となるように制御される。
【0091】
第2期間P2では、電流補正値Icはゼロクロスタイミング(t25)において極小値を取り、ピークタイミング(t24)において極大値を取る。そのため、第2検出値IL2rから減算する電流補正値Icは、ピークタイミングにおいて最も大きな値となり、ゼロクロスタイミングにおいて最も小さな値となる。その結果、第2電流制御部50bにより設定される第2スイッチSW12のデューティ比は、乖離幅の変化傾向に応じて設定される。
【0092】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0093】
<第3実施形態の変形例1>
図15は、第3実施形態の変形例1に係る電力変換装置100の構成図である。本実施形態では、第1電流センサ61は、第1スイッチSW11のドレイン側に設けられており、第1スイッチSW11に流れる電流を第1検出値IL1rとして検出する。また、第2電流センサ62は、第1,第2スイッチSW11,SW12間のソースとドレインとを接続する配線において、第5接続点K5よりも第2スイッチSW12側に設けられている。第2電流センサ62は、第2スイッチSW12に流れる電流を第2検出値IL2rとして検出する。
【0094】
本実施形態においても、交流電圧Vacが正極性となる第1期間P1では、第1電流センサ61により検出された第1検出値IL1rから電流補正値Icを減算することにより、第1補正後検出値IL1arが算出される。そして、第1期間P1では、第1補正後検出値IL1arを用いたピーク電流モード制御により、第1スイッチSW11のデューティ比が設定される。交流電圧Vacが負極性となる第2期間P2では、第2電流センサ62により検出された第2検出値IL2rから電流補正値Icを減算することにより、第2補正後検出値IL2arが算出される。そして、第2期間P2では、第2補正後検出値IL2arを用いたピーク電流モード制御により、第2スイッチSW12のデューティ比が設定される。
【0095】
以上説明した本実施形態においても第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0096】
<第3実施形態の変形例2>
第1電流センサ61が、第1スイッチSW11のドレイン側に設けられ、第2電流センサ62が、第3スイッチSW13のドレイン側に設けられていてもよい。この場合、第1電流センサ61は、第1スイッチSW11に流れる電流を第1検出値IL1rとして検出する。また、第2電流センサ62は、第3スイッチSW13に流れる電流を第2検出値IL2rとして検出する。
【0097】
以上説明した本実施形態においても第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0098】
<第3実施形態の変形例3>
第3実施形態において、第1期間P1で、第3スイッチSW13が常時オフ状態とされ、第2期間P2で、第1スイッチSW11が常時オフ状態に維持されてもよい。この場合、図14で示したタイミングチャートにおいて、制御装置30は、第1期間P1での第3ゲート信号GS13をローレベルに維持し、第2期間P2での第1ゲート信号GS11をローレベルに維持すればよい。
【0099】
<第4実施形態>
第4実施形態では、第3実施形態と異なる構成を中心に説明する。なお、同一の符号を付した箇所は同一の部位を示しその説明は繰り返さない。
【0100】
図16は、第4実施形態に係る電力変換装置100の構成図である。本実施形態に係るDC・AC変換器10では、第1,第2交流端子TA1,TA2と、フルブリッジ回路12bとの間に、第5スイッチSW25と、第6スイッチSW26とが接続されている。具体的には、第5スイッチSW25のソースに、第6スイッチSW26のドレインが接続されている。また、第5スイッチSW25のドレインが第5配線LP5のうち、リアクトル13とフルブリッジ回路12bとの間に接続され、第6スイッチSW26のドレインが第6配線LP6に接続されている。第5,第6スイッチSW25,SW26それぞれは、逆並列接続された寄生ダイオードを備えている。なお、第1〜第4スイッチSW21〜SW24は、第3実施形態の第1スイッチSW11〜SW14に相当するため説明を省略する。
【0101】
図17は、第4実施形態に係る制御装置30の機能を示す機能ブロック図である。本実施形態においても、制御装置30は、ピーク電流モード制御により、DC・AC変換器10を制御する。
【0102】
第1補正後検出値IL1arは、第1補正部20aにより電流補正値Icが減算された後、第1電流制御部50aに入力される。第2補正後検出値IL2arは、第2補正部20bにより電流補正値Icが減算された後、第2電流制御部50bに入力される。
【0103】
切替部55の出力端子は、第2AND回路383の入力端子と、第6スイッチSW26のゲートと、反転器360の入力端子とに接続されている。反転器360の出力端子側は、第1AND回路382の入力端子と第5スイッチSW25のゲートとに接続されている。
【0104】
第1AND回路382の出力端子は、第1,第4スイッチSW21,SW24のゲートに接続されている。第2AND回路383の出力側は、第2,第3スイッチSW22,SW23のゲートに接続されている。
【0105】
図18は、第4実施形態に係るDC・AC変換器10のタイミングチャートである。図18(a)は直流電圧Vdc及び交流電圧Vacの推移を示す。図18(b)は第1,第4ゲート信号GS21,GS24の推移を示し、図18(c)は第2,第3ゲート信号GS22,GS23の推移を示す。図18(d)は第5ゲート信号GS25の推移を示し、図18(e)は第6ゲート信号GS26の推移を示す。図18(f)は電流補正値Icの推移を示し、図18(g)は指令電流IL*の推移を示す。図18(h)は電流検出値ILrの推移を示し、図18(i)は交流電流Iacの推移を示す。
【0106】
交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、第6ゲート信号GS26がハイレベルとなることにより第6スイッチSW26がオン状態となり、第5ゲート信号GS25がローレベルとなることにより第5スイッチSW25がオフ状態となる。第1期間P1では、第1電流制御部50aは、第1補正後検出値IL1arを指令電流IL*に制御すべく、第1,4ゲート信号GS21,GS24をハイレベル又はローレベルに変化させる。
【0107】
本実施形態においても、第1期間P1では、ゼロクロスタイミング(t31,t33)において電流補正値Icが極小値を取り、ピークタイミング(t32)において電流補正値Icが極大値を取る。そのため、第1電流制御部50aにより設定される第1,第4スイッチSW21,SW24のデューティ比は、乖離幅の変化傾向に応じた値に設定される。
【0108】
交流電圧Vacが負となる第2期間P2では、第6ゲート信号GS26がローレベルとなることで第6スイッチSW26がオフ状態となり、第5ゲート信号GS25がハイレベルとなることで第5スイッチSW25がオン状態となる。第2期間P2では、第2電流制御部50bは、第2補正後検出値IL2arを指令電流IL*に制御すべく、第2,3ゲート信号GS21,GS23をハイレベル又はローレベルに変化させる。
【0109】
本実施形態においても、第2期間P2では、ゼロクロスタイミング(t35)において電流補正値Icが極小値を取り、ピークタイミング(t34)において電流補正値Icが極大値を取る。そのため、第2電流制御部50bにより設定される第2,第3スイッチSW22,SW23のデューティ比は、乖離幅の変化傾向に応じた値に設定される。
【0110】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0111】
<第5実施形態>
第5実施形態では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。なお、同一の符号を付した箇所は同一の部位を示しその説明は繰り返さない。
【0112】
本実施形態では、図19に示す電力変換装置100は、交流電圧を直流電圧に変換するAC・DC変換器80を備えている。AC・DC変換器80は、フルブリッジ回路12cと、ハーフブリッジ回路15aとを備えている。
【0113】
フルブリッジ回路12cは、第1〜第4ダイオードD1〜D4により構成されている。第1ダイオードD1のアノードと第2ダイオードD2のカソードとが接続され、第3ダイオードD3のアノードと、第4ダイオードD4のカソードとが接続されている。第1,第3ダイオードD1,D3の各カソードが第3配線LP3の第1端に接続され、第2,第4ダイオードD2,D4の各アノードが第4配線LP4の第1端に接続されている。
【0114】
フルブリッジ回路12cにおいて、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2との第1接続点K11は、第5配線LP5の第1端に接続されており、第5配線LP5の第2端は第1交流端子TA1に接続されている。第3ダイオードD3と第4ダイオードD4との第2接続点K12は、第6配線LP6の第1端に接続されており、第6配線LP6の第2端は第2交流端子TA2に接続されている。
【0115】
ハーフブリッジ回路15aは、第5ダイオードD5とスイッチSW31とを備えている。スイッチSW31は、電圧駆動型のスイッチであり本実施形態ではnチャネルMOSFETである。第5ダイオードD5のアノードと、スイッチSW31のドレインとが接続されている。第5ダイオードD5のカソードが第1配線LP1の第1端に接続され、第1配線LP1の第2端が第1直流端子TD1に接続されている。スイッチSW31のソースが第2配線LP2の第1端に接続され、第2配線LP2の第2端が第2直流端子TD2に接続されている。スイッチSW31は、逆並列接続された寄生ダイオードを備えている。
【0116】
第5ダイオードD5とスイッチSW31との第3接続点K13は、第3配線LP3の第2端に接続されている。第3配線LP3にはリアクトル13が設けられている。また、スイッチSWのソースは、第4配線LP4の第2端に接続されている。
【0117】
図20は、制御装置30の機能を説明する機能ブロック図である。本実施形態においても、制御装置30は、電流検出値ILrから電流補正値Icを減算して補正後検出値ILarを算出する補正部20を備えている。
【0118】
電流制御部50は、補正後検出値ILarと、指令電流IL*とを用いたピーク電流モード制御により、スイッチSW31を操作するゲート信号GS31を出力する。
【0119】
電流制御部50の出力端子は、スイッチSW31のゲートに接続されている。そのため、電流制御部50からスイッチSW31のゲートに出力される信号がゲート信号GS31となる。
【0120】
次に、電力変換装置100の動作を説明する。交流電圧Vacが正極性となる第1期間P1では、第1,第4ダイオードD1,D4が導通する。また、第2期間P2では、第2,第3ダイオードD2,D3が導通する。第1,第2期間P1,P2において、電流制御部50が実施するピーク電流モード制御により、ゲート信号GS31がハイレベルとローレベルとの間で変化し、デューティ比が制御される。スイッチSW31がオン状態となる期間では、リアクトル13に電流が流れ、リアクトル13に磁気エネルギが蓄えられる。また、スイッチSW31がオフ状態となる期間では、リアクトル13に蓄えられた磁気エネルギにより、第5ダイオードD5を通じて第1直流端子TD1に電流が流れる。
【0121】
図21(a)は交流電圧Vacの推移を示し、図21(b)は高調波補正値Ihの推移を示す。電力変換装置100が、交流電圧を直流電圧に変換する場合、歪みが生じているリアクトル電流の平均値Iaveと指令電流IL*との差を示す乖離幅Δiは、交流電圧Vacが0となるゼロクロスタイミング(t41,t43,t45)付近において最も大きな値となる。また、乖離幅Δiは交流電圧Vacのピークタイミング(t42,t44)付近において最も小さな値となる。
【0122】
本実施形態では、補正値設定部40は、高調波補正値Ihを、交流電圧の1周期において正極性となる第1期間P1及び負極性となる第2期間P2それぞれで極小値を1つ取り、かつ第1期間P1での極小値となるタイミングと第2期間P2での極小値となるタイミングとの間で極大値を1つ取るように設定する。補正値設定部40は、設定した高調波補正値Ihに係数βを積算することにより電流補正値Icを算出する。そのため、電流検出値ILrから減算する電流補正値Icは、ゼロクロスタイミングにおいて最も大きくなり、ピークタイミングにおいて最も小さな値となる。
【0123】
本実施形態においても、制御装置30の記憶部には、交流電圧Vacと直流電圧Vdcに対応付けられて高調波補正値Ihが規定された情報である補正値マップが記憶されている。そのため、補正値設定部40は、補正値マップを参照することにより交流電圧Vac及び直流電圧Vdcに応じた高調波補正値Ihを設定する。
【0124】
次に、本実施形態に係る補正値マップの作成方法について説明する。
【0125】
AC・DC変換器80が交流電圧を直流電圧に変換する場合、デューティ比Dは下記式(4)により算出される。
【0126】
【数3】
リアクトル電流の増加時の傾きmb(すなわち、リアクトル電流の増加速度)は、「mb=|Vac|/L」の関係があり、この関係性を、上記式(1)に代入することにより、乖離幅Δiは下記式(5)により算出される。
【0127】
【数4】
本実施形態では、上記式(4),(5)を用いて、交流電圧Vac及び直流電圧Vdcを様々な値に変化させた場合の高調波補正値Ihを算出する。そして、算出した高調波補正値Ihを交流電圧Vacに対応付けることにより補正値マップを作成することができる。
【0128】
次に、図22を用いて、本実施形態の作用効果を説明する。
【0129】
図22(a)は交流電圧Vac及び直流電圧Vdcの推移を示し、図22(b)は、ゲート信号GS31の推移を示す。図22(c)は電流補正値Icの推移を示し、図22(d)は指令電流IL*の推移を示す。図22(e)は、リアクトル電流ILの推移を示し、図22(f)は交流電流Iacの推移を示す。なお、図22(a)において、t51,t53,t55は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを示し、t52,t54は、交流電圧Vacが正,負のピーク値となるピークタイミングを示す。
【0130】
第1,第2期間P1,P2において、電流補正値Icは、ゼロクロスタイミング(t51,t53,t55)それぞれで極大値を取り、ピークタイミング(t52,t54)の付近で極小値を取るように変化する。即ち、乖離幅Δiが大きくなるゼロクロスタイミングでは、電流検出値ILrから減算する電流補正値Icが最も大きな値となる。また、乖離幅Δiが大きくなる交流電圧Vacのピークタイミング付近では、電流検出値ILrから減算する電流補正値Icが最も小さな値となる。その結果、スイッチSW31のデューティ比は、乖離幅の変化傾向に応じた値に設定される。
【0131】
以上説明した本実施形態においても、制御装置30は、電流検出値ILrから電流補正値Icを減算した値によりピーク電流モード制御を実施する。また、制御装置30は、交流電圧の1周期において正極性及び負極性となる期間それぞれで極小値を1つ取り、かつ正極性での極小値と負極性での極小値との間で極大値を1つ取るように電流補正値Icを設定する。この場合、スイッチSW31のデューティ比が、乖離幅Δiの傾向に応じた値に設定される。その結果、交流電流Iacの歪みを抑制しつつ、指令電流IL*に対するコンパレータ352のフルスケールの増加を抑制することができる。
【0132】
<第5実施形態の変形例>
第5実施形態において、制御装置30は、第2実施形態のように、スロープ量msを交流電圧Vacに基づいて可変設定してもよい。この場合において、制御装置30は、交流電圧Vac及び直流電圧Vdcに加えて、スロープ量msにより電流補正値Icを設定してもよい。
【0133】
<第6実施形態>
第6実施形態では、第5実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第5実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0134】
本実施形態では、第5実施形態に示す電力変換装置100と比べて、回路トポロジーが異なる。具体的には、本実施形態に係る電力変換装置100は、第5実施形態と異なり、ハーフブリッジ回路を備えていない。
【0135】
図23は、第2実施形態に係る電力変換装置100を示す図である。第1直流端子TD1とフルブリッジ回路12dとは、第1配線LP1を介して接続されている。第2直流端子TD2とフルブリッジ回路12dとは、第2配線LP2を介して接続されている。
【0136】
フルブリッジ回路12dは、第1スイッチSW41及び第2スイッチSW42と、第1,第2ダイオードD11,D12とを備えている。第1,第2スイッチSW41,SW42は、電圧駆動型のスイッチであり、本実施形態では、nチャネルMOSFETである。第1ダイオードD11のアノードと第1スイッチSW41のドレインとが接続されている。第2ダイオードD12のアノードと第2スイッチSW42のドレインとが接続されている。第1,第2ダイオードD11,D12それぞれのカソードが、第1配線LP1に接続され、第1,第2スイッチSW41,SW42それぞれのソースが第2配線LP2に接続されている。第1,第2スイッチSW41,SW42それぞれは、逆並列接続された寄生ダイオードを備えている。
【0137】
第1ダイオードD11と第1スイッチSW41との第1接続点K11は、第5配線LP5の第1端に接続されており、第5配線LP5の第2端は第1交流端子TA1に接続されている。第2ダイオードD12と第2スイッチSW42との第2接続点K12は、第6配線LP6の第1端に接続されており、第6配線LP6の第2端は第2交流端子TA2に接続されている。
【0138】
第1ダイオードD11のアノードと第1スイッチSW41のドレインとの間には、第1期間P1におけるリアクトル電流を検出する第1電流センサ65が設けられている。第1電流センサ65は、第1スイッチSW41に流れる電流を第1検出値IL1rとして検出する。また、第2ダイオードD12のアノードと第2スイッチSW42のドレインとの間には、第2期間P2におけるリアクトル電流を検出する第2電流センサ66が設けられている。第2電流センサ66は、第2スイッチSW42に流れる電流を第2検出値IL2rとして検出する。
【0139】
図24は、第6実施形態に係る制御装置30の機能を示す機能ブロック図である。制御装置30は、第1電流制御部50cと、第2電流制御部50dと、切替部155とを備えている。
【0140】
第1電流制御部50cは、スロープ補償後の第1検出値IL1rを指令電流IL*に制御すべく、ピーク電流モード制御を実施する。第2電流制御部50dは、スロープ補償後の第2検出値IL2rを指令電流IL*に制御すべく、ピーク電流モード制御を実施する。第1,第2電流制御部50c,50dの構成は、電流制御部50の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0141】
切替部155は、交流電圧Vacの極性に応じて、第1ゲート信号GS41又は第2ゲート信号GS42の出力を切り替える。切替部155の出力端子は、第1,第2AND回路386,387それぞれの入力端子に接続されている。第1AND回路386の他方の入力端子は、第1電流制御部50cの出力端子に接続されている。第2AND回路387の他方の入力端子は、第2電流制御部50dの出力端子に接続されている。
【0142】
切替部155は、交流電圧Vacを正極性と判定した場合に、第1AND回路386に出力する第1切替信号をハイレベルにし、第2AND回路387に出力する第2切替信号をローレベルにする。一方、切替部155は、交流電圧Vacを負極性と判定した場合に、第1AND回路386に出力する第1選択信号をローレベルにし、第2AND回路387に出力する第2切替信号をハイレベルにする。
【0143】
第1AND回路386は、第1スイッチSW41のゲートに接続されており、第1スイッチSW41を操作する第1ゲート信号GS41を出力する。第2AND回路387は、第2スイッチSW42のゲートに接続されており、第2スイッチSW42を操作する第2ゲート信号GS42を出力する。
【0144】
交流電圧Vacが正極性となる第1期間P1では、切替部155からの第1切替信号AQ1がハイレベルとなり、第2切替信号AQ2がローレベルとなる。また、第1期間P1では、第1電流制御部50cにより第1スイッチSW41のゲートに出力される第1ゲート信号GS41がハイレベルとローレベルとの間で変化する。このとき、第1補正部20aにより第1検出値IL1rから電流補正値Icが減算された値が第1電流制御部50cに入力する。
【0145】
交流電圧Vacが負極性となる第2期間P2では、第1切替信号AQ1がローレベルとなり、第2切替信号AQ2がハイレベルとなる。また、第2期間P2では、第2電流制御部50dが実施するピーク電流モード制御により第2スイッチSW42が操作される。このとき、第2補正部20bにより第2検出値IL2rから電流補正値Icが減算された値が第2電流制御部50dに入力する。
【0146】
第1,第2期間P1,P2において、電流補正値Icは、ゼロクロスタイミングで極大値を取り、ピークタイミングで極小値を取るように変化する。その結果、第1,第2期間P1,P2において、スイッチSW31のデューティ比は、乖離幅の変化傾向に応じた値に設定される。
【0147】
以上説明した本実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0148】
<その他の実施形態>
・電力変換装置100により直流電圧Vdcを交流電圧Vacに変換する場合の高調波補正値Ihは、上記式(2),(3)により算出されるものに限られない。例えば、直流電圧Vdcが固定値に設定される場合、交流電圧Vacのみに基づいて高調波補正値Ihが設定されてもよい。
【0149】
・電力変換装置100により交流電圧Vacを直流電圧Vdcに変換する場合の高調波補正値Ihは、上記式(4),(5)により算出されるものに限られない。例えば、直流電圧Vdcが固定値に設定される場合、交流電圧Vacのみに基づいて高調波補正値Ihが設定されてもよい。
【0150】
・各実施形態では、力率を1とする場合を例に説明を行った。これに換えて、力率が1未満の場合においても、本実施形態を適用することができる。この場合、波形生成部34は、力率に応じて、交流電圧Vacから所定量αだけ位相がずれた基準波形(=sin(ωt+α))を生成する。そして、生成した基準波形に基づいて、指令電流IL*を算出すればよい。この場合においても、力率に応じて設定された指令電流IL*とリアクトル電流の平均値Iaveとの乖離幅を算出し、この乖離幅に応じて高調波補正値Ihを設定すればよい。
【0151】
・電力変換装置100は、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとの間で双方向での電力変換を行う装置であってもよい。
【符号の説明】
【0152】
13…リアクトル、20…補正部、30…制御装置、34…波形生成部、35…乗算器、36…絶対値算出部、40…補正値設定部、50…電流制御部、100…電力変換装置、SW…スイッチ。
図1
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