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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-216286(P2019-216286A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20191122BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   H01F17/04 A
   H01F27/29 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-179111(P2019-179111)
(22)【出願日】2019年9月30日
(62)【分割の表示】特願2016-251164(P2016-251164)の分割
【原出願日】2016年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌史
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB04
5E070BA03
5E070BA11
5E070CA13
5E070CA15
5E070EA01
5E070EB03
(57)【要約】
【課題】高いインダクタンス、良好な直流重畳特性、および自己共振周波数より高周波側で高いインピーダンスを実現できる、インダクタ部品を提供する。
【解決手段】長手方向に延びる巻芯部32および巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた1対の鍔部34,35を有する、磁性体からなるドラム状コア33と、巻芯部において巻回された、ワイヤ38と、を備える。ワイヤ38は、複数個の整列されたバンク巻きを構成する部分B1〜B5を含み、これら整列バンク巻き部分B1〜B5は、巻芯部32の長手方向に沿って複数個存在し、かつワイヤ38の全体のターン数の半分を超える部分を占めている。複数個の整列されたバンク巻きを構成する部分B1〜B5のうち、バンク巻きを構成する部分B1〜B3とバンク巻きを構成する部分B4,B5とは、互いに異なる種類のバンク巻きを構成している
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる巻芯部および前記巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた1対の鍔部を有する、磁性体からなるドラム状コアと、
前記巻芯部において巻回された、ワイヤと、
を備え、
前記ワイヤは、整列されたバンク巻きを構成する部分を含み、前記整列されたバンク巻きを構成する部分は、前記巻芯部の長手方向に沿って複数個存在し、かつ前記ワイヤの全体のターン数の半分を超える部分を占めており、
複数個の前記整列されたバンク巻きを構成する部分のうち、少なくとも2個の前記バンク巻きを構成する部分は、互いに異なる種類のバンク巻きを構成している、
インダクタ部品。
【請求項2】
前記整列されたバンク巻きを構成する部分の各々において、前記巻芯部に接して巻回される下層側の前記ワイヤのターン数は4ターン以下である、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
複数個の前記整列されたバンク巻きを構成する部分の少なくともいくつかは互いに隣り合っており、互いに隣り合う前記整列されたバンク巻きを構成する部分間の間隔は、前記ワイヤの平行に延びる部分において、30μm以下である、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
複数個の前記整列されたバンク巻きを構成する部分の間に、前記ワイヤが単層巻きにされた部分が配置されている、請求項1ないし3のいずれかに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記1対の鍔部における実装基板側に向く面にそれぞれ設けられ、前記ワイヤの各端部がそれぞれ接続された、端子電極をさらに備え、前記ワイヤの各端部の前記端子電極への接続部分は、前記1対の鍔部の、実装基板側に向く面において前記長手方向の直交方向における互いに逆側に位置している、請求項1ないし4のいずれかに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記端子電極に接続される前記ワイヤの少なくとも一方の端部は、前記巻芯部上で単層巻きにされている、請求項1ないし5のいずれかに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インダクタ部品に関するもので、特に、ドラム状コアの1対の鍔部間に板状コアが渡され、ドラム状コアの巻芯部上にワイヤを巻回した構造を有する巻線型のインダクタ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性体からなるドラム状コアを備えるインダクタ部品において、ドラム状コアの1対の鍔部間に、磁性体からなる板状コアを渡すようにドラム状コアに貼り合せ、それによって閉磁路を形成すれば、高インダクタンスを実現することができる。
【0003】
しかし、この構成は、フェライトの比透磁率が高いという特性を利用するため、通常、低周波用途においてのみ有効である。
【0004】
また、磁性体からなる板状コアを備えるインダクタ部品は、一般的に直流重畳特性が悪いことが知られている。そのため、たとえば特開2004−363178号公報(特許文献1)などに記載されるように、ドラム状コアと板状コアとの間にギャップが設けられ、それによって、直流重畳特性の改善を図ることが行なわれている。このようなギャップ付き閉磁路構造によれば、磁気飽和が抑えられ、直流重畳特性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−363178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなギャップ付き閉磁路構造によれば、直流重畳特性を改善できるものの、インダクタンス値(L値)の低下を招く。L値の低下を補償するためには、ワイヤのターン数を多くする必要があるが、ワイヤを巻回できるスペースは限られているため、ワイヤのターン数を多くするには限界がある。
【0007】
一方、多層巻きの一種で、バンク巻きと言われる巻回方法がある。バンク巻きとは、巻芯部上でワイヤが二重以上に巻回された多層巻き部分を、巻芯部の長手方向に沿って複数個配置する巻回方法を言う。このバンク巻きによれば、限られたスペースに多くのターン数をもってワイヤを巻回することができる。しかし、この巻回方法によると、インダクタ部品の自己共振周波数が低くなるとともに、自己共振周波数より高周波側において、容量が非常に大きくなるため、インピーダンスの低下が著しい。そのため、バンク巻きという巻回方法は、通常、低周波用途に適した巻回方法であると言える。
【0008】
そこで、この発明の目的は、高いインダクタンス、良好な直流重畳特性、および自己共振周波数より高周波側で高いインピーダンスを実現できる、インダクタ部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、長手方向に延びる巻芯部および巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた1対の鍔部を有する、磁性体からなるドラム状コアと、巻芯部において巻回された、ワイヤと、を備える、インダクタ部品に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0010】
ワイヤは、整列されたバンク巻きを構成する部分を含み、整列されたバンク巻きを構成する部分は、巻芯部の長手方向に沿って複数個存在し、かつワイヤの全体のターン数の半分を超える部分を占めており、複数個の整列されたバンク巻きを構成する部分のうち、少なくとも2個のバンク巻きを構成する部分は、互いに異なる種類のバンク巻きを構成していることを特徴としている。
【0011】
バンク巻きを実現するためには、いくつかのターンごとに、ワイヤを下層側から上層側へ移行させる部分を設ける必要がある。この部分では、巻芯部上で螺旋状に巻回されたワイヤの進行方向とは逆の方向にワイヤが戻される。したがって、以下では、この部分を戻り部分と呼ぶ。
【0012】
上述の「整列されたバンク巻き」とは、バンク巻きを実現するためには避けられない、いくつかのターンごとに設けられるワイヤの戻り部分が、巻芯部の周面上の所定の一面などの特定の位置で生じている状態を言う。
【0013】
この発明では、前述のように、複数種類の整列されたバンク巻きを構成する部分が存在している。バンク巻きを構成する部分におけるワイヤのターン数が異なる場合、バンク巻きを構成する部分の種類が異なるということになる。さらにこの場合は、戻り部分が生じている特定の位置が、上述の複数種類の整列されたバンク巻き同士の間で異なってもよい。
【0014】
整列されたバンク巻きを構成する部分の各々において、巻芯部に接して巻回される下層側のワイヤのターン数は少ない方が良く、たとえば4ターン以下であることが好ましい。この構成によれば、ワイヤの戻り部分が複数個あることによる、インダクタ部品全体で生じる浮遊容量の合成容量を小さくすることができるという効果をより確実に奏することができる。
【0015】
この発明において、複数個の整列されたバンク巻きを構成する部分の少なくともいくつかの隣り合うものの間に、ワイヤが単層巻きにされた部分が配置されていてもよい。この構成によれば、ワイヤを巻回する工程において生じることがある巻線機が認識しているワイヤの位置と実際のワイヤの位置とのずれを、単層巻きの部分でリセットすることができ、ワイヤの巻回精度を向上させることができる。
【0016】
この発明において、1対の鍔部における実装基板側に向く面にそれぞれ端子電極が設けられることが好ましい。端子電極にはワイヤの各端部がそれぞれ接続される。この場合、ワイヤの各端部の端子電極への接続部分は、1対の鍔部の、実装基板側に向く面において長手方向の直交方向における互いに逆側に位置していることが好ましい。この構成によれば、巻芯部に巻回されたワイヤを、より短い距離で端子電極にまで導くことができる。
【0017】
この発明において、端子電極に接続されるワイヤの少なくとも一方の端部は、巻芯部上で単層巻きにされていてもよい。この構成によれば、ワイヤの巻回精度を向上させることができるばかりでなく、端子電極や、端子電極に付着したはんだとワイヤとの不所望な接触を生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、整列されたバンク巻きを構成する部分が巻芯部の長手方向に沿って複数個存在しているので、共振の位置が安定するとともに、たとえ1つのバンク巻き部分でのワイヤがわずかにずれた場合でも、全体のインピーダンス特性に及ぼす影響を微小にできる。また、自己共振周波数より高周波側で発生する共振をコントロールでき、非常に安定した高周波特性を保証することが可能になる。
【0019】
また、この発明によれば、バンク巻きを構成する部分が複数個あるので、結果として、ワイヤの戻り部分が複数個あるということであり、インダクタ部品全体で生じる浮遊容量の合成容量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の第1の参考例としてのインダクタ部品31を正面方向から模式的に示す断面図である。
図2図1に示したインダクタ部品31の左側面図である。
図3図1に示したインダクタ部品31におけるワイヤ38の端部38aおい38bの端子電極39および40への接続部分を示す、インダクタ部品31の底面図である。
図4図1に示したインダクタ部品31におけるワイヤ38の拡大断面図である。
図5図1に示したインダクタ部品31のインピーダンス−周波数特性を、比較例1および2の同特性と比較して示す図である。
図6図1に示したインダクタ部品31のインダクタンス−周波数特性を、比較例1および2の同特性と比較して示す図である。
図7図1に示したインダクタ部品31における1個の整列されたバンク巻きを構成する部分の等価回路図である。
図8】この発明の第2の参考例としてのインダクタ部品51を正面方向から模式的に示す断面図である。
図9】この発明の一実施形態によるインダクタ部品52を正面方向から模式的に示す断面図である。
図10】この発明の第3の参考例としてのインダクタ部品53を正面方向から模式的に示す断面図である。
図11】この発明の第4の参考例としてのインダクタ部品54を正面方向から模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1ないし図7を参照して、この発明の第1の参考例としてのインダクタ部品31について説明する。以下に説明する第1ないし第4の参考例は、「複数個の整列されたバンク巻きを構成する部分のうち、少なくとも2個のバンク巻きを構成する部分は、互いに異なる種類のバンク巻きを構成している」という特徴を備えないが、この点を除けば、この発明において採用され得る特徴を備えている。
【0022】
インダクタ部品31は、図1によく示されているように、長手方向に延びる巻芯部32を有するドラム状コア33を備える。ドラム状コア33は、巻芯部32の各端部にそれぞれ設けられた1対の鍔部34および35を備える。また、インダクタ部品31は、1対の鍔部34および35間に渡されてドラム状コア33に接着剤36を介して接着された板状コア37を備える。ドラム状コア33および板状コア37は、ともにフェライトのような磁性体からなり、閉磁路を構成する。
【0023】
ドラム状コア33に備える巻芯部32は、図2において点線で示すように、四角形に近い六角形の断面形状を有していて、鍔部34および35の中心よりやや上方へずれた位置にある。なお、巻芯部32の断面形状は四角形などの多角形であってもよい。また、巻芯部32の周面における平面と平面とが交差する稜線部分は、アール面取りされることが好ましい。また、図示のドラム状コア33では、巻芯部32は鍔部34および35の中心より上方へずれていたが、ずれがなくてもよいし、下方へずれてもよい。
【0024】
図2を参照して、インダクタ部品31は、たとえば、高さ方向寸法Hが2.2mm以上かつ2.6mm以下、幅方向寸法Wが2.2mm以上かつ2.8mm以下とされる。また、巻芯部32の断面形状における長径方向寸法D1は1.6mm以上かつ2.2mm以下とされる。また、図1を参照して、インダクタ部品31の長手方向寸法Mは2.9mm以上かつ3.5mm以下とされ、板状コア37の厚み方向寸法T1は0.5mm以上かつ0.8mm以下とされ、鍔部34および35の厚み方向寸法T2は0.4mm以上かつ0.7mm以下とされ、巻芯部32の断面形状における短径方向寸法D2は0.7mm以上かつ1.1mm以下とされる。
【0025】
巻芯部32上には、ワイヤ38が巻回される。ワイヤ38の巻回態様の詳細については後述する。第1および第2の鍔部34および35における実装基板(図示せず。)側に向く面には、それぞれ、第1および第2の端子電極39および40が設けられる。端子電極39および40は、たとえば、導電性ペーストの焼付け、導電性金属のめっき、導電性金属片の貼付け等によって形成される。図3に示されるように、ワイヤ38の第1および第2の端部38aおよび38bは、それぞれ、第1および第2の端子電極39および40に電気的に接続される。これらの接続には、たとえば、熱圧着や溶接が適用される。
【0026】
なお、図3は、インダクタ部品31を実装基板側から示す底面図であるが、ワイヤ38の図示は、上述の端部38aおよび38bを除いて省略されている。
【0027】
図3に示されるように、ワイヤ38の端部38aおよび38bの、端子電極39および40への接続部分は、1対の鍔部34および35の、実装基板側に向く面において長手方向の直交方向における互いに逆側に位置していることが好ましい。この構成によれば、巻芯部32に巻回されたワイヤ38を、より短い距離で端子電極39および40にまで導くことができる。特に、図3によく示されているように、端子電極39および40への接続部分は、1対の鍔部34および35の、実装基板側に向く面において、巻芯部32の側面と接する位置付近にあることが好ましい。
【0028】
なお、この参考例では、端子電極39および40は、鍔部34および35の、実装基板側に向く面の全域にわたって形成されたが、ワイヤ38の端部38aおよび38bを接続するに足る部分にのみ形成されてもよい。また、ワイヤ38の端部38aおよび38bを接続する端子電極に並んで、ワイヤ38の端部38aおよび38bが接続されないダミーの端子電極が形成されてもよい。ダミーの端子電極は、インダクタ部品を実装基板に実装する際、実装基板側とはんだ付けされることにより、インダクタ部品の機械的な固定をより強固なものとするように機能する。
【0029】
ワイヤ38は、その断面が拡大されて図4に示されている。ワイヤ38は、たとえば銅からなり、直径0.06mm以上かつ0.09mm以下の円形の断面を有する中心導体41と、中心導体41の周面を覆う絶縁被覆層42と、からなる。
【0030】
インダクタ部品31において、鍔部34および35と板状コア37との間には、図1に示されるように、ギャップGが形成され、このギャップGの寸法は平均20μm以上かつ50μm未満とされる。ここで、「平均20μm以上かつ50μm未満」とは、一方の鍔部34または35の端面に平行な面が現れるように、インダクタ部品31を研磨した試料について、ギャップGの寸法をたとえば幅方向(図2のWが示す方向)に均等間隔で設定された5箇所で測定し、それら測定値を算術平均したものが「20μm以上かつ50μm未満」であるということである。なお、上述の5箇所は、平均的なギャップを反映させるため、鍔部34および35のアール部分や、ギャップGを形成するために意図的に形成された突起44の位置する箇所を避けて設定される。
【0031】
上述のギャップGは、閉磁路に介挿されるギャップとして機能する。したがって、ギャップGは、特許文献1に記載の技術の場合と同様、インダクタ部品31の直流重畳特性を改善する。ここで、ギャップを「20μm以上」とすることで、直流重畳特性を十分に改善することができる。なお、通常、板状コアをドラム状コアに接着した場合の接着面の間隔は20μmよりももっと小さく、20μm以上のギャップが形成される場合は、意図的にギャップを設けているとも言える。他方、ギャップGが「50μm未満」とされたのは、50μmを超えると、板状コア37を設けたことによるインダクタンス向上の効果がほとんど期待できなくなるためである。
【0032】
この参考例では、ギャップGをより安定して形成するため、板状コア37と鍔部34および35とが対向する部分において、板状コア37には、鍔部34および35に接する複数個の突起44が設けられている。これら突起44は、鍔部34および35側に設けられても、板状コア37と鍔部34および35との双方に分配されて設けられてもよい。
【0033】
図1において、ワイヤ38の断面内には、第1の鍔部34側から数えたターン序数「1」〜「20」が記入されている。このようなワイヤ38の断面内へのターン序数の記入は、後述する図8ないし図11においても採用されている。
【0034】
巻芯部32において巻回されたワイヤ38は、4個の整列されたバンク巻きを構成する部分(以下、「整列バンク巻き部分」と略称する。)B1、B2、B3およびB4を備えている。
【0035】
第1の整列バンク巻き部分B1は、ワイヤ38の第1ターンないし第5ターン(以下、「ターン1〜5」のように表現する。)によって形成される。すなわち、下層側にはワイヤ38のターン1〜3が位置され、これらターン1〜3が巻芯部32上で螺旋状に巻回される。次いで、ワイヤ38が約1.5ターン分戻され、後述する戻り部分Rを除いて、下層側のターン1および2間に形成される凹部に、上層側のターン4が嵌り込み、さらに、下層側のターン2および3間に形成される凹部に、上層側のターン5が嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。
【0036】
この第1の整列バンク巻き部分B1では、ターン3からターン4へと移行する部分が、下層側から上層側へと移行する部分となり、この部分では、巻芯部32上で螺旋状に巻回されたワイヤ38の進行方向とは逆の方向にワイヤ38が戻される。したがって、この部分が戻り部分Rとなる。戻り部分Rでは、ワイヤ38の螺旋状の巻回状態が乱れるが、この参考例では、戻り部分Rが、巻芯部32の周面上の特定の位置、たとえば、図2に示した巻芯部32の側方に向く側面43に沿う位置で生じるようにされる。
【0037】
次いで、第2の整列バンク巻き部分B2は、ワイヤ38のターン6〜10によって形成される。第1の整列バンク巻き部分B1における最終ターンである上層側のターン5の巻回の後、ワイヤ38は下層側へ移行され、そこでターン6〜8が巻芯部32上で螺旋状に巻回される。次いで、ワイヤ38が約1.5ターン分戻され、戻り部分を除いて、下層側のターン6〜8の各間に形成される凹部に、上層側のターン9および10が嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。ここでも、戻り部分は、巻芯部32の側面43に沿う位置で生じるようにされる。
【0038】
詳細な説明を省略するが、第3および第4の整列バンク巻き部分B3およびB4においても、上述した第1および第2の整列バンク巻き部分B1およびB2の場合と同様の巻回態様が採用される。
【0039】
このように、インダクタ部品31では、4個の整列バンク巻き部分B1〜B4が、巻芯部32の長手方向に沿って配置され、また、ワイヤ38のターン数の半分を超える部分を占めている。なお、この参考例では、整列バンク巻き部分B1〜B4は、ワイヤ38のターン数のほぼ全体を占めている。
【0040】
また、4個の整列バンク巻き部分B1〜B4の、互いに隣り合うものの間の間隔は、ワイヤ38の平行に延びる部分において、30μm以下でとされる。この構成によれば、限られた長さの巻芯部32に、より多くのターン数をもってワイヤ38を巻回し得ることが可能となるばかりでなく、整列バンク巻き部分B1〜B4間の磁気的な結合が強くなり、より高いインピーダンスを実現することに寄与し得る。
【0041】
また、この参考例では、戻り部分が、図2に示した巻芯部32の側方に向く側面43に沿う位置で生じるようにされたが、他の位置で生じるようにされてもよい。また、戻り部分は、巻芯部32に周面上の1つの側面にのみ位置させるのではなく、たとえば、2つの側面に分けて位置させてもよい。
【0042】
インダクタ部品31は、一例として、インダクタンス値が22μH以上かつ56μH以下であり、直流抵抗値が0.07Ω以上かつ1.2Ω以下であり、自己共振周波数が25MHz以上の電気的特性を有している。
【0043】
図5には、実施例(参考例)としてのインダクタ部品31のインピーダンス−周波数特性が、比較例1および2の同特性と比較して示され、図6には、実施例としてのインダクタ部品31のインダクタンス−周波数特性が、比較例1および2の同特性と比較して示されている。ここで、比較例1は、ワイヤを単層巻きにしたインダクタ部品を試料とするもので、比較例2は、ワイヤを無造作に(整列されない)バンク巻きにしたインダクタ部品を試料とするものである。そして、実施例ならびに比較例1および2の各々に係るインダクタ部品について、1MHzで測定した場合にほぼ同じインダクタンス値が得られるようにした。
【0044】
図5を参照して、インピーダンス特性を見ると、実施例によれば、1GHz付近の高周波域まで、高いインピーダンス値を維持することができる。特に、自己共振を超えた高周波域でのさらなる共振は、無造作なバンク巻きの比較例2に比べて、より低い周波数で現れている。また、実施例では、自己共振を超えた高周波域において、比較例2に比べて、より高いインピーダンス値が得られている。また、実施例は、バンク巻きを採用しているにもかかわらず、高周波側では、単層巻きの比較例1のインピーダンス特性にかなり近いインピーダンス特性を示している。このことは、実施例では、比較例1(単層巻き)と同様の特性をより短い巻芯部で実現することができ、小型化を実現可能であることを示している。
【0045】
図6を参照して、インダクタンス特性については、実施例によれば、比較例1および2に比べて、10MHzを超える高周波域までフラットなインダクタンス特性が得られている。すなわち、単層巻きの比較例1および無造作なバンク巻きの比較例2に比べて、実施例によれば、高周波域まで高いインダクタンス値が維持されている。
【0046】
以下に、上記のような効果が生じる理由について考察する。
【0047】
(1)インダクタンスの周波数特性が良い理由
一般的に、透磁率が低い磁性体は高周波特性が良い。この特性はスネークの限界線として広く知られている。そのため、高周波特性の良好なインダクタでは、比透磁率の低い材料が使われる。この手法はミクロ的に見て透磁率を下げることで高周波化を果たしている。
【0048】
しかし、マクロ的に見た視点で透磁率を下げることでも同様の効果が期待できる。つまり、閉磁路構造の一部分に空気ギャップを設けることで閉磁路全体としての磁気抵抗を上げ(すなわち、磁気回路全体としてのマクロ的透磁率を下げ)、それによって、ギャップなしの場合に比べて、インダクタとしての高周波化を実現することができる。
【0049】
この発明では、ドラム状コアと板状コアとの間にギャップを設けることで、インダクタンス特性を広帯域化している。透磁率の低い材料で高インダクタンスを得、それによって、高インダクタンスと高周波特性との両方を得ようとすると、直流重畳特性が悪くなる。そのため、高インダクタンスでかつ高周波特性を得ようとした場合には、ギャップ付き閉磁路が最適な手段となる。
【0050】
(2)整列されたバンク巻きの効果
ギャップ付き閉磁路にした場合、閉磁路の磁気抵抗が高く、インダクタンスを高くできない。これを解決するためには、バンク巻き構造を採用することが考えられる。ただ、一般的な(整列されない)バンク巻きは浮遊容量が大きく、高周波特性が悪い(図6の「比較例2」参照)。そのため、通常は高周波特性を得たい部品には使用できない。
【0051】
しかし、図1に示すような整列されたバンク巻き構造を採用することで、浮遊容量自体はやや増えるが、その増加量を最小限に留めることが可能になる。その上、バンク部分ではワイヤが互いに密着しているため、図5の「実施例」からわかるように、自己共振周波数を超えた早い段階で、さらなる共振が起こり、それによって等価的な容量が減少する。
【0052】
この効果により、実際には単層巻き(平巻き)に比べ、浮遊容量がほとんど増えない。特に、自己共振周波数の10倍前後の周波数(どこに共振が発生するかは巻き方による。)で共振が起き、それによって、共振以降のインピーダンス−周波数特性が上にシフトする。また、バンク巻きにおけるワイヤが整列配置されているため、常に同じ周波数特性を持つようになり、自己共振周波数以降のコントロールが可能になる。
【0053】
図7には、インダクタ部品31における1個の整列バンク巻き部分(たとえば、図1のターン1〜5など)の等価回路が示されている。図7において、C1は整列バンク巻き部分の外形全体で発生している浮遊容量である。C2〜C8は、巻線L1〜L5間で発生している浮遊容量であり、これらはワイヤが並行して隣り合うため、ワイヤ間の距離が常に同じであることから、概ね同程度の容量を持つ。L1〜L5は、1つの整列バンク巻き部分内の巻線の各ターンが持つインダクタンスである。これらインダクタンスL1〜L5は互いに近接しているため、隣り合うものの間で、高い結合係数をもって結合している。ただし、結合係数が高いのは、磁性体の比透磁率が低下する前の低周波域においてのみであり、それを超える高周波域では結合係数が下がっている。
【0054】
その結果、インダクタンスL1〜L5の持つインダクタンス値は、結合係数を加味して考えると、下層側中央のインダクタンスL2のターンのインダクタンス値が最も大きく、両端のインダクタンスL1およびL3のインダクタンス値が最も小さく、いわゆる「まだら」状態となる。
【0055】
電流ループを考えるとき、図7において、矢印で示すように、複数のループが存在する。これらの中で最も共振周波数が低いものが自己共振周波数として発現するが、自己共振周波数より高周波側にも複数の共振が発生することがこの回路図からもわかる。小ループでの共振が起こる度に局所的な周波数ではインピーダンスの落ち込みが見られるが、それ以降の周波数では等価的な浮遊容量が減少する。整列されたバンク巻き構造は、浮遊容量が発生するインダクタンス間のターン序数の差を一定の範囲で(なるべく小さく)抑えることで、この局所的なインピーダンスの落ち込みの発生する周波数を間接的にコントロールし、全体のインピーダンス特性を最適化かつ安定化させるものである。
【0056】
以下、巻芯部32におけるワイヤ38の巻回態様についての変形例を図8ないし図11を参照して説明する。図8ないし図11は、図1に対応する図であって、図8ないし図11において、図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0057】
図8に示したインダクタ部品51では、巻芯部32において巻回されたワイヤ38は、6個の整列バンク巻き部分B1〜B6を備えている。
【0058】
第1の整列バンク巻き部分B1は、ワイヤ38のターン1〜3によって形成される。すなわち、下層側にはワイヤ38のターン1および2が位置され、これらターン1および2が巻芯部32上で螺旋状に巻回される。次いで、ワイヤ38が約0.5ターン分戻され、戻り部分を除いて、下層側のターン1および2間に形成される凹部に、上層側のターン3が嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。
【0059】
その後、第1の整列バンク巻き部分B1の場合と同様のワイヤ38の巻回態様が採用されながら、順次、第2の整列バンク巻き部分B2がターン4〜6によって形成され、第3の整列バンク巻き部分B3がターン7〜9によって形成され、第4の整列バンク巻き部分B4がターン10〜12によって形成され、第5の整列バンク巻き部分B5がターン13〜15によって形成され、第6の整列バンク巻き部分B6がターン16〜18によって形成される。
【0060】
第6の整列バンク巻き部分B6に続いて、ワイヤ38は、ターン19および20において単層巻きにされた後、端子電極40に接続される。
【0061】
図8に示したインダクタ部品51によれば、図1に示したインダクタ部品31に比べて、整列バンク巻き部分B1〜B6における下層側の巻線と上層側の巻線との間に形成される浮遊容量をより小さくすることができる。
【0062】
また、図8に示したインダクタ部品51では、一方の端子電極40に接続されるワイヤ38の端部が単層巻きにされているため、ワイヤ38の巻回精度を向上させることができるばかりでなく、端子電極40や、端子電極40に付着したはんだとワイヤ38との不所望な接触を生じにくくすることができる。なお、第1および第2の端子電極39および40の各々に接続されるワイヤ38の両端部が単層巻きにされてもよい。また、端子電極39および40の各々に接続されるワイヤ38の端部に形成される単層巻き部分のターン数は4ターン以下であることが好ましい。
【0063】
図9に示したインダクタ部品52は、この発明の一実施形態によるもので、このインダクタ部品52では、巻芯部32において巻回されたワイヤ38は、5個の整列バンク巻き部分B1〜B5を備えているが、第1ないし第3の整列バンク巻き部分B1〜B3と第4および第5の整列バンク巻き部分B4およびB5とは、バンク巻きの種類が異なっている。
【0064】
第1の整列バンク巻き部分B1は、ワイヤ38のターン1〜3によって形成される。すなわち、下層側にはワイヤ38のターン1および2が位置され、これらターン1および2が巻芯部32上で螺旋状に巻回される。次いで、ワイヤ38が約0.5ターン分戻され、戻り部分を除いて、下層側のターン1および2間に形成される凹部に、上層側のターン3が嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。
【0065】
その後、第1の整列バンク巻き部分B1の場合と同様のワイヤ38の巻回態様が採用されながら、順次、第2の整列バンク巻き部分B2がターン4〜6によって形成され、第3の整列バンク巻き部分B3がターン7〜9によって形成される。
【0066】
次に、ターン10が単層巻きにされた後、第4の整列バンク巻き部分B4がターン11〜15によって形成される。すなわち、下層側にはワイヤ38のターン11〜13が位置され、これらターン11〜13が巻芯部32上で螺旋状に巻回され、次いで、ワイヤ38が約1.5ターン分戻され、戻り部分を除いて、下層側のターン11〜13の各間に形成される凹部に、上層側のターン14および15がそれぞれ嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。
【0067】
次に、第5の整列バンク巻き部分B5が、上述した第4の整列バンク巻き部分B4における巻回態様と同様の巻回態様をもって、ターン16〜20によって形成される。
【0068】
この実施形態では、複数種類の整列バンク巻き部分が1つの巻芯部に沿って存在していてもいる。複数種類とは、単にターン数が異なる場合だけではなく、戻り部分が生じる特定の位置が異なる場合も含む。
【0069】
また、この実施態様では、隣り合う第3の整列バンク巻き部分B3と第4の整列バンク巻き部分B4との間に、ワイヤ38が単層巻きにされたターン10が配置されている。この構成によれば、ワイヤ38を巻回する工程において生じることがある巻線機が認識しているワイヤ38の位置と実際のワイヤ38の位置とのずれを、単層巻きの部分でリセットすることができ、ワイヤ38の巻回精度を向上させることができる。
【0070】
図10に示したインダクタ部品53では、巻芯部32において巻回されたワイヤ38は、3個の整列バンク巻き部分B1〜B3を備えているが、さらに、第2および第3の整列バンク巻き部分B2およびB3の間に、比較的ターン数の多い単層巻き部分を備えている。
【0071】
第1の整列バンク巻き部分B1は、ワイヤ38のターン1〜5によって形成される。すなわち、下層側にはワイヤ38のターン1〜3が位置され、これらターン1〜3が巻芯部32上で螺旋状に巻回される。次いで、ワイヤ38が約1.5ターン分戻され、戻り部分を除いて、下層側のターン1〜3の各間に形成される凹部に、上層側のターン4および5がそれぞれ嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。
【0072】
その後、第1の整列バンク巻き部分B1の場合と同様のワイヤ38の巻回態様が採用されながら、順次、第2の整列バンク巻き部分B2がターン6〜10によって形成される。
【0073】
次に、ターン11〜15が単層巻きにされる。
【0074】
その後、第3の整列バンク巻き部分B3がターン16〜20によって形成される。すなわち、下層側にはワイヤ38のターン16〜18が位置され、これらターン16〜18が巻芯部32上で螺旋状に巻回され、次いで、ワイヤ38が約1.5ターン分戻され、戻り部分を除いて、下層側のターン16〜18の各間に形成される凹部に、上層側のターン19および20がそれぞれ嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。
【0075】
また、このインダクタ部品53では、隣り合う整列バンク巻き部分B2およびB3の間に、ワイヤ38が単層巻きにされたターン16〜18が配置されている。この構成によれば、単層巻きにされたターン数が前述したインダクタ部品52の場合より多いので、ワイヤ38を巻回する工程において生じることがある巻線機が認識しているワイヤ38の位置と実際のワイヤ38の位置とのずれを、単層巻きの部分でより容易にリセットすることができ、ワイヤの巻回精度をより容易に向上させることができる。
【0076】
図11に示したインダクタ部品54では、巻芯部32において巻回されたワイヤ38は、2個の整列バンク巻き部分B1およびB2を備えているが、これら整列バンク巻き部分B1およびB2でのワイヤ38の巻回態様は、上述した複数の参考例および実施形態における巻回態様とは異なっている。
【0077】
第1の整列バンク巻き部分B1は、ワイヤ38のターン1〜11によって形成される。より詳細には、下層側に、ワイヤ38のターン1および2が巻回され、次いで、ワイヤ38が約0.5ターン分戻され、下層側のターン1および2の間に形成される凹部に、上層側のターン3が嵌り込むように、ワイヤ38が巻回される。その後、上記ターン1〜3を土台として、ターン4が下層側に、そして約0.5ターン分戻され、ターン5が下層側のターン2および4の間に形成される凹部に嵌り込むように上層側に巻回される。
【0078】
以後、同様にして、ターン6〜11が下層側と上層側とに交互に位置するように巻回される。
【0079】
その後、第2の整列バンク巻き部分B2が、ワイヤ38のターン12〜22によって形成される。第2の整列バンク巻き部分B2でのワイヤ38の巻回態様は、上述の第1の整列バンク巻き部分B1でのワイヤ38の巻回態様と同様である。
【0080】
図11に示したインダクタ部品54において採用されたワイヤ38の巻回態様によれば、限られた寸法の巻芯部32でのワイヤ38のターン数を増やすことができる。したがって、インダクタンス値の向上に寄与し得る。
【0081】
以上、この発明を図示した参考例および実施形態に関連して説明したが、図示した各参考例および実施形態は、例示的なものであり、ワイヤのターン数などの点で種々に変更可能である。また、異なる参考例および実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0082】
31,51〜54 インダクタ部品
32 巻芯部
33 ドラム状コア
34,35 鍔部
36 接着剤
37 板状コア
38 ワイヤ
39,40 端子電極
44 突起
G ギャップ
B1〜B6 整列バンク巻き部分
R 戻り部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11