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特開2019-21887電子輸送層,及び電子輸送層の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-21887(P2019-21887A)
(43)【公開日】2019年2月7日
(54)【発明の名称】電子輸送層,及び電子輸送層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190111BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20190111BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190111BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20190111BHJP
   C07D 471/06 20060101ALI20190111BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H01L31/04 166
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   H01L31/04 112Z
   H01L31/04 154C
   H01L31/04 152G
   C07D471/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-142184(P2017-142184)
(22)【出願日】2017年7月21日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度,国立研究開発法人科学技術振興機構,戦略的創造研究推進事業,先端的低炭素化技術開発,革新技術領域,「環境負荷の少ない高性能ペロブスカイト系太陽電池の開発」委託研究,産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
(72)【発明者】
【氏名】中村 智也
【テーマコード(参考)】
3K107
4C065
5F151
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC05
3K107CC45
3K107DD74
3K107DD78
3K107GG06
3K107GG26
3K107GG28
4C065AA07
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ04
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP01
4C065QQ04
5F151AA11
5F151AA20
5F151BA11
5F151CB13
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA02
5F151GA03
5F151GA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板に対して,電子輸送性材料を平行近くに配向でき,しかも透明性が高い電子輸送層や,電子輸送層の成膜方法を提供する。
【解決手段】ナフタレンジイミドといったベンゾイソキノリン誘導体のイミド基に所定の置換基を導入した状態で有機溶媒に溶解し,溶液を基板に塗布した後に,例えば,アニール処理を行い,置換基を変換することで,ベンゾイソキノリン誘導体を含む電子輸送層を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含む,電子輸送層。
【化21】
(式(I)において,X及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示し,
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子であり,
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,C〜Cアルキル基,C〜Cアルコキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,C〜C12シクロアルキル基,C〜C14アリール基,C〜C14アラルキル基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C14ヘテロアラルキル基又はC〜C14ヘテロシクリル基を示し,
11及びR12は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,それぞれ結合している原子及びそれらの原子の間にある原子と一緒になって,下記群Aから選択されるいずれかの基を構成する。)

群A
【化22】
(式(Ia)〜(Im)において,
及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示し,
11は,O,又はSを示し,
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子であり,
13及びR14は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子である。)
【請求項2】
請求項1に記載の電子輸送層であって,
前記式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が,式(II)で示されるナフタレンジイミド誘導体である,電子輸送層。
【化23】
(式(II)中,X〜Xは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示し,
及びYは,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子であり,
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,C〜C12シクロアルキル基,C〜C14アリール基,C〜C14アラルキル基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C14ヘテロアラルキル基又はC〜C14ヘテロシクリル基を示す。)
【請求項3】
請求項1に記載の電子輸送層であって,
前記式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が,式(III)で示される化合物である,電子輸送層。
【化24】
【請求項4】
請求項3に記載の電子輸送層を含む太陽電池。
【請求項5】
請求項3に記載の電子輸送層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
電子輸送層の製造方法であって,
式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含む溶液を基板に塗布し,塗膜を形成する溶液塗布工程と,
前記溶液塗布工程の後に前記式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体に改変するための置換基除去工程と,
を含む電子輸送層の製造方法。
【化25】
【化26】

(式(I)及び式(I’)において,X及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示し,
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子であり,
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,C〜Cアルキル基,C〜C6アルコキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,3〜10員シクリル基,5〜10員アリール基,3〜10員ヘテロシクリル基または5〜10員ヘテロアリール基を示し,
11及びR12は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,それぞれ結合している原子及びそれらの原子の間にある原子と一緒になって,下記群Aから選択されるいずれかの基を構成し,
PGは,tert−ブトキシカルボニル基,2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基,メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基,パラメトキシベンジルオキシカルボニル基,パラ(又はオルト)ニトロベンジルオキシカルボニル基;ベンジル基,4−メトキシベンジル基,トリフェニルメチル基;ホルミル基,アセチル基;ベンゾイル基;2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基,又はオルトニトロベンゼンスルホニル基を示す。)

群A
【化27】
(式(Ia)〜(Im)において,
及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示し,
11は,O,又はSを示し,
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子であり,
13及びR14は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子である。)
【請求項7】
請求項6に記載の電子輸送層の製造方法であって,
前記置換基除去工程は,前記塗膜に酸を接触させる酸接触工程と,前記塗膜を100℃以上200℃以下にする工程とを含む,電子輸送層の製造方法。
【請求項8】
太陽電池の製造方法であって,
請求項6に記載の電子輸送層の製造方法を用いて,前記基板上に電子輸送層を形成する工程と,
前記電子輸送層上に光吸収層を形成する工程と,
前記光吸収層上にホール輸送層を形成する工程と,
前記ホール輸送層上に電極を形成する工程とを含む,
太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基本的には,電子輸送性材料の配向性を制御した電子輸送層や,電子輸送層の成膜方法に関する。本発明は,さらに,制御された配向性を有する電子輸送層を含む,太陽電池又は有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017−59668号公報(特許文献1)には,ベンゾチアゾール系化合物及び有機薄膜太陽電池が記載されている。特許文献1に記載されたベンゾチアゾール系化合物を電子輸送物質として用いると,基板に対してランダム方向に配向する。このため,この化合物を含む電子輸送層は,電子輸送能が高くならない。また,この化合物は,チアゾール系化合物特有の配色を有し,透明性が高くない。
【0003】
国際公開WO2017−104792号パンフレット(特許文献2)には,ペロブスカイト型太陽電池が記載されている。電子輸送層は,ペロブスカイト型太陽電池を構成する層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−59668号公報
【特許文献2】国際公開WO2017−104792号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,基板に対して,電子輸送性材料を平行近くに配向でき,しかも透明性が高い電子輸送層や,電子輸送層の成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,基本的には,所定のベンゾイソキノリン誘導体や所定のナフタレンジイミド誘導体であれば,基板に対し平行な配向性を有するように制御した状態で,電子輸送層を成膜できるという実施例による知見に基づく。特に本発明は,上記の誘導体を構成する窒素原子に置換基を導入して上記の誘導体の溶解性を高めた状態の塗布液を基板に塗布し,脱置換基処理(脱保護処理)を行うことで,配向性や透明性に優れた電子輸送層を得ることができるという知見に基づく。
【0007】
本発明は,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含む,電子輸送層を提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
式(I)において,X及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示す。
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子である。
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,C〜Cアルキル基,C〜Cアルコキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,C〜C12シクロアルキル基,C〜C14アリール基,C〜C14アラルキル基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C14ヘテロアラルキル基又はC〜C14ヘテロシクリル基を示す。
11及びR12は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,それぞれ結合している原子及びそれらの原子の間にある原子と一緒になって,下記群Aから選択されるいずれかの基を構成する。
【0010】
群A
【化2】
【0011】
式(Ia)〜(Im)において,
及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示す。
11は,O,又はSを示す。
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子である。
13及びR14は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子である。
【0012】
電子輸送層の好ましい例は,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が,式(II)で示されるナフタレンジイミド誘導体のものである。
【化3】
【0013】
式(II)中,X〜Xは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示す。
及びYは,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子である。
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,C〜C12シクロアルキル基,C〜C14アリール基,C〜C14アラルキル基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C14ヘテロアラルキル基又はC〜C14ヘテロシクリル基を示す。
【0014】
電子輸送層の好ましい例は,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が,式(III)で示される化合物である。
【化4】
【0015】
本発明は,上記した化合物又は電子輸送層を含む太陽電池をも提供する。
【0016】
本発明は,上記した化合物又は電子輸送層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子をも提供する。
【0017】
次に,本発明は,電子輸送層の製造方法を提供する。
この方法は,溶液塗布工程と,置換基除去工程とを含む。
溶液塗布工程は,式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含む溶液を基板に塗布し,塗膜を形成する工程である。
置換基除去工程は,溶液塗布工程の後に式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体に改変するための工程である。
【0018】
【化5】
【0019】
【化6】
【0020】
式(I)及び式(I’)において,X及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示す。
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子である。
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,C〜Cアルキル基,C〜C6アルコキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,3〜10員シクリル基,5〜10員アリール基,3〜10員ヘテロシクリル基または5〜10員ヘテロアリール基を示す。
11及びR12は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,それぞれ結合している原子及びそれらの原子の間にある原子と一緒になって,群Aから選択されるいずれかの基を構成する。
PGは,tert−ブトキシカルボニル基,2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基,メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基,パラメトキシベンジルオキシカルボニル基,パラ(又はオルト)ニトロベンジルオキシカルボニル基;ベンジル基,4−メトキシベンジル基,トリフェニルメチル基;ホルミル基,アセチル基;ベンゾイル基;2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基,又はオルトニトロベンゼンスルホニル基を示す。
【0021】
この方法は,置換基除去工程が,塗膜に酸を接触させる酸接触工程と,塗膜を100℃以上200℃以下にする工程とを含むものであってもよい。
【0022】
本発明は,太陽電池の製造方法をも提供する。この方法は,先に説明した電子輸送層の製造方法を用いて,基板上に電子輸送層を形成する工程と,
電子輸送層上に光吸収層を形成する工程と,
光吸収層上にホール輸送層を形成する工程と,
ホール輸送層上に電極を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明は,所定のベンゾイソキノリン誘導体や所定のナフタレンジイミド誘導体を電子輸送性材料として用いることで,基板に対して,電子輸送性材料を平行近くに配向でき,しかも透明性が高い電子輸送層や,電子輸送層の成膜方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は,実施例における熱重量測定の結果を示す図面に替るグラフである。
図2図2は,実施例における紫外可視吸収特性を示す図面に替るグラフである。
図3図3は,実施例における偏光赤外多角入射分光法による測定結果を示す図面に替るグラフである。図3上部は,Boc保護ナフタレンジイミドのスペクトルを示し,図3下図は,ナフタレンジイミドのスペクトルを示す。
図4図4は,偏光赤外多角入射分光法による測定結果から導かれた化合物と基板とのなす角に関する考察を示す。
図5図5は,実施例における太陽電池の構成を示す概念図である。
図6図6は,実施例において得られたペロブスカイト太陽電池の電流密度−電圧特性を示す図面に替るグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0026】
本発明は,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体(本発明の化合物)を含む電子輸送層に関する。
【0027】
【化7】
【0028】
式(I)において,X及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示す。
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子である。
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,C〜Cアルキル基,C〜Cアルコキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,C〜C12シクロアルキル基,C〜C14アリール基,C〜C14アラルキル基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C14ヘテロアラルキル基又はC〜C14ヘテロシクリル基を示す。
11及びR12は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,それぞれ結合している原子及びそれらの原子の間にある原子と一緒になって,下記群Aから選択されるいずれかの基を構成する。
【0029】
群A
【化8】
【0030】
式(Ia)〜(Im)において,
及びXは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示す。
11は,O,又はSを示す。
は,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子である。
13及びR14は,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子である。
【0031】
式(I)において,X及びXの好ましい例は,O又はSである。
の好ましい例は,水素原子である。
〜Rの好ましい例は,水素原子,メチル基,エチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であり,水素原子が好ましい。
11及びR12の好ましい例は,群Aから選択されるいずれかの基を構成するものである。群Aの中では,Iaで示される基を構成するものが好ましい。
及びXの好ましい例は,O又はSである。
の好ましい例は,水素原子である。
【0032】
「C〜Cアルキル基」とは,炭素数1から6の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を意味し,例えば,メチル基,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,イソブチル基,n−ペンチル基,n−ヘキシル基,1−エチルプロピル基,2,2−ジメチルプロピル基などが挙げられる。
【0033】
「C〜Cアルコキシ基」とは,炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基を意味し,例えば,メトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,イソプロポキシ基,tert−ブトキシ基などが挙げられる。
【0034】
「C〜C12シクロアルキル基」とは,炭素数3〜12の飽和炭化水素環を意味し,シクロプロピル基,シクロブチル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,シクロヘプチル基,シクロオクチル基等で例示されるモノシクロアルキル基の他に,ポリシクロアルキル基,例えば,ビシクロアルキル基,トリシクロアルキル基等も包含され,ビシクロアルキル基としては,ノルボルニル基,例えば,exo−2−ノルボルニル基,endo−2−ノルボルニル基,3−ピナニル基,ビシクロ〔3.1.0〕ヘキシル基,ビシクロ〔2.2.1〕ヘプチル基,ビシクロ〔2.2.2〕オクト−2−イル基等,トリシクロアルキル基としては,アダマンチル基,例えば,1−アダマンチル基,2−アダマンチル基などが挙げられる。
【0035】
「C〜C14アリール基」とは,炭素数6〜14のアリール基を意味し,例えばフェニル基,ナフチル基,アントリル基,フェナントリル基が挙げられる。
【0036】
「C〜C14アラルキル基」とは,炭素数が8〜14であって,アルキルの水素原子の一つがアリール基により置き換えられているアルキル基を意味する。
【0037】
「C〜C12ヘテロシクロアルキル基」とは,窒素原子,酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される原子により,シクロ環を構成する炭素原子が1以上置換されたC〜C12シクロアルキル基を意味する。
【0038】
「C〜C14ヘテロアリール基」とは,窒素原子,酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される原子により,アリールを構成する炭素原子が1以上置換されたC〜C14アリール基を意味する。ヘテロアリールの例は,フラン,ベンゾフラン,チオフェン,ベンゾチオフェン,ピロール,ピリジン,ピリミジン,ピリダジン,ピラジン,キノリン,イソキノリン,フタラジン,ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール,ベンゾチアゾール,インドール,ベンゾトリアゾール,ベンゾジオキソラン,ベンゾジオキサン,ベンズイミダゾール,カルバゾールおよびキナゾリンである。
【0039】
「C〜C14ヘテロアラルキル基」とは,炭素数が8〜14であって,アルキルの水素原子の一つがヘテロアリール基により置き換えられているアルキル基を意味する。
【0040】
「ヘテロシクリル基」とは,窒素原子,酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される1〜3個の原子を含有する単環若しくは二環性の3〜10員の飽和若しくは不飽和の複素環基を意味し,例えば,アジリジニル基,アゼチジニル基,ピロリジニル基,モルホリニル基,ピロリル基,フリル基,チエニル基,ピラゾリル基,イミダゾリル基,オキサゾリル基,イソチアゾリル基,ピラニル基,ピリジル基,ピリダジニル基,ピリミジニル基,ピラジニル基,ベンゾイミダゾリル基,ベンゾオキサゾリル基,キノリル基,ピロリニル基,イミダゾリニル基,ピラゾリニル基,ジヒドロピリジル基,テトラヒドロピリジル基などが挙げられる。ヘテロシクリル基は,ヘテロシクロアルキル基及びヘテロアリール基を含んでもよい。
【0041】
式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体は,環に電子求引性基が結合している。このため,この誘導体のLUMO(最低非占軌道)のエネルギー順位が引き下げられ,この結果,電子を受け取りやすくなり,良好なアクセプターとなる。このような観点から,X及びXの好ましい例は,Oであり,この場合環にカルボニル基が結合することとなる。この観点から,R〜Rは,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であってもよいものの,分子の大きさを考慮すれば,R〜Rが水素原子であってもよい。
【0042】
式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体は,透明性に優れている。また,後述する実施例により示された通り,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体は,基板に対して垂直ではない配向(基板に平行に近い配向)を示す。このことは,この化合物を含む電子輸送層が,基板に対して垂直方向への電子移送に優れることを意味する。このため式(I)で示される化合物を含む電子輸送層は,膜厚を薄くできるなど,実際の利用上様々な利点を有する。
【0043】
電子輸送層の好ましい例は,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が,式(II)で示されるナフタレンジイミド誘導体のものである。下記のものは,式(I)において,群AがIaで示される基を構成するものである。
【化9】
【0044】
式(II)中,X〜Xは,同一でも異なってもよく,O,S,Se又はTeを示す。
及びYは,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,フッ素原子,又は塩素原子である。
〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であるか,
及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,ハロゲン原子,C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基で置換されてもよい,C〜C12シクロアルキル基,C〜C14アリール基,C〜C14アラルキル基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C12ヘテロシクロアルキル基,C〜C14ヘテロアリール基,C〜C14ヘテロアラルキル基又はC〜C14ヘテロシクリル基を示す。
【0045】
式(II)において,X及びXの好ましい例は,O又はSであり,Oが最も好ましい。
の好ましい例は,水素原子であるが,保護基などにより置換される基であればよい。
〜Rの好ましい例は,水素原子,メチル基,エチル基,メトキシ基,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であり,水素原子が好ましい。もっとも,R〜Rは,隣接する原子が連結基となり,他のベンゾイソキノリン誘導体との結合部を構成してもよい。環に電子求引性基が結合することで,LUMOのエネルギー順位が引き下げられるという観点から,R〜Rは,シアノ基,ニトロ基,フッ素原子,又は塩素原子であってもよい。
及びXの好ましい例は,O又はSであり,Oが最も好ましい。
の好ましい例は,水素原子である。
【0046】
電子輸送層の好ましい例は,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が,式(III)で示される化合物(ナフタレンジイミド)のものである。
【化10】
【0047】
ナフタレンジイミドは,1つの分子内のナフタレン環に電子求引性基であるカルボニル基が4つ結合している。このため,この誘導体のLUMOのエネルギー順位が引き下げられ,この結果,電子を受け取りやすくなり,良好なアクセプターとなる。また,ナフタレンジイミドは,透明性に優れるとともに,合成しやすいという特徴もある。一方,ナフタレンジイミドは,有機溶媒に溶解しにくい。このため,従来,ナフタレンジイミドを有機溶媒に溶解させて,溶液を塗布することで電子輸送層を得られなかった。
【0048】
高分子系
本明細書は,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を基本構造とし,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が複数連結したポリマーや,複数の式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体が,他の基礎構造と結合した構造を基本構造とするポリマーをも提供する。本明細書は,そのようなポリマーを用いた電子輸送層,電子輸送層を含む太陽電池,電子輸送層を含む有機EL素子や,それらの製造方法をも提供する。つまり,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を基本構造としたポリマーは,有機溶媒への溶解性に乏しい。一方,本発明は,イミド結合(イミド基)を構成する窒素分子に接続された水素原子等をいったん別の基に置き換えて,有機溶媒に溶解させ,塗膜を得る。その後,置き換えた基を除去することで,イミド結合等を復活させる。このようにして有機溶媒に溶解しにくいポリマーの溶解性を向上させて,塗膜を形成し,電子輸送層を得ることができる。この考え方は,電子輸送材料として使用できるイミド結合を有する分子やポリマーに広く用いることができる。この場合,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体のR〜Rが,連結基となり,他のベンゾイソキノリン誘導体と連結し,ポリマーを構成してもよい。また,R及びRと,R及びRとは,それぞれ結合している原子と一緒になって,連結基となり,他のベンゾイソキノリン誘導体と連結し,ポリマーを構成してもよい。また,Y及びYに存在する水素原子が他のベンゾイソキノリン誘導体のX〜Xと水素結合やファンデルワールス力による結合により,ポリマーの構造が決められるものであってもよい。また,複数の式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含むポリマーは,コアとなる複数の基が存在し,そのコアとなる基に,R及びR,又はR及びRが結合することで,規則性のある分子構造を有するポリマーとなってもよい。以下に,本発明のコンセプトを拡張できると考えられる2次元π電子シートを構成するポリマーの例を示す。
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】

【0051】
【化13】
【0052】
【化14】
【0053】
【化15】
【0054】
次に,本発明の化合物を含む太陽電池(特にペロブスカイト型太陽電池)や,本発明の化合物を含む電子輸送層について説明する。
【0055】
本発明のペロブスカイト型太陽電池は,例えば,透明電極,電子輸送層,ペロブスカイト層(光吸収層),正孔輸送層,及び金属電極をこの順に備える。
【0056】
透明電極
透明電極は,電子輸送層の支持体であるとともに,この層を介してペロブスカイト層(光吸収層)より電流(電子)を取り出す機能を有する層であることから,導電性基板が好ましく,光電変換に寄与する光を透過可能な透光性を有する透明導電層が好ましい。
【0057】
当該透明導電層としては,例えば,錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化錫(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜等が挙げられる。これら透明導電層の厚みは特に制限されず,通常,抵抗が5〜15Ω/□となるように調整することが好ましい。当該透明導電層は,成形する材料に応じ,公知の成膜方法により得ることができる。
【0058】
また,当該透明導電層は,外部から保護するために,必要に応じて,透光性被覆体により覆われ得る。当該透光性被覆体としては,例えば,フッ素樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリイミド等の樹脂シート;白板ガラス,ソーダガラス等の無機シート;これらの素材を組合せてなるハイブリッドシート等が挙げられる。これら透光性被覆体の厚みは特に制限されず,通常,抵抗が5〜15Ω/□となるように調整することが好ましい。
【0059】
電子輸送層
電子輸送層は,ペロブスカイト層(光吸収層)の活性表面積を増加させ,光電変換効率を向上させるとともに,電子収集しやすくするために形成される。電子輸送層は,基板上に形成することが好ましい。基板には,カソード界面層を設け,カソード界面層上に電子輸送層を設けてもよい。カソード界面層は,例えば,ポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE)やポリエチレンイミン(PEI)をスピンコート等により塗膜することで,カソード界面層を形成してもよい。電子輸送層の製造方法については,後述するものの,後述するもの以外としては,電子輸送層はフラーレン誘導体等有機半導体材料を用いた平坦な層でも好ましいが,電子輸送層の製造方法については,後に詳述する。なお,本発明の電子輸送層は,(正孔)ブロッキング層を兼ねたものであってもよい。つまり,本発明の電子輸送層は,正孔の漏れを防ぎ,逆電流を抑制して太陽電池特性(特に光電変換効率)を向上させる機能を有していてもよい。
【0060】
ペロブスカイト層(光吸収層)
ペロブスカイト型太陽電池におけるペロブスカイト層(光吸収層)は,光を吸収し,励起された電子を移動させることにより,光電変換を行う層である。ペロブスカイト層(光吸収層)は,ペロブスカイト材料や,ペロブスカイト錯体を含む。ペロブスカイト材料の例は,CHNHPbI及びこの化合物に配位子がついた錯体,国際公開WO2017−104792号パンフレットに記載された各種ペロブスカイト材料及び錯体である。ペロブスカイト層は,ロール・トゥ・ロールによる大量生産を実現することが好ましい。混合液をスピンコート,ディップコート,スクリーン印刷法,ロールコート,ダイコート法,転写印刷法,スプレー法,スリットコート法等,好ましくはスピンコートにより基板上に塗布することが好ましい。
【0061】
基板は,成膜する膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基板の材料も,本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず,公知の基板であってよく,有機化合物及び無機化合物のいずれも採用し得る。例えば,絶縁体基板,半導体基板,金属基板及び導電性基板(導電性フィルムも含む)のいずれも採用できる。また,これらの表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も好適に用いることができる。
【0062】
前記金属膜の構成金属としては,例えば,ガリウム,鉄,インジウム,アルミニウム,バナジウム,チタン,クロム,ロジウム,ニッケル,コバルト,亜鉛,マグネシウム,カルシウム,シリコン,イットリウム,ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属等が挙げられる。半導体膜の構成材料としては,例えば,シリコン,ゲルマニウム等の元素単体,周期表の第3族〜第5族,第13族〜第15族の元素を有する化合物,金属酸化物,金属硫化物,金属セレン化物,金属窒化物等が挙げられる。また,前記導電性膜の構成材料としては,例えば,スズドープ酸化インジウム(ITO),フッ素ドープ酸化インジウム(FTO),酸化亜鉛(ZnO),アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO),ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO),酸化スズ(SnO),酸化インジウム(In),酸化タングステン(WO)等が挙げられる。前記絶縁性膜の構成材料としては,例えば,酸化アルミニウム(AlO3),酸化チタン(TiO),酸化シリコン(SiO),窒化シリコン(Si),酸窒化シリコン(Si)等が挙げられ,絶縁性酸化物からなる絶縁性膜が好ましく,酸化チタン膜がより好ましい。本発明においては,導電性酸化物又は絶縁性酸化物からなる導電性膜が好ましく,スズドープ酸化インジウム(ITO)膜,フッ素ドープ酸化インジウム(FTO),酸化チタン(TiO)等がより好ましい。
【0063】
前記基板の形状としては,どのような形状のものであってもよく,あらゆる形状に対して有効であり,例えば,平板や円板等の板状,繊維状,棒状,円柱状,角柱状,筒状,螺旋状,球状,リング状等が挙げられ,多孔質構造体を採用することもできる。本発明においては,板状の基板が好ましい。基板の厚さは,本発明においては特に限定されず,0.1μm〜100mmが好ましく,1μm〜10mmがより好ましい。基板がガラス基板の場合,基板の厚さの例は,0.1mm以上1cm以下であり,0.5mm以上3mm以下でもよいし,0.5mm以上2mm以下でもよい。また,基板が,PET基板や2軸延伸ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)基板といった樹脂製の基板の場合,基板の厚さの例は,1μm以上200μm以下であり,5μm以上100μm以下でもよいし,10μm以上100μm以下でもよい。
【0064】
ペロブスカイト層は,本発明の錯体から得られるペロブスカイト材料又は本発明のペロブスカイト材料のみからなる層ともし得るし,電子輸送層との接着性の観点より,メソ酸化チタンや酸化アルミニウム等の金属酸化物及びペロブスカイト材料を含む層とすることもできる。
【0065】
ペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,光吸収効率と励起子拡散長とのバランス及び透明電極で反射した光の吸収効率の観点から,例えば,50〜1000nmが好ましく,200〜800nmがより好ましい。なお,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,100〜1000nmの範囲内であることが好ましく,250〜500nmの範囲内であることがより好ましい。具体的には,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚の下限値が100nm以上(特に250nm)以上であり,上限値が1000nm以下(特に500nm以下)であることが好ましい。本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,本発明の錯体からなる膜の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。
【0066】
また,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の平坦性は,走査型電子顕微鏡により測定した表面の水平方向500nm×500nmの範囲において高低差が50nm以下(−25nm〜+25nm)が好ましく,高低差が40nm以下(−20nm〜+20nm)がより好ましい。これにより,光吸収効率と励起子拡散長とのバランスをより取りやすくし,透明電極で反射した光の吸収効率をより向上させることができる。なお,ペロブスカイト層(光吸収層)の平坦性とは,任意に決定した測定点を基準点とし,測定範囲内において最も膜厚が大きいところとの差を上限値,最も小さいところとの差を下限値としており,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。
【0067】
正孔輸送層
正孔輸送層は,電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には,例えば,導電体,半導体,有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は,ペロブスカイト層(光吸収層)から正孔を受け取り,正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。正孔輸送層はペロブスカイト層(光吸収層)上に形成される。当該導電体及び半導体としては,例えば,CuI,CuInSe,CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP,NiO,CoO,FeO,Bi,MoO,Cr等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,1価銅を含む半導体が好ましく,CuIがより好ましい。有機正孔輸送材料としては,例えば,ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT),ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’−テトラキス-(N,N−時−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(spiro−OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,トリフェニルアミン誘導体,フルオレン誘導体等が好ましく,PTAA,spiro−OMeTADなどがより好ましい。
【0068】
正孔輸送層中には,正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として,リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI),銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀,NOSbF,SbCl,SbF等の酸化剤を含むこともできる。また,正孔輸送層中には,t−ブチルピリジン(TBP),2−ピコリン,2,6−ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は,従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層の膜厚は,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,例えば,30〜200nmが好ましく,50〜100nmがより好ましい。正孔輸送層を成膜する方法は,例えば,乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。例えば,有機正孔輸送材料を含む溶液を,乾燥雰囲気下,ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート等)し,30〜150℃(特に50〜100℃)で加熱することが好ましい。
【0069】
金属電極
金属電極は,透明電極に対向配置され,正孔輸送層の上に形成されることで,正孔輸送層と電荷のやり取りが可能である。金属電極としては,当業界で用いられる公知の素材を用いることが可能であり,例えば,白金,チタン,ステンレス,アルミニウム,金,銀,ニッケル等の金属又はこれらの合金が挙げられる。これらの中でも金属電極は,乾燥雰囲気下で電極を形成することができる点から,蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。 上記層構成以外の構成を有するペロブスカイト型太陽電池についても,同様の方法により,製造することができる。
【0070】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
有機EL素子は,例えば特開2017−123352号公報,特開2015−071619号公報に記載される通り,公知の素子であり,その製造方法も公知である。有機EL素子の例は,基板と,陽極と,陰極と,陽極と陰極との間に配置された有機層と,を有する。 そして,有機層は,陽極側から順に,正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,および電子注入層が,この順番で積層されて構成される。本発明の化合物は,電子輸送層における電子輸送材料として用いることができる。
【0071】
次に,電子輸送層の製造方法について説明する。
この方法は,溶液塗布工程と,置換基除去工程とを含む。
溶液塗布工程は,式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含む溶液を基板に塗布し,塗膜を形成する工程である。
置換基除去工程は,溶液塗布工程の後に式(I’)で示される化合物を,式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体に改変するための工程である。
【0072】
式(I)で示される化合物は,有機溶媒への溶解性に乏しい。このため,式(I)で示される化合物は,電子輸送材料には用いられなかった。一方,本発明の電子輸送層の製造方法は,式(I)で示される化合物ではなく,式(I’)で示される化合物を塗布液に含ませる。そして,後の置換基除去工程において,所定の置換基を除去し,式(I’)で示される化合物を,式(I)で示される化合物に変換する。このようにして,従来用いられなかった式(I)で示される化合物を含む電子輸送層を製造できた。そして,実際に式(I)で示される化合物を含む電子輸送層を製造したところ,透明性と,電子輸送能に優れていた。これは,式(I)で示される化合物を含む電子輸送層において,式(I)で示される化合物が基板に平行(基板に対する傾斜が大きくなく)に配向することによる。
【0073】
【化16】
【0074】
【化17】
【0075】
式(I)及び式(I’)において,各基は,上記したとおりである。式(I’)で示される化合物の代わりに,式(II’)又は式(III’)で示される化合物を用いてもよい。この場合,それぞれ式(II)又は式(III)で示される化合物に置換されることとなる。
【0076】
【化18】
【0077】
【化19】
【0078】
PG及びPGの例は,tert−ブトキシカルボニル基(Boc),2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基,メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基,パラメトキシベンジルオキシカルボニル基,パラ(又はオルト)ニトロベンジルオキシカルボニル基等のアリールメトキシカルボニル基;ベンジル基,4−メトキシベンジル基,トリフェニルメチル基等のアリールメチル基;ホルミル基,アセチル基等のアルカノイル基;ベンゾイル基等のアロイル基;又は2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基,オルトニトロベンゼンスルホニル基等のアリールスルホニル基である。PG及びPGが,tert−ブトキシカルボニル基(Boc)である場合,置換基除去工程でtert−ブトキシカルボニル基が除去された後,二酸化炭素とイソブテンとに分解し,塗膜から揮発する。このため,PG及びPGの中では,tert−ブトキシカルボニル基(Boc)が好ましい。
【0079】
式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体
式(I)で示されるベンゾイソキノリン誘導体は,公知物質である。このベンゾイソキノリン誘導体(本発明の化合物)は,イミド基を有している。イミド基は,生体内に多く存在する基であり,イミド基を保護する保護基やその脱離方法について,多々文献が存在する。本明細書においても,例えば,イミド基に保護基を導入する方法を適宜用いることで,式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を得ることができる。その例は,本発明の化合物を極性溶媒中において,保護基を有する化合物と反応させ,イミド基中の水素原子を保護基と置換するものである。
【0080】
式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含む溶液
式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を含む溶液は,式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体を,溶液1リットル当たり,0.1g以上500g以下含めばよく,1g以上100g以下含んでもよいし,3g以上20g以下含んでもよい。この溶液は,有機溶媒を第1の溶媒として含むことが好ましい。有機溶媒の例は,アミド系溶媒,芳香族有機溶媒,グリコールエーテル類,グリコールエステル類である。具体的な有機溶媒の例は,N,N−ジメチルアセトアミド,N,N−ジメチルホルムアミド,N−メチルピロリドンやトルエン,キシレン,エチルベンゼン,クロロベンゼン,オルトジクロロベンゼン,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール,エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート,ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。上記有機溶媒は単独で用いることもできるが,任意の比率で混合して使用することもでき,さらには他の有機溶媒と併用して用いることもできる。
【0081】
有機溶媒は,第1の有機溶媒であってもよいし,第1の有機溶媒と第2の有機溶媒と併用してもよいし,以下に説明する第2の有機溶媒を用いてもよい。第2の有機溶媒の例は,メタノール,エタノール,イソプロパノールなどのアルコール類,エチレングリコール,ジエチレングリコールなどのグリコール類,アセトン,メチルエチルケトンなどのケトン類,ジクロロメタン,クロロホルム,四塩化炭素などのハロゲン化炭素である。第2の有機溶媒も単独で用いることもできるが,任意の比率で混合して使用することもできる。第1の有機溶媒と第2の有機溶媒の重量比は,任意であり,重量比の例は,1:100以上100:1以下であり,1:10以上10:1以下でもよいし,1:5以上5:1以下でもよい。
【0082】
この溶液を用いて得られた電子輸送層は,本発明の化合物の他,有機溶媒に由来する有機物を含んでいてもよい。
【0083】
溶液を塗布する塗布方法の例は
スクリーン印刷,浸漬塗布,スピンコート塗布,ローラ塗布,及びスプレー塗布である。これらの中では,スピンコート塗布又はローラ塗布が好ましい。なお,塗布は例えば15〜30℃程度で行うことができる。
【0084】
電子輸送層の厚みは,特に制限されず,ペロブスカイト層(光吸収層)からの電子をより収集できる観点から,10〜300nm程度が好ましく,10〜250nm程度がより好ましい。いっぽう,本発明の化合物は電子輸送能が高いため,電子輸送層の厚みが3nm〜9nmでもよく,4nm以上8nm以下でも,4nm以上7nm以下でもよい。
【0085】
置換基除去工程
置換基除去工程は,基本的には,焼鈍(アニール)を行うなどして,式(I’)で示されるベンゾイソキノリン誘導体におけるイミド基に結合した置換基(PG及びPG)を除去する工程である。置換基除去工程は,塗膜を100℃以上200℃以下の状態で,5分以上1日以下維持するアニール処理を行ってもよい。アニール処理の温度は,145℃以上200℃以下でもよいし,150℃以上200℃以下でもよいし,160℃以上195℃以下でもよいし,170℃以上190℃以下でもよい。アニール処理の時間は,20分以上5時間以下でもよいし,20分以上3時間以下でもよいし,30分以上2時間以下でもよい。
【0086】
置換基除去工程が,塗膜に酸を接触させる酸接触工程と,塗膜を150℃以上200℃以下にする工程(アニール工程)とを含むものであってもよい。酸接触工程とアニール工程は,同時に行ってもよいし,いずれかが先でもよい。酸接触工程において用いられる酸の例は,塩酸,硫酸,酢酸又は硝酸である。これらの酸は,例えば,希釈された状態(例えば,0.01M以上0.5M以下,0.1M以上0.5M以下)の状態で噴霧器により塗膜に塗布することで,塗膜に酸を接触させればよい。このようにすると,置換基除去が促進される。酸の噴霧量は適宜調整すればよい。
【0087】
置換基除去工程は,置換基(PG及びPG)や本発明の化合物に応じて,紫外線,可視光,赤外線,X線又は中性子線を塗膜に照射するといった方法を採用してもよい。
【0088】
本発明は,太陽電池の製造方法をも提供する。この方法は,先に説明した電子輸送層の製造方法を用いて,基板上に電子輸送層を形成する工程と,電子輸送層上に光吸収層を形成する工程と,光吸収層上にホール輸送層を形成する工程と,ホール輸送層上に電極を形成する工程とを含む。
【実施例1】
【0089】
以下,実施例を用いて本発明を具体的に説明する。本発明は,以下の実施例に限定されるものではない。本発明の範囲には,以下の実施例に基づき,当業者が公知技術を適用し拡張できる発明も含まれる。
【0090】
[Boc基の導入]
【化20】
【0091】
ナフタレンジイミド1(1.06 g, 4.0 mmol)をジクロロメタン(80 mL)に懸濁させ,二炭酸ジ−tert−ブチル(2.63 g, 12.0 mmol),4−ジメチルアミノピリジン(98 mg, 0.8 mmol)を加えた.室温で8時間撹拌した後,水(100 mL)を加え,ジクロロメタン(50 mL)で3回抽出した.合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥,ろ過,濃縮することにより粗生成物を得た.ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し,ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶することで,Boc保護ナフタレンジイミド2(1.23 g, 66%)を得た.
【0092】
熱重量測定には島津製作所TGA−50を用いた.Boc保護ナフタレンジイミド2を5.32 mg量り取り,窒素雰囲気下で2℃/分の割合で加熱しながら重量の変化を測定した.その結果を図1に示す。図1は,実施例における熱重量測定の結果を示す図面に替るグラフである。170 ℃〜190 ℃付近で原料に対して42.7%の重量減少が見られたが,これは2つのBoc基の重量(計算値42.9%)に対応し,加熱によるBoc基の脱離を示唆している.
【0093】
紫外可視吸収測定には島津製作所UV−3150を用いた.Boc保護ナフタレンジイミド2をクロロベンゼンに溶解(7 mg/mL)させ,石英基板上に1000 rpmで60秒スピンコートすることにより薄膜を形成した.このサンプルを180 ℃で1時間アニールすることにより,基板上でのBoc基の脱保護を試みた.図2は,実施例における紫外可視吸収特性を示す図面に替るグラフである。アニール前とアニール後のサンプルについて紫外可視吸収特性を測定し,アニールによるBoc基の脱離に伴い吸収スペクトルが変化することを見出した.
【0094】
偏光赤外多角入射分光法(pMAIRS)測定にはサーモフィッシャーサイエンティフィック社Nicolet 6700 FT−IR分光器を用いた.図3は,実施例における偏光赤外多角入射分光法による測定結果を示す図面に替るグラフである。図3上部は,Boc保護ナフタレンジイミドのスペクトルを示し,図3下図は,ナフタレンジイミドのスペクトルを示す。図4は,偏光赤外多角入射分光法による測定結果から導かれた化合物と基板とのなす角に関する考察を示す。Boc保護ナフタレンジイミド2をクロロホルムに溶解(10 mg/mL)させ,シリコン基板(バルカー・エフエフティ社)上に1000 rpmで60秒スピンコートすることにより薄膜を形成した.これを180 ℃で1時間アニールしたサンプルでは, Boc基のC=O伸縮に由来する1771 cm−1のピークが消失していることなどから,Boc基が脱保護されていることが確認された.また,880cm−1付近に見られるナフタレン環のC−H面外変角のピークに注目すると,アニール前は面内方向の吸光度と面外方向の吸光度が同程度であるのに対し,アニール後では面外方向の吸光度が著しく大きくなっていることがわかる.C−H面外変角では双極子モーメントの変化がπ平面に対して垂直方向であることを踏まえると,この結果はナフタレンジイミド分子が基板に対してフェイスオン(平行)に配向していることを示唆している.実際,配向角Φを,面内方向の吸光度AIP,面外方向の吸光度AOPを用いた関係式 Φ= tan−1{(2AIP/AOP1/2} に従って計算した結果,アニール前後で配向角が56度から29度に変化していることがわかった.アニール後の膜で得られたフェイスオンの配向は,基板に対して垂直方向の電荷輸送に有利であると考えられる.
【実施例2】
【0095】
ペロブスカイト太陽電池の作製
図5は,実施例における太陽電池の構成を示す概念図である。この実施例では,図5において図示される構造を有する太陽電池を製造した。
【0096】
ITO付ガラス基板(25 mm×24 mm,ジオマテック)を,水,アセトン,セミコクリーン56,水,エタノールの順でそれぞれ15分間超音波洗浄した.最後に,15分間のUVオゾン洗浄を行った.
上記ITO基板に,カソード界面層として,0.1 wt%ポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE)の2−メトキシエタノール溶液を4000 rpmで60秒間スピンコートし,100 ℃で10分間アニールした.次に,電子輸送層として,Boc保護ナフタレンジイミド2の10 mg/mLクロロホルム溶液(結晶性を下げるためにポリメタクリル酸メチルを重量で10%添加)を1000 rpmで60秒間スピンコートした.この基板を180 ℃で1時間アニールすることにより,Boc基を脱保護した.
【0097】
PbI及びMAIを1:1(モル比)で含む混合物に対して,DMFとDMSOの混合溶媒(体積比3:1)を濃度が1.5 Mになるように加えた.この溶液をスピンコートし,その途中で450 μLのトルエンを落とした.得られたフィルムを100 ℃でアニールすることでペロブスカイト層を作製した.
【0098】
正孔輸送材料(Spiro−OMeTAD; 2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン, 73.6 mg),[トリス(2−(1H−ピラゾル−1−イル)−4−tert−ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](FK209, 13.3 mg),4−tert−ブチルピリジン(TBP, 27 μL),及びリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI, 7.6 mg)を1 mLのクロロベンゼンに溶解させた.30分間撹拌後,溶液をメンブレンフィルターで濾過し,濾液をペロブスカイト層上に4000 rpmで30秒間スピンコートし,70 ℃で30分間アニールした.最後に,真空蒸着により80 nmの金電極をつけ,ペロブスカイト太陽電池を得た.
得られたペロブスカイト太陽電池において,電流密度−電圧特性を測定した。その結果を図6に示す。図6は,実施例において得られたペロブスカイト太陽電池の電流密度−電圧特性を示す図面に替るグラフである。図6に示されるように,短絡電流密度JSC = 14.5 mA cm−2,開放電圧VOC = 0.87 V,曲線因子FF = 0.42となり,光電変換効率(PCE) は 6.2%であった.以上より,Boc保護ナフタレンジイミド2の熱変換によって作製したナフタレンジイミド1の膜が電子輸送層として機能することがわかった.
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は,太陽電池や有機ELといった情報電子産業において利用されるほか,電子輸送材料を提供する化学産業においても利用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6