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特開2019-38007ガルバノスキャナ及びレーザ加工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-38007(P2019-38007A)
(43)【公開日】2019年3月14日
(54)【発明の名称】ガルバノスキャナ及びレーザ加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20190215BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20190215BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20190215BHJP
【FI】
   B23K26/082
   B23K26/00 M
   G02B26/10 F
   G02B26/10 104Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-161237(P2017-161237)
(22)【出願日】2017年8月24日
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
【住所又は居所】山梨県南都留郡忍野村忍草字古馬場3580番地
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴視
(72)【発明者】
【氏名】川合 暁
【テーマコード(参考)】
2H045
4E168
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045AB08
2H045BA15
2H045DA02
2H045DA11
2H045DA46
4E168BA00
4E168CA06
4E168CB04
4E168EA15
4E168EA24
4E168GA03
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】汚れた保護ガラスを人手によらず、自動的に取り外すことができ、ダウンタイムを最小化することができるガルバノスキャナ及びレーザ加工システムを提供すること。
【解決手段】レーザ光Lを対象物に照射して加工を行うガルバノスキャナ3であって、レーザ光Lを出射する出射部30と、加工時に発生する飛散物から出射部30を保護する保護ガラス5と、保護ガラス5を保持するガラス保持機構6、7を備え、保護ガラス5は、少なくとも上下方向に3重構造51、52、53を備え、ガラス保持機構6、7は、3重構造の保護ガラス51、52、53のうち、最下層の保護ガラス51を下方に脱落可能に保持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を対象物に照射して加工を行うガルバノスキャナであって、
レーザ光を出射する出射部と、加工時に発生する飛散物から前記出射部を保護する保護ガラスと、前記保護ガラスを保持するガラス保持機構を備え、
前記保護ガラスは、少なくとも上下方向に3重構造を備え、
前記ガラス保持機構は、前記3重構造の前記保護ガラスのうち、最下層の前記保護ガラスを下方に脱落可能に保持する、ガルバノスキャナ。
【請求項2】
前記ガルバノスキャナはロボットのアームの先端に設けられ、
前記ガラス保持機構は、最下層の前記保護ガラスが前記ロボットの動作により下方に脱落する構成を有する、請求項1に記載のガルバノスキャナ。
【請求項3】
前記ガラス保持機構は、最下層の前記保護ガラスに設けられ、最下層の前記保護ガラスの上層の前記保護ガラスに対して、直接的に又は間接的に係止及びその解除をすることが可能な係止機構と、ピンが挿通可能な通し穴とを有し、前記通し穴への前記ピンの挿入によって前記係止機構が解除されることにより、最下層の前記保護ガラスが下方に脱落する構成を有する、請求項1又は2に記載のガルバノスキャナ。
【請求項4】
前記ガラス保持機構は、最下層の前記保護ガラスの外側面を直接的に又は間接的に押圧し、摩擦力によって最下層の前記保護ガラスを保持する摩擦機構を有し、最下層の前記保護ガラスが前記摩擦機構による前記摩擦力に抗して下方に引き抜かれることにより、最下層の前記保護ガラスが下方に脱落する構成を有する、請求項1又は2に記載のガルバノスキャナ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガルバノスキャナと、
前記ガルバノスキャナを移動させる移動手段と、
前記ガルバノスキャナ及び前記移動手段の動作を制御する制御部と、
前記ガルバノスキャナの最下層の前記保護ガラスの汚れを検知する汚れ検知部と、を備えるレーザ加工システムであって、
前記ガルバノスキャナから下方に脱落する最下層の前記保護ガラスを受ける保護ガラス受け部を更に備え、
前記制御部は、前記汚れ検知部によって最下層の前記保護ガラスの汚れが検知された場合に、前記ガルバノスキャナを前記保護ガラス受け部に移動させ、前記ガラス保持機構によって保持される最下層の前記保護ガラスを前記保護ガラス受け部に脱落させるように、前記移動手段の動作を制御する、レーザ加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を対象物に照射して加工を行うガルバノスキャナ、及び、これを備えたレーザ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク(対象物)に向けてレーザ光を照射することにより、溶接等の加工を行うレーザ加工システムとして、多軸ロボットのアームの先端に、レーザ光を出射するガルバノスキャナを備えるものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
ガルバノスキャナとは、互いに直交する2つの回転軸まわりにそれぞれ回転可能な2つのミラーを備え、これらミラーをサーボモータで回転駆動することにより、レーザ光源から出射されるレーザ光を走査する装置である。ガルバノスキャナは、レーザ加工時にワークから飛散した飛散物が、レーザ光を出射する出射部に付着することを防ぐため、出射部に保護ガラスが設置されている。
【0004】
図11は、従来のガルバノスキャナを模式的に示す図である。ガルバノスキャナ100は、レーザ光Lを出射する出射部101に保護ガラス102を備えている。保護ガラス102は、保守性向上のために2重化して設置されることが一般的であり、最下層の第1保護ガラス103と、その上層の第2保護ガラス104とで構成される。
【0005】
2重化された保護ガラス102のうち、第2保護ガラス104はガルバノスキャナ100の出射部101に固定されている。一方、最下層の第1保護ガラス103は、クランプ105やネジ等によって第2保護ガラス104に着脱可能に取り付けられている。
【0006】
ところで、最下層の第1保護ガラス103には、レーザ加工時に飛散した飛散物による汚れ200が付着することがある。第1保護ガラス103に汚れ200が付着すると、レーザ光の一部が汚れ200によって遮られ、ワークに照射されるレーザ光量が減少して加工品質を低下させる要因となる。このため、レーザ加工システムは、第1保護ガラス103に汚れ200が付着したかどうかを監視しており、第1保護ガラス103に汚れ200が付着したことを検出した場合、その第1保護ガラス103は交換されるようになっている。
【0007】
保護ガラスに汚れが付着したことを検出する方法は従来から知られている。例えば、保護ガラスに汚れが付着すると、レーザ光が汚れに当たって散乱するため、その散乱光を光検出器によって光学的に検出する方法(例えば、特許文献2参照)や、保護ガラスの近傍にカメラを配置し、このカメラによって保護ガラスに付着した汚れを検出する方法(例えば特許文献3参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−157297号公報
【特許文献2】特表2001−509889号公報
【特許文献3】特開2010−240674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
汚れ200が付着した第1保護ガラス103を交換する際には、安全性確保のため、一旦ラインを停止させた後に、作業員が人手でクランプ105やネジ等を操作して、汚れた第1保護ガラス103を取り外し、次いで、新しい別の第1保護ガラスを取り付ける作業を行っていた。ロボットはクランプ105やネジ等を操作することができず、自動化が困難なためである。このため、ラインのダウンタイムが大きくなり、作業効率が低下してしまう問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、汚れた保護ガラスを人手によらず、自動的に取り外すことができ、ダウンタイムを最小化することができるガルバノスキャナ及びレーザ加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明に係るガルバノスキャナは、レーザ光を対象物に照射して加工を行うガルバノスキャナ(例えば、後述のガルバノスキャナ3)であって、レーザ光(例えば、後述のレーザ光L)を出射する出射部(例えば、後述の出射部30)と、加工時に発生する飛散物から前記出射部を保護する保護ガラス(例えば、後述の保護ガラス5)と、前記保護ガラスを保持するガラス保持機構(例えば、後述のガラス保持機構6、7)を備え、前記保護ガラスは、少なくとも上下方向に3重構造を備え、前記ガラス保持機構は、前記3重構造の前記保護ガラスのうち、最下層の前記保護ガラス(例えば、後述の第1保護ガラス51)を下方に脱落可能に保持するものである。
【0012】
(2) (1)に記載のガルバノスキャナにおいて、前記ガルバノスキャナはロボット(例えば、後述のロボット2)のアーム(例えば、後述のアーム21)の先端に設けられ、前記ガラス保持機構は、最下層の前記保護ガラスが前記ロボットの動作により下方に脱落する構成を有するものであってもよい。
【0013】
(3) (1)又は(2)に記載ガルバノスキャナにおいて、前記ガラス保持機構は、最下層の前記保護ガラスに設けられ、最下層の前記保護ガラスの上層の前記保護ガラス(例えば、後述の第2保護ガラス52)に対して、直接的に又は間接的に係止及びその解除をすることが可能な係止機構(例えば、後述の係止機構60)と、ピン(例えば、後述のピン43)が挿通可能な通し穴(例えば、後述の通し穴63)とを有し、前記通し穴への前記ピンの挿入によって前記係止機構が解除されることにより、最下層の前記保護ガラスが下方に脱落する構成を有するものであってもよい。
【0014】
(4) (1)又は(2)に記載ガルバノスキャナにおいて、前記ガラス保持機構は、最下層の前記保護ガラスの外側面を直接的に又は間接的に押圧し、摩擦力によって最下層の前記保護ガラスを保持する摩擦機構(例えば、後述の摩擦機構70)を有し、最下層の前記保護ガラスが前記摩擦機構による前記摩擦力に抗して下方に引き抜かれることにより、最下層の前記保護ガラスが下方に脱落する構成を有するものであってもよい。
【0015】
(5) 本発明に係るレーザ加工システムは、(1)〜(4)のいずれかに記載のガルバノスキャナ(例えば、後述のガルバノスキャナ3)と、前記ガルバノスキャナを移動させる移動手段(例えば、後述のロボット2)と、前記ガルバノスキャナ及び前記移動手段の動作を制御する制御部(例えば、後述のスキャナ制御部12、ロボット制御部11)と、前記ガルバノスキャナの最下層の前記保護ガラスの汚れを検知する汚れ検知部(例えば、後述の汚れ検知部14)と、を備えるレーザ加工システム(例えば、後述のレーザ加工システム1)であって、前記ガルバノスキャナから下方に脱落する最下層の前記保護ガラスを受ける保護ガラス受け部(例えば、後述の保護ガラス受け部4)を更に備え、前記制御部は、前記汚れ検知部によって最下層の前記保護ガラスの汚れが検知された場合に、前記ガルバノスキャナを前記保護ガラス受け部に移動させ、前記ガラス保持機構によって保持される最下層の前記保護ガラスを前記保護ガラス受け部に脱落させるように、前記移動手段の動作を制御するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るガルバノスキャナ及びレーザ加工システムによれば、汚れた保護ガラスを人手によらず、自動的に取り外すことができ、ダウンタイムを最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るガルバノスキャナを備えたレーザ加工システムの一例を示す図である。
図2】本発明に係るガルバノスキャナの一例の構成を模式的に示す図である。
図3図1に示すレーザ加工システムの機能ブロック図である。
図4】本発明に係るガルバノスキャナの保護ガラスの構成を模式的に示す図である。
図5】第1実施形態に係るガラス保持機構を有する最下層の保護ガラスを下から見た図である。
図6図5に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを保持している様子を説明する部分断面図である。
図7図5に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを脱落させる様子を説明する部分断面図である。
図8】第2実施形態に係るガラス保持機構を有する最下層の保護ガラスを下から見た図である。
図9図8に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを保持している様子を説明する部分断面図である。
図10図8に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを脱落させる様子を説明する部分断面図である。
図11】保護ガラスを備えた状態の従来のガルバノスキャナの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るガルバノスキャナを備えたレーザ加工システムの一例を示す図である。図2は、本発明に係るガルバノスキャナの一例の構成を模式的に示す図である。図1は、レーザ加工システムとしてのリモートレーザ溶接システムを例示している。
図1に示すように、リモートレーザ溶接システム1は、ロボット2と、ガルバノスキャナ3と、保護ガラス受け部4と、を備えている。
【0019】
ロボット2は多軸ロボットからなり、基部20と、この基部20から延びるアーム21と、アーム21を回転させる複数の関節軸22a〜22eと、各関節軸22a〜22eを駆動するサーボモータからなる図示しないロボットモータと、を備える。ロボット2は、後述するロボット制御部によりその動作が制御される。このロボット2は、本発明における移動手段の一例である。
【0020】
ガルバノスキャナ3は、ロボット2のアーム21の先端に設けられている。ガルバノスキャナ3は、後述するレーザ光源からのレーザ光Lを出射し、ワークWの突合せ加工点(突合せ溶接点)に向けてレーザ光Lを走査するレーザ加工ヘッドとして機能する。ガルバノスキャナ3は、後述のスキャナ制御部によりその動作が制御される。
【0021】
このリモートレーザ溶接システム1は、ロボット2の動作によりアーム21の先端のガルバノスキャナ3を搬送し、自動車ボディ等のワークWの突合せ加工点(突合せ溶接点)に向けてガルバノスキャナ3からレーザ光Lを揺動させながら照射することで、例えばウィービング溶接を実行する。
【0022】
ガルバノスキャナ3は、図2に示すように、レーザ光源からのレーザ光Lを順次反射させる2つのガルバノミラー31、32と、ガルバノミラー31、32のそれぞれを各回転軸X1、X2まわりに回転駆動させる2つのガルバノモータ33、34と、レーザ光Lを集光して出射する集光レンズ35とを有する。これらガルバノミラー31、32、ガルバノモータ33、34及び集光レンズ35は、出射部30を構成する。また、ガルバノスキャナ3は、出射部30を保護する保護ガラス5と、保護ガラス5を保持するガラス保持機構6とを更に備える。
【0023】
ガルバノミラー31、32は、互いに直交する2つの回転軸X1、X2まわりにそれぞれ回転可能に構成される。ガルバノモータ33、34は、サーボモータで構成され、ガルバノミラー31、32を回転駆動することにより、レーザ光源(図2には示されていない)から出射されるレーザ光Lを走査する。
【0024】
図2に示すように、レーザ光源からのレーザ光Lは、2つのガルバノミラー31、32で順次反射される。レーザ光Lは、集光レンズ35で集光され、出射部30を保護する保護ガラス5を透過した後、ワークWに向けて照射される。このとき、ガルバノモータ33、34により2つのガルバノミラー31、32をそれぞれ回転駆動させると、これらガルバノミラー31、32に入射するレーザ光Lの入射角が連続的に変化する。その結果、ガルバノミラー31、32で順次反射してワークWに到達するレーザ光Lが、ワークW上の所定の走査経路に沿って走査される。
【0025】
保護ガラス受け部4は、詳細には後述するが、ガルバノスキャナ3から下方に脱落する保護ガラスを受ける部位であり、ロボット2のアーム21の移動範囲内に配置されている。保護ガラス受け部4は、基台41と、その基台41の上に、保護ガラスを下方に脱落させる際に使用される治具42とを有する。
【0026】
図3は、図1に示すリモートレーザ溶接システム1の機能ブロック図である。図3に示すように、リモートレーザ溶接システム1は、主として、上述のロボット2と、ガルバノスキャナ3と、ロボット2を制御するロボット制御部11と、ガルバノスキャナ3を制御するスキャナ制御部12と、ガルバノスキャナ3にレーザ光Lを出射するレーザ光源13と、保護ガラス5の汚れを検知する汚れ検知部14と、により構成される。
【0027】
ロボット制御部11は、上述のロボット2の各ロボットモータに対して制御指令を出力することで、各関節軸22a〜22eを駆動し、アーム21の先端に設けられたガルバノスキャナ3を所望の位置に搬送する。
【0028】
スキャナ制御部12は、上述のガルバノスキャナ3のガルバノモータ33、34に対して制御指令を出力することで、各ガルバノミラー31、32に入射するレーザ光Lの入射角を調整する。これにより、ガルバノスキャナ3からワークWに向けて出射されるレーザ光Lの照射位置が調整される。また、スキャナ制御部12は、レーザ光源13からガルバノスキャナ3へのレーザ光の出射を制御する。
【0029】
汚れ検知部14は、レーザ加工(レーザ溶接)時に、ワークWから飛散した飛散物がガルバノスキャナ3の保護ガラス5に付着したことを検知する。本発明において、この汚れ検知部14を構成する具体的な汚れ検知手段の制限はない。例えば、上述したように、レーザ光が汚れに当たって散乱した散乱光を光検出器によって光学的に検出する手段や、保護ガラスの近傍にカメラを配置し、このカメラによって保護ガラスに付着した汚れを検出する手段等の公知の手段を採用することができる。汚れ検知部14によって保護ガラス5に汚れが付着したことが検知されると、汚れ検知部14は、ロボット制御部11及びスキャナ制御部12にそれぞれ検知信号を出力する。ロボット制御部11は、この検知信号の入力があると、ロボット2を制御して、ガルバノスキャナ3を保護ガラス受け部4に移動させる。スキャナ制御部12は、この検知信号の入力があると、レーザ光源13からガルバノスキャナ3へのレーザ光の出射を停止させる。
【0030】
次に、保護ガラス5について更に詳細に説明する。
図4は、本発明に係るガルバノスキャナ3の保護ガラス5の構成を模式的に示す図である。保護ガラス5は、ガルバノスキャナ3のレーザ光Lの出射部30に取り付けられている。
【0031】
本実施形態に示す保護ガラス5は、下から順に、第1保護ガラス51、第2保護ガラス52及び第3保護ガラス53の3枚の保護ガラスを有し、これら3枚の保護ガラス51〜53が、上下方向に積層された3重構造を有している。第1保護ガラス51は、本発明における「最下層の保護ガラス」に対応する。第2保護ガラス52は、本発明における「最下層の保護ガラスの上層の保護ガラス」に対応する。なお、ここでいう上下方向とは、ガルバノスキャナ3の出射部30から出射されるレーザ光Lの出射方向に沿う方向であり、第3保護ガラス53を上、第1保護ガラス51を下とする方向である。
【0032】
各保護ガラス51〜53は、それぞれ薄い円柱状のガラス板からなる。各保護ガラス51〜53の外周は、それぞれガラスホルダ51a〜53aを有している。これらの保護ガラス51〜53のうち、最上層の第3保護ガラス53だけは、ガラスホルダ53aを介してガルバノスキャナ3の出射部30に固定されており、交換不可能となっている。また、第2保護ガラス52は、ガラスホルダ52aを介して、公知のクランプ又はネジ等(図4には示されていない)によって第3保護ガラス53のガラスホルダ53aに対して着脱可能に取り付けられている。一方、第1保護ガラス51は、後述するガラス保持機構を備えている。ガラス保持機構は、第1保護ガラス51を、その上層の第2保護ガラス52から重力方向の下方に容易に脱落可能となるように保持している。
なお、以下の説明において、「保護ガラス」というとき、特に記載がない限り、ガラスホルダを含むものとする。
【0033】
[ガラス保持機構の第1実施形態]
次に、ガラス保持機構の具体的構成について説明する。
図5は、第1実施形態に係るガラス保持機構を有する最下層の保護ガラスを下から見た図である。図6は、図5に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを保持している様子を説明する部分断面図である。図7は、図5に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを脱落させる様子を説明する部分断面図である。
【0034】
第1実施形態に係るガラス保持機構6は、最下層の第1保護ガラス51が容易に下方に脱落できるように第1保護ガラス51を保持するものであり、第1保護ガラス51のガラスホルダ51aに設けられている。ガラス保持機構6は、係止爪61と、この係止爪61の端部を付勢する弾性部材62とで構成される係止機構60と、ピンが挿通可能な通し穴63と、を有する。本実施形態では、これら係止機構60及び通し穴63を有するガラス保持機構6が、ガラスホルダ51aの周方向に約120°の角度で離隔するように3か所配置されている。
【0035】
係止機構60が配置されるガラスホルダ51aの内部に、溝部64が形成されている。係止爪61は、溝部64内に配置される回転軸65に回転可能に取り付けられている。係止爪61の回転軸65よりも先端側(径方向の外側)は、ガラスホルダ51aの外周から径方向に突出し、上層の第2保護ガラス52のガラスホルダ52aに向けて係止可能に屈曲する爪部61aを有している。係止爪61の回転軸65よりも内端側(径方向の内側)は、溝部64内に配置され、爪部61aによる係止又はその係止の解除をするための操作部61bを有している。操作部61bは、通し穴63を横断し、この通し穴63を挟んで回転軸65とは反対側(径方向の内側)に延びている。
【0036】
弾性部材62は溝部64内に収容されている。弾性部材62は、係止爪61の操作部61bに対して下方(第2保護ガラス52から離れる方向)に向けて押圧するように付勢力を作用させている。これにより、係止爪61は、回転軸65を中心にして図6に示す矢印方向(時計方向)に回転し、爪部61aによって上層の第2保護ガラス52のガラスホルダ52aの周縁部52bに係止する係止状態に保持される。初期状態のガルバノスキャナ3の保護ガラス5は、この係止機構60によって、最下層の第1保護ガラス51がその上層の第2保護ガラス52に対して保持された状態とされる。
【0037】
なお、本実施形態に示す弾性部材62は、コイルばねによって構成されているが、コイルばねに制限されない。弾性部材62は、係止爪61の操作部61bに対して下方向に付勢力を作用させるものであればよく、例えばねじりばね等のコイルばね以外のばねであってもよいし、また、弾性を有するゴムや樹脂等によって構成してもよい。
【0038】
次に、このガラス保持機構6によって保持される第1保護ガラス51を下方に脱落させる方法及びその際のシステムの動作について説明する。
先ず、初期状態の3重構造の保護ガラス5を有するガルバノスキャナ3によって、ワークWに対して所定のレーザ加工(レーザ溶接)が実行される。その過程で、飛散した飛散物による汚れが最下層の第1保護ガラス51に付着すると、汚れが汚れ検知部14によって検知される。汚れ検知部14は、汚れを検知すると、ロボット制御部11とスキャナ制御部12に検知信号を出力する。
【0039】
スキャナ制御部12は、汚れ検知部14から検知信号の入力があると、レーザ光源13からのレーザ光Lの出射を一時中断させる。一時中断のタイミングは、検知信号の入力の直後でもよく、検知信号の入力後であって一連のレーザ加工が完了した後でもよい。一方、ロボット制御部11は、汚れ検知部14から検知信号の入力があると、レーザ光Lの出射停止の後、ロボット2を制御してガルバノスキャナ3を保護ガラス受け部4に移動させる。
【0040】
保護ガラス受け部4は、基台41と、その上に設けられる治具42とを有している。治具42の上面には、図7に示すように、ピン43が立設されている。本実施形態に示す治具42は、3本のピン43を有している。3本のピン43は、第1保護ガラス51のガラスホルダ51aに形成された通し穴63の位置と一致するように、約120°の角度で離隔して配置されている。
【0041】
ロボット2は、ガルバノスキャナ3を保護ガラス受け部4の上方の所定の位置まで移動させ、保護ガラス受け部4の治具42の3本のピン43の位置とガラスホルダ51aの3つの通し穴63の位置とが一致するように位置合わせした後、ガルバノスキャナ3を保護ガラス受け部4の治具42に向けて下降させる。ガルバノスキャナ3が下降すると、治具42上の3本のピン43が通し穴63内に挿入される。通し穴63内に挿入されたピン43の先端は、通し穴63を横断している係止爪61の操作部61bに突き当たる。その後、ガルバノスキャナ3が更に下降することにより、ピン43は操作部61bを弾性部材62の付勢力に抗して押し上げる。これにより、係止爪61は回転軸65を中心にして図7に示す矢印方向(反時計方向)に回転し、第2保護ガラス52に対する爪部61aの係止状態が解除される。爪部61aによる係止状態が解除されているため、その後、ガルバノスキャナ3が上昇すると、第1保護ガラス51は保持を失って重力によって下方に脱落し、治具42に落下する。
【0042】
以上の動作によって、ガルバノスキャナ3の最下層に配置される汚れた第1保護ガラス51が自動的に取り外される。第1保護ガラス51が取り外されたガルバノスキャナ3は、第1保護ガラス51の上層の第2保護ガラス52が新たに「最下層の保護ガラス」となる2重構造の保護ガラス5を備えた状態とされる。その後、ガルバノスキャナ3は、ロボット2の動作によって再びラインに戻された後、レーザ光源13からレーザ光Lの供給を受けて、ワークWに対するレーザ加工(レーザ溶接)を再開する。
【0043】
このガラス保持機構6を備えたリモートレーザ溶接システム1において、汚れた第1保護ガラス51を取り外すための一連の動作は、作業者の手を一切介することなく、ロボット2の動作のみによって自動的に行われる。このため、第1保護ガラス51の取り外し作業は極めて短時間で完了し、直ぐに加工作業に復帰することができる。従って、ラインの停止時間も極めて短時間で済み、ダウンタイムは最小化される。
【0044】
なお、2重構造の保護ガラス5を備えたガルバノスキャナ3は、従来と同様の構成となるため、新たに最下層となった第2保護ガラス52に汚れが付着した場合は、従来通り、作業者の手によって交換される。保護ガラスに対する汚れの付着は、加工作業中に必ずしも頻繁に発生するものではないため、汚れが付着した第2保護ガラス52の交換は、例えば一連の作業の終了後、一日の作業の終了後、定期的なロボット2やガルバノスキャナ3のメンテナンス時等のタイミングで行えばよい。
【0045】
また、以上説明したガラス保持機構6は、第2保護ガラス52に対して、ガラスホルダ52aを介して間接的に係止及びその解除をするように構成されているが、第2保護ガラス52に対して、直接的に係止及びその解除をするように構成されてもよい。
【0046】
[ガラス保持機構の第2実施形態]
次に、他のガラス保持機構の具体的構成について説明する。特に説明しない点については、第1実施形態の前述した説明が適宜適用又は援用される。
図8は、第2実施形態に係るガラス保持機構を有する最下層の保護ガラスを下から見た図である。図9は、図8に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを保持している様子を説明する部分断面図である。図10は、図8に示すガラス保持機構が最下層の保護ガラスを脱落させる様子を説明する部分断面図である。
【0047】
第2実施形態に係るガラス保持機構7は、最下層の第1保護ガラス51が容易に下方に脱落できるように、第1保護ガラス51を保持するものである。ガラス保持機構7は、ガルバノスキャナ3の下面において、保護ガラス5の外周を取り囲むように設けられた筒部36と、第1保護ガラス51の間に配置されている。ガラス保持機構7は、第1保護ガラス51の径方向の対向する2箇所からガラスホルダ51aの外側面を押圧し、摩擦力によって第1保護ガラス51を保持する2つの摩擦機構70を有する。
【0048】
各摩擦機構70は、第1保護ガラス51のガラスホルダ51aの外側面に当接する保持部材71と、この保持部材71と筒部36との間に配置され、保持部材71をガラスホルダ51aの外側面に向けて押圧する弾性部材72とで構成されている。保持部材71の端面71aは、ガラスホルダ51aの外側面に沿う円弧面となるように形成されている。この摩擦機構70により、第1保護ガラス51は、両側から保持部材71で挟まれて押圧され、保持部材71の摩擦力によって、保護ガラス5の最下層の位置に保持される。
【0049】
第1保護ガラス51のガラスホルダ51aの下面には、約180°の角度で離隔する2箇所に引っ掛け部73が形成されている。引っ掛け部73は、後述する治具42に形成された引っ掛けピン44と係合するように、内向きに形成されている。
【0050】
次に、このガラス保持機構7によって保持される第1保護ガラス51を下方に脱落させる方法及びその際のシステムの動作について説明する。
先ず、初期状態の3重構造の保護ガラス5を有するガルバノスキャナ3によって、ワークWに対して所定のレーザ加工(レーザ溶接)が実行される。その過程で、飛散した飛散物による汚れが最下層の第1保護ガラス51に付着すると、汚れが汚れ検知部14によって検知される。汚れ検知部14は、汚れを検知すると、ロボット制御部11とスキャナ制御部12に検知信号を出力する。
【0051】
スキャナ制御部12は、汚れ検知部14から検知信号の入力があると、レーザ光源13からのレーザ光Lの出射を一時中断させる。一方、ロボット制御部11は、汚れ検知部14から検知信号の入力があると、レーザ光Lの出射停止の後、ロボット2を制御してガルバノスキャナ3を保護ガラス受け部4に移動させる。
【0052】
保護ガラス受け部4は、基台41と、その上に設けられる治具42とを有している。治具42の上面には、図10に示すように、引っ掛けピン44が立設されている。本実施形態に示す治具42は、2本の引っ掛けピン44を有している。2本の引っ掛けピン44は、第1保護ガラス51のガラスホルダ51aに形成された引っ掛け部73の位置と一致するように、約180°の角度で離隔して配置されている。各引っ掛けピン44の先端は、外向きに形成された爪部44aを有している。各引っ掛けピン44は、例えば金属板や合成樹脂等によって、内側に向けて弾性的に変形可能に形成されている。
【0053】
ロボット2は、ガルバノスキャナ3を保護ガラス受け部4の上方の所定の位置まで移動させ、保護ガラス受け部4の治具42の2本の引っ掛けピン44の位置とガラスホルダ51aの2つの引っ掛け部73の位置とが一致するように位置合わせした後、ガルバノスキャナ3を保護ガラス受け部4の治具42に向けて下降させる。ガルバノスキャナ3が下降すると、治具42上の2本の引っ掛けピン44の爪部44aが引っ掛け部73によって内側に向けて押されることにより、2本の引っ掛けピン44が内側に向けて弾性的に変形する。引っ掛けピン44の爪部44aが引っ掛け部73を乗り越えると、引っ掛けピン44は弾性的に復帰する。これにより、引っ掛けピン44の爪部44aが引っ掛け部73に引っ掛かり、引っ掛けピン44と引っ掛け部73とが係止状態となる。その後、ガルバノスキャナ3が上昇すると、第1保護ガラス51が摩擦機構70による摩擦力に抗して下方に引き抜かれる。下方に引き抜かれた第1保護ガラス51は、ガラス保持機構7から下方に脱落し、治具42に落下する。
【0054】
以上の動作によって、ガルバノスキャナ3の最下層に配置される汚れた第1保護ガラス51が自動的に取り外される。第1保護ガラス51が取り外されたガルバノスキャナ3は、上記と同様に、第2保護ガラス52が最下層の保護ガラスとなる2重構造の保護ガラス5を備えた状態となる。その後、ガルバノスキャナ3は、ロボット2の動作によって再びラインに戻された後、レーザ光源7からレーザ光Lの供給を受けて、ワークWに対するレーザ加工(レーザ溶接)を再開する。
【0055】
このガラス保持機構7を備えたリモートレーザ溶接システム1においても、汚れた第1保護ガラス51を取り外すための一連の動作は、作業者の手を一切介することなく、ロボット2の動作のみによって自動的に行われる。このため、第1保護ガラス51の取り外し作業は極めて短時間で完了し、直ぐに作業に復帰することができる。従って、ラインの停止時間も極めて短時間で済み、ダウンタイムは最小化される。
【0056】
なお、以上説明したガラス保持機構7は、第1保護ガラス51に対して、ガラスホルダ51aを介して間接的に押圧するように構成されているが、これに制限されず、第1保護ガラス51に対して、直接的に押圧するように構成されてもよい。
【0057】
本発明において、保護ガラスは少なくとも上下方向に3重構造を備えるものであればよい。従って、本発明における保護ガラスは、以上説明した3重構造に制限されず、4重構造以上であってもよい。4重構造以上の場合、出射部30に固定される最上層の保護ガラスと、それに隣接する下層の保護ガラスを除く2枚以上の保護ガラスに、以上説明したガラス保持機構6又は7を設けることができる。そして、そのうちの最下層の第1保護ガラスが汚れた場合、上記の通りに下方に脱落させて取り外した後は、その上層の第2保護ガラスが新たに「最下層の保護ガラス」(第1保護ガラス)となる。従って、この新たな第1保護ガラスが汚れた場合は、再度、上記の通りに下方に脱落させて自動的に取り外すことができる。但し、保護ガラスによるレーザ光の拡散、吸収を考慮すると、保護ガラスの枚数はなるべく少ない方が望ましいため、保護ガラスは3重構造であることが好ましい。
【0058】
以上説明したレーザ加工システムは、ガルバノスキャナ3をロボット2により搬送するように構成されるものを例示したが、これに制限されない。レーザ加工システムは、例えばガルバノスキャナ3をガイドレールに沿って移動させ、保護ガラス受け部4に対して昇降させるように構成されるものであってもよい。ガラス保持機構が有する「最下層の保護ガラスが下方に脱落する構成」は、前述の実施形態における構成に制限されない。
【符号の説明】
【0059】
1 リモートレーザ溶接システム(レーザ加工システム)
11 ロボット制御部(制御部)
12 スキャナ制御部(制御部)
13 レーザ光源
14 汚れ検知部
2 ロボット(移動手段)
21 アーム
3 ガルバノスキャナ
30 出射部
4 保護ガラス受け部
43 ピン
5 保護ガラス
51 第1保護ガラス(最下層の保護ガラス)
52 第2保護ガラス(最下層の保護ガラスの上層の保護ガラス)
6、7 ガラス保持機構
60 係止機構
63 通し穴
70 摩擦機構
L レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11