特開2019-38774(P2019-38774A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-38774(P2019-38774A)
(43)【公開日】2019年3月14日
(54)【発明の名称】抗サイトカイン抗体療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20190215BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20190215BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20190215BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190215BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20190215BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20190215BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61K39/395 D
   A61P17/06
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   G01N33/53 P
   G01N33/543 545A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-161755(P2017-161755)
(22)【出願日】2017年8月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、研究課題「拡張ナノ流体デバイス工学によるピコ、フェムトリットル蛋白分子プロセシング」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【住所又は居所】東京都文京区本郷七丁目3番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】深澤 毅倫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】北森 武彦
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 和真
(72)【発明者】
【氏名】嘉副 裕
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
(57)【要約】
【課題】抗サイトカイン抗体療法における患者毎の有効性を予測する手段の提供。
【解決手段】抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルを測定し、得られたプロファイルに基づき投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定することを特徴とする抗サイトカイン抗体療法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルを測定し、得られたプロファイルに基づき投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定することを特徴とする抗サイトカイン抗体療法。
【請求項2】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が、乾癬患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−6、IL−10、IL−17A、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である請求項1記載の抗サイトカイン抗体療法。
【請求項3】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が関節リウマチ患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である請求項1記載の抗サイトカイン抗体療法。
【請求項4】
血液中サイトカインプロファイルの測定がμELISAで行われる請求項1〜3のいずれか1項記載の抗サイトカイン抗体療法。
【請求項5】
投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定する目的で、抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルを測定する方法。
【請求項6】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が、乾癬患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−6、IL−10、IL−17A、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である請求項5記載のサイトカインプロファイルの測定方法。
【請求項7】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が関節リウマチ患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である請求項5記載のサイトカインプロファイルの測定方法。
【請求項8】
血液中サイトカインプロファイルの測定がμELISAで行われる請求項5〜7のいずれか1項記載のサイトカインプロファイルの測定方法。
【請求項9】
投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定するために使用される試薬であって、抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルの測定試薬。
【請求項10】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が、乾癬患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−6、IL−10、IL−17A、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である請求項9記載の測定試薬。
【請求項11】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が関節リウマチ患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である請求項9記載の測定試薬。
【請求項12】
血液中サイトカインプロファイルの測定がμELISAで行われる請求項9〜11のいずれか1項記載の測定試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗サイトカイン抗体を用いた治療法における改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬、関節リウマチ等に代表される自己免疫疾患の治療手段として抗体医薬が上市され、臨床的に大きな治療効果が得られている。例えば、乾癬治療薬として、抗TNF−α抗体であるインフリキシマブ、アダリムマブが使用されており、抗IL−12/23抗体であるウステキヌマブ、抗IL−17抗体であるセクキヌマブ、イキセキズマブ、抗IL−17受容体抗体であるブロダルマブが使用されている。また、関節リウマチ治療薬として、抗TNF−α抗体であるインフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、抗IL−6受容体抗体であるトシリズマブが使用されている(非特許文献1〜12)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Woolacott, N., Hawkins, N., Mason, A., et al. Etanercept and efalizumab for the treatment of psoriasis: a systematic review. Health. Technol. Assess. 10, 1-233 (2006).
【非特許文献2】Schmitt, J., Zhang, Z., Wozel, G., et al. Efficacy and tolerability of biologic and nonbiologic systemic treatments for moderate-to-severe psoriasis: meta-analysis of randomized controlled trials. Br. J. Dermatol. 159, 513-526 (2008).
【非特許文献3】Farahnik, B., Beroukhim, K., Abrouk, M., et al. Brodalumab for the Treatment of Psoriasis: A Review of Phase III Trials. Dermatol. Ther. 6, 111-124 (2016).
【非特許文献4】Roman, M., Madkan, V. K., Chiu, M. W. Profile of secukinumab in the treatment of psoriasis: current perspectives. Ther. Clin. Risk. Manag. 11, 1767-1777 (2015).
【非特許文献5】Gordon, K. B., Blauvelt, A., Papp, K. A., et al. Phase 3 Trials of Ixekizumab in Moderate-to-Severe Plaque Psoriasis. N. Engl. J. Med. 375, 345-356 (2016).
【非特許文献6】Laws, P. M., et al. Ustekinumab for the treatment of psoriasis. Expert. Rev. Clin. Immunol. 7, 155-64 (2011).
【非特許文献7】Perdriger A. Infliximab in the treatment of rheumatoid arthritis. Biologics : Targets & Therapy. 2009;3:183-191.
【非特許文献8】Haraoui B, Bykerk V. Etanercept in the treatment of rheumatoid arthritis. Therapeutics and Clinical Risk Management. 2007;3(1):99-105.
【非特許文献9】Bombardieri, S., et al. Effectiveness of adalimumab for rheumatoid arthritis in patients with a history of TNF-antagonist therapy in clinical practice. Rheumatology (Oxford). 46, 1191-1199 (2007).
【非特許文献10】Singh, J. A., et al. Golimumab for rheumatoid arthritis: a systematic review. 37, 1096-104 (2010).
【非特許文献11】Weinblatt ME, Gleischmann R, van Vollenhoven RF, et al. Twenty-eight-week results from the REALISTIC phase IIIb randomized trial: efficacy, safety and predictability of response to certolizumab pegol in a diverse rheumatoid arthritis population. Arthritis Res Ther. 2015;17:325-338.
【非特許文献12】Okuda Y. Review of tocilizumab in the treatment of rheumatoid arthritis. Biologics : Targets & Therapy. 2, 75-82 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の抗体医薬には、いくつかの問題点がある。すなわち、これらの抗体医薬による治療効果は患者によって大きく異なることが知られている。様々な検査や臨床所見を用いても、抗体医薬の効果予測は極めて困難であり、実際に使用するまではその抗体医薬が効果的であるかは不明であり、また適切な投与量も明らかではない。このことは、適切な時期に効果的な治療が行えず、病態の進行や合併症の併発を来し得ることにつながっている。
さらには、抗体医薬による、当初想定されていなかった有害事象が生じることが報告されており、有効でない抗体医薬を使用することの危険性を高めている。加えて、抗体医薬は高価であり、有効でない抗体医薬の使用は、医療経済的に負担が大きいことも社会的に問題となっている。
従って、本発明の課題は、抗サイトカイン抗体療法における患者毎の有効性を予測する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、乾癬等の自己免疫疾患患者に対する抗サイトカイン抗体の有効性と患者毎の治療開始前血液中サイトカインプロファイルとを対比したところ、抗サイトカイン抗体が作用対象とするサイトカイン濃度は、治療効果と相関せず、それ以外のサイトカインの濃度が治療効果の予測に役立つことが判明した。つまり、抗TNFα抗体薬はTNFαを除去することで、乾癬や自己免疫疾患の病勢を抑制すると考えられているため、治療前のTNFα濃度は、抗TNFα抗体薬による治療効果に相関すると広く考えられてきたが、実際には、TNFα濃度と治療効果には相関が認められておらず、他のサイトカイン濃度が治療効果の予測に役立つことが判明した。また、同じ乾癬患者であっても患者毎にサイトカインプロファイルは相違し、現在製造承認を受けている抗サイトカイン抗体の1つには治療効果が得られず、他剤を使用することで、効果が得られることも判明した。これらの知見に基づき、種々検討した結果、予め患者の血液中サイトカインプロファイルを測定しておけば、有効な抗サイトカイン抗体の選択が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔12〕を提供するものである。
【0007】
〔1〕抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルを測定し、得られたプロファイルに基づき投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定することを特徴とする抗サイトカイン抗体療法。
〔2〕抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が、乾癬患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である〔1〕記載の抗サイトカイン抗体療法。
〔3〕抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が関節リウマチ患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である〔1〕記載の抗サイトカイン抗体療法。
〔4〕血液中サイトカインプロファイルの測定がμELISAで行われる〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗サイトカイン抗体療法。
〔5〕投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定する目的で、抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルを測定する方法。
〔6〕抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が、乾癬患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である〔5〕記載のサイトカインプロファイルの測定方法。
〔7〕抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が関節リウマチ患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である〔5〕記載のサイトカインプロファイルの測定方法。
〔8〕血液中サイトカインプロファイルの測定がμELISAで行われる〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載のサイトカインプロファイルの測定方法。
〔9〕投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定するために使用される試薬であって、抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルの測定試薬。
〔10〕抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が、乾癬患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である〔9〕記載の測定試薬。
〔11〕抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者が関節リウマチ患者であって、測定されるサイトカインプロファイルがIL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上である〔9〕記載の測定試薬。
〔12〕血液中サイトカインプロファイルの測定がμELISAで行われる〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載の測定試薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、患者毎のサイトカインプロファイルを測定することにより、治療前に、その患者毎に有効な抗サイトカイン抗体の種類と投与量を予測することができる。従って、無効な抗体医薬が投与されることによって生じる有害事象の防止に役立つとともに医療経済の負担も軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】アダリムマブ80mg投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
図2】アダリムマブ80mg投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
図3】ウステキマブ投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
図4】ウステキマブ投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
図5】セクキヌマブ投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
図6】セクキヌマブ投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
図7】ブロダルマブ投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
図8】ブロダルマブ投与群の血液中サイトカインの濃度変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の抗サイトカイン抗体療法は、抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の複数の血液中サイトカインプロファイルを測定し、得られたサイトカインプロファイルに基づき投与すべき抗サイトカイン抗体の種類及び投与量を決定することを特徴とする。
【0011】
本発明において用いられる抗サイトカイン抗体としては、抗サイトカイン抗体及び抗サイトカイン受容体抗体のいずれも含まれる。サイトカインとしては、各種の自己免疫疾患に関与することが知られているサイトカインが挙げられ、TNF−α、IL−1β、IL−6、IL−10、IL−12、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−18、IL−21、IL−22、IL−23、IL−35、IL−36γ、IFN−α、TGF−β1等が挙げられる。抗サイトカイン受容体抗体としては、これらのサイトカイン受容体に対する抗体が挙げられる。
また、これらの抗サイトカイン抗体は、マウス抗体等の非ヒト抗体であってもよく、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体のいずれでもよい。
【0012】
抗サイトカイン抗体療法を必要とする患者の疾患としては、自己免疫疾患、例えば乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎/皮膚節炎、強皮症、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患、血管炎症候群、混合性結合組織病、ギランバレー症候群、重症筋無力症、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病、橋本病、ぶどう膜炎等が挙げられる。このうち、関節リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病、強直性脊椎炎が好ましく、関節リウマチ、乾癬がより好ましく、乾癬がさらに好ましい。
【0013】
血液中サイトカインプロファイルは、対象患者の血液中の複数のサイトカイン濃度を測定することにより作製することができる。そのサイトカインの種類としては、前記の自己免疫疾患に関与することが知られている複数のサイトカインであり、例えば、TNF−α、IL−1β、IL−6、IL−10、IL−12、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−18、IL−21、IL−22、IL−23、IL−35、IL−36γ、IFN−α、TGF−β1から選ばれる2種以上が挙げられる。
【0014】
ここで、血液中サイトカインプロファイルの測定にあたっては、より低濃度(pg/mLオーダー)のサイトカインを定量することができるμELISAを使用するのが好ましい。μELISAは、例えばマイクロフルイディクス(微小流体工学)と熱レンズ顕微鏡を応用したELISA(BUNSEKI KAGAKU Vol.64,No.6,pp.461−468(2015))によって測定するのが好ましい。μELISA分析装置は、反応場として捕捉抗体を固相化したビーズを用いる。ビーズはガラス製のマイクロ化学チップの流路内(幅400μm,深さ200μm)にあるダム構造によって堰き止められ、検体、酵素標識2次抗体、発色基質を順次送液することにより反応させる。検出は流路下部に取り付けられた熱レンズプローブを用いる。また、反応生成物の検出は、ストップ/フロー検出法を用いる。すなわち、ビーズ充填部位に基質を送り込み、一定時間送液を停止した後、再送液することによって高濃度の反応生成物が検出部に送られ、反応生成物のシグナルがピークとして検出される。
このようなμELISA分析装置としては、マイクロ化学技術研製のマイクロELISA分析装置(臨床用μELISA)が挙げられる。
【0015】
本発明者の経験によれば、乾癬治療薬として製造承認されている抗TNF−α抗体、抗IL−12/23抗体及び抗IL−17抗体を用いて治療しても有効でない乾癬患者が多数存在する。また、抗TNF−α抗体で症状が改善する乾癬患者の中には、抗TNF−α抗体の通常投与量40mgで症状が改善する患者と、80mg投与しなければ症状が改善しない患者も存在する。
本発明者は、抗TNF−α抗体(アダリムマブ)40mg投与して有効であった患者、及びアダリムマブ40mg投与で効果が認められないため抗TNF−α抗体(アダリムマブ)投与量を80mgに増量した患者の血液中サイトカインプロファイルを測定した。その結果、全く意外なことに、アダリムマブ40mg投与により乾癬の症状が改善した患者と、アダリムマブ40mg投与で症状が改善しなかった患者において、血液中TNF−α濃度に差はなかった。また、アダリムマブ80mg投与によって、症状が改善した症例も存在した。
一方、アダリムマブ40mg投与有効群とアダリムマブ40mg無効群において、血液中濃度に大きな差があったサイトカインは、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−23、IL−35であり、40mg無効群で有意に減少していたのはIL−10及びIL−35であり、IL−6、IL−17A及びIL−23は有意に増加していた。この結果は、TNF−α40mg投与無効群は、血液中IL−6、IL−17A及びIL−23濃度が高かったためと考えられる。かかる検討結果に基づけば、これらの乾癬患者においては、抗TNF−α抗体の多量投与、抗IL−6抗体投与、抗IL−17抗体又は抗IL−23抗体投与が有効であると考えられる。従って、乾癬患者の血液中サイトカインプロファイルを測定しておき、病態の惹起、伸展過程で変化する可能性のあるサイトカインに対する抗体を投与すれば、有効に乾癬治療が可能となる。乾癬患者においては、変化するサイトカインはIL−6、IL−10、IL−17A、IL−23、IL−35、TNF−αである可能性が高いことから、予め、これらの血液中サイトカインプロファイルの3種以上を測定しておき、これらのサイトカインプロファイルに基づき、投与すべき抗サイトカイン抗体及びその投与量を決定することができる。
【0016】
同様に、関節リウマチ患者の場合には、IL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上の血液中サイトカインプロファイルを測定し、投与すべき抗サイトカイン抗体及びその投与量を決定するのが好ましい。
【0017】
同様に、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎皮膚節炎、強皮症、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患、血管炎症候群、混合性結合組織病、ギランバレー症候群、重症筋無力症、潰瘍性大腸炎、クローン病、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病、橋本病患者の場合には、IL−1β、IL−6、IL−10、IL−17A、IL−17F、IL−17C、IL−21、IL−23、IL−35及びTNF−αから選ばれる3種以上の血液中サイトカインプロファイルを測定し、投与すべき抗サイトカイン抗体及びその投与量を決定するのが好ましい。
【0018】
より詳細には、種々の自己免疫疾患患者におけるサイトカインプロファイルと抗サイトカイン抗体療法の効果との関係を検討し、サイトカインプロファイルと抗サイトカイン抗体療法の効果との関係を示すパネルを作製しておけば、患者毎に有効な抗サイトカイン抗体療法を適宜選択することができる。
【実施例】
【0019】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0020】
実施例1
(1)未治療の乾癬患者に対して、アダリムマブ(抗TNF−α抗体)40mgを投与した乾癬患者13名(ADA40mg投与群)、及びアダリムマブ40mgを投与して治療効果が得られなかったため80mg投与に増量した乾癬患者8名(ADA40→80mg投与群)の臨床症状及び血液中サイトカイン量を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
ここで、血液中サイトカイン濃度は、BUNSEKI KAGAKU Vol.64,No.6,pp.461−468(2015)記載のマイクロELISA分析装置(臨床用μELISA,マイクロ化学技研製)を用いて測定した。
【0024】
表1及び表2から、アダリムマブ40mg投与による有効群と無効群の間でTNF−α量には差がなかった。これは、アダリムマブ40mgによる無効がTNF−αの量に依存していない、つまり治療前に存在するTNF−αの量に対して、アダリムマブの量が少ないので無効となったわけではないことを示す。
一方、アダリムマブ40mg有効群よりも無効群で濃度が高かったサイトカインはIL−6、IL−17A及びIL−23であった。また、アダリムマブ40mg無効群よりも有効群で濃度が高かったサイトカインはIL−10及びIL−35であった。この結果から、抗TNF−α抗体40mg投与で有効でなかった乾癬患者は、IL−6、IL−17A又はIL−23濃度が高かったためであると予想される。従って、抗IL−6抗体、抗IL−17抗体又は抗IL−23抗体投与で治療が可能と考えられる。
【0025】
表2のアダリムマブ80mg投与群は、乾癬の症状が改善した。アダリムマブ80mg投与により乾癬の症状(PASI)が改善した症例の血液中サイトカインの濃度変化を図1図2に示す。アダリムマブ80mg投与後は、TNF−α、IL−6、IL−17、IL−23といった炎症性サイトカインが低下し、IL−10、IL−35といった抑制性サイトカインが上昇していた。
【0026】
実施例2
実施例1の結果から、アダリムマブ40mg投与で治療効果が得られなかった乾癬患者15名に対し、抗IL−12/23抗体であるウステキヌマブ45mg投与(UST投与群)、抗IL−17A抗体であるセクキヌマブ300mg投与(SEC投与群)、及び抗IL−17A受容体抗体であるブロダルマブ210mg投与を行った。それらの患者の臨床症状及び血液中サイトカイン量を測定した。
その結果を表3及び表4に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
表4のウステキマブ(抗IL−12/23)投与群全例で、乾癬の症状が改善した。ウステキマブ投与により乾癬の症状(PASI)が改善した症例の血液中サイトカイン濃度の変化を図3図4に示す。
表4のセクキヌマブ(抗IL−17A抗体)投与群全例で、乾癬の症状が改善した。セクキヌマブ投与により乾癬の症状(PASI)が改善した症例の血液中サイトカインの変化を図5図6に示す。
表4のブロダルマブ(抗IL−17A受容体抗体)投与群全例で、乾癬の症状が改善した。ブロダルマブ投与により乾癬の症状(PASI)が改善した症例の血液中サイトカイン濃度の変化を図7図8に示す。
炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−6、IL−17、IL−23)はウステキマブ、セクキヌマブ、ブロダルマブ投与群で低下した。IL−10、IL−35といった抑制性のサイトカインはウステキマブ投与群で著明に上昇したが、セクキヌマブ、ブロダルマブ投与群では明らかな上昇を示さなかった。
【0030】
実施例3
関節リウマチ患者のサイトカインプロファイル(表5)及びトシリズマブ(抗IL−6抗体)を投与して有効であった症例のサイトカインプロファイルを示す(表6)。
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8