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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-51192(P2019-51192A)
(43)【公開日】2019年4月4日
(54)【発明の名称】超音波医用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20190308BHJP
【FI】
   A61B8/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-178535(P2017-178535)
(22)【出願日】2017年9月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【住所又は居所】東京都文京区本郷七丁目3番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】射谷 和徳
(72)【発明者】
【氏名】藤原 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】東 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 周
(72)【発明者】
【氏名】吉村 駿
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD19
4C601FF13
4C601FF16
4C601JC06
4C601JC15
4C601JC37
(57)【要約】
【課題】組織の凝固を測定する超音波医用装置の更なる改良技術を提供する。
【解決手段】変位測定部22は、注目凝固領域における組織変位と参照凝固領域における組織変位を測定する。変位比較部24は、注目凝固領域における組織変位の時間変化と参照凝固領域における組織変位の時間変化とを比較することにより変位比較情報を得る。凝固測定部26は、変位比較情報に基づいて注目凝固領域と参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波による振動に伴う注目凝固領域における組織変位と参照凝固領域における組織変位を測定する変位測定部と、
前記注目凝固領域における組織変位の時間変化と前記参照凝固領域における組織変位の時間変化とを比較することにより変位比較情報を得る変位比較部と、
前記変位比較情報に基づいて前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得る凝固測定部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波医用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波医用装置において、
前記凝固測定部は、複数の治療箇所の各々を対象として凝固領域が形成される治療において、前記注目凝固領域に対応した治療箇所から関心方向にある最も近い治療箇所に対応した凝固領域を前記参照凝固領域とし、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得る、
ことを特徴とする超音波医用装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波医用装置において、
前記変位測定部は、前記注目凝固領域の複数深さにおける組織変位と前記参照凝固領域の複数深さにおける組織変位を測定し、
前記変位比較部は、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の互いに対応する深さにおける組織変位の時間変化を比較することにより、複数深さの各深さごとに前記変位比較情報を導出し、
前記凝固測定部は、複数深さの各深さごとに得られる前記変位比較情報に基づいて、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得る、
ことを特徴とする超音波医用装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波医用装置において、
前記凝固測定部は、前記注目凝固領域に対応した治療箇所への超音波の照射による治療において、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域が接合したかどうかを示す前記測定結果を導出し、
前記注目凝固領域と前記参照凝固領域が接合したことを示す前記測定結果が得られた場合に、前記注目凝固領域に対応した治療箇所への超音波の照射を停止する、
ことを特徴とする超音波医用装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波医用装置において、
前記変位比較部は、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域における組織変位の時間変化に基づいて、前記変位比較情報として、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域における組織変位の位相差を導出し、
前記凝固測定部は、前記位相差が小さいことを示す判定条件を満たす場合に、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域が接合したことを示す前記測定結果を得る、
ことを特徴とする超音波医用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織の凝固を測定する超音波医用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強力集束超音波(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)を例えば生体に照射し、その音響エネルギーを利用して腫瘍などの治療部位を加熱して凝固させる治療方法が知られている。
【0003】
組織が加熱されて凝固する際に、その凝固の前後において、組織の弾性率(ヤング率)が増大することが知られている。また、HIFUなどの比較的強力な超音波は、その進行方向に向かって放射力を発生させるため、例えば、HIFUの超音波ビームの焦点部位の組織に10〜100μm(マイクロメートル)程度の変位を与えることができる。そのため、HIFUなどの比較的強力な超音波により組織に変位を与えて、弾性率の増大による変位の減少を測定して、組織の凝固を観察することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、比較的高い変調周波数と比較的低い変調周波数を用いて変位用の超音波を変調処理し、各変調周波数ごとに治療部位における組織の変位を測定する発明が開示されている。特許文献1の発明によれば、比較的高い変調周波数による変位の測定結果に基づいて治療部位における局所的な凝固を測定し、比較的低い変調周波数による変位の測定結果に基づいて治療部位における広域的な凝固を測定し、これにより、例えば発生直後の局所的な凝固の有無などを高精度に測定でき、さらに、例えば進行後の広域的な凝固の大きさなどを高精度に測定できる。
【0005】
また、特許文献2には、治療部位に向けて変位発生用の超音波を送波することにより、治療部位において放射力を発生させて組織を変位させ、治療部位に向けて測定用の超音波を送受して治療部位における変位を測定し、測定された変位に基づいて、その変位の周期的な変化を示す変位マップを形成し、変位マップに基づいて治療部位における組織の凝固を測定する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5590493号公報
【特許文献2】特許第5954841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の発明者らは、特許文献1,2に開示される画期的な発明の更なる改良について研究開発を重ねてきた。
【0008】
本発明は、組織の凝固を測定する超音波医用装置の更なる改良技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様として好適な超音波医用装置は、超音波による振動に伴う注目凝固領域における組織変位と参照凝固領域における組織変位を測定する変位測定部と、前記注目凝固領域における組織変位の時間変化と前記参照凝固領域における組織変位の時間変化とを比較することにより変位比較情報を得る変位比較部と、前記変位比較情報に基づいて前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得る凝固測定部と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成の超音波医用装置は、例えば、一般的な超音波診断装置における診断用の超音波と同程度の特性(周波数,波形,強度)をもつ測定用超音波を送受して、組織変位を測定するための受信信号を得る機能を備えている。さらに、上記構成の超音波医用装置は、放射力により組織を変位させる程度の比較的強度の大きい変位用超音波を送波する機能を備えていることが望ましい。変位用超音波は、測定用超音波に比べて強度が大きく、例えば強力集束超音波(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)が変位用超音波の好適な具体例である。なお、変位用超音波として強力集束超音波(HIFU)を利用する場合には、その強力集束超音波(HIFU)により組織を変位させつつ当該組織を加熱して凝固させてもよい。上記構成の超音波医用装置によれば、注目凝固領域と参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得ることができる。
【0011】
例えば、前記凝固測定部は、複数の治療箇所の各々を対象として凝固領域が形成される治療において、前記注目凝固領域に対応した治療箇所から関心方向にある最も近い治療箇所に対応した凝固領域を前記参照凝固領域とし、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得ることが望ましい。
【0012】
また、例えば、前記変位測定部は、前記注目凝固領域の複数深さにおける組織変位と前記参照凝固領域の複数深さにおける組織変位を測定し、前記変位比較部は、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の互いに対応する深さにおける組織変位の時間変化を比較することにより、複数深さの各深さごとに前記変位比較情報を導出し、前記凝固測定部は、複数深さの各深さごとに得られる前記変位比較情報に基づいて、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得ることが望ましい。
【0013】
また、例えば、前記凝固測定部は、前記注目凝固領域に対応した治療箇所への超音波の照射による治療において、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域が接合したかどうかを示す前記測定結果を導出し、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域が接合したことを示す前記測定結果が得られた場合に、前記注目凝固領域に対応した治療箇所への超音波の照射を停止することが望ましい。
【0014】
また、例えば、前記変位比較部は、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域における組織変位の時間変化に基づいて、前記変位比較情報として、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域における組織変位の位相差を導出し、前記凝固測定部は、前記位相差が小さいことを示す判定条件を満たす場合に、前記注目凝固領域と前記参照凝固領域が接合したことを示す前記測定結果を得ることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、組織の凝固を測定する超音波医用装置の更なる改良技術が提供される。例えば、本発明の好適な態様によれば、注目凝固領域と参照凝固領域の接合状態に係る測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施において好適な超音波医用装置の全体構成を示す図である。
図2】変調処理されたHIFU信号による組織変位の具体例を示す図である。
図3図1の超音波医用装置が実行する好適な動作例の一つを示す図である。
図4】2次元的な変位量マップの具体例を示す図である。
図5】複数の診断時刻に亘って形成される変位量マップの具体例を示す図である。
図6】複数の治療箇所に形成される凝固領域の具体例を示す図である。
図7】変位変化マップの具体例を示す図である。
図8】位相遅れdθの時間変化の具体例を示す図である。
図9】複数の観測ラインKLの具体例を示す図である。
図10】関心方向の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施において好適な超音波医用装置の全体構成図である。図1の超音波医用装置は、複合型の超音波振動子10を有しており、超音波振動子10は、HIFU用振動子10Hと診断用振動子10Dを備えている。
【0018】
HIFU用振動子10Hは、強力集束超音波(HIFU)を送波する振動子であり、例えば二次元的に配列された複数の振動素子を備えている。HIFU用振動子10Hは、例えば癌や腫瘍などの治療部位Pに向けて治療用超音波ビームTBを形成して強力集束超音波を送波し、その治療部位Pを加熱して治療するために利用される。
【0019】
また、HIFU用振動子10Hは、治療部位Pに向けて変位用超音波ビームEBを形成して変位発生用の超音波を送波し、治療部位Pにおいて放射力を発生させ組織を変位させる。変位用超音波ビームEBは、治療部位Pにおいて有効な放射力を発生させる程度の強度で形成されるビームであり、図1に示す具体例では、治療用超音波ビームTBが変位用超音波ビームEBとして利用される。もちろん、治療用超音波ビームTBとは異なる変位用超音波ビームEBが利用されてもよい。
【0020】
一方、診断用振動子10Dは、例えば二次元的に配列された複数の振動素子を備えており、例えば治療部位Pを有する被検体(患者)に対して、超音波画像を形成するための比較的弱い超音波を送受する。つまり、公知の一般的な超音波診断装置と同じ程度の強度(エネルギー)の超音波を送受する。
【0021】
また、診断用振動子10Dは、治療部位Pに向けて測定用超音波ビームMBを形成して測定用の超音波を送受し、測定用超音波ビームMBに沿って受信信号を得る。測定用超音波ビームMBに沿って得られる受信信号は、変位用超音波ビームEBの放射力による治療部位Pにおける変位の測定に利用される。
【0022】
なお、超音波振動子10は、例えば、お椀(どんぶり)状に凹ませた内部の表面を振動子面とする。そして、例えば、お椀状に凹んだ内部の中央に位置する底の部分に診断用振動子10Dが設けられ、診断用振動子10Dを取り囲むようにHIFU用振動子10Hが設けられる。なお、超音波振動子10の振動子面の形状は、お椀状に限定されず、例えば治療の用途等に応じた形状とされることが望ましい。また、全ての振動素子またはいくつかの振動素子が、HIFU用と診断用の両用途に併用されてもよい。
【0023】
測定診断ブロック20は、診断用振動子10Dの送受信を制御する送受信部21を備えている。送受信部21は、診断用振動子10Dを構成する複数の振動素子の各々に対応した送信信号を出力することにより、診断用振動子10Dを制御して送信ビームを形成し、さらに、それら複数の振動素子の各々から得られる受信信号に対して整相加算処理などを施すことにより、受信ビームに沿って受信信号を得る。つまり、送受信部21は、送信部(送信ビームフォーマ)の機能と、受信部(受信ビームフォーマ)の機能を備えている。
【0024】
送受信部21は、治療部位Pを含んだ三次元空間内または断面内で診断用の超音波ビームを走査して画像用の受信信号を収集する。そして、収集された受信信号に基づいて、超音波画像形成部28が三次元の超音波画像または二次元の断層画像の画像データを形成して、その画像データに対応した超音波画像が表示部50に表示される。
【0025】
医師や検査技師などのユーザは、表示部50に表示される超音波画像から、治療部位Pの位置等を確認し、図示省略した操作デバイス等を利用して治療部位Pの位置情報を図1の超音波医用装置に入力する。もちろん、図1の超音波医用装置が、超音波画像に対する画像解析処理等により治療部位Pの位置を確認して位置情報を得るようにしてもよい。
【0026】
また、送受信部21は、診断用振動子10Dを制御して測定用超音波ビームMBを形成し、測定用超音波ビームMBに沿って受信信号を得る。そして、変位測定部22は、測定用超音波ビームMBに沿って得られる受信信号に基づいて、治療部位Pにおける組織変位を測定する。また、変位比較部24は、変位測定部22において測定された組織変位の時間変化に基づいて変位比較情報を得る。そして、凝固測定部26は、変位比較情報に基づいて、被検体内の治療部位Pにおける組織の凝固状態に関する測定結果を得る。変位測定部22と変位比較部24と凝固測定部26により実現される具体的な処理については後に詳述する。
【0027】
一方、治療放射ブロック30は、送信部32を備えており、送信部32はHIFU用振動子10Hを構成する複数の振動素子の各々に対応した送信信号を出力することにより、HIFU用振動子10Hを制御して治療用超音波ビームTBを形成する。送信部32は、制御部40によって制御され、例えば治療部位P内における複数の治療箇所の各々に焦点を設定した治療用超音波ビームTBが形成される。
【0028】
また、送信部32はHIFU用振動子10Hを構成する複数の振動素子の各々に対応した送信信号を出力することにより、HIFU用振動子10Hを制御して変位用超音波ビームEBを形成する。変位用超音波ビームEBは変調処理を施される。なお、図1に示す具体例では治療用超音波ビームTBが変位用超音波ビームEBとして利用される。つまり、変調処理部36において例えば矩形波などを用いて変調処理された送信信号に基づいて変位用超音波ビームEB(=治療用超音波ビームTB)が形成される。なお、変調処理部36は制御部40により制御される。
【0029】
治療用超音波ビームTBに沿って強力集束超音波(HIFU)が送波されて治療部位Pが加熱されると治療部位Pの組織が凝固する。その凝固の前後において、組織の弾性率(ヤング率)が増大することが知られている。そして、組織の弾性率の変化を知るために、図1の超音波医用装置は、変位用超音波ビームEBに沿って超音波を送波して放射力を発生させ、その放射力による治療部位Pにおける組織の変位を測定する。例えば、治療用超音波ビームTBが矩形状に変調処理されて変位用超音波ビームEBとして利用される。変位の測定は、測定用超音波ビームMBに沿って得られる受信信号に基づいて行われる。
【0030】
なお、測定診断ブロック20内の各部と治療放射ブロック30内の各部は、それぞれ、例えばプロセッサや電子回路等のハードウェアを利用して実現することができる。制御部40は、例えば、演算機能を備えたハードウェアとその動作を規定するソフトウェア(プログラム)によって構成される。表示部50は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等により実現することができる。
【0031】
また、測定診断ブロック20は、一般的な超音波診断装置により実現されてもよい。そして、治療放射ブロック30に対応した超音波治療装置と、測定診断ブロック20に対応した超音波診断装置とを組み合わせたシステムにより、図1の超音波医用装置が実現されてもよい。
【0032】
図1の超音波医用装置の全体構成は以上のとおりである。次に、図1の超音波医用装置により実現される機能等について説明する。なお、図1に示した構成(符号を付した各部)については、以下の説明において図1の符号を利用する。
【0033】
図2は、変調処理されたHIFU信号による組織変位の具体例を示す図である。変調処理の好適な具体例の一つが矩形波による振幅変調処理である。図2には、矩形状に振幅変調処理されたHIFU信号による組織変位の具体例が図示されている。HIFU(強力集束超音波)信号は、変位用超音波ビームEBとして利用される治療用超音波ビームTBの送信信号であり、照射パワーが出力される振幅ON(オン)の期間と照射パワーが出力されない振幅OFF(オフ)の期間を繰り返す。HIFU信号は、変調処理部36において矩形波を用いて変調処理された送信信号である。例えば周波数2MHz(メガヘルツ)程度の連続波を矩形波の変調信号で振幅変調処理することにより、図2のHIFU信号が得られる。矩形波の変調信号の基本周波数fは、例えば30〜200Hz(ヘルツ)程度であり、望ましくは100Hz以下である。
【0034】
図2に示す組織変位は、HIFU信号の照射に伴う組織の変位の具体例である。図2に示すHIFU信号に基づく治療用超音波ビームTB(変位用超音波ビームEB)が超音波振動子10から治療部位Pに向けて送波されると、治療用超音波ビームTB(変位用超音波ビームEB)の放射力により、例えば図2に示す組織変位に従って治療部位Pの組織が変位する。
【0035】
つまり、照射パワーが出力される振幅ONの期間において、HIFU(治療用超音波ビームTB=変位用超音波ビームEB)の放射力により、超音波振動子10から遠ざかる方向である+方向(正方向)に組織が押され、また照射パワーが出力されない振幅OFFの期間において超音波振動子10に近づく方向である−方向(負方向)に組織が戻される。
【0036】
これにより、図2に示す具体例のように、HIFU信号の振幅ONの期間に対応して+方向(深い側)に変位し、HIFU信号の振幅OFFの期間に対応して組織が−方向(浅い側)に変位する組織変位が得られる。なお、HIFU信号の振幅ON/OFFの変化タイミングから、例えば超音波の伝播時間等による遅延(ディレイ)を伴って、組織変位が+方向と−方向に変化する場合もある。
【0037】
図1の超音波医用装置は、変位用超音波の振幅がオフの期間に対応した組織の変位から有効変位データ(有効な変位データ)を得る。つまり、図2において、HIFU信号の振幅OFFの期間における組織変位から有効変位データが得られる。図1の超音波医用装置は、例えば、以下に説明する動作例により、HIFU信号の振幅OFFの期間における組織変位から有効変位データを得る。
【0038】
図3は、図1の超音波医用装置が実行する好適な動作例の一つを示す図(タイミングチャート)である。図3において、メイントリガは、強力集束超音波(HIFU)による治療の開始タイミングを示す信号であり、例えば、医師等のユーザによる治療開始の操作に応じて制御部40から図1の超音波医用装置内の各部へ出力される。
【0039】
フレームトリガは、測定用超音波ビームMBのフレーム(測定用フレーム)開始を示す信号である。送受信部21は、例えばフレームトリガの立ち下がりごとに開始される各フレーム期間において、治療部位Pに向けて複数本の測定用超音波ビームMBを順に形成する。例えば、各フレーム期間ごとに(フレームトリガの立下がりごとに)、治療部位Pに向けて、位置をずらしつつ10本程度〜100本程度の測定用超音波ビームMBが次々に形成されて1つのフレームが形成される。なお、測定用超音波ビームMB(送信ビームと受信ビームの組)を形成する際に1本の送信ビームに対して複数(例えば2本)の受信ビームが形成されてもよい。
【0040】
加熱期間信号は、治療用超音波ビームTBによる治療部位Pの加熱処理期間を示す信号であり、加熱期間信号の立ち上がりから立下りまでの期間において、例えば治療部位P内の各治療箇所を焦点として治療用超音波ビームTBが形成される。
【0041】
変調信号は、治療用超音波ビームTB(=変位用超音波ビームEB)の変調処理に利用される矩形波の変調信号である。また、HIFU信号は、治療用超音波ビームTB(=変位用超音波ビームEB)の送信信号であり、変調処理部36が例えば周波数2MHz程度の連続波を矩形波の変調信号に従って振幅変調することにより得られる。そして、組織変位は、HIFU信号の照射に伴う組織の変位の具体例(図2参照)を示している。
【0042】
図3に示す動作例では、HIFU信号の振幅がOFFとなる各期間ごとに複数フレームで変位が計測される。また、HIFU信号の振幅がOFFとなる複数の期間において、同じ位相に対応した変位が繰り返し計測される。例えば図3に示すように、HIFU信号の振幅がOFFとなる期間1〜4の各期間ごとに、複数のフレームトリガが発生して複数フレームで変位が計測される。そして、複数の期間1〜4において位相θ1,θ2,θ3,θ4,θ5の各々に対応した変位が繰り返し計測される。
【0043】
なお、図3に示す具体例は好適な動作例の一つに過ぎず、図1の超音波医用装置は、図3以外の動作例により、HIFU信号の振幅OFFの期間における組織変位から有効変位データを得るようにしてもよい。例えば、特許文献2(特許第5954841号公報)の図2を利用して説明される具体例のように、正弦波の変調信号により変調処理されたHIFU信号を利用して組織変位が測定されてもよい。
【0044】
こうして、例えば、図3に示す具体例を含むいずれかの動作例により、HIFU信号の振幅がOFFとなる期間において変位が計測される。変位の計測は、各フレーム(各測定用フレーム)を構成する複数ビームの各ビームごとに実行される。つまり、各フレーム内において位置をずらしつつ10本程度〜100本程度の測定用超音波ビームMBが次々に形成され、変位測定部22は、測定用超音波ビームMBに沿って得られる受信信号に基づいて、治療部位Pにおける変位を測定する。これにより、各フレーム内において2次元的に変位が測定される。
【0045】
変位測定部22は、例えば測定用超音波ビームMBの深さ方向に並ぶ複数のサンプリング点について、各サンプリング点(各深さ)ごとに変位を測定する。例えば、各サンプリング点ごとに、互いに隣り合う時相(位相)に対応したデータ同士が相互相関演算等により比較され、各サンプリング点(各深さ)ごとに変位が算出される。例えば図3の具体例であれば、位相θ1と位相θ2に対応したデータが比較され、位相θ2と位相θ3に対応したデータが比較され、位相θ3と位相θ4に対応したデータが比較され、位相θ4と位相θ5に対応したデータが比較される。また、例えば、深さ方向に並ぶ1024個のサンプリング点について、相関演算の相関窓を64サンプリング点として、各サンプリング点ごとに変位が算出される。
【0046】
また、例えば加熱治療前の基準となる時相と最新時相との比較により変位が算出されてもよい。例えば、HIFUが照射される前の基準時相における組織の位置を定常位置(変位ゼロの基準位置)とし、基準時相と各時相(各位相)に対応したデータ同士が相互相関演算等により比較され、各時相(各位相)に対応した変位が算出されてもよい。なお、変位の算出に先立って、必要に応じて、ベースバンド除去処理やノイズ除去処理などが行われてもよい。
【0047】
そして、変位測定部22は、各深さ(各サンプリング点)ごとに測定された複数時相(複数位相)の変位から、各深さごとにその深さに対応した変位量を導出する。例えば、各深さごとに変調信号(矩形波)の1周期以上に亘って得られた変位の変化から、その変位の二乗平均平方根(RMS)つまり実効値を算出し、その実効値をその深さの変位量としてもよい。
【0048】
変位測定部22は、測定用フレームを構成する全ラインについて、各ラインごとに各深さにおける組織の変位量(例えばRMS振幅)を算出する。さらに、変位測定部22は、算出された組織の変位量に基づいて、測定用フレームに対応した2次元的な変位量マップを形成する。
【0049】
図4は、2次元的な変位量マップの具体例を示す図である。図4には、任意の診断時刻(After0s)の測定用フレームに対応した変位量(RMS振幅)マップの具体例が図示されている。
【0050】
図4に示す具体例において、変位量マップの縦軸は深さ(Depth)方向である。また、変位量マップの横軸は、測定用フレームを構成する複数ラインの配列方向(方位方向=lateral方向)である。そして、変位量マップ内において縦軸方向と横軸方向に2次元的に並ぶ複数位置の各位置における変位量(RMS振幅)が、例えばカラーの相違で表現される。図4において、カラーバーは、変位量(RMS振幅)の大きさとカラー(色)との対応関係を示している。なお、カラーによる表現に代えて又はカラーによる表現と共に、例えば輝度の相違により各位置における変位量(RMS振幅)が表現されてもよい。
【0051】
図4に示す具体例により、例えば、測定用フレームが治療部位P(図1参照)を含む断面に設定されていれば、治療部位Pを含む断面に対応した2次元的な変位量マップが得られる。変位測定部22により形成された2次元的な変位量マップは、表示部50に表示される。
【0052】
また、2次元的な変位量マップは、複数の診断時刻に亘って各診断時刻ごとに形成することができる。例えば、治療用超音波ビームTBによる治療部位Pの加熱処理が開始される直前または直後から、定期的に(例えば1〜2秒程度の間隔)、治療部位Pを含む断面に対応した2次元的な変位量マップが形成される。
【0053】
図5は、複数の診断時刻に亘って形成される変位量マップの具体例を示す図である。図5には、診断時刻0秒から診断時刻26秒まで、2秒間隔で複数の診断時刻に亘って次々に形成される変位量マップが図示されている。例えば、治療用超音波ビームTBによる治療部位Pの加熱処理の開始時刻が診断時刻0秒に対応しており、診断時刻N秒が治療開始からN秒後に対応している。
【0054】
変位測定部22は、例えば図5に示す具体例のように、複数の診断時刻に亘って変位量マップを形成する。形成された変位量マップは表示部50に表示される。複数の診断時刻に亘って得られた2次元的な変位量マップは動的に表示されることが望ましい。
【0055】
例えば、表示部50に表示される表示画面内に変位量マップの表示領域が設けられ、その表示領域内において、図5に示す診断時刻0秒から診断時刻26秒までの変位量マップが次々に表示される。これにより、表示部50に、2次元的な変位量マップの動画が表示される。もちろん、複数の診断時刻に対応した2次元的な変位量マップがコマ送り状に表示されてもよいし、医師や検査技師等のユーザが指定した診断時刻の2次元的な変位量マップが静止画として表示されてもよい。
【0056】
図1の超音波医用装置を利用した治療においては、例えば治療部位P(治療対象領域)内に複数の治療箇所(治療のための目標箇所)が設定される。そして、複数の治療箇所の各々を焦点とする治療用超音波ビームTBが形成され、各治療箇所ごとに加熱治療が実行されて凝固領域が形成される。腫瘍などの治療部位Pの治療においては、例えば、治療部位P(治療対象領域)内を全体的に凝固させることが望ましい。つまり、各治療箇所とそれに隣接する治療箇所との間において凝固領域の隙間(凝固していない領域)を無くすことが望ましい。その一方において、各治療箇所において過剰に治療用超音波ビームTBの照射を実行することは、治療の安全性や患者への時間的な負担等の面で望ましいとは言えない。
【0057】
そこで、図1の超音波医用装置は、複数の治療箇所に形成される凝固領域の接合状態を測定する。例えば、以下に詳述する具体例により、複数の凝固領域が接合したか否かを示す測定結果が得られる。
【0058】
図6は、複数の治療箇所に形成される凝固領域の具体例を示す図である。図6には、2つの治療箇所P1,P2に形成される凝固領域について、治療用超音波ビームTBの照射開始時(a)から照射50秒後(f)までの凝固状態の具体例が図示されている。なお、図6に示す具体例では、変位量マップ(図4参照)と同様に、縦軸が深さ方向に対応しており、横軸が方位方向(複数ラインの配列方向)に対応している。
【0059】
図6に示す具体例は、治療箇所P1に凝固領域が形成された後に、治療箇所P2に治療用超音波ビームTBが照射されて治療箇所P2に凝固領域が形成される具体例に対応している。
【0060】
図6に示す具体例では、照射開始時(a)には治療箇所P2に凝固領域が形成されていないものの、照射10秒後(b)から治療箇所P2を中心とする凝固領域が形成され、照射20秒後(c),照射30秒後(d)と照射時間が経過するにつれて治療箇所P2に対応した凝固領域の範囲が広がっている。そして、照射40秒後(e)から治療箇所P1と治療箇所P2の凝固領域が接合し始め、照射50秒後(f)において治療箇所P1と治療箇所P2の凝固領域が部分的に重なり合っている。
【0061】
例えば、図6に示す具体例において、治療箇所P1の凝固領域と治療箇所P2の凝固領域の接合状態を確認するために、治療箇所P1と治療箇所P2を含む断面において変位量マップ(図4)が形成される。さらに、治療箇所P2に治療用超音波ビームTBの照射が開始されてから、定期的に(図6の具体例では10秒間隔で)変位量マップが次々に形成される。
【0062】
また、凝固領域の接合状態を確認する場合には、観測対象となる深さに観測ラインKLが設定される。観測ラインKLは、治療箇所P1と治療箇所P2の凝固領域が確認できる深さに設定される。例えば、治療箇所P1と治療箇所P2を通るように観測ラインKLが設定される。なお、観測ラインKLは方位方向に対して平行に設定されることが望ましいものの、方位方向に対して角度をもつように設定されてもよい。そして、観測ラインKLが設定された深さに対応した変位変化マップが形成される。
【0063】
図7は、変位変化マップの具体例を示す図である。図7に示す変位変化マップは、図6に示す2つの治療箇所P1,P2に対応した凝固領域の具体例に対応している。つまり、図6の観測ラインKL上において、照射開始時(a)から照射50秒後(f)までに得られる変位変化マップの具体例が図7である。
【0064】
変位比較部24は、例えば変位量マップ(図4参照)から変位変化マップを生成する。変位量マップ(図4参照)では、各深さごとに変調信号(矩形波)の1周期以上に亘って得られた変位の二乗平均平方根(RMS)を変位量としている。これに対し、図7の変位変化マップは、観測ラインKLに対応した深さにおける、変調信号(矩形波)の1周期に亘って得られた変位の変化を示している。
【0065】
図7に示す具体例において、変位変化マップの縦軸は方位方向(観測ラインKL上の各位置)に対応しており、横軸はフレーム(変調信号の1周期間内の各時相)に対応している。そして、変位変化マップ内において、縦軸方向と横軸方向に2次元的に並ぶ複数画素(複数の表示サンプル)の各画素における変位が、例えば輝度の相違で表現される。例えば、低輝度(黒)に対応した画素が正方向(深い方向)の変位に対応し、高輝度(白)に対応した画素が負方向(浅い方向)の変位に対応している。
【0066】
図7の変位変化マップは、観測ラインKLに対応した深さにおける、変調信号(例えば矩形波)の1周期に亘って得られた変位の変化を示している。そのため、照射開始時(a)から照射50秒後(f)までの各診断時刻に対応した変位変化マップ内において、方位方向の各位置における変位がフレーム方向に1周期に亘って周期的に変化している。
【0067】
変位変化マップが形成されると、変位比較部24は、変位変化マップに基づいて、複数の治療箇所における組織変位の時間変化を比較することにより変位比較情報を得る。例えば図6図7に示す具体例の場合に、変位比較部24は、図7の変位変化マップに基づいて、治療箇所P1と治療箇所P2における組織変位の時間変化を比較し、変位比較情報として、治療箇所P2における組織変位に対する治療箇所P1における組織変位の位相遅れを導出する。
【0068】
変位比較部24は、例えば、治療箇所P2における組織変位の時間変化(横軸のフレーム方向の変化)と治療箇所P1における組織変位の時間変化(横軸のフレーム方向の変化)とを複素FFT(高速フーリエ変換)解析することにより、治療箇所P2における組織変位に対する治療箇所P1における組織変位の位相遅れdθ(治療箇所P2と治療箇所P1における組織変位の位相差)を算出する。図6図7に示す具体例において、変位比較部24は照射開始時(a)から照射50秒後(f)までの各診断時刻ごとに位相遅れdθを算出する。
【0069】
図6図7の具体例では、治療箇所P1に凝固領域が形成された後に、つまり、治療箇所P1に対応した凝固領域が既に形成された状態で、治療箇所P2に治療用超音波ビームTBが照射される。治療箇所P2に治療用超音波ビームTBが照射されると、変調処理されたHIFU信号により、治療箇所P2における組織が周期的に変位する(図2図3参照)。
【0070】
治療箇所P2の組織が周期的に変位すると、治療箇所P2の近傍にある治療箇所P1における組織が治療箇所P2の組織に追従するように周期的に変位する。治療箇所P2における凝固領域が小さく、治療箇所P2と治療箇所P1との間に凝固領域の隙間(凝固していない領域)が存在すると、その隙間の組織は比較的軟らかいため、治療箇所P2の組織変位に対して治療箇所P1の組織変位が遅延を伴って追従する。治療用超音波ビームTBの照射により治療箇所P2における凝固領域が大きくなるにつれ、治療箇所P2と治療箇所P1との間の凝固領域の隙間が小さくなるため、治療箇所P2の組織変位に対する治療箇所P1の組織変位の追従性が高くなる。そして、治療箇所P2における凝固領域が大きくなり、治療箇所P1における凝固領域と接合すると、治療箇所P2から治療箇所P1までの領域が実質的に1つの大きな凝固領域となり、治療箇所P2の組織変位に対する治療箇所P1の組織変位の遅延が極めて小さくなる。
【0071】
このように、治療箇所P2における凝固領域が小さい場合には、治療箇所P2の組織変位に対して治療箇所P1の組織変位が遅延を伴って追従するため、位相遅れdθが比較的大きい。また、治療箇所P2における凝固領域が大きくなるにつれて、治療箇所P1の組織変位の追従性が高くなるため、位相遅れdθが徐々に小さくなる。さらに、治療箇所P2における凝固領域が大きくなり、治療箇所P1における凝固領域と接合すると、位相遅れdθは極めて小さくなる。
【0072】
図8は、位相遅れdθの時間変化の具体例を示す図である。図8において、横軸は時間軸であり縦軸は位相遅れdθである。図8に示す具体例において、治療用超音波ビームTBの照射開始直後の位相遅れdθは25度程度であり、治療箇所P1と治療箇所P2における位相差が有意に検出されている。しかし、時間の経過と共に位相遅れdθは減少し、治療用超音波ビームTBの照射開始から20秒程度で位相遅れdθは12度程度まで減少し、その後はほぼ一定値として推移している。このように、初期の位相遅れdθに対して十分に小さくなったとみなせる値まで変化した場合や、時間軸上での変化が十分に小さくなった場合を、例えば予め設定した閾値との比較により判定することにより、治療箇所P1と治療箇所P2の凝固領域が隙間無く接合したか否かを判定することができる。
【0073】
そこで、凝固測定部26は、変位比較部24から得られる変位比較情報に基づいて、複数の治療箇所に形成される凝固領域の接合状態に係る測定結果を得る。例えば、図6図7に示す具体例において、凝固測定部26は、変位比較部24から得られる位相遅れdθに基づいて、治療箇所P1の凝固領域と治療箇所P2の凝固領域に関する接合状態の判定結果を得る。
【0074】
凝固測定部26は、例えば、照射開始時(a)から照射50秒後(f)までの各診断時刻ごとに得られる位相遅れdθと判定閾値とを比較し、位相遅れdθが判定閾値以下(又は判定閾値より小さい)となった診断時刻において、治療箇所P1の凝固領域と治療箇所P2の凝固領域が接合したと判定する。なお、判定閾値は、例えば過去に実施された多数の測定結果等に基づいて設定される。例えば、図6の照射30秒後(d),照射40秒後(e),照射50秒後(f)のいずれかの接合状態に対応した判定閾値が設定される。もちろん、例えば医師や検査技師等のユーザが判定閾値を調整できる構成としてもよい。
【0075】
また、凝固測定部26は、変位比較部24から得られる変位変化マップを変位比較情報として利用し、変位変化マップに基づいて、複数の治療箇所に形成される凝固領域の接合状態に係る測定結果を得るようにしてもよい。例えば図6図7に示す具体例において、凝固測定部26は、照射開始時(a)から照射50秒後(f)までの各診断時刻ごとに得られる変位変化マップと、接合判定のための基準マップとを比較し、基準マップに合致する(基準マップとの相関関係が大きい)変位変化マップが得られた診断時刻において、治療箇所P1の凝固領域と治療箇所P2の凝固領域が接合したと判定してもよい。基準マップは、例えば過去に実施された多数の測定結果等に基づいて形成される。
【0076】
こうして、凝固測定部26において、治療箇所P1の凝固領域と治療箇所P2の凝固領域が接合したと判定されると、例えば、制御部40が送信部32を制御することにより、治療箇所P2に対する治療用超音波ビームTBの照射が停止される。これにより、治療箇所P2に対する治療用超音波ビームTBの過剰な照射を抑えつつ、治療箇所P1と治療箇所P2における凝固領域の隙間をできる限り小さくすることができ、望ましくは隙間を無くすことができる。
【0077】
図1の超音波医用装置を利用した治療においては、例えば治療部位P内に設定される複数の治療箇所の各々を焦点として治療用超音波ビームTBが形成される。その際、治療用超音波ビームTBが形成される各治療箇所ごとに、その治療箇所における凝固領域とその治療箇所に隣接する治療箇所における凝固領域との接合状態が判定される。
【0078】
また、各治療箇所に対して治療用超音波ビームTBを照射している期間においては、当該治療箇所と隣接する治療箇所(接合状態の判定対象となる治療箇所)とを含む断面に対応した変位量マップ(図4図5)を表示部50に表示することが望ましい。
【0079】
また、図6図7に示す具体例では、1本の観測ラインKLに対応した深さにおいて、治療箇所P1と治療箇所P2における凝固領域の接合状態を判定したが、複数の深さに対応した複数の観測ラインKLを設定し、複数の深さにおける判定結果に基づいて、治療箇所P1と治療箇所P2における凝固領域の接合状態が総合的に判定されてもよい。
【0080】
図9は、複数の観測ラインKLの具体例を示す図である。図9には、2つの治療箇所P1,P2に形成される凝固領域の接合状態を判定する際に利用される複数の観測ラインKL(KLu,KLc,KLd)の好適な具体例が図示されている。
【0081】
複数の観測ラインKLは、治療箇所P1と治療箇所P2の凝固領域が確認できる複数の深さに設定される。図9に示す具体例では、治療箇所P1と治療箇所P2を通るように中央の観測ラインKLcが設定され、中央の観測ラインKLcよりも浅い位置に上側の観測ラインKLuが設定され、中央の観測ラインKLcよりも深い位置に下側の観測ラインKLdが設定される。なお、互いに隣接する観測ラインKL間の間隔は、例えば予め定められた固定値であってもよいし、治療対象(観測対象)等に応じた間隔に変更できるようにしてもよい。
【0082】
そして、各観測ラインKLc,KLu,KLdが設定された各深さごとに変位変化マップ(図7)が形成され、各深さごとに治療箇所P1の凝固領域と治療箇所P2の凝固領域が接合したか否かが判定される。こうして、例えば、観測ラインKLc,KLu,KLdに対応した3つの深さの全てにおいて、治療箇所P1と治療箇所P2における凝固領域の接合が確認できた場合に、治療箇所P1と治療箇所P2における凝固領域が接合したと総合的に判定される。
【0083】
なお、例えば、観測ラインKLcに対応した深さにおいて接合が確認でき、観測ラインKLuと観測ラインKLdに対応した深さにおいて接合が確認できていない場合には、治療箇所P2に対する治療用超音波ビームTBの焦点を観測ラインKLuまたは観測ラインKLdに対応した深さに変更して、治療箇所P2に対する治療用超音波ビームTBの照射を再開するようにしてもよい。
【0084】
また、複数の治療箇所の各々に対して治療用超音波ビームTBを照射する治療においては、治療用超音波ビームTBが照射される治療箇所から、関心方向にある最も近い治療箇所における凝固領域を対象として、接合状態を判定することが望ましい。
【0085】
図10は、関心方向の具体例を示す図である。図10には、例えば治療部位P(治療対象領域)内に設定された複数の治療箇所P1〜P14,Pnの具体例が図示されている。さらに、図10には、治療箇所Pnに対して治療用超音波ビームTBを照射する場合における関心方向の具体例(D1〜D6)が図示されている。
【0086】
図10に示す具体例において、治療箇所Pnに対して治療用超音波ビームTBを照射する治療の場合に、例えば関心方向がD1であれば、D1の方向にある最も近い治療箇所P1に既に形成されている凝固領域が接合状態の判定対象とされ、治療箇所Pnに形成される凝固領域と治療箇所P1にある凝固領域との接合状態が判定される。
【0087】
また、図10に示す具体例において、例えば関心方向がD2であれば、D2の方向にある最も近い治療箇所P2の凝固領域が接合状態の判定対象とされる。同様に、関心方向がD3〜D6のいずれかであれば、各方向に対応した治療箇所P3〜P6のいずれかの凝固領域が接合状態の判定対象とされる。
【0088】
なお、図10に示す具体例において、治療箇所P7または治療箇所P8に既に凝固領域が形成されていれば、治療箇所P7または治療箇所P8の凝固領域が接合状態の判定対象とされてもよい。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。なお、本発明に係る超音波医用装置を利用した治療等は、医師等の専門家の指導の下で十分に慎重に行われるべきことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
10 超音波振動子、20 測定診断ブロック、21 送受信部、22 変位測定部、24 変位比較部、26 凝固測定部、28 超音波画像形成部、30 治療放射ブロック、32 送信部、36 変調処理部、40 制御部、50 表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10