特開2019-52062(P2019-52062A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2019052062-衛生陶器 図000005
  • 特開2019052062-衛生陶器 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-52062(P2019-52062A)
(43)【公開日】2019年4月4日
(54)【発明の名称】衛生陶器
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/86 20060101AFI20190308BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20190308BHJP
   A47K 1/04 20060101ALI20190308BHJP
【FI】
   C04B41/86 R
   E03D11/02 Z
   A47K1/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-177473(P2017-177473)
(22)【出願日】2017年9月15日
(71)【出願人】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
【住所又は居所】東京都江東区大島2丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保田 亮
(72)【発明者】
【氏名】河村 優希
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AA04
2D039AD00
2D039BA00
(57)【要約】
【課題】色のばらつきが抑制された衛生陶器を提供する。
【解決手段】衛生陶器1は、素地3と、素地3よりも表面側に形成された釉薬層5と、を備えている。色をLab表色系で表わしたときに、釉薬層5が形成された部分を観測したL値と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値が12以下である、又は、釉薬層5が形成された部分を観測した場合と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)が14以下である。釉薬層5の厚みがばらついて素地3の色の透ける程度が異なっても、釉薬層5側から見える色はほとんど変わらず、釉薬層5側から見える色のばらつきが抑制された衛生陶器1が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地と、前記素地よりも表面側に形成された釉薬層と、を備えた衛生陶器であって、
色をLab表色系で表わしたときに、
前記釉薬層が形成された部分を観測したL値と、前記釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値が12以下である、又は、
前記釉薬層が形成された部分を観測した場合と、前記釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)が14以下であることを特徴とする衛生陶器。
【請求項2】
前記差(ΔL)の絶対値が8以下である、又は、
前記色差(ΔE)が8以下であることを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項3】
前記差(ΔL)の絶対値が6以下である、又は、
前記色差(ΔE)が6以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の衛生陶器。
【請求項4】
前記釉薬層が形成された部分を観測したL値が80以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【請求項5】
前記釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値が80以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【請求項6】
前記素地の吸水率が8〜30%であり、
前記素地には無添加の場合に比べて添加することで、より白色となる成分が含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【請求項7】
前記成分は、
周期表の族において、2〜4族、12〜14族のいずれかに属し、かつ
周期表の周期において、3〜5周期に属する元素を少なくとも1種以上含むことを特徴とする請求項6に記載の衛生陶器。
【請求項8】
前記素地と、前記釉薬層との間には、さらに中間層が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【請求項9】
前記中間層が白色であり、
前記釉薬層が透明であることを特徴とする請求項8に記載の衛生陶器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衛生陶器に関する。
【背景技術】
【0002】
便器、洗面器等の衛生陶器には、釉薬層が最表面に形成されている(例えば、特許文献1参照)。この釉薬層によって、汚れを付着しにくくしている。また、この釉薬層によって、衛生陶器に色を付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−72460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、衛生陶器の釉薬の色では、素地の色を完全には隠ぺいできなかった。そのため、釉薬層の厚みのばらつきによって、衛生陶器の色のばらつきも発生していた。従来、衛生陶器では、色のばらつきは考慮されていなかった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、色のばらつきが抑制された衛生陶器を提供することを目的とする。本発明者らは、衛生陶器において、釉薬層が形成された部分を観測したL値と、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)や、釉薬層が形成された部分を観測した場合と、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)を特定の範囲に制御することで、衛生陶器の色のばらつきを抑制することに成功した。本発明は、かかる知見に基づくものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕
素地と、前記素地よりも表面側に形成された釉薬層と、を備えた衛生陶器であって、
色をLab表色系で表わしたときに、
前記釉薬層が形成された部分を観測したL値と、前記釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値が12以下である、又は、
前記釉薬層が形成された部分を観測した場合と、前記釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)が14以下であることを特徴とする衛生陶器。
【0006】
〔2〕
前記差(ΔL)の絶対値が8以下である、又は、
前記色差(ΔE)が8以下であることを特徴とする〔1〕に記載の衛生陶器。
【0007】
〔3〕
前記差(ΔL)の絶対値が6以下である、又は、
前記色差(ΔE)が6以下であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の衛生陶器。
【0008】
〔4〕
前記釉薬層が形成された部分を観測したL値が80以上であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【0009】
〔5〕
前記釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値が80以上であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【0010】
〔6〕
前記素地の吸水率が8〜30%であり、
前記素地には無添加の場合に比べて添加することで、より白色となる成分が含まれていることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【0011】
〔7〕
前記成分は、
周期表の族において、2〜4族、12〜14族のいずれかに属し、かつ
周期表の周期において、3〜5周期に属する元素を少なくとも1種以上含むことを特徴とする〔6〕に記載の衛生陶器。
【0012】
〔8〕
前記素地と、前記釉薬層との間には、さらに中間層が設けられていることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【0013】
〔9〕
前記中間層が白色であり、
前記釉薬層が透明であることを特徴とする〔8〕に記載の衛生陶器。
【発明の効果】
【0014】
本発明の衛生陶器は、釉薬層が形成された部分を観測したL値と、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値が12以下である、又は、釉薬層が形成された部分を観測した場合と、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)が14以下である。この構成では、釉薬層の厚みがばらついて素地の色の透ける程度が異なっても、釉薬層側から見える色はほとんど変わらない。すなわち、この構成によれば、釉薬層側から見える色のばらつきが抑制された衛生陶器が提供される。
差(ΔL)の絶対値が8以下である、又は、色差(ΔE)が8以下である場合には、色のばらつきがより抑制された衛生陶器が提供される。
差(ΔL)の絶対値が6以下である、又は、色差(ΔE)が6以下である場合には、色のばらつきが特に抑制された衛生陶器が提供される。
また、釉薬層が形成された部分を観測したL値が80以上である場合には、良好な白色を呈する衛生陶器が提供される。
また、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値が80以上である場合には、色のばらつき抑制効果が高い。
吸水率が低くなると素地が緻密化して、素地中のガラス相が多くなる。すると、着色成分がガラス相に溶け込み、素地は着色しやすくなり、白さがなくなってくる。これに対して、素地の吸水率を8〜30%とすると、ガラス相が少なくなるために着色しにくく、更に白色とする成分によって、白さが増し、衛生陶器が美しくなる。
より白色とする成分が、周期表の族において、2〜4族、12〜14族のいずれかに属し、かつ、3〜5周期に属する元素を少なくとも1種以上含む場合には、白さが増し、衛生陶器がより美しくなる。
素地と、釉薬層との間に、さらに中間層が設けられている場合は、素地及び釉薬層のみならず、中間層によっても色のばらつきを抑制することができる。
中間層が白色であり、釉薬層が透明である場合には、中間層の白色が釉薬層を通して透けて見え、この白色により、釉薬層の側から見える色のばらつきが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明する。
図1】衛生陶器を示す断面図である。
図2】衛生陶器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
1.衛生陶器
本発明において、衛生陶器は、浴室や便所や洗面所等の主に水回りに用いられる陶製の器具を意味する。
本発明の衛生陶器1は、図1に示すように、素地3と、素地3よりも表面側に形成された釉薬層5と、を備えている。色をLab表色系(JIS Z8781−4)で表わしたときに、釉薬層5が形成された部分を観測したL値と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値が12以下である、又は、釉薬層5が形成された部分を観測した場合と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)が14以下であることを特徴とする。好ましくは、差(ΔL)の絶対値が8以下である、又は、色差(ΔE)が8以下である。より好ましくは、差(ΔL)の絶対値が6以下である、又は、色差(ΔE)が6以下である。また、釉薬層5が形成された部分を観測したL値が80以上であることが好ましい。また、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測したL値が80以上であることが好ましい。
なお、釉薬層5が実質的に形成されていない部分とは、素地3がほぼ剥き出しの状態、すなわち、所定部分の面積全体を100%とした場合に、95%以上で素地3が露出している部分をいう。素地3が、コーティングなどによりほぼ剥き出しになっていない場合は、削って剥き出しにしても良い。
図1の場合の衛生陶器1では、釉薬層5が形成された部分を観測したL値と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値は、釉薬層5の側から観測したL値(図1で上方から観察したL値)と、素地3の側から観測したL値(図1で下方から観察したL値)との差(ΔL)の絶対値を意味する。
また、釉薬層5が形成された部分を観測した場合と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)は、釉薬層5の側から観測した場合(図1で上方から観察した場合)と、素地3の側から観測した場合(図1で下方から観察した場合)の色差(ΔE)を意味する。
ここで、ΔL、ΔEについて説明する。色空間としてL*a*b*表色系において、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測した色の色空間での座標をR(L,a,b)、釉薬層5が形成された部分を観測した色の色空間での座標をM(L,a,b)とすると、ΔL、Δa、Δb、ΔEはそれぞれ次のように定義される。なお、これらの値は、カラーマシーン(例えば、コニカミノルタ製 色彩色差計 CR−400)を用いて測定できる。

ΔL=L−L
Δa=a−a
Δb=b−b
ΔE=((ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2
【0017】
本発明による衛生陶器1は、ΔL又はΔEが上記要件を満たすことで、釉薬層5の厚みがばらついても、釉薬層5側から見える色のばらつきが抑制される。本発明者らが知る限りでは、上記要件を満たすような衛生陶器1は存在しなかった。
ここで本発明がなされた背景を詳細に説明する。衛生陶器1においては、色のばらつきがあり、美観が損なわれるおそれがあった。従来、外観をよくするためには、表面層である釉薬層5を改良すればよいという思想の下、研究開発を行ってきた。ところが、釉薬層5の改良では、色のばらつきを抑えきれないことが判明した。そこで、発明者らが鋭意研究を重ねた結果、予想外にも素地3の色をコントロールすることも必要であり、素地3と、釉薬層5の色の関係を規定することで色のばらつきが効果的に抑制されることを見いだした。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
釉薬層5が形成された部分を観測したL値と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値が小さくなると、釉薬層5と素地3の色が近づくことになる。そして、釉薬層5と素地3の色が近づくと、釉薬層5の厚みがばらついて素地3の色の透ける程度が異なっても、釉薬層5側から見える色はほとんど変わらなくなる。よって、本発明では、釉薬層5側から見える色のばらつきが抑制された衛生陶器1が提供されるのである。
【0018】
色差(ΔE)についても、L値の場合と同様に説明できる。すなわち、釉薬層5が形成された部分を観測した場合と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)が小さくなると、釉薬層5と素地3の色が近づくことになる。そして、釉薬層5と素地3の色が近づくと、釉薬層5の厚みがばらついて素地3の色の透ける程度が異なっても、釉薬層5側から見える色はほとんど変わらなくなる。よって、本発明では、釉薬層5側から見える色のばらつきが抑制された衛生陶器1が提供されるのである。
【0019】
素地3の組成は特に限定されない。長石、陶石、カオリン、粘土等からなる窯業原料を配合したものに所定量の水を加え、ボールミルで細かくした素地スラリーを用いて素地3を形成できる。
【0020】
釉薬層5を形成する釉薬の組成は特に限定されない。珪砂、長石、石灰、粘土、亜鉛華等からなる釉薬原料を配合したものに所定量の水を加え、ボールミルで細かくした釉薬のスラリーを用いて釉薬層5を形成できる。
また、釉薬層5の厚みは特に限定されない。釉薬層5の厚みは、耐水性と耐貫入性の観点から、好ましくは0.2〜1mmであり、より好ましくは0.3〜0.8mmであり、更に好ましくは0.4〜0.8mmである。
【0021】
本発明では、釉薬層5が形成された部分を観測したL値と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測したL値との差(ΔL)の絶対値が所定値以下である、又は、釉薬層5が形成された部分を観測した場合と、釉薬層5が実質的に形成されていない部分を観測した場合の色差(ΔE)が所定値以下であることを特徴とする。そのためには、素地3の組成に合わせて、上述のΔLの絶対値又はΔEが所定値範囲内となるように釉薬層5を形成する釉薬の組成が決定される。または、釉薬層5を形成する釉薬の組成に合わせて、上述のΔLの絶対値又はΔEが所定値範囲内となるように素地3の組成が決定される。
素地3の組成と、釉薬層5を形成する釉薬の組成は、上述のΔLの絶対値又はΔEが所定値範囲内であれば特に限定されないが、その組合せの一例として次の組成が挙げられる。

(釉薬の組成)
SiO :50〜70重量部
Al :3〜15重量部
CaO :5〜20重量部
MgO :0.1〜10重量部
O :0.1〜10重量部
NaO :0.1〜5重量部
ZnO :0.1〜20重量部
ZrO :0.1〜20重量部
なお、Alに替えてムライト(3Al・2SiO)を使用してもよい。また、Alの代わりにAlとムライトの混合物を用いてもよい。

(素地の組成)
SiO :25〜40重量部
Al :35〜70重量部
Fe :0.1〜3.0重量部
CaO :0.1〜3.0重量部
MgO :0.1〜3.0重量部
O :0.1〜5.0重量部
NaO :0.1〜5.0重量部
TiO :0.1〜5.0重量部

なお、Alに替えてムライト(3Al・2SiO)を使用してもよい。また、Alの代わりにAlとムライトの混合物を用いてもよい。TiOは任意成分である。
【0022】
素地3の吸水率は特に限定されない。吸水率は、次のように測定できる。試験片を100℃にて24時間乾燥後に重量(乾燥重量)を測定する。その後、試験片を水中に24時間浸した後、重量(吸水重量)を測定する。そして、下記式により吸水率を求める。

吸水率(%)={(吸水重量−乾燥重量)/乾燥重量}×100
【0023】
素地3の吸水率は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
なお、JIS A 5207では、衛生陶器1について、素地3の質はインキ浸透度が3mm以下であることが記載されている。この素地3は、吸水率が1%以下程度である。本発明の技術は、JIS A 5207に規定されている吸水率が1%以下の素地3だけでなく、吸水率が30%以下の素地3にも適応可能である。
【0024】
素地3の吸水率が8〜30%である場合には、ガラス相が少なくなり、着色しにくい。この場合には、更により白色とする成分を添加することが好ましい。白色とする成分によって、白さが増し、衛生陶器1が美しくなる。
白色とする成分は、特に限定されない。白色とする成分が、周期表の族において、2〜4族、12〜14族のいずれかに属し、かつ、3〜5周期に属する元素を少なくとも1種以上含むことが好ましい。周期表において、2〜4族、12〜14族のいずれかに属する元素は、反応性が低いため、素地3を溶かしたり破壊するおそれが低い。しかも、これらの族に属する元素は、無色であるため、衛生陶器1の外観を美しくできる。周期表において、3〜5周期のいずれかに属する元素は、反応性が低い固体であり、しかも産出量が多く、コスト的にも有利である。
2〜4族、12〜14族のいずれかに属し、かつ、3〜5周期に属する元素は、この要件を満たせば特に限定されないが、Al、Si、Sc、Ti、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Cd、In、Snからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
白色とする成分としては、白色顔料が好適に挙げられ、より具体的には、TiO、Al、ZrO、ZnO、SiO、ZrO・SiO、3Al・2SiOからなる群より選ばれる1種以上が例示される。
【0025】
衛生陶器1は、図2に示すように、素地3と、釉薬層5に加えて、素地3と釉薬層5の間に中間層7が設けられていてもよい。中間層7を設けることで、素地3と釉薬層5間の色(白さ)の差を緩和でき、釉薬層5側から見える色のばらつきを抑制できる。
中間層7の組成は特に限定されない。中間層7は、釉薬層5を形成する釉薬の原料と、素地3を形成する原料とを混合した混合物を用いて形成することができる。
中間層7が白色であり、釉薬層5が透明であるであることが好ましい。中間層7の白色が釉薬層5を通して透けて見え、この白色により、釉薬層5側から見える色のばらつきが抑制される。また、中間層7を白色とすることで、素地3中の白色とする成分を少なくできる。よって、素地3に安価な成分を使え、コスト的に有利である。
【0026】
2.衛生陶器の製造方法
衛生陶器1の製造方法は、特に限定されないが、以下の製造方法を好適に採用することができる。
(1)釉薬スラリーの調製
珪砂、長石、石灰、粘土、亜鉛華等からなる釉薬原料を配合した配合原料に所定量の水を加え、ボールミル等で粉砕して釉薬スラリーを調製する。
(2)衛生陶器の素地の作製
長石、陶石、カオリン、粘土等からなる窯業原料を、所定割合で配合した配合原料に所定量の水を加え、ボールミル等で粉砕して、素地スラリーを調製する。素地スラリーを、所定形状の石膏型等を用いて、成形素地とする。その成形素地を例えば40℃で乾燥し、乾燥素地を作製する。
(3)施釉及び焼成
乾燥素地に、釉薬スラリーをスプレー等により施釉する。その後、施釉した素地を、焼成炉で、例えば1200〜1300℃にて焼成する。このようにして衛生陶器1を作製できる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0028】
1.評価用試験体の作製
(1)釉薬
珪砂、長石、石灰、粘土、亜鉛華等からなる釉薬原料を配合したものに所定量の水を加え、ボールミルで粉砕して釉薬スラリーを調製した。釉薬組成を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(2)評価用試験体
長石、陶石、カオリン、粘土等からなる窯業原料を、下記表2に示す割合となるように配合したものに所定量の水を加え、ボールミルで粉砕して、素地スラリーを調製した。素地スラリーを所定形状の石膏型に鋳込み、着肉成形後、脱型して、成形素地を作製した。その成形素地を40℃で乾燥し、乾燥素地を作製した。その乾燥素地の片面に、上記釉薬スラリーをスプレーにて施釉した。その後、施釉した素地を、焼成炉で、1220℃にて焼成し、評価用試験体を得た。
【0031】
【表2】
【0032】
各評価用試験体について、吸水率、釉薬層が形成された部分を観測したL値、a値、b値、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値、a値、b値を求めた。吸水率は、既述の方法により測定した。
釉薬層が形成された部分を観測したL値は、釉薬がかかった表面の10ケ所のL値を測定し、その平均値とした。釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値は、釉薬がかかっていない裏面の10ケ所のL値を測定し、その平均値とした。釉薬層が形成された部分を観測したL値の標準偏差は、釉薬がかかった表面の10ケ所のL値から求めたものであり、測定値のばらつきを示している。ΔLの絶対値は、釉薬層が形成された部分を観測したL値(10カ所の平均値)から、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値(10カ所の平均値)を引いた値の絶対値である。
ΔEは、次のΔL、Δa、Δbを用いて既述の式により計算した。ΔLは、釉薬層が形成された部分を観測したL値(10カ所の平均値)から、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したL値(10カ所の平均値)を引いた値である。Δaは、釉薬層が形成された部分を観測したa値(10カ所の平均値)から、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したa値(10カ所の平均値)を引いた値である。Δbは、釉薬層が形成された部分を観測したb値(10カ所の平均値)から、釉薬層が実質的に形成されていない部分を観測したb値(10カ所の平均値)を引いた値である。
【0033】
2.評価結果
実施例1−3は、ΔLの絶対値が12以下である。また、実施例1−3は、ΔEが14以下である。そして、実施例1−3は、いずれも、釉薬層が形成された部分を観測したL値の標準偏差が比較例1に比べて小さかった。従って、ΔLの絶対値が12以下である、又は、ΔEが14以下であるという要件を満たす場合には、釉薬層の厚みがばらついても、釉薬層側から見える色のばらつきが抑制されることが確認された。なお、人間の目では、釉薬層が形成された部分を観測したL値の標準偏差が0.60以下の場合には、色のばらつきをほとんど感じない。
特に、ΔLの絶対値が8以下である、又は、ΔEが8以下の場合には、実施例1−2の結果に示されるように、色のばらつきの抑制効果が高かった。すなわち、釉薬層が形成された部分を観測したL値の標準偏差が極めて低く抑えられていた。
また、釉薬層が形成されていない部分を観測したL値が80以上である場合には、実施例1−2の結果に示されるように、色のばらつきの抑制効果が高かった。すなわち、釉薬層が形成された部分を観測したL値の標準偏差が極めて低く抑えられていた。
また、素地の吸水率が8〜20%であり、素地にTiOを含んでいると、実施例1−2の結果に示されるように、色のばらつきの抑制効果が高かった。すなわち、釉薬層が形成された部分を観測したL値の標準偏差が極めて低く抑えられていた。
また、実施例1−2の場合は、白さが増し、評価用試験体の見た目が美しく、高級感があった。
なお、実施例1−3では、釉薬層が形成された部分を観測したL値が80以上であり、良好な白色を呈していた。
【0034】
3.実施例の効果
本実施例によれば、釉薬層の厚みがばらついても、釉薬層側から見える色のばらつきが抑制されることが確認された。
【0035】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の衛生陶器のサイズ、形状は特に限定されず、用途に応じて適宜変更することができる。衛生陶器としては、曲面を有する立体形状のものが例示される。本発明の衛生陶器は、大便器、節水型大便器、小便器、洗浄用タンク、洗面器、手洗器、掃除流し等の衛生陶器に好適に用いられる。これらの中でも、洗面器は、使われ方として人の目に近く、釉薬面から見た色のばらつきがより目立ち、本発明が有効である。さらに、洗面器の中でも、より深い形状、例えば洗面ボウルの深さ500mm以上(通常1000mm以下)あるものにおいては、底面部と側面部の施釉厚さにばらつきが生じ、素地の色の影響が出やすいため、本発明が特に有効である。
【符号の説明】
【0037】
1…衛生陶器
3…素地
5…釉薬層
7…中間層
図1
図2