特開2019-63040(P2019-63040A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-63040X線撮影装置、及び、X線撮影における画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-63040(P2019-63040A)
(43)【公開日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】X線撮影装置、及び、X線撮影における画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20190329BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
   A61B6/14 311
   A61B6/00 350P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-189146(P2017-189146)
(22)【出願日】2017年9月28日
(71)【出願人】
【識別番号】305019772
【氏名又は名称】株式会社 アクシオン・ジャパン
【住所又は居所】東京都豊島区池袋二丁目50番8号
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【住所又は居所】長野県松本市旭三丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】貝吹 太志
(72)【発明者】
【氏名】栗田 浩
(72)【発明者】
【氏名】森 雄基
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 栄男
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA12
4C093CA17
4C093CA18
4C093DA05
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB18
4C093EE16
4C093FF20
4C093FF35
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】歯列の奥側まで容易に目視することができ、且つ、歯科医師の労力負担を軽減させるとともに、患者の治療を受けるときの負担を軽減させる。
【解決手段】X線パノラマ画像撮影装置(11)では、X線発生装置(31,31A)及び検出器(32)の対の回転が制御され、被検者(P)の口腔部を、当該口腔部の口を開けた状態でX線に拠りスキャンされる。検出器から出力される電気信号に基づいてX線画像(例えばパノラマ画像)が生成される。この撮影装置は、X線発生装置及び検出器を回転させる回転移動機構(24)の一部に配置されにカラーの光学像を一定レートで撮影可能な光学カメラ(91)と、光学カメラが撮影した光学像から口腔部の、その内部の歯列全体を視野にいれたカラー光学像を作成する手段(S51)と、X線画像とカラー光学像を互いに位置的に対応させてフージョンさせたフージョン画像を作成する手段(S53,S55,S56)と、を備える。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線発生装置(31,31A)と、
前記X線発生装置から発生されたX線を入射させ、その入射X線に応じたデジタル量の電気信号を画素毎に一定のフレームレートで出力可能な検出器(32)と、
前記X線発生装置及び前記検出器を保持し、被検者の口腔部を挟んで互いに対向させた状態で、当該X線発生装置及び当該検出器の対を当該口腔部の周りを移動させるように回転移動する回転移動機構(24)と、
前記回転移動機構が回転移動している間に、前記X線発生装置及び前記検出器を制御して前記口腔部を、当該口腔部の口を開けた状態で前記X線に拠りスキャンするスキャン指令手段(57)と、
前記スキャン指令手段のスキャン指令に応じて前記検出器から出力される前記電気信号に基づいてX線画像(例えばパノラマ画像)を生成するX線画像生成手段(53、56(S54))と、
前記回転移動機構の一部に配置され、当該回転移動機構の回転駆動中にカラーの光学像を一定レートで撮影可能な光学カメラ(91)と、
前記光学カメラが撮影した前記光学像から前記口腔部の、その内部の歯列全体を視野にいれたカラー光学像を作成するカラー光学像作成手段(53、56(S51,S52,S53))と、
前記X線画像と前記カラー光学像を互いに位置的に対応させてフージョンさせたフージョン画像を作成するフージョン画像作成手段(56(S55,S56))と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置(11)。
【請求項2】
前記X線画像生成手段は、前記X線画像として、前記口腔部のパノラマ画像を作成するように構成され、
前記カラー光学像作成手段は、前記口腔部内のカラー光学像から口腔領域画像を部分的に切り出した口腔領域画像を作成するように構成され、
前記フージョン画像作成手段は、前記パノラマ画像に前記口腔領域画像を互いに位置的に対応させて重畳した画像を前記フージョン画像として作成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記X線画像生成手段は、前記X線画像として、前記口腔部のパノラマ画像を作成するとともに、そのパノラマ画像又は当該パノラマ画像から口腔領域を部分的に切り出した口腔領域画像を作成するように構成され、
前記フージョン画像作成手段は、前記口腔部のカラー光学像に、前記パノラマ画像から部分的に切り出した前記口腔領域画像を互いに位置的に対応させて重畳した画像を前記フージョン画像として作成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記フージョン画像作成手段は、前記X線画像と前記カラー光学像を、当該X線画像及び当該カラー光学像それぞれから抽出した特徴点、又は、当該X線画像及び当該カラー光学像に予め写り込ませたランドマークを基準位置として互いに対応させて前記フージョン画像を作成するように構成した、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記ランドマークは前記口腔部に撮影のために嵌めた治具に設置された物理的な部位であり、前記特徴点は前記画像から抽出した、前記口腔部の歯列を含めた特徴部位を示す部分である、ことを特徴とする請求項4に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記カラー光学像作成手段は、前記回転移動機構によって回転される前記光学カメラの複数の位置における前記口腔部の歯列の表面までの深さを求め、この深さを示すデータの中から、当該歯列の特徴部位を示す前記特徴点を抽出するように構成され、
前記X線画像生成手段は、前記歯列の前記特徴点に対応した特徴点を前記X線画像から抽出するように構成され、
前記フージョン画像作成手段は、前記特徴点を基準位置として両画像をフージョンするように構成されている、請求項4に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記フージョン画像作成手段が作成した前記フージョン画像を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
X線を発生するX線発生装置と、
前記X線発生装置から発生されたX線を入射させ、その入射X線に応じたデジタル量の電気信号を画素毎に一定のフレームレートで出力可能な検出器と、
前記X線発生装置及び前記検出器を保持し、被検者の口腔部を挟んで互いに対向させた状態で、当該X線発生装置及び当該検出器の対を当該口腔部の周りを移動させるように回転移動する回転移動機構と、
前記回転移動機構が回転移動している間に、前記X線発生装置及び前記検出器を制御して前記口腔部を前記X線に拠りスキャンするスキャン指令手段と、
前記回転移動機構の一部に配置され、当該回転移動機構の回転駆動中にカラーの光学像を一定レートで撮影可能な光学カメラと、
を備えたX線撮影装置における画像処理方法において、
前記スキャン指令手段のスキャンに応じて前記検出器から出力される前記電気信号に基づいてX線画像を生成し、
前記光学カメラが撮影した前記光学像から前記口腔部の、その内部の歯列全体を視野にいれたカラー光学像を作成し、
前記X線画像と前記カラー光学像を互いに位置的に対応させてフージョンさせたフージョン画像を作成する、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を被検者に照射して収集したX線透過データから当該被検者のX線画像を得るX線撮影装置、及び、X線撮影における画像処理方法に係り、特に、X線画像の他に、被検者の光学像を取得し、X線画像及び光学像を互いに重ねて表示する、所謂、フージョンした画像を得るX線撮影装置、及び、X線撮影における画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科診療等においてパノラマ撮影装置や歯科用X線CT装置等のX線撮影装置が多く用いられている。これにより口腔部のX線パノラマ画像やX線CT画像が得られる。この画像を観察すれば、歯や歯茎の内部の状態を読影できる。
【0003】
この種のX線撮影装置は、一般に、X線発生装置と検出器の対を被検者の周りに移動させながら、その移動中に、そのX線発生装置にビーム状のX線を一定間隔で被検者に向けて照射する構成を有する。さらに、このX線撮影装置は、被検者を透過したX線を検出器で収集し、その収集により得たX線透過データに基づき、X線画像をトモシンセシス法で再構成したり、CT再構成アルゴリズムで再構成したりするように構成されている。
【0004】
このようなX線撮影装置において、上述のように生成したX線画像と被検者の体表の光学像とを互いに重ねて表示する技術、所謂、フージョン画像を生成・表示する技術の一例が特許文献1により知られている。具体的には、この特許文献1によれば、患者の体表面可視動画像を撮影するビデオカメラと、このビデオカメラの画像出力に基づき3次元空間における患者各部位の位置情報を抽出する第2の抽出手段と、3次元変換手段および前記第2の抽出手段の出力に基づきリアルタイムに患者のX線動画像を制御するX線画像制御手段と、このX線画像制御手段から出力される患者のX線動画像データと前記ビデオカメラから出力される患者の体表面可視動画像データを合成する画像合成手段と、この画像合成手段で合成された患者の動画像を表示する合成画像表示手段とを備えている。
【0005】
また、別の例として、特許文献2に記載の歯科用コンピュータ断層撮影(CT)装置が示されている。この装置は、X線撮影手段と、装置の撮影ステーションに位置している患者の顔を複数の異なる方向から写真撮影する少なくとも1台のカラーカメラと、撮影ステーションに位置している患者の顔の複数の異なる位置に光パターンを送るように取り付けられている、少なくとも1個のレーザまたは対応する照明構造と、少なくとも1台のカラーカメラに機能上接続されている手段であって、撮影ステーションに位置している患者の顔の複数の異なる位置に送られる光パターン情報から仮想3次元サーフェスモデルを作成する、手段と、少なくとも1台のカラーカメラによって検出された顔の画像情報と、患者の顔のサーフェスモデルとを合成して、患者の顔の仮想3次元テクスチャモデルを作成する手段と、を含んでいる。
【0006】
さらに、特許文献3には、歯科診療システムが例示されている。このシステムによれば、腔内に向けてX線を出力するX線出力手段、このX線出力手段で出力されたX線が生体を透過した後のX線を可視化して撮影する可視化撮影手段を備え、この可視化撮影手段で撮影したX線画像と、この撮影部位に対応する実画像を併記又は重ね併せて表示する表示手段を備えている。
【0007】
このように特許文献1〜3には、カメラ画像とX線画像とを融合させて提示することが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−153458(請求項6など)
【特許文献2】特表2013−518649(要約書など)
【特許文献3】特開2012−157683(請求項7など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば歯周病を発病しているか、その進行具合はどうか、など微妙な変化を見つけるには、X線パノラマ画像やX線CT画像から判断できる歯茎内部の歯根部の状態だけでなく、患者の歯や歯茎の状態、特に、歯茎の色の変化を見ることが重要である。従来の場合、しかしながら、X線画像に疑わしい部分があると、実際に歯や歯茎の状態を目視で確認する必要がある。その逆も同じである。つまり、歯科医師はX線パノラマ画像の読影と目視(デンタルミラーを含む)による状態確認が必要であり、その読影のための歯科医師の負担は大きい。また、そのことは、患者にとっても、診断・治療の時間が長くなる、口を開けている時間が長くなるなど、その負担は大きくなる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来のX線撮影装置を使用するときに直面している状況に鑑みてなされたもので、特に、口腔部の病変(歯周病の発生やその進行状態)を診断するときに、歯列の奥側まで容易に目視することができ、且つ、歯科医師の労力負担を軽減させるとともに、患者の治療を受けるときの負担を軽減させることができるX線撮影装置及びそのX線撮影の画像処理方法を提供する、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明の一態様に係るX線撮影装置によれば、X線を発生するX線発生装置と、前記X線発生装置から発生されたX線を入射させ、その入射X線に応じたデジタル量の電気信号を画素毎に一定のフレームレートで出力可能な検出器と、前記X線発生装置及び前記検出器を保持し、被検者の口腔部を挟んで互いに対向させた状態で、当該X線発生装置及び当該検出器の対を当該口腔部の周りを移動させるように回転移動する回転移動機構と、前記回転移動機構が回転移動している間に、前記X線発生装置及び前記検出器を制御して前記口腔部を、当該口腔部の口を開けた状態で前記X線に拠りスキャンするスキャン指令手段と、前記スキャン指令手段のスキャン指令に応じて前記検出器から出力される前記電気信号に基づいてX線画像(例えばパノラマ画像)を生成するX線画像生成手段と、前記回転移動機構の一部に配置され、当該回転移動機構の回転駆動中にカラーの光学像を一定レートで撮影可能な光学カメラと、前記光学カメラが撮影した前記光学像から前記口腔部の、その内部の歯列全体を視野に入れたカラー光学像を作成するカラー光学像作成手段と、前記X線画像と前記カラー光学像を互いに位置的に対応させてフージョンさせたフージョン画像を作成するフージョン画像作成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
これにより、カラー光学像作成手段は、口腔部の歯列全体を視野に入れたカラー光学像を得るので、歯科医師は観察、治療のときに、歯列のなるべく奥側の歯や歯茎の状態を一度に知ることができる。これは、その後のデンタルミラーの手技等などの手間を減らすことができ、歯科医師の労力負担を軽減させるとともに、患者の治療を受けるときの負担を軽減させることにもつながる。
【0013】
ここで、「前記口腔部の、その内部の歯列全体を視野にいれたカラー光学像」とは、「統計データが示す標準的な馬蹄形の軌道を持つ歯茎と歯並び(歯列)の全体の表面を光学的に撮影しようとするカラー画像(医師等が目視する実像でもある)」を言う。歯茎や歯列の大きさは大人及び子供で異なる。口腔部に在る歯列の形状、歯茎、歯の抜け等は個人差があるので、本発明ではそのような定義が必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付図面において、
図1図1は、本発明の実施形態に係る、フージョン機能を備えたX線撮影装置としてのパノラマ画像撮影装置の概要を説明する斜視図である。
図2図2は、パノラマ画像撮影装置の電気的な構成を例示するブロック図である。
図3図3は、歯列に設定されて標準断層面のXY面への投影軌道を示す図である。
図4図4は、歯列に設定されて標準断層面からの面の移動をXY面上で説明する図である。
図5図5は、パノラマ画像に使用するゲインの概念を説明する図である。
図6図6は、パノラマ画像撮影装置の撮影空間(実空間)における、カラーの光学像(実像)を撮影するカメラに写るカラー画像と対象物の特徴点との幾何学的な関係の一例を示す図である。
図7図7は、図6に例示する幾何学的な関係から、カラー光学像に写り込んだ特徴点の撮影空間(実空間)上の位置を特定するための処理の一部を示すフローチャートである。
図8図8は、図6に例示する幾何学的な関係から、カラー光学像に写り込んだ特徴点の撮影空間(実空間)上の位置を特定するための処理の他の一部を示すフローチャートである。
図9図9は、図6に例示する幾何学的な関係から、カラー光学像に写り込んだ特徴点の撮影空間(実空間)上の位置を特定するための処理のさらに他の一部を示すフローチャートである。
図10図10は、パノラマ画像撮影装置において、フージョン画像を作成する手順を含む処理の流れを画像の概念と共に説明する図である。
図11図11は、撮影時に被検者(患者)の口腔部に入れる開口器の一例を写真で示す図である(同図は、治療用器具を入れた状態を示している)。
図12図12は、作成されたフージョン画像の例を写真で示す図である。
図13図13は、開口器の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(実施形態)を説明する。
【0016】
まず、図1図12を参照して、本発明に係るパノラマ画像撮影装置の実施形態を説明する。
【0017】
このパノラマ画像撮影装置は、X線をスキャンさせてトモシンセシス法の下に被検者(患者)の口腔部のパノラマ画像を取得する構成と、このX線スキャンと併行して被検者の口腔部の光学像(表面像)を撮影する構成と、これらの撮影されたパノラマ画像と光学像とを互いにフージョン(融合、統合)したフージョン画像を得る構成とを備えることを特徴とする。つまり、本実施形態では、このパノラマ画像撮影装置は、光学像をも得ることができる複合装置として構成されている。
【0018】
パノラマ画像は湾曲した口腔部(歯茎、歯列、顎骨など)を2次元画像として再構成された画像である。このため、光学像も口腔部を撮影した2次元画像として作成される。フージョン画像は、後述するように、パノラマ画像と光学像とを融合(融合)させた1つの画像となる。この融合の具体的な態様としては、パノラマ画像の一部に光学像を重畳させて(重ねた)態様、光学像の一部にパノラマ画像を重畳させた(重ねた)態様などが挙がられる。
【0019】
このフージョン画像は、スキャン中の併行処理又はスキャン後の後処理として実施される。このため、フージョン画像を生成する処理プログラムは、パノラマ画像撮影装置に一体に組み込んでもよいし、コンピュータ等の処理装置を専用の設けてもよい。その場合、処理装置は、スキャンによる収集データの受信のため、パノラマ画像撮影装置に有線、無線で通信可能に接続されていることが望ましい。
【0020】
このフージョン画像を得る目的は、医師がこの画像を見ることで、X線透過状態の読影と、目視による歯及び歯茎の状態の観察とを同時に行うことができる点にある。このため、一例として、パノラマ画像を読影した後、このフージョン画像を観察することで、歯茎や歯根部の内部を読影した後、歯茎の表面を観察することができ、その両者を比較することで疾病の状態をより多面的に知ることができる。特に、歯周病について、X線透過像(パノラマ画像)上では問題は無いが、光学像上で歯茎表面の色具合から発病を予測することができるなど、その用途は多大である。
【0021】
このときに、後述するように、歯科医師はパノラマ画像撮影装置を稼働させて一度、スキャンを実施するだけでパノラマ画像及び表面像を撮影でき、しかも、そのフージョン画像を得られる。このため、従来のパノラマ画像撮影装置を用いる場合のように、パノラマ画像を見た後、患者の口を再度、開け、デンタルミラーで歯や歯茎の表面も目視観察するという手間を軽減させることができる。この手間の軽減は、診断や治療を効率化させる上で大きな要素となる。
【0022】
歯茎等を肉眼で目視するという観点から、光学像(表面像)はなるべく歯列全体を撮影できるようにしている。
【0023】
このため、本実施形態に係るパノラマ画像撮影装置(11)は、その基本構成として、後述する詳細説明から判るように、X線を発生するX線発生装置(31,31A)と、前記X線発生装置から発生されたX線を入射させ、その入射X線に応じたデジタル量の電気信号を画素毎に一定のフレームレートで出力可能な検出器(32)と、前記X線発生装置及び前記検出器を保持し、被検者の口腔部を挟んで互いに対向させた状態で、当該X線発生装置及び当該検出器の対を当該口腔部の周りを移動させるように回転移動する回転移動機構(24)とを備える。また、このパノラマ画像撮影装置(11)は、前記回転移動機構が回転移動している間に、前記X線発生装置及び前記検出器を制御して前記口腔部を、当該口腔部の口を開けた状態で前記X線に拠りスキャンするスキャン指令部(57)と、前記スキャン指令部のスキャン指令に応じて前記検出器から出力される前記電気信号に基づいてX線画像(例えばパノラマ画像)を生成するX線画像生成部(53、56(S54))と、前記回転移動機構の一部に配置され、当該回転移動機構の回転駆動中にカラーの光学像を一定レートで撮影可能な光学カメラ(91)と、を備える。さらに、このパノラマ画像撮影装置(11)は、前記光学カメラが撮影した前記光学像から前記口腔部の、その内部の歯列全体を視野にいれたカラー光学像を作成するカラー光学像作成部(53、56(S51,S52,S53))と、前記X線画像と前記カラー光学像を互いに位置的に対応させてフージョンさせたフージョン画像を作成するフージョン画像作成部(56(S55,S56))と、を備える。
【0024】
ここで、「前記口腔部の、その内部の歯列全体を視野にいれたカラー光学像」とは、「統計データが示す標準的な馬蹄軌道に沿った、歯茎と歯並び(歯列)の全体表面を光学的に撮影しようとするカラー画像」を言う。このカラー光学像は、医師等が目視する歯や歯列の表面の実像(表面像)に相当する。歯茎や歯列の大きさは大人及び子供で異なる。このため、本実施形態においては、口腔部に在る歯列の形状、歯茎、歯の抜け等は個人差があるので、そのような定義が必要になる。勿論、そのような標準的な馬蹄軌道から外れた歯列や口腔部を持つ患者の場合、医師はその都度、従来法も含めた個別に対応した治療になる。
【0025】
以下、この複合型のパノラマ画像撮影装置の構成、動作、及び画像処理を説明する。
【0026】
本実施形態に係るパノラマ画像撮影装置のうち、パノラマ画像の取得に関する構成及び動作は、本出願人が既に公開している特開2007−136163(特願2006−284593;特許4844886号)と同じである。このため、本願では、かかるパノラマ画像の取得に関する構成及び動作は、その概要を述べるに留める。この構成及び動作に、光学像(表面像)を撮影するための構成、及び、フージョン画像を生成するための構成が一体に組み込まれている。
【0027】
図1に、この実施形態に係るパノラマ画像撮影装置1の概要を示す。同図に示すように、このパノラマ画像撮影装置1は、被検者(患者)Pからパノラマ画像生成のためのグレーレベルの原画像データを例えば立位の姿勢で収集する筐体11と、この筐体11が行うデータの収集を制御し、その収集したデータを取り込んでパノラマ画像を生成し、かつ、操作者(医師、技師)との間でインターラクティブにパノラマ画像の後処理を行うためのコンピュータで構成される制御・演算装置12とを備える。
【0028】
筐体11は、スタンド部13と、このスタンド部13に対して上下動可能な撮影部14とを備える。なお、図1に示すように、説明の都合上、スタンド部13の長手方向をZ軸とするX、Y、Z軸の直交座標系を設定する。
【0029】
撮影部14は、その側面からみて、略コ字状を成す上下動ユニット23と、この上下動ユニット23に回転(回動)可能に支持された回転ユニット24とを備える。上下動ユニット23は、支柱部22の内部に設置された図示しない駆動機構を介して、高さ方向の所定範囲に渡ってZ軸方向(縦方向)に移動可能になっている。
【0030】
回転ユニット24は、上下動ユニット23に垂下されており、回転移動機構30の駆動に付勢されて回転する。この回転ユニット24は、その使用状態において、その一方の側面からみて略コ字状の形状を有し、横方向、すなわちXY平面内で略平行に回転(回動)する横アーム24Aと、この横アーム24Aの長手方向の両端部から下方(Z軸方向)に伸びた左右の縦アーム(第1の縦アーム、第2の縦アーム)24B,24Cとを一体に備える。この回転ユニット24は、制御・演算装置12の制御下で駆動及び動作するようになっている。なお、回転移動機構30には、その回転角位置を検出するエンコーダ30Aが装備されている。
【0031】
左右の縦アーム24B,24Cの先端部分にX線管31及び検出器32にそれぞれ装備されている。X線管31は例えば回転陽極型のX線管である。
【0032】
検出器32は例えば、CdTe(テルル化カドミウム)等の半導体材料で形成されたX線検出素子、又はイメージングプレートを用いたデジタル形X線検出器である。この検出器32は、一例として、横6.4mm×縦150mmのX線検出面32A(図2参照)を有し、この検出面には上記X線検出素子から成る、例えば64×1500画素が形成されている。これにより、例えば300fpsのフレームレート(1フレームは、例えば64×1500画素)で入射X線を、当該X線の量に応じたデジタル電気量の画像データとして収集することができる。以下、この収集データを「フレームデータ」と呼ぶ。
【0033】
さらに、一方の縦アーム24Cに設けた検出器32の近傍(例えば上側の近傍)に、撮影視野を対向する、もう一方の縦アーム24Bに向けた光学カメラ91が装備されている。この光学カメラ91は例えばCMOSセンサを用いたカメラであり、一例として、画素数は720×640程度、画素サイズは50μm×50μm程度である。この光学カメラ91は、後述するように、患者Pの口腔部の歯列や開口器の特徴点をカラーで撮影するためのものである。このため、画素数や画素サイズは、そのような撮影が可能であれば、別の画素数や画素サイズであってもよい。勿論、撮影画素にCCDなどを用いた光学カメラであってもよい。
【0034】
さらに、この一方の縦アーム24Cにおいて、患者Pの口腔部に向けて照明光を照射する照明装置92が備えられる。これは口腔部の内部を明るくして、より鮮明な光学像をカラー撮影するためである。
【0035】
図2に、このパノラマ画像撮影装置の制御及び処理のための電気的なブロック図を示す。
【0036】
同図に示す如く、X線管31は高電圧発生器41及び通信ライン42を介して制御・演算装置12に接続され、検出器32は通信ライン43を介して制御・演算装置12に接続されている。高電圧発生器41は、支柱部22、上下動ユニット23、又は回転ユニット24に備えられ、制御・演算装置12からの制御信号により、X線管31に対する管電流及び管電圧などのX線曝射条件、並びに、曝射タイミングのシーケンスに応じて制御される。なお、X線管31には、照射するX線の視野を制限するスリット31Aが設けられている。
【0037】
制御・演算装置12は、例えば大量の画像データを扱うため、大容量の画像データを格納可能な、例えばパーソナルコンピュータで構成される。つまり、制御・演算装置12は、その主要な構成要素して、内部バス50を介して相互に通信可能に接続されたインターフェース51,52,62、バッファメモリ53、第1の画像メモリ54(記憶手段)、第2の画像メモリ55、画像プロセッサ56、コントローラ(CPU)57、及びD/A変換器59を備える。コントローラ57には操作器58が通信可能に接続され、また、D/A変換器59はモニタ60に接続されている。
【0038】
このうち、インターフェース51,52は、それぞれ、高電圧発生器41、並びに、検出器32、光学カメラ91及び照明装置92に接続されており、コントローラ57と高電圧発生器41、検出器32との間で交わされる制御情報や収集データの通信を仲介する。また、別のインターフェース62は、内部バス50と通信ラインとを結ぶもので、コントローラ57が外部の装置と通信可能になっている。これにより、コントローラ57は、必要に応じて、外部に在る口内X線撮影装置により撮影された口内画像をも取り込めるとともに、本撮影装置で撮影したパノラマ画像やその画像に基づく焦点最適化画像を例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格により外部のサーバに送出できるようになっている。
【0039】
バッファメモリ53は、インターフェース52を介して受信した、検出器32からのデジタル量のフレームデータを一時的に記憶する。
【0040】
また、画像プロセッサ56は、コントローラ57の制御下に置かれ、患者の歯列に沿った標準断層面のパノラマ画像(X線像)の生成(再構成)、カラー光学像から撮影対象である歯列の特徴点の自動検出処理、フージョン用のカラー光学像の作成処理、パノラマ画像とカラー光学像とのフージョン(融合、合成、重畳)処理を自動的に又は操作者との間でインターラクティブに実行する機能を有する。この機能を実現するためのプログラムは、ROM61に予め格納されている。
【0041】
このパノラマ画像の再構成に用いる標準断層面は、本実施形態では、予め用意した大人用、子供用等の複数サイズの標準断層面から選択された断層面として提供される。この標準断層面は、人の歯列の形状及びサイズの統計データから設定されている仮想の湾曲した断層面(縦方向から見たときは馬蹄形を成す断層面)を言う。図3に、選択された大人用の標準断層面を例示している。このため、標準の形状及びサイズを持つ被検者の歯は、この断層面を中心とし且つその湾曲した面に沿って並ぶので、標準断層面のパノラマ画像それ自体で既に最適焦点画像になる。しかし、実際には、個々の被検者は標準断層面からその全体が又は局所的にずれた歯列を有している。
【0042】
このため、最初に再構成される初期画像である、標準断層面のパノラマ画像において関心部位の焦点がぼけている場合には、既に収集済みのフレームデータを使って最適焦点(焦点が合っている)の画像を得ることができる。つまり、再度、スキャンを実施する必要はない。この実施形態のパノラマ画像撮影装置1は、前述したように、特開2007−136163公報に記載の構成を採用している。このため、この2度目の再構成も最初に収集済のフレームデータと、撮像空間上の新たな所望の断面位置に応じたゲイン(後述する)とに応じて再構成するだけで得られる。この新たな位置とは、図4に示すように、焦点化する断層面自体を標準断層面の位置から歯列の奥行方向に沿って所望距離だけずらした位置であってもよいし、標準断層面の画像上で、その関心部位を含む領域を歯列の奥行方向に移動又はその領域の一つの軸を中心に回転させた(傾けた)オブリークな部分断層面であってもよい。
【0043】
図2に戻って、画像プロセッサ56により処理される又は処理途中のフレームデータ及び画像データは第1の画像メモリ54に読出し書込み可能に格納される。第1の画像メモリ54には、例えばハードディスクなどの大容量の記録媒体(不揮発性且つ読出し書込み可能)が使用される。また、第2の画像メモリ55は、生成されたパノラマ画像データ、及び/又は、後処理されたパノラマ画像データを表示するために使用される。第2の画像メモリ55に記憶される画像データは、所定周期でD/A変換器59に呼び出されてアナログ信号に変換され、モニタ60の画面に表示される。
【0044】
コントローラ57は、ROM61に予め格納されている制御及び処理の全体を担うプログラムに沿って、光学カメラ91及び照明装置92の駆動指令を含む、装置の構成要素の全体の動作を制御する。かかるプログラムは、操作者から所定事項についてインターラクティブに操作情報を受け付ける。このため、コントローラ57は、後述するように、標準断層面のパノラマ画像の生成、及び、そのパノラマ画像の焦点最適化(すなわち画像のボケをより減らす処理)を担う再構成に必要なパラメータ(ゲイン又はシフト&アッド量と呼ばれる)の設定、フレームデータの収集(スキャン)、操作器58から出力される、操作者の操作情報を加味してインターラクティブに動作可能になっている。なお、このスキャンと共に、光学カメラ91は、撮影したカラー画像データを一定レートで出力する。この光学カメラ91は、X線スキャンのための回転ユニット24に取り付けられているので、この光学カメラ91自体を被検体の周りに回転させる必要はない。
【0045】
このため、患者は、図1に示すように、立位又は座位の姿勢でチンレスト25の位置に顎を置いてマウスピース26を咥えるともに、開口器(図11のMS1を参照)を入れて口を開いた状態でヘッドレスト28に額を押し当てる。これにより、患者の頭部(顎部)の位置が回転ユニット24の回転空間のほぼ中央部で固定される。この状態で、コントローラ57の制御の元、回転ユニット24が患者頭部の周りをXY面に沿って、及び/又は、XY面にオブリークな面に沿って回転する(図1中の矢印参照)。
【0046】
この回転の最中に、コントローラ57からの制御の元で、高電圧発生器41が例えば所定周期のパルスモードで曝射用の高電圧(指定された管電圧及び管電流)をX線管31に供給し、X線管31を例えばパルスモードで駆動する。これにより、X線管31から所定周期でパルス状X線が曝射される。勿論、X線管31を連続モードで駆動して、X線が連続的に照射されるようにしてもよい。
【0047】
このように照射されたX線は、撮影位置に位置する患者の顎部(歯列部分)を透過して検出器32の入射面32Aに入射する。検出器32は、前述したように、非常に高速のフレームレート(例えば300fps)で入射X線を検出し、対応する電気量のフレームデータ(例えば64×1500画素)として順次出力する。このフレームデータは通信ライン43を介して、制御・演算装置12のインターフェース52を介してバッファメモリ53に一時的に保管される。この一時保管されたフレームデータは、その後、第1の画像メモリ54に転送されて保管される。
【0048】
このため、画像プロセッサ56は、第1の画像メモリ54に保管されたフレームデータを用いた再構成により歯列に沿った標準断層面に沿ったパノラマ画像を生成可能である。また、画像プロセッサ56は、そのパノラマ画像上で指定される関心領域(ROI)を成すフレームデータを用いた再構成により焦点最適化画像を生成可能である。パノラマ画像それ自体も、焦点を最適化しようとの意図を以って生成される標準断層面全体の断面像である。しかしながら、実際には、個々の被検体の歯列の形状に違いがあるため、標準断層面だけでは個々の領域について焦点ボケが最も少ない(装置の発揮し得る能力の範囲において焦点が一番合った、すなわち焦点が最適化された)画像を得ることは難しい。このため、標準断層面のパノラマ画像(少なくとも歯列全体をカバーする断面像)をベースにして、内部構造をより明瞭に(ボケの少ない、焦点の合った)示す断面像を得るための再構成を行なう。この後処理の再構成は通常、ベースとなるパノラマ画像の一部の領域を対象にすることが多い。本実施形態では、この一部領域の断面像も焦点最適化画像と見做す。
【0049】
このようにベースとなるパノラマ画像を含む焦点最適化画像の生成は、再構成と呼ばれる処理を伴う。この再構成はトモシンセシス(tomosynthesis)法に基づく処理により行われる。このトモシンセシス法は、例えば前述した特開2007−136163を初め、特開平4−144548などにより公知であり、簡単には、複数枚のフレームデータ(画素値の2次元マッピング)を、スキャン方向に対応する方向に沿って互いにシフトさせ且つ重ね合わせて加算する処理である。この重ね合わせ量が前述したようにゲイン(又はシフト&アッド量)と呼ばれる。このゲインに基づくシフト・アンド・アッドの処理により、歯列奥行方向(図4参照)の所望位置の断層面の画素値が強調される一方で、それ以外の断層面の画素値がぼかされる。これにより、その所望位置の断層面のパノラマ画像が得られる。
【0050】
なお、パノラマ画像上に設定される関心領域は、通常、パノラマ画像の一部を成す部分領域として当該パノラマ画像上に指定されるが、パノラマ画像全体を関心領域として設定することも可能である。勿論、部分的な焦点最適化画像は医師などが欲した場合に生成される。
【0051】
パノラマ画像及び/又は部分的な焦点最適化画像は、そのデータが第1の画像メモリ54に保管されるともに、適宜な態様で、モニタ60に表示される。
【0052】
このパノラマ画像撮影装置1を用いたパノラマ画像の撮影及び読影は、大略、上述のようである。標準断層面のパノラマ画像(この画像も焦点最適化画像である)及び指定領域の部分的な焦点最適化画像の生成に使用されるゲインは、本実施形態では、前述した特開2007−136163に示すように、事前にファントムを用いたキャリブレーションにより設定されている。このゲインは、それぞれのセットのフレームデータをどの程度位置をずらせて重ねるかという「重ね合わせの程度を示す量」である。このゲインが小さいときには重ね合わせの程度が密であり、ゲインが大きいときには重ね合わせの程度が粗になる。
【0053】
このゲインの一例を、簡単化した図5のモデルを用いて説明する。このモデルにおいて、X線管31と検出器32が互いのオブジェクトOB(患者の顎部の歯列)に対する距離D1とD2(それぞれ、歯列の各点におけるX線管と検出器とを結ぶ直線に沿った方向(奥行き方向)の距離)の相対的な比を一定に保持し且つ相対的な動作速度をある値に保持して動くとする。この場合、オブジェクトOBがぼけない又はボケが少ない(つまり焦点が合っている)フレームデータの重ね合わせの量(ゲイン)が決まる。
【0054】
換言すれば、上述のようにスキャンすると、スキャンされるX線の被検体に対する相対的な移動速度とゲインとで焦点面(焦点が合った連続する断面)を確定させることができる。この焦点面は、距離D1,D2の比に対応するので、焦点面は各奥行き方向において検出器32から平行移動した面に位置する。
【0055】
一般的には、ゲインが小さくなるほど、焦点位置は各奥行き方向DdpにおいてX線管31により近くなり、ゲインが大きくなるほど、焦点位置は各奥行き方向DdpにおいてX線管31から遠ざかる。このため、歯列の各位置で当該歯列に直交する奥行き方向におけるX線管31と検出器32との距離間隔が定量的に分かるファントムを用いて、ゲインをいくらにすれば焦点が合うのかという定量的な計測(設定)を、奥行き方向それぞれに沿った直線上の各位置について事前に行なっておく。
【0056】
つまり、各位置(標準面からの各距離)とゲインとの関係がファントムを用いて事前に計測され、その関係情報が例えば第1の画像メモリ54にルックアップテーブルLUTとして格納される。
【0057】
[カラー光学像から対象物の特徴点の位置を設定する処理]
次に、図6図8を参照して、このパノラマ画像撮影装置により実行される画像処理の一部を成す、撮影されたカラー光学像から、撮影対象である歯列の特徴点の撮影空間(3次元実空間)上の位置を設定する処理の概要を説明する。
【0058】
この処理は、スキャン終了後直ちに、又は、スキャン後の後処理としてデータ収集後に画像プロセッサ56により実行される。
【0059】
図6は、図1に示すパノラマ画像撮影装置11によりスキャン可能な対象物OBJと光学カメラ91により撮影されるカラー光学像V,Vとの幾何学的関係を説明している。同図において、パノラマ画像撮影装置11の例えば固定部分を基準にとった絶対座標系xyzを示す。z軸方向は同装置11の縦方向に相当する。
【0060】
2つのカラー光学像V,Vは実際には2次元の画像である。対象物OBJは歯列を抽象的に模擬する。この2つのカラー光学像V,V(以下、第1の光学画V,第2の光学像V)は、エンコーダ30A(図1参照)の検出信号を基に演算される、回転ユニット24の回転角θ=θ、θの位置の画像である。これらの回転角位置は、回転ユニット24の回転に伴うパノラマ撮影スキャンの途中の所定2カ所の位置であり、予め決められている。勿論、このパノラマ撮影スキャンは3次元空間で実行され処理されるが、説明を容易にするため、図6の模式図はz軸(縦軸)方向から見た2次元で表示している。
【0061】
いま、対象物OBJには、他の部位とは区別し易い形状を持つ特徴領域があり、その中心点を特徴点OB,OB,OBと仮定し、それらの特徴点OB,OB,OBを第1及び第2の光学像V,Vから抽出するものとする。この抽出処理は、コントローラ57の管理下にある画像プロセッサ56により、一例として、デフォルトで実行される。
【0062】
なお、図6に示す特徴点位置設定の原理図の場合、第1及び第2の光学像V,Vの位置において、第1の光学像Vには対象物OBJの特徴点OB,OBが写り込む。ただし、第3の特徴点OBは第1の光学像Vの視野には無いので写らない。一方、第2の光学像Vには、3つの特徴点OB,OB,OBの全てが写り込むという例になっている。第1の光学像Vと2つの特徴点OB,OBとの間の距離はf,fであり、第2の光学像V2と3つの特徴点OB,OB,OBとの間の距離はf、f、fである。
【0063】
光学カメラ91はX線スキャンと併行して一定レートで多数のカラー画像を撮影し、それのデータをバッファメモリ53を介して第1の画像メモリ54に順次、回転角θに対応させて格納している。このため、「対象物の特徴点の位置を設定する処理」が指令されると、画像プロセッサ56は、第1の画像メモリ54に格納されている回転角θ=θ、θの位置のカラー画像データを読み出し、以下のように処理する。
【0064】
まず、画像プロセッサ56は、図7に示すように、第1の光学像Vをモニタ60に表示させる(ステップS10)。次いで、第1の光学像V上で、そこに写り込んでいる1つ目の特徴点OBの位置Pを自動的に確認・決定する(ステップS11)。この確認・決定は、特徴点OBの形状をパターン認識で処理するなどの手法で行われる。次いで、第1の光学像V上で、そこに写り込んでいる2つ目の特徴点OBの位置Pを自動的に確認・決定する(ステップS12)。
【0065】
次いで、画像プロセッサ56は、第1の光学像V1上で、1つ目の特徴点OBの位置Pを公知のデプススキャンのよりフォーカス(合焦)処理し、その合焦時の距離fを決めて記憶する(ステップS13)。さらに、第1の光学像V上で、2つ目の特徴点OBの位置Pを同様にフォーカス処理し、その合焦時の距離fを決めて記憶する(ステップS14)。
【0066】
同様に、画像プロセッサ56により、第2の光学像Vがモニタ60に表示される(ステップS15)。この第2の光学像V上で2つの特徴点OB,OBの位置を確認し、その位置P,Pをそれぞれ確認・決定する(ステップS16,S17)。さらに、この第2の光学像V上で、第3の特徴点OBの位置Pを確認・決定する(ステップS18)。これらの確認・決定は、特徴点の形状を閾値処理及びパターン認識などの手法で行われる。この第3の特徴点OBは、第1の光学像Vを出力するときの光学カメラ91の視野の死角に存在するので、第1の光学像Vには写り込こんではいないが、第2の光学像Vを出力するときの光学カメラ91の視野には存在するので、第2の光学像Vには写り込こんでいる。
【0067】
さらに、画像プロセッサ56は第1の特徴点OBを公知のデプススキャンによりフォーカスし、その合焦時の距離fを決めて記憶する(ステップS19)。また、第2の特徴点OBを同様にフォーカスし、その合焦時の距離fを決めて記憶する(ステップS20)。さらに、第3の特徴点OBを同様にフォーカスし、その合焦時の距離fを決めて記憶する(ステップS21)。
【0068】
次いで、図8に示すように、画像プロセッサ56はモニタ60に第1の光学像Vを再度、表示させ、その画像上で、そこに写り込んでいる第1の特徴点OBの位置Pを演算する(ステップS31)。次いで、その第1の光学像V上で、そこに写り込んでいる第2の特徴点OBの位置Pを演算する(ステップS32)。
【0069】
さらに、画像プロセッサ56はモニタ60に第2の光学像Vを再度、表示させ、この画像上で、そこに写り込んでいる第1の特徴点OBの位置Pを演算する(ステップS33)。同様に、第2の光学像V上で、第2の特徴点OBの位置Pを演算する(ステップS34)。さらに、第2の光学像V上で、第3の特徴点OBの位置Pを演算する(S35)。
【0070】
次いで、図9に示すように、第1〜第2の特徴点のうちの、第1の特徴点OBの2次元空間上の位置、即ち、対象物OBJの表面上の1つの点の位置を、上述のように求めた位置P、距離f、位置P、及び距離fの幾何学関係から演算し、記憶する(ステップS41)。さらに、第2の特徴点OBの2次元空間上の位置を、上述のように求めた位置P、距離f、位置P、及び距離fの幾何学関係から演算し、記憶する(ステップS42)。さらに、第3の特徴点OBの2次元空間上の位置を、上述のように求めた位置P、距離fの幾何学関係から演算し、記憶する(ステップS43)。
【0071】
これにより、光学カメラ91により撮影されたカラー画像データから第1、第2及び第3の特徴点OB,OB,及びOBの実空間上の位置、即ち、対象物OBJの表面の特徴的な部位(点)の位置が求められる。この実空間上の位置情報は後述するようにパノラマ画像上での対応する位置の探索に用いられる。
【0072】
このため、上述した第1、第2及び第3の特徴点OB,OB,及びOBと同様に、患者口腔部の標準的な歯列に見られる特徴部位(点)を予めデフォルト情報として持っていればよい。勿論、それらの特徴部位(点)をその都度、医師がインターラクティブに指定するようにしてもよい。
【0073】
また、光学カメラ91が撮影する回転角度の位置はθ=θ、θの2カ所としたが、その指定する特徴点の数や位置に応じて、3カ所以上であってもよい。例えば、縦方向(z軸方向)から見た場合に、歯列の前歯側正面の位置、及び、左右の奥歯側面の2カ所の位置の合計3カ所であってもよい。これらの位置は、エンコーダ30Aの検出信号に応じて回転角度指令値θ=θ11、θ12、θ13(後述の図10参照)をデフォルト設定しておけばよい。光学カメラ91は、X線スキャン中の一定フレームレートでそのカラー画像データを出力しているので、この回転角度θ=θ11、θ12、θ13の位置で撮影されたカラー画像データを読み出すことにより、第1、第2、第3の光学像V11、V12、V13が得られる(図10参照)。
【0074】
なお、対象物上で指定した特徴点それぞれが2つの光学像に写り込んでいる場合、前述した深さ方向の合焦スキャン、所謂、デプススキャン(depth scan)は不要になる。
【0075】
[フージョン画像の作成例]
フージョン画像の作成の一例を説明する。
被検者は図11に例示する開口器MSIを入れて口を広げるとともに、マウスピース26を前歯中央部(1,2番の歯)で加える状態でX線スキャンを受ける。このとき、従来と同様のX線スキャンによるパノラマ撮影と併行して、光学カメラ91による光学撮影が実行される。なお、図11は単に開口器の例示として挙げており、同図では治療器が使用されているが、X線スキャンのときにはそのような治療器の使用はない。
【0076】
この図10には、このフージョン画像の作成の概要が示されている。この場合、前述したデプススキャンを使用しない例である。具体的には、図10に示すように、標準的歯列の上下何れかにおける、左右の1,2番の間の切れ目が成す特有の形状の中央部、及び、左右の6番の歯の外側が成す特有な面形状の中央部に特徴点M1L,M1R,M,Mをデフォルトで設定することができる。この場合、図10に示すように、これらの特徴点を視野に入れるように回転角度θ=θ11、θ12、θ13の位置を指定して3枚の光学像V11、V12、V13を得るようにすることができる。この場合、標準的歯列の場合、特徴点M1L,M1R,M,Mはそれぞれ、2つの光学像に写り込むので、デプススキャンは不要になり、単純に光学像の位置、長さ、距離の関係から、特徴点M1L,M1R,M,Mの実空間上の位置を推定できる。
【0077】
具体的には、画像プロセッサ56は、歯列の4つの特徴点M1L,M1R,M,Mが写り込んだ3枚の、第1〜第3の光学像V11、V12、V13を取集する(図10、ステップS51)、この第1〜第3の光学像V11、V12、V13のぞそれぞれから前述のように、4つの特徴点M1L,M1R,M,Mの実空間上の位置を特定する(ステップS52)。次いで、第1〜第3の光学像V11、V12、V13を4つの特徴点M1L,M1R,M,Mの位置を基準に繋ぎ合わせ、拡大縮小等の処理を行う(合成処理:ステップS53)。これにより、1枚のカラー光学像IMOPが作成される。
【0078】
一方で、検出器32が出力するフレームデータからX線パノラマ画像IMPAが再構成される(ステップS54)。このX線パノラマ画像IMPAは、公知の手法を使って、一度、再構成したパノラマ画像から口腔領域を部分的に切り出して再度、焦点を絞った口腔領域画像であってもよい。そこで、画像プロセッサ56は、カラー光学像IMOPの4つの特徴点M1L,M1R,M,Mの位置が、X線パノラマ画像IMPA上のどこの位置にそれぞれ相当するのか、前述した特徴点M1L,M1R,M,Mの実空間上の位置、即ち歯列のマーカ位置の情報を基に探索する(ステップS55)。これにより、図10に示すように、X線パノラマ画像IMPA上に、4つの特徴点M1L,M1R,M,Mに対応する位置(点)M1L´,M1R´,M´,M´が画像プロセッサ56により設定される。
【0079】
そこで、画像プロセッサ56は、それらの特徴点M1L,M1R,M,M及びその対応点M1L´,M1R´,M´,M´を互いに一致させ、適宜に縮小拡大しながら、パノラマ画像IMPA上に歯列のカラー光学像をIMOPをフージョン(重ねる、合成する)して、フージョン画像IMFUが作成される(ステップS56)。また、このステップ56により、フージョン画像IMFUはモニタ60に表示される。
【0080】
このフローにより実際に作成されたフージョン画像IMFUの一例を図12に示す。フージョン画像IMFUにおいて、顎骨などのX線透過像を背景とし、その口腔部の歯列部分には、カラー光学像IMOPが重畳されている。
このカラー光学像IMOPはカラーで歯茎や歯列をなるべく、その奥の端までを表示することができる。このため、歯科医師は単にX線吸収により内部構造をグレーレベルで示す顎骨部分に加え、奥歯付近において、歯茎の色や歯の根本付近の歯周病等の状態を表面状態から判断できる。このように、光学カメラが撮影した光学像から口腔部の、その内部の歯列全体を視野にいれたカラー光学像を作成するようにしている。このことから、カラー光学像IMOPは歯列の前歯付近は勿論のこと、歯列のなるべく奥まで目視画像と同様の表面像をカラーで見せてくれるので、診断の手間軽減のみならず、診断ツールとして極めて有効になる。歯科医師はこのカラー光学像IMOPを観察することで、図11のように開口器MSIを再度嵌めて、デンタルミラーで奥歯やその歯茎付近を見直す等の手間が大きく軽減可能になる。
【0081】
また、病巣の広がりや構造的な異常をパノラマ画像IMPAとカラー光学像IMOPとを見比べて判断することもできる。
【0082】
なお、上述した実施形態において、X線管31及びスリット31AはX線発生装置の要部をなす。コントローラ57はX線スキャンを指令するスキャン指令手段(同指令部)に相当する。バッファメモリ53、画像プロセッサ56(同プロセッサの処理S54)はX線画像生成手段(同生成部)の要部をなす。バッファメモリ53、画像プロセッサ56(同プロセッサの処理S51、S52,S53)はカラー光学像作成手段(同作成部)の要部をなす。さらに、画像プロセッサ56(同プロセッサの処理S55、S56)はフージョン画像作成手段(同作成部)の要部をなす。さらに、モニタ60は表示手段に相当する。
【0083】
[変形例]
変形例を図13に基づき説明する。
この変形例は、カラー光学像を歯列の一番奥の歯まで写り込むようにするための開口器の例に関する。図13に示す開口器MOPは口裂(上下唇)を圧排すると共に、口腔前庭部(頬粘膜と歯列との間)にミラーを置いて、このミラーの反射像をも含めたカラー画像をカメラに収めるように構成した開口器MOPである。図13(A)に示す如く、開口器は上唇及び下唇を圧俳するフラップ101U,101Lと、左右の口角を圧俳するフラップ101L,101Rと、これらのフラップを繋ぐ弾力性を持つ繋ぎ101Cとを備える。同図に置いて、符号MS2は唇を示している。
【0084】
さらに、左右のフラップ101L,101Rには、図13(B)に示すようにミラー102L,102Rを備える。このミラー102L,102Rは、被検者の口に開口器MOPを嵌めたときに、頬FSの内側と歯列の奥側との間に位置し、光学反射面MIRが歯列に対して斜めに位置するようになっている。
【0085】
これにより、歯とミラー102L,102Rそれぞれとの間には隙間SPが生成される。このため、奥歯それぞれで反射した照明光の反射光はがミラー102L(102R)で反射して開口部分から外側に向かう。このため、前述した光学カメラ91でミラー102L,102Rのミラー像を一緒に捕捉される。このため、このミラー像をも含めて撮影したカラー画像を適宜処理することで、歯列のより奥側まで確実に光学撮影できるので、歯列全体に渡ってカラー光学像を得ることができ、フージョン画像の有用性がより高まることになる。
【0086】
その他の変形例を説明する。
【0087】
その他の変形例として、X線スキャンと併行して撮影したカラー光学像に限らず、既存の又は別に撮影した口腔内写真(カラー写真)を、いま撮影したパノラマ画像にフージョンさせてもよい。
【0088】
さらに、歯列の石膏模型の情報(3次元形態情報、咬合状態の情報)を採り込み、それらの情報に基づくデータを前述したパノラマ画像及び/カラー光学像にフージョンさせてもよい。
【0089】
さらに、前述した実施形態ではフージョン画像を単独で表示することは勿論、撮影したパノラマ画像及びカラー光学像と組み合わせて、例えば画面分割の方法でモニタ60に表示させてもよい。オペレータとの間でインターラクティブにそれらの画像を選択して表示させてもよい。
【0090】
さらに、カラー光学像を撮影する光学カメラ91は必ずしも前述したようにX線スキャンと併行して一定レートでカラー画像を出力するという構成に限定されない。例えば、エンコーダ30Aからの角度情報を基に、回転角度θ=θ11、θ12、θ13の位置に到達したときに光学カメラ91のシャッターをオンにして、合計3枚のカラー画像のみを得るようにしてもよい。これにより、装置側のメモリ容量を減らすことができる。
【0091】
本実施形態では、被検者Pの歯列は統計的な標準軌道に沿うものとして説明してきたが、個人差があって、デフォルトで設定している歯列の特徴点(マーカ)の位置が使えない場合、医師は、その都度、手動で特徴点を指定するようにすればよい。これにより、実施形態で説明してフージョンのアルゴリズムに沿ってフージョン画像を作成することができる。
【0092】
さらに、特徴点の設定は、歯列のカラー光学像からパターン認識等の処理によって自動認識する場合に限られず、図11に例示した開口器MSIのフレーム部分FRMに、光学的に不透明であって、好適には色が付き、かつ、X線透過率が口腔部の組織のそれとは異なる、例えば点状の鉛製マーカを複数、設けてもよい。このマーカもカラー光学像及びX線パノラマ画像に写り込むので、その位置に基づいて前述と同様にフージョン画像を作成できる。
【0093】
以上のように、本発明は様々な変形例を取り込んで、または、協働して実施することができる。勿論、発明の趣旨を逸脱しない限り、上述した以外の変形例も同様である。
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