特開2020-11384(P2020-11384A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-11384(P2020-11384A)
(43)【公開日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20191220BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20191220BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20191220BHJP
   C09C 1/64 20060101ALI20191220BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20191220BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191220BHJP
【FI】
   B41M5/00 100
   C09D11/54
   C09D11/38
   C09C1/64
   C09C3/06
   B41J2/01 123
   B41J2/01 501
   B41J2/01 401
   B41M5/00 120
   B41M5/00 134
   B41M5/00 132
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-132902(P2018-132902)
(22)【出願日】2018年7月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(72)【発明者】
【氏名】大山 淳史
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA10
2C056FC01
2C056HA42
2H186AB03
2H186AB10
2H186AB54
2H186BA11
2H186DA12
2H186FA04
2H186FB07
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB27
2H186FB29
2H186FB56
4J037AA24
4J037CA21
4J037DD24
4J037EE02
4J037EE43
4J039BA19
4J039BA32
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039DA02
4J039DA05
4J039EA29
4J039EA33
4J039EA38
4J039EA42
4J039EA43
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】アルミニウム顔料の耐水性を維持しつつ、光沢性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】水性の第1インク及び水性の第2インクをそれぞれ記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法である。第1インクが、アルミニウム顔料、及びリン酸又はリン酸塩を含有し、第2インクが、界面活性剤を含有し、第1インク及び第2インクの一方のインクを記録媒体に付与した後、付与した一方のインクと接触するように、他方のインクを記録媒体に付与することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性の第1インク及び水性の第2インクをそれぞれ記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記第1インクが、アルミニウム顔料、及びリン酸又はリン酸塩を含有し、
前記第2インクが、界面活性剤を含有し、
前記第1インク及び前記第2インクの一方のインクを前記記録媒体に付与した後、付与した前記一方のインクと接触するように、他方のインクを前記記録媒体に付与することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記第1インク中の前記アルミニウム顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記第1インク中の前記リン酸又は前記リン酸塩の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記第1インクが、前記界面活性剤をさらに含有するとともに、
前記第2インク中の前記界面活性剤の含有量(質量%)が、前記第1インク中の前記界面活性剤の含有量(質量%)よりも多い請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記記録媒体の単位面積当たりの前記第1インクの付与量に対する、前記記録媒体の単位面積当たりの前記第2インクの付与量の比率が、0.5倍を超えて1.0倍以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記第1インクを前記記録媒体に付与した後、500ミリ秒以内に、前記第2インクを前記記録媒体に付与する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録方法をはじめとする各種の画像記録方法において、アルミニウム顔料やパール顔料などの金属顔料を含有するインクが用いられている。これらの金属顔料を色材として含有するインクを用いれば、金属光沢(メタリック色)を示す画像を記録することができる。
【0003】
アルミニウム顔料は水分と反応し、水素ガスを発生しながら凝集して黒色化することが知られている。このように凝集した状態のアルミニウム顔料を含有するインクを用いると、良好な金属光沢を示す画像を記録することは困難である。このため、インク中におけるアルミニウム顔料の耐水性を確保すべく、種々の添加剤をインクに配合する試みがなされている。例えば、アルミニウム顔料の耐水性を向上させるべく、リン酸やリン酸エステルなどを配合したインクが提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−074472号公報
【特許文献2】特表2011−508030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献1及び2で提案されたアルミニウム顔料を含有するインクを使用し、金属光沢を示す画像をインクジェット記録方法で記録することにつき検討した。その結果、記録される画像の金属光沢は必ずしも良好なものであるとは言えず、さらなる改良の余地があることが判明した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、アルミニウム顔料の耐水性を維持しつつ、光沢性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、水性の第1インク及び水性の第2インクをそれぞれ記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記第1インクが、アルミニウム顔料、及びリン酸又はリン酸塩を含有し、前記第2インクが、界面活性剤を含有し、前記第1インク及び前記第2インクの一方のインクを前記記録媒体に付与した後、付与した前記一方のインクと接触するように、他方のインクを前記記録媒体に付与することを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルミニウム顔料の耐水性を維持しつつ、光沢性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で記録した画像の電子顕微鏡写真である。
図2】比較例1で記録した画像の電子顕微鏡写真である。
図3】本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)、常圧(1気圧)における値とする。
【0011】
本発明者は、アルミニウム顔料と、リン酸又はリン酸塩とを含有するインクについて検討した。リン酸又はリン酸塩はインク中でイオン化してアルミニウム顔料の表面に結合し、これによりアルミニウム顔料が集積して集積体が形成される。アルミニウム顔料の集積体を含有した状態のインクがインクジェット方式により吐出されると、付与された記録媒体上にこの集積体に由来する凹凸構造が形成されやすく、記録される画像の光沢性が低下することが判明した。
【0012】
記録した画像の光沢性が低下した部分にずり応力を付与したところ、光沢性が向上することが判明した。これは、付与したずり応力によってアルミニウム顔料の集積が解消され、薄片状のアルミニウム顔料が、記録媒体の表面と概ね平行となるように配向したためであると考えられる。したがって、アルミニウム顔料の集積を解消し、薄片状のアルミニウム顔料が記録媒体の表面と概ね平行となるように配向させて入射光をより強く反射させることで、画像の光沢性を高めることができると考えられる。
【0013】
ところで、インクジェット用のインクは、通常、インクジェット適性を考慮して適量の界面活性剤を含有する。リン酸又はリン酸塩によって生じたアルミニウム顔料の集積は、共存する界面活性剤によって解消されうるとも推測される。しかし、1のインク中にアルミニウム顔料と界面活性剤が共存するだけでは、アルミニウム顔料の集積を十分に解消することはできない。
【0014】
本発明者は、アルミニウム顔料を含有するインクをインクジェット方式により吐出して記録媒体に付与する過程を、光学顕微鏡を使用して上方から観察した。その結果、記録媒体に付与されたインク滴の内部で、アルミニウム顔料がインク滴の中心付近から辺縁に向かって泳動した後、辺縁で転回して再び中央付近へと移動する過程(循環流)を確認することができた。この循環流は、インク滴表面からの水分の蒸発により分散成分(アルミニウム顔料など)に局所的な濃度差が発生し、これに起因する表面張力差によって発生した、いわゆるマランゴニ対流であると考えられる。
【0015】
以上の点を考慮に入れ、本発明者は、アルミニウム顔料を含有するインクを記録媒体に付与した後のインク滴中に循環流を発生させ、この循環流の力を利用してアルミニウム顔料の集積を解消しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明のインクジェット記録方法では、アルミニウム顔料、及びリン酸又はリン酸塩を含有する水性の第1インクと、界面活性剤を含有する水性の第2インクとを用いる。そして、第1インク及び第2インクの一方のインクを記録媒体に付与した後、付与した一方のインクと接触するように、他方のインクを記録媒体に付与して画像を記録する。より具体的には、(i)第1インクを記録媒体に付与した後、付与した第1インクの全量が記録媒体に吸収されるなどして液体の状態が失われる前に、第1インクと接触するように第2インクを付与して画像を記録する。または、(ii)第2インクを記録媒体に付与した後、付与した第2インクの全量が記録媒体に吸収されるなどして液体の状態が失われる前に、第2インクと接触するように第1インクを付与して画像を記録する。
【0016】
以上のような構成とすることで、インク同士が接触した際に第1インク中に分散しているアルミニウム顔料が撹拌されるとともに、局所的に形成される濃度勾配によって強い循環流(マランゴニ対流)が発生する。これにより、第1インク中でのアルミニウム顔料の集積が解消され、薄片状のアルミニウム顔料が記録媒体の表面と概ね平行となるように配向する。このため、入射光がより強く反射されることになり、画像の光沢性を高めることができる。
【0017】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、水性の第1インク及び水性の第2インクをそれぞれ記録媒体に付与して画像を記録する方法である。第1インクは、アルミニウム顔料、及びリン酸又はリン酸塩を含有し、第2インクは、界面活性剤を含有する。そして、第1インク及び第2インクの一方のインクを記録媒体に付与した後、付与した一方のインクと接触するように、他方のインクを記録媒体に付与する。以下、本発明のインクジェット記録方法の詳細について説明する。
【0018】
(第1インク)
本発明のインクジェット記録方法で用いる第1インクは、アルミニウム顔料と、リン酸又はリン酸塩とを含有する。
【0019】
[アルミニウム顔料]
アルミニウム顔料としては、インクジェット方式の記録ヘッドから吐出可能な大きさに加工された薄片状のものを用いることができる。アルミニウム顔料の平均粒径は、通常5μm以下であり、好ましくは2μm以下である。また、アルミニウム顔料の平均厚さは、5nm以上100nm以下であることが好ましい。アルミニウム顔料の平均粒径及び平均厚さは電子顕微鏡で撮影した画像を利用して測定することができる。
【0020】
第1インク中のアルミニウム顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましく、1.0質量%以上7.5質量%以下とすることがさらに好ましい。第1インク中のアルミニウム顔料の含有量が少なすぎると、アルミニウム顔料により光反射量が減少しやすく、光沢度の向上効果がやや低下することがある。
【0021】
アルミニウム顔料は、例えば、以下の手順によって調製したものを用いることができる。まず、その表面に剥離層が形成された基材フィルムを用意し、この剥離層の表面に真空蒸着法などの手法によって、所望とする厚さのアルミニウムの薄膜を形成する。次いで、剥離層を溶解可能な液体中に浸漬するなどして剥離層を溶解させ、アルミニウムの薄膜を剥離させて、アルミニウム片が分散した分散液を得る。その後、分散液中のアルミニウム片を所望とするサイズとなるように微粉砕すれば、所望とする粒径及び厚さの薄片状のアルミニウム顔料を得ることができる。
【0022】
[リン酸、リン酸塩]
第1インクは、リン酸又はリン酸塩を含有する。リン酸やリン酸塩は、アルミニウム顔料と水分との反応を抑制して、アルミニウム顔料の耐水性を向上させるための成分である。第1インク中のリン酸又はリン酸塩の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。第1インク中のリン酸又はリン酸塩の含有量が少なすぎると、アルミニウム顔料の耐水性が低下しやすく、水と反応して光沢性が低下したアルミニウム顔料が一部含まれることとなって、画像の光沢性がやや低下することがある。
【0023】
リン酸塩としては、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸3カリウム、リン酸1水素カルシウム、リン酸2水素カルシウム、リン酸3カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ピロリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらのリン酸塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
[水性媒体]
第1インクは、水を水性媒体として含有する水性インクである。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。第1インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
水性媒体は、水溶性有機溶剤をさらに含有してもよい。水溶性有機溶剤の種類は、水溶性であれば特に限定されない。第1インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量を基準として0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0026】
水溶性有機溶剤のなかでも、グリコールエーテルを用いることで、アルミニウム顔料の分散状態をより良好にすることができる。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどを挙げることができる。これらのグリコールエーテルは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
[界面活性剤]
第1インクには、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの、インクジェット用インクに配合される公知の界面活性剤を用いることができる。なかでも、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤などを挙げることができる。
【0028】
第1インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0029】
[その他の成分]
第1インクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、第1インクは、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
【0030】
[物性]
第1インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0031】
(第2インク)
本発明のインクジェット記録方法で用いる第2インクは、界面活性剤を含有する。
【0032】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの、インクジェット用インクに配合される公知の界面活性剤を用いることができる。なかでも、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤などを挙げることができる。また、第1インクに界面活性剤を含有させる場合、第2インクに含有させる界面活性剤は、第1インクに含有させる界面活性剤と同一種類のものであることが好ましい。第2インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
第1インクが界面活性剤を含有するとともに、第2インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、第1インク中の界面活性剤の含有量(質量%)よりも多いことが好ましい。第2インク中の界面活性剤の含有量が、第1インク中の界面活性剤の含有量と同等又は同等以下であると、第2インクが第1インクに接触しても、局所的な濃度差に起因する循環流が発生しにくくなり、光沢性の向上効果がやや低下することがある。
【0034】
[水性媒体]
第2インクは、水を水性媒体として含有する水性インクである。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。第2インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
水性媒体は、水溶性有機溶剤をさらに含有してもよい。水溶性有機溶剤の種類は、水溶性であれば特に限定されず、第1インクに含有させる水溶性有機溶剤と同様のものを用いることができる。第2インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量を基準として0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0036】
[その他の成分]
第2インクには、第1インクと同様に、その他の成分を含有させることができる。これらの成分の種類、特性、及び含有量などについては、好ましい種類や範囲なども含めて、前述の第1インクに含有させるその他の成分と同様である。
【0037】
[物性]
第2インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0038】
(記録媒体)
記録媒体としては、吸収性の記録媒体を用いることが好ましい。記録媒体が吸収性であるか非吸収性であるか否かについては、以下に示すブリストー法によって判定することができる。まず、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87に準拠したブリストー法による液体吸収性測定を実施し、水に対するKa値を算出する。そして、水に対するKa値が0.35mL・m-2・msec-1/2以上である記録媒体を「吸収性の記録媒体」であると判定することができる。一方、「非吸収性の記録媒体」は、水を吸収しない記録媒体である。このため、上記の液体吸収性測定を実施すると、算出されるKa値は0.35mL・m-2・msec-1/2未満となる。非吸収性の記録媒体としては、塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びアクリル系樹脂フィルムなどのプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0039】
吸収性の記録媒体としては、普通紙などのコート層を有しない非コート紙;マット紙や光沢紙などのコート層を有するコート紙;などを挙げることができる。なかでも、光沢性を有するコート紙を好適に用いることができる。コート紙は表面の平滑性が高いため、アルミニウム顔料が付与されると、アルミニウム顔料の表面に入射した光が一定の方向に反射しやすいため、より光沢性に優れた画像を記録することができる。
【0040】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法では、第1インク及び第2インクの一方のインク(例えば、第1インク)を記録媒体に付与した後、付与した一方のインクと接触するように、他方のインク(例えば、第2インク)を記録媒体に付与する。記録媒体の単位面積当たりの各インク(第1インク及び第2インク)の付与量(μg/inch2)は、25μg以上45μg以下とすることが好ましく、30μg以上40μg以下とすることがさらに好ましい。
【0041】
記録媒体の単位面積当たりの第1インクの付与量に対する、記録媒体の単位面積当たりの第2インクの付与量の比率を、0.5倍を超えて1.0倍以下とすることが好ましく、0.6倍以上1.0倍以下とすることがさらに好ましい。第1インクの付与量に対する第2インクの付与量の比率(第2/第1)を上記の範囲内とすることで、十分な強さの循環流を発生させることができ、アルミニウム顔料の集積を解消して、より光沢性に優れた画像を記録することができる。
【0042】
第1インクを記録媒体に付与した後、500ミリ秒以内に、第2インクを記録媒体に付与することが好ましい。第2インクを記録媒体に付与するのが、第1インクを記録媒体に付与してから500ミリ秒を超えると、先に付与した第1インクが記録媒体への吸収などにより液体状態を維持することが困難になる。このため、第1インクが第2インクと接触しても、十分な循環流を発生させることができず、画像の光沢性向上効果がやや低下することがある。
【0043】
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した第1インク及び第2インクをインクジェット方式の記録ヘッドからそれぞれ吐出して記録媒体に付与し、画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式を挙げることができる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。
【0044】
図3は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0046】
<アルミニウム分散液の調製>
基材フィルムとして、表面粗さRaが0.1μm以下のポリエチレンテレフタレート製のフィルムを用意した。この基材フィルム上に5%ポリビニルアルコール水溶液を均一に塗布した後、乾燥して、膜厚10〜50μmの剥離層を形成した。形成した剥離層上に、真空蒸着法によりアルミニウムを厚さ50μmの薄膜状に形成した。ジエチレングリコールモノメチルエーテル5.0%、リン酸水素2ナトリウム10.0%、及びイオン交換水85.0%を含有する水溶液に薄膜上のアルミニウムを形成したフィルムを浸漬し、超音波を照射した。超音波の照射により剥離層(ポリビニルアルコール)が溶解し、アルミニウム片が分散した状態のアルミニウム分散液を得た。
【0047】
液フロー式の粒径分析装置(商品名「FPIA3000」、マルバーン製)を使用してアルミニウム分散液中のアルミニウム片の粒径を測定した。その結果、円相当径1μm以下の粒子の積算度数が95%以上であった。また、電界放射型走査電子顕微鏡(商品名「SU−8040」、日立ハイテクノロジー製)を使用して測定したアルミニウム片の厚さは50nmであった。さらに、得られたアルミニウム分散液からアルミニウム片を分取し、これをアルミニウム顔料とした。
【0048】
<インクの調製>
表1及び2に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。表1及び2中、「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤(アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物)の商品名である。
【0049】
リン酸水素2ナトリウムの含有量が0.1%未満であると、アルミニウム顔料の耐水性が低下し、アルミニウム顔料が水と反応して水素ガスを発生するとともに、凝集して黒色化することがある。このため、リン酸水素2ナトリウムの含有量を0.1%未満としたインクについては、以降の評価を行うことができなかった。
【0050】
【0051】
【0052】
<評価>
調製したインクを充填したカートリッジを、熱エネルギーによりインクを吐出するインクジェット記録装置(PIXUS MG5730、キヤノン製)にセットした。本実施例においては、1/1200インチ×1/1200インチの単位領域に、20pLのインクを付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。本実施例の評価条件では、記録デューティを125%とすると、インクによる記録媒体の被覆率が100%となる。光沢紙(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL−101」、キヤノン製)に、表3に示す評価条件でインクを付与して画像を記録した。具体的には、「先に付与するインク」で直径10mmの円形のパターンを形成し、その500ミリ秒以内に、「後に付与するインク」を先に形成した円形のパターンに重なるように円形に付与して画像を記録した。光沢計(商品名「VG7000」、日本電色工業製)を使用して、記録した円形の画像の20度鏡面光沢度をJIS Z 8741:1997に準拠して測定し、以下に示す評価基準にしたがって画像の光沢性を評価した。本発明においては、以下に示す評価基準において、「A」、「B」、「C」、「D」、及び「E」を好ましいレベル、「F」を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
A:対照光沢度Fとの光沢度の差が、300以上であった。
B:対照光沢度Fとの光沢度の差が、100以上300未満であった。
C:対照光沢度Fとの光沢度の差が、100未満であった。
D:対照光沢度Fとの光沢度の差が、100以上300未満であったが、Bランクと比較して画像を構成するアルミニウム量が少なかった。
E:対照光沢度Fとの光沢度の差が、100未満であったが、Cランクと比較して画像を構成するアルミニウム量が少なかった。
F:光沢度が100未満の「対照光沢度F」とした(第2インク不使用)。
【0053】
【0054】
電界放射型走査電子顕微鏡(商品名「SU−8040」、日立ハイテクノロジーズ製)を使用し、実施例1及び比較例1でそれぞれ記録した画像を観察した。図1は、実施例1で記録した画像の電子顕微鏡写真である。また、図2は、比較例1で記録した画像の電子顕微鏡写真である。図1に示すように、実施例1で記録した画像では、薄片状のアルミニウム顔料が記録媒体の平面と概ね平行に配向した状態で定着している。このように配向したアルミニウム顔料に入射した光が適切に反射され、良好な光沢性を示す。一方、図2に示すように、比較例1で記録した画像では、薄片状のアルミニウム顔料が部分的に集積した状態で、かつ、記録媒体の表面に立ち上がった状態で定着していることがわかる。このように配置されたアルミニウム顔料に入射した光はあらゆる方向に散乱するため、画像の光沢性は低い。
図1
図2
図3