特開2020-11468(P2020-11468A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2020-11468部材の転写方法及び液体吐出ヘッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-11468(P2020-11468A)
(43)【公開日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】部材の転写方法及び液体吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20191220BHJP
【FI】
   B41J2/16 101
   B41J2/16 503
   B41J2/16 507
   B41J2/16 511
   B41J2/16 515
   B41J2/16 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-135903(P2018-135903)
(22)【出願日】2018年7月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 照夫
(72)【発明者】
【氏名】大角 正紀
(72)【発明者】
【氏名】中野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭司
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG46
2C057AP22
2C057AP24
2C057AP31
2C057AP47
2C057AP57
2C057BA04
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】被対象物に転写した部材の変形や破損を抑えることができる、部材の転写方法を提供する。
【解決手段】部材5の転写方法が、支持体4に支持された部材5を、被対象物1に貼り合わせる工程と、部材5を被対象物1に貼り合わせる工程の後に、支持体4の厚さを薄くする工程と、支持体4の厚さを薄くする工程の後に、支持体4を部材5から除去する工程と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に支持された部材を、被対象物に貼り合わせる工程と、
前記部材を前記被対象物に貼り合わせる工程の後に、前記支持体の厚さを薄くする工程と、
前記支持体の厚さを薄くする工程の後に、前記支持体を前記部材から除去する工程と、
を含むことを特徴とする部材の転写方法。
【請求項2】
前記支持体が単層構造である、請求項1に記載の部材の転写方法。
【請求項3】
前記支持体の厚さを薄くする工程では前記支持体の研磨を行う、請求項2に記載の部材の転写方法。
【請求項4】
前記支持体が多層構造である、請求項1に記載の部材の転写方法。
【請求項5】
前記支持体の厚さを薄くする工程では、前記支持体を構成する層のうちの少なくとも1層を研磨により除去する、請求項4に記載の部材の転写方法。
【請求項6】
前記支持体の厚さを薄くする工程では、前記支持体を構成する層のうちの少なくとも1層を溶解させて除去する、請求項4に記載の部材の転写方法。
【請求項7】
前記支持体の最外層はポリビニルアルコール層であり、前記支持体を溶解させて除去する工程では、前記ポリビニルアルコール層を水または温水によって溶解させる、請求項6に記載の部材の転写方法。
【請求項8】
前記支持体の最外層はアクリル樹脂層であり、前記支持体のその他の層はエポキシ樹脂を含み、前記支持体を溶解させて除去する工程では、前記アクリル樹脂層をハイドロフルオロエーテル系溶剤によって溶解させる、請求項6に記載の部材の転写方法。
【請求項9】
前記支持体の厚さを薄くする工程では、前記支持体を構成する層のうちの少なくとも1層を剥離して除去する、請求項4に記載の部材の転写方法。
【請求項10】
支持体に支持された部材を、被対象物に貼り合わせる工程と、
前記部材を前記被対象物に貼り合わせる工程の後に、前記部材を非溶解状態に維持しつつ、前記支持体を溶解させて除去する工程と、
を含むことを特徴とする部材の転写方法。
【請求項11】
前記支持体はポリビニルアルコールを含み、前記支持体を溶解させて除去する工程では、前記支持体を水または温水によって溶解させる、請求項10に記載の部材の転写方法。
【請求項12】
前記支持体はアクリル樹脂を含み、前記部材はエポキシ樹脂を含み、前記支持体を溶解させて除去する工程では、前記支持体をハイドロフルオロエーテル系溶剤によって溶解させる、請求項10に記載の部材の転写方法。
【請求項13】
前記部材はドライフィルムである、請求項1から12のいずれか1項に記載の部材の転写方法。
【請求項14】
前記ドライフィルムは、スピンコート法、スリット付きヘッドを用いたダイレクトコート法、またはスプレー塗布法によって前記支持体に形成される、請求項13に記載の部材の転写方法。
【請求項15】
液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する流路とを有する流路形成部材と、前記流路形成部材が積層され前記流路に連通する供給路を有する基板と、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記部材である前記流路形成部材を、前記被対象物である前記基板に、請求項1から9のいずれか1項に記載の部材の転写方法によって転写する、液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記流路形成部材を露光して前記流路になるパターンを形成する工程と、前記流路形成部材を現像して部分的に除去して前記流路を形成する工程と、をさらに含む請求項15に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記流路形成部材を露光して前記流路になるパターンを形成する工程は、前記支持体の厚さを薄くする工程の後であって前記支持体を除去する工程の前に、前記支持体を介して前記流路形成部材に露光することによって行う、請求項16に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】
液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する流路とを有する流路形成部材と、前記流路形成部材が積層され前記流路に連通する供給路を有する基板と、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記部材である前記流路形成部材を、前記被対象物である前記基板に、請求項10から14のいずれか1項に記載の転写方法によって転写する、液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記流路形成部材を露光して前記流路になるパターンを形成する工程と、前記流路形成部材を現像して部分的に除去して前記流路を形成する工程と、をさらに含む請求項18に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項20】
前記流路形成部材の平面形状は前記基板の平面形状よりも小さく、平面的に見て前記流路形成部材は前記基板の外側にはみ出さない、請求項15から19のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の転写方法及び液体吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出することによって画像記録を行うような液体吐出ヘッドの製造に、食品包装材料の形成や微細な電子部品の配線パターンの形成等に利用されているフィルム状の部材の転写技術が用いられる場合がある。特許文献1には、基板にドライフィルム状の部材(以下「ドライフィルム」という)を転写し、転写したドライフィルムによって、液体の流路や吐出口を有する構造物である流路形成部材を形成する方法が開示されている。この方法では、転写前のドライフィルムは支持体(剥離シート)に支持されており、ドライフィルムを基板に貼り付けた後に支持体をドライフィルムから剥離する。基板上のドライフィルムを、例えばフォトリソグラフィによってパターニングすることで、所望の構造の流路形成部材を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−137065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された方法によると、支持体をドライフィルムから剥離する際にドライフィルムの変形や破損を生じることがある。ドライフィルムが変形または破損すると、所望の構造の流路形成部材は形成されず、また、ドライフィルムから分離したパーティクルが基板上に落下して付着し、液体吐出ヘッドの品質上の問題を引き起こすおそれがある。
そこで、本発明の目的は、被対象物に転写した部材の変形や破損を抑えることができる、部材の転写方法及び液体吐出ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部材の転写方法は、支持体に支持された部材を、被対象物に貼り合わせる工程と、部材を被対象物に貼り合わせる工程の後に、支持体の厚さを薄くする工程と、支持体の厚さを薄くする工程の後に、支持体を部材から除去する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のもう1つの部材の転写方法は、支持体に支持された部材を、被対象物に貼り合わせる工程と、部材を被対象物に貼り合わせる工程の後に、部材を非溶解状態に維持しつつ、支持体を溶解させて除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、被対象物に転写した部材の変形や破損を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る方法によって製造される液体吐出ヘッドの一例を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る転写方法の各工程を順番に示す断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る転写方法の一部の工程を示す断面図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係る転写方法の各工程を順番に示す断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る転写方法の変形例の一部の工程を示す断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る転写方法の変形例の一部の工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<液体吐出ヘッドの構造>
まず、本発明に係る方法によって製造される液体吐出ヘッドの構成の一例について説明する。図1に示す液体吐出ヘッドは、基板1と、基板1に積層された流路形成部材12を有する。基板1は、例えばシリコンで形成されており、第一の面(図1の上面)21と、その裏面である第二の面(図1の下面)22と、第一面21から第二面22まで貫通する供給路3と、を有している。基板1の第一の面21側には、エネルギー発生素子2と、エネルギー発生素子2に接続されている端子13と、が形成されている。エネルギー発生素子2は、発熱抵抗体や圧電素子等であり、基板1の第一の面21と接するように形成されていても、第一の面21に対して間隔を置いて配置されていてもよい。流路形成部材12は、基板1の供給路3に接続されている流路14と、流路14と連通する吐出口11と、を有している。基板1の供給路3から流路形成部材12の流路14に液体が供給され、基板1の外部から端子13を介して供給された電力によってエネルギー発生素子2が駆動されると、エネルギー発生素子2から吐出エネルギーを付与された液体が吐出口11から吐出される。
【0009】
<第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態に基づいて図1に示す液体吐出ヘッドを製造する方法について、図1のA−A線に対応する位置における断面図である図2を参照して説明する。図2(a)に示すように、第一の面21側にエネルギー発生素子2を有する基板(被対象物)1を用意する。エネルギー発生素子2は、SiNやSiO等で形成された保護膜(不図示)で覆われていてもよい。基板1には、供給路3が形成されており、供給路3は基板1の第一の面21に開口している。基板1への供給路3の形成方法としては、レーザー加工、反応性イオンエッチング、サンドブラスト、ウェットエッチング等が挙げられる。
その一方、図2(b)に示すように、支持体4に支持されたドライフィルム(部材)5を用意する。本実施形態の支持体4としては、フィルム、ガラス、シリコン等が挙げられる。後で支持体4をドライフィルム5から剥離することを考えると、フィルムであることが好ましい。支持体4を構成するフィルムの材料としてはPET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、テフロン(登録商標)、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。支持体4はこれらの材料のうちの1つの材料からなる単層構造であってもよく、これらの材料のうちの1つまたは複数の材料からなる多層構造であってもよい。支持体4をドライフィルム5から剥離しやすくするために、支持体4の、ドライフィルム5に接する面に離型処理を施してもよい。ドライフィルム5は、感光性樹脂、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等で形成されている。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型やクレゾールノボラック型や脂環式のエポキシ樹脂が挙げられる。アクリル樹脂の例としてはポリメチルメタクリレートが挙げられる。ウレタン樹脂の例としてはポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂を溶解する溶媒の例としては、PGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、キシレン等が挙げられる。中でも感光性樹脂、特にはネガ型感光性樹脂であることが好ましい。これらの樹脂の組成物を支持体4上にスピンコート法やスリット付きヘッドを用いたダイレクトコート法(スリットコート法)やスプレー塗布法等で塗布して乾燥することで、支持体4上にドライフィルム5を形成する。
【0010】
図2(c)に示すように、供給路3が形成された基板1(図2(a)参照)の第一の面21に、支持体4に支持されたドライフィルム5(図2(b)参照)を貼り合わせて、基板1上に流路形成部材12の一部となるドライフィルム5を形成する。転写されたドライフィルム5が良好な形状を維持できるためには、支持体4が、十分な剛性を持つような厚さ、材質、及び層構造であることが好ましい。
次に、前述したように十分な剛性を持っている支持体4を、図2(d)に示すように薄化する。具体的には、支持体4の厚さを半分以下まで薄くすることが好ましい。その場合、薄化の前後で支持体4の剛性の差が大きく、後述するようにドライフィルム5の転写時にも支持体4の剥離時にもドライフィルム5の変形が抑えられて良好な形状の維持に寄与する。支持体4の薄化は、研磨、溶剤による溶解、剥離などによって行われる。支持体4が単層構造である場合には、研磨によって薄化することが好ましい。支持体4が多層構造である場合には、支持体を構成する層のうちの少なくとも1層(少なくとも最外層)を研磨したり、溶剤で溶解したり、剥離したりして除去する方法が好ましい。多層構造の支持体4を溶剤による溶解で薄化する場合には、例えば、ポリビニルアルコールを原料とした水溶性のフィルムを用いて支持体4の少なくとも一部の層を構成し、水を用いて該当する層(ポリビニルアルコール層)を除去する方法が考えられる。多層構造の支持体4を剥離による除去で薄化する場合には、除去する層と除去せずに残す層との間の離型性が、ドライフィルム5と接する面の離型性よりも高くなるように処理を施しておくことが好ましい。それにより、支持体4とドライフィルム5との間で剥離が起きるのを防ぎつつ、所望の層間で剥離することが可能である。このように多層構造の支持体4の層間で剥離することを「層間剥離」と称する。
【0011】
以上説明したように支持体4を薄化した後に、薄くなった支持体4をドライフィルム5から剥離する。図2(e)は、支持体4の剥離後の状態を示している。支持体4とドライフィルム5との間で剥離することを「界面剥離」と称する。前述したように支持体4の厚さを薄くしたことで、支持体4の剛性が低下し、界面剥離時のドライフィルム5にかかる剥離応力が緩和される。その結果、ドライフィルム5の変形や破損を抑えることができる。特に、支持体4が多層構造である場合には、界面剥離時に残存している、ドライフィルム5に近接する層よりも、界面剥離の前に除去される層のうちの少なくとも1層の剛性が高いことが好ましい。そのような構成により、ドライフィルム5の転写時の支持体4の剛性と、支持体4の界面剥離時の剛性との間に大きな差を設けることができる。その結果、図1に示す流路形成部材12を所望の形状に形成し易い。
このように支持体4を薄化してドライフィルム5から剥離した後に、図2(f)に示すように、ドライフィルム5を部分的に露光して、図2(h)に示す流路14になるパターンを形成する。ここではドライフィルム5としてネガ型感光性樹脂を用いた例を示し、流路14の側壁となる部分(流路形成部材12の一部となる部分)を露光し、非露光部分を流路14となるパターンとしている。このようにドライフィルム5の一部を露光し硬化させることで、流路14の側壁となる部分を形成しており、その部分を図2(f),2(g)において符号5aで示している。そして、図2(g)に示すように、流路形成部材12の別の一部となる樹脂層7をドライフィルム5の上に形成し、樹脂層7を露光して、図2(h)に示す吐出口11になるパターンを形成する。ここでは、樹脂層7としてネガ型感光性樹脂を用いた例を示し、流路形成部材12の一部となる部分(吐出口を形成する部材)を露光し、非露光部分を吐出口11となるパターンとしている。このように樹脂層7の一部を露光し硬化させることで、吐出口を形成する部材を形成しており、その部分を図2(g)において符号7aで示している。樹脂層7の主な材料はドライフィルム5と同様の樹脂であり、それに光酸発生剤などを加えることでドライフィルム5と感度を変えたり感光波長領域を変えたりするように調整したものである。それから、ドライフィルム5と樹脂層7を現像して部分的に除去することによって、図2(h)に示すように流路14及び吐出口11を形成する。こうして、図1に示す液体吐出ヘッドを製造する。
【0012】
本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法の技術的意義について説明する。本実施形態では、基板1の上に流路形成部材12を積層するために、支持体4に支持されているドライフィルム5を基板1上に転写している。このようにドライフィルム5を基板1上に貼り合わせる(転写する)際には、薄いドライフィルム5を支持する支持体4が十分な剛性を有していないと、ドライフィルム5が基板1の表面(一方の面21)の凹凸形状に追従して転写される。その結果、所望の形状の流路形成部材12を形成できない可能性がある。一方、転写後のドライフィルム5から支持体4を剥離する際に支持体4の剛性が高いと、ドライフィルム5が、剥離される支持体4側に引っ張られて変形または破損するおそれがある。このように、支持体4の剛性が低いと、ドライフィルム5の転写時にドライフィルム5が基板1の第一の面21の凹凸形状の影響で変形するおそれがある。しかし、支持体4の剛性が高いと、支持体4のドライフィルム5からの剥離時にドライフィルム5の変形や破損を生じるおそれがある。いずれの場合であっても、良好な形状の流路形成部材12を形成することが困難である。
それに対し、本実施形態では、十分に高い剛性を有する支持体4で支持されたドライフィルム5を基板1に転写した後に、支持体4を薄化して剛性を低減する。このように薄化して剛性が低くなった支持体4をドライフィルム5から剥離する。本実施形態では、ドライフィルム5を転写する工程と支持体4を剥離して除去する工程との間に、支持体4を薄化する処理を行うため、ドライフィルム5の転写時には支持体4の剛性が高く、支持体4のドライフィルム5からの剥離時には支持体4の剛性が低い。従って、ドライフィルム5の転写時にドライフィルム5が基板1の表面(一方の面21)の凹凸形状に追従することを抑制できるとともに、支持体4の剥離時にドライフィルム5が支持体4側に引っ張られて変形または破損することが抑制できる。こうして、本実施形態によると、ドライフィルムの変形や破損が抑えられて、所望の形状の流路形成部材12を良好に形成することが容易にできる。ドライフィルム5を基板1に転写する時の支持体4の剛性と、支持体4をドライフィルム5から剥離する時の支持体4の剛性との差が大きいほど、本実施形態の効果が顕著である。
【0013】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法について、図2,3を参照して説明する。本実施形態においても第1の実施形態と同様に、図2(a)に示すような基板1と、図2(b)に示すような支持体4に支持されたドライフィルム5とを用意する。そして、図2(c)に示すように、基板1の第一の面21に、支持体4に支持されたドライフィルム5を貼り合わせる。その後に、図2(d)に示すように、研磨や溶解や剥離などによって支持体4を、好ましくは半分以下の厚さになるまで薄化する。
次に、図3(a)に示すように、薄化された支持体4が接合された状態のドライフィルム5を露光して、図2(h)に示す流路14になるパターンを形成する。具体的には、例えばネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部を露光し硬化させることで、流路14の側壁となる部分(流路形成部材12の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14となるパターンとしている。支持体4上にドライフィルム5を形成する際(図2(b)参照)や、ドライフィルム5を基板1に貼り合わせる際(図2(c)参照)に、支持体4の、ドライフィルム5が形成される面と反対側の面(非形成面)に傷が付いたり塵埃が付着したりするおそれがある。本実施形態では、支持体4を介してドライフィルム5に露光を行う前に、研磨や溶解や剥離などによって支持体4の厚さが低減されている。この研磨や溶解や剥離などによる支持体4の薄化によって、支持体4の非形成面の傷や塵埃等を除去することができる。従って、パターン不良に繋がるような傷や塵埃等を除去した清浄な支持体4を通して、ドライフィルム5を露光することができる。その後に、支持体4をドライフィルム5から剥離(界面剥離)する。図3(b)は、支持体4の剥離後の状態を示している。そして、第1の実施形態と同様に、図2(g)に示すように流路形成部材12(図1参照)の一部となる樹脂層7をドライフィルム5の上に形成して露光して、図2(h)に示す吐出口11になるパターンを形成する。具体的には、例えばネガ型感光性樹脂からなる樹脂層7の一部を露光し硬化させることで、吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)7aを形成し、非露光部分を吐出口11となるパターンとしている。それから、ドライフィルム5と樹脂層7を現像することによって、図2(h)に示すように流路14及び吐出口11を形成する。
【0014】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ドライフィルム5の転写と支持体4の剥離との間に支持体4の薄化処理を行うため、ドライフィルム5の転写時には支持体4の剛性が高く、支持体4のドライフィルム5からの剥離時には支持体4の剛性が低い。それにより、ドライフィルム5の転写時のドライフィルム5の変形も、支持体4の剥離時のドライフィルム5の変形や破損も抑制でき、所望の形状の流路形成部材12を形成することができる。そして、本実施形態では、前述したように非形成面の傷や塵埃等を除去した清浄な支持体4を通してドライフィルム5を露光するため、露光精度が良好である。
【0015】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法について、図4を参照して説明する。本実施形態では、図4(a)に示すような基板1と、図4(b)に示すような支持体4に支持されたドライフィルム5とを用意する。基板1及びドライフィルム5は、第1,2の実施形態と同様なものであってよい。ただし、本実施形態の支持体4は、溶解除去可能な材料からなる。特に、支持体4は、ドライフィルム5の材料(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等)を溶解させない溶解液によって溶解できる材料からなることが好ましい。一例として、水や温水で容易に溶解するPVA(ポリビニルアルコール)フィルムによって支持体4を構成することが好ましい。前述した樹脂材料からなるドライフィルム5は有機溶剤によって溶解するが、水や温水によって溶けることはない。
この支持体4に支持されたドライフィルム5を、図4(c)に示すように基板1の第一の面21に貼り合わせる。ただし、本実施形態では、第1,2の実施形態とは異なり、支持体4に支持されたドライフィルム5を基板1に転写した後に、支持体4の薄化は行わない。そして、支持体4を例えば温水に浸けることによって溶解させて除去する。図4(d)は、支持体4の除去後の状態を示している。この時、ドライフィルム5は非溶解状態に維持する。次に、図4(e)に示すように、基板1上に残ったドライフィルム5を露光して、図4(h)に示す流路14になるパターンを形成する。具体的には、例えばネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部を露光し硬化させることで、流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14となるパターンとしている。
それから、図4(f)に示すように、支持体8に支持されたもう1つのドライフィルム6を用意し、流路14になるパターンが形成されたドライフィルム5に、支持体8に支持されたもう1つのドライフィルム6を貼り合わせる。本実施形態では、もう1つのドライフィルム6を支持している支持体8も、前述した支持体4と同様な材料からなる。そして、支持体8を例えば温水に浸けることによって溶解させて除去する。図4(g)は、支持体8の除去後の状態を示している。それから、ドライフィルム5上に残ったドライフィルム6を露光して、図4(h)に示す吐出口11となるパターンを形成する。具体的には、例えばネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム6の一部を露光し硬化させることで、吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)6aを形成し、非露光部分を吐出口11となるパターンとしている。一例としては、ドライフィルム6は、ドライフィルム5と同様の樹脂材料に光酸発生剤などを加えることでドライフィルム5と感度を変えたり感光波長領域を変えたりした材料からなる。それから、ドライフィルム5,6を現像することによって、図4(h)に示すように流路14及び吐出口11を形成する。
【0016】
本実施形態の技術的意義について以下に説明する。前述したように、支持体4,8に支持されたドライフィルム5,6を転写する際にドライフィルム5,6が被転写面の凹凸形状に追従して所望の形状から逸脱することを防ぐために、支持体4,8は十分な剛性を有している。仮に、この剛性の高い支持体4,8をドライフィルム5,6から機械的に剥離しようとすると、ドライフィルム5,6が支持体4,8側に引っ張られて変形や破損を生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、支持体4,8をドライフィルム5,6から機械的に剥離するのではなく、溶解させて除去している。この方法によると、支持体4,8の剛性にかかわらず、ドライフィルム5,6の変形や破損を引き起こすことなく支持体4,8を除去できる。
本実施形態では、支持体4,8をドライフィルム5,6から機械的に剥離する場合のようにドライフィルム5,6が凝集破壊を起こすことはなく、ドライフィルム5,6から分離したパーティクルが基板1の上に落下し付着して品質問題を引き起こすことはない。支持体4をドライフィルム5から機械的に剥離する場合には、支持体4と基板1とドライフィルム5において、支持体4の強度、ドライフィルム5と支持体4との密着力、ドライフィルム5と基板1の密着力、基板1の強度はいずれも高い。それに対して、硬化前のドライフィルム5の強度は比較的低い。従って、支持体4をドライフィルム5から機械的に剥離しようとすると、ドライフィルム5、特に基板1の外周付近で基板1上に残る部分とそれ以外の部分との間の境目の部分が、凝集破壊を起こして破片(パーティクル)が分離して空気中に舞い上がり易い。これに対し、本実施形態では、支持体4をドライフィルム5から機械的に剥離するのではなく、化学的に溶解させて除去するため、ドライフィルム5が凝集破壊を生じて破片が分離することがない。従って、ドライフィルム5の破片が基板1に付着して品質低下を招くことはない。なお、支持体8及びドライフィルム6も、支持体4及びドライフィルム5と同様に、支持体8をドライフィルム6から機械的に剥離するのではなく化学的に溶解させて除去する。従って、凝集破壊は生じずパーティクルは発生しないので、パーティクルによる品質上の問題を起こすことはない。さらに、本実施形態では機械的な剥離(引き剥がし)工程が無いので、支持体4,8とドライフィルム5,6及び基板1との密着力のバランスを考慮して支持体4,8とドライフィルム5,6の離型性を良くする処理(離型層の形成)を行う必要がない。
【0017】
このように本実施形態では支持体4,8を溶解させてドライフィルム5,6から除去するため、支持体4,8を比較的溶解しやすい材料から構成している。特に、支持体4,8の材料とドライフィルム5,6の材料とが、それぞれ別の種類の溶剤で溶解し、一方の材料を溶解させる溶剤では他方の材料が溶解しないような組み合わせにすることが好ましい。すなわち、支持体4,8は、支持体用の溶剤に可溶であってドライフィルム用の溶剤に不溶な材料からなり、ドライフィルム5,6は、ドライフィルム用の溶剤に可溶であって、支持体用の溶剤に不溶な材料からなることが好ましい。好ましい一例としては、ドライフィルム5,6は有機溶剤に溶解する樹脂材料からなり、支持体4,8は水や温水で容易に溶解するPVAフィルムからなる。また、他の例としては、支持体4,8はアクリル樹脂層からなり、ドライフィルム5,6はエポキシ樹脂からなり、支持体用の溶剤はハイドロフルオロエーテル系溶剤であって、ドライフィルム用の溶剤はPGMEAであるという組み合わせも好ましい。
【0018】
なお、支持体4,8及びドライフィルム5,6の平面形状は、それらを転写する基板1よりも大きくないことが好ましい。仮に、平面的に見て基板1よりも外側にドライフィルム5,6がはみ出していると、支持体4,8の除去後、ドライフィルム5,6の基板1からはみだした部分が薄いバリ状になる。そして、そのバリ状の部分が後工程で破損してパーティクルが発生する原因となるおそれがある。1枚の基板1におけるチップの取り個数、すなわち、1枚の基板1を分割して得られる液体吐出ヘッド用チップの数は、できるだけ多いことが好ましい。このチップの取り個数は、主に、チップのサイズと、基板1の外周のエッジ部分の非有効領域の大きさで決まる。基板1の外周のエッジ部分は、そこに作り込まれるエネルギー発生素子の抵抗値分布等が悪化し、所望の性能が得られない。従って、エッジ部分まで有効に利用することはできず、一般的にはエッジ部分から1〜5mm内側の部分までは非有効領域であり、それよりも内側が有効領域になる。ドライフィルム5,6の具体的な大きさは特に限定されないが、前述した基板1の有効領域と、基板1への転写の位置精度とを考慮した上で、ドライフィルム5,6を転写した後に基板1のエッジ部分から外側にはみださないようにする。
【実施例】
【0019】
以下、本発明のより具体的な実施例について説明する。
<実施例1>
実施例1は、前述した本発明の第1の実施形態に基づく実施例である。まず、図2(a)に示すように、第一の面21側にTaSiNからなるエネルギー発生素子2を有する基板1を用意した。本実施例の基板1は、シリコンの(100)基板の表面にSiNからなる保護膜(不図示)が形成されたものであってもよい。基板1には、例えばRIE(リアクティブイオンエッチング)方式のボッシュプロセスで、第一の面21に開口する供給路3が形成されている。その一方、図2(b)に示すように、支持体4に支持されたドライフィルム5を用意した。本実施例の支持体4は厚さ100μmのPETからなる単層構造であり、ドライフィルム5と接する面には離型処理を施した。本実施例のドライフィルム5は、支持体4の離型処理が施された面に、エポキシ樹脂(DIC株式会社製N−695(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製CPI−210S(商品名))をPGMEAに溶解させた溶液を塗布して形成した。
【0020】
次に、図2(c)に示すように、供給路3が形成された基板1の第一の面21に、支持体4に支持されたドライフィルム5を、ロール式ラミネーター(株式会社タカトリ製VTM−200(商品名))を用いて転写した。転写後のドライフィルム5の厚さは15μmであった。そして、図2(d)に示すように、アルミナ懸濁液を用いた研磨によって、支持体4の厚さを50μmまで低減した。それから、25℃の環境でドライフィルム5から支持体4を界面剥離した。図2(e)は、支持体4の剥離後の状態を示している。露光装置(キヤノン株式会社製FPA−3000i5+(商品名))を用いて、図2(f)に示すようにドライフィルム5を露光して、図2(h)に示す流路14になるパターンを形成した。具体的には、例えば波長365nmの光を5000J/m2の露光量で照射して、ネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部に露光を行い、その後に50℃で5分間のベークを行って硬化させた。こうして、流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14になるパターンとした。
【0021】
次に、図2(g)に示すように、流路形成部材12(図1参照)の一部となる樹脂層7を、ドライフィルム5の上に形成した。樹脂層7は、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製157S70(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製LW−S1(商品名))をPGMEAに溶解させ、ドライフィルム5に対して感度の差を有する溶液からなる。この溶液を用いてもう1つのドライフィルムを形成し、それをドライフィルム5の上にロール式ラミネーターで転写して、厚さ5μmの樹脂層7を形成した。ネガ型感光性樹脂からなるこの樹脂層7の一部に対し、露光装置(キヤノン株式会社製FPA−3000i5+(商品名))を用いて、図2(g)に示すように露光を行い、その後に90℃で5分間のベークを行って硬化させた。こうして、図2(h)に示す吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)7aを形成し、非露光部分を吐出口11となるパターンとした。それから、流路14となるパターンを有するドライフィルム5と吐出口11となるパターンを有する樹脂層7をPGMEAに浸して現像を行い、図2(h)に示すように流路14及び吐出口11を形成した。最後に、図示しない配線基板との電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察して不良がないことを確認した。
【0022】
<実施例2>
次に、本発明の第1の実施形態に基づく変形例である実施例2について説明する。実施例1と同様の部分については説明を省略または簡略化する。また、一部の部材の材料が異なるが類似した形態を示す図2,5を参照して説明を行う。本実施例では、図5(a)に示すように、支持体4として、厚さ50μmのPET層4aと厚さ50μmのポリイミド層4bとからなる多層構造の膜を用い、PET層4aの上にドライフィルム5を積層した。ドライフィルム5は、実施例1と同様にエポキシ樹脂(DIC株式会社製N−695(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製CPI−210S(商品名))をPGMEAに溶解させた溶液を塗布することによって形成した。図5(b)に示すように、この支持体4に支持されたドライフィルム5を、実施例1と同様な基板1(図2(a)参照)に転写する。そして、アルミナ懸濁液を用いた研磨によって、支持体4の厚さ50μmのポリイミド層4bを除去し、厚さ50μmのPET層4aのみを残した。図5(c)は、ポリイミド層4bの除去後の状態を示している。それから、実施例1と同様に、ドライフィルム5から支持体4(残存しているPET層4a)を界面剥離した。図2(e)は支持体4の剥離後の状態を示している。そして、ネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部を露光して硬化させ、図2(h)に示す流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14になるパターンとした(図2(f)参照)。次に、ネガ型感光性樹脂からなる樹脂層7をドライフィルム5の上に形成した(図2(g)参照)。そして、樹脂層7の一部を露光して硬化させ、図2(h)に示す吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)7aを形成し、非露光部分を吐出口11になるパターンとした。それからドライフィルム5及び樹脂層7を現像して流路14及び吐出口11を形成した(図2(h)参照)。最後に、図示しない配線基板との電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察して、実施例1と同様に不良がないことを確認した。さらに、本実施例によると、支持体4の界面剥離の前の研磨工程(図5(c))において、支持体4の半分の厚さだけ除去することが容易にでき、研磨工程と界面剥離工程の精度が良好である。
【0023】
<実施例3>
次に、本発明の第1の実施形態に基づく他の変形例である実施例3について説明する。実施例1,2と同様の部分については説明を省略または簡略化する。また、一部の部材の材料が異なるが類似した形態を示す図2,5を参照して説明を行う。本実施例では、支持体4として、厚さ50μmのPET層4aと厚さ50μmのPVA(ポリビニルアルコール)層4bとからなる、図5(a)に類似した多層構造の膜を用い、PET層4aの上にドライフィルム5を積層した。ドライフィルム5は、実施例1と同様にエポキシ樹脂(DIC株式会社製N−695(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製CPI−210S(商品名))をPGMEAに溶解させた溶液を塗布することによって形成した。この支持体4に支持されたドライフィルム5を、実施例1と同様な基板1(図2(a)参照)に転写する(図5(b)参照)。そして、水を用いて支持体4の厚さ50μmのPVC層4bを溶解させて除去し、厚さ50μmのPET層4aのみを残した。図5(c)はPVC層4bの除去後の状態を示している。それから、実施例1と同様に、ドライフィルム5から支持体4(残存しているPET層4a)を界面剥離した。図2(e)は支持体4の剥離後の状態を示している。そして、ネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部を露光して硬化させ、図2(h)に示す流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14になるパターンとした(図2(f)参照)。次に、ネガ型感光性樹脂からなる樹脂層7をドライフィルム5の上に形成した(図2(g)参照)。そして、樹脂層7の一部を露光して硬化させ、図2(h)に示す吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)7aを形成し、非露光部分を吐出口11になるパターンとした。それからドライフィルム5及び樹脂層7を現像して流路14及び吐出口11を形成した(図2(h)参照)。最後に、図示しない配線基板との電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察して、実施例1,2と同様に不良がないことを確認した。そして、本実施例によると、実施例2と同様に支持体4の半分の厚さだけ除去することが容易にでき、研磨工程と界面剥離工程の精度が良好であるとともに、PVC層4bの除去を、水を用いて容易かつ低コストで行うことができる。
【0024】
<実施例4>
次に、本発明の第1の実施形態に基づく他の変形例である実施例4について説明する。実施例1〜3と同様の部分については説明を省略または簡略化する。また、一部の部材の材料が異なるが類似した形態を示す図2,5を参照して説明を行う。本実施例では、支持体4として、厚さ50μmのPET層4aと厚さ50μmのポリイミド層4bとからなる多層構造の膜(図5(a)参照)を用いる。この支持体4の、PET層4aの表面(ドライフィルム5が形成される面)と、PET層4aとポリイミド層4bとの間にそれぞれ離型処理を施しておく。PET層4aとポリイミド層4bとの間においては、PET層4aのみに離型処理を施してもよく、ポリイミド層4baのみに離型処理を施してもよく、PET層4aとポリイミド層4bの両方に離型処理を施してもよい。いずれにしても、PET層4aの表面(ドライフィルム5が形成される面)よりも、PET層4aとポリイミド層4bとの間の方が高い離型性を呈するようにした。そして、PET層4aの上にドライフィルム5を積層した。ドライフィルム5は、実施例1と同様にエポキシ樹脂(DIC株式会社製N−695(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製CPI−210S(商品名))をPGMEAに溶解させた溶液を塗布することによって形成した。
【0025】
この支持体4に支持されたドライフィルム5を、実施例1と同様な基板1(図2(a)参照)に転写する(図5(b)参照)。そして、研磨によって、支持体4の厚さ50μmのポリイミド層4bを除去し、厚さ50μmのPET層4aのみを残した。図5(c)はポリイミド層4bの除去後の状態を示している。それから、実施例1と同様に、ドライフィルム5から支持体4(残存しているPET層4a)を界面剥離した。図2(e)は支持体4の剥離後の状態を示している。そして、ネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部を露光して硬化させ、図2(h)に示す流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14になるパターンとした(図2(f)参照)。次に、ネガ型感光性樹脂からなる樹脂層7をドライフィルム5の上に形成した(図2(g)参照)。そして、樹脂層7の一部を露光して硬化させ、図2(h)に示す吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)7aを形成し、非露光部分を吐出口11となるパターンとした。それからドライフィルム5及び樹脂層7を現像して流路14及び吐出口11を形成した(図2(h)参照)。最後に、図示しない配線基板との電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察して、実施例1〜3と同様に不良がないことを確認した。本実施例によると、離型処理を施しているため、支持体4の界面剥離の前の研磨工程において、支持体4の半分の厚さだけ除去することと、支持体4をドライフィルム5から剥離することが精度良く行える。特に、PET層4aの表面(ドライフィルム5が形成される面)の離型性よりも、PET層4aとポリイミド層4bとの間の離型性が高いと、層間剥離時の界面剥離の発生が抑えられ、剥離処理がより精度良く行える。
【0026】
<実施例5>
次に、本発明の第2の実施形態に基づく実施例5について説明する。実施例1〜4と同様の部分については説明を省略または簡略化する。また、一部の部材の材料が異なるが類似した形態を示す図2,3を参照して説明を行う。本実施例では、実施例1と同様な基板1(図2(a)参照)と、実施例1と同様な支持体4及びドライフィルム5(図2(b)参照)を用意し、ドライフィルム5を基板1上に転写する(図2(c)参照)。そして、研磨によって、支持体4の厚さを50μmまで低減した(図2(d)参照)。本実施形態では、残りの支持体4をドライフィルム5から剥離することなく積層状態のままで、図3(a)に示すように、露光装置(キヤノン株式会社製FPA−3000i5+(商品名))を用いて、波長365nmの光を5000J/m2の露光量で照射する。それにより、支持体4を介して、ネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部を露光し、50℃で5分間のベークを行って硬化させた。こうして、図2(h)に示す流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14になるパターンとした。そして、ドライフィルム5から支持体4を界面剥離した。図3(b)は支持体4の剥離後の状態を示している。その後に、実施例1と同様に、ネガ型感光性樹脂からなる樹脂層7をドライフィルム5の上に形成した(図2(g)参照)。そして、樹脂層7の一部を露光して硬化させ、図2(h)に示す吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)7aを形成し、非露光部分を吐出口11になるパターンとした。それからドライフィルム5及び樹脂層7を現像して流路14及び吐出口11を形成した(図2(h)参照)。最後に、図示しない配線基板との電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察して、実施例1〜4と同様に不良がないことを確認した。このように、界面剥離の前にパターン露光を行っても、精度が良好な流路の形成が可能である。
【0027】
<実施例6>
次に、本発明の第3の実施形態に基づく実施例6について説明する。実施例1〜5と同様の部分については説明を省略または簡略化する。また、一部の部材の材料が異なるが類似した形態を示す図4と、図6とを参照して説明を行う。本実施例では、図4(b)に示すように、支持体4として、厚さ80μmのPVA(ポリビニルアルコール)シート(株式会社クラレ製ポバールフィルム)からなる単層構造の膜を用いた。このPVAシートからなる支持体4の上に、エポキシ樹脂(DIC株式会社製N−695(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製CPI−210S(商品名))をPGMEAに溶解させた溶液をスピンコート塗布して、ドライフィルム5を形成した。この時、ドライフィルム5の平面形状は、後で転写する基板1の平面形状より小さくする。本実施例では直径200mmの基板1(図4(a)参照)を用いる。そこで図6(a)〜(b)に示すように支持体4上に前述した溶液をスピンコート装置9を用いて塗布した後に、ドライフィルム5の中心から95mm以内の領域のみを残し、それよりも外側の部分はPGMEAを用いたサイドリンス装置10を用いて取り除いた。こうして、図6(c)に示すように、平面形状が直径190mmの円形であるドライフィルム5を形成した。そして、基板1の第一の面21に、平面的に見て基板1の外側にドライフィルム5がはみ出さないように、ドライフィルム5を転写した(図4(c)参照)。ドライフィルム5の転写は、ロール式ラミネーター(株式会社タカトリ製VTM−200(商品名))を用いて行い、転写後のドライフィルム5の厚さは15μmであった。支持体4は平面的に見て基板1の外側にはみ出していてよく、例えば、ドライフィルム5の転写の後にカッターによって支持体4を切断して、基板1よりも大きな直径210mmの円形の平面形状にした。
【0028】
それから、50℃の温水中に10分間浸漬することで支持体4を溶解させて除去した。図4(d)は支持体4の除去後の状態を示している。その後、遠心乾燥器でドライフィルム5及び基板1を乾燥させた。露光装置(キヤノン株式会社製FPA−3000i5+(商品名))を用いて波長365nmの光を5000J/m2の露光量で、図4(e)に示すようにネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5に照射して露光した。そして、50℃で5分間のベークを行って硬化させた。こうして、図4(h)に示す流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14になるパターンとした。その後に、図4(f)に示すように、支持体8に支持されたもう1つのドライフィルム6を用意し、流路14となるパターンが形成されたドライフィルム5に、支持体8に支持されたもう1つのドライフィルム6を転写した。支持体8は支持体4と同じ材料及び同じ寸法である。もう1つのドライフィルム6は、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製157S70(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製LW−S1(商品名))をPGMEAに溶解させ、ドライフィルム5に対して感度の差を有する溶液からなる。この溶液を支持体8に塗布して、ネガ型感光性樹脂からなるもう1つのドライフィルム6を形成した。もう1つのドライフィルム6の平面形状は、ドライフィルム5と同様に直径190mmの円形である。支持体8に支持されているもう1つのドライフィルム6を、ロール式ラミネーターを用いてドライフィルム5上に転写し、転写後のもう1つのドライフィルム6の厚さは5μmであった。そして、支持体8を例えば温水に浸けることによって溶解させて除去した。図4(g)に示すように、ドライフィルム5上に残った、もう1つのドライフィルム6の一部を露光して硬化させた。それにより、図4(h)に示す吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)7aを形成し、非露光部分を吐出口11になるパターンとした。それからドライフィルム5及びもう1つのドライフィルム6を現像して流路14及び吐出口11を形成した(図4(h)参照)。最後に、図示しない配線基板との電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察し、実施例1〜5と同様に不良がないことを確認した。本実施例によると、支持体4,8を薄くするための研磨や溶解等の処理が不要であり、しかも支持体4,8は水を用いて容易かつ低コストで除去することができる。
【0029】
<実施例7>
次に、本発明の第3の実施形態に基づく変形例である実施例7について説明する。実施例6と同様の部分については説明を省略または簡略化する。また、一部の部材の材料が異なるが類似した形態を示す図4を参照して説明を行う。本実施例では、厚さ80μmのアクリルフィルム(三菱ケミカル株式会社製アクリプレン(登録商標))からなる単層構造の支持体4の第一の面21に、実施例6と同様の材料からなり平面形状が直径190mmの円形であるドライフィルム5を形成した。この支持体4に支持されたドライフィルム5(図4(b)参照)を、実施例1〜6と同様な基板1(図4(a)参照)の上に転写した(図4(c)参照)。そして、常温のハイドロフルオロエーテル(旭硝子株式会社製AE−3000(商品名))の薬液槽に支持体4を20分間浸漬して、支持体4を溶解させて除去した。図4(d)は支持体4の除去後の状態を示している。それから、実施例6と同様に、図4(e)に示すように、ネガ型感光性樹脂からなるドライフィルム5の一部を露光して硬化させた。それにより、図4(h)に示す流路14の側壁となる部分(流路形成部材12(図1参照)の一部となる部分)5aを形成し、非露光部分を流路14となるパターンとした。図4(f)に示すように、支持体8に支持されたネガ型感光性樹脂からなるもう1つのドライフィルム6を用意し、流路14となるパターンが形成されたドライフィルム5にもう1つのドライフィルム6を転写した。支持体8は支持体4と同じ材料及び同じ寸法である。もう1つのドライフィルム6は、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製157S70(商品名))及び光酸発生剤(サンアプロ株式会社製LW−S1(商品名))をPGMEAに溶解させ、ドライフィルム5に対して感度の差を有する溶液からなる。この支持体8に支持されたもう1つのドライフィルム6をドライフィルム5上に転写した。そして、支持体8をハイドロフルオロエーテルに浸けることによって溶解させて除去した。そして、図4(g)に示すように、ドライフィルム5上に残ったドライフィルム6の一部を露光して硬化させた。それにより、図4(h)に示す吐出口11を形成する部材になる部分(流路形成部材12の別の一部となる部分)6aを形成し、非露光部分を吐出口11となるパターンとした。それからドライフィルム5及びもう1つのドライフィルム6を現像して流路14及び吐出口11を形成した(図4(h)参照)。最後に、図示しない配線基板との電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察して、実施例1〜6と同様に不良がないことを確認した。本実施例によると、支持体4,8を薄くするための研磨や溶解等の処理が不要である。本実施例で用いられたハイドロフルオロエーテルは、アクリル系樹脂を溶解することが知られている一方、エポキシ系樹脂を溶かさないので、マイクロマシニング加工でエポキシ樹脂からなる構造体として使用する場合の洗浄剤として一般的に用いられている。従って、本実施例のように、支持体4,8がアクリルフィルムであってドライフィルム5,6がエポキシ樹脂からなる場合には、ドライフィルム5,6に影響を与えることなく非常に良好に支持体4,8を除去することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 基板(被対象物)
4 支持体
5 ドライフィルム(部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6