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特開2020-127959板金部品、板金部品の製造方法及び順送金型
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-127959(P2020-127959A)
(43)【公開日】2020年8月27日
(54)【発明の名称】板金部品、板金部品の製造方法及び順送金型
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20200731BHJP
   B21D 37/18 20060101ALI20200731BHJP
【FI】
   B21D22/20 E
   B21D22/20 A
   B21D22/20 B
   B21D37/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-21992(P2019-21992)
(22)【出願日】2019年2月8日
(71)【出願人】
【識別番号】305018823
【氏名又は名称】盛岡セイコー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】武田 利継
【テーマコード(参考)】
4E050
【Fターム(参考)】
4E050HA06
4E050HA07
(57)【要約】
【課題】順送金型の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面に確実に油を供給できる板金部品、この板金部品の製造方法及び板金部品を加工する順送金型を提供する。
【解決手段】板金部品1は、順送金型により複数のプレス加工が行われて成形された板金部品1の成形面2の一部に設けられた保油領域3と、成形面2における保油領域3以外の領域である外部領域4と、を備え、成形面2のうち保油領域3の表面粗さは、外部領域4の表面粗さよりも粗い。板金部品1の製造方法は、板金材料の少なくとも一部に、他の領域よりも表面粗さが粗い保油領域3を成形する保油領域成形工程と、保油領域3に油を塗布する油塗布工程と、油塗布工程の後に、保油領域3にプレス加工を施すプレス加工工程と、を含み、油塗布工程とプレス加工工程とが複数回繰り返される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順送金型により複数のプレス加工が行われて成形された板金部品の成形面の一部に設けられた保油領域と、
前記成形面における前記保油領域以外の領域である外部領域と、
を備え、
前記成形面のうち前記保油領域の表面粗さは、前記外部領域の表面粗さよりも粗いことを特徴とする板金部品。
【請求項2】
前記成形面は、前記プレス加工により成形された曲げ部を含み、
前記保油領域は、前記板金部品を展開したとき、前記成形面における前記曲げ部及び前記板金部品の縁部を除く領域であることを特徴とする請求項1に記載の板金部品。
【請求項3】
前記保油領域は、前記保油領域の成形後に成形された凹部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板金部品。
【請求項4】
板金材料の少なくとも一部に、他の領域よりも表面粗さが粗い保油領域を成形する保油領域成形工程と、
前記保油領域に油を塗布する油塗布工程と、
前記油塗布工程の後に、前記保油領域にプレス加工を施すプレス加工工程と、
を含み、
前記油塗布工程と前記プレス加工工程とが複数回繰り返されることを特徴とする板金部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の板金部品を加工する順送金型であって、
パンチ及びダイの少なくとも一方には、前記保油領域に対応する位置に凹凸面が設けられていることを特徴とする順送金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金部品、板金部品の製造方法及び順送金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のプレス加工を順に施して板金部品を成形する技術が種々提案されている。プレス加工では、板金材料と金型との間に生じる摩擦や摩擦による発熱及び焼き付きを抑えるために、加工面に油を塗布する方法が一般的である。
【0003】
例えば特許文献1には、被加工材に開口を形成するパンチと、パンチの先端を受けるダイと、パンチが通過する開口を有し打ち抜きが行われる時にダイに向かって被加工材を押し付けるストリッパと、を備えたプレス型の構成が開示されている。ストリッパには、ストリッパを貫通するパンチの周囲に第1の油溜まりが形成されている。パンチには、パンチの外面に溝を設けることにより第2の油溜まりが形成されている。特許文献1に記載の技術によれば、パンチの移動範囲の一端において第1の油溜まりと第2の油溜まりとが連通して第2の油溜まり内に油が供給され、パンチの移動範囲の他端において第2の油溜まりが被加工材の剪断面と対向する。これにより、剪断面に直接給油を行い、パンチと被加工材との間の摩擦力を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3610694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、パンチの外面に溝を形成することにより第2の油溜まりを形成しているので、パンチの強度が低下するおそれがある。また、例えば順送金型においてパンチ加工の後で更に曲げや剪断等の複数のプレス加工が施される場合、順送金型の後半の工程において板金材料と順送金型との間に油を十分に供給できないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、順送金型の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面に確実に油を供給できる板金部品、この板金部品の製造方法及び板金部品を加工する順送金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態の板金部品は、順送金型により複数のプレス加工が行われて成形された板金部品の成形面の一部に設けられた保油領域と、前記成形面における前記保油領域以外の領域である外部領域と、を備え、前記成形面のうち前記保油領域の表面粗さは、前記外部領域の表面粗さよりも粗いことを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、保油領域の表面粗さは外部領域の表面粗さよりも粗いので、保油領域において板金部品が油を保持しやすい。保油領域は成形面に設けられているので、プレス加工時に保油領域に保持された油が板金部品と順送金型との間に供給される。これにより、板金部品と順送金型との間の摩擦を抑制することができる。また、板金部品が油を保持しやすいので、順送金型における後半の工程まで成形面に油を保持できる。保油領域は成形面の一部に設けられているので、保油領域の配置を調整することにより、加工が完了した板金部品の製品状態において目立たない箇所に保油領域を配置できる。これにより、製品状態における板金部品の外観に影響を与えることなく、成形面に確実に油を供給できる。また、保油領域の大きさを調整することにより、油の供給量を調整できる。よって、加工量に応じた適切な量の油を供給できる。
板金部品は、保油領域が油を保持することにより成形面に油を供給するので、順送金型に溝を設けることにより油を供給する従来技術と比較して、順送金型の強度低下を抑制できる。これにより、例えば小径のパンチを用いた加工においても、油を確実に供給できる。また、板金部品の形状や順送金型の構成によらず、簡易な方法により板金部品に油を保持できる。よって、種々の加工及び板金材料に適用できる。
したがって、順送金型の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面に確実に油を供給できる板金部品を提供することができる。
【0009】
また、前記板金部品は、前記成形面は、前記プレス加工により形成された曲げ部を含み、前記保油領域は、前記板金部品を展開したとき、前記成形面における前記曲げ部及び前記板金部品の縁部を除く領域であることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、保油領域は曲げ部を除く領域に成形されているので、曲げ部に保油領域が成形されている場合と比較して、曲げ部の寸法精度を向上できる。また、保油領域は縁部を除く領域に成形されているので、縁部にも保油領域が成形される場合と比較して、油量を削減できる。よって、製造コストを削減できるとともに、油の管理を容易にできる。
また、板金部品における保油領域の面積を抑えることができるので、板金部品の全面に保油領域が成形される場合と比較して、完成時の製品状態における板金部品の外観を向上できる。特に、例えば板金部品を他部品と接触させて導電材料として使用する場合、成形面の全面に保油領域が成形される場合と比較して、他部品との接触面積を増大させることができる。
【0011】
また、前記板金部品は、前記保油領域は、前記保油領域の成形後に成形された凹部を備えることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、保油領域に凹部が成形されるので、保油領域に保持された油を凹部の成形時に使用できる。よって、大きな剪断力が生じる凹部の成形時において、板金部品と順送金型との間の摩擦を抑制できる。また、凹部を成形するための順送金型に、油を供給するための機構を設ける必要がないので、順送金型を簡素化できるとともに、順送金型の設計自由度を向上できる。
【0013】
本発明の一つの形態の板金部品の製造方法は、板金材料の少なくとも一部に、他の領域よりも表面粗さが粗い保油領域を成形する保油領域成形工程と、前記保油領域に油を塗布する油塗布工程と、前記油塗布工程の後に、前記保油領域にプレス加工を施すプレス加工工程と、を含み、前記油塗布工程と前記プレス加工工程とが複数回繰り返されることを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、保油領域成形工程と、油塗布工程と、プレス加工工程と、を経て板金部品が製造される。保油領域の表面粗さは他の領域の表面粗さよりも粗いので、保油領域に油を保持しやすい。これにより、プレス加工工程において板金部品の保油領域と順送金型との間に確実に油を供給し、板金部品と順送金型との間の摩擦を抑制することができる。また、各プレス加工工程の前に油塗布工程を有するので、順送金型における後半の工程であっても油を保持できる。また、各プレス加工工程における加工量に応じて油量を制御できるので、油量の管理を容易にできる。
板金部品は、保油領域が油を保持することにより成形面に油を供給する機能を備えるので、順送金型に溝を設けることにより油を供給する機構を備えた従来技術と比較して、順送金型の強度低下を抑制できる。これにより、例えば小径のパンチを用いたプレス加工工程を有する場合であっても、油を確実に供給できる。また、板金部品の形状や順送金型の構成によらず、簡易な方法により板金部品に油を保持できる。よって、種々の加工及び板金材料に適用できる。
したがって、順送金型の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面に確実に給油できる板金部品の製造方法を提供できる。
【0015】
本発明の一つの形態の順送金型は、上述した板金部品を加工する順送金型であって、パンチ及びダイの少なくとも一方には、前記保油領域に対応する位置に凹凸面が設けられていることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、パンチ及びダイの少なくとも一方は、保油領域に対応する位置に凹凸面を有するので、加工時に板金部品の保油領域が当接することにより、板金部品の保油領域に保持されていた油の一部が凹凸面に残留する。これにより、順送金型に油を塗布することができる。よって、順送金型の摩耗を抑制できる。
さらに、凹凸面に残留した油は、次の板金部品を加工する際に、次の板金部品の保油領域に油を供給する。これにより、板金部品の保油領域における油の保持量を高いままに保つことができる。よって、保油領域における油の保持量を維持し、板金部品と順送金型との間の摩擦を抑制できる。
したがって、順送金型の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面に確実に給油できる板金部品を加工する順送金型を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、順送金型の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面に確実に油を供給できる板金部品、この板金部品の製造方法及び板金部品を加工する順送金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る板金部品の外観斜視図。
図2】第1実施形態に係る板金部品の展開図。
図3】保油領域の形状を示す拡大図。
図4】保油領域の形状の第1変形例を示す拡大図。
図5】保油領域の形状の第2変形例を示す拡大図。
図6】保油領域の形状の第3変形例を示す拡大図。
図7】保油領域の形状の第4変形例を示す拡大図。
図8】保油領域の形状の第5変形例を示す拡大図。
図9】保油領域の形状の第6変形例を示す拡大図。
図10】保油領域の形状の第7変形例を示す拡大図。
図11】保油領域の形状の第8変形例を示す拡大図。
図12】第1実施形態に係る1回目のプレス加工工程における順送金型及び板金部品の側面図。
図13】第1実施形態に係る2回目のプレス加工工程における順送金型及び板金部品の側面図。
図14】第2実施形態に係る板金部品の外観斜視図。
図15】第2実施形態に係る板金部品の展開図。
図16】第3実施形態に係るプレス加工工程を示す説明図。
図17】第3実施形態に係る保油領域成形工程を示す説明図。
図18】第3実施形態に係る油塗布工程を示す説明図。
図19】第3実施形態に係る凹部成形工程を示す説明図。
図20】第4実施形態に係るプレス加工工程を示す説明図。
図21】第4実施形態に係る保油領域成形工程を示す説明図。
図22】第4実施形態に係る油塗布工程を示す説明図。
図23】第4実施形態に係る凹部成形工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明を省略する場合がある。
【0020】
(第1実施形態)
(板金部品)
図1は、第1実施形態に係る板金部品1の外観斜視図である。
板金部品1は、種々の機器に搭載される意匠部品である。板金部品1は、順送金型により板状の板金材料に対して複数のプレス加工が行われることにより成形されている。具体的に、板金部品1は、底部11と、第一側壁部12と、第一上部13と、第二側壁部14と、第二上部15と、を有する。
【0021】
底部11は、矩形状に成形されている。
第一側壁部12は、矩形状に形成されている。第一側壁部12は、底部11の端部から底部11と直交する方向に向かって延びている。
第一上部13は、矩形状に形成されている。第一上部13は、第一側壁部12の端部のうち底部11と反対側の端部から、第一側壁部12と直交するとともに底部11の中央部に対応する位置に向かって延びている。
第二側壁部14は、矩形状に形成されている。第二側壁部14は、底部11の端部のうち第一側壁部12と反対側の端部から、底部11と直交する方向に向かって延びている。第二側壁部14は、第一側壁部12と対向している。
第二上部15は、矩形状に形成されている。第二上部15は、第二側壁部14の端部のうち底部11と反対側の端部から、第二側壁部14と直交するとともに第一上部13が位置する方向へ向かって延びている。第一上部13及び第二上部15の底部11からの距離は、実質的に同等となるように形成されている。第一上部13と第二上部15との間には、開口16が形成されている。
このように、板金部品1は、底部11と、第一側壁部12と、第一上部13と、第二側壁部14と、第二上部15と、によりC字状に成形されている。
【0022】
板金部品1には、複数のプレス加工が行われることにより曲げ部40が成形されている。曲げ部40は、第一曲げ部41と、第二曲げ部42と、第三曲げ部43と、第四曲げ部44と、を有する。
第一曲げ部41は、底部11と第一側壁部12との間に位置している。第二曲げ部42は、第一側壁部12と第一上部13との間に位置している。第三曲げ部43は、底部11と第二側壁部14との間に位置している。第四曲げ部44は、第二側壁部14と第二上部15との間に位置している。
なお、以下の説明において、底部11の厚さ方向に沿う方向を上下方向といい、第一側壁部12の厚さ方向に沿う方向を前後方向といい、上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向という。また、前後方向における前方から後方へ向かう方向は、順送金型5(図12参照)の送り方向における上流側から下流側へ向かう方向と一致している。
【0023】
図2は、第1実施形態に係る板金部品1の展開図である。
板金部品1を展開した状態において、板金部品1の全面が成形面2とされている。成形面2は、例えば母材となる帯状の板金材料(不図示)のうち、最終的に打ち抜かれて製品となる領域である。成形面2は、矩形状に成形されている。成形面2の外周部は縁部47とされている。縁部47は、長辺に沿う長縁部48と、短辺に沿う短縁部49と、を有する。
【0024】
図2に示すように、成形面2は、保油領域3と、外部領域4と、を有する。
保油領域3は、成形面2の一部に設けられている。具体的に、保油領域3は、成形面2のうち曲げ部40及び縁部47を除く領域に成形されている。保油領域3の表面粗さは、外部領域4の表面粗さよりも粗い。保油領域3は、図2に示す板金部品1の展開状態において、第一保油領域31と、第二保油領域32と、第三保油領域33と、第四保油領域34と、第五保油領域35と、を有する。
【0025】
第一保油領域31は、底部11の中央部に設けられている。第一保油領域31は、矩形状に成形されている。第一保油領域31は、底部11において、第一曲げ部41と、第三曲げ部43と、長縁部48と、を除く成形面2に成形されている。
第二保油領域32は、第一側壁部12の中央部に設けられている。第二保油領域32は、矩形状に成形されている。第二保油領域32は、第一側壁部12において、第一曲げ部41と、第二曲げ部42と、長縁部48と、を除く成形面2に成形されている。
第三保油領域33は、第一上部13の中央部に設けられている。第三保油領域33は、矩形状に成形されている。第三保油領域33は、第一上部13において、第二曲げ部42と、長縁部48と、短縁部49と、を除く成形面2に成形されている。
第四保油領域34は、第二側壁部14の中央部に設けられている。第四保油領域34は、矩形状に成形されている。第四保油領域34は、第二側壁部14において、第三曲げ部43と、第四曲げ部44と、長縁部48と、を除く成形面2に成形されている。
第五保油領域35は、第二上部15の中央部に設けられている。第五保油領域35は、矩形状に成形されている。第五保油領域35は、第二上部15において、第四曲げ部44と、長縁部48と、短縁部49と、を除く成形面2に成形されている。
【0026】
図3は、保油領域3の形状を示す、保油領域3の拡大図である。
図3に示すように、保油領域3には、ハニカム状の溝が成形されている。これらのハニカム状の溝は、保油領域3の全面に成形されている。保油領域3にハニカム状の溝が成形されることにより、保油領域3の表面粗さが、外部領域4の表面粗さよりも粗くなっている。また、ハニカム状の溝に油が入り込むことにより、保油領域3は油を保持可能とされている。
【0027】
図4から図11は、保油領域3の形状の第1変形例から第8変形例を示す保油領域3の拡大図である。
図4に示すように、第1変形例において、保油領域3には、直線状の溝が互いに直交するように配置された形状が成形されていてもよい。また、図5に示すように、第2変形例において、保油領域3には、直線状の溝が複数の角度から交差するように配置された形状が成形されていてもよい。また、図6に示すように、第3変形例において、保油領域3には、直線状の溝と、折れ線状の溝と、が互いに交差するように配置された形状が成形されていてもよい。また、図7に示すように、第4変形例において、保油領域3には、直線状の溝と折れ線状の溝を重ねた線状の溝が互いに交差するように配置された形状が成形されていてもよい。また、図8に示すように、第5変形例において、保油領域3には、平行に並んだ折れ線状の溝と、断続的な直線状の溝と、が組み合わされて配置された形状が成形されていてもよい。
また、図9に示すように、第6変形例において、保油領域3には、矩形状の凹陥部が複数配置された形状が成形されていてもよい。また、図10に示すように、第7変形例において、保油領域3には、三角形状の凹陥部が複数配置された形状が成形されていてもよい。また、図11に示すように、第8変形例において、保油領域3には、多角形状の凹陥部が複数配置された形状が成形されていてもよい。
なお、これらの保油領域3に成形された形状において、溝間の距離や凹陥部同士の間隔を変更して形状の密度を変えることにより、保油領域3に保持できる油の量を調節してもよい。例えば、上述した各形状の密度を高めることにより、油の保持量を増加させてもよい。
【0028】
図2に戻って、外部領域4は、成形面2のうち、保油領域3以外の領域とされている。外部領域4は、曲げ部40と、縁部47と、を含む。外部領域4の表面粗さは、母材である板金材料の表面粗さと実質的に同等とされている。
このように保油領域3及び外部領域4が成形された板金部品1は、順送金型5(図12参照)により成形面2に複数のプレス加工が行われることにより、図1に示す製品状態に成形される。
【0029】
(順送金型)
図12は、1回目のプレス加工工程における順送金型5及び板金部品1の側面図である。
本実施形態の順送金型5は、第一のパンチ50と、第一のダイ60と、第二のパンチ70(図13参照)と、第二のダイ80(図13参照)と、を有する。
【0030】
図12に示すように、第一のパンチ50と、第一のダイ60と、は上下方向に対になるように配置されている。第一のパンチ50と第一のダイ60との間には、板金部品1が配置されている。
【0031】
第一のパンチ50は、四角柱状に形成されている。第一のパンチ50は、上下方向に移動可能に構成されている。第一のパンチ50は、第一押圧部51と、第二押圧部52と、第三押圧部53と、パンチ側凹凸面55と、を有する。
第一押圧部51は、第一のパンチ50の下面に設けられている。第一押圧部51は、プレス加工時に板金部品1の底部11に当接する。第二押圧部52は、第一のパンチ50における側面のうち、前後方向の前方を向く面に設けられている。第二押圧部52は、プレス加工時に板金部品1の第一側壁部12に当接する。第三押圧部53は、第一のパンチ50における側面のうち、前後方向の後方を向く面に設けられている。第三押圧部53は、プレス加工時に板金部品1の第二側壁部14に当接する。
【0032】
パンチ側凹凸面55は、第一のパンチ50のうち、プレス加工時に当接する板金部品1の保油領域3に対応する位置に設けられている。パンチ側凹凸面55は、凹凸状に成形されている。パンチ側凹凸面55は、第一パンチ側凹凸面56と、第二パンチ側凹凸面57と、第三パンチ側凹凸面58と、を有する。
第一パンチ側凹凸面56は、第一押圧部51の一部に設けられている。具体的に、第一パンチ側凹凸面56は、板金部品1の第一保油領域31に対応する位置に設けられている。第一パンチ側凹凸面56に第一保油領域31が当接することにより、第一保油領域31に保持されていた油の一部が第一パンチ側凹凸面56に入り込む。
第二パンチ側凹凸面57は、第二押圧部52の一部に設けられている。具体的に、第二パンチ側凹凸面57は、板金部品1の第二保油領域32に対応する位置に設けられている。第二パンチ側凹凸面57に第二保油領域32が当接することにより、第二保油領域32に保持されていた油の一部が第二パンチ側凹凸面57に入り込む。
第三パンチ側凹凸面58は、第三押圧部53の一部に設けられている。具体的に、第三パンチ側凹凸面58は、板金部品1の第四保油領域34に対応する位置に設けられている。第三パンチ側凹凸面58に第三保油領域33が当接することにより、第三保油領域33に保持されていた油の一部が第三パンチ側凹凸面58に入り込む。
【0033】
第一のダイ60は、第一のパンチ50よりも下方に配置されている。第一のダイ60には、第一のパンチ50が下死点まで移動した際に、第一のパンチ50を収容可能な空間Sが設けられている。第一のダイ60は、第一受部61と、第二受部62と、第三受部63と、ダイ側凹凸面65と、を有する。空間Sは、第一受部61と、第二受部62と、第三受部63と、が上方に開口を有するC字状に配置されることにより囲まれた空間である。
【0034】
第一受部61は、第一のダイ60の底面に設けられている。第一受部61は、プレス加工時に第一押圧部51に対向するとともに、板金部品1の底部11に当接する。第二受部62は、第一のダイ60における左右方向の一方側に設けられている。第二受部62は、プレス加工時に第二押圧部52に対向するとともに、板金部品1の第一側壁部12に当接する。第三受部63は、第一のダイ60における左右方向の他方側に設けられている。第三受部63は、プレス加工時に第三押圧部53に対向するとともに、板金部品1の第二側壁部14に当接する。
【0035】
ダイ側凹凸面65は、第一のダイ60のうち、プレス加工時に当接する板金部品1の保油領域3に対応する位置に設けられている。ダイ側凹凸面65は、凹凸状に成形されている。ダイ側凹凸面65は、第一ダイ側凹凸面66と、第二ダイ側凹凸面67と、第三ダイ側凹凸面68と、を有する。
第一ダイ側凹凸面66は、第一受部61の一部に設けられている。具体的に、第一ダイ側凹凸面66は、板金部品1の第一保油領域31に対応する位置に設けられている。第一ダイ側凹凸面66に第一保油領域31が当接することにより、第一保油領域31に保持されていた油の一部が第一ダイ側凹凸面66に入り込む。
第二ダイ側凹凸面67は、第二受部62の一部に設けられている。具体的に、第二ダイ側凹凸面67は、板金部品1の第二保油領域32に対応する位置に設けられている。第二ダイ側凹凸面67に第二保油領域32が当接することにより、第二保油領域32に保持されていた油の一部が第二ダイ側凹凸面67に入り込む。
第三ダイ側凹凸面68は、第三受部63の一部に設けられている。具体的に、第三ダイ側凹凸面68は、板金部品1の第四保油領域34に対応する位置に設けられている。第三ダイ側凹凸面68に第三保油領域33が当接することにより、第三保油領域33に保持されていた油の一部が第三ダイ側凹凸面68に入り込む。
【0036】
このように、板金部品1には、第一のパンチ50及び第一のダイ60によってプレスされることにより、1回目のプレス加工が施される。1回目のプレス加工が施されることにより、板金部品1は、第一曲げ部41と、第三曲げ部43と、を有するU字状に成形される。
なお、本実施形態においては、第一のパンチ50と第一のダイ60とがそれぞれパンチ側凹凸面55とダイ側凹凸面65とを有する構成としたが、パンチ側凹凸面55及びダイ側凹凸面65のいずれか一方を有する構成としてもよい。換言すれば、第一のパンチ50及び第一のダイ60の少なくとも一方に、保油領域3に対応する位置に凹凸面が設けられている構成としてもよい。
【0037】
図13は、2回目のプレス加工工程における順送金型5及び板金部品1の側面図である。
図13に示すように、第二のパンチ70と、第二のダイ80と、は上下方向に対になるように配置されている。第二のパンチ70及び第二のダイ80は、第一のパンチ50及び第一のダイ60よりも後の工程で使用される。換言すれば、第二のパンチ70及び第二のダイ80は、順送金型5において第一のパンチ50及び第一のダイ60よりも送り方向の下流側に配置されている。第二のパンチ70と第二のダイ80との間には、1回目のプレス加工が完了した後の板金部品1が配置されている。
【0038】
第二のパンチ70は、上下方向に移動可能に構成されている。第二のパンチ70は、下面において表面が平坦に形成された圧下部71を有する。圧下部71は、プレス加工時に板金部品1の第一上部13及び第二上部15に当接する。
【0039】
第二のダイ80は、第二のパンチ70よりも下方に配置されている。第二のダイ80は、左右方向(図13において紙面を貫通する方向)から見て矩形状に形成されている。第二のダイ80は、板金部品1の内側に配置されている。具体的に、第二のダイ80は、第一支持部81と、第二支持部82と、第三支持部83と、第四支持部84と、を有する。
【0040】
第一支持部81は、第二のダイ80の下面に設けられている。第一支持部81は、プレス加工時に板金部品1の底部11に内側から当接する。第二支持部82は、第二のダイ80における側面のうち、前後方向の一方側(図13における右側)を向く面に設けられている。第二支持部82は、プレス加工時に板金部品1の第一側壁部12に内側から当接する。第三支持部83は、第二のダイ80における側面のうち、前後方向の他方側(図13における左側)を向く面に設けられている。第三支持部83は、プレス加工時に板金部品1の第二側壁部14に内側から当接する。第四支持部84は、第二のダイ80の上面に設けられている。第四支持部84は、プレス加工時に圧下部71に対向するとともに、板金部品1の第一上部13及び第二上部15に内側から当接する。
【0041】
このように、板金部品1には、第二のパンチ70及び第二のダイ80によってプレスされることにより、2回目のプレス加工が施される。2回目のプレス加工が施されることにより、板金部品1には、第二曲げ部42と、第四曲げ部44と、が成形される。これにより、板金部品1がC字状に成形される。
【0042】
(板金部品の製造方法)
次に、板金部品1の製造方法について説明する。板金部品1の製造方法は、保油領域成形工程と、油塗布工程と、プレス加工工程と、を有する。本実施形態において、板金部品1の製造方法は、保油領域成形工程と、1回目の油塗布工程と、1回目のプレス加工工程と、2回目の油塗布工程と、2回目のプレス加工工程と、を有する。
【0043】
保油領域成形工程では、板金材料の少なくとも一部に、他の領域よりも表面粗さが粗い保油領域3を成形する。具体的には、図2に示すように、板金材料の成形面2に第一保油領域31と、第二保油領域32と、第三保油領域33と、第四保油領域34と、第五保油領域35と、の5個の領域を有する保油領域3を成形する。
【0044】
1回目の油塗布工程では、成形面2に成形された保油領域3に油を塗布する。これにより、保油領域3に油が保持される。ここで、1回目の油塗布工程では、少なくとも第一保油領域31と、第二保油領域32と、第三保油領域33と、に油が塗布されている。
【0045】
1回目のプレス加工工程では、1回目の油塗布工程の後に、保油領域3にプレス加工を施す。具体的に、図12に示すように、第一のパンチ50及び第一のダイ60により、U字状の板金部品1を成形する。
【0046】
2回目の油塗布工程では、1回目のプレス加工工程の後に、保油領域3に再び油を塗布する。2回目の油塗布工程では、第四保油領域34及び第五保油領域35を含む保油領域3に油が塗布される。
【0047】
2回目のプレス加工工程では、2回目の油塗布工程の後に、保油領域3にプレス加工を施す。具体的に、図13に示すように、第二のパンチ70及び第二のダイ80により、C字状の板金部品1を成形する。
【0048】
このように、保油領域成形工程と、1回目の油塗布工程と、1回目のプレス加工工程と、2回目の油塗布工程と、2回目のプレス加工工程と、を経ることにより、板金部品1が製造される。
【0049】
(作用、効果)
次に、板金部品1の作用、効果について説明する。
本発明の態様に係る板金部品1によれば、保油領域3の表面粗さは外部領域4の表面粗さよりも粗いので、保油領域3において板金部品1が油を保持しやすい。保油領域3は成形面2に設けられているので、プレス加工時に保油領域3に保持された油が板金部品1と順送金型5との間に供給される。これにより、板金部品1と順送金型5との間の摩擦を抑制することができる。また、板金部品1が油を保持しやすいので、順送金型5における後半の工程まで成形面2に油を保持できる。保油領域3は成形面2の一部に設けられているので、保油領域3の配置を調整することにより、加工が完了した板金部品1の製品状態において目立たない箇所に保油領域3を配置できる。これにより、製品状態における板金部品1の外観に影響を与えることなく、成形面2に確実に油を供給できる。また、保油領域3の大きさを調整することにより、油の供給量を調整できる。よって、加工量に応じた適切な量の油を供給できる。
板金部品1は、保油領域3が油を保持することにより成形面2に油を供給する機能を備えるので、順送金型5に溝を設けることにより油を供給する機構を備えた従来技術と比較して、順送金型5の強度低下を抑制できる。これにより、例えば小径のパンチを用いた加工においても、油を確実に供給できる。また、板金部品1の形状や順送金型5の構成によらず、簡易な方法により板金部品1に油を保持できる。よって、種々の加工及び板金材料に適用できる。
したがって、順送金型5の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面2に確実に油を供給できる板金部品1を提供することができる。
【0050】
保油領域3は曲げ部40を除く領域に成形されているので、曲げ部40に保油領域3が成形されている場合と比較して、曲げ部40における曲げ精度を向上できる。また、保油領域3は縁部47を除く領域に成形されているので、縁部47にも保油領域3が成形される場合と比較して、油量を削減できる。よって、製造コストを削減できるとともに、油の管理を容易にできる。
また、板金部品1における保油領域3の面積を抑えることができるので、板金部品1の全面に保油領域3が成形される場合と比較して、完成時の製品状態における板金部品1の外観を向上できる。特に、例えば板金部品1を他の部品と接触させて導電材料として使用する場合、成形面2の全面に保油領域3が成形される場合と比較して、他部品との接触面積を増大させることができる。
【0051】
また、本発明の態様に係る板金部品1の製造方法によれば、保油領域成形工程と、油塗布工程と、プレス加工工程と、を経て板金部品1が製造される。保油領域3の表面粗さは他の領域の表面粗さよりも粗いので、保油領域3に油を保持しやすい。これにより、プレス加工工程において板金部品1の保油領域3と順送金型5との間に確実に油を供給し、板金部品1と順送金型5との間の摩擦を抑制することができる。また、各プレス加工工程の前に油塗布工程を有するので、順送金型5における後半の工程であっても油を保持できる。また、各プレス加工工程における加工量に応じて油量を制御できるので、油量の管理を容易にできる。
板金部品1は、保油領域3が油を保持することにより成形面2に油を供給する機能を備えるので、順送金型5に溝を設けることにより油を供給する機構を備えた従来技術と比較して、順送金型5の強度低下を抑制できる。これにより、例えば小径のパンチを用いたプレス加工工程を有する場合であっても、油を確実に供給できる。また、板金部品1の形状や順送金型5の構成によらず、簡易な方法により板金部品1に油を保持できる。よって、種々の加工及び板金材料に適用できる。
したがって、順送金型5の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面2に確実に給油できる板金部品1の製造方法を提供できる。
【0052】
本発明の態様に係る順送金型5によれば、第一のパンチ50及び第一のダイ60の少なくとも一方は、保油領域3に対応する位置に凹凸面(パンチ側凹凸面55及びダイ側凹凸面65)を有するので、加工時に板金部品1の保油領域3が当接することにより、板金部品1の保油領域3に保持されていた油の一部が凹凸面55,65に残留する。これにより、順送金型5に油を塗布することができる。よって、順送金型5の摩耗を抑制できる。
さらに、凹凸面55,65に残留した油は、次の板金部品1を加工する際に、次の板金部品1の保油領域3に油を供給する。これにより、板金部品1の保油領域3における油の保持量を高いままに保つことができる。よって、保油領域3における油の保持量を維持し、板金部品1と順送金型5との間の摩擦を抑制できる。
したがって、順送金型5の強度を維持しつつ、簡易な方法により成形面2に確実に給油できる板金部品1を加工する順送金型5を提供できる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態では、板金部品1が箱状に成形されている点で上述した実施形態と相違している。
図14は、本発明の第2実施形態に係る板金部品201の外観斜視図である。図15は、第2実施形態に係る板金部品201の展開図である。板金部品201の以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。また、図14及び図15に記載された以外の構成に係る符号については、適宜図1から図13を参照されたい。
【0054】
本実施形態において、板金部品201は、底部11と、第一側壁部12と、第一上部13と、第二側壁部14と、第二上部15と、第三側壁部217と、第四側壁部218と、を有する。図14に示すように、第三側壁部217は、左右方向の右方側の開口を覆っている。第四側壁部218は、左右方向の左方側の開口を覆っている。板金部品201は、底部11と、第一側壁部12と、第一上部13と、第二側壁部14と、第二上部15と、第三側壁部217と、第四側壁部218と、により、上方の一部に開口16を有する箱状に成形されている。
【0055】
図15に示すように、板金部品201の展開図において、第三側壁部217は、底部11の端部に接続されている。第三側壁部217と底部11との間には第五曲げ部245が成形されている。第三側壁部217の中央部には、第六保油領域236が成形されている。第六保油領域236は、第三側壁部217において、第五曲げ部245と縁部47とを除く領域である。
第四側壁部218は、底部11のうち第三側壁部217と反対側の端部に接続されている。第四側壁部218と底部11との間には第六曲げ部246が成形されている。第四側壁部218の中央部には、第七保油領域237が成形されている。第七保油領域237は、第四側壁部218において、第六曲げ部246と縁部47とを除く領域である。
【0056】
本実施形態において、板金部品201の製造方法は、第1実施形態における板金部品1の製造方法に加えて、3回目の油塗布工程と、3回目のプレス加工工程と、を有する。
3回目の油塗布工程は、第1実施形態における2回目のプレス加工工程の後に実施される。3回目の油塗布工程では、第六保油領域236及び第七保油領域237を含む保油領域203に油を塗布する。
3回目のプレス加工工程では、3回目の油塗布工程の後に、保油領域203にプレス加工を施す。具体的に、図示しない第三のパンチ及び第三のダイにより、第五曲げ部245及び第六曲げ部246に沿って板金部品201を曲げ、底部11に対して第三側壁部217及び第四側壁部218を起立させる。これにより、箱状の板金部品201を成形する。
【0057】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用、効果を奏することに加え、3回目のプレス加工工程により箱状の板金部品201を成形できる。また、3回目のプレス加工工程の前に3回目の油塗布工程を有するので、順送金型における後半の工程であっても、板金部品201に油を保持できる。よって、板金部品201と順送金型5との間の摩擦を抑制できる。なお、第三側壁部217と第四側壁部218とを成形する工程は、2回目のプレス加工工程と同時に行われてもよい。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態では、板金部品1が保油領域3の成形後に成形された凹部を備える点で上述した第1実施形態及び第2実施形態と相違している。
図16は、第3実施形態に係るプレス加工工程を示す説明図である。図17は、第3実施形態に係る保油領域成形工程を示す説明図である。図18は、第3実施形態に係る油塗布工程を示す説明図である。図19は、第3実施形態に係る凹部成形工程を示す説明図である。
【0059】
本実施形態において、板金部品301の製造方法は、プレス加工工程と、保油領域成形工程と、油塗布工程と、凹部成形工程と、を有する。
【0060】
図16に示すように、プレス加工工程では、板金部品301にプレス加工を施す。プレス加工は、例えば第一のパンチ350を有する順送金型305で板金部品301を押圧することにより、板金部品301の板厚を減少させる潰し加工等である。板金部品301のうち、プレス加工により成形された部分は、成形面302とされている。
図17に示すように、保油領域成形工程では、プレス加工工程により成形された成形面302の少なくとも一部に保油領域303を成形する。
図18に示すように、油塗布工程では、保油領域303に油Lが塗布される。
図19に示すように、凹部成形工程では、油塗布工程の後、保油領域303に凹部325が成形される。具体的に、凹部325は、第二のパンチ370により成形された貫通孔である。
このように、プレス加工工程と、保油領域成形工程と、油塗布工程と、凹部成形工程と、を経ることにより、板金部品301が製造される。
【0061】
本実施形態によれば、保油領域303に凹部325が成形されるので、保油領域303に保持された油Lを凹部325の成形時に使用できる。よって、大きな剪断力が生じる凹部325の成形時において、板金部品301と順送金型305との間の摩擦を抑制できる。また、凹部325を成形するための順送金型305(第二のパンチ370)に、油Lを供給するための機構を設ける必要がないので、順送金型305を簡素化できるとともに、順送金型305の設計自由度を向上できる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。本実施形態では、曲げ加工の後に凹部成形加工が施される点で上述した第3実施形態と相違している。
図20は、第4実施形態に係るプレス加工工程を示す説明図である。図21は、第4実施形態に係る保油領域成形工程を示す説明図である。図22は、第4実施形態に係る油塗布工程を示す説明図である。図23は、第4実施形態に係る凹部成形工程を示す説明図である。
【0063】
本実施形態において、板金部品301の製造方法は、プレス加工工程と、保油領域成形工程と、油塗布工程と、凹部成形工程と、を有する。
【0064】
図20に示すように、プレス加工工程では、板金部品401にプレス加工を施す。プレス加工は、例えば第一のパンチ450と第一のダイ460とを有する順送金型405で板金部品401を挟んで曲げる曲げ加工等である。板金部品401のうち、プレス加工により成形された部分は、成形面402とされている。
図21に示すように、保油領域成形工程では、成形面402の少なくとも一部に保油領域403を成形する。
図22に示すように、油塗布工程では、保油領域403に油Lが塗布される。
図23に示すように、凹部成形工程では、油塗布工程の後、保油領域403に凹部425が成形される。具体的に、凹部425は、第二のパンチ470により成形された貫通孔である。
このように、プレス加工工程と、保油領域成形工程と、油塗布工程と、凹部成形工程と、を経ることにより、板金部品401が製造される。
【0065】
本実施形態によれば、第3実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0066】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、保油領域3の形状は上述した実施形態及び変形例に限定されない。保油領域3には、円形状や楕円形状等の凹陥部が設けられていてもよい。また、ローレット加工等により表面粗さを粗くしてもよい。
保油領域3が成形される領域は、上述した実施形態に限られない。例えば、底部11において保油領域3が複数箇所に分布して設けられていてもよい。また、例えば第二側壁部には保油領域3が成形されていない構成としてもよい。すなわち、成形面2における曲げ部40及び縁部47を除く領域であれば、保油領域3の面積や個数は任意に設定可能である。
【0067】
保油領域3の表面粗さが外部領域4の表面粗さよりも粗ければ、外部領域4にも表面粗さを変更するための溝や凹陥部等の形状を成形してもよい。
凹部325,425は、例えば板金部品1の内側に向かって凹む穴でもよい。
【0068】
板金部品1の製造方法は、4回以上のプレス加工工程を有していてもよい。この場合、各プレス加工工程の前に油塗布工程を実施するのが望ましい。
また、プレス加工工程に使用される順送金型5のうち、いずれの順送金型5に凹凸面55,65が設けられていてもよい。例えば、第1実施形態において、第二のパンチ70及び第二のダイ80に凹凸面が設けられていてもよい。
【0069】
また、板金部品1の形状は上述した実施形態に限られない。すなわち、板金部品1の形状は、順送金型で複数のプレス加工により成形可能な形状であればよい。
【0070】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,201,301,401 板金部品
5,305,405 順送金型
2,302,402 成形面
3,203,303,403 保油領域
4 外部領域
40 曲げ部
47 縁部
50,350,450 第一のパンチ(パンチ)
55 パンチ側凹凸面(凹凸面)
60,460 第一のダイ(ダイ)
65 ダイ側凹凸面(凹凸面)
70,370,470 第二のパンチ(パンチ)
80 第二のダイ(ダイ)
325,425 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
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図22
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