特開2020-157746(P2020-157746A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020157746-樹脂の射出成形方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-157746(P2020-157746A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】樹脂の射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20200904BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20200904BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20200904BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   B29C45/00
   B29C45/37
   B29C70/06
   B29C70/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-63052(P2019-63052)
(22)【出願日】2019年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】川上 宗仁
【テーマコード(参考)】
4F202
4F205
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AB11
4F202AB25
4F202AG28
4F202AM36
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK18
4F202CK52
4F202CK87
4F205AB11
4F205AB25
4F205AD16
4F205AG28
4F205AM36
4F205HA12
4F205HA27
4F205HB01
4F205HK31
4F206AB11
4F206AB25
4F206AG28
4F206AM36
4F206JA07
4F206JL02
4F206JN25
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】サイクルタイムを長じることなく、樹脂が合流する射出成形品の穴部表面のノッチ状凹みを解消することが可能な樹脂の射出成形方法を提供する。
【解決手段】第1径部6及びテーパ部8の少なくとも何れか一方がキャビティ4内に位置するように穴形成用柱状体5を軸方向に移動し、その後、キャビティ4内に前記溶融樹脂Pを射出充填してからキャビティ4内を保圧し、その後、第2径部7がキャビティ4内に位置するように穴形成用柱状体5を軸方向に移動し、その後、射出充填された溶融樹脂Pを固化させる。穴形成用柱状体5が軸方向に移動されて、その外径が第1径部6又はテーパ部8から第2径部7まで拡径されるので、射出充填時には、穴形成用柱状体5の外周部の溶融樹脂Pにノッチ状凹みができていたとしても、穴形成用柱状体5の拡径に伴って、それが潰される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂が射出充填されるキャビティと、該キャビティ内に配置されて射出成形品の穴部を形成する穴形成用柱状体とを有する金型が用いられ、前記穴形成用柱状体の外周部に前記射出された溶融樹脂の合流部が生じる樹脂の射出成形方法において、
前記穴形成用柱状体は、前記キャビティ内を貫通した状態で軸方向に移動可能であり、且つ、第1の径を有する第1径部と、該第1の径よりも大径の第2径部と、前記第1径部から第2径部に向けて次第に径が大きくなるテーパ部とを有し、
前記金型における前記穴形成用柱状体貫通部の前記キャビティ側端縁部には、前記穴形成用柱状体の軸方向移動による外径変化に追従可能な弾性を有し且つ前記キャビティ内を密封するシール部材が配設され、
前記穴形成用柱状体の第1径部及びテーパ部の少なくとも何れか一方が前記キャビティ内に位置するように前記軸方向に移動させる穴形成用柱状体の準備移動工程と、
該準備移動工程による前記穴形成用柱状体の位置状態で前記キャビティ内に前記溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、
前記キャビティ内に溶融樹脂が射出充填された後に該キャビティ内を保圧する保圧工程と、
前記キャビティ内が保圧された後に、前記第2径部が該キャビティ内に位置するように前記穴形成用柱状体を前記軸方向に移動させる穴形成用柱状体の拡径移動工程と、
該拡径移動工程の後に、前記射出充填された溶融樹脂を固化させる冷却工程と、を有することを特徴とする樹脂の射出成形方法。
【請求項2】
前記冷却工程の以前で、且つ、前記穴形成用柱状体の前記拡径移動と同時に又は該拡径移動の後に、該穴形成用柱状体を軸周りに回転することを特徴とする請求項1に記載の樹脂の射出成形方法。
【請求項3】
前記溶融樹脂には強化繊維が混錬されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂の射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の射出成形方法、特に、溶融樹脂が射出充填されるキャビティ内に射出成形品の穴部を形成する穴形成用柱状体が配置される金型を用いた樹脂の射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の射出成形時には、キャビティ内で樹脂が合流する箇所にウエルドが形成されやすい。ウエルドは、「合わせ目」を意味するが、ここでは、樹脂合流部に形成される脆弱部とする。特に、強化繊維が混錬された樹脂の合流箇所のウエルドでは、強化繊維の配向が他の部分と異なり、異方性と同様の機械的特性の低下が生じ、また応力集中が生じやすい。更に、キャビティ内に射出された溶融樹脂同士が穴形成用柱状体の外周部に沿って回り込んで合流する際、ウエルド内で樹脂の流れに淀みが生じ、射出成形品の穴部の表面に、巣のような、ノッチ状の凹みが生じることがある。このようなノッチ状凹みが生じると、外観不具合に加えて、応力集中による亀裂の発生源になるという問題がある。
【0003】
こうしたウエルドの発生を抑制する射出成形用金型組立体として、例えば、下記特許文献1に記載されるものがある。この射出成形用金型組立体では、金型表面や穴形成用柱状体に低熱伝導材料を用いることにより、樹脂の硬化を遅らせ、これによりウエルドの発生を抑制するようにしている。上記穴部表面のノッチ状凹みは、ウエルドの発生原因である樹脂の局所的な固化又は溶融状態の変動に伴うものと考えられるので、ウエルドの発生が抑制されれば、ノッチ状凹みの発生も抑制されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−248829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載される射出成形用金型組立体では、樹脂射出後の冷却効率も低下するので、冷却時間、すなわち樹脂の固化時間が長くなり、サイクルタイムが延びるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイクルタイムを長じることなく、樹脂が合流する射出成形品の穴部表面のノッチ状凹みを解消することが可能な樹脂の射出成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る樹脂の射出成形方法は、
溶融樹脂が射出充填されるキャビティと、該キャビティ内に配置されて射出成形品の穴部を形成する穴形成用柱状体とを有する金型が用いられ、前記穴形成用柱状体の外周部に前記射出された溶融樹脂の合流部が生じる樹脂の射出成形方法において、
前記穴形成用柱状体は、前記キャビティ内を貫通した状態で軸方向に移動可能であり、且つ、第1の径を有する第1径部と、該第1の径よりも大径の第2径部と、前記第1径部から第2径部に向けて次第に径が大きくなるテーパ部とを有し、前記金型における前記穴形成用柱状体貫通部の前記キャビティ側端縁部には、前記穴形成用柱状体の軸方向移動による外径変化に追従可能な弾性を有し且つ前記キャビティ内を密封するシール部材が配設され、
前記穴形成用柱状体の第1径部及びテーパ部の少なくとも何れか一方が前記キャビティ内に位置するように前記軸方向に移動させる穴形成用柱状体の準備移動工程と、該準備移動工程による前記穴形成用柱状体の位置状態で前記キャビティ内に前記溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記キャビティ内に溶融樹脂が射出充填された後に該キャビティ内を保圧する保圧工程と、前記キャビティ内が保圧された後に、前記第2径部が該キャビティ内に位置するように前記穴形成用柱状体を前記軸方向に移動させる穴形成用柱状体の拡径移動工程と、該拡径移動工程の後に、前記射出充填された溶融樹脂を固化させる冷却工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、キャビティ内の保圧後で且つ冷却前に、穴形成用柱状体が軸方向に移動されて、その外径が第1径部又はテーパ部から第2径部まで拡径されるので、穴形成用柱状体の外周部に充填されている溶融樹脂がその拡径した分、圧縮される。したがって、射出充填時には、穴形成用柱状体の外周部の溶融樹脂にノッチ状凹みができていたとしても、穴形成用柱状体の拡径に伴って、それが潰され、射出成形品の穴部表面にはノッチ状凹みの発生が抑制される。
【0009】
これに際し、穴形成用柱状体を軸方向に移動させるだけであるから、溶融樹脂の固化を含めた射出成形に要するサイクルタイムが長くなることはない。また、このとき、穴形成用柱状体を軸方向に移動するのに対し、圧縮される溶融樹脂からの反力は、穴形成用柱状体の径方向に作用するので、穴形成用柱状体の軸方向への移動に大きな駆動力を必要としない。また、保圧後に穴形成用柱状体の外周部の溶融樹脂が圧縮されることにより、射出成形品の穴部表面に残留圧縮応力が付与されて、強度が向上される。
【0010】
また、本発明の他の構成は、前記冷却工程の以前で、且つ、前記穴形成用柱状体の前記拡径移動と同時に又は該拡径移動の後に、該穴形成用柱状体を軸周りに回転することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、穴形成用柱状体の外周面と、それに接触している溶融樹脂の摩擦抵抗や粘着性により、穴形成用柱状体の軸周りの回転に伴って溶融樹脂が移動されるので、ウエルドの発生原因である樹脂の局所的な固化又は溶融状態の変動が混合により平均化され、樹脂の流れの淀みが低減されてノッチ状凹みの発生そのものが低減される。また、溶融樹脂内に強化繊維が混錬されている場合には、その強化繊維の配向状態を制御することが可能となり、更なる強度向上が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、穴形成用柱状体の外周部の溶融樹脂にできたノッチ状凹みをつぶすことができるので、射出成形品の穴部表面にはノッチ状凹みが残らず、更に、その穴部表面を残留圧縮応力で強化することができる。これにより、サイクルタイムを長じる必要なしに、射出成形品の外観だけでなく、強度も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の樹脂の射出成形方法が適用された金型による射出成形品製造状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の樹脂の射出成形方法の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態の射出成形品製造状態の概略説明図であり、具体的には、金型1内で製造される射出成形品の穴部の近傍を示している。この実施の形態では、金型1は上型2と下型3で構成され、それらの間に、溶融樹脂Pが射出充填されるキャビティ4が形成される。この溶融樹脂Pには、強化繊維が混錬されている。混錬される強化繊維には、いわゆる短繊維、長繊維、連続繊維といった種々の長さの繊維が適用され、繊維の材料としては、カーボンファイバやグラスファイバなどが適用される。なお、後述のように、溶融樹脂P内の強化繊維は必須要件ではない。
【0015】
射出成形品に穴部を形成する部位には、キャビティ4を貫通するようにして図の上下方向に伸長する穴形成用柱状体5が配置されている。この穴形成用柱状体5は、図の下端部が小径(第1の径)の第1径部6とされ、その上方に、第1径部6よりも大径(第2の径)の第2径部7が形成され、両者の間に、第1径部6から第2径部7に向けて次第に径が大きくなるテーパ部8が形成されている。なお、第2径部7の外径が、射出成形品に要求される穴部の内径とされている。第1径部6の外径は、例えば、後述するように、穴形成用柱状体5が軸方向に移動する際に生じる外径変動に後述のシール部材9が追従できる範囲内に設定する。
【0016】
上記上型2及び下型3における穴形成用柱状体5の貫通部のキャビティ4側端縁部には、穴形成用柱状体5の外周面に密着してキャビティ4内を密封するシール部材9が配設されている。このシール部材9は、例えば、穴形成用柱状体5の軸方向移動に伴う外径変化に追従して、その外周面に密着可能な弾性を有する硬質ゴムで形成される。後述するように、この実施の形態では、例えば、穴形成用柱状体5が下降されることにより、キャビティ4内には第1径部6及びテーパ部8の少なくとも一方が位置している状態から、第2径部7が位置される状態に変化する。このとき、シール部材9は、穴形成用柱状体5の外径変動に追従して、その外周面に密着している必要がある。なお、下型3には、下型3用のシール部材9の下方に、下降される穴形成用柱状体5を収容する収容凹部10が形成されている。
【0017】
この実施の形態の樹脂の射出成形方法では、まず、穴形成用柱状体5の準備移動工程として、図1(A)に示すように、上型2と下型3を合わせてキャビティ4が形成されている状態で、第1径部6及びテーパ部8の少なくとも一方(図ではテーパ部8)がキャビティ4内に位置するように穴形成用柱状体5を図示しない駆動源で軸方向に移動させる。次いで、射出充填工程として、例えば、図示左方から溶融樹脂Pをキャビティ4内に射出して充填する。溶融樹脂Pは、穴形成用柱状体5の上流側、すなわち図示左側で分岐し、穴形成用柱状体5の外周を回り込み、下流側、すなわち図示右側で合流する。この溶融樹脂Pの合流箇所でウエルドが生じる。このウエルドは、例えば、穴形成用柱状体5の外周に沿って溶融樹脂Pが回り込む際、溶融樹脂P内で生じる局所的な固化や溶融状態の変動によって発生する機械的特性の脆弱部である。このウエルド発生の際、溶融樹脂Pの流れに淀みが生じ、これにより穴形成用柱状体5の外周部において溶融樹脂Pにノッチ状凹みが生じる可能性がある。このノッチ状凹みは、前述のように、巣のようなものであり、製品の外観不具合に加えて、応力集中による亀裂の発生源ともなる。
【0018】
また、周知のように、上記ウエルドでは、溶融樹脂Pが穴形成用柱状体5の外周を回り込んで互いに合流する箇所で、溶融樹脂Pに混錬されている強化繊維の伸長方向が、両者の合流方向に向き合った状態になる。一方、ウエルド以外の部分では、強化繊維の伸長方向は溶融樹脂Pの流れ方向に沿っている。したがって、例えば、図1(A)で、溶融樹脂Pの流れ方向下流側では、強化繊維の伸長方向は図の左右方向に向いているが、穴形成用柱状体5のすぐ下流側のウエルドでは、強化繊維の伸長方向は紙面と直交方向に向いている。このように強化繊維の伸長方向、すなわち配向が他の部分に対してウエルドで異なることも、ウエルドの機械的特性の脆弱性の一因である。
【0019】
上記溶融樹脂Pの射出充填工程の後、キャビティ4内の圧力を一定にする、いわゆる保圧工程が実行される。このキャビティ4内の保圧後、図1(B)に示すように、穴形成用柱状体5の拡径移動工程として、穴形成用柱状体5を下降、すなわち軸方向下向きに移動させ、最終的には、図1(C)に示すように、キャビティ4内に第2径部7を位置させる。前述のように、第2径部7の外径は、要求される穴部の内径に設定されているので、この状態で穴部の内径が設定寸法になる。また、穴形成用柱状体5の外周部の溶融樹脂Pは、穴形成用柱状体5の拡径分、圧縮されるので、もし、穴形成用柱状体5の外周部において溶融樹脂Pにノッチ状凹みが形成されていたとしても、その圧縮によって潰され、穴部の表面へのノッチ状凹みの発生が抑制される。更に、保圧状態にある溶融樹脂Pが圧縮されるので、穴部の表面には、圧縮応力が付与され、製品として残留する。この残留圧縮応力によって、射出成形品の穴部の表面が強化される。
【0020】
この穴形成用柱状体5の拡径移動工程と同時に、又は、その拡径移動工程の後に、穴形成用柱状体5を軸周りに回転させてもよい。この穴形成用柱状体5の回転に伴い、溶融樹脂Pとの摩擦抵抗や粘着性により、溶融樹脂Pが、いわゆる連れ回りし、それに伴って、穴形成用柱状体5の外周部における溶融樹脂P内の強化繊維の配向が変化する。具体的には、強化繊維の配向が穴形成用柱状体5の周方向に向けられる。この穴形成用柱状体5の回転方向は、特に、一方の方向に限定されるものではなく、例えば、時計回り方向と反時計回り方向の組合せであってもよいし、更には、それを繰り返してもよい。これにより、穴形成用柱状体5の外周部、すなわち射出成形品の穴部の表面部における強化繊維の配向を制御することが可能となり、一般的に、強度を向上することができる。これと同時に、穴部周辺の溶融樹脂Pが混合されるので、上記ウエルド発生原因である局所的な固化又は溶融状態の変動が平均化され、溶融樹脂Pの流れの淀みが低減されるので、ノッチ状凹みの発生そのものも低減される。
【0021】
上記の穴形成用柱状体5の拡径移動工程後、溶融樹脂Pを固化する冷却工程が実行される。この冷却工程によって、キャビティ4内の溶融樹脂Pの固化が完了したら、金型1を外して射出成形品を離型する。
【0022】
このように、この実施の形態では、まず、第1径部6及びテーパ部8の少なくとも何れか一方がキャビティ4内に位置するように穴形成用柱状体5を軸方向に移動し、その後、キャビティ4内に前記溶融樹脂Pを射出充填してからキャビティ4内を保圧し、その後、第2径部7がキャビティ4内に位置するように穴形成用柱状体5を軸方向に移動し、その後、射出充填された溶融樹脂Pを固化させる。この樹脂の射出成形方法では、キャビティ4内の保圧後で且つ冷却前に、穴形成用柱状体5が軸方向に移動されて、その外径が第1径部6又はテーパ部8から第2径部7まで拡径されるので、穴形成用柱状体5の外周部に充填されている溶融樹脂Pがその拡径した分、圧縮される。したがって、射出充填時には、穴形成用柱状体5の外周部の溶融樹脂Pにノッチ状凹みができていたとしても、穴形成用柱状体5の拡径に伴って、それが潰され、射出成形品の穴部表面にはノッチ状凹みの発生が抑制される。
【0023】
これに際し、穴形成用柱状体5を軸方向に移動させるだけであるから、溶融樹脂Pの固化を含めた射出成形に要するサイクルタイムが長くなることはない。また、このとき、穴形成用柱状体5を軸方向に移動するのに対し、圧縮される溶融樹脂Pからの反力は、穴形成用柱状体5の径方向に作用するので、穴形成用柱状体5の軸方向への移動に大きな駆動力を必要としない。また、保圧後に穴形成用柱状体5の外周部の溶融樹脂Pが圧縮されることにより、射出成形品の穴部表面に残留圧縮応力が付与されて、強度が向上される。
【0024】
また、冷却工程の以前で、且つ、穴形成用柱状体5の拡径移動と同時に又は拡径移動の後に、穴形成用柱状体5を軸周りに回転する。したがって、穴形成用柱状体5の外周面と、それに接触している溶融樹脂Pの摩擦抵抗や粘着性により、穴形成用柱状体5の軸周りの回転に伴って溶融樹脂Pが移動されるので、ウエルドの発生原因である樹脂の局所的な固化又は溶融状態の変動が混合により平均化され、溶融樹脂Pの流れの淀みが低減されてノッチ状凹みの発生そのものが低減される。また、溶融樹脂P内に混錬されている強化繊維の配向状態を制御することが可能となり、更なる強度向上が可能となる。
【0025】
以上、実施の形態に係る樹脂の射出成形方法について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、金型1内のキャビティ4の形状、すなわち射出成形品の形状を平板状としているが、穴部が形成される射出成形品の形状は、あらゆる形状とすることができる。
【0026】
また、上記実施の形態では、穴形成用柱状体5の外周面に密着してキャビティ4内を密封するシール部材9に硬質ゴムを用いたが、このシール部材9に用いられる材質は、前述のように、穴形成用柱状体5の軸方向への移動に伴う外径変動に追従できるものであれば、如何様なものも適用可能である。
【0027】
また、上記実施の形態では、溶融樹脂に強化繊維が混錬された樹脂の射出成形方法について説明したが、本発明の樹脂の射出成形方法は、強化繊維の混錬されていない樹脂についても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 金型
4 キャビティ
5 穴形成用柱状体
6 第1径部
7 第2径部
8 テーパ部
9 シール部材
P 溶融樹脂
図1