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特開2020-167175非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-167175(P2020-167175A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20200911BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20200911BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20200911BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200911BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M10/0585
   H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2020-111453(P2020-111453)
(22)【出願日】2020年6月29日
(62)【分割の表示】特願2016-190602(P2016-190602)の分割
【原出願日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-208433(P2015-208433)
(32)【優先日】2015年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】高市 裕大
(72)【発明者】
【氏名】下岡 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】青木 潤珠
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029BJ15
5H029DJ08
5H029DJ12
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ12
5H029HJ19
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA19
5H050EA09
5H050EA24
5H050FA05
5H050FA06
5H050FA08
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA12
5H050HA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高密度で折り曲げ強度の高い非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池、または高電流密度の電池に使用された場合に高い折り曲げ強度を示し得る非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池の提供。
【解決手段】本発明の非水電解質二次電池用正極1は、正極1の少なくとも1か所に屈曲部が形成されてなる電極体6を有する非水電解質二次電池に使用されるものであって、正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、領域Aおよび領域Bにおけるバインダの分布が特定の状態にある。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の正極1を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極およびセパレータを備え、かつ前記正極の少なくとも1か所に屈曲部が形成される電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなる非水電解質二次電池に使用される正極であって、
正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、
前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層のエネルギー密度が2.7Wh/cm以上であり、
前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、以下の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とする非水電解質二次電池用正極。
前記正極合剤層の断面についてSEM−EDXにてバインダ由来の元素を検出する。検出された元素の中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2種を選択し、それぞれ同一の視野に対して元素マッピングを行う。バインダ由来の前記2種の元素のマッピングが重なっている箇所の面積を求め、前記領域Aにおける前記面積の比率をa、前記領域Bにおける前記面積の比率をbとし、a/bを求める。
【請求項2】
正極、負極およびセパレータを備え、かつ前記正極の少なくとも1か所に屈曲部が形成される電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなる非水電解質二次電池に使用される正極であって、
正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、
前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.7g/cm以上であり、
前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、以下の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とする非水電解質二次電池用正極。
前記正極合剤層の断面についてSEM−EDXにてバインダ由来の元素を検出する。検出された元素の中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2種を選択し、それぞれ同一の視野に対して元素マッピングを行う。バインダ由来の前記2種の元素のマッピングが重なっている箇所の面積を求め、前記領域Aにおける前記面積の比率をa、前記領域Bにおける前記面積の比率をbとし、a/bを求める。
【請求項3】
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.77g/cm以上である、請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項4】
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.83g/cm以上である、請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項5】
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.91g/cm以上である、請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項6】
正極、負極およびセパレータを備えた電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなる非水電解質二次電池であって、
前記正極は、正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、かつ少なくとも1か所に屈曲部を含み、
前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層のエネルギー密度が2.7Wh/cm以上であり、
前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、以下の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とする非水電解質二次電池。
前記正極合剤層の断面についてSEM−EDXにてバインダ由来の元素を検出する。検出された元素の中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2種を選択し、それぞれ同一の視野に対して元素マッピングを行う。バインダ由来の前記2種の元素のマッピングが重なっている箇所の面積を求め、前記領域Aにおける前記面積の比率をa、前記領域Bにおける前記面積の比率をbとし、a/bを求める。
【請求項7】
正極、負極およびセパレータを備えた電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなる非水電解質二次電池であって、
前記正極は、正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、かつ少なくとも1か所に屈曲部を含み、
前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.7g/cm以上であり、
前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、以下の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とする非水電解質二次電池。
前記正極合剤層の断面についてSEM−EDXにてバインダ由来の元素を検出する。検出された元素の中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2種を選択し、それぞれ同一の視野に対して元素マッピングを行う。バインダ由来の前記2種の元素のマッピングが重なっている箇所の面積を求め、前記領域Aにおける前記面積の比率をa、前記領域Bにおける前記面積の比率をbとし、a/bを求める。
【請求項8】
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.77g/cm以上である、請求項7に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.83g/cm以上である、請求項7に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
10サイクルの充放電を施したときの、前記正極合剤層の密度が3.91g/cm以上である、請求項7に記載の非水電解質二次電池。
【請求項11】
前記電極体は、前記正極と前記負極とが前記セパレータを介して渦巻状に巻回されてなり、かつ横断面を扁平状にした巻回電極体である請求項6〜10のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項12】
前記正極と前記セパレータとの間および前記負極と前記セパレータとの間の一方または両方に、接着層を備えている請求項6〜11のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項13】
前記セパレータは、片面または両面に接着層を有している請求項12に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度で折り曲げ強度の高い非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池、または高電流密度の電池に使用された場合に高い折り曲げ強度を示し得る非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、その高い体積エネルギー密度と重量エネルギー密度から、携帯電話やノートパソコンなど民生機器だけではなく、車載用途やロボット用途など産業用途にも広く展開されてきている。そのため、要求される特性は多岐に渡っており、様々な手段であらゆる特性改善が要求されている。
【0003】
特許文献1には正極活物質粒子を正極合剤層に高密度に充填して、活物質密度を高くした正極を巻回すると、応力によって集電体の破断、正極合剤層の割れおよびひびなどの正極の破損が生じやすいことから、それを抑制するために、正極合剤層の厚さ方向における集電体からの距離と結着剤の量との相関を示す曲線の極小点が前記正極合剤層の厚さ方向における中間部の位置に対応し、正極合剤層の集電体側に含まれる結着剤の量が、集電体から離れた箇所の結着剤の量よりも多い正極が提案されている。
【0004】
特許文献2では、高速充放電時のサイクルにおいて高い放電容量が得られるように、正極合剤層の表面側と集電体側とでリチウム元素の濃度、導電助剤量、結着材料を変化させる技術が提案されている。
【0005】
特許文献3では、高入出力特性と充放電サイクル特性を向上させるために、正極合剤層が2層以上で、集電体に接する層の導電助剤含有量が、集電体と接する層以外の層の導電助剤含有量よりも多い正極が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/148550号
【特許文献2】特開2011−129399号公報
【特許文献3】特開2008−059876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、体積エネルギー密度向上のため、電池の電流密度を3.85mA/cm以上にした場合には、一般に正極の折り曲げ強度が低くなる。また、正極合剤層の密度を例えば3.95g/cm以上と高めた場合にも、正極合剤層中の正極活物質の充填性が非常に高いことから、正極の折り曲げ強度が低い。よって、巻回電極体のような正極に屈曲部が形成される電極体を用いた非水電解質二次電池を作製すると、正極合剤層が前記のような高密度の正極を用いていたり、電池の電流密度を前記のように高めていたりした場合には、電極体巻回時や電池の充放電時に屈曲部で正極破断が極端に発生しやすくなる。
【0008】
本発明の目的は、高密度で折り曲げ強度の高い非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池、または高電流密度の電池に使用された場合に高い折り曲げ強度を示し得る非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の非水電解質二次電池用正極は、正極、負極およびセパレータを備え、前記正極の少なくとも1か所に屈曲部が形成される電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなる非水電解質二次電池に使用される正極であって、正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、前記正極合剤層の密度は、3.95g/cm以上であり、前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、以下の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とするものである。
【0010】
<前記a/bの求め方>
前記正極合剤層の断面についてSEM−EDXにてバインダ由来の元素を検出する。SEM−EDXではB(ホウ素)からU(ウラン)まで検出可能であるが、検出された元素の中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2種を選択し、それぞれ同一の視野に対して元素マッピングを行う。バインダ由来の前記2種の元素のマッピングが重なっている箇所の面積を求め、前記領域Aにおける前記面積の比率をa、前記領域Bにおける前記面積の比率をbとして、a/bを求める。
【0011】
また、本発明の非水電解質二次電池の別の態様は、正極、負極およびセパレータを備え、前記正極の少なくとも1か所に屈曲部が形成されてなる電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなり、電流密度が3.85mA/cm以上の非水電解質二次電池に使用される正極であって、正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、前記の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とするものである。
【0012】
更に、本発明の非水電解質二次電池は、正極、負極およびセパレータを備えた電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなり、前記正極は、正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、かつ少なくとも1か所に屈曲部を含み、前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、前記正極合剤層の密度は、3.95g/cm以上であり、前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、前記の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の非水電解質二次電池の別の態様は、正極、負極およびセパレータを備えた電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなり、電流密度が3.85mA/cm以上であり、前記正極は、正極集電体の片面または両面に正極合剤層を備え、かつ少なくとも1か所に屈曲部を含み、前記正極合剤層は少なくとも正極活物質とバインダと導電助剤を含み、前記正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとした時に、前記の方法で求められるa/bが2以上となることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高密度で折り曲げ強度の高い非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池、または高電流密度の電池に使用された場合に高い折り曲げ強度を示し得る非水電解質二次電池用正極と前記正極を有する非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施態様の一例である非水電解質二次電池を模式的に表す部分断面図である。
図2図1の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の非水電解質二次電池用正極は、電池にした時に少なくとも1か所に屈曲部を備えるものであり、例えば、長尺状の正極、負極およびセパレータを重ねて渦巻状に巻回し、横断面を扁平状にした巻回電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなる非水電解質二次電池に使用することができる。
【0017】
〔正極〕
本発明の非水電解質二次電池用正極(以下、単に「正極」という。)は、少なくとも正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有するものである。
【0018】
本発明の正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい。)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理を施す工程を経て製造することができる。
【0019】
本発明の非水電解質二次電池の実施態様の一つにおいては、電流密度が3.85mA/cm以上である。電流密度とは、電池の1.0Cの電流値の、正極の単位面積当たりの値を意味している。
【0020】
電池の電流密度が高いと正極の折り曲げ強度が低くなる理由は以下の通りである。正極の正極合剤層の密度を変えずに電池の電流密度を上げるには、正極合剤層の厚みを大きくすることになるが、これによって折り曲げ強度が下がってしまい、正極に屈曲部が形成されるような形態の電極体(横断面が扁平状の巻回電極体など)を作製すると、正極そのものが破断してしまうことがある。一方、正極の正極合剤層の密度を変えずに電池の電流密度を下げるには、正極合剤層の厚みを小さくすることになるため、正極の折り曲げ強度はそれなりに担保できるが、その分正極合剤層の面積を増加させなければならず、そうすると電池の体積エネルギー密度が低下してしまうため好ましくない。
【0021】
つまり、電池の体積エネルギー密度を低下させずに高容量化を実現させると、自ずと電流密度が高くなる。そして本発明者らの検討の結果、正極合剤層の密度を電池の高容量化が可能な程度に調整した場合に、正極の折り曲げ強度が下がってしまうのが、電池の電流密度が3.85mA/cm以上の時であることが分かった。
【0022】
なお、電池の電流密度を高くするには、正極作製時の正極集電体上に塗布する正極合剤含有組成物(後述する)の塗布量を調整すればよい。
【0023】
また、正極合剤層の密度を3.95g/cm以上と超高密度にすると、硬い正極活物質が高充填されているため、正極合剤層も非常に硬くなる。このため、正極の屈曲部においては、集電体と接する正極合剤層から負荷がかかり集電体を含む正極そのものが破断することがあり、巻回電極体作製時には破断が生じなくても、電池として充放電を行った場合に負極の膨張収縮に耐えられずに正極集電体が破断してしまうことがある。
【0024】
そこで、本発明者らは、電流密度が3.85mA/cm以上の電池とした場合でも、また、正極合剤層の密度を3.95g/cm以上と超高密度とした場合でも、破断を抑 制することができる正極を実現するために種々検討を行い、正極合剤層内のバインダが、集電体側ではなく正極合剤層の表面側に多く存在すると、折り曲げ強度の高い正極合剤層になることを見出した。
【0025】
正極合剤層の集電体側にバインダが多く存在すると、その箇所が硬くなり、その分集電体への負荷が高くなって屈曲部で集電体が破断しやすくなる。そこでバインダを正極合剤層の表面側に集中させることで、集電体への負荷を低減して集電体の破断を防ぐことができる。
【0026】
バインダが集電体側ではなく正極合剤層の表面側に多く存在する正極は、以下のような分析を行って確認することができる。正極合剤層の断面についてSEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光装置)にてバインダ由来の元素を検出する。検出された元素の中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2種を選択し、それぞれ同一の視野に対して元素マッピングを行う。前記2種の元素のそれぞれの元素マッピング位置が重なっている箇所がバインダの存在箇所であるため、この箇所の面積を求める。
【0027】
集電体における片面側の正極合剤層の断面について、厚み方向の中央部から表面側を領域Aとし、集電体側を領域Bとし、バインダ由来の前記2種の元素のそれぞれの元素マッピング位置が重なっている箇所の面積Sを求め、この面積Sのうちの前記領域Aに存在する部分の比率をaとし、前記面積Sのうちの前記領域Bに存在する部分の比率をbとすると、バインダが正極合剤層の表面側に多く存在する正極は、a/bが2以上となる特徴を持つ。
【0028】
本発明の正極が、集電体の片面に正極合剤層を有する場合には、この正極合剤層におけるa/bが2以上であればよく、集電体の両面に正極合剤層を有する場合には、これらの両正極合剤層におけるa/bが2以上であればよい。いずれの場合も、正極合剤層における略均等距離だけ離れた3点のそれぞれにおいてa/bを測定し、これらの平均値が2以上を満たせばよい。
【0029】
正極合剤層の断面についてSEM−EDX法にてバインダ由来の元素をマッピングすると、正極合剤層に含まれるバインダの存在箇所を示すことになるが、同時に別の材料由来の元素をも検出することになる。例えばバインダにPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を用いた場合、SEM−EDXで検出される中で、バインダに含まれる元素で最も多い元素C(炭素)だけをマッピングするとバインダ以外にも導電助剤の存在箇所を示すことになる。電池分解後の正極を分析する場合、バインダ中に含まれる次に多い元素F(フッ素)だけをマッピングすると、非水電解質に含まれるフッ素含有化合物によって形成された正極上の被膜を検出することがある。このように一つの元素のみを選択すると、正確にバインダの存在箇所を把握することができないため、SEM−EDXで検出することが可能な元素で、バインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2元素を選択してそれぞれ元素マッピングし、元素マッピングが重なっている箇所で判断することで正確性を高めている。また、この場合、P(リン)やB(ホウ素)などの電解質由来の元素をマッピングすることで、バインダの存在箇所ではなく電解質の残存物であることを特定できる。
【0030】
以下、分析手段を説明する。
電極体中の正極を取り出し、その正極合剤層の長手方向中央の断面を分析対象とする。正極断面は、イオンミリング処理を施して面出しを行う。それにより得られた正極の試料について、SEM−EDXにより、バインダ由来の元素を検出し、その中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と、次に多い元素の2種を選択する。前記2元素についてそ れぞれ元素マッピングを行い、前記2種の元素の元素マッピングの重なっている箇所の面積(重複面積)を求める。ここで、正極断面の合剤層における全ての重複面積に対する、厚み方向中央部から表面側の領域Aにおける重複面積の比率の百分率:a%と、厚み方向中央部から集電体側の領域Bにおける重複面積の比率の百分率:b%とを求める。これらの比a/bが2以上であると、正極の折り曲げ強度が高くなる。好ましくはa/bが5以上であり、更に好ましくはa/bは10以上である。後述する実施例および比較例におけるa/bは、この方法により求めた値である。
【0031】
a/bは、正極合剤層の形成の際に、集電体上に正極合剤含有組成物を塗布して形成した塗膜を、乾燥する段階において、少なくとも乾燥開始時に比較的低い温度で乾燥させると、この範囲に調整することができる。その詳細なメカニズムは不明であるが、以下のことが考えられる。正極合剤層中で比較的比重の高い正極活物質(後述)が、乾燥中の合剤層中で沈む、つまり正極集電体側へ移動する。一方、比較的比重の低いバインダは、乾燥中の合剤層中で表面側へ移動する。そして、少なくとも乾燥開始時に低い温度で乾燥することで、高い温度で乾燥させるよりも、この現象が顕著に起こると考えられる。
【0032】
具体的な乾燥条件としては、正極合剤層の厚みにもよるが、乾燥手段の設定温度を90〜115℃に設定することが考えられる。乾燥手段としては、例えば、ドライヤーによる温風や、遠赤外線ヒーターなどの乾燥方法によって塗膜を加熱する手段が挙げられる。乾燥手段では、複数の乾燥方法を組み合わせて塗膜を加熱、乾燥してもよい。
【0033】
また、塗膜の乾燥開始時に低い温度で乾燥した後に、その後120〜150℃と比較的高い温度で乾燥させると、正極の生産性が向上することから好ましい。その場合、複数の乾燥手段を準備し、乾燥開始の乾燥手段は90〜115℃に設定し、それ以降の乾燥手段を120〜150℃と比較的高い温度に設定することで実現できる。
【0034】
乾燥方法の一例を具体的に説明する。まず、正極合剤含有組成物を調製し、これを正極集電体の一方の面に塗布して塗膜を形成する。その後、乾燥炉へ搬送し、片面を乾燥させる。この時、複数基の乾燥手段を準備する。乾燥炉の最も上流側の乾燥手段(ドライヤーなど)の温度を90〜115℃に設定し、それ以降の乾燥手段(ドライヤーなど)を120〜150℃に設定し、正極合剤含有組成物の塗膜が形成された集電体を、乾燥炉中で移動させる。一方の面の乾燥が終了すると、その後正極集電体の他方の面にも正極合剤含有組成物を塗布して塗膜を形成し、同様の方法で乾燥させる。正極集電体の両面に塗布した正極合剤含有組成物の塗膜の乾燥が終了した後に、必要に応じてカレンダ処理を行う。これにより、a/bを2以上に調整することが可能である。なお、a/bの調整方法として上記の方法は一例にすぎず、正極合剤層においてa/bが2以上であれば、このような乾燥方法には限定されない。
【0035】
<正極活物質>
上記正極に用いる正極活物質は、特に限定されず、リチウム含有遷移金属酸化物などの公知の活物質を使用すればよい。リチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMnNiCo1−y−z、LiMn、LiMn2−yなどが例示される。但し、上記の各構造式中において、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、Zr、GeおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0<z<1.0である。エネルギー密度の観点から、リチウムとコバルトを含有する層状化合物(一般式LiCo1−y;Mは上述のMからCoを抜いたものでyは上述したyと同じ)が特に好ましい。
【0036】
<バインダ>
上記正極に用いるバインダとしては、電池内で化学的に安定なものであれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。例えば、PVDF、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(P(VDF−HFP))、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TFE))、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−CTFE))、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、又は、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体およびそれら共重合体のNaイオン架橋体などの1種または2種以上を使用できる。
【0037】
前述した正極断面のSEM−EDXでのマッピングでバインダ由来の元素マッピングを行って、検出された元素の中からバインダに含まれる元素で最も多い元素と次に多い元素の2種の元素を選択するときは、上記のバインダの種類によって適宜選択する。
【0038】
バインダとしてPVDF、PTFE,PCTFEなどのフッ素を含むポリマーや、これらを含む共重合体を使用する場合は、C(炭素)と、F(フッ素)の2元素を選択することになる。
【0039】
<導電助剤>
上記正極に用いる導電助剤としては、電池内で化学的に安定なものであればよい。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;アルミニウム粉などの金属粉末;フッ化炭素;酸化亜鉛;チタン酸カリウムなどからなる導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料など;が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性の高いグラファイトと、吸液性に優れたカーボンブラックが好ましい。また、導電助剤の形態としては、一次粒子に限定されず、二次凝集体や、チェーンストラクチャーなどの集合体の形態のものも用いることができる。このような集合体の方が、取り扱いが容易であり、生産性も良好となる。
【0040】
<集電体>
上記正極に用いる集電体としては、従来から知られている非水電解質二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚さが8〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
【0041】
<正極合剤層>
上記正極合剤層においては、正極活物質の総量を92〜99質量%とし、導電助剤の量を0.5〜6質量%とし、バインダの量を0.5〜6質量%とすることが好ましい。上記正極合剤層の厚さは、カレンダ処理後において、集電体の片面あたり、40〜300μmであることが好ましい。
【0042】
本発明の正極に係る正極合剤層の密度は、3.95g/cm以上である。正極合剤層の密度を高くするには、一般に平均粒子径の異なる正極活物質粒子を2種類以上用いる。そうすると、大粒子と大粒子の間にそれよりも小さい粒子を充填することができるために、正極合剤層が高密度になる。
【0043】
正極合剤層において、3.95g/cm以上の高密度を実現するには、平均粒子径が最も大きい正極活物質粒子と平均粒子径が最も小さい正極活物質粒子との粒径比や、それぞれの含有率、平均粒子径が最も大きい正極活物質粒子と最も小さい正極活物質粒子の正極活物質中の含有比などをコントロールすればよい。
【0044】
なお、本明細書でいう各種粒子の「平均粒子径」とは、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」を用いて測定した粒度分布の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(d50)メディアン径である。
【0045】
また、本明細書でいう合剤層の密度は、以下の測定方法により求められる値である。正極を所定面積で切り取り、その重量を、最小目盛り1mgの電子天秤を用いて測定し、この重量から集電体の重量を差し引いて正極合剤層の重量を算出する。また、正極の全厚を最小目盛り1μmのマイクロメーターで10点測定し、この厚みから集電体の厚みを差し引いた値の平均値と面積から正極合剤層の体積を算出し、この体積で上記の正極合剤層の重量を割ることにより、正極合剤層の密度を算出する。負極の合剤層密度も同様の手法で算出する。
【0046】
正極合剤層の密度を3.95g/cm以上とするには、例えば以下のような手段が考えられる。
【0047】
<例示1>
平均粒子径が1〜10μmの正極活物質粒子(平均粒子径が小さい正極活物質粒子)と、平均粒子径が20〜30μmの正極活物質粒子(平均粒子径が大きい正極活物質粒子)の、平均粒子径が異なる2種類の正極活物質粒子を組み合わせることが好ましい。このような大小の正極活物質粒子を用いることで、大粒子と大粒子の隙間を小粒子が埋めることになるため、正極合剤層の密度を高めることができる。
【0048】
<例示2>
平均粒子径が異なる2種類の正極活物質粒子を組み合わせで、平均粒子径が小さい正極活物質粒子の平均粒子径:ds(μm)と、平均粒子径が大きい正極活物質粒子の平均粒子径:dl(μm)との比dl/dsが3〜15となるようにすることが好ましい。2種類の正極活物質粒子の平均粒子径がこのような関係であると、大粒子と大粒子の隙間に対して小粒子が密度高く入っていきやすいため、正極合剤層の密度を高めることができる。
【0049】
<例示3>
平均粒子径が異なる2種類の正極活物質粒子を組み合わせで、平均粒子径が小さい正極活物質粒子と平均粒子径が大きい正極活物質粒子との混合比を、40:60〜5:95の範囲とすることが好ましい。このような混合比の時に大粒子と大粒子の隙間を小粒子がちょうど充填できる量比となるために、正極合剤層の密度を高めることができる。
【0050】
上述のようにいくつかの手段を例示したが、例示した手段を複数採用すると更に正極合剤層の密度が高くなる。3つの手段すべてを採用することで、正極合剤層の密度を特に高くすることができる。なお、実現性を考えると、正極合剤層の密度は5.0g/cm以下であることが好ましい。
【0051】
〔負極〕
本発明の非水電解質二次電池に用いる負極には、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを含む負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
【0052】
<負極活物質>
上記負極活物質には、従来から知られている非水電解質二次電池に用いられている負極活物質、すなわち、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に制限はない。例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が負極活物質として用いられる。また、シリコン(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)などの元素およびその合金、リチウム含有窒化物又はリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。中でも、負極活物質としては、シリコンと酸素とを構成元素に含むSiOで表される材料が好ましい。
【0053】
SiOは、Siの微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶または非晶質相のSiを含めた比率となる。すなわち、SiOには、非晶質のSiOマトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiOと、その中に分散しているSiを合わせて、上記原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiOマトリックス中に、Siが分散した構造で、SiOとSiのモル比が1:1の材料の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。
【0054】
上記SiOは、炭素材料と複合化した複合体であることが好ましく、例えば、SiOxの表面が炭素材料で被覆されていることが望ましい。通常、SiOは導電性が乏しいため、これを負極活物質として用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、導電性材料(導電助剤)を使用し、負極内におけるSiOと導電性材料との混合・分散を良好にして、優れた導電ネットワークを形成する必要がある。SiOを炭素材料と複合化した複合体であれば、例えば、単にSiOと炭素材料などの導電性材料とを混合して得られた材料を用いた場合よりも、負極における導電ネットワークが良好に形成される。
【0055】
<バインダ>
上記バインダとしては、例えば、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロースなどの多糖類やそれらの変成体;ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂やそれらの変成体;ポリイミド;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシドなどのゴム状弾性を有するポリマーやそれらの変成体;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0056】
<導電助剤>
上記負極合剤層には、更に導電助剤として導電性材料を添加してもよい。このような導電性材料としては、電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、 例えば、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなど)、炭素繊維、金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの粉末)、金属繊維、ポリフェニレン誘導体(特開昭59−20971号公報に記載のもの)などの材料を、1種または2種以上用いることができる。これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましく、ケッチェンブラックやアセチレンブラックがより好ましい。
【0057】
<集電体>
上記集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
【0058】
<負極の製造方法>
上記負極は、例えば、前述した負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤を、NMPや水などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理を施す工程を経て製造することができる。負極の製造方法は、上記の製法に制限されるわけではなく、他の製造方法で製造することもできる。
【0059】
<負極合剤層>
上記負極合剤層においては、負極活物質の総量を80〜99質量%とし、バインダの量を1〜20質量%とすることが好ましい。また、別途導電助剤として導電性材料を使用する場合には、負極合剤層におけるこれらの導電性材料は、負極活物質の総量およびバインダ量が、上記の好適値を満足する範囲で使用することが好ましい。前述の正極合剤層の厚さを考慮して負極合剤層の厚さは、例えば、40〜400μmであることが好ましい。
【0060】
〔電極体〕
本発明の正極は、正極、負極およびセパレータを備えた電極体と、非水電解質とが、外装体内に収容されてなる非水電解質二次電池に用いるものである。そして、前記電極体において、正極は少なくとも1か所に屈曲部を含んでいる。屈曲部とは、折り曲げ箇所や極端に曲率の小さい箇所(例えば曲率半径2mm以下)の部分を指す。そのような屈曲部を含む正極を有する電極体としては、長尺状の正極、負極およびセパレータを重ねて渦巻状に巻回し、横断面を扁平状にした巻回電極体(扁平状巻回電極体)や、直径3.5mm以下の円筒形の外装缶に収容されるように正極、負極およびセパレータを重ねて渦巻状に巻回した電極体などが挙げられる。
【0061】
電極体は、正極とセパレータとの間および負極とセパレータとの間の一方または両方に接着層を備えると、本発明による効果がより発揮しやすい。このような接着層を含む場合、電極体においては、セパレータと電極とを接着させるために押圧する工程(プレス)を経てセパレータと電極とを一体化させる。セパレータと電極とを一体化させた電極体を用いた非水電解質二次電池には、充放電を繰り返しても電極体の形状変化が抑制できるという効果が生じ、前記の扁平状巻回電極体の場合には、かかる効果が特に顕著となる。
【0062】
その場合、正極合剤層の密度が3.95g/cm以上と非常に高い正極は、プレスによって更に過酷な状況に曝されることになる。しかしながら、本発明の正極は、このように過酷な工程にも耐えることができるような高い引張強度を確保することができる。
【0063】
正極とセパレータとの間および負極とセパレータとの間の一方または両方に接着層を備えるには、セパレータの片面に接着層を有する;セパレータの両面に接着層を有する;負 極の両面に接着層を有する;セパレータの負極側に接着層を有し、かつ正極の両面に接着層を有する;などの形態が採用できる。中でも、セパレータの両面に接着層を備えると、電池を生産しやすくなることから特に好ましい。
【0064】
接着層は、加熱することで接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在していると好ましい。接着性樹脂(C)を含有する接着層の場合は、電極体を加熱しながら押圧する工程(加熱プレス)を経ることでセパレータと電極とを一体化させることができる。接着性樹脂(C)の接着性が発現する最低温度は、セパレータにおける接着層以外の層で、シャットダウンが発現する温度よりも低い温度である必要があるが、具体的には、60℃以上120℃以下であることが好ましい。また、セパレータにおける接着層以外の層が、後述する樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)を含む場合、接着性樹脂(C)の接着性が発現する最低温度は、樹脂多孔質層(I)の主成分である樹脂(A)(詳しくは後述する)の融点よりも低い温度である必要がある。
【0065】
このような接着性樹脂(C)を使用することで、セパレータと正極および/または負極とを加熱プレスして一体化する際に、セパレータの劣化を良好に抑制することができる。
【0066】
接着性樹脂(C)の存在によって、電極体を構成する電極(例えば負極)とセパレータとの間の180°での剥離試験を実施した際に得られる剥離強度が、加熱プレス前の状態では、好ましくは0.05N/20mm以下、特に好ましくは0N/20mm(全く接着力のない状態)であり、60〜120℃の温度で加熱プレスした後の状態では0.2N/20mm以上となるディレードタック性を有していることが好ましい。
【0067】
ただし、前記剥離強度が強すぎると、電極の合剤層(正極合剤層および負極合剤層)が電極の集電体から剥離して、導電性が低下する虞がある事から、前記180°での剥離試験による剥離強度は、60〜120℃の温度で加熱プレスした後の状態で10N/20mm以下であることが好ましい。
【0068】
なお、本明細書でいう電極とセパレータとの間の180°での剥離強度は、以下の方法により測定される値である。セパレータおよび電極を、それぞれ長さ5cm×幅2cmのサイズに切り出し、切り出したセパレータと電極と重ねる。加熱プレスした後の状態の剥離強度を求める場合には、片端から2cm×2cmの領域を加熱プレスして試験片を作製する。この試験片のセパレータと電極とを加熱プレスしていない側の端部を開き、セパレータと負極とを、これらの角度が180°になるように折り曲げる。その後、引張試験機を用い、試験片の180°に開いたセパレータの片端側と電極の片端側とを把持して、引張速度10mm/minで引っ張り、セパレータと電極とを加熱プレスした領域で両者が剥離したときの強度を測定する。また、セパレータと電極との加熱プレス前の状態での剥離強度は、前記のように切り出した各セパレータと電極とを重ね、加熱をせずにプレスする以外は前記と同様に試験片を作製し、前記と同じ方法で剥離試験を行う。
【0069】
よって、接着性樹脂(C)は、室温(例えば25℃)では接着性(粘着性)が殆どなく、かつ接着性の発現する最低温度がセパレータのシャットダウンする温度未満、好ましくは60℃以上120℃以下といったディレードタック性を有するものが望ましい。なお、セパレータと電極とを一体化する際の加熱プレスの温度は、セパレータの熱収縮があまり顕著に生じない80℃以上100℃以下であることがより好ましく、接着性樹脂(C)の接着性が発現する最低温度も、80℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0070】
ディレードタック性を有する接着性樹脂(C)としては、室温では流動性が殆どなく、加熱時に流動性を発揮し、プレスによって密着する特性を有する樹脂が好ましい。また、室温で固体であり、加熱することによって溶融し、化学反応によって接着性が発揮される タイプの樹脂を接着性樹脂(C)として用いることもできる。
【0071】
接着性樹脂(C)は、融点、ガラス転移点などを指標とする軟化点が60℃以上120℃以下の範囲内にあるものが好ましい。接着性樹脂(C)の融点およびガラス転移点は、例えば、JIS K 7121に規定の方法によって、また、接着性樹脂(C)の軟化点は、例えば、JIS K 7206に規定の方法によって、それぞれ測定することができる。
【0072】
このような接着性樹脂(C)の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ−α−オレフィン〔ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1など〕、ポリアクリル酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂などが挙げられる。
【0073】
また、前記の各樹脂や、SBR、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム、エチレン−プロピレンゴムなどの室温で粘着性を示す樹脂をコアとし、融点や軟化点が60℃以上120℃以下の範囲内にある樹脂をシェルとしたコアシェル構造の樹脂を接着性樹脂(C)として用いることもできる。この場合、シェルには、各種アクリル樹脂やポリウレタンなどを用いることができる。更に、接着性樹脂(C)には、一液型のポリウレタンやエポキシ樹脂などで、60℃以上120℃以下の範囲内に接着性を示すものも用いることができる。
【0074】
接着性樹脂(C)には、前記例示の樹脂を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記のようなディレードタック性を有する接着性樹脂(C)の市販品としては、松村石油研究所製の「モレスコメルト エクセルピール(ポリエチレン、商品名)」、中央理化工業社製の「アクアテックス(EVA、商品名)」、日本ユニカー社製のEVA、東洋インキ社製の「ヒートマジック(EVA、商品名)」、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体、商品名)」、東亜合成社製の「アロンタックTT−1214(アクリル酸エステル、商品名)」、三井デュポンポリケミカル社製「ハイミラン(エチレン系アイオノマー樹脂、商品名)」などが挙げられる。
【0076】
なお、接着性樹脂(C)で構成される実質的に空孔を含有しない接着層を形成した場合には、セパレータと一体化した電極の表面に、電池の有する非水電解質が接触し難くなる虞があることから、正極、負極およびセパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面においては、接着性樹脂(C)の存在する箇所と、存在しない箇所とが形成されていることが好ましい。具体的には、例えば、接着性樹脂(C)の存在箇所と、存在しない箇所とが、溝状に交互に形成されていてもよく、また、平面視で円形などの接着性樹脂(C)の存在箇所が、不連続に複数形成されていてもよい。これらの場合、接着性樹脂(C)の存在箇所は、規則的に配置されていてもランダムに配置されていてもよい。
【0077】
なお、正極、負極およびセパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面においては、接着性樹脂(C)の存在する箇所と、存在しない箇所とを形成する場合、接着性樹脂(C)の存在面における接着性樹脂(C)の存在する箇所の面積(総面積)は、例えば、セパレータと電極とを加熱圧着した後のこれらの180°での剥離強度が、前記の値となるようにすればよく、使用する接着性樹脂(C)の種類に応じて変動し得るが、具体的には、平面視で、接着性樹脂(C)の存在面の面積のうち、10〜60%に、接着性樹脂(C)が存在していることが好ましい。
【0078】
また、接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けは、電極との接着を良好にして、例えば、セパレータと電極とを加圧接着した後のこれらの180°での剥離強度を前記の値に調整するには、0.05g/m以上とすることが好ましく、0.1g/m以上とすることがより好ましい。ただし、接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けが大きすぎると、電極体の厚みが大きくなりすぎたり、接着性樹脂(C)がセパレータの空孔を塞ぎ、電池内部でのイオンの移動が阻害されたりする虞がある。よって、接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けは、1g/m以下であることが好ましく、0.5g/m以下であることがより好ましい。
【0079】
〔セパレータ〕
本発明の正極を用いた非水電解質二次電池では、ポリエチレン製などポリオレフィンを主成分とするフィルム状のセパレータや、不織布など公知のセパレータを用いることができる。
【0080】
中でも、融点が100〜170℃の樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、150℃以下の温度で溶融しない樹脂または耐熱温度が150℃以上のフィラー(B)を主成分として含む耐熱多孔質層(II)とを有するセパレータの場合には、高温下におけるセパレータの熱収縮を防止することができるため好ましい。樹脂多孔質層(I)は、正極と負極の短絡を防止しつつ、イオンを透過するセパレータ本来の機能を有する層であり、耐熱多孔質層(II)は、セパレータに耐熱性を付与する役割を担う層である。
【0081】
樹脂多孔質層(I)は、融点が100℃以上170℃以下、すなわち、JIS K 7 121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100℃以上170℃以下の樹脂(A)を主成分としている。このような樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)を有するセパレータとすることで、これを用いた電池内が高温となった場合に、前記熱可塑性樹脂が溶融してセパレータの孔を塞ぐ、所謂シャットダウン機能を確保することができる。
【0082】
樹脂多孔質層(I)の主成分となる樹脂(A)は、融点が100℃以上170℃以下で、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後で詳述する非水電解質や、耐熱多孔質層(II)形成用の組成物に使用する媒体に安定な熱可塑性樹脂であれば特に制限は無いが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが好ましい。
【0083】
樹脂多孔質層(I)には、例えば、従来から知られているリチウム二次電池などの非水 電解質二次電池で使用されているポリオレフィン製の微多孔膜、すなわち、無機フィラーなどを混合したポリオレフィンを用いて形成したフィルムやシートに、一軸または二軸延伸を施して微細な空孔を形成したものなどを用いることができる。また、前記の樹脂(A)と、他の樹脂を混合してフィルムやシートとし、その後、前記他の樹脂のみを溶解する溶媒中に、これらフィルムやシートを浸漬して、前記他の樹脂のみを溶解させて空孔を形成したものを、樹脂多孔質層(I)として用いることもできる。
【0084】
なお、樹脂多孔質層(I)には、強度向上などを目的としてフィラーを含有させること もできる。このようなフィラーとしては、例えば、耐熱多孔質層(II)に使用されるフィラー(B)の具体例として後述する各種フィラーが挙げられる。
【0085】
なお、樹脂多孔質層(I)における「樹脂(A)を主成分とする」とは、樹脂(A)を、樹脂多孔質層(I)の構成成分の全体積中、70体積%以上含むことを意味している。 樹脂多孔質層(I)における樹脂(A)の量は、樹脂多孔質層(I)の構成成分の全体積中、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。
【0086】
耐熱多孔質層(II)は、150℃以下の温度で溶融しない樹脂または耐熱温度が150℃以上のフィラー(B)を主成分として含んでいる。
【0087】
融点が150℃以上の樹脂を耐熱多孔質層(II)が含む場合、例えば、150℃以下の温度で溶融しない樹脂で形成された微多孔膜(例えば、前述のPP製の電池用微多孔膜)を樹脂多孔質層(I)に積層させる形態や、150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子などを含む分散液を多孔質層(I)に塗布し、乾燥して多孔質層(I)の表面に多孔質層 (II)を形成する塗布積層型の形態が挙げられる。
【0088】
150℃以下の温度で溶融しない樹脂としては、PP;架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子微粒子;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンスルフィド;ポリテトラフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;アラミド;ポリアセタールなどが挙げられる。
【0089】
150℃以下の温度で溶融しない樹脂の粒子を使用する場合、その粒径は、平均粒子径で、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
【0090】
耐熱多孔質層(II)が、耐熱温度が150℃以上のフィラー(B)を含む場合、フィラー(B)としては、耐熱温度が150℃以上であり、電池内において電気化学的に安定で、電池内の非水電解質に対して安定であれば特に制限はない。なお、本明細書でいうフィラー(B)における「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において変形などの形状変化が目視で確認されないことを意味している。フィラー(B)の耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが更に好ましい。
【0091】
フィラー(B)は、電気絶縁性を有する無機微粒子であることが好ましく、具体的には、酸化鉄、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、TiO、BaTiOなどの無機酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;モンモリロナイトなどの粘土微粒子;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物微粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などの微粒子であってもよい。また、これらの無機微粒子を構成する無機化合物は、必要に応じて、元素置換されていたり、固溶体化されていたりしてもよく、更に前記の無機微粒子は表面処理が施されていてもよい。また、無機微粒子は、金属、SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。
【0092】
フィラー(B)には、有機微粒子を用いることもできる。有機微粒子の具体例としては、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、架橋ポリメチルメタクリレート(架橋PMMA)、架橋ポリスチレン(架橋PS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ベ ンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子の微粒子;熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子の微粒子;が挙げられる。これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
【0093】
フィラー(B)は、前記例示のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、前記例示の各種フィラーの中でも無機酸化物微粒子が好ましく、より具体的には、アルミナ、シリカ、ベーマイトより選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0094】
フィラー(B)の粒径は、平均粒子径で、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは1μm以下である。
【0095】
フィラー(B)の形状としては、例えば、球状に近い形状であってもよく、板状であってもよいが、短絡防止の点からは、板状の粒子であることが好ましい。板状粒子の代表的なものとしては、板状のAl2O3や板状のベーマイトなどが挙げられる。
【0096】
また、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)を用いた非水電解質二次電池において、高出力の特性を必要とする場合には、フィラー(B)には、一次粒子が凝集した二次粒子構造のフィラーを用いることが好ましい。房状のフィラーを用いることで、耐熱多孔質層(II)の空隙を大きくすることが可能となり、高い出力特性の電池を形成することができる。
【0097】
耐熱多孔質層(II)の「主成分として含む」とは、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、70体積%以上含むことを意味している。耐熱多孔質層(II)におけるフィラー(B)の量は、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。耐熱多孔質層(II)中のフィラー(B)を前記のように高含有量とすることで、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制して、高い耐熱性を付与することができる。
【0098】
また、耐熱多孔質層(II)には、フィラー(B)同士を結着したり耐熱多孔質層(II)と樹脂多孔質層(I)とを結着したりするために有機バインダを含有させることが好まし く、このような観点から、耐熱多孔質層(II)におけるフィラー(B)量の好適上限値は、例えば、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、99体積%である。なお、耐熱多孔質層(II)におけるフィラー(B)の量を70体積%未満とすると、例えば、耐熱多孔質層中(II)の有機バインダ量を多くする必要が生じるが、その場合には耐熱多孔質層(II)の空孔が有機バインダによって埋められてしまい、例えばセパレータとしての機能を喪失する虞がある。
【0099】
耐熱多孔質層(II)に用いる有機バインダとしては、フィラー(B)同士や耐熱多孔質層(II)と樹脂多孔質層(I)とを良好に接着でき、電気化学的に安定で、かつ電気化学 素子用の非水電解液に対して安定であれば特に制限はない。具体的には、フッ素樹脂[ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など]、フッ素系ゴム、SBR、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの有機バインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。
【0100】
なお、これら有機バインダを使用する場合には、後記する耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(スラリーなど)の媒体に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
【0101】
耐熱多孔質層(II)の空孔率は、非水電解質二次電池の有する非水電解質の保持量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。一方、強度の確保と内部短絡の防止の観点から、耐熱多孔質層(II)の空孔率は、乾燥した状態で、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0102】
セパレータは、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)とを、それぞれ1層ずつ有し ていてもよく、複数有していてもよい。具体的には、樹脂多孔質層(I)の片面にのみ耐 熱多孔質層(II)を配置してセパレータとする他、例えば、樹脂多孔質層(I)の両面に多孔質層(II)を配置してセパレータとしてもよい。ただし、セパレータの有する層数が多くなりすぎると、セパレータの厚みを増やして電気化学素子の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので好ましくなく、セパレータ中の層数は5層以下であることが好ましい。
【0103】
本発明におけるセパレータは、例えば、樹脂多孔質層(I)に、フィラー(B)などを含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物(スラリーなどの液状組成物など)を塗布した後、所定の温度で乾燥し、その後接着性樹脂(C)を含む溶液、エマルジョンなどを塗布してから所定の温度で乾燥して、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)とを有するセ パレータの表面に接着性樹脂(C)を存在させる方法により製造することができる。
【0104】
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、フィラー(B)の他、有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、有機バインダについては溶媒に溶解させることもできる。耐熱多孔質層(II)形成用組成物に用いられる溶媒は、フィラー(B)などを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般に有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
【0105】
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、フィラー(B)および有機バインダを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
【0106】
前記のようにして形成した樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物に、接 着性樹脂(C)を含有する溶液、エマルジョンなどを塗布して、接着層を形成し、セパレータを製造することができる。なお、この場合、前記の通り、耐熱多孔質層(II)は樹脂多孔質層(I)の片面または両面に形成することができ、また、接着性樹脂(C)は、樹 脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物の片面または両面に存在させることが できる。
【0107】
中でも第1の接着層、樹脂多孔質層(I)、耐熱多孔質層(II)、第2の接着層の順に積層されているものが好ましい。この構成であると、正極側にも負極側に接着層が存在す るため、特に電極体が扁平状巻回電極体に、その充放電に伴う形状変化をより抑制し、当初の厚みを維持することができるためである。
【0108】
また、フィラー(B)などの構成物の持つ作用をより有効に発揮させるために、前記構成物を偏在させて、セパレータの膜面と平行または略平行に、前記構成物が層状に集まった形態としてもよい。
【0109】
なお、セパレータの製造方法は、前記の方法に限定される訳ではなく、他の方法によって製造してもよい。例えば、前記の耐熱多孔質層(II)形成用組成物を、ライナーのような基材表面に塗布し、乾燥して耐熱多孔質層(II)を形成した後、基材から剥離し、この耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)となる微多孔膜などと重ねて熱プレスなどによ り一体化して積層物とし、その後、この積層物の片面または両面に前記と同様にして接着性樹脂(C)を存在させる方法でセパレータを製造することもできる。
【0110】
このようにして製造されるセパレータの厚みは、正極と負極とをより確実に隔離する観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。他方、セパレータが厚すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまうことがあるため、その厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0111】
更に、樹脂多孔質層(I)の厚み〔樹脂多孔質層(I)が複数存在する場合には、その総厚み。〕は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、耐熱多孔質層(II)の厚み[耐熱多孔質層(II)が複数存在する場合には、その総厚み。]は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが更に好ましく、また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることが更に好ましい。樹脂多孔質層(I)が薄すぎると、シャットダウン特性が弱くなる虞があり、厚すぎると、電 池のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える効果が小さくなる虞がある。また、耐熱多孔質層(II)が薄すぎると、セパレータ全体の熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞があり、厚すぎると、セパレータ全体の厚みの増大を引き起こしてしまう。
【0112】
セパレータ全体の空孔率としては、非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にする観点から、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。
【0113】
また、本発明のセパレータは、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、30〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。
【0114】
本発明の正極を用いた非水電解質二次電池では、前記の通り、前記の正極と前記の負極とを、前記のセパレータを介して重ね合わせて渦巻状に巻回し、押しつぶすなどして横断面を扁平状にし、その後熱プレス工程を経て作製した扁平状巻回電極体を使用することができる。そして、前記の扁平状巻回電極体などの電極体を、非水電解質と共に外装体内に封入して、本発明の非水電解質二次電池を形成することができる。
【0115】
〔非水電解質〕
非水電解質としては、例えば、下記の非水系溶媒中に、リチウム塩を溶解させることで調製した溶液(非水電解液)が使用できる。
【0116】
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を1種単独で、または2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
【0117】
非水電解液に係るリチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などのリチウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.6〜1.8mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.6mol/lとすることがより好ましい。
【0118】
非水電解質二次電池に使用する非水電解質には、充放電サイクル特性の更なる改善や、高温貯蔵性や過充電防止などの安全性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、無水酸、スルホン酸エステル、ジニトリル、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤(これらの誘導体も含む)を適宜加えることもできる。
【0119】
更に、非水電解質二次電池の非水電解質には、前記の非水電解液に、ポリマーなどの公知のゲル化剤を添加してゲル化したもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
【0120】
〔非水電解質二次電池〕
本発明の非水電解質二次電池の形態については、特に制限はない。例えば、小型の円筒型、コイン形、ボタン形、扁平形、角形、電気自動車などに用いる大型のものなど、いずれであってもよい。
【0121】
なお、一般にこれらの形態に電池を組み立てた後に活性化工程を経てから非水電解質二次電池は出荷可能な状態となる。この活性化工程とは主に初回充電工程やエージング工程などを含む。この活性化工程を経ると非水電解質を吸収したりLiイオンの移動を経たりして、正極合剤層と負極合剤層の密度が下がる傾向にある。一般的に、正極合剤層では3〜10%ほど、負極合剤層では10〜20%ほど密度が下がる。
【0122】
後述する実施例1においては、電極製作時には例えば正極合剤層の密度が3.95g/cmであったが、電池に組み立てて充放電を10サイクル行った後に取り出し、正極合剤層の密度を測定すると、電極製作時よりも低下し3.77g/cmとなった。
【0123】
また、後述する実施例1においては、充放電10サイクル後に取り出した正極について、単位体積当たりの正極合剤層の容量密度(正極合剤層のエネルギー密度)2.71Wh/cmとなった。
【0124】
つまり、電極製作時の正極合剤層の密度が3.95g/cm以上の場合、充放電10サイクル後の電池における正極合剤層の密度が3.7g/cm以上となる。また、このとき正極合剤層のエネルギー密度が2.7Wh/cm以上となる。
【0125】
本発明の非水電解質二次電池は、従来の非水電解質二次電池と同様に、充電時の終止電圧を4.2V程度に設定して使用することも可能であるが、これより高い4.3V以上を終止電圧とする充電を行う方法で使用してもよく、このような方法で充電し高温下で使用しても、良好な充放電サイクル特性と貯蔵特性とを発揮できる。ただし、非水電解質二次電池の充電時の終止電圧は4.6V以下であることが好ましい。
【0126】
本発明の非水電解質二次電池は、従来から知られている非水電解質二次電池と同様の用途に適用することができる。本発明によると、正極合剤層の密度が高いため、高容量で体積当たりのエネルギー密度を向上させることができる。そのため、特に限られた体積に対して高容量が求められるような機器、例えばモバイル機器や小型機器、多数の電池を直列に組み合わせたロボット用途などにおいて、特に効果を発揮する。
【実施例】
【0127】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0128】
(実施例1)
<正極の作製>
LiCoOの平均粒子径5μmのものと27μmのものとを、15:85の割合(質量比)で混合して正極作製用の正極活物質を得た。この正極活物質96質量部と、バインダであるPVDFを10質量%の濃度で含むNMP溶液20質量部と、導電助剤である人造黒鉛1質量部およびケッチェンブラック1質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。
【0129】
前記正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に27.7mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを115℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.96g/cm、片面あたりの厚みが70μmであった。
【0130】
<負極の作製>
負極活物質であるMCMB(平均粒子径20μm)と、天然黒鉛(平均粒子径20μm)とを、6:4の質量比で混合した混合物:97.5質量部と、バインダであるSBR:1.5質量部と、増粘剤であるCMC:1質量部とに、水を加えて混合し、負極合剤含有ペーストを調製した。
【0131】
前記負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面および一部片面に負極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行って、負極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、銅箔の露出部にニッケル製の負極集電タブを溶接して、長さ990mm、幅55mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、密度が1.65g/cm、片面あたりの厚みが86μmであった。
【0132】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比3:7の混合溶媒に、LiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させ、ビニレンカーボネート2質量%とフルオロエチレンカーボネート2質量%を、それぞれ添加して非水電解質を調製した。
【0133】
<セパレータの作製>
平均粒子径d50が1μmのベーマイト5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液を120℃で真空乾燥し、SEMで観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。
【0134】
前記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダーディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、スリーワンモーターで3時間攪拌して均一なスラリー〔耐熱多孔質層(II)形成用スラリー、固形分比率50質量%〕を調製した。
【0135】
非水電解質二次電池用PE製微多孔質セパレータ〔樹脂多孔質層(I):厚み18μm 、空孔率40%、平均孔径0.08μm、PEの融点135℃〕の片面にコロナ放電処理(放電量40W・min/m)を施し、この処理面に耐熱多孔質層(II)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが4μmの耐熱多孔質層(II)を形成して、積層型のセパレータを得た。このセパレータにおける耐熱多孔質層(II)の単位面積あたりの質量は5.5g/mで、ベーマイトの体積含有率は95体積%であり、空孔率は45%であった。
【0136】
<電池の組み立て>
前記帯状の正極と前記帯状の負極とを、前記積層型セパレータを、耐熱多孔質層(II)が正極側となるように介在させつつ重ね、渦巻状に巻回した後、横断面が扁平状になるように加圧して扁平状巻回電極体とし、この巻回電極体をポリプロピレン製の絶縁テープで固定した。次に、アルミニウム合金製の角形の電池ケースに前記巻回電極体を挿入し、リード体の溶接を行うと共に、アルミニウム合金製の蓋板を電池ケースの開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けた注入口から前記非水電解液を注入し、1時間静置した後注入口を封止して、図1に示す構造で、図2に示す外観の非水電解質二次電池を作製した。
【0137】
前記の非水電解質二次電池を、図1および図2を用いて説明する。図1はその部分断面図であって、正極1と負極2はセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回電極体6として、角形(角筒形)の電池ケース4に非水電解液と共に収容されている。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や非水電解液などは図示していない。
【0138】
電池ケース4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この外装缶4は正極端子を兼ねている。そして、電池ケース4の底部にはPEシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、電池ケース4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはPP製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
【0139】
そして、この蓋板9は電池ケース4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池ケース4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
【0140】
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって電池ケース4と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池ケース4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
【0141】
図2は前記図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図1では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。また、セパレータについても、各層を区別して示していない。
【0142】
(実施例2)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、27.7mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを115℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.02g/cm、片面あたりの厚みが69μmであった。
【0143】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0144】
(実施例3)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、27.5mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを115℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、正極のアルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.11g/cm、片面あたりの厚みが67μmであった。
【0145】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0146】
(実施例4)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウ ム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを100℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.96g/cm、片面あたりの厚みが70μmであった。
【0147】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0148】
(実施例5)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを100℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.02g/cm、片面あたりの厚みが69μmであった。
【0149】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0150】
(実施例6)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを100℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.11g/cm、片面あたりの厚みが67μmであった。
【0151】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0152】
(実施例7)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを90℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.96g/cm、片面あたりの厚みが70μmであった。
【0153】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0154】
(実施例8)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを90℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミにウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.02g/cm、片面あたりの厚みが69μmであった。
【0155】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0156】
(実施例9)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを90℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.11g/cm、片面あたりの厚みが67μmであった。
【0157】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0158】
(実施例10)
<セパレータの作製>
板状ベーマイト(平均粒子径1μm、アスペクト比10)5kgに、イオン交換水5kgと、分散剤(水系ポリカルボン酸アンモニウム塩、固形分濃度40質量%)0.5kgとを加え、内容積20L、転回数40回/分のボールミルで10時間解砕処理をして分散液を調製した。処理後の分散液の一部を120℃で真空乾燥し、SEMで観察したところ、ベーマイトの形状はほぼ板状であった。また、処理後のベーマイトの平均粒子径は1μmであった。
【0159】
上記分散液500gに、増粘剤としてキサンタンガムを0.5g、バインダとして樹脂バインダーディスパージョン(変性ポリブチルアクリレート、固形分含量45質量%)を17g加え、スリーワンモーターで3時間攪拌して均一な耐熱多孔質層(II)形成用スラリー(固形分比率50質量%)を調製した。
【0160】
樹脂多孔質層(I)であるPE製の微多孔膜(厚み10μm、空孔率40%、平均孔径 0.08μm、PEの融点135℃)の片面にコロナ放電処理(放電量40W・分/m)を施し、この処理面に上記耐熱多孔質層(II)形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して厚みが2μmの耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)の片面に形成した。
【0161】
次に、接着性樹脂(C)としてディレードタック型の接着性樹脂であるアクリル酸(固形分比率20質量%含有)を、前記積層物における樹脂多孔質層(I)側および耐熱多孔 質層(II)の両面に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、乾燥して、接着性樹脂(C)が両面に存在するセパレータ(厚み22μm)を得た。なお、このセパレータの、接着性樹脂(C)の存在面における接着性樹脂(C)の存在箇所の総面積は、セパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面の面積の30%であり、接着性樹脂(C)の目付けは、0.5g/mであった。
【0162】
<電池の組み立て>
前記のようにして得たセパレータを、実施例1と同様にして作製した正極と実施例1と同様にして作製した負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして横断面を扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施して扁平状巻回電極体を作製した。
【0163】
そして、この扁平状巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0164】
(実施例11)
実施例10と同様にして作製したセパレータを用いて、実施例2と同様にして作製した正極と実施例1と同様にして作製した負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施して扁平状巻回電極体を作製した。
【0165】
そして、この扁平状巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0166】
(実施例12)
実施例10と同様にして作製したセパレータを用いて、実施例3と同様にして作製した正極と実施例1と同様にして作製した負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施して扁平状巻回電極体を作製した。
【0167】
そして、この扁平状巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0168】
(比較例1)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを120℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、正極のアルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.96g/cm、片面あたりの厚みが70μmであった。
【0169】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0170】
(比較例2)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを125℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.95g/cm、片面あたりの厚みが70μmであった。
【0171】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0172】
(比較例3)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを125℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.02g/cm、片面あたりの厚みが69μmであった。
【0173】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0174】
(比較例4)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを125℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミにウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が4.11g/cm、片面あたりの厚みが67μmであった。
【0175】
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0176】
(比較例5)
実施例10と同様にして作製したセパレータを用いて、比較例2と同様にして作製した正極と実施例1と同様にして作製した負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極を押しつぶして扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施して扁平状巻回電極体を作製した。
【0177】
そして、この扁平状巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次 電池を作製した。
【0178】
(比較例6)
実施例10と同様にして作製したセパレータを用いて、比較例3と同様にして作製した正極と実施例1と同様にして作製した負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施して扁平状巻回電極体を作製した。
【0179】
そして、この扁平状巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0180】
(比較例7)
実施例10と同様にして作製したセパレータを用いて、比較例4と同様にして作製した正極と実施例1と同様にして作製した負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施して扁平状巻回電極体を作製した。
【0181】
そして、この扁平状巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0182】
(実施例13)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、25.0mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを115℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1100mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度は、3.96g/cm、片面あたりの厚みが63μmであった。
【0183】
また、実施例1と同様にして調製した負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面および一部片面に負極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行って、負極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、銅箔の露出部にニッケル製の負極集電タブを溶接して、長さ1090mm、幅55mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、密度が1.65g/cm、片面あたりの厚みが81μmであった。
【0184】
そして、前記の正極と前記の負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0185】
(実施例14)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、22.9mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを115℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1200mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.96g
/cm、片面あたりの厚みが58μmであった。
【0186】
また、実施例1と同様にして調製した負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面および一部片面に負極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行って、負極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、銅箔の露出部にニッケル製の負極集電タブを溶接して、長さ1190mm、幅55mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、密度が1.65g/cm、片面あたりの厚みが74μmであった。
【0187】
そして、前記の正極と前記の負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0188】
(比較例8)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、25.0mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを125℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1100mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.96g/cm、片面あたりの厚みが63μmであった。
【0189】
また、実施例1と同様にして調製した負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面および一部片面に負極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行って、負極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、銅箔の露出部にニッケル製の負極集電タブを溶接して、長さ1090mm、幅55mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、密度が1.65g/cm、片面あたりの厚みが81μmであった。
【0190】
そして、前記の正極と前記の負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0191】
(比較例9)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、27.7mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーの乾燥炉上流側のドライヤーを125℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1000mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.8g/cm、片面あたりの厚みが73μmであった。この時の正極合剤含有ペーストの塗布量はであった。
【0192】
そして、この正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0193】
(参考例1)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、21.2mg/cmの塗布量で塗布した後、2基の ドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを125℃に設定し、下流側のドライヤーを115℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1300mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度は、3.8g/cm、片面あたりの厚みが56μmであった。
【0194】
また、実施例1と同様にして調製した負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面および一部片面に負極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行って、負極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、銅箔の露出部にニッケル製の負極集電タブを溶接して、長さ1290mm、幅55mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、密度が1.65g/cm、片面あたりの厚みが68μmであった。
【0195】
そして、前記の正極と前記の負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0196】
(参考例2)
実施例1と同様にして調製した正極合剤含有ペーストを、厚みが12μmのアルミニウム箔(正極集電体)の一方の面に、21.2mg/cmの塗布量で塗布した後、2基のドライヤーを有する乾燥炉を使用し、上流側のドライヤーを125℃に設定し、下流側のドライヤーを125℃に設定し、乾燥して正極合剤層を形成した。もう一方の面においても同様にして、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダ処理を行い、その条件を調整することで、正極合剤層の厚さおよび密度を調節した。そして、アルミニウム箔露出部にアルミニウム製の正極集電タブを溶接し、長さ1300mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、密度が3.8g/cm、片面あたりの厚みが56μmであった。
【0197】
そして、前記の正極と、参考例2で作製したものと同じ負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0198】
なお、比較例9は、電池の電流密度が高いと、正極合剤層の密度が低くても正極の折り曲げ強度が劣ることを示す例であり、参考例1、2は、電池の電流密度が低いと、a/bの値に関わりなく正極の折り曲げ強度が高いことを示す例である。
【0199】
実施例、比較例および参考例の非水電解質二次電池、およびこれらに係る正極について、下記の各評価を行った。
【0200】
<正極の折り曲げ強度>
実施例、比較例および参考例の各非水電解質二次電池を分解して正極を取り出し、集電体の両面に正極合剤層を形成した部分を長尺方向に5cm、幅方向に4cmに切り出して試験片とし、この試験片長尺側の末端から15mmの位置を巻回電極体作製時の折り曲げる方向と同じ向きに折り曲げた。試験片の折り曲げた箇所に200gfの荷重を均一に加えた後に開いた試験片の両端を、引張試験機(今田製作所社製「SDT−52型」)の治具で挟んでセットし、クロスヘッド速度50mm/分で引張試験を行って、試験片の折り曲げ箇所が破断したときの強度(N)を電極片幅である4(cm)で除し、折り曲げ強度(N/cm)とした。この折り曲げ強度が大きいほど、非水電解質二次電池内での扁平状巻回電極体における正極集電体の破れを良好に抑制できていることから、非水電解質二次電池の生産性および信頼性がより良好であると評価できる。これらの試験結果を表1およ び表3に示す。
【0201】
<a/bの評価>
実施例、比較例および参考例の各非水電解質二次電池を分解し、巻回電極体の正極について、内面側の正極合剤層の長手方向中央の断面を分析対象とした。正極断面はイオンミリング処理を施して、面出しを行った。それにより得られた正極の試料について、SEM(日立製作所製「S−3400N」)で観察し、EDX(エダックス・ジャパン社)で各元素を検出して、バインダ由来の元素の元素マッピングを行った。
【0202】
SEMでの観察条件は、加速電圧15kV、倍率1000倍 512×400画素、単位面積当たりの滞在時間200μsecであった。C(炭素)およびF(フッ素)を選択し、長尺な正極の端部2カ所および中央部1か所の3点で観察し、それぞれの箇所でa/bを得て、その平均値を求めた。これらの評価結果を表1〜表3に示す。
【0203】
<破断発生率>
実施例1〜3、10〜12および比較例2〜4、5〜7の非水電解質二次電池をそれぞれ5個ずつ作製した。これらの電池から扁平状巻回電極体を取り出して分解し、正極の最内周部分の折り曲がった部分を中心にして電極の長尺方向に5cm×幅4cmに切り出し、折り曲がった部分を再度折り曲げて切り出した正極を半分に畳み、畳んだ状態の面に均一に10Nで3秒間加重後、畳んだ正極を開き、折り曲げ部の観察を行った。観察では、折り曲げ線の凸部を観察し、正極の切断の有無を確認した。
【0204】
折り曲げ試験は、一つの電池から取り出した正極からそれぞれ2サンプル切り出して行った。つまり、一つの実施例(又は比較例)において10サンプルずつである。10サンプル中で正極の切断が確認された数を表2に示す。
【0205】
<10サイクル後の正極合剤層の密度>
実施例、比較例および参考例の各非水電解質二次電池を室温で4.40Vまで1.0Cの定電流で充電を行い、4.40Vに達した後は、電流が0.05Cに到達するまで4.40Vで定電圧充電を行った。その後の各電池について、1.0Cの定電流で、電圧が3.0Vに到達するまで放電を行った。これらの充電および放電の一連の操作を1サイクルとして、10サイクル充放電を行った。なお、1.0Cの電流値とは、定格容量を1時間で放電できる電流値である。
【0206】
その後、各電池を解体し、正極のみを取り出して、DECで洗浄し乾燥させた。乾燥させた正極を所定面積で切り取り、その重量を、最小目盛り1mgの電子天秤を用いて測定し、この重量から集電体の重量を差し引いて10サイクル後の正極合剤層の重量を算出した。また、10サイクル後の正極の全厚を最小目盛り1μmのマイクロメーターで10点測定し、この厚みから集電体の厚みを差し引いた値の平均値と面積から10サイクル後の正極合剤層の体積を算出し、この体積で上記の正極合剤層の重量を割ることにより、10サイクル後の正極合剤層の密度を算出した。それらの結果を表1〜表3に示す。
【0207】
<正極合剤層のエネルギー密度>
10サイクル後の正極合剤層の密度の測定時と同じ条件で10サイクルの充放電を行った実施例、比較例および参考例の各非水電解質二次電池を解体して取り出した正極を、片面に正極合剤層がある部分から2cm切り出し、マイクロメーターで厚みを測定し、正極集電体を除く正極合剤層のみの体積を求めた。対極にリチウムを使用し、実施例1の電池で使用したものと同様の非水電解液を用いてモデルセルを作製した。各モデルセルについて、0.05Cで4.50Vまで定電圧充電を行い、4.50Vに達した後は、電流が0.005Cに到達するまで4.50Vで定電圧充電を行った。その後、各モデルセルに ついて、0.05Cの定電流で2.5Vに到達するまで放電を行い、その時の放電容量を求め、放電電力(放電容量×作動電圧)を算出した。そして、得られた放電電力を正極合剤層のみの体積で除して、正極合剤層のエネルギー密度(Wh/cm)を求めた。得られた正極合剤層のエネルギー密度を表1〜表3に示す。
【0208】
<電流密度>
実施例、比較例および参考例の各非水電解質二次電池から正極を取り出し、定規を用いて正極の総面積を測定した。そして、各電池の前記1.0Cの電流値(mA)を正極の総面積(cm)で除して、電流密度(mA/cm)を求めた。得られた電流密度を表1〜表3に示す。
【0209】
【表1】
【0210】
【表2】
【0211】
【表3】
【符号の説明】
【0212】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
図1
図2