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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-167573(P2020-167573A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】車両のネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20200911BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   H04L12/28 203
   B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-67751(P2019-67751)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】関 晃一
(72)【発明者】
【氏名】シム チユイチユアン
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 宏典
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】永田 将
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA02
5K033BA06
5K033BA13
5K033CB13
5K033CB17
5K033DA05
(57)【要約】
【課題】車両において、汎用的な規格に則った通信を用いながら、車両に設けられる複数の制御装置の処理を早期に終了できるようにする。
【解決手段】自動車1のネットワークシステム10は、自動車1のネットワーク13を通じてデータを送受する複数の制御装置12と、ネットワーク13に接続され、外部装置2と通信するマスタ装置11と、を有する。マスタ装置11は、少なくともネットワーク13に接続されている複数の制御装置12とデータを送受する車内通信部31と、ネットワーク13に接続される複数の制御装置12の処理能力を記録可能なメモリ33と、外部装置2の要求に係る処理データを、車内通信部31からネットワーク13を通じて複数の制御装置12へ個別に出力する制御部32と、を有する。制御部32は、複数の制御装置12への個別の処理指示を、メモリ33に記録されている処理能力にしたがう順番で指示する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるネットワークを通じてデータを送受する複数の制御装置と、
前記ネットワークに接続され、外部装置と通信するマスタ装置と、
を有し、
前記ネットワークに接続される前記マスタ装置は、
前記ネットワークに接続され、少なくとも前記ネットワークに接続されている複数の前記制御装置とデータを送受する車内通信部と、
前記ネットワークに接続される複数の前記制御装置の処理能力を記録可能なメモリと、
前記外部装置の要求に係る処理データを、前記車内通信部から前記ネットワークを通じて複数の前記制御装置へ個別に出力する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
複数の前記制御装置への個別の処理指示を、前記メモリに記録されている前記処理能力にしたがう順番で指示する、
車両のネットワークシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記メモリに記録されている前記処理能力において処理能力が低いものを、高いものより先に個別の書込を指示する、
請求項1記載の、車両のネットワークシステム。
【請求項3】
前記制御部は、先に指示した前記制御装置の処理の完了を待つことなく、次の制御装置へ処理を指示する、
請求項1または2記載の、車両のネットワークシステム。
【請求項4】
前記マスタ装置は、前記外部装置から、複数の前記制御装置に共通の処理データとして書込データの登録を要求され、
前記制御部は、
前記外部装置の要求に係る、複数の前記制御装置に共通する前記書込データの個別の登録を、前記メモリに記録されている前記処理能力にしたがう順番で指示する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両のネットワークシステム。
【請求項5】
複数の前記制御装置は、演算および書込を含む共通処理を実行し、
前記制御部は、
複数の前記制御装置のそれぞれによる共通処理の実行時間を計測するタイマ、を有し、
前記タイマにより計測される時間を、複数の前記制御装置のそれぞれの処理能力として前記メモリへ記録する、
請求項1から4のいずれか一項記載の、車両のネットワークシステム。
【請求項6】
複数の前記制御装置は、前記車両または前記ネットワークが起動されることに基づいて前記共通処理を実行する、
請求項5記載の、車両のネットワークシステム。
【請求項7】
複数の前記制御装置は、前記処理データの処理結果を、複数の前記制御装置および前記マスタ装置の間での定期通信により、前記マスタ装置へ送信し、
前記マスタ装置の前記制御部は、前記定期通信から、前記処理データの処理結果を取得して前記メモリに記録する、
請求項1から6のいずれか一項記載の、車両のネットワークシステム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記外部装置から複数の制御装置の処理結果の取得が要求された場合、前記メモリに集計されている複数の前記制御装置の処理結果を応答する、
請求項7記載の、車両のネットワークシステム。
【請求項9】
前記マスタ装置および複数の前記制御装置は、前記車両の前記ネットワークを通じて、CAN通信またはLIN通信による定期通信と、ダイアグノーシス用の不定期通信とを、同時並列的に実行可能であり、
前記マスタ装置の前記制御部は、
前記外部装置の要求に基づいて、前記不定期通信により、処理データの処理について複数の前記制御装置へ個別に指示し、
複数の前記制御装置のそれぞれは、
処理データの処理の結果を、前記定期通信により、前記マスタ装置へ送信する、
請求項1から8のいずれか一項記載の、車両のネットワークシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、エンジンなどの走行機器を制御する制御装置、空調機器の制御装置、エンターテイメントのための制御装置、その他の多数の制御装置が用いられる。
複数の制御装置は、物理的にハーネスによって接続されており、ハーネスを通してネットワークシステムが構成され、車両に設けられるネットワークとしての所謂ハーネスにより、相互にデータ通信可能に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−121220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両のネットワークシステムでは、多数の制御装置の故障を診断したり、データやプログラムを更新したりするために外部装置が接続可能とされている。
外部装置とネットワークシステムの制御装置との通信には、ISO(International Organization for Standardization)で規定されているダイアグノーシス用の通信規格がある。このダイアグノーシス用の通信規格に準拠する場合、外部装置は、直接的にはたとえばセントラルゲートウェイと通信する。セントラルゲートウェイは、外部装置からの要求があると、アドホック的に、その要求に係るデータ通信を、その要求に係る制御装置との間で実行する。たとえば、セントラルゲートウェイは、外部装置から登録が要求された書込データを制御装置へ送信する。制御装置は、受信した書込データについての所定の演算処理を実行し、自身のメモリに書込む。これにより、制御装置での書込データの登録処理が実行される。ダイアグノーシス用の通信規格に準拠する場合、外部装置またはセントラルゲートウェイは、たとえばその登録処理が複数の制御装置において共通するものであったとしても、制御装置での登録処理の要求または指示を、制御装置ごとに順番に繰り返すことになる。また、外部装置またはセントラルゲートウェイは、1つの制御装置での処理が完了することを確認して、次の制御装置へ登録処理の要求または指示を出力することになる。
【0005】
しかしながら、このように外部装置またはセントラルゲートウェイが複数の制御装置に対して制御装置ごとに順番に処理を要求または指示する場合、複数の制御装置のすべてでの処理を開始してから終了するまでには、膨大な処理時間が必要になる。
そこで、特許文献1にあるように、外部装置またはセントラルゲートウェイは、複数の制御装置に対して同報的に一斉書込み要求を送信することが考えられる。
しかしながら、このような同報的な一斉書込み要求は、上述した通信規格において標準化されているものではない。その結果、車両に用いられている制御装置は、この一斉書込み要求に基づいて、要求された処理を実行することができない可能性がある。
【0006】
このように、車両では、汎用的な規格に則った通信を用いながら、車両に設けられる複数の制御装置の処理を早期に終了できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両のネットワークシステムは、車両に設けられるネットワークを通じてデータを送受する複数の制御装置と、前記ネットワークに接続され、外部装置と通信するマスタ装置と、を有し、前記ネットワークに接続される前記マスタ装置は、前記ネットワークに接続され、少なくとも前記ネットワークに接続されている複数の前記制御装置とデータを送受する車内通信部と、前記ネットワークに接続される複数の前記制御装置の処理能力を記録可能なメモリと、前記外部装置の要求に係る処理データを、前記車内通信部から前記ネットワークを通じて複数の前記制御装置へ個別に出力する制御部と、を有し、前記制御部は、複数の前記制御装置への個別の処理指示を、前記メモリに記録されている前記処理能力にしたがう順番で指示する。
【0008】
好適には、前記制御部は、前記メモリに記録されている前記処理能力において処理能力が低いものを、高いものより先に個別の書込を指示する、とよい。
【0009】
好適には、前記制御部は、先に指示した前記制御装置の処理の完了を待つことなく、次の制御装置へ処理を指示する、とよい。
【0010】
好適には、前記マスタ装置は、前記外部装置から、複数の前記制御装置に共通の処理データとして書込データの登録を要求され、前記制御部は、前記外部装置の要求に係る、複数の前記制御装置に共通する前記書込データの個別の登録を、前記メモリに記録されている前記処理能力にしたがう順番で指示する、とよい。
【0011】
好適には、複数の前記制御装置は、演算および書込を含む共通処理を実行し、前記制御部は、複数の前記制御装置のそれぞれによる共通処理の実行時間を計測するタイマ、を有し、前記タイマにより計測される時間を、複数の前記制御装置のそれぞれの処理能力として前記メモリへ記録する、とよい。
【0012】
好適には、複数の前記制御装置は、前記車両または前記ネットワークが起動されることに基づいて前記共通処理を実行する、とよい。
【0013】
好適には、複数の前記制御装置は、前記処理データの処理結果を、複数の前記制御装置および前記マスタ装置の間での定期通信により、前記マスタ装置へ送信し、前記マスタ装置の前記制御部は、前記定期通信から、前記処理データの処理結果を取得して前記メモリに記録する、とよい。
【0014】
好適には、前記制御部は、前記外部装置から複数の制御装置の処理結果の取得が要求された場合、前記メモリに集計されている複数の前記制御装置の処理結果を応答する、とよい。
【0015】
好適には、前記マスタ装置および複数の前記制御装置は、前記車両の前記ネットワークを通じて、CAN通信またはLIN通信による定期通信と、ダイアグノーシス用の不定期通信とを、同時並列的に実行可能であり、前記マスタ装置の前記制御部は、前記外部装置の要求に基づいて、前記不定期通信により、処理データの処理について複数の前記制御装置へ個別に指示し、複数の前記制御装置のそれぞれは、処理データの処理の結果を、前記定期通信により、前記マスタ装置へ送信する、とよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ネットワークに接続されるマスタ装置のメモリに、ネットワークに接続される複数の制御装置についての処理能力を記録する。そして、マスタ装置において、制御部は、外部装置の要求に係る処理データを、車内通信部からネットワークを通じて複数の制御装置へ個別に出力する。この際、制御部は、複数の制御装置への個別の処理指示を、メモリに記録されている処理能力にしたがう順番で指示する。たとえば、制御部は、メモリに記録されている処理能力において処理能力が低いものを、高いものより先に個別の書込を指示する。よって、処理能力が低い制御装置は、処理能力が高い制御装置よりも先に、処理データを取得して処理を早期に開始することができる。この他にもたとえば、制御部は、先に指示した制御装置の処理の完了を待つことなく、次の制御装置へ処理を指示する。制御部は、1つ1つの制御装置の処理の完了を待つことなく、次の制御装置へ書き込みを指示できる。これにより、複数の制御装置は、同時並列的に処理を実行することができる。
その結果、本発明では、ネットワークに接続される複数の制御装置へ処理データを処理させる場合、その全体での処理開始からすべての処理完了までの全体の処理時間を短くすることができる。本発明では、仮にたとえば複数の制御装置の処理能力を考慮することなくこれらへの処理を実行させる場合と比べて、全体の処理時間を短くすることができる。本発明では、汎用的な規格に則った通信を用いながら、外部装置の要求に係る複数の制御装置の処理を、早期に終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明が適用可能な自動車の説明図である。
図2図2は、図1の自動車のネットワークシステムの説明図である。
図3図3は、ISOに準拠したダイアグノーシス用の通信規格による、書込データの登録処理のタイミングチャートである。
図4図4は、図2のセントラルゲートウェイ(CGW)、DIAG装置、およびネットワークに接続されるその他の制御装置のハードウェア構成を示す簡易的な説明図である。
図5図5は、本実施形態における自動車の起動時処理を示すタイミングチャートである。
図6図6は、図5の起動時処理における、制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、図5の起動時処理における、セントラルゲートウェイ(CGW)の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8図8は、自動車の起動時処理の結果として、セントラルゲートウェイのマスタメモリに記録される処理能力データの一例の説明図である。
図9図9は、本実施形態においてDIAG装置が書込データの登録を要求した場合の、書込データの登録処理のタイミングチャートである。
図10図10は、図9の書込データの登録要求処理における、制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11図11は、図9の書込データの登録要求処理における、CGWの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12図12は、書込データの登録要求処理の結果として、セントラルゲートウェイのマスタメモリに記録される処理結果データの一例の説明図である。
図13図13は、本実施形態においてDIAG装置が書込データの登録処理結果を要求した場合の、処理結果応答処理のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明が適用可能な自動車1の説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。図1には、この他にも、DIAG装置2と、DIAG装置2と自動車1のネットワーク13とを接続するケーブル3と、が図示されている。自動車1の出荷作業またはメンテナンス作業をする作業者は、自動車1のネットワーク13と接続されたDIAG装置2を操作して、後述するように自動車1に設けられる複数の制御装置12に対してデータやプログラムを書き込んで登録することができる。DIAG装置2は、コンピュータ装置である。DIAG装置2は、自動車1の制御装置12へ書き込むデータやプログラムを、通信網を通じてサーバ装置などから取得してよい。
【0020】
図2は、図1の自動車1のネットワークシステム10の説明図である。
図2の自動車1のネットワークシステム10は、マスタ装置としてのセントラルゲートウェイ(CGW)11、複数の制御装置12、およびこれらを接続するネットワーク13、DIAG装置2を接続するコネクタ14、を有する。
なお、図2において、複数の制御装置12は、それぞれの制御ECU(Electronic Control Unit)により代表して示されている。具体的にはたとえば、図2には、複数の制御ECUとして、駆動ECU21、操舵ECU22、制動ECU23、自動運転/運転支援ECU24、運転操作ECU25、検出ECU26、ドアECU27、空調ECU28、ユーザインタフェースECU29、通信ECU30、が図示されている。通信ECU30は、自動車1の外にあるたとえば携帯端末5などの外部機器と無線通信する。
【0021】
複数の制御ECUは、ネットワーク13により、中継装置としてのセントラルゲートウェイ(CGW)11に接続される。そして、各制御装置12において、制御ECUは、自動車1で用いる装備部材に接続される。起動された制御ECUは、各種の処理を実行し、ネットワーク13から取得する情報(データ)に基づいてそれぞれに接続されている装備部材の動作を制御する。また、制御ECUは、それぞれに接続されている装備部材の動作状態などの情報(データ)をネットワーク13へ出力する。
たとえば運転操作ECU25は、たとえばハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダルといった操作部材に接続される。運転操作ECU25は、乗員による操作部材の操作を検出し、操作データを生成し、ネットワーク13へ出力する。駆動ECU21、操舵ECU22、制動ECU23は、ネットワーク13から操作データを取得し、自動車1の走行を制御する。
【0022】
セントラルゲートウェイ(CGW)11は、自動車1のネットワーク13の通信を管理する。セントラルゲートウェイ(CGW)11は、トラフィック制御機能、セキュリティ機能、などを併せ持つ。
【0023】
DIAG装置2は、ケーブル3によりコネクタ14に接続されることにより、自動車1のネットワーク13に接続される。DIAG装置2は、自動車1のネットワークシステム10について、複数の制御装置12の故障を診断したり、データやプログラムを更新したりする通信を行うことができる。
【0024】
図3は、ISOに準拠したダイアグノーシス用の通信規格による、書込データの登録処理のタイミングチャートである。
図3の例では、図2のネットワークシステム10の中の、DIAG装置2、セントラルゲートウェイ(CGW)11、複数の制御装置12としての第一制御装置12および第二制御装置12、が示されている。時間は、図の上から下へ流れる。
書込データの登録処理では、DIAG装置2は、直接的にはセントラルゲートウェイ11と通信する。
【0025】
DIAG装置2は、複数の制御装置12に対する書込データの登録処理をセントラルゲートウェイ11に実行させるために、セントラルゲートウェイ11との間で要求および応答による前処理の通信を実行する。
具体的には、DIAG装置2は、セントラルゲートウェイ11へ、セキュリティアクセス解除要求を送信して、前処理の通信を開始する。
書込データの登録処理の前処理を開始すると、セントラルゲートウェイ11は、Seedを生成し、DIAG装置2へ送信する。DIAG装置2は、通信応答を返す。
次に、DIAG装置2は、Keyを生成し、セントラルゲートウェイ11へ送信する。セントラルゲートウェイ11は、Keyを検証し、照合結果を送信する。
次に、DIAG装置2は、書込データを登録する制御装置12のリストを、セントラルゲートウェイ11へ送信する。セントラルゲートウェイ11は、通信応答を返し、受信したリストをマスタメモリ33に記録し、書込応答を返す。
次に、DIAG装置2は、書込データ情報送信要求を、セントラルゲートウェイ11へ送信する。セントラルゲートウェイ11は、通信応答を返す。
次に、DIAG装置2は、start要求を、セントラルゲートウェイ11へ送信する。セントラルゲートウェイ11は、通信応答を返す。
次に、DIAG装置2は、MAC鍵更新情報結果要求を、セントラルゲートウェイ11へ送信する。
これにより、前処理が完了し、セントラルゲートウェイ11は、実際に書込データの更新登録処理を開始する。
【0026】
書込データの更新登録処理を開始すると、セントラルゲートウェイ11は、まず、自らの書込データの登録処理を実行する。書込データの一例として、たとえば、セントラルゲートウェイ11は、真性乱数によりMAC鍵を生成し、MAC鍵の更新データを生成し、自らのマスタメモリ33に保持しているMAC鍵を上書き更新して登録する。次に、セントラルゲートウェイ11は、スレーブ装置としての複数の制御装置12へ、更新したMAC鍵を配信して更新登録させる。MAC(Message Authentication Code)鍵は、自動車1のネットワーク13に接続される複数の制御装置12およびセントラルゲートウェイ11で通信の暗号化に共通に使用する暗号鍵の一例である。
たとえば、セントラルゲートウェイ11は、まず、第一制御装置12へ、MAC鍵を含む鍵更新startを指示する。第一制御装置12は、通信応答を返し、取得したMAC鍵により自らのスレーブメモリ43に保持しているMAC鍵を上書き更新して登録する。なお、ネットワーク13で送受されるデータは、通常は暗号鍵により暗号化されている。この場合、第一制御装置12は、暗号化されたMAC鍵を復号する演算処理を実行し、その後に復号したMAC鍵をメモリに記録することになる。
次に、セントラルゲートウェイ11は、第二制御装置12へ、MAC鍵を含む鍵更新startを指示する。第二制御装置12は、通信応答を返し、取得したMAC鍵により自らのスレーブメモリ43に保持しているMAC鍵を上書き更新して登録する。
セントラルゲートウェイ11は、自動車1に設けられるすべての制御装置12、またはDIAG装置2により指定された複数の制御装置12に対して、同様の通信処理を繰り返す。
この一連の処理により、DIAG装置2は、自動車1に設けられる複数の制御装置12に登録されている書込データを更新することができる。
【0027】
このように、DIAG装置2は、ISOで規定されているダイアグノーシス用の通信規格により、自動車1のセントラルゲートウェイ11などとの間で通信を行うことができる。
セントラルゲートウェイ11は、DIAG装置2からの要求があると、アドホック的に、その要求に係るデータ通信を、その要求に係る制御装置12との間で実行する。
しかしながら、ダイアグノーシス用の通信規格に準拠する場合、DIAG装置2またはセントラルゲートウェイ11は、たとえばその登録処理が複数の制御装置12において共通するものであったとしても、制御装置12での登録処理の要求または指示を、制御装置12ごとに順番に繰り返すことになる。
また、DIAG装置2またはセントラルゲートウェイ11は、複数の制御装置12において要求処理が正常に完了されたか否かを確認するためには、登録処理と同様のシーケンスを繰り返して、結果を取得する必要がある。または、DIAG装置2またはセントラルゲートウェイ11は、1つの制御装置12での処理が完了することを確認して、次の制御装置12へ登録処理の要求または指示を出力する必要がある。
このようにDIAG装置2またはセントラルゲートウェイ11が複数の制御装置12に対して制御装置12ごとに順番に処理を要求または指示する場合、複数の制御装置12のすべてでの処理を開始してから終了するまでには、膨大な処理時間が必要になる。
DIAG装置2またはセントラルゲートウェイ11は、汎用的な規格に則った通信を用いながら、自動車1に設けられる複数の制御装置12の処理を早期に終了できるようにすることが求められている。
【0028】
図4は、図2のセントラルゲートウェイ(CGW)11、DIAG装置2、およびネットワーク13に接続されるその他の制御装置12のハードウェア構成を示す簡易的な説明図である。
【0029】
図4のセントラルゲートウェイ11は、複数の車内通信部31、マスタECU32、マスタメモリ33、タイマ34、およびこれらを接続する内部バス35、を有する。
【0030】
車内通信部31には、ネットワーク13を構成するケーブルが接続される。ケーブルには、複数の制御装置12を接続することができる。車内通信部31は、ネットワーク13に接続されている複数の制御装置12とデータを送受する。
【0031】
タイマ34は、経過時間または時刻を計測する。
【0032】
マスタメモリ33は、セントラルゲートウェイ11のプログラムおよびデータを記録する。マスタメモリ33は、後述するように処理能力データ36としての書込処理時間データ、処理結果データ37、を記憶可能である。
処理能力データ36としての書込処理時間データは、ネットワーク13に接続される複数の制御装置12の処理能力(書込処理時間)を示すデータである。
処理結果データ37は、上述したMAC鍵などの特定の処理データについての、複数の制御装置12の登録更新処理の結果を集計したデータである。
【0033】
マスタECU32は、マスタメモリ33からプログラムを読み込んで実行する。これにより、セントラルゲートウェイ11のマスタECU32が実現される。
マスタECU32は、複数の車内通信部31の動作を制御する。
マスタECU32は、1つの車内通信部31に入力される通信データを、他の車内通信部31へルーティングして出力する。これにより、セントラルゲートウェイ11の1つの車内通信部31に接続される複数の制御装置12は、他の車内通信部31に接続されている他の複数の制御装置12との間でデータを送受できる。マスタECU32は、複数の車内通信部31を通じて取得する通信データ、通信データの送信元または送信先の情報を確認し、非正規な通信データや非正規な制御装置の通信を停止させる。
また、マスタECU32は、1つの車内通信部31を通じて、コネクタ14に有線で接続されているDIAG装置2との間でも通信し、制御装置12と同様に通信データを送受する。
マスタECU32は、コネクタ14に有線で接続されているDIAG装置2との間でも通信し、制御装置12と同様に通信データを送受する。
この場合、マスタECU32は、たとえばDIAG装置2の要求に係る複数の制御装置12に共通の処理データを、複数の車内通信部31からネットワーク13を通じて複数の制御装置12へ個別に出力する。
【0034】
図4の制御装置12は、車内通信部41、スレーブECU42、スレーブメモリ43、およびこれらを接続する内部バス44、を有する。
【0035】
スレーブメモリ43は、制御装置12のプログラムおよびデータを記録する。
【0036】
スレーブECU42は、スレーブメモリ43からプログラムを読み込んで実行する。これにより、制御装置12のスレーブECU42が実現される。
【0037】
スレーブECU42は、車内通信部41が受信する通信データにより、制御装置12に接続される装備部材を制御する。また、スレーブECU42は、装備部材の制御結果の状態を、車内通信部41から送信する。
【0038】
このようなセントラルゲートウェイ11、および複数の制御装置12は、自動車1に設けられるネットワーク13を通じて、CAN(Controller Area Network)通信またはLIN(Local Interconnect Network)通信による定期通信を実行する。また、セントラルゲートウェイ11、および複数の制御装置12は、定期通信がなされていないタイミングにおいて、ダイアグノーシス用の不定期通信を実行できる。定期通信と不定期通信とは、自動車1のネットワーク13を利用する別々の通信規格に基づくものである。自動車1のネットワークシステム10は、定期通信と不定期通信とを完全な同一タイミングにおいて同時に実施することはできないものの、一方が通信をしていない隙間のタイミングにおいて他方の通信を同時並列的に実行可能となるように、それぞれの通信が調整して実装される。
【0039】
図5は、本実施形態における自動車1の起動時処理を示すタイミングチャートである。
図5は、自動車1のイグニションスイッチ9が操作された直後のタイミングチャートである。自動車1のイグニションスイッチ9が操作されると、自動車1のネットワークシステム10の各部に給電され、自動車1が起動する。また、給電されたセントラルゲートウェイ11、および複数の制御装置12は、起動して各々の起動時処理を開始する。
【0040】
そして、図5にしめすように、複数の制御装置12のスレーブECU42は、それぞれの起動時処理において、それぞれの処理能力を計測するための共通処理を実行する。ここで、共通処理は、基本的に複数の制御装置12において同一の処理であればよい。ただし、共通処理は、演算および書込を含むものであれば同一の処理でなくてもよい。いずれにしても、その後のセントラルゲートウェイ11のマスタECU32において換算可能な、書込処理を含む処理能力が測定可能であればよい。たとえば制御装置12が起動時処理として本来的に実行する処理であって、そのプログラムのステップ数が決まっている処理であってもよい。
処理能力を計測するための共通処理を実行した後、制御装置12のスレーブECU42は、CAN通信による定期通信により、共通処理の処理結果をセントラルゲートウェイ11へ送信する。
スレーブECU42は、ダイアグノーシス用の不定期通信ではなく、CAN通信による定期通信により、共通処理の処理結果を自動的に、マスタ装置としてのセントラルゲートウェイ11へ送信する。
【0041】
セントラルゲートウェイ11のマスタECU32は、CAN通信による定期通信から、共通処理の処理結果を取得すると、それをマスタメモリ33に記録する。
マスタECU32は、自動的に複数の制御装置12による共通処理の処理結果をマスタメモリ33に集計する。
このように複数の制御装置12のスレーブECU42は、自動車1またはネットワーク13が起動されることに基づいて自動的に共通処理の実行を開始する。また、セントラルゲートウェイ11のマスタECU32は、複数の制御装置12の共通処理の処理結果を、自動的にマスタメモリ33に集計する。
【0042】
図6は、図5の起動時処理における、制御装置12の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
制御装置12のスレーブECU42は、イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作された場合、起動時処理の1つとして図6の処理を実行する。
なお、スレーブECU42は、イグニションスイッチ9の操作により最初の起動の際に図6の処理を実行し、その後には保存した計測結果を読み出すようにしてもよい。
【0043】
ステップST11において、スレーブECU42は、イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作されたか否かを判断する。イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作されていない場合、スレーブECU42は、ステップST11の判断処理を繰り返す。イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作された場合、スレーブECU42は、処理をステップST12へ進める。
ステップST12において、スレーブECU42は、起動時処理において、それぞれの処理能力を計測するための共通処理を開始する。スレーブECU42は、共通処理に含まれる演算処理を実行する。
ステップST13において、スレーブECU42は、共通処理に含まれる書込処理を実行する。
ステップST14において、スレーブECU42は、自らの性能レベルを判定する。制御装置12の性能レベルは、共通処理に要した期間を3段階に分けた、たとえば高、中、低でよい。
ステップST15において、スレーブECU42は、共通処理の処理結果を、CAN通信による定期通信により、セントラルゲートウェイ11へ送信する。共通処理の処理結果には、判定した性能レベル、制御装置12のみで計測した共通処理の処理期間、の情報が含まれてよい。
その後、スレーブECU42は、図6の処理を終了する。
【0044】
図7は、図5の起動時処理における、セントラルゲートウェイ(CGW)11の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
セントラルゲートウェイ11のマスタECU32は、イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作された場合、起動時処理の1つとして図7の処理を実行する。
【0045】
ステップST1において、マスタECU32は、イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作されたか否かを判断する。イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作されていない場合、マスタECU32は、ステップST1の判断処理を繰り返す。イグニションスイッチ9がオフ状態からオン状態へ操作された場合、マスタECU32は、処理をステップST2へ進める。
ステップST2において、マスタECU32は、セントラルゲートウェイ11のタイマ34を起動する。タイマ34は、起動されたタイミングからの経過時間を計測する。タイマ34は、複数の制御装置12のそれぞれによる共通処理の実行時間を計測することができる。
ステップST3において、マスタECU32は、CAN通信による定期通信により、共通処理の処理結果を受信したか否かを判断する。共通処理の処理結果を受信していない場合、マスタECU32は、ステップST3の処理を繰り返す。共通処理の処理結果を受信している場合、マスタECU32は、処理をステップST4へ進める。
ステップST4において、マスタECU32は、CAN通信により受信した共通処理の処理結果を、マスタメモリ33に記録する。マスタECU32は、共通処理の処理結果を受信または記録する際のタイマ34の計測時間を、受信した共通処理の処理結果の一部に含めて、マスタメモリ33に記録する。マスタECU32は、タイマ34により計測される時間を、複数の制御装置12のそれぞれの処理能力としてマスタメモリ33へ記録する。
ステップST5において、マスタECU32は、タイマ34の計測時間に基づいて、共通処理の処理結果を集計する期間のタイムアウトを判断する。共通処理の集計期間がタイムアウトとなっていない場合、マスタECU32は、処理をステップST6へ進める。共通処理の集計期間がタイムアウトとなっている場合、マスタECU32は、図7の処理を終了する。
なお、タイムアウトとなった場合、マスタECU32は、さらに長いタイムアウトの時間を待ってもよい。また、次回の起動時のタイムアウトまでの時間を長くするようにしてもよい。
ステップST6において、マスタECU32は、たとえば過去の集計結果などに基づいて、すべての制御装置12の共通処理の処理結果を集計が完了したか否かを判断する。すべての制御装置12の共通処理の処理結果を集計できていない場合、マスタECU32は、処理をステップST3へ戻す。すべての制御装置12の共通処理の処理結果を集計できている場合、マスタECU32は、図7の処理を終了する。
【0046】
図8は、自動車1の起動時処理の結果として、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に記録される処理能力データ(書込処理時間データ)36の一例の説明図である。
【0047】
図8の処理能力データ36は、複数の制御装置12の処理能力について、書込処理時間と、性能レベルとを集計したものである。
ここで、書込処理時間は、たとえば複数の制御装置12のそれぞれから共通処理の処理結果を受信したタイミングでの、セントラルゲートウェイ11のタイマ34の計測時間でよい。
性能レベルは、共通処理に基づいてスレーブECU42が判定した性能レベルでよい。
これにより、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33には、セントラルゲートウェイ11から見た各制御装置12についての通信を含むトータルの処理時間が計測して記録される。
【0048】
図9は、本実施形態においてDIAG装置2が書込データ(ここでは鍵データとする。)の登録を要求した場合の、鍵データの登録処理のタイミングチャートである。
図9の鍵データの登録処理では、まず、DIAG装置2が、セントラルゲートウェイ11との間で要求および応答による前処理の通信を実行する。前処理通信において、DIAG装置2は、セントラルゲートウェイ11のマスタ装置へ、複数の制御装置12に共通する処理として、鍵データの登録を要求する。
【0049】
前処理が完了すると、セントラルゲートウェイ11は、実際に鍵データの更新登録処理を開始する。
セントラルゲートウェイ11のマスタECU32は、まず、マスタメモリ33から処理能力データ36を取得し、マスタメモリ33に記録されている処理能力(書込処理時間)にしたがう順番で、複数の制御装置12へ鍵データの更新登録処理を指示する。マスタECU32は、ISO規格に準拠するように、ダイアグノーシス用の不定期通信により、複数の制御装置12のそれぞれへ鍵データの更新登録処理を指示する。複数の制御装置12のスレーブECU42は、通信応答を返す。
この際、マスタECU32は、処理能力データ36において最も処理能力が低いもの(書込処理時間が長いもの)から順番に、複数の制御装置12へ個別に、鍵データの更新登録処理を指示する。マスタECU32は、先に処理した制御装置12において鍵データの更新登録処理が完了する前に、次の制御装置12へ鍵データの更新登録処理を指示する。これにより、マスタECU32は、複数の制御装置12への個別の指示を、連続的に指示することができる。
たとえば、図9では、マスタECU32は、図8にしたがって第一制御装置12から第三制御装置12までの間で最も処理が遅い第一制御装置12に対して最初の鍵データの更新登録処理を指示し、次に遅い第二制御装置12に対して最初の鍵データの更新登録処理を指示し、最後に、最も遅くない第三制御装置12に対して最後の鍵データの更新登録処理を指示する。
【0050】
鍵データの更新登録処理を指示された制御装置12のスレーブECU42は、ダイアグノーシス用の不定期通信により通信応答を返し、鍵データの更新登録のための演算処理および書込処理を実行する。複数の制御装置12での鍵データの更新登録処理に係る時間は、それぞれの処理能力に応じたものとなる。たとえば図9では、第一制御装置12が最も処理に時間がかかり、次に第二制御装置12が時間がかかる。第三制御装置12は、処理に時間が最もかからない。
鍵データの更新登録のための演算処理および書込処理を実行した後、制御装置12のスレーブECU42は、指示に用いられたダイアグノーシス用の不定期通信ではなく、CAN通信による定期通信により、処理結果をセントラルゲートウェイ11へ送信する。
スレーブECU42は、ダイアグノーシス用の不定期通信により処理結果の送信を要求されない状態において、自動的に、CAN通信による定期通信により、処理結果をマスタ装置としてのセントラルゲートウェイ11へ送信する。
【0051】
セントラルゲートウェイ11のマスタECU32は、CAN通信による定期通信から、処理データの処理結果を取得すると、それをマスタメモリ33に記録する。
マスタECU32は、DIAG装置2の処理結果の取得要求によらずに、自動的に複数の制御装置12による処理結果をマスタメモリ33に集計する。
この一連の処理により、DIAG装置2は、自動車1に設けられる複数の制御装置12に登録されている鍵データを更新することができる。
【0052】
図10は、図9の鍵データの登録要求処理における、制御装置12の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
制御装置12のスレーブECU42は、ダイアグノーシス用の不定期通信により要求または指示を受信した場合、図10の処理を実行する。
【0053】
ステップST41において、スレーブECU42は、ダイアグノーシス用の不定期通信により要求または指示を受信したか否かを判断する。要求または指示を受信していない場合、スレーブECU42は、ステップST41の処理を繰り返す。要求または指示を受信している場合、スレーブECU42は、処理をステップST42へ進める。
ステップST42において、スレーブECU42は、要求または指示に係る書込データを取得するために、受信した通信データを復号するための演算処理を実行する。
ステップST43において、スレーブECU42は、復号した書込データを、スレーブメモリ43へ書込む。これにより、スレーブメモリ43に登録されている書込データは、更新される。
ステップST44において、スレーブECU42は、要求または指示に係る処理の処理結果を、CAN通信による定期通信により、セントラルゲートウェイ11へ送信する。その後、スレーブECU42は、図10の処理を終了する。
【0054】
図11は、図9の鍵データの登録要求処理における、CGWの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
セントラルゲートウェイ11のマスタECU32は、ダイアグノーシス用の不定期通信によりDIAG装置2から鍵データなどの更新処理の要求を受信した後に、図11の処理を実行する。
【0055】
ステップST21において、マスタECU32は、DIAG装置2から鍵データの登録更新を指定された指定先性能リストを生成する。マスタECU32は、DIAG装置2に指定された制御装置12の処理能力データ36を、マスタメモリ33に記録されているたとえば図8の処理能力データ36の中から選択し、指定先性能リストを生成する。
ステップST22において、マスタECU32は、DIAG装置2から受信した通信データから、演算処理により鍵データとしてのMAC鍵を復号して生成する。
ステップST23において、マスタECU32は、復号により生成した鍵データに基づいて、制御装置12のMAC鍵を更新するための更新データを生成する。
ステップST24において、マスタECU32は、マスタメモリ33に登録されているMAC鍵を、新たに生成したMAC鍵により更新する。以上の処理により、マスタECU32は、前処理を終了する。
【0056】
ステップST25から、マスタECU32は、MAC鍵の更新登録を、複数の制御装置12に個別に指示する処理を開始する。マスタECU32は、指定先性能リストから、最も処理が遅い制御装置12を選択する。
ステップST26において、マスタECU32は、制御装置12のMAC鍵を更新するための更新データを、最遅の制御装置12へ送信し、MAC鍵の更新登録のための書込みを指示する。
ステップST27において、マスタECU32は、タイマ34の計測時間に基づいて、各制御装置12の通信応答についてのタイムアウトを判断する。タイムアウトは、たとえば500ミリ秒程度でよい。通信応答のタイムアウトとなっていない場合、マスタECU32は、処理をステップST28へ進める。通信応答のタイムアウトとなっている場合、マスタECU32は、処理をステップST32へ進める。
ステップST28において、マスタECU32は、各制御装置12から受信する通信応答を判断し、異常応答であるか否かを判断する。制御装置12は、たとえばマスタECU32の指示を正しく受信できなかった場合、異常応答を返す。正常に受信できた場合、正常応答を返す。異常応答である場合、マスタECU32は、処理をステップST32へ進める。正常応答である場合、マスタECU32は、処理をステップST29へ進める。
ステップST29において、マスタECU32は、CAN通信による定期通信により、MAC鍵の更新処理の処理結果を受信したか否かを判断する。MAC鍵の更新処理の処理結果を受信していない場合、マスタECU32は、処理をステップST26へ戻す。MAC鍵の更新処理の処理結果を受信している場合、マスタECU32は、処理をステップST30へ進める。
ステップST30において、マスタECU32は、CAN通信による定期通信により受信した処理結果を、マスタメモリ33に記録する。
ステップST31において、マスタECU32は、指定先性能リストに基づいて、リストに含まれるすべての制御装置12への個別の指示を出力し終えたか否かを判断する。すべての制御装置12への指示を出力し終えていない場合、マスタECU32は、処理をステップST33へ進める。すべての制御装置12への指示を出力し終えている場合、マスタECU32は、処理をステップST34へ進める。
【0057】
ステップST32において、マスタECU32は、異常応答をマスタメモリ33に記録する。マスタECU32は、MAC鍵の更新処理の処理結果の替わりに、異常応答をマスタメモリ33に記録する。
ステップST33において、マスタECU32は、指定先性能リストに基づいて、次に処理が遅い制御装置12を選択する。その後、マスタECU32は、処理をステップST26へ戻す。
ステップST34において、マスタECU32は、CAN通信による定期通信により、MAC鍵の更新処理の処理結果を受信したか否かを判断する。MAC鍵の更新処理の処理結果を受信していない場合、マスタECU32は、ステップST34の処理を繰り返す。MAC鍵の更新処理の処理結果を受信している場合、マスタECU32は、処理をステップST35へ進める。
【0058】
ステップST35において、マスタECU32は、CAN通信による定期通信により受信した処理結果を、マスタメモリ33に記録する。
ステップST36において、マスタECU32は、指定先性能リストとマスタメモリ33の記録状態とを比較し、指定先性能リストに含まれるすべての通信装置についての処理結果を受信したか否かを判断する。すべての通信装置についての処理結果を受信していない場合、マスタECU32は、処理をステップST34へ戻す。すべての通信装置についての処理結果を受信している場合、マスタECU32は、図11の処理を終了する。
【0059】
図12は、書込データの登録要求処理の結果として、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に記録される処理結果データ37の一例の説明図である。
図12の処理結果データ37は、図8の処理能力データ36に対応するものである。DIAG装置2が、図8の処理能力データ36に含まれるすべての制御装置12を指定した場合の処理結果である。
【0060】
図12の処理結果データ37の例では、第一制御装置12の処理結果は、登録成功である。この場合、第一制御装置12は、セントラルゲートウェイ11からMAC鍵の更新登録のための書込指示を正常に受信し、正常にスレーブメモリ43へMAC鍵を更新登録できている。
第二制御装置12の処理結果は、異常通信である。この場合、第二制御装置12は、セントラルゲートウェイ11からMAC鍵の更新登録のための書込指示を正常に受信できていない。
第三制御装置12の処理結果は、エラーである。この場合、第三制御装置12は、セントラルゲートウェイ11からMAC鍵の更新登録のための書込指示を正常に受信できたものの、スレーブメモリ43へのMAC鍵の更新登録を正常にできていない。
このように、本実施形態では、ダイアグノーシス用の不定期通信についての異常と、各制御装置12の処理の異常とを、区別して処理結果に登録することができる。正常に終了できなかった原因について、ネットワーク13側と、制御装置12側とに切り分けて記録することができる。
【0061】
図13は、本実施形態においてDIAG装置2が書込データの登録処理結果を要求した場合の、処理結果応答処理のタイミングチャートである。
図13の登録処理結果の要求処理では、DIAG装置2とセントラルゲートウェイ11との間での通信により、その処理が完結する。
【0062】
DIAG装置2は、ダイアグノーシス用の不定期通信により、マスタ装置としてのセントラルゲートウェイ11へ、登録処理結果の取得を要求する。
そして、セントラルゲートウェイ11のマスタ装置は、マスタメモリ33から、要求に基づいて処理したたとえば書込データの登録要求処理の処理結果データ37を読み出し、それをDIAG装置2へ応答送信する。
セントラルゲートウェイ11のマスタ装置は、外部装置からの取得要求の後に、処理結果を取得するために複数の制御装置12と個別に通信をすることなく、マスタメモリ33に予め集計されている複数の制御装置12の処理結果を読み出し、それをDIAG装置2へ応答送信する。
【0063】
以上のように、本実施形態では、ネットワーク13に接続されるセントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に、ネットワーク13に接続される複数の制御装置12についての処理能力(書込処理時間)を記録する。そして、セントラルゲートウェイ11において、マスタECU32は、DIAG装置2の要求に係る複数の制御装置12に共通の処理データを、車内通信部31からネットワーク13を通じて複数の制御装置12へ個別に出力する。この際、マスタECU32は、複数の制御装置12への個別の処理指示を、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に記録されている処理能力(書込処理時間)にしたがう順番で連続的に指示して、複数の制御装置12へ個別に処理を指示する。
たとえば、マスタECU32は、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に記録されている処理能力(書込処理時間)において処理能力が低いもの(書込処理時間が長いもの)を、高いもの(短いもの)より先に個別の書込を指示する。よって、処理能力が低い制御装置12は、処理能力が高い制御装置12よりも先に、処理データを取得して処理を早期に開始することができる。
また、マスタECU32は、先に指示した制御装置12の処理の完了を待つことなく連続的に、次の制御装置12へ処理を指示する。マスタECU32は、1つ1つの制御装置12の処理の完了を待つことなく、次の制御装置12へ書き込みを指示できる。これにより、複数の制御装置12は、同時並列的に処理を実行することができる。
また、処理結果をDIAG装置2がダイアグノーシス通信を用いて複数の制御装置12に個別に通信するのではなく、マスタECU32と複数の制御装置12との間での車載通信ネットワークの定期通信機能を用いることで、処理が完了した制御装置12は、定期通信経由で処理結果をマスタECU32へ通知することができる。また複数の制御装置12の処理結果はマスタECU32に格納され、DIAG装置2からの要求に基づき一度に複数の制御装置12の処理結果を通知することができる。
その結果、本実施形態では、ネットワーク13に接続される複数の制御装置12へ処理データを処理させる場合、その全体での処理開始からすべての処理完了までの全体の処理時間を短くすることができる。本実施形態では、仮にたとえば複数の制御装置12の処理能力(書込処理時間)を考慮することなくこれらへの処理を実行させる場合と比べて、全体の処理時間を短くすることができる。
【0064】
このように、本実施形態では、ISOの汎用的な規格に則った通信を用いながら、DIAG装置2の要求に係る複数の制御装置12の処理を、早期に終了させることができる。
たとえば、DIAG装置2が、マスタ装置としてのセントラルゲートウェイ11へ、複数の制御装置12に共通の処理データである書込データの登録を要求する場合、マスタECU32は、DIAG装置2の要求に係る、複数の制御装置12に共通する書込データの個別の登録処理を、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に記録されている処理能力(書込処理時間)にしたがう順番で指示して、複数の制御装置12へ個別にデータを登録する。これにより、複数の制御装置12での書込データの登録新処理は、処理能力が低いものから順番に開始され、かつ、同時並列的に実行されることになる。全体での処理時間は、複数の制御装置12へランダムにかつ順番に登録を指示して確認する場合と比べて、格段に短くできる。
【0065】
本実施形態では、複数の制御装置12は、演算および書込を含む共通処理を実行する。また、セントラルゲートウェイ11のマスタECU32は、複数の制御装置12のそれぞれによる共通処理の実行時間をタイマ34により計測し、その計測されたそれぞれの時間を、複数の制御装置12のそれぞれの処理能力としてマスタメモリ33へ記録する。
これにより、本実施形態では、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33には、実際にネットワーク13に接続されている状態での複数の制御装置12のそれぞれの処理能力を記録することができる。
【0066】
また、本実施形態では、一部の制御装置12が交換されたり、アップグレードされたりしたとしても、それに応じて、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に記録される複数の制御装置12の処理能力を更新することができる。
特に、複数の制御装置12は、自動車1またはネットワーク13が起動されることに基づいて、各々の起動時に自動的に共通処理の実行を開始することにより、その後における自動車1のための実際の処理の実行に影響を与え難くできる。自動車1の停止中に一部の制御装置12が交換されたとしても、それに対応するようにセントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33を更新することができる。自動車1のための実際の処理への影響を効果的に抑制しつつ、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に収集して記録される複数の制御装置12の処理能力を、常に最新の状態に対応するように更新できる。
【0067】
本実施形態では、複数の制御装置12は、各々の処理実行後に、処理データの処理結果、および共通処理の処理結果を、複数の制御装置12およびマスタ装置の間での定期通信により、マスタ装置へ自動的に送信する。また、マスタECU32は、定期通信から、処理データの処理結果、および共通処理の処理結果を取得すると、それをセントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に記録して集計する。マスタECU32は、DIAG装置2の処理結果の取得要求によらずに自動的に複数の制御装置12による処理結果をマスタメモリ33に集計することができる。このため、マスタECU32は、DIAG装置2から複数の制御装置12の処理結果の取得を要求された場合、その要求の後に処理結果を取得するための通信を複数の制御装置12と個別に実行することなく、セントラルゲートウェイ11のマスタメモリ33に予め集計されている複数の制御装置12の処理結果を応答することができる。マスタ装置は、DIAG装置2から処理データの処理結果の取得が要求された場合、その取得要求の後に、処理結果を取得するために、処理指示の場合と同様に複数の制御装置12と個別に通信をすることなく、マスタメモリ33に予め集計されている複数の制御装置12の処理結果により、即座に応答することができる。DIAG装置2は、複数の制御装置12の処理結果を、その要求の後に直ちに取得することができる。
【0068】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…自動車(車両)、2…DIAG装置(外部装置)、9…イグニションスイッチ、10…ネットワークシステム、11…セントラルゲートウェイ(CGW)、12…制御装置、13…ネットワーク、14…コネクタ、31…車内通信部、32…マスタECU(制御部)、33…マスタメモリ(メモリ)、34…タイマ、36…処理能力データ、37…処理結果データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13