【解決手段】複合材製造システムはプレス機とブラダーを備える。プレス機は、複合材構造体用の所望の形状を有する上部と、複合材の層を受けるように構成された下部を有する。ブラダーは、プレス機の上部に付随していて、複造材の層に熱と圧力を印加することによってブラダーが複合材構造体の形になるように加熱時に超塑性状態に達するように構成される。ブラダーは顕著に収縮せずに冷却され、冷却サイクル全体にわたって所望の量の圧力を複合材構造体に印加する。ブラダーを用いて一つの複合材構造体が成形されると、ブラダーを再使用して、同様の構造体を成形することができる。
上部(220)と、複合材構造体(204)用の所望の形状(228)を有する下部(222)であって複合材の層(230)を受けるように構成されている下部(222)とを備えるプレス機(210)と、
前記プレス機(210)の上部(220)に付随しているブラダー(212)であって、前記複合材の層(230)に圧力(250)を印加することによって該ブラダー(212)が前記複合材構造体(204)の形になるように加熱時に超塑性状態(248)に達するように構成されているブラダー(212)と、を備える複合材製造システム(202)。
前記ブラダー(212)が、華氏600度から800度の間で前記超塑性状態(248)に達するように構成されたマグネシウムを備える、請求項1に記載の複合材製造システム(202)。
前記プレス機(210)の上部(220)に接続され、前記複合材構造体(204)の成形中に前記ブラダー(212)を適所に保持するように構成された支持構造体(224)を更に備える請求項2から5のいずれか一項に記載の複合材製造システム(202)。
前記ブラダー(212)を前記第二レベル(264)の圧力(250)にしたままで前記複合材構造体(204)を冷却することを更に備える請求項8又は9に記載の方法。
前記複合材構造体(204)を成形することと実質的に同時に前記複合材の層(230)をコンソリデーションさせることを更に備える請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
前記プレス機(210)の上部(220)と前記ブラダー(212)との間の空間(258)を加圧することが、前記プレス機(210)の上部(220)と前記ブラダー(212)との間の空間(258)にガス(260)を供給して、前記複合材の層(230)に圧力(250)を印加することを備える、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
前記ブラダー(212)と前記プレス機(210)の上部(220)との間に気密シール(246)を生じさせるように構成されたフレーム(234)を用いて、前記プレス機(210)の上部(220)に前記ブラダー(212)を取り付けることを更に備える請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
前記ブラダー(212)が、華氏600度から800度の間で前記超塑性状態(248)に達するように構成されたマグネシウムを備える、請求項15又は16に記載の方法。
フレーム(234)を用いて前記プレス機(210)の上部(220)に前記ブラダー(212)を取り付けることを更に備える請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な実施形態は、一つ以上の多様な検討事項を認識して考慮している。例えば、例示的な実施形態は、複合材構造体の現状の製造プロセスが希望よりも時間がかかるものであることを認識して考慮している。金型を有するプレス機を使用する場合、製造サイクルは完了に八時間以上かかり得る。このような金型は、場合によっては数週間となる長いリードタイムを有し、典型的には金型の到着後に再加工を要する。
【0014】
金型は航空機製造業者が望む多様性に欠ける。雄型と雌型は部品の設計に固有のものであり、僅かな公差で単一部品の幾何学的形状を得るように構成される。場合によっては、挿入体を用いて僅かな幾何学的形状バリエーションを得ることができるが、全く異なる部品の幾何学的形状が必要な場合には、雄型と雌型の両方を変更しなければならない。金型を用いる場合には、金属が加熱状態から冷却状態になると収縮するので、冷却段階中の複合材の完全性を維持するために追加の圧力が必要とされる。
【0015】
また、例示的な実施形態は、繊維強化熱可塑性物質を成形する際に、現状用いられている一部の解決策が従来のオートクレーブ処理を用いた片面金型を採用していることを認識して考慮している。このような処理は、宇宙空間用グレードの熱可塑性物質用の高温消耗材、高感圧テープ、高温許容オートクレーブを必要とする。このような構成要素は希望よりも高価で処理中の使用が難しいものとなり得る。
【0016】
従って、本開示の実施形態は、プレス機とマグネシウムブラダーとを備える複合材製造システムを提供する。プレス機は複合材構造体用の所望の形状を有する下部を有する。下部は、複合材の層を受けるように構成される。マグネシウムブラダーはプレス機の上部に付随していて、複合材の層に圧力を印加することによってマグネシウムブラダーが複合材構造体の形になるように加熱時に超塑性状態に達するように構成される。マグネシウムブラダーは、複合材構造体の上でその形になり複合材構造体と直接接触するので、複合材から離れて実質的に収縮すること無く、冷却される。冷却中に、ブラダー中の圧力がブラダーを押し戻し、複合材構造体に対して圧力を伝えて、冷却サイクル全体にわたって所望の量の圧力を印加することができる。マグネシウムブラダーを用いて一つの複合材構造体が成形されると、同様の構造体を成形するためにそのブラダーを再使用し得る。熱可塑性物質で製造を行う場合には、プレス機に配置する前にその物質をコンソリデーションさせる必要がない。コンソリデーションと成形の両方を単一サイクルで行うことができる。部品の表面全体にわたる熱的均一性が実現される。
【0017】
以下図面を参照し、特に
図1を参照すると、例示的な実施形態に係る複合材製造システムの斜視図の例示が示されている。複合材製造システム100は、この例示的な例では圧縮成形システムである。
【0018】
図示されているように、複合材製造システム100は、上部104と下部106を有するプレス機102と、コントローラー108とを含む。プレス機102の上部104と下部106は、例示的な実施形態においてプラテンとも称され得る。
【0019】
加熱機構とガス供給システム(図示せず)がプレス機102に統合されている。型110はプレス機102の下部106上に配置される。型110は複合材112を受ける雄型である。上部104は、
図4及び
図5に詳細に示されるように、マグネシウムブラダーを適所に保持する内部支持構造体を有する。
【0020】
複合材112は、この例示的な例では熱可塑性物質を備える。複合材112は、プレス機102の下部106の型110の上に配置される際には、まだコンソリデーションされていない。他の例示的な例では、複合材112は熱可塑性物質を備えないものとなり得る。プレス機102のセクション114中の構成要素が
図3により詳細に示されている。
【0021】
以下
図2を参照すると、例示的な実施形態に係る製造環境のブロック図の例示が示されている。製造環境200は、複合材製造システム202内の構成要素を用いて複合材構造体204を製造し得る環境である。複合材製造システム202は、複合材構造体204を製造するための或る数のプロセスを行う。
【0022】
本願において、事項について使用される「或る数」とは、その事項が一つ又は複数あることを意味する。従って、或る数のプロセスは一つ以上のプロセスである。
【0023】
複合材構造体204は、プラットフォーム206で使用されるように構成された構造体である。プラットフォーム206は、例えば、移動プラットフォーム、静止プラットフォーム、陸上構造、水中/水上構造、又は宇宙型構造であり得るがこれらに限定されない。より具体的には、プラットフォーム206は、航空機、水上艦、戦車、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、人工衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家、製造工場、建物、又は他の適切なプラットフォームであり得る。
【0024】
プラットフォーム206はこの例示的な例では航空機208の形態を取っている。複合材構造体204が航空機208用に製造される場合、複合材構造体204は、例えば、縦通材、スパー、リブ、パネル、スタビライザー、スキンパネル、又は航空機208で使用されるようの構成された他の適切な構造体であり得る。
【0025】
図示されているように、複合材製造システム202は、プレス機210と、ブラダー212と、加熱器214と、ガス供給器216と、冷却システム218とを備える。プレス機210はこの例示的な例では液圧プレス機の形態を取っている。プレス機210は、圧縮成形法によって複合材構造体2014を成形するように構成される。
【0026】
プレス機210は、上部220と、下部222と、支持構造体224とを備える。ブラダー212はプレス機210の上部220に付随している。型226はプレス機210の下部222に付随していて、下部222が複合材構造体204用の所望の形状228を有するようになっている。プレス機210の下部222は、複合材構造体204を成形するために複合材の層230を受けるように構成される。
【0027】
複合材の層230は、あらゆる種類の複合材を備え得る。一部の場合では、複合材の層230は、熱可塑性物質の層232の形態を取り得る。複合材の層230が熱可塑性物質の層232の形態を取る場合、複合材製造システム202は、熱可塑性物質の層232を実質的に同時にコンソリデーション及び成形するように構成される。結果として、熱可塑性物質の層232を、プレス機210の下部222に配置する前にコンソリデーションさせる必要が無い。
【0028】
図示されているように、支持構造体224はプレス機210の上部220に接続される。支持構造体224は、複合材構造体204の成形中にブラダー212を適所に保持するように構成される。支持構造体224はこの例示的な例ではフレーム234の形態を取っている。フレーム234はリッジ部236と中空中心部238を有する。リッジ部236は中空中心部238の周囲240に延在する。中空中心部238の周囲240のリッジ部236は、ブラダー212の部分242に対応する。フレーム234の中空中心部238は、プレス機210を閉じた際にブラダー212が複合材の層230と接することを可能にする。
【0029】
この例示的な例では、フレーム234がブラダー212で覆われる。言い換えると、ブラダー212はフレーム234に取り付けられていないものとなり得る。フレーム234は、ブラダー212の部分242の周りに圧力244を印加して、ブラダー212を適所に保持するための気密シール246を生じさせる。気密シール246は、この例示的な例では、実質的な気密シール又はほぼ気密シールである。他の例示的な例では、ブラダー212は、接着剤、固定具又は他の方法を用いてフレーム234に取り外し可能に取り付けられ得る。
【0030】
図示されているように、ブラダー212は金属シートの形態を取る。ブラダー212は、マグネシウムとアルミニウムとマグネシウム合金とアルミニウム合金とのうちの少なくとも一つから選択された金属、又は他の適切な物質を備える。ブラダー212用に選択された物質は、華氏600度から800度の間の温度に加熱された際に超塑性状態248に達するように構成される。こうした温度は、一般的には華氏698度から797度の間で行われるプレス機210による複合材構造体204の圧縮成形又は圧着の際に使用される温度に対応している。勿論、プロセスに応じて、複合材構造体204の成形を異なる温度でも行い得る。
【0031】
本願において、「少なくとも一つ」との用語が列挙された事項と共に使用されている場合、これは列挙されている事項のうちの一つ以上の多様な組み合わせが使用可能であり、列挙されている各事項のうち一つのみが必要とされ得ることを意味する。言い換えると、「少なくとも一つ」は、列挙されている事項のあらゆる組み合わせやあらゆる数の事項が使用可能であるが、列挙されている事項の全てが必要ではないことを意味する。事項は特定の物体、物、又はカテゴリーであり得る。
【0032】
例えば、「事項Aと事項Bと事項Cとのうちの少なくとも一つ」は、事項Aを含む、事項Aと事項Bを含む、又は事項Bを含むとなり得るがこれらに限定されない。また、この例は、事項Aと事項Bと事項Cを含む、又は事項Bと事項Cを含むともなり得る。勿論、これら事項のあらゆる組み合わせが存在し得る。他の例では、「少なくとも一つ」は、例えば、二つの事項Aと一つの事項Bと十個の事項Cであることや、四つの事項Bと七つの事項Cであることであり得るが、これらに限定されず、他の適切な組み合わせであり得る。
【0033】
超塑性状態248は、ブラダー212が超塑性形態になり始める際のブラダー212の物理的状態である。言い換えると、ブラダー212が変形し始めるのに十分な熱と圧力がブラダー212に印加される。ブラダー212の完全な超塑性は、本開示の例示的な実施形態を可能にするのには不必要である。
【0034】
この例示的な例では、ブラダー212は超塑性状態248において変形し、ブラダー212が複合材構造体204用の所望の形状228を取ることができるようになる。言い換えると、複合材の層230に圧力250を印加することによって、ブラダー212が複合材構造体204の形になる。超塑性状態248において、ブラダー212と型226は、従来の金型と同じ様に連携して動作するように構成される。
【0035】
この例示的な例では、ブラダー212はマグネシウムブラダー252の形態を取っている。例えば、マグネシウムブラダー252は、華氏600度から800度で超塑性形態になり始めるように構成された物質であるAZ31マグネシウムを備え得るが、これに限定されない。超塑性状態248のブラダー212は、複合材の層230に圧力250を印加するだけではなくて、複合材の層230に熱254を伝えるようにも構成される。
【0036】
プレス機210は室温で閉じられる。プレス機210の上部220の表面とブラダー212との間に空間258が存在する。ガス供給器216が、ブラダー212の後方から空間258を加圧して、プレス機210の上部220からブラダー212を離隔して、複合材の層230に対してブラダー212を押し付ける。ガス供給器216は、圧縮空気等のあらゆる種類の加圧ガス260を供給し得る。ガス供給器216は、市販のあらゆる種類のガス供給源であり得る。
【0037】
プロセスが続行していくと、ガス供給器216が空間258を加圧して、複合材構造体204を所望の形状228に成形するための所望のレベルの圧力を提供する。例えば、ガス供給器216は、複合材構造体204の成形の一つの段階において第一レベル262の圧力250に空間258を加圧し得る。同様にして、ガス供給器216は、複合材構造体204の成形の後続の段階において第二レベル264の圧力250に空間258を加圧し得る。このようにして、圧力250を所望のとおりに制御することができる。
【0038】
加熱器214は、プレス機210とその構成要素を加熱するように構成される。加熱器214は、抵抗加熱器、加熱オイル、加熱蒸気、加熱圧縮空気、誘導加熱のうちの少なくとも一つから選択された熱源、又は他の適切な種類の熱源であり得る。加熱器214は、複合材構造体204を成形するのに十分なレベルの熱254を提供する。
【0039】
この例示的な例では、冷却システム218は、プレス機210の中で複合材構造体204を冷却するように構成される。冷却システム218は、例えば、冷却オイル、大気、圧縮空気の形態を取り得るが、これらに限定されず、他の適切な種類の冷却システムとなり得る。ブラダー212は冷却中に実質的に収縮しないので、複合材構造体204の製造全体にわたって所望の量の圧力250を提供する。
【0040】
複合材構造体204の成形が完了すると、プレス機210から複合材構造体204が取り出される。ブラダー212は、複合材構造体204用の所望の形状228を維持する。結果として、ブラダー212を用いて、追加の構造体を製造し得る。例えば、ブラダー212を使用して第一複合材構造体266を成形し、次いで、ブラダー212を再使用して第二複合材構造体268を成形し得る。このような例示的な例では、ブラダー212は再使用可能ブラダー270の形態を取る。
【0041】
一部の例示的な例では、複合材の層230は多様な箇所にプライドロップ272を含む。ブラダー212は複合材構造体204の成形中に超塑性状態248に達するので、ブラダー212はプライドロップ272を踏まえて変形して、複合材構造体204用の所望の形状228がプロセス全体にわたって維持されるようになる。
【0042】
例示的な実施形態を用いて、複合材製造システム202が効率的に動作することができる。結果として、現状用いられているシステムよりも素早くあまり再加工を要せずに複合材構造体204を成形し得る。
【0043】
ブラダー212に用いられる物質は、金型設備の物質よりも顕著に安価であり、再使用可能であり、一回のサイクルで熱可塑性物質をコンソリデーション及び成形するのに十分な熱及び圧力を印加することができる。従って、例示的な実施形態は、熱可塑性物質についての処理要求、金型調達コスト、及びサイクル時間を減らす。
【0044】
硬質な金型とは異なり、ブラダー212は、プロセスの冷却段階中に複合材から離れて顕著に収縮せずに、複合材構造体204を所望の形状228に維持する。その理由は、ブラダー212の超塑性状態248中にわたってブラダー212が複合材構造体204と直接接触するからである。型226とブラダー212が超塑性発生温度未満に冷却されると、ブラダー212が圧力244から押し戻されて、熱膨張又は収縮によって存在し得るブラダー212と複合材構造体204との間の空間を埋める。結果として、例示的な実施形態は、多用性があり安価なマグネシウムブラダーが雌型として機能して、複合材構造体204の再加工の必要性を減らすという片面金型を提供する。
【0045】
次に
図3を参照すると、例示的な実施形態に係る複合材製造システムのより詳細な図の例示が示されている。
図1のセクション114についてプレス機102のより詳細な図が示されている。
図3は、
図2にブロック形態で示されている複合材製造システム202内の構成要素の物理的な実施形態の一例を示す。
【0046】
図示されているように、フレーム300がプレス機102の上部104に接続される。ブラダー302は複合材112の上方の適所に保持される。プレス機102の上部104が矢印304の方向に移動して複合材112に近づき、複合材112の上にブラダー302を配置する。
【0047】
以下
図4を参照すると、例示的な実施形態に係るプレス機の上部の例示が示されている。また、
図4は、
図2にブロック形態で示されている複合材製造システム202内の構成要素の物理的な実施形態の一例を示す。
図4は、真上を見た際のプレス機102の上部104を示す。
【0048】
図示されているように、フレーム300は、フレーム300の周囲402の留め具400を用いて、プレス機102の上部104に取り付けられる。フレーム300はリッジ部404と中空中心部406を有する。
【0049】
ブラダー302は、フレーム300の中空中心部406の中に示されている。ブラダー302は、この例示的な例ではその元々の状態で示されている。言い換えると、ブラダー302は、本願記載のプロセスを予め経た再使用可能ブラダーではない。
【0050】
中空中心部406は形状408を有する。形状408は、ブラダー302が複合材112と型110の全体を覆うように選択される。
【0051】
次に
図5を参照すると、例示的な実施形態に係るプレス機の上部の他の例示が示されている。この例示的な例では、プレス機102の上部104が透視図で示されている。
図5は、上方から真下を見た際のプレス機102の上部104を示す。
【0052】
この例示的な例では、ブラダー302はシートの形態を取っている。図示されているように、シート500は正方形であり、
図4に示される中空中心部406を覆う。シート500の周囲はフレーム300の周囲と接している。
【0053】
図6〜
図8は、例示的な実施形態に係るプレス機の断面図の例示である。プレス機102の断面図が
図3の線6‐6に沿って示されている。この例示的な例ではプレス機102は閉じられている。
【0054】
図6は閉じた直後のプレス機102を示す。プレス機102は加熱されていない。ガスが、矢印600の方向にプレス機102の上部104とブラダー302の背面との間を流れる。ガスを用いて、複合材112に近づけるようにブラダー302を押す。フレーム300のリッジ部404とブラダー302がほぼ気密シール604を生じさせる。
【0055】
図7では、空間602が第一レベルに加圧されている。この第一レベルの圧力は、例えば、10〜30psiとなり得るが、これに限定されない。
【0056】
また、プレス機102内の構成要素が加熱されている。例えば、型110とブラダー302と複合材112が略華氏700度に加熱されているが、これに限定されない。圧力は加熱段階中において第一レベルのままである。この温度において、ブラダー302が、型110上の複合材112の上で超塑性変形を始める。ブラダー302が複合材112と接触すると、ブラダー302に対する圧力が複合材112に伝わる。複合材112が所望の形状を取り始める。ブラダー302はこのプロセス中に熱も伝える。この例示的な例では、システム全体が略華氏800度に加熱され得る。
【0057】
図8は、冷却段階の開始時におけるプレス機102内の構成要素を示す。空間602は、加熱の最終段階で第二レベルに加圧されている。例えば、第二レベルの圧力は130〜210psiであり得るが、これに限定されない。
【0058】
ここで、第二レベルの圧力は、複合材112が冷却されるまで維持される。複合材112は、複合材構造体用の所望の形状を有する。具体的な実施形態に応じて、プレス機102内の構成要素は、複合材構造体の結晶化温度未満の温度に冷却される。圧力が解放されて、プレス機102が開かれる。
【0059】
次に
図9を参照すると、例示的な実施形態に係る複合材構造体の例示が示されている。複合材構造体900は、
図6〜
図8に示されるプロセスを用いて成形されたものである。複合材構造体900は形状902を有する。
【0060】
図10を参照すると、例示的な実施形態に係るブラダーの例示が示されている。
図10は、
図9の複合材構造体900の成形後のブラダー302を示す。ブラダー302の形状1000は複合材構造体900の形状902に対応している。この場合、ブラダー302は再使用可能ブラダー1002の形態を取っている。他の構造体を成形するために、追加の複合材を型110の上に置いて、
図6〜
図8に示されているプロセスを繰り返す。
【0061】
図1と
図3〜
図10に示される多様な構成要素を、
図2の構成要素と組み合わせ得て、
図2の構成要素と共に使用し得て、又はこれら二つの組み合わせとし得る。また、
図1と
図3〜
図10の一部の構成要素は、
図2にブロック形態で示されている構成要素が物理的構造としてどのように実施され得るのかを例示する例となり得る。
【0062】
図1や
図3〜
図6に示される以外の他の構成で複合材製造システム100を実施し得る。例えば、
図3〜
図10には示されていないが、例示的な実施形態を用いて、構造体の任意の部分にプライドロップを有する構造体を製造し得る。例えば、ブラダー302が、本願に記載されているのと同じ様に機能して、構造体の中心のプライドロップ、構造体の外縁に向かうプライドロップ、又は他のプライドロップを有する複合材構造体に熱及び圧力を印加する。結果として、例示的な実施形態は、多様な部品の幾何学的形状に対処する。
【0063】
更に、プレス機の上部とマグネシウムシートとの間の空間を加圧することでプロセスが完了しているが、他の例示的な例では従来のブラダーを使用し得る。このような場合には、ブラダー自体が膨張して、複合材構造体を成形するための所望のレベルの圧力を提供する。
【0064】
他の例示的な例では、複数のブラダーを用いて、一回のプレスサイクルで複数の構造体を成形し得る。更に他の例示的な例では、一つのブラダーを用いて、一回のサイクルで一つよりも多くの構造体を成形し得る。
【0065】
次に
図11を参照すると、例示的な実施形態に係る複合材構造体を成形するためのプロセスのフローチャートの例示が示されている。
図11に示されているプロセスを複合材製造システム202と共に用い、
図2のブラダー212を使用して複合材構造体204を成形し得る。
【0066】
本プロセスは、プレス機の下部の型の上に複合材の層を配置することで開始する(工程1100)。次に、本プロセスは、プレス機の上部に付随しているブラダーを複合材の層の上に配置する(工程1102)。ブラダーの部分の周りに圧力を印加して実質的な気密シールを生じさせるように構成されたフレームを用いて、プレス機の上部にブラダーを取り付ける(工程1104)。
【0067】
次いで、本プロセスは、プレス機の上部とブラダーとの間の空間を第一レベルの圧力に加圧する(工程1106)。プレス機の上部とブラダーとの間の空間にガスを供給することによって空間を加圧する。結果として、ブラダーが複合材の層に圧力を印加する。次いで、ブラダーが複合材構造体の形になるようにブラダーを超塑性状態に加熱する(工程1108)。
【0068】
ブラダーが超塑性状態に達した後に、本プロセスは、第一レベルの圧力よりも高い第二レベルの圧力に空間を加圧して、複合材構造体を成形する(工程1110)。次いで、ブラダーを第二レベルの圧力にしたままで複合材構造体を冷却する(工程1112)。その後、プロセスが終了する。
【0069】
以下
図12を参照すると、例示的な実施形態に係る航空機用の複合材構造体をコンソリデーション及び成形するためのプロセスのフローチャートの例示が示されている。
図12に示される方法も複合材製造システム202と共に用い、
図2のブラダー212を使用して複合材構造体204を成形し得る。
【0070】
本プロセスは、複合材構造体用の所望の形状を有するプレス機の下部にコンソリデーションされていない熱可塑性物質を配置することで開始する(工程1200)。次いで、本プロセスは、プレス機の上部に付随しているマグネシウムブラダーを熱可塑性物質の上に配置する(工程1202)。そして、プレス機を閉じる(工程1204)。
【0071】
その後、本プロセスは、プレス機の上部とマグネシウムブラダーとの間の空間を第一レベルの圧力に加圧して、マグネシウムブラダーを熱可塑性物質に接触させる(工程1206)。次いで、本プロセスは、熱可塑性物質に圧力を印加することによってマグネシウムブラダーが複合材構造体の形になるようにマグネシウムブラダーを超塑性状態に加熱する(工程1208)。
【0072】
次いで、本プロセスは、第一レベルの圧力よりも高い第二レベルの圧力に空間を加圧して、複合材構造体を成形する(工程1210)。マグネシウムブラダーを第二レベルの圧力にしたままで複合材構造体を冷却する(工程1212)。
【0073】
プレス機を開き、型から複合材構造体を取り出す(工程1214)。次いで、本プロセスは、マグネシウムブラダーが再使用可能であるかどうかを決定する(工程1216)。マグネシウムブラダーが再使用可能である場合には、本プロセスが他のサイクル用に工程1200に戻り、そのマグネシウムブラダーを用いて第二複合材構造体を成形する。マグネシウムブラダーが再使用可能ではない場合には、プロセスが終了し、又は、新たなマグネシウムシートをフレームに取り付けて、第二複合材構造体を製造する。
【0074】
図示されている多様な例示的な実施形態のフローチャートとブロック図は、例示的な実施形態の装置と方法の一部の想定される実施形態の構造、機能、動作を例示するものである。この点に関して、フローチャートやブロック図の各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、及び/又は工程やステップの一部を表すものであり得る。
【0075】
本開示の例示的な実施形態は、
図13に示されるような航空機の製造と整備方法1300や
図14に示されるような航空機1400に関して説明され得るものである。まず、
図13を参照すると、例示的な実施形態に係る航空機の製造と整備方法のブロック図の例示が示されている。製造準備段階において、航空機の製造と整備方法1300は、
図14の航空機1400の仕様及び設計1302と材料調達1304とを含み得る。
【0076】
製造段階においては、
図14の航空機1400の部品とサブアセンブリの製造1306と、システム統合1308が行われる。その後、
図14の航空機1400が認証と搬送1310を得て、就航1312する。顧客による就航1312の間に、
図14の航空機1400の所定の整備1314(変更、再構成、改造、又は他の整備が含まれ得る)がスケジュールされる。
【0077】
部品とサブアセンブリの製造1306において、ブラダー212を備える複合材製造システム202を用いて、
図2の複合材構造体204を作製し得る。また、
図14の航空機1400の変更、再構成、又は改造の一部として、所定の整備1314において複合材製造システム202内の構成要素が使用され得る。
【0078】
航空機の製造と整備方法1300の各プロセスは、システムインテグレータ、サードパーティ、オペレータ、それ等の組み合わせによって実施又は実行され得る。こうした例において、オペレータは顧客であり得る。説明目的として、システムインテグレータとして、任意の数の航空機製造者や主要なシステム下請け業者が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、サードパーティとして、任意の数のベンダー、下請け業者、サプライヤが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、オペレータは、航空会社、リース業者、軍隊、整備業者等であり得る。
【0079】
以下
図14を参照すると、例示的な実施形態を用いて作製された複合材構造体が使用され得る航空機の例示が示されている。この例では、航空機1400は、
図13の航空機の製造と整備方法1300によって製造され、機体1402、複数のシステム1404、内装1406を含み得る。システム1404の例として、推進システム1408、電気システム1410、油圧システム1412、環境システム1414のうち一つ以上が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれ得る。航空宇宙の例が示されているが、自動車産業等の他の産業に別の例示的な実施形態が適用され得る。
【0080】
本開示の装置及び方法は、
図13の航空機の製造と整備方法1300の少なくとも一つの段階において採用され得る。例示的な一例では、
図13の部品とサブアセンブリの製造1306において製造される部品やサブアセンブリが、航空機1400が
図13の就航1312中において製造される部品やサブアセンブリと同様に製造され得る。更に他の例としては、
図13の部品とサブアセンブリの製造1306やシステム統合1308等の製造段階において、一つ以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又はこれらの組み合わせが利用され得る。航空機1400が
図13の就航1312中において、整備1314において、又はその両方において、一つ以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又はこれらの組み合わせが利用され得る。或る数の例示的な実施形態の使用が、航空機1400の組み立てを実質的に促進し、航空機1400のコストを削減し、又は、航空機1400の組み立ての促進と航空機1400のコストの削減の両方を達成し得る。
【0081】
例示的な実施形態を用いて、複合材製造システムが短いサイクル時間で効率的に動作することができる。熱可塑性物の圧縮成形を、従来用いられているシステムよりも四倍速く完了させることができる。例示的な実施形態は、同じサイクルで熱可塑性物質のコンソリデーションと成形を行うように構成されているので、必要なプロセスが少なくなる。結果として、熱可塑性物質が緩い複数のプライから正しい形状の部品になることができる。
【0082】
例示的な実施形態は、従来の金型よりもはるかに安価な物質を使用する。プレス機の片側のみに高価な金型が必要となるので、コスト削減が実現される。また、公差が許容される場合には、ブラダーを用いて、一つよりも多くの構造体を作製して、更なる節約を達成し得る。
【0083】
また、例示的な実施形態は、複合材構造体にプライドロップが存在する場合における正確な圧縮成形を提供する。結果として、例示的な実施形態は、複雑な幾何学的形状の複合材用の片面金型を提供することができる。
【0084】
例示的な実施形態のいくつかの代替例では、ブロックに記されている機能が、図に記されている順序以外で行われ得る。例えば、一部の場合では、関与している機能に応じて、連続して示されている二つのブロックが実質的に同時に実行され得て、又は、場合によっては、逆の順序でブロックが行われ得る。また、フローチャートやブロック図に例示されているブロックに他のブロックが追加され得る。
【0085】
多様な例示的な実施形態の説明を例示及び説明目的で与えてきたが、その説明は、包括的なものではなく、開示されている形態の実施形態に限定されるものでもない。多様な修正と変更が当業者には明らかである。更に、多様な例示的な実施形態は、他の望ましい実施形態と比較して異なる特徴を与え得る。選択された実施形態は、実施形態の原理、実際的な応用を最も良く説明するため、そして、想定される特定の使用に適するような多様な修正を有する多様な実施形態について当業者が本開示を理解することができるように選択されて説明されているものである。