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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-193050(P2020-193050A)
(43)【公開日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】エレベーター調速機
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/04 20060101AFI20201106BHJP
【FI】
   B66B5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-98025(P2019-98025)
(22)【出願日】2019年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 広基
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA07
3F304CA13
3F304DA23
3F304DA27
3F304DA28
3F304DA38
(57)【要約】
【課題】 当接部の交換要否を容易に判定し、交換回数を低減できるエレベーター調速機を提供する。
【解決手段】 乗りかご3の下降速度が所定過速度に達したとき可動把持要素26と固定シュー25の間に調速機ロープ10を挟み込んで制動する。制動したときの可動把持要素26と固定シュー25との位置関係の変化によって、制動に伴う当接部(25,26)の損耗程度を検出する損耗測定部30を設けた。可動把持要素26が固定シュー25との間に調速機ロープ10を挟み込む方向に付勢するための把持ばね28を設けた。その挟み込む方向は、固定端28aから自由端28bの方向である。損耗測定部30は基端30aと先端30bとを形成し、可動把持要素26から遠い側に位置する固定端28aに基端30aが固定され、自由端28bと可動把持要素26との接続部37の近傍まで先端30bが延設されたゲージ36を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの下降速度が所定過速度に達したとき可動把持要素と固定シューの間に調速機ロープを挟み込んで制動するエレベーター調速機であって、
前記調速機ロープが挟み込まれたときの前記可動把持要素と前記固定シューとの位置関係の変化によって、前記制動に伴う当接部の損耗程度を検出する損耗測定部を設けた、
エレベーター調速機。
【請求項2】
前記可動把持要素が前記固定シューとの間に前記調速機ロープを挟み込む方向に付勢力を与える把持ばねをさらに備え、
該把持ばねは固定端から自由端の方向に前記付勢力が設定され、
前記損耗測定部は、基端と先端とを形成するとともに、前記可動把持要素から遠い側に位置する前記固定端に前記基端が固定されており、前記自由端と前記可動把持要素との接続部の近傍まで前記先端が延設されたゲージを有する、
請求項1に記載のエレベーター調速機。
【請求項3】
前記ゲージは、前記調速機ロープが挟み込まれたときの前記可動把持要素と前記固定シューとの位置関係の変化を前記把持ばねの固定端から自由端までの距離の変化として視認可能に形成され、
該ゲージと前記自由端との相対位置関係に応じて前記当接部の交換要否を識別可能な目印を付した、
請求項2に記載のエレベーター調速機。
【請求項4】
前記調速機ロープは前記乗りかごに連結され、
前記調速機ロープが巻き掛けられた調速機プーリーと、
該調速機プーリーの回転速度に応じて遠心力により前記調速機プーリーの径方向外側に向って拡がる振子と、
前記調速機ロープを把持する可動把持要素と、
回動軸の周りに回動可能に構成され、前記可動把持要素と係合することにより該可動把持要素を支持し、前記回動軸の周りを回動することにより前記可動把持要素の支持を解除するフックとを有し、
前記振子は前記調速機プーリーの径方向外側に向って拡がることによって、前記乗りかごの前記所定過速度においてフックに作動して該フックによる前記可動把持要素の支持を解除する、
請求項1に記載のエレベーター調速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保安機構としてのエレベーター調速機に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特許文献1がある。この公報には、昇降体に連結された調速用ロープと、前記調速用ロープが巻き掛けられた綱車と、前記綱車の回転速度に応じて遠心力により前記綱車の径方向外側に向って拡がる振子と、前記調速用ロープを把持するキャッチウェート(以下、「可動把持要素」ともいう)と、回転軸の周りに回転可能に構成され、前記キャッチウェートと係合することにより前記キャッチウェートを支持し、前記回転軸の周りに第1の回転方向に回転することにより前記キャッチウェートの支持を解除するフックとを有し、前記振子は前記綱車の径方向外側に向って拡がることによって前記昇降体の非常停止速度において前記フックと当接して前記フックによる前記キャッチウェートの支持を解除する調速機を備えたエレベーター装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017/130264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された保安機構は、当接部の損耗程度を把握することが困難である。なお、当接部とは、可動把持要素が、例えば、固定シュー等の間に調速機ロープを挟み込む際の把持部において、それぞれが当接する箇所である。これらは、調速機ロープを挟み込む度に、その調速機ロープとの当接部が摩耗する。ところで、エレベーター装置において、調速機における把持部は摩耗する部分である。調速機は、把持部が損耗状態に応じて交換されれば良いが、一般に、調速機を交換しなければならない程度に把持部が損耗する前に、調速機は交換される。そこで、本発明は、交換回数を低減できるエレベーター調速機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、乗りかごの下降速度が所定過速度に達したとき可動把持要素と固定シューの間に調速機ロープを挟み込んで制動するエレベーター調速機であって、前記可動把持要素と前記固定シューの間に前記調速機ロープを挟み込むことによって損耗程度を検出する損耗測定部を設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、交換回数を低減できるエレベーター調速機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るエレベーター調速機(本調速機)を適用するエレベーターの概略構成図である。
図2図1に示したエレベーター調速機(本調速機)の具体的な構成を示す正面図である。
図3図2に示したエレベーター調速機(本調速機)の側面図である。
図4図2に示したエレベーター調速機(本調速機)が作動して調速機ロープを把持した状態を示す正面図である。
図5図2に示したエレベーター調速機(本調速機)の把持部に損耗が発生した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の説明において、本発明の実施形態に係るエレベーター調速機を本調速機と略すことがある。
【0009】
図1は、本調速機を適用するエレベーターの概略構成図である。図1に示すように、エレベーターは、昇降路上部に設置された巻上機を有し、巻上機のトラクションシーブ1に巻き掛けた主索2の一端部に乗りかご3が連結され、主索2の他端部に釣り合いおもり4が連結されている。乗りかご3は、昇降路内に設置された一対のガイドレール5A,5Bに沿って昇降移動可能に構成され、釣り合いおもり4は昇降路内に設置された他の一対のガイドレール6A,6Bに沿って昇降移動可能に構成されている。
【0010】
また本調速機7は、昇降路の上部に配置された調速機プーリー8と、昇降路の下方側に設置された張りプーリー9と、の間に、無端状に調速機ロープ10が巻き掛けられた構成を有している。乗りかご3の下部には非常ブレーキ12が配置され、乗りかご3に取り付けられた作動レバー11の一端が非常ブレーキ12の作動体側に連結され、作動レバー11の他端には調速機ロープ10が連結されている。
【0011】
このため、本調速機7の調速機ロープ10は、作動レバー11を介して乗りかご3と同期して昇降し、乗りかご3の昇降速度が定格速度を超えて第1過速度(例えば、定格速度の1.3倍を超えない速度)に達したことを検出すると、トラクションシーブ1を駆動している巻上機駆動装置の電源及びこの駆動装置を制御する制御装置の電源をそれぞれ遮断することになる。
【0012】
また、本調速機7は、乗りかご3の下降速度が第2過速度(例えば、定格速度の1.4倍を超えない速度)に達すると、乗りかご3に設けた作動レバー11を介して非常ブレーキ7を動作させ、乗りかご3が機械的に非常停止させるように構成されている。図2及び図3を用いて、図1に示した本調速機7について、より詳細に説明する。
【0013】
図2図1に示した本調速機の具体的な構成を示す正面図である。図3は、図2に示した本調速機の側面図である。図2及び図3に示すように、調速機プーリー8は、筐体13に固定された支軸14に回転可能に支持されている。上述したように乗りかご3に取り付けられた作動レバー11の一端に調速機ロープ10が連結されているため、乗りかご3と一緒に調速機ロープ10が移動するとき、調速機プーリー8は支軸14を中心にして回転される。
【0014】
調速機プーリー8の支軸14の外周部には支軸14の両側に延びて、かつ、調速機プーリー8と一緒に回転するアーム17が設けられており、このアーム17の両端部に略円弧状に形成された振子15,16の回動軸33,34がそれぞれ可回転的に連結されている。振子15における回動軸33の位置は偏寄しており、その一端部15aは他端部15bよりも重くなっている。
【0015】
同様に振子16における回動軸34の位置も偏寄しており、その一端部16aと他端部16bを有しており、一端部16aは、他端側16bよりも重くなっている。調速機プーリー8と一緒にアーム17が回転すると、振子15,16も共に回転するが、振子15,16の一端部15a,16a側は遠心力を受けて他端部15b,16b側よりも支軸14から離れるように回動軸33,34で回動する。
【0016】
振子16の他端部16b側には、他端部16bが支軸14に接近する方向へ変位する量を制限する速度調整ばね18が配置されている。この速度調整ばね18は、アーム17の腕部19と振子16の他端部16b間に配置されている。このため、振り子15,16に作用する遠心力が速度調整ばね18の抵抗力を超えたとき、速度調整ばね18が弾性変形し、振り子15,16がアーム17との連結部である回動軸33,34を中心に回動することになる。
【0017】
また、振り子16の他端部16bには、振子16における回動軸34との対向に突出した爪部20が形成されている。爪部20は、遠心力により振り子15,16が回動軸33,34を中心に回動して振り子16の他端部16bが支軸14に接近する方向に変位すると、後述するラチェット21の歯部21aに係合する。振子15,16における一端部15a,16aの外側には、検出用当接部22がそれぞれ外側に突出して形成されている。この検出用当接部22は、振子15,16が回動した場合に、過速スイッチ23に当接する部材である。
【0018】
支軸14に回転可能に支持されたラチェット21は、ほぼ円板状に形成されており、その一方の平面が振子15,16に対向している。ラチェット21の外周面には、複数の歯部21aが離散的に形成されている。振子16が回動して一端部16aが遠心力で外側に広がると、他端部16bが内側に移動して、ラチェット21の歯部21aに振子16の爪部20が係合する。この係合時に動作するシュー機構24は、固定シュー25と、キャッチウェートなどの可動把持要素26と、ロッド27と、把持ばね28と、フック29と、損耗測定部30などを有して構成されている。
【0019】
固定シュー25は、筐体13に固定されており、調速機ロープ10の一方側で対向している。これに対して調速機ロープ10の他方側に配置された可動把持要素26は、ロッド27の軸方向一端に回動可能に取り付けられ、また可動把持要素26の自由端側は調速機ロープ10の他方側から挟み込み可能に固定シュー25と対向して配置されている。ロッド27の軸方向他端は、固定プレート31を介して筐体13に支持され、また可動把持要素26が取り付けられたロッド27の一端側には、ばね座32が設けられており、固定プレート31とばね座32間に配置された把持ばね28にロッド27が挿入されている。
【0020】
したがって、圧縮ばねである把持ばね28は、ロッド27のばね座32を介して可動把持要素26を固定シュー25側へ付勢している。フック29は回動軸35によって筐体13に回動可能に支持されており、その一端部がラチェット21の方向に延在された腕部29aを有している。この腕部29aは、ラチェット21の側面に設けられるラチェットピン21bに係合している。
【0021】
ラチェット21が回転しない状態では、腕部29aとラチェットピン21bの係合状態が保持され、同時に、ピン26aとフック部29bの係合状態も保持されている。このため、可動把持要素26は図示のような傾きを有した状態に保持されており、その自由端部が固定シュー25から離れている。後述するように、可動把持要素26は、乗りかごの下降速度が所定過速度に達したとき、過速度検出機能により、通常の支持ロック状態が解除される部材である。その結果、保安機構が非常ブレーキを作動させる。
【0022】
損耗測定部30は、種々の構成を採用することができるが、調速機ロープ10を固定シュー25と可動把持要素26間に把持することによって生じる把持部の損耗の程度を把握するものである。ここで損耗測定部30は、固定プレート31に一端の基端30aを固定し、かつ、その他端である先端30bをばね座32付近まで延ばしたゲージ36を有する。なお、ばね座32は、把持ばね28の両端のうち自由端側である。このゲージ36には、自由端側であるばね座32とゲージ36との相対的な位置関係の変化を読み取ることができる目盛りが付されている。次に、本調速機7の動作について説明する。
【0023】
上述した位置関係の変化とは、当接部の損耗程度と、調速機ロープ10が挟み込まれたときの可動把持要素26と固定シュー25との位置関係の変化に基づいている。すなわち、当接部の損耗程度が進むと、摩耗した分だけ調速機ロープ10を挟み込むスペースに余裕が生じるため、調速機ロープ10が挟み込まれたときに、可動把持要素26と固定シュー25との位置関係が変わることに基づいている。
【0024】
通常時、例えば乗りかご3が下降すると、乗りかご3と一緒に調速機ロープ10も同方向に移動して調速機プーリー8を回転させる。これにより、振子15,16に遠心力が作用し、その遠心力が速度調整ばね18の抵抗力を越えると、振子15,16が回動軸33,34を中心にして回動する。
【0025】
そして、何らかの要因により、乗りかご3の下降速度が第1過速度に達すると、振子15,16の検出用当接部22が過速スイッチ23に当接する。これにより、本調速機7は、乗りかご3の昇降速度が第1過速度に達したことを検出し、トラクションシーブ1を駆動する駆動装置の電源及びこの駆動装置を制御する制御装置の電源をそれぞれ遮断する。
【0026】
また、乗りかご3の下降速度が第2過速度に達すると、回動した振子16の他端部16bに設けられる爪部20が、ラチェット21の歯部21aに係合し、ラチェット21を図2において反時計回りへ回転させる。このようにラチェット21が回転すると、ラチェットピン21bを介してフック29が回動軸35を中心にして時計回りに回動する。
【0027】
これに応じてフック部29と可動把持要素ピン26aとの係合が解除され、可動把持要素26の自由端側は自重で落下し、可動把持要素26と固定シュー25が対向して調速機ロープ10を挟み込む。この状態で可動把持要素26は把持ばね28により固定シュー25方向に付勢されているため、可動把持要素26と固定シュー25間に調速機ロープ10が挟持されて制動する。これにより、調速機ロープ10の移動が停止した状態で乗りかご3が下降を継続する結果、調速機ロープ10に連結された作動レバー11が引き上げられ、非常ブレーキ12を作動させて、乗りかご3が機械的に非常停止される。
【0028】
図4は、図2に示した本調速機が作動して調速機ロープを把持した状態を示す正面図である。図4に示すように、本調速機7が作動して調速機ロープ10を固定シュー25と可動把持要素26間に把持した状態となる。このとき把持ばね28は、ロッド27のばね座32を介して可動把持要素26を固定シュー25側へ付勢しており、可動把持要素26とロッド27はほぼ直線的に保持された状態で固定シュー25側に可動把持要素26を押圧している。
【0029】
図4は、これらの把持部における損耗が無い状態を示しており、ばね座32はゲージ36における目盛りの基準位置に対応している。エレベーターの保守作業者が同部を目視すると、この対応関係から把持部における損耗が無い状態を容易に把握することができる。
【0030】
図5は、図2に示した本調速機の把持部に損耗が発生した状態を示す正面図である。図5は、把持部に損耗が発生した状態の本調速機7を示している。このときも、把持ばね28は、ロッド27のばね座32を介して可動把持要素26を固定シュー25側へ付勢しており、可動把持要素26とロッド27はほぼ直線的に保持された状態で固定シュー25側に可動把持要素26を押圧している。
【0031】
しかし、把持部における損耗が発生しており、ばね座32はゲージ36における目盛りの基準位置よりも固定シュー25側に移動している。エレベーターの保守作業者が同部を目視すると、この対応関係から把持部における損耗が発生していること、また交換が必要な程度の損耗であることを容易に把握することができる。図示の都合上、ゲージ36の目盛りは単なる目盛りのように表示しているが、交換作業が必要な損耗かどうかを判断する限界を示す目盛りであっても良い。
【0032】
また、上述したように損耗測定部30は、種々の構成のエレベーター調速機に採用することができ、調速機ロープ10を固定シュー25と可動把持要素26間に把持することによって生じる把持部の損耗の程度を把握するものとして構成することができる。
【0033】
以上説明したように、本調速機7は、乗りかご3の下降速度が所定過速度に達したときキャッチウェートなどの可動把持要素26と固定シュー25間に調速機ロープ10を挟み込んで制動するエレベーター調速機において、可動把持要素26と固定シュー25間に調速機ロープ10を挟み込むことによって損耗程度を検出する損耗測定部30を設けたものである。
【0034】
このような構成の本調速機7は、摩耗部の摩耗程度を目視可能な摩耗表示機能として、損耗測定部30によって把持部の摩耗を検出することができる。これにより、調速機7全体、又はその当接部について交換要否を容易に判定することにより、それらの交換回数を低減できる。この点について、従来のエレベーター調速機では、把持部の摩耗を簡単に目視検出することはできなかった。そのため、調速機7全体、又はその当接部について交換要否を容易には判定できず、把持部の摩耗状態とは直接的な関係がないタイミングで交換することの無駄があった。
【0035】
また、本調速機7は、上述の構成に加えて、固定シュー25間に調速機ロープ10を挟み込む可動把持要素26に付勢力を与える把持ばね28を設け、損耗測定部30は、把持ばね28の反可動把持要素側にその一端の基端28aを固定し、かつ、その他端である自由端側、すなわち先端28bを把持ばね28の可動把持要素26の側付近まで延ばして構成されたゲージ36を備えた。このように簡素な構成のゲージ36を使用することで、把持部の摩耗による調速機ロープ10の把持力低下の程度を、計量的に視認することができる。
【0036】
本調速機7は、以下のように総括できる。
[1]本調速機7は、乗りかご3の下降速度が所定過速度に達したとき可動把持要素26と固定シュー25の間に調速機ロープ10を挟み込んで制動する保安機構を構成するものである。本調速機7には、損耗測定部30を設けた。この損耗測定部30は、調速機ロープ10が挟み込まれたときの可動把持要素26と固定シュー25との位置関係の変化によって、制動に伴う当接部の損耗程度を検出する。
【0037】
上述したように、可動把持要素26は、乗りかご3の下降速度が所定過速度に達したとき、過速度検出機能により、通常の支持ロック状態が解除される部材である。その結果、保安機構が非常ブレーキを作動させる。従来の調速機では、当接部の損耗程度、すなわち把持部が制動動作することに伴って摩耗する程度を検出することができなかった。そのため、その調速機の交換要否を判定できず、把持部の摩耗状態とは直接的な関係がないタイミングで交換する必要があった。これに対し、本調速機7には、損耗測定部30を設けた。その損耗測定部30は、制動に伴う当接部の損耗程度を検出できる。
【0038】
当接部とは、固定シュー25、及び可動把持要素26が、調速機ロープ10を挟み込む際の把持部をいう。つまり、把持部において、それぞれが当接する箇所である。これらは、調速機ロープ10を挟み込む度に、その調速機ロープ10との当接部が摩耗する。当接部が摩耗することにより、調速機ロープ10が挟み込まれたときの可動把持要素26と固定シュー25との位置関係が変化する。
【0039】
すなわち、摩耗した分だけ調速機ロープ10を挟み込むスペースに余裕が生じる。この余裕分は、可動把持要素26と固定シュー25との位置関係の変化として現れる。この位置関係の変化は、エレベーターの保守作業者が視認するだけで検出できる。このように、本調速機7は、摩耗部の摩耗程度を目視可能な摩耗表示機能を備え、当接部の交換要否を容易に判定することにより、交換回数を低減できる。
【0040】
[2]本調速機7には、可動把持要素26が固定シュー25との間に調速機ロープ10を挟み込む方向に付勢力を与える把持ばね28をさらに設けることが好ましい。この把持ばね28は、固定端28aから自由端28bの方向に付勢力が設定されている。また、損耗測定部30は、以下の形状のゲージ36を有することが好ましい。そのゲージ36は、基端30aと先端30bとを形成する。
【0041】
また、ゲージ36の基端30aは、把持ばね28の固定端28aに固定されている。この固定端28aは、可動把持要素26から遠い側に位置する。さらにゲージ36の先端30bは、把持ばね28の自由端28bの近傍まで延設されている。この自由端28bは、可動把持要素26に接続部37で接続されている。したがって、ゲージ36の先端30bは、この接続部37の近傍まで延設されていることになる。
【0042】
[3]ゲージ36は、可動把持要素26と固定シュー25との位置関係を視認可能に形成されている。この位置関係は、把持ばね28の固定端28aから自由端28bまでの距離として表示される。このように表示された距離の変化を監視することによって、調速機ロープ10が挟み込まれたときの状態が徐々に変化することを視認できる。ゲージ36には、視認による監視を確実容易にするための目印が付されている。この目印は、ゲージ36と自由端28bとの相対位置関係に応じて当接部の交換要否を識別可能にするためにある。
【0043】
なお、上記[2],[3]は、可動把持要素26と固定シュー25との位置関係の変化を特定するための手段である。さらに、下記[4]は、本調速機7を実現するための構成を、より具体的に特定したものである。
【0044】
[4]本調速機7は、調速機ロープ10と、調速機プーリー8と、振子15,16と、可動把持要素26と、フック29とを有して構成されても良い。調速機ロープ10は、乗りかご3に連結されている。調速機プーリー8は、調速機ロープ10が巻き掛けられている。振子15,16は、調速機プーリー8の回転速度に応じた遠心力により、調速機プーリー8の径方向外側に向って拡がる。可動把持要素26は、接続部37の周りに回動可能に構成され、調速機ロープ10を把持する。フック29は、可動把持要素26と係合することにより可動把持要素26を支持する一方、回動軸35の周りを回動することにより可動把持要素26の支持を解除する。
【0045】
本調速機7は、乗りかご3の非常停止速度において、振子15,16が調速機プーリー8の径方向外側に向って拡がる。振子15,16は、その広がる動作に応じて、フック29を作動させる。振り子15,16に作動されたフック29は、そのフック29による可動把持要素26の支持を解除する。その結果、保安機構は、本調速機7によって検出された異常事態、すなわち乗りかご3の下降速度が規定を超えたことを検出して非常ブレーキ12を作動させる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。またある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
3 乗りかご、10 調速機ロープ、25 固定シュー、26 可動把持要素(キャッチウェート)、30 損耗測定部
図1
図2
図3
図4
図5