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特開2020-196863組成物、コーティング方法及び多層構造体
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  • 特開2020196863-組成物、コーティング方法及び多層構造体 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-196863(P2020-196863A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】組成物、コーティング方法及び多層構造体
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20201113BHJP
   B01J 21/16 20060101ALI20201113BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20201113BHJP
   B01J 29/48 20060101ALI20201113BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20201113BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20201113BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20201113BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   C09D1/00
   B01J21/16 M
   B01J35/02 J
   B01J29/48 M
   C09D7/61
   B05D5/00 H
   B05D7/24 301E
   B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-43377(P2020-43377)
(22)【出願日】2020年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2019-99607(P2019-99607)
(32)【優先日】2019年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】芝 直樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】古川 和彦
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4G169
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA34
4D075DB38
4D075DC02
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB01
4D075EC02
4D075EC04
4F100AA00A
4F100AA03A
4F100AA17A
4F100AC03A
4F100AC05A
4F100AK15B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CC00A
4F100JL08A
4F100JM01A
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4G169AA03
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4G169BA10A
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4G169BA22B
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC60A
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4G169EB18X
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4G169HE03
4G169HE12
4G169ZA11B
4G169ZA46B
4G169ZC06
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4J038AA011
4J038HA216
4J038HA441
4J038HA501
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4J038MA07
4J038MA08
4J038NA02
4J038NA05
4J038PB05
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を容易かつ確実に形成できる組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、酸化タングステン粒子と、酸化タングステン粒子以外の無機粒子と、溶媒とを含有する。前記無機粒子は、粘土鉱物であることが好ましい。前記粘土鉱物は、ベントナイト、サポナイト又はマイカであることが好ましい。前記酸化タングステン粒子の体積中位径(D50)は、0.01μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化タングステン粒子と、
酸化タングステン粒子以外の無機粒子と、
溶媒とを含有する、組成物。
【請求項2】
前記無機粒子は、アルカリ性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記無機粒子は、粘土鉱物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粘土鉱物は、層状珪酸塩を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記層状珪酸塩は、層間イオンを含み、
前記層間イオンは、ナトリウムイオンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記粘土鉱物は、ベントナイト、サポナイト又はマイカである、請求項3〜5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸化タングステン粒子の体積中位径(D50)は、前記無機粒子の体積中位径(D50)よりも小さい、請求項1〜6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸化タングステン粒子の体積中位径(D50)は、0.01μm以上10.0μm以下である、請求項1〜7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記無機粒子の体積中位径(D50)は、0.02μm以上20.0μm以下である、請求項1〜8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記溶媒は、水を含む、請求項1〜9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸化タングステン粒子の含有量に対する前記無機粒子の含有量の比は、0.8以上2.5以下である、請求項1〜10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の組成物を、基材の表面に直接コーティングする工程を備える、コーティング方法。
【請求項13】
前記基材は、有機材料を含有する、請求項12に記載のコーティング方法。
【請求項14】
基材と、
前記基材の表面を直接コーティングするコーティング層とを備え、
前記コーティング層は、酸化タングステン粒子と、酸化タングステン粒子以外の無機粒子とを含有する、多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、コーティング方法及び多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、光が照射されることにより光触媒活性を発揮する物質である。光触媒としては、酸化チタン粒子が代表的である。酸化チタン粒子は、例えば、基材(例えば、壁紙等の建築材料)のコーティング材として使用される。但し、基材を酸化チタン粒子で直接コーティングした場合、形成されたコーティング層は十分な光触媒活性を発揮しない傾向がある。これは、コーティング層に含有される酸化チタン粒子が、本来の分解対象物よりも、基材に含まれる有機物又は基材そのものを優先的に分解するためである。この現象は、基材が有機材料を含有する場合(例えば、基材が樹脂製壁紙等である場合)に顕著である。
【0003】
そこで、基材を酸化チタン粒子でコーティングする方法として、例えば、まず基材上に無機材料を含有するプライマー層を形成した後、プライマー層上に酸化チタン粒子を含有するコーティング層を形成する第1の方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献1には、例えば、プラスチックフィルムと、プライマー層と、光触媒薄膜層とが順次積層された壁紙用光触媒付きフィルムを壁紙(基材)に貼り付ける第2の方法が提案されている。第1の方法及び第2の方法では、プライマー層により基材及び光触媒の接触を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−35198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の第1の方法は、基材上にプライマー層を形成する工程が必要であるため、施工が比較的煩雑である。また、上述の第2の方法は、積層体の製造コストが高くなり易く、かつ基材上にプラスチックフィルム層、プライマー層及びコーティング層を備える3層構造体が積層されるため、各層の材質によっては十分な層間密着性を確保できない場合がある。
【0007】
更に、酸化チタン粒子は、主に紫外線の照射により光触媒活性を発揮する。そのため、酸化チタン粒子を含有するコーティング層は、室内照明(特に、LED照明)下では十分な光触媒活性を発揮できない場合がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を容易かつ確実に形成できる組成物及びコーティング方法を提供することである。本発明の別の目的は、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を備え、かつ生産性に優れる多層構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る組成物は、酸化タングステン粒子と、酸化タングステン粒子以外の無機粒子と、溶媒とを含有する。
【0010】
本発明の一実施形態に係るコーティング方法は、上述の組成物を、基材の表面に直接コーティングする工程を備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係る多層構造体は、基材と、前記基材の表面を直接コーティングするコーティング層とを備える。前記コーティング層は、酸化タングステン粒子と、酸化タングステン粒子以外の無機粒子とを含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物及びコーティング方法は、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を容易に形成できる。本発明の多層構造体は、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を備え、かつ生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】酸化タングステン粒子の含有量に対する無機粒子の含有量の比(IO/TO)と、アセトアルデヒドの低減率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。
【0015】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の組成物は、酸化タングステン粒子と、酸化タングステン粒子以外の無機粒子(以下、単に「無機粒子」と記載することがある)と、溶媒とを含有する。本発明の組成物は、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を容易に形成できる。その理由は、以下のように推測される。
【0016】
本発明の組成物は、可視光の照射により光触媒活性を発揮する光触媒(可視光応答型光触媒)である酸化タングステン粒子を含有する。また、本発明の組成物により形成されるコーティング層は、基材上を直接コーティングする場合においても、無機粒子が基材及び酸化タングステン粒子の接触を抑制するバリア材として機能する。そのため、本発明の組成物は、基材上に直接塗布するという簡単な処理のみで、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を形成できる。また、このコーティング層は、単層構造であるため、層間密着性を確保し易い。
【0017】
なお、光触媒によって分解される有機物としては、例えば、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOC)が挙げられ、より具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアンモニアが挙げられる。
【0018】
[酸化タングステン粒子]
酸化タングステン粒子は、酸化タングステンを主成分とする粒子である。酸化タングステン粒子における酸化タングステンの含有割合としては、90質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましい。酸化タングステン粒子に含有される酸化タングステンとしては、例えば、WO3(三酸化タングステン)、WO2、WO、W23、W45、W411、W2573、W2058、及びW2468、並びにこれらの混合物が挙げられる。形成されるコーティング層の光触媒活性を向上させる観点から、酸化タングステンとしては、WO3が好ましい。
【0019】
酸化タングステン粒子に含有される酸化タングステンの結晶構造は、特に限定されない。酸化タングステンの結晶構造としては、例えば、単斜晶、三斜晶、斜方晶、及びこれらのうち少なくとも2種の混晶が挙げられる。
【0020】
酸化タングステン粒子は、実質的に酸化タングステンのみを含有する酸化タングステンコア粒子と、この酸化タングステンコア粒子が担持する助触媒とを備える複合粒子であってもよい。このような複合粒子を用いることで、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。酸化タングステンコア粒子は、1種の助触媒のみを担持していてもよく、2種以上の助触媒を担持していてもよい。
【0021】
助触媒に含有される金属としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム、鉄、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、ニオブ、ジルコニウム、及びモリブデンが挙げられる。これらの金属は、例えば、錯体、塩化物、臭化物、沃化物、酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、燐酸塩、又は有機酸塩の形態で、助触媒に含有されていてもよい。助触媒の好適な例としては、白金が挙げられる。酸化タングステン粒子は、酸化タングステンコア粒子と、酸化タングステンコア粒子に担持される助触媒としての白金とを備える複合粒子が好ましい。
【0022】
酸化タングステン粒子における助触媒の含有割合(以下、助触媒担持率と記載することがある)としては、0.01質量%以上3質量%以下が好ましい。助触媒担持率を0.01質量%以上3質量%以下とすることで、形成されるコーティング層の光触媒活性を更に向上できる。
【0023】
酸化タングステン粒子の体積中位径(以下、「D50」と記載することがある)としては、0.01μm以上10.0μm以下が好ましく、0.15μm以上2.5μm以下がより好ましく、0.15μm以上0.5μm以下が更に好ましい。D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折散乱法に基づき測定された体積基準の50%積算径である。酸化タングステン粒子のD50は、酸化タングステン粒子の二次粒子についての物性である。また、酸化タングステン粒子が酸化タングステンコア粒子及び助触媒を備える複合粒子である場合、酸化タングステン粒子のD50は、この複合粒子のD50である。
【0024】
酸化タングステン粒子は、他の光触媒(例えば、酸化チタン粒子)と比較して密度が大きく、沈降し易い粒子である。そのため、酸化タングステン粒子の分散性を向上させるためには、酸化タングステン粒子のD50を0.01μm以上10.0μm以下と非常に小さくすることが好ましい。
【0025】
酸化タングステン粒子のD50は、無機粒子のD50よりも小さいことが好ましい。このように、酸化タングステン粒子のD50を無機粒子のD50よりも小さくすることで、酸化タングステン粒子の分散性を向上できる。また、コーティング後に無機粒子上に酸化タングステン粒子が堆積し易くなり、基材との接触を抑制し易くなる。
【0026】
酸化タングステン粒子の個数平均一次粒子径としては、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。酸化タングステン粒子の個数平均一次粒子径は、例えば、10nm以上である。酸化タングステン粒子の個数平均一次粒子径を小さくするほど、比表面積を増大でき、その結果、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。
【0027】
本発明の組成物における酸化タングステン粒子の含有割合としては、0.5質量%以上10.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。酸化タングステン粒子の含有割合を0.5質量%以上とすることで、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。酸化タングステン粒子の含有割合を10.0質量%以下とすることで、酸化タングステン粒子の分散性を向上できる。
【0028】
本発明の組成物は、1種の酸化タングステン粒子のみを含有してもよく、2種以上の酸化タングステン粒子を含有してもよい。なお、本発明の組成物は、酸化タングステン粒子に加えて、酸化タングステン粒子以外の光触媒を更に含有していてもよい。
【0029】
[無機粒子]
無機粒子は、酸化タングステン以外の無機材料を主成分とする粒子である。無機粒子は、無機材料を主成分とするため、酸化タングステン粒子の光触媒活性によっては分解され難い粒子である。そのため、無機粒子は、酸化タングステン粒子及び基材の接触を抑制するバリア材として機能する。
【0030】
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、金属粒子及び粘土鉱物が挙げられ、これらの中で粘土鉱物が好ましい。粘土鉱物は、天然粘土鉱物であってもよく、合成粘土鉱物であってもよい。
【0031】
粘土鉱物は、層状珪酸塩を含むことが好ましい。層状珪酸塩は、固形状態では、例えば、複数層が積層して構成される。層状珪酸塩を構成する各層は、珪素原子と酸素原子とを少なくとも含有する。層状珪酸塩は、層間イオンを含むことが好ましい。層間イオンは、層状珪酸塩の各層間に存在する。層間イオンを含む層状珪酸塩は、溶媒に分散させた際に各層が剥がれ易く、微小な粒子として溶媒中に分散し易い。微小な粒子となった層状珪酸塩は、形成されるコーティング層において、基材及び酸化タングステン粒子の接触を抑制し易くなる。そのため、本発明の組成物は、層間イオンを含む層状珪酸塩を含有することで、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。
【0032】
層間イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、又はリチウムイオン(Li+)がより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。層状珪酸塩は、層間イオンとしてナトリウムイオンを含むことで、溶媒に分散させた際に、各層が更に剥がれ易くなる。そのため、本発明の組成物は、層間イオンとしてナトリウムイオンを含む層状珪酸塩を含有することで、形成されるコーティング層の光触媒活性をより向上できる。
【0033】
粘土鉱物としては、例えば、マイカ、ゼオライト、タルク、クロライト、カオリナイト、イライト、グローコナイト、セリサイト及びスメクタイトが挙げられる。スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、スチーブンサイト、ソーコナイト、ヘクトライト、サポナイト及びベントナイト(モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物)が挙げられる。なお、ベントナイトは、不純物として、例えば、石英及び長石を含む。粘土鉱物としては、スメクタイト又はマイカが好ましく、ベントナイト、サポナイト又はマイカがより好ましい。
【0034】
なお、マイカの合成品(合成マイカ)には、膨潤性合成マイカ及び非膨潤性合成マイカが存在する。層状珪酸塩として合成マイカを用いる場合、合成マイカとしては、溶媒への分散性に優れている膨潤性マイカが好ましい。
【0035】
無機粒子は、アルカリ性を有することが好ましい。ここで、酸化タングステン粒子は、水に分散させた際に酸性を示す傾向がある。具体的には、20質量%の酸化タングステン粒子の水分散液のpHは約2〜3である。そのため、無機粒子としてアルカリ性を有する無機粒子を用いることで、形成されたコーティング層において無機粒子及び酸化タングステン粒子が複合化し易くなる。アルカリ性を有する無機粒子としては、例えば、ベントナイト、サポナイト及びマイカが挙げられる。具体的には、5質量%のベントナイト水分散液のpHは、約9〜10である。
【0036】
無機粒子のD50としては、0.02μm以上20.0μm以下が好ましく、0.5μm以上20.0μm以下がより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下が更に好ましく、1.5μm以上3.0μm以下が特に好ましい。無機粒子のD50を0.02μm以上とすることで、無機粒子の分散性を向上できる。無機粒子のD50を20.0μm以下とすることで、無機粒子の沈降を抑制できる。
【0037】
本発明の組成物における無機粒子の含有割合としては、0.5質量%以上20.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上5.5質量%以下がより好ましい。無機粒子の含有割合を0.5質量%以上とすることで、無機粒子がバリア材としての機能を発揮し易くなり、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。無機粒子の含有割合を20.0質量%以下とすることで、本発明の組成物のコーティング性を向上できる。
【0038】
酸化タングステン粒子の含有量に対する無機粒子の含有量の比(無機粒子/酸化タングステン粒子)としては、0.8以上2.5以下が好ましく、1.2以上1.8以下がより好ましい。比(無機粒子/酸化タングステン粒子)を0.8以上とすることで、無機粒子がバリア材としての機能を発揮し易くなり、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。比(無機粒子/酸化タングステン粒子)を2.5以下とすることで、本発明の組成物のコーティング性を向上できる。
【0039】
[溶媒]
溶媒としては、例えば、極性溶媒が挙げられる。極性溶媒としては、例えば、水及びアルコール(例えば、メタノール、エタノール及びイソプロパノール)が挙げられる。溶媒としては、水が好ましい。
【0040】
なお、本発明の組成物は、必要に応じて、他の成分(例えば、バインダー及び添加剤)を更に含有していてもよい。
【0041】
本発明の組成物において、酸化タングステン粒子及び無機粒子の固形分換算での合計含有割合としては、90質量%以上100質量%以下が好ましく、99質量%以上100質量%以下がより好ましい。このように、上述の合計含有割合を90質量%以上100質量%以下とすることで、無機粒子がバリア材としての機能を発揮し易くなり、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。
【0042】
[粘度]
本発明の組成物の粘度としては、10.0mPa・s以上100.0mPa・s以下が好ましい。本発明の組成物の粘度を10.0mPa・s以上100.0mPa・s以下とすることで、酸化タングステン粒子の沈降を抑制できる。
【0043】
[製造方法]
次に、本発明の組成物の製造方法の一例を説明する。本発明の組成物の製造方法は、酸化タングステン粒子形成工程と、混合工程とを備える。なお、市販の酸化タングステン粒子を使用する場合には、酸化タングステン粒子形成工程は省略できる。
【0044】
(酸化タングステン粒子形成工程)
酸化タングステン粒子形成工程は、一次粉砕工程と、二次粉砕工程とを備える。酸化タングステン粒子形成工程は、必要に応じて、助触媒担持工程を更に備えていてもよい。
【0045】
一次粉砕工程を説明する。一次粉砕工程では、酸化タングステンの原料粒子を分散媒中で粉砕(湿式粉砕)する。一次粉砕工程によって、酸化タングステンの原料粒子の個数平均一次粒子径を低下させることができる。
【0046】
湿式粉砕に用いる分散媒としては、例えば、水及びエタノールが挙げられる。湿式粉砕を行う粉砕機としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、及びビーズミルが挙げられる。湿式粉砕では、処理時間を長くする程、酸化タングステンの原料粒子の個数平均一次粒子径を低下させることができる。また、ビーズミルを用いて湿式粉砕を行う場合、ビーズミルの周速を速くする程、酸化タングステンの原料粒子の個数平均一次粒子径を低下させることができる。
【0047】
一次粉砕工程後、粉砕後の酸化タングステンの原料粒子を含む分散液から分散媒の少なくとも一部を除去し、得られた塊状物を二次粉砕工程(又は助触媒担持工程)の原料として用いることができる。分散媒の除去方法としては、例えば、風乾及び加熱乾燥が挙げられる。なお、一次粉砕工程後に助触媒担持工程を行う場合、粉砕後の酸化タングステン粒子が分散した分散液をそのまま助触媒担持工程の原料(酸化タングステンコア粒子)として用いてもよい。
【0048】
助触媒担持工程を説明する。助触媒担持工程では、粉砕後の酸化タングステンの原料粒子を含む分散液に助触媒を添加した後、担持処理を行うことにより、粉砕後の酸化タングステンの原料粒子に助触媒が担持される。具体的な担持処理の方法としては、例えば、加熱処理法、紫外線による光析出法、及び可視光による光析出法が挙げられる。
【0049】
助触媒担持工程においては、助触媒を添加する代わりに、助触媒の前駆体を添加してもよい。助触媒の前駆体を添加する場合、助触媒の前駆体が加熱されることで助触媒に変化し、粉砕後の酸化タングステン粒子に助触媒が担持される。助触媒が白金である場合、助触媒の前駆体としては、例えば、酸化白金(II)、酸化白金(IV)、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、塩化白金酸、ヘキサクロロ白金酸、及びテトラクロロ白金酸、並びにこれらの錯体が挙げられる。
【0050】
助触媒担持工程後、助触媒が担持された粉砕後の酸化タングステンの原料粒子を含む分散液から分散媒の少なくとも一部を除去し、得られた塊状物を二次粉砕工程の原料として用いることができる。分散媒の除去方法としては、例えば、風乾及び加熱乾燥が挙げられる。
【0051】
二次粉砕工程を説明する。二次粉砕工程では、一次粉砕工程で得られた塊状物又は助触媒担持工程で得られた塊状物を気体中で粉砕(乾式粉砕)する。二次粉砕により、酸化タングステンの原料粒子が凝集し、適度なD50を有する二次粒子である酸化タングステン粒子が得られる。
【0052】
乾式粉砕は、例えば、大気中又は不活性ガス雰囲気中で行うことができる。乾式粉砕に用いる粉砕機としては、例えば、衝突板式粉砕機(例えば、衝突板式ジェットミル)、流動層式粉砕機(例えば、流動層式ジェットミル)、機械式粉砕機(例えば、ハンマーミル)、及びボールミルが挙げられる。乾式粉砕は、乳鉢及び乳棒を用いて行うこともできる。乾式粉砕の処理時間を長くする程、酸化タングステン粒子のD50が小さくなる。
【0053】
二次粉砕により得られた酸化タングステン粒子は、そのまま混合工程に用いてもよいが、分級処理後に混合工程に用いることが好ましい。酸化タングステン粒子を分級処理することにより、更に適度なD50を有する酸化タングステン粒子を得ることができる。分級に用いる分級機としては、例えば、気流式分級機、及び振動篩が挙げられる。分級条件を変更することにより、酸化タングステン粒子のD50を調整することができる。分級機として振動篩を用いる場合、篩のメッシュ径を小さくする程、D50の小さい酸化タングステン粒子を得ることができる。
【0054】
(混合工程)
混合工程では、酸化タングステン粒子と、無機粒子と、溶媒とを混合する。これにより、本発明の組成物が得られる。本工程では、酸化タングステン粒子の分散性を向上させるため、無機粒子と溶媒とを混合及び攪拌した後、得られた混合と酸化タングステン粒子とを混合及び攪拌することが好ましい。混合及び攪拌は、例えば、攪拌機を用いて行うことができる。
【0055】
<第2実施形態:コーティング方法>
本発明の第2実施形態のコーティング方法は、第1実施形態に記載の組成物を、基材の表面に直接コーティングする工程を備える。
【0056】
本発明のコーティング方法を行う対象としては、例えば建築物の壁、床、天井及び屋根が挙げられる。本発明のコーティング方法は、可視光により光触媒活性を発揮するコーティング層を形成できる。そのため、本発明のコーティング方法は、建築物の室内(例えば建築物の内壁、床及び天井)のコーティングに特に有用である。
【0057】
基材としては、無機材料を含有する基材(例えば、ガラス及びタイル)でもよいが、有機材料を含有する基材(例えば、樹脂シート、不織布、フィルター及び壁紙)が好ましい。より具体的な基材としては、樹脂製壁紙が好ましく、塩化ビニル製壁紙がより好ましい。
【0058】
組成物を基材の表面に直接コーティングする具体的な方法としては、例えば、スプレー、ローラー又は刷毛を用いて組成物を基材の表面に塗布した後、組成物中の溶媒を乾燥させる方法が挙げられる。組成物中の溶媒を乾燥させる方法としては、例えば、風乾、加熱及び送風が挙げられる。本発明のコーティング方法により、可視光により光触媒活性を発揮するコーティング層を基材の表面に容易に形成できる。
【0059】
本工程における酸化タングステン粒子換算でのコーティング量(形成されるコーティング層1m2に含有される酸化タングステン粒子の量)としては、0.1g/m2以上5.0g/m2以下が好ましく、0.2g/m2以上1.0g/m2以下がより好ましい。酸化タングステン粒子換算でのコーティング量を0.1g/m2以上とすることで、形成されるコーティング層の光触媒活性を向上できる。酸化タングステン粒子換算でのコーティング量を1.0g/m2以下とすることで、酸化タングステン粒子の過剰なコーティングを抑制できる。
【0060】
形成されたコーティング層において、酸化タングステン粒子の少なくとも一部は、コーティング層の表面に露出していることが好ましく、コーティング層の表面から突出していることがより好ましい。コーティング層の表面から突出した酸化タングステン粒子は、コーティング層の表面に凸部を形成する。コーティング層の表面に露出した酸化タングステン粒子は、空気に直接晒されるため分解対象物と接触し易く、かつ光を吸収し易いため、分解対象物を効率的に分解することができる。
【0061】
<第3実施形態:多層構造体>
本発明の第3実施形態に係る多層構造体は、基材と、基材の表面を直接コーティングするコーティング層とを備える。コーティング層は、酸化タングステン粒子と、酸化タングステン粒子以外の無機粒子とを含有する。
【0062】
本発明の多層構造体は、第2実施形態のコーティング方法により形成される。即ち、本発明の多層構造体におけるコーティング層は、第1実施形態の組成物から溶媒を除去することで形成された層である。そのため、本発明の多層構造体は、可視光により光触媒活性を発揮するコーティング層を備え、かつ生産性に優れる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0064】
なお、本実施例において、酸化タングステン粒子のD50は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「マイクロトラック(登録商標)MT3000II」)を用いて測定した。
【0065】
[酸化タングステン粒子(W−A)の形成]
(一次粉砕工程)
ビーズミル(日本コークス工業株式会社製メディア攪拌型湿式超微粉砕・分散機「MSC50」)を用いて、酸化タングステンの原料粒子(詳しくはWO3、キシダ化学株式会社製)135gと、イオン交換水1,215gとを湿式粉砕することで、粉砕後の酸化タングステンの原料粒子の分散液を得た。ビーズミルには、ビーズ(株式会社ニッカトー製、直径:0.1mm)を使用した。ビーズミルの条件は、周速10m/秒、及び処理時間360分とした。分散液に含有される粉砕後の酸化タングステンの原料粒子の一次粒子径は、約50nmであった。この分散液をそのまま助触媒担持工程の原料として使用した。
【0066】
(助触媒担持工程)
一次粉砕工程で得られた粉砕後の酸化タングステンの原料粒子の分散液に、ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物(キシダ化学株式会社製、固形分濃度:98.5%)を溶解させた。ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物の添加量は、形成される酸化タングステン粒子(W−A)において、白金単体の含有割合が0.025質量%となる量とした。これにより、酸化タングステン粒子(W−A)を含有する分散液を得た。得られた酸化タングステン粒子(W−A)は、酸化タングステンコア粒子と、助触媒である白金との複合粒子であった。酸化タングステン粒子(W−A)のD50は、0.2μmであった。
【0067】
[酸化タングステン粒子(W−B)の形成]
上述の酸化タングステン粒子(W−A)を含有する分散液を100℃で加熱して、水分を蒸発させた。これにより、酸化タングステン粒子(W−A)を含む塊状物を得た。この塊状物を、乳鉢及び乳棒を用いて粉砕した。得られた粉砕物を、振動篩を用いて篩別し、目開き63μmの篩を通過した粉砕物を回収した。篩別後の粉砕物を純水に混合することでスラリーを調製した。調製したスラリーを噴霧乾燥させることにより、酸化タングステン粒子(W−B)を得た。得られた酸化タングステン粒子(W−B)は、酸化タングステンコア粒子と、助触媒である白金との複合粒子であった。酸化タングステン粒子(W−B)のD50は、3.1μmであった。
【0068】
<組成物の製造>
以下の方法により、組成物(A−1)及び組成物(B−1)〜(B−2)を製造した。各組成物の組成を下記表1に示す。なお、下記表1及び表3において、「IO/TO」は、酸化タングステン粒子の含有量に対する無機粒子の含有量の比(無機粒子/酸化タングステン粒子)を示す。
【0069】
[組成物(A−1)の製造]
マグネチックスターラー(アズワン株式会社販売「REXIM」)を用いて、無機粒子としてのベントナイト(クニミネ工業株式会社製「クニピア(登録商標)F」)4.2質量部と、溶媒としての水81.8質量部とを、1,500rpmで180分間攪拌した。これにより、無機粒子及び溶媒の混合物を得た。この混合物に、光触媒である酸化タングステン粒子(W−A)を含有する分散液(濃度:20質量%)14.0質量部を添加し、1,500rpmで30分間攪拌した。このようにして、組成物(A−1)を得た。なお、「クニピア(登録商標)F」は、不純物を取り除き、主成分であるモンモリロナイトの純度を限りなく高めたベントナイト(D50:2.0μm)であった。
【0070】
[組成物(B−1)の製造]
マグネチックスターラー(アズワン株式会社販売「REXIM」)を用いて、無機粒子としてのベントナイト(クニミネ工業株式会社製「クニピア(登録商標)F」)4.2質量部と、溶媒としての水95.8質量部とを、1,500rpmで180分間攪拌した。これにより、組成物(B−1)を得た。
【0071】
[組成物(B−2)の製造]
マグネチックスターラー(アズワン株式会社販売「REXIM」)を用いて、光触媒である酸化タングステン粒子(W−B)5.0質量部と、溶媒としての水95.0質量部とを、1,500rpmで180分間攪拌した。これにより、組成物(B−2)を得た。
【0072】
【表1】
【0073】
[実施例1]
塩化ビニルを主成分とする長方形状の樹脂製壁紙(縦52mm、横76mm)を基材として用いた。基材の一方の面に、組成物(A−1)をスピンコート法により塗布した。スピンコート法においては、スピンコーターとしてミカサ株式会社製「スピンコーター1H−DX」を用い、回転速度1,000rpm、塗布量14.3g/m2(酸化タングステン粒子換算でのコーティング量0.4g/m2)に設定した。塗布後、組成物(A−1)が塗布された基材をホットプレート上で80℃、1時間乾燥させた。これにより、基材(樹脂製壁紙)と、酸化タングステン粒子及び無機粒子を含有するコーティング層とを備える実施例1のサンプルを得た。
【0074】
(光触媒活性の測定)
実施例1のサンプルを、容量0.5Lの透明なガスバッグ内に投入した。このガスバッグ内に測定用ガス(アセトアルデヒドを100ppm含む空気)を充填した後、ガスバッグを密封した。次いで、ガスバッグの外から、光(中心波長:450nm、照度:2,500ルクス)をサンプルのコーティング層に24時間照射した。照射開始から24時間後に、ガスバッグ内の測定用ガスのアセトアルデヒド濃度を測定した。実施例1のサンプルを用いた測定では、照射開始から24時間後の測定用ガスのアセトアルデヒド濃度は、55ppmであった(低減率45%)。アセトアルデヒド濃度の測定には、アセトアルデヒド用ガス検知管(株式会社ガステック製「92」)を用いた。なお、酸化タングステン粒子は、光を吸収することで光触媒活性を発揮し、アセトアルデヒドを二酸化炭素に分解する。そのため、基材上のコーティング層の光触媒活性が高いほど、ガスバッグ内のアセトアルデヒド濃度は低下する。
【0075】
[比較例1]
比較例1では、以下の点を変更した以外は実施例1と同様の操作により、サンプルを作成してその光触媒活性を測定した。比較例1では、組成物(A−1)の代わりに組成物(B−2)を用い、かつスピンコート法における塗布量を8.0g/m2(酸化タングステン粒子の塗布量0.4g/m2)に変更した。比較例1のサンプルを用いた測定では、照射開始から24時間後の測定用ガスのアセトアルデヒド濃度は、100ppmであった(低減率0%)。
【0076】
[比較例2]
比較例2では、実施例1で用いた基材(樹脂製壁紙)と同様の基材の一方の面に、組成物(B−1)をスピンコート法により塗布した。スピンコート法においては、スピンコーターとしてミカサ株式会社製「スピンコーター1H−DX」を用い、回転速度1,000rpm、塗布量50.0g/m2(無機粒子の塗布量2.1g/m2)に設定した。塗布後、組成物(B−1)が塗布された基材をホットプレート上で80℃、1時間乾燥させた。これにより、無機粒子を含有するプライマー層を基材上に形成した。次に、プライマー層上に、組成物(B−2)をスピンコート法により塗布した。スピンコート法においては、スピンコーターとしてミカサ株式会社製「スピンコーター1H−DX」を用い、回転速度1,000rpm、塗布量8.0g/m2(酸化タングステン粒子の塗布量0.4g/m2)に設定した。塗布後、組成物(B−2)が塗布された基材をホットプレート上で80℃、1時間乾燥させた。これにより、基材と、無機粒子を含有するプライマー層と、酸化タングステン粒子を含有するコーティング層とを備える比較例2のサンプルを得た。
【0077】
比較例2のサンプルについて、実施例1と同様の操作により、光触媒活性の測定を行った。比較例2のサンプルを用いた測定では、照射開始から24時間後の測定用ガスのアセトアルデヒド濃度は、0ppmであった(低減率100%)。
【0078】
【表2】
【0079】
組成物(A−1)は、酸化タングステン粒子と、酸化タングステン粒子以外の無機粒子と、溶媒とを含有する組成物であった。表2に示すように、組成物(A−1)は、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を容易に形成できた。
【0080】
これに対し、比較例1に示すように、酸化タングステン粒子のみを含有する組成物(B−2)を基材の表面に直接コーティングした場合、形成されたコーティング層は光触媒活性をほとんど発揮しなかった。これは、比較例1のサンプルでは、コーティング層に含有される酸化タングステン粒子が基材と接触しているため、アセトアルデヒドよりも基材に含まれる塩化ビニルを優先的に分解するためであると判断される。
【0081】
また、比較例2に示すように、基材上に予めプライマー層を形成し、プライマー層上に組成物(B−2)でコーティング層を形成することで、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を形成できた。しかし、比較例2は、プライマー層を形成する処理が必要であり、施工が煩雑であった。
【0082】
以下、本発明の組成物における酸化タングステン粒子の粒子径、無機粒子の種類、及び無機粒子の含有量について、更に検討を行った。
【0083】
[組成物(A−2)〜(A−9)の製造]
以下の点を変更した以外は組成物(A−1)と同様の製造方法により、組成物(A−2)〜(A−9)を製造した。組成物(A−2)〜(A−9)の製造では、酸化タングステン粒子の種類と、無機粒子の種類及び使用量とを、下記表3に示す通りに変更した。なお、無機粒子の含有割合が6質量%以上である組成物は、粘度が高く、コーティング性が低い。そのため、組成物(A−2)〜(A−9)は、無機粒子の含有割合を5質量%以下とした。下記表3において、wt%は、各成分の固形分の含有割合(質量%)を示す。
【0084】
[実施例2〜9]
組成物(A−1)の代わりに組成物(A−2)〜(A−9)を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、実施例2〜9のサンプルを作成し、その光触媒活性を測定した。測定結果を下記表3に示す。なお、組成物(A−3)の製造で無機粒子として使用したゼオライトは、東ソー株式会社製「HSZ(登録商標)891HOA」、D50:4.0μmであった。
【0085】
【表3】
【0086】
実施例1及び2の比較から明らかなように、D50が比較的小さい酸化タングステン粒子(W−A)を用いた組成物(A−1)は、D50が比較的大きい酸化タングステン粒子(W−B)を用いた組成物(A−2)よりも光触媒活性が高いコーティング層を形成できた。この要因は、酸化タングステン粒子のD50を小さくすることで、コーティング層において無機粒子上に酸化タングステン粒子が堆積し易くなり、その結果、酸化タングステン粒子及び基材の接触を抑制し易くなるためであると判断される。また、酸化タングステン粒子の比表面積が増大するという点、及び酸化タングステン粒子は高密度であるが、D50を小さくすることで組成物中での沈降を抑制できる点も要因であると判断される。
【0087】
実施例3及び5の比較から明らかなように、無機粒子としてベントナイトを用いた組成物(A−5)は、無機粒子としてゼオライトを用いた組成物(A−2)よりも光触媒活性が高いコーティング層を形成できた。ベントナイトは、ゼオライトと比較して高いガスバリア性を有する。そのため、無機粒子としてベントナイトを用いることで、基材から発生するガスをコーティング層が遮断するため好ましいと判断される。
【0088】
実施例1及び4〜9における酸化タングステン粒子の含有量に対する無機粒子の含有量の比(IO/TO)と、アセトアルデヒドの低減率(Decreasing rate)とをまとめたグラフを図1に示す。図1から明らかなように、比(IO/TO)が高いほどアセトアルデヒドの低減率が高い(光触媒活性の高い)コーティング層を形成できた。但し、比(IO/TO)が高いほど組成物の粘度が増大し、コーティング性が低下する傾向があった。そのため、コーティング性と、形成されるコーティング層の光触媒活性とのバランスの観点からは、実施例1及び6(特に実施例1)が好ましかった。
【0089】
以下、本発明の組成物における無機粒子の種類について、更に検討を行った。
【0090】
[組成物(A−10)〜(A−11)の製造]
以下の点を変更した以外は組成物(A−1)と同様の製造方法により、組成物(A−10)〜(A−11)を製造した。組成物(A−10)〜(A−11)の製造では、無機粒子の種類を、下記表4に示す通りに変更した。下記表4において、wt%は、各成分の固形分の含有割合(質量%)を示す。
【0091】
(無機粒子)
組成物(A−10)〜(A−11)の製造に用いた無機粒子を以下に示す。
サポナイト:クニミネ工業株式会社製「スクメトン(登録商標)SA」、合成サポナイト(合成品のため結晶性シリカを含有しない)、D50:約0.05μm
マイカ:片倉コープアグリ株式会社製「ME−200」、膨潤性の合成マイカ、D50:約13.0μm
【0092】
[実施例10]
塩化ビニルを主成分とする長方形状の樹脂製壁紙(縦52mm、横76mm)を基材として用いた。基材の一方の面に、組成物(A−10)をスピンコート法により塗布した。スピンコート法においては、スピンコーターとしてミカサ株式会社製「スピンコーター1H−DX」を用い、回転速度1,000rpm、酸化タングステン粒子換算でのコーティング量0.4g/m2に設定した(酸化タングステン粒子の総コーティング量1.6mg)。塗布後、組成物(A−10)が塗布された基材をホットプレート上で80℃、1時間乾燥させた。これにより、基材(樹脂製壁紙)と、酸化タングステン粒子及び無機粒子を含有するコーティング層とを備える実施例10のサンプルを得た。
【0093】
(光触媒活性の測定)
実施例10のサンプルを、容量1.0Lの透明なガスバッグ内に投入した。このガスバッグ内に測定用ガス(アセトアルデヒドを100ppm含む空気)を充填した後、ガスバッグを密封した。次いで、ガスバッグの外から、光(中心波長:450nm、照度:23,000ルクス)をサンプルのコーティング層に24時間照射した。照射開始から24時間後に、ガスバッグ内の測定用ガスのアセトアルデヒド濃度を測定した。実施例1のサンプルを用いた測定では、照射開始から24時間後の測定用ガスのアセトアルデヒド濃度は、82ppmであった(低減率18%)。アセトアルデヒド濃度の測定には、アセトアルデヒド用ガス検知管(株式会社ガステック製「92」)を用いた。
【0094】
[実施例11]
組成物(A−10)の代わりに組成物(A−11)を用いた以外は、実施例10と同様の操作により、実施例11のサンプルを作成し、その光触媒活性を測定した。測定結果を下記表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】
実施例10〜11から明らかなように、無機粒子としてサポナイト又はマイカを用いた組成物(A−10)及び(A−11)は、組成物(A−1)〜(A−9)と同様に、可視光の照射により光触媒活性を発揮するコーティング層を容易かつ確実に形成できた。以上から、本発明の組成物においては、無機粒子として、少なくともベントナイト、ゼオライト、サポナイト及びマイカを用いることができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の組成物及びコーティング方法は、建築材料のコーティングに利用できる。本発明の多層構造体は、建造物の内装に利用できる。
図1