【解決手段】共通流路44の下端部が形成されたプレートの下面に合成樹脂層36が配置され、合成樹脂層の共通流路44と上下方向に重なる部分がダンパ36aとなっている。合成樹脂層の下面に金属材料からなるヒータパターン61と連結パターン62と接続パターン63とが配置されている。ヒータパターン61は、各共通流路44に対して2つずつ設けられ、対応する共通流路44の搬送方向の両端部と上下方向に重なり、紙幅方向に延びている。連結パターン62は、搬送方向に延びて、上記2つのヒータパターン61の紙幅方向の右端部同士及び左端部同士を接続する。接続パターン63は、上記2つのヒータパターン61のうち搬送方向の外側のヒータパターン61に接続され、ヘッドユニットの搬送方向の端面まで延びて、熱源70と接続されている。
前記接続パターンが、前記ヒータパターンのうち、前記第1方向において前記複数の個別流路よりも外側に位置する部分に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
前記ダンパの、前記第1方向及び前記第2方向のいずれとも直交する第3方向における前記共通流路の両端部と前記第2方向に重なる部分に設けられた2つの前記ヒータパターン、を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
前記ダンパ及び前記ヒータパターンを、前記第2方向における前記共通流路と反対側から覆うカバー部、を備えていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0009】
<プリンタ1の全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、4つのインクジェットヘッド2と、プラテン3と、搬送ローラ4、5とを備えている。
【0010】
4つのインクジェットヘッド2は、後述するように搬送ローラ4、5によって記録用紙Pが搬送される搬送方向(本発明の「第3方向」)に並んでいる。各インクジェットヘッド2は、4つのヘッドユニット11(本発明の「液体吐出ヘッド」)と、保持部材12とを備えている。ヘッドユニット11は、その下面に形成された複数のノズル10からインクを吐出する。ここで、4つのインクジェットヘッド2におけるヘッドユニット11の複数のノズル10からは、搬送方向の上流側に位置するものから、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0011】
また、ヘッドユニット11では、複数のノズル10は、水平で且つ搬送方向と直交する紙幅方向(本発明の「第1方向」)に配列されることによってノズル列9を形成している。また、ヘッドユニット11は、搬送方向に並んだ2列のノズル列9を有している。また、2列のノズル列9間で、紙幅方向におけるノズル10の位置が、各ノズル列9におけるノズル10同士の間隔の2分の1の長さだけずれている。なお、以下では、
図1に示すように紙幅方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0012】
また、各インクジェットヘッド2においては、4つのヘッドユニット11のうち、2つずつのヘッドユニット11が、それぞれ、紙幅方向に間隔をあけて並んでいる。また、4つのヘッドユニット11のうち、紙幅方向に並んだ2つのヘッドユニット11と残り2つの紙幅方向に並んだヘッドユニット11とは、搬送方向に間隔をあけて並んでいる。また、搬送方向の上流側に配置された2つのヘッドユニット11と、下流側に配置された2つのヘッドユニット11とは、紙幅方向の位置がずれている。そして、搬送方向の上流側に配置されたヘッドユニット11の一部のノズル10と、下流側に配置されたヘッドユニット11の一部ノズル10とが、搬送方向に重なっている。これにより、4つのヘッドユニット11の複数のノズル10が、紙幅方向に記録用紙Pの全長にわたって配置されている。すなわち、インクジェットヘッド2は、紙幅方向に記録用紙Pの全長にわたって延びた、いわゆるラインヘッドである。なお、ヘッドユニット11の詳細な構成については、後程説明する。
【0013】
保持部材12は、紙幅方向を長手方向とする長方形の板状の部材であり、保持部材12に4つのヘッドユニット11が固定されている。また、保持部材12には、4つのヘッドユニット11に対応する4つの長方形の貫通孔12aが形成されている。ヘッドユニット11の複数のノズル10は、対応する貫通孔12aから下側(記録用紙P側)に露出している。
【0014】
プラテン3は、インクジェットヘッド2の下方に配置され、4つのヘッドユニット11の複数のノズル10と対向している。プラテン3は、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ4は、搬送方向において、インクジェットヘッド2及びプラテン3よりも上流側に配置されている。搬送ローラ5は、搬送方向において、インクジェットヘッド2及びプラテン3よりも下流側に配置されている。搬送ローラ4、5は、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0015】
そして、プリンタ1では、搬送ローラ4、5により記録用紙Pを搬送方向に搬送しながら、4つのインクジェットヘッド2の、4つのヘッドユニット11の複数のノズル10からインクを吐出することによって、記録用紙Pに記録を行う。
【0016】
<ヘッドユニット11>
次に、ヘッドユニット11について詳細に説明する。
図2〜
図5に示すように、ヘッドユニット11は、流路ユニット21と、振動板22と、複数の圧電素子23と、保護基板24とを備えている。
【0017】
図4、
図5に示すように、流路ユニット21は、プレート31〜35と、合成樹脂層36(本発明の「第1層」)と、金属層37(本発明の「第2層」)と、カバー部38とを備えている。プレート31は、例えばポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。プレート32〜35は、例えばシリコン(Si)からなる。プレート32〜35は、下方からこの順に積層されている。また、プレート31は、プレート32の下面の中央部に接合されている。また、プレート31〜35の厚みの合計が、例えば600〜700μm程度である。一例を挙げると、例えば、プレート31の厚みが50μm程度、プレート32、33の厚みの合計が400μm程度、プレート34、35の厚みの合計が200μm程度である。
【0018】
また、プレート31〜35が積層されることで、流路ユニット21には、複数のノズル10と、複数の圧力室40と、複数のディセンダ41と、複数の絞り42と、2つの共通流路44とが形成される。
【0019】
複数のノズル10は、プレート31に形成されている。複数のノズル10は、上述の2列のノズル列9を形成している。
【0020】
複数の圧力室40は、複数のノズル10に個別のものであり、プレート35に形成されている。圧力室40は、上下方向(本発明の「第2方向」)に投影した形状が、搬送方向を長手方向とする長方形であり、搬送方向の片側の端部において、ノズル10と上下方向に重なっている。より詳細に説明すると、搬送方向の下流側のノズル列9に対応する圧力室40は、搬送方向の上流側の端部においてノズル10と上下方向に重なる。また、搬送方向の上流側のノズル列9に対応する圧力室40は、搬送方向の下流側の端部においてノズル10と上下方向に重なる。
【0021】
複数のディセンダ41は、複数のノズル10に個別のものである。ディセンダ41は、プレート32〜34にわたって上下方向に延び、ノズル10と圧力室40とを接続する。
【0022】
複数の絞り42は、複数の圧力室40に個別のものであり、プレート34に形成されている。絞り42は、圧力室40の搬送方向におけるノズル10と反対側の端部と上下方向に重なっており、上下方向に延び、その上端が圧力室40に接続されている。
【0023】
そして、1つのノズル10と、これに対応する圧力室40、ディセンダ41及び絞り42とによって、個別流路20が形成される。そして、流路ユニット21では、個別流路20が紙幅方向に配列されることによって形成される個別流路列7が、搬送方向に2列に並んでいる。
【0024】
図2〜
図5に示すように、2つの共通流路44は、2つの個別流路列7に対応して設けられた流路であり、プレート32、33にわたって形成されている。なお、本実施形態では、共通流路44が形成されたプレート32、33を合わせたものが、本発明の「流路部材」に相当する。
【0025】
また、共通流路44は、個別流路列7の全長にわたって紙幅方向に延び、搬送方向における内側の端部が、複数の個別流路20の絞り42と上下方向に重なっている。これにより、複数の個別流路20の絞り42の下端が、共通流路44と接続される。また、共通流路44の搬送方向における外側の端部のうち、紙幅方向の中央部には、プレート34、35にわたって上下に延びた供給流路46が接続されている。供給流路46は、図示しないチューブなどを介してインクタンクと接続されており、供給流路46から共通流路44にインクが供給される。
【0026】
図4、
図5に示すように、合成樹脂層36は、プレート32の下面のプレート31よりも外側の部分に配置されている。合成樹脂層36は、ポリイミド等の合成樹脂材料からなる、厚みが10〜20μm程度の薄膜であり、共通流路44の下端を塞いでいる。これにより、合成樹脂層36のうち、各共通流路44と上下方向に重なって、共通流路44の下側の端を画定する内壁面を形成する部分が、ダンパ36aとなっている。ダンパ36aは、共通流路44の全長にわたって紙幅方向に延びており、弾性変形することによって、共通流路44内のインクの圧力変動を抑える。
【0027】
図4、
図5に示すように、金属層37は、合成樹脂層36の下面に配置されている。金属層37は、銅、銀、金、アルミニウム等の金属材料からなり、合成樹脂層36よりも熱伝導率が高い。金属層37は、第1部分51と、第1部分51よりも厚みの大きい第2部分52とを有する。例えば、第1部分51の厚みが20〜30μm程度であるのに対して、第2部分52の厚みが50〜100μm程度である。
【0028】
図2〜
図5に示すように、第1部分51は、ヒータパターン61と、連結パターン62と、接続パターン63とを有する。ヒータパターン61は、各ダンパ36aに対して2つずつ設けられている。各ダンパ36aに対応する2つのヒータパターン61は、ダンパ36aの搬送方向の両端部と上下方向に重なっている。また、ヒータパターン61は、紙幅方向とほぼ平行に、合成樹脂層36の下面の、ダンパ36aとなる領域と、ダンパ36aよりも外側の領域とにわたって紙幅方向とほぼ平行に延びている。これにより、ヒータパターン61は、紙幅方向において、個別流路列7の複数の個別流路20が配置されている範囲R1にわたって延び、さらに、複数の個別流路20よりも外側の範囲R2まで延びている。なお、当然のことではあるが、紙幅方向とほぼ平行に延びたヒータパターン61は、複数の個別流路20が配置されている範囲R1内に位置する部分に、紙幅方向に対して45°以上傾いて延びた部分を有していない。
【0029】
図2、
図3に示すように、連結パターン62は、各ダンパ36aに対応する2つのヒータパターン61に対して2つずつ設けられている。連結パターン62は、搬送方向に延びて、対応する2つのヒータパターン61の紙幅方向の右側の端部同士、及び、左側の端部同士をそれぞれ連結する。これにより、連結パターン62は、紙幅方向において複数の個別流路20よりも外側の位置で、搬送方向に延びて2つのヒータパターン61を連結する。
【0030】
図2〜
図5に示すように、接続パターン63は、各ダンパ36aに対応する2つのヒータパターン61のうち、搬送方向の外側のヒータパターン61の、紙幅方向の中央部と接続されている。また、接続パターン63は、ヒータパターン61との接続部分から搬送方向の外側に、流路ユニット21の端面まで延びている。流路ユニット21の搬送方向の両端面には、それぞれ、熱源70が配置されている。これにより、熱源70は、上下方向に投影したときに、共通流路44が形成されたプレート32、33を含む流路ユニット21よりも外側に位置する。そして、接続パターン63が、熱源70と接続されている。
【0031】
また、
図4、
図5に示すように、熱源70には、配線部材71が接続されている。配線部材71は、熱源70との接続部分から上方に延び、ヘッドユニット11の上方に配置された制御基板75に接続されている。これにより、制御基板75によって熱源70の温度が制御される。
【0032】
熱源70で発生した熱は、接続パターン63を介して、搬送方向の外側のヒータパターン61に伝わる。さらに、連結パターン62を介して搬送方向の内側のヒータパターン61に伝わる。そして、ヒータパターン61に伝わった熱により、共通流路44内のインクが温められる。
【0033】
図2〜
図5に示すように、第2部分52は、合成樹脂層36の下面の、共通流路44と上下方向に重ならない部分に配置されている。すなわち、第2部分52は、合成樹脂層36と金属層37とプレート32との接合領域内に位置している。
【0034】
ただし、第2部分52は、合成樹脂層36の下面のうち、搬送方向の外側の端部と上下方向に重なる部分を避けて延びている。これにより、第2部分52は、熱源70と接続されていない。また、第2部分52は、第1部分51と直接つながらないように、第1部分51を避けて延びている。
【0035】
図4、
図5に示すように、カバー部38は、金属層37の下面に配置されている。カバー部38は、SUS等からなり、ダンパ36a及びヒータパターン61を下側(共通流路44と反対側)から覆っている。また、ダンパ36aとカバー部38との間には、ダンパ36aの下側への変形を受け入れるための空間であるダンパ室39が形成されている。
【0036】
ここで、流路ユニット21を製造するときには、例えば、合成樹脂層36と、金属層37となる金属材料の層との積層体を作製する。そして、エッチングによって、上記金属材料の層の、第1部分51及び第2部分52となる部分以外の部分を除去する。また、ハーフエッチングによって、上記金属材料の層の、第1部分51となる部分の厚みを薄くする。これにより、合成樹脂層36と金属層37との積層体が作製される。そして、合成樹脂層36と金属層37との積層体を、プレート32の下面に接合する。
【0037】
振動板22は、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)などからなり、
図4、
図5に示すように、プレート35の上面に配置され、複数の圧力室40を覆っている。また、上述の供給流路46の上端が、振動板22の上面において開口している。振動板22の厚みは、例えば1〜2μm程度である。
【0038】
複数の圧電素子23は、複数の圧力室40に対して個別に設けられたものである。圧電素子23は、振動板22の上面の対応する圧力室40の中央部と上下方向に重なる部分に配置されている。圧電素子23は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなる圧電体、圧電体に対して設けられた電極などを有する。そして、圧電素子23が駆動されると、圧電素子23及び振動板22の圧力室40と上下方向に重なる部分が圧力室40側に凸となるように変形する。これにより、圧力室40の容積が減少して圧力室40内のインクの圧力が上昇し、圧力室40に連通するノズル10からインクが吐出される。ただし、圧電素子23の構成や動作は従来と同様であるので、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0039】
保護基板24は、複数の圧電素子23が配置された振動板22の上面に配置されている。保護基板24には、2つの凹部24aと、1つの貫通部24bとが形成されている。
【0040】
2つの凹部24aは、2列の個別流路列7に対応している。凹部24aは、下面に開口しており、個別流路列7の全長にわたって紙幅方向に延びている。凹部24a内に個別流路列7に対応する複数の圧電素子23が収容されている。
【0041】
貫通部24bは、保護基板24の搬送方向における2つの凹部24aの間に配置されている。貫通部24bは、保護基板24を上下方向に貫通しており、2列の個別流路列7の全長にわたって紙幅方向に延びている。これにより、振動板22の上面の一部が、貫通部24bを介して露出する。そして、振動板22の上面の、貫通部24bから露出した部分には、圧電素子23から引き出された図示しない配線が配置されている。また、振動板22の上面の、貫通部24bから露出した部分には、配線部材72が配置されている。これにより、配線部材72の配線が、圧電素子23から引き出された配線と接続される。
【0042】
また、配線部材72は、振動板22との接合部分から上方に延び、制御基板75に接続されている。また、配線部材72には、ドライバIC73が実装されている。そして、制御基板75により、ドライバIC73が制御されることによって、圧電素子23が駆動される。
【0043】
<効果>
本実施形態では、
図2〜
図5に示すように、個別流路列7を構成する複数の個別流路20にわたって紙幅方向に延びた共通流路44の、下側の端を画定する内壁面を形成するダンパ36aにヒータパターン61が配置されている。そして、ヒータパターン61が、紙幅方向において上記複数の個別流路が配置されている範囲R1内で、紙幅方向に沿って延びている。これにより、ヒータパターン61によって、共通流路44の紙幅方向において複数の個別流路20が配置されている範囲R1内に位置する部分のインクを均等に加熱することができる。その結果、複数の個別流路20内のインクの温度を均一にすることができる。
【0044】
さらに、
図2、
図3に示すように、ヒータパターン61が、紙幅方向において複数の個別流路20が配置されている範囲R1内で、紙幅方向とほぼ平行に延びており、紙幅方向に対して45°以上傾いて延びている部分を有していない。これにより、ヒータパターン61がダンパ36aの変形を阻害するのを極力抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態では、
図4、
図5に示すように、ダンパ36aの上面が共通流路44の内壁面となっているのに対して、ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63が、ダンパ36aを含む合成樹脂層36の下面に配置されている。すなわち、ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63が、合成樹脂層36の、共通流路44の内壁面となる面以外の部分に配置されている。これにより、ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63が共通流路44内のインクと接触しないようにすることができる。
【0046】
ここで、本実施形態と異なり、ヒータパターン61が、紙幅方向において、個別流路列7を構成する複数の個別流路20配置されている範囲R1内にのみ配置されている場合を考える。この場合には、共通流路44の、紙幅方向において端に位置する個別流路20と連通する部分のインクの温度が、中央に位置する個別流路20と連通する部分のインクの温度に対して低くなる。すなわち、共通流路44の、複数の個別流路20に連通する部分間でインクの温度が不均一になり、複数の個別流路20間でインクの温度が不均一になる。
【0047】
これに対して、本実施形態では、
図2、
図3に示すように、ヒータパターン61が、紙幅方向において、個別流路列7を構成する複数の個別流路20が配置されている範囲R1にわたって延び、さらに、これよりも外側の範囲R2まで延びている。これにより、複数の個別流路20のいずれについても、ヒータパターン61が、紙幅方向において、個別流路20が配置される領域と、個別流路20の両側の領域とにわたって延びたものとなる。その結果、共通流路44の、複数の個別流路20に連通する部分内のインクの温度が均一になり、複数の個別流路20内のインクの温度を均一にすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、
図2〜
図5に示すように、各ダンパ36aに対して2つのヒータパターン61が設けられ、これら2つのヒータパターン61が、ダンパ36aの搬送方向における両端部と上下方向に重なる。これにより、ヒータパターン61を1つだけ設ける場合と比較して、共通流路44内のインクを効率よく温めることができる。また、2つのヒータパターン61を、ダンパ36aの変形を極力阻害しないように配置することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上述したように、合成樹脂層36と金属層37となる金属材料の層との積層体にエッチングを施して、金属材料の層の第1部分51及び第2部分52となる以外の部分を除去することで、ヒータパターン61等が設けられたダンパ36aを簡単に作製することができる。
【0050】
また、本実施形態では、
図2〜
図5に示すように、金属層37を、ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63を有する第1部分51のほかに、プレート32と合成樹脂層36と金属層37との接合領域内に位置し、共通流路44と上下方向に重ならない第2部分52を有するものとしている。これにより、金属層37に第2部分52がない場合と比較して、合成樹脂層36と金属層37との積層体の剛性が高くなり、プレート32と上記積層体との接合を行うときの上記積層体のハンドリングが簡単になる。
【0051】
また、本実施形態では、
図2、
図3に示すように、金属層37において、第1部分51(ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63)と、第2部分52とが直接はつながっていない。これにより、第1部分51から第2部分52に熱が伝わりにくく、第2部分52の温度が高くなって、合成樹脂層36がプレート32から剥がれてしまうのを防止することができる。
【0052】
また、本実施形態では、
図4、
図5に示すように、金属層37において、第1部分51の厚みが、第2部分52の厚みよりも薄くなっている。これにより、ヒータパターン61がダンパ36aの変形をより阻害しにくい。また、第1部分51の厚みが薄いため、熱源70からの熱によりヒータパターン61が温められやすい。また、第2部分52に比べて厚みの薄い第1部分51は、上述の金属材料の層に対してハーフエッチングを施すことによって簡単に形成することができる。
【0053】
また、本実施形態では、
図2〜
図5に示すように、熱源70が、流路ユニット21の搬送方向における両端面に配置されていることで、熱源70が、上下方向に投影したときに、流路ユニット21よりも外側に位置している。これにより、熱源70を流路ユニット21の邪魔にならないように配置することができる。
【0054】
また、本実施形態では、
図4、
図5に示すように、ダンパ36a及びヒータパターン61が、カバー部38によって覆われている。これにより、ダンパ36a及びヒータパターン61が外部の水分や記録用紙Pなどと接触してしまうのを防止することができる。
【0055】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて、様々な変更が可能である。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、ダンパ36a及びヒータパターン61が、カバー部38により下側から覆われていたが、カバー部38はなくてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、熱源70が、流路ユニット21の搬送方向の両端面に配置されていたが、これには限られない。例えば、熱源は、流路ユニット21の紙幅方向の端面等、上下方向に投影したときに流路ユニット21(プレート32、33)の外側となる別の位置に配置されていてもよい。あるいは、熱源は、例えば、流路ユニット21の上面や下面等に配置されている等、流路ユニット21(プレート32、33)と上下方向に重なっていてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、第1部分51の厚みが第2部分52の厚みよりも薄くなっていたが、これには限られない。例えば、第1部分51の厚みは、第2部分52の厚みと同じであってもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、熱源70から主に熱が伝えられる第1部分51(ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63)が、第2部分52と直接はつながっていなかったが、これには限られない。例えば、第1部分51がそれほど高い温度まで加熱されない場合等には、第1部分51と第2部分52とが直接つながっていてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、金属層37が、ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63となる第1部分51と、プレート32との接合領域内に位置する第2部分とを有していたが、これには限られない。金属層が、第1部分51のみを有していてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、共通流路44が形成されたプレート32の下面に、合成樹脂材料からなり、ダンパ36aを有する合成樹脂層36が配置され、合成樹脂層36の下面に、金属材料からなり、ヒータパターン61、連結パターン62、接続パターン63等を有する金属層37が配置されていたが、これには限られない。例えば、合成樹脂層36の代わりに、合成樹脂材料以外の弾性変形可能な材料からなる第1層が配置され、この第1層の共通流路44と上下方向に重なる部分がダンパとなっていてもよい。また、金属層の代わりに、第1層よりも熱伝導率の高い金属以外の材料からなる第2層が配置され、この第2層が、ヒータパターン、連結パターン、接続パターンなどを有していてもよい。
【0062】
さらには、共通流路44を形成するプレート32の下面に、共通流路44と上下方向に重なる部分にダンパとなる第1層が配置され、第1層の下面にヒータパターンなどとなる第2層が配置された構成であることにも限られない。例えば、プレート32の上側の部分に共通流路の一部となる凹部が形成され、プレート32の凹部の下側に位置する部分がダンパとなっていてもよい。また、プレート32の上記ダンパとなる部分の下面に、ヒータパターン等が配置されていてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、各ダンパ36aに対して紙幅方向に延びた2つのヒータパターン61が設けられ、これら2つのヒータパターン61が、共通流路44の搬送方向の両端部と上下方向に重なっていたが、これには限られない。例えば、各ダンパ36aに設けられるヒータパターンの数は1つ又は3つ以上であってもよい。また、ヒータパターンは、共通流路44の搬送方向の端部以外の部分と上下方向に重なっていてもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、各ダンパ36aに対応する2つのヒータパターン61が連結パターン62によって連結され、上記2つのヒータパターン61のうち搬送方向の外側のヒータパターン61と熱源70とが接続パターン63によって接続されていたが、これには限られない。
【0065】
例えば、変形例1では、
図6に示すように、ヘッドユニット110において、熱源111が、流路ユニット21の紙幅方向の両端面に配置されている。また、各ダンパ36aに対して2つのパターン112(本発明の「第1部分」)が設けられている。パターン112は、共通流路44の搬送方向の両端部と上下方向に重なっており、且つ、紙幅方向にヘッドユニット110の全長にわたって延び、その両端部が熱源111と接続されている。また、これに対応して、変形例1では、第2部分113が、紙幅方向において、2つのヒータパターン112を挟むように、紙幅方向に分かれて配置されている。なお、変形例2では、パターン112のうち、ダンパ36aと上下方向に重なる部分が、本発明の「ヒータパターン」に相当し、紙幅方向においてダンパ36aよりも外側に位置する部分が、本発明の「接続パターン」に相当する。
【0066】
そして、変形例1では、パターン112の一部であり、熱源111に接続される接続パターンが、紙幅方向において、個別流路列7を構成する複数の個別流路20よりも外側に位置している。これにより、接続パターンが、ダンパの変形を阻害することがない。
【0067】
また、上述の実施形態では、ヒータパターン61が、紙幅方向において、複数の個別流路20が配置されている範囲R1にわたって延び、さらに、これよりも外側の範囲R2まで延びていたが、これには限られない。例えば、ヒータパターンが、紙幅方向において、複数の個別流路20が配置されている範囲R1内にのみ配置されていてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、ヒータパターン61が、ダンパ36aの下面に配置されていたが、これには限られない。変形例2では、
図7(a)、(b)に示すように、ヘッドユニット120において、プレート32の下面の、搬送方向においてプレート31よりも外側の部分に、上下方向に積層された2層の合成樹脂層121、122が接合されている。そして、合成樹脂層121、122の各共通流路44と上下方向に重なる部分がダンパ123となっている。
【0069】
また、変形例2では、ヒータパターン61、連結パターン62及び接続パターン63が、合成樹脂層121と合成樹脂層122との間に挟まれている。すなわち、変形例2でも、ヒータパターン61が、ダンパ123の上面(共通流路44の内壁面)以外の部分に配置されている。
【0070】
また、変形例2では、合成樹脂層122の下面に、カバー部材124が配置される。
が配置されている。カバー部材124の上面(合成樹脂層122側の面)には、共通流路44と上下方向に重なる部分に、凹部124aが形成されている。そして、凹部124aが、ダンパ123の下側への変形を受け入れるためのダンパ室となる。
【0071】
あるいは、上述の実施形態において、ヒータパターン61が、ダンパ36aの上面に配置され、共通流路44内に位置していてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、ダンパ36aが、共通流路44の下側の端を画定する壁を形成するものであったが、これには限られない。ダンパは、共通流路44の上側の端を画定する壁を形成するものであってもよい。あるいは、ダンパは、共通流路44の搬送方向の上流側又は下流側の端を画定する壁を形成するものであってもよい。なお、この場合には、搬送方向が本発明の「第2方向」に相当し、上下方向が本発明の「第3方向」に相当する。
【0073】
また、以上の例では、ヒータパターンが、ダンパの長手方向である紙幅方向とほぼ平行に延びていたが、これには限られない。ヒータパターンは、少なくとも一部分において、紙幅方向に対して45°未満の角度で傾いていてもよい。
【0074】
また、以上では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出ヘッドに本発明を適用することも可能である。