【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。以後において、「地図」とは、従来の経路案内用の車載機が参照するデータに加えて、ADAS(Advanced Driver Assistance System)や自動運転に用いられるデータも含むものとする。
【0021】
[情報処理装置の構成]
図1は、本実施例における情報処理装置1の概略構成図を示す。情報処理装置1は、車両内で使用される据置型又は携帯型の装置、あるいは車両と一体となっている装置である。情報処理装置1は、主に、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、制御部14と、車両に設けられたセンサ部7と電気的に接続するインターフェース15と、表示部16と、音出力部17とを有する。情報処理装置1内の各要素は、バスライン19を介して相互に接続されている。
【0022】
通信部11は、制御部14の制御に基づきデータ通信を行う。例えば、通信部11は、センサ部7の出力に基づき検出された物体等に関する情報を、データの収集及び配信を行うサーバ装置へ送信したり、現在位置周辺のエリアに対応する地図データなどを、上述のサーバ装置から受信したりする。また、通信部11は、車両を制御するための制御信号を車両に送信する処理、車両の状態に関する信号を車両から受信する処理、及び車車間通信による他車両とのデータの送受信処理などを行ってもよい。
【0023】
記憶部12は、制御部14が実行するプログラムや、制御部14が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。記憶部12は、情報処理装置1に接続又は内蔵されたハードディスクなどの外部記憶装置であってもよく、フラッシュメモリなどの記憶媒体であってもよい。なお、記憶部12は、情報処理装置1とデータ通信を行うサーバ装置であってもよい。この場合、記憶部12は、複数のサーバ装置から構成されてもよい。
【0024】
記憶部12は、地
図DB4と、センサデータキャッシュ6とを記憶する。
【0025】
地
図DB4は、例えば、道路情報、施設情報、及び地物情報などを含むデータベースである。道路情報には、経路探索用の車線ネットワークデータ、道路形状データ、交通法規データなどが含まれる。地物情報は、道路標識等の看板や停止線等の道路標示、センターライン等の道路区画線や道路沿いの構造物等の情報を含む。地
図DB4は、通信部11により図示しないサーバ装置から受信する更新データに基づき適宜更新が行われてもよい。地
図DB4のデータ構造については後述する。センサデータキャッシュ6は、センサ部7の出力データ(所謂生データ)を一時的に保持するキャッシュメモリである。
【0026】
入力部13は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、例えば、目的地などの経路探索の条件を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付け、生成した入力信号を制御部14へ供給する。
【0027】
インターフェース15は、センサ部7の出力データを制御部14やセンサデータキャッシュに供給するためのインターフェース動作を行う。センサ部7は、カメラ71などの車両の周辺環境を認識するための1又は複数の外界センサと、GPS受信機72、ジャイロセンサ73、加速度センサ74、速度センサ75などの内界センサを含む。カメラ71は、車両から撮影した画像を生成する。
【0028】
好適には、カメラ71は、撮影位置から2つの対象物までの角度差を、画素数から算出可能な画像(「角度対応画像Ia」とも呼ぶ。)を出力するカメラ(例えば360°円周カメラ)を含むとよい。この場合、角度対応画像Iaを出力するカメラは、例えば、1又は複数の魚眼レンズを含んでもよい。
【0029】
角度対応画像Iaは、極座標球面上に投影された画像中の隣り合う画素に対し、極座標球面の中心からそれぞれ引いた仮想線同士がなす角度が対応している画像であり、1つの画素が所定角度分の方位差に対応している。上述の所定角度は、本発明における「第1角度」の一例である。従って、情報処理装置1は、角度対応画像Iaを参照することで、角度対応画像Ia中の2つの対象物に対し、車両を基準とした場合のこれらの対象物の方位の差(角度差)を、角度対応画像Iaにおける対象物間の画素数に1画素に対応する角度を乗じることで、好適に算出することができる。角度対応画像Iaは、車両の現在位置の算出に好適に用いられる。なお、角度対応画像Iaを出力するカメラ71を備える代わりに、制御部14は、画素と角度が対応しない通常のカメラが出力する画像に基づき、角度対応画像Ia又はこれに相当するデータを生成してもよい。
【0030】
なお、センサ部7は、
図1に示した外界センサ及び内界センサ以外の任意の外界センサ及び内界センサを有してもよい。例えば、センサ部7は、外界センサとして、ライダ(測域センサ)、超音波センサ、赤外線センサ、その他電磁波を走査することで情報を取得するセンサを有してもよい。
【0031】
表示部16は、制御部14の制御に基づき、情報を表示する。例えば、表示部16は、目的地までの経路を示した地図を表示したり、運転を補助する情報などを表示したりする。音出力部17は、制御部14の制御に基づき、音を出力する。音出力部17は、例えば、運転を支援する案内音声、警告音、又は音楽等を出力する。
【0032】
制御部14は、所定のプログラムを実行するCPUなどを含み、情報処理装置1の全体を制御する。本実施例では、制御部14は、地
図DB4を参照し、カメラ71が出力する画像を解析することで、円周角の定理又は正弦定理に基づき、現在位置を算出する。以後では、本実施例に基づき算出する車両の位置を、「自車位置P」とも呼ぶ。制御部14は、第1取得部、抽出部、第2取得部、第3取得部、算出部及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0033】
[データ構造]
図2は、地
図DB4のデータ構造の一例である。
図2に示す地
図DB4は、主に、道路情報と、施設情報と、地物情報とを有する。地物情報は、地物毎に固有の識別情報である地物IDと、地物の種別を示す種別情報と、地物の位置を示す位置情報と、基準部情報とを含む。
【0034】
基準部情報は、自車位置Pの算出において基準とする基準部に関する情報である。基準部は、略鉛直方向に延在する地物又は地物の略鉛直部分などが該当する。例えば、基準部は、電柱や信号機などの柱状物の中心線、又は、建物の鉛直方向に延びるエッジ部分などである。
【0035】
基準部情報は、基準部毎に設けられ、例えば、基準部IDと、基準部位置情報とを含む。基準部IDは、基準部毎に割り当てられる固有の識別情報である。基準部位置情報は、基準部の位置を示す情報である。なお、基準部情報は、基準部ID及び基準部位置情報以外の基準部に関する任意の情報を有してもよい。例えば、基準部情報は、対象の基準部の計測に必要な情報をさらに有してもよい。例えば、基準部情報は、対象の基準部が建物のエッジ部分に該当する場合には、当該エッジに沿った線を基準部として検出すべき旨を指示する情報をさらに含んでもよい。他の例では、基準部情報は、対象の基準部が電柱等の柱状物の中心線である場合には、当該柱状物の中心線を基準部として検出すべき旨を指示する情報をさらに含んでもよい。
【0036】
なお、
図2に示す地
図DB4のデータ構造は一例であり、本発明が適用可能な地
図DB4のデータ構造は、
図2に示す構造に限定されない。例えば、基準部情報は、地物情報の一部として管理される代わりに、地物情報とは独立した情報として管理されてもよい。
【0037】
図3は、道路20と道路21からなるT字路付近の地図を示す。
図3では、基準部情報として地
図DB4に登録される基準部の位置を黒点により明示している。
図3に示すように、地図に表示された建物22〜26のエッジ部分が基準部として定められている。また、道路20沿いに存在する電柱又は信号機などの柱状物27、28の中心部分が基準部として定められている。そして、この場合、地
図DB4には、各黒点に対応する基準部に関する基準部情報が含まれる。
【0038】
なお、
図3の例では、建物22〜26のエッジ部分のうち、道路から明らかに計測することができないエッジ部分については、基準部として地
図DB4に登録されない。例えば、建物22の6個のエッジ部分のうち、道路20又は道路21のいずれにも面していない4つのエッジ部分については、基準部として地
図DB4に登録されていない。同様に、建物23の4つのエッジ部分のうち、道路20又は道路21のいずれからも計測することが困難な1つのエッジ部分については、基準部として地
図DB4に登録されていない。このように、基準部情報は、建物等の全てのエッジ部分毎に生成される必要はない。
【0039】
このように、基準部情報は、基準部の位置情報に関する情報を含み、構造物全体を表す点群情報等を含む必要がないため、地
図DB4に基準部情報を付加することによる地
図DB4のデータ量増加分が小さい。また、上述したように、基準部情報は、道路から計測可能な建物のエッジ部分や電柱等に対してのみ設けられてもよい。よって、この場合、地
図DB4に基準部情報を付加することによる地
図DB4のデータ量の増加をさらに抑制することが可能である。
【0040】
[自車位置の測定]
次に、本実施例に基づく自車位置Pの測定方法について説明する。概略的には、情報処理装置1は、角度対応画像Iaに含まれる少なくとも3つの基準部に関する距離と角度に基づき、円周角の定理又は正弦定理を用いることで、自車位置Pを算出する。
【0041】
(1)
正弦定理に基づく自車位置の算出
まず、正弦定理を用いた自車位置Pの算出方法について説明する。以下に説明する正弦定理に基づく自車位置Pの算出方法は、3つの基準部に関する距離と角度に基づく自車位置Pの算出方法である。
【0042】
図4は、3つの基準部と自車位置Pとの水平面上での位置関係を示す図である。
図4では、3つの基準部(第1基準部〜第3基準部)が直線上に存在し、第1基準部は位置「A」、第2基準部は位置「B」、第3基準部は位置「C」に存在するものとする。
【0043】
この場合、情報処理装置1は、まず、地
図DB4の基準部情報等を参照することで、位置A〜位置Cの絶対位置を認識する。上述の絶対位置は、地図上の位置であり、例えば、緯度及び経度の組合せにより示される位置である。
【0044】
そして、情報処理装置1は、認識した位置A〜位置Cの絶対位置に基づき、位置Aと位置Bとを結ぶ線A−Bの長さに相当する距離「L1」と、位置Bと位置Cとを結ぶ線B−Cの長さに相当する距離「L2」とをそれぞれ算出する。以後では、線A−B及び線B−Cなどの、基準部間を結ぶ水平面上の線を「基線」とも呼ぶ。
【0045】
また、情報処理装置1は、第1基線A−Bの両端に対する水平面上の角度「θ1」と、第2基線B−Cの両端に対する水平面上での角度「θ2」とをそれぞれ計測する。ここで、角度θ1と角度θ2は、それぞれ、自車位置Pを基準とした場合の各基線の両端となる2つの基準部の方位の差(角度差)に相当する。例えば、情報処理装置1は、自車位置Pにおいてカメラ71が取得した角度対応画像Iaに基づき、角度θ1と角度θ2とをそれぞれ算出する。例えば、情報処理装置1は、角度対応画像Ia中において各基準部を特定し、特定した基準部のうち、各基線の両端となる基準部間の画素数を数える。そして、情報処理装置1は、第1基線A−Bと第2基線B−Cについてそれぞれ数えた画素数に対し、角度対応画像Iaの1画素分に対応する角度を乗じることで、角度θ1と角度θ2とをそれぞれ算出する。
【0046】
そして、情報処理装置1は、位置A〜位置Cの絶対位置と、距離L1、距離L2、角度θ1及び角度θ2とに基づき、正弦定理を用いて、自車位置Pの絶対位置(即ち地図上の位置)を算出する。
【0047】
ここで、上述の自車位置Pの絶対位置の算出方法について、
図4及び後述する
図5を参照して具体的に説明する。以後において、三角形A−B−Pにおける頂点Aのなす角を「θx」とし、辺A−Pの長さを「Lx」とする。
【0048】
まず、三角形A−C−Pに着目して正弦定理を用いると、以下の式(1)が成立し、三角形A−B−Pに着目して正弦定理を用いると、以下の式(2)が成立する。
【0049】
【数1】
そして、式(1)及び式(2)をそれぞれ長さLxの式に変形すると、以下の式(3)が成立する。
【0050】
【数2】
そして、式(3)について、定数部分をA、B、Cを用いて置き換えると、以下の式(4)が成立する。
【0051】
【数3】
ここで、定数Aは「{(L1+L2)sin(θ1)}/{L1(sin(θ1+θ2))}」であり、定数Bは「θ1+θ2」であり、定数Cは「θ1」となる。
【0052】
そして、式(4)について、三角関数の加法定理を用いて角度θxについて整理すると、角度θxに関する以下の式(5)が導かれる。
【0053】
【数4】
【0054】
従って、式(5)を用いることで、距離L1、距離L2、角度θ1、角度θ2に基づき、角度θxを好適に算出することができる。そして、情報処理装置1は、角度θxを用いることで、自車位置Pの絶対位置を好適に算出することができる。例えば、三角形A−B−Pに着目した場合、位置A及び位置Bと、角度θ1及び角度θxとが既知であることから、自車位置Pの座標は、三角測量の原理により好適に求めることができる。
【0055】
図5は、三角形A−B−Pの拡大図である。
図5では、頂点Pから辺A−Bに向けて垂線を引き、当該垂線と辺A−Bとの交点を「V」とし、線分A−Vの長さを「x」、垂線P−Vの長さを「y」としている。ここでは、一例として、頂点AからみたPの座標(x、y)を求める例について説明する。
【0056】
線分A−Vの長さに相当する座標xは、以下の式(6)により表される。
【0057】
【数5】
また、辺A−Bの長さL1は、以下の式(7)により表すことができ、yの式となるように式(7)を変形すると、以下の式(8)が得られる。
【0058】
【数6】
このように、式(5)の角度θxを用いることで、頂点Aからみた頂点Pの座標(x、y)を求めることができる。なお、頂点Pの絶対座標についても、頂点Aの絶対座標、頂点Bの絶対座標、辺A−Pの長さLx及び角度θxから同様に算出することが可能である。例えば、情報処理装置1は、絶対座標上での頂点Aから頂点Bへの向きを算出し、当該向きに対して角度θxだけずらした方向に距離Lxだけ頂点Aから移動させた位置を、頂点Pの絶対座標として算出してもよい。
【0059】
ここで、車両が道路上に存在する場合の自車位置Pの算出方法の具体例について、補足説明する。
【0060】
まず、情報処理装置1は、GPSなどのGNSSなどから得られる情報に基づき、暫定的な現在位置(「暫定自車位置Pg」とも呼ぶ。)を決定する。また、情報処理装置1は、地
図DB4の道路情報等を参照し、暫定自車位置Pgが道路上に存在しない場合には、暫定自車位置Pgから最も近い道路上に暫定自車位置Pgが存在するように暫定自車位置Pgを修正する。次に、情報処理装置1は、位置A〜Cに対応する第1基準部〜第3基準部を地
図DB4上及び角度対応画像Ia内において特定する。例えば、情報処理装置1は、暫定自車位置Pg及び第1基準部〜第3基準部の位置情報等に基づき、自車位置Pに対する第1基準部〜第3基準部のおよその相対位置を特定する。そして、情報処理装置1は、特定した位置に対応する角度対応画像Iaの位置に存在する、鉛直方向に延びたエッジ部分又は鉛直方向に延びた物体領域の中心線を、角度対応画像Ia中の各基準部として認識する。そして、情報処理装置1は、角度対応画像Iaにおいて認識した各基準部の位置に基づき、角度θ1及び角度θ2を算出すると共に、地
図DB4の基準部位置情報等を参照することで、距離L1及び距離L2を決定する。そして、情報処理装置1は、位置A〜Cの絶対座標、角度θ1、角度θ2、距離L1、及び距離L2に基づき、式(5)に示す角度θxを算出し、角度θx及び位置A〜Cの絶対座標等に基づき、
図5と同様の幾何学的計算により、自車位置Pの絶対座標を算出する。
【0061】
なお、情報処理装置1は、上述した方法により自車位置Pを算出する代わりに、後述の「(2)
円周角の定理に基づく自車位置の算出」のセクションで説明する方法に基づき、自車位置Pを算出してもよい。
【0062】
(2)
円周角の定理に基づく自車位置の算出
次に、円周角の定理に基づき、少なくとも4つの基準部に関する距離と角度から自車位置Pを算出する方法について説明する。
【0063】
(2−1)
汎用例
図6は、円周角の定理に基づき、4つの基準部に関する距離と角度から自車位置Pを算出する方法の概要を示す図である。ここでは、4つの基準部(第1基準部〜第4基準部)が自車位置Pの周辺位置である位置A〜位置Dにそれぞれ存在している。なお、
図6では、各位置がX−Y座標により表されている。
【0064】
この場合、情報処理装置1は、まず、地
図DB4の基準部情報等を参照することで、位置A〜位置Dの絶対位置を認識する。そして、情報処理装置1は、認識した位置A〜位置Dの絶対位置に基づき、位置Aと位置Bを結ぶ第1基線A−Bの長さに相当する距離L1と、位置Cと位置Dを結ぶ第2基線C−Dの長さに相当する距離L2とをそれぞれ算出する。また、情報処理装置1は、第1基線A−Bの両端に対する水平面上の角度θ1と、第2基線C−Dの両端に対する水平面上の角度θ2とをそれぞれ計測する。なお、距離L1、L2及び角度θ1、θ2の算出方法については、「(1)
正弦定理に基づく自車位置Pの算出」のセクションで述べた方法と同一である。
【0065】
そして、情報処理装置1は、位置A〜位置Dの絶対位置と、距離L1、距離L2、角度θ1及び角度θ2とに基づき、円周角の定理を用いて、自車位置Pの絶対位置(即ち地図上の位置)を算出する。
【0066】
ここで、まず、三角形A−B−Pの外接円「CL1」の半径「R1」とその中心「O1」(座標(x1、y1))、及び三角形C−D−Pの外接円「CL2」の半径「R2」とその中心「O2」(座標(x2、y2))を、
図6に示される計算式に従って求める。
【0067】
例えば、三角形A−B−P及びその外接円CL1に着目した場合、円周角と中心角の定理に基づき、三角形A−B−O1の頂点O1の角度は「θ1×2」となり、他の頂点A、Bの角度は共に「π/2−θ1」となる。よって、半径R1は、この場合、
図6の直角三角形L1−B−O1に着目することで、
R1=(L1/2)/cos(π/2−θ1)
と表される。
【0068】
また、頂点Aの座標を「(0、A)」、頂点Bの座標を「(B、0)」とした場合、中心O1のX座標x1は、辺B−O1とX座標とがなす角「θe」を用い、
x1=B+(R1*cos(θe))
と表される。同様に、中心O1のY座標y1は、
y1=R1*sin(θe)
と表される。なお、角度θeは、辺A−BとX座標とがなす角が「ATAN(A/B)」となることから、
θe=π−ATAN(A/B)−(π/2−θ1)
と表される。なお、ここでは、座標x1及び角度θxの算出にあたり、一例として「B<A」を仮定しているが、「B≧A」の場合も同様の幾何学的計算により座標x1及び角度θxを定めることができる。また、三角形C−D−Pの外接円CL2の半径R2とその中心O2の座標(x2、y2)についても、上述した半径R1とその中心O1の座標(x1、y1)の導出方法と同様の幾何学的計算により算出することができる。
【0069】
また、半径R1及び中心O1の座標(x1、y1)を用いることで、外接円CL1を以下の式により表すことができる。
(X−x1)
2+(Y−y1)
2=R1
2
【0070】
同様に、半径R2、座標(x2、y2)を用いることで、外接円CL2を以下の式により表すことができる。
(X−x2)
2+(Y−y2)
2=R2
2
【0071】
そして、これらの外接円CL1、CL2に関する2次方程式を解くことで、これらの外接円の交点である自車位置Pを算出することができる。
【0072】
なお、上述の2次方程式の解により求まる外接円CL1、CL2の交点は、2つ(
図6ではPとP‘)存在する場合があるため、求まる2つの交点のうち自車位置Pに該当する交点を判定する必要がある。この場合、第1の判定方法では、情報処理装置1は、1又は2の基準部を追加することで、基線A−B及び基線C−D以外の基線(第3基線)を追加し、自車位置Pを基準とした第3基線の両端がなす角度「θ3」及び距離「L3」を算出する。そして、情報処理装置1は、角度θ3及び距離L3と、角度θ1及び距離L1(又は角度θ2及び距離L2)とを用いて、第3基線と自車位置Pがなす三角形の外接円と外接円CL1(又は外接円CL2)との交点を算出する。そして、情報処理装置1は、算出した当該交点と外接円CL1、CL2の交点とで共通する交点を、自車位置Pであると判定する。第2の判定方法では、情報処理装置1は、外接円CL1、CL2の2つの交点のうち、GNSSなどを用いた他の位置推定により特定される現在位置と近い方の交点を、自車位置Pであると判定する。
【0073】
なお、情報処理装置1は、交点P、P‘のいずれかが、位置B又は位置Dの近くになるように、基線を決定してもよい。例えば、情報処理装置1は、3つの基準部を用いることで、一端が連結した基線を決定する。この場合、自車位置Pでない交点P’は、いずれかの基準部の位置と一致するため、情報処理装置1は好適に自車位置Pを判定することができる。この具体例については、
図7を参照して後述する。他の例では、情報処理装置1は、進行方向に対して片側(例えば進行方向車線の路肩沿い)に存在する柱状物や建物などの地物を対象として第1基準部〜第4基準部をそれぞれ選択する。このようにすることで、外接円CL1、CL2の2つの交点間の距離が長くなるため、情報処理装置1は、例えば、上述の第2の判定方法等を用いることで、好適に自車位置Pを特定することができる。
【0074】
(2−2)
基線を連結させた例
図7は、3つの基準部に基づき基線を決定することにより、連結した基線を明示した自車位置P周辺の平面図を示す。なお、
図7では、三角形A−B−Pに対する外接円CL1及び三角形B−C−Pに対する外接円CL2に加えて、暫定自車位置Pgに対する誤差円「CLE」が示されている。
【0075】
図7の例では、情報処理装置1は、まず、第1基準部〜第3基準部に対応する位置A〜Cに対し、長さL1の第1基線A−Bと長さL2の第2基線B−Cを定めると共に、第1基線A−Bの両端に対する角度θ1と第2基線B−Cの両端に対する角度θ2を測定する。例えば、情報処理装置1は、駐車場のような広い空間内に車両が存在する場合に、当該空間内に存在する電柱などの柱状物を、それぞれ第1基準部〜第3基準部として定める。
【0076】
ここで、駐車場において3つの基準部に基づき自車位置Pを算出する具体例について、引き続き
図7を参照して説明する。
【0077】
まず、情報処理装置1は、GPSなどのGNSSなどにより、暫定自車位置Pgを決定する。次に、情報処理装置1は、位置A〜Cに対応する第1基準部〜第3基準部を、地
図DB4上及び角度対応画像Ia内において特定する。この場合、情報処理装置1は、暫定自車位置Pgの最大誤差より位置A〜Cが互いに離れるように(最大誤差よりも位置A〜Cの間隔が長くなるように)、第1基準部〜第3基準部を選定することが好ましい。そして、情報処理装置1は、角度対応画像Iaに基づき、角度θ1及び角度θ2を算出すると共に、地
図DB4の基準部位置情報等を参照することで、距離L1及び距離L2を決定する。
【0078】
そして、情報処理装置1は、「(2−1)
汎用例」のセクションで説明した方法と同様に、三角形A−B−Pの外接円CL1の半径R1とその中心O1の座標(x1、y1)、及び、三角形B−C−Pの外接円CL2の半径R2とその中心O2の座標(x2、y2)を求める。そして、情報処理装置1は、外接円CL1及び外接円CL2に関する以下の2次方程式
(X−x1)
2+(Y−y1)
2=R1
2
(X−x2)
2+(Y−y2)
2=R2
2
を解くことで、自車位置Pを算出する。この場合、上述の2次方程式の解は原則的には2つ存在するが、2つの解の1つは位置Bと一致する。よって、情報処理装置1は、上述の2次方程式の解により、自車位置Pを好適に決定することができる。
【0079】
(3)
処理フロー
図8は、本実施例において情報処理装置1が実行する自車位置Pの算出方法の手順を示すフローチャートである。
【0080】
まず、情報処理装置1は、GPS受信機72等の出力に基づき暫定自車位置Pgを取得する(ステップS11)。そして、情報処理装置1は、地
図DB4を参照し、暫定自車位置Pg周辺の少なくとも3つの基準部を選定する(ステップS12)。例えば、情報処理装置1は、
図5又は
図7を用いて説明した自車位置Pの算出方法の場合には、3つの基準部を選定し、
図6を用いて説明した自車位置Pの算出方法の場合には、少なくとも4つの基準部を選定する。
【0081】
そして、情報処理装置1は、選定した基準部の組み合わせにより構成される2つの基線の長さ(
図4〜
図7では距離L1及び距離L2)を算出する(ステップS13)。例えば、情報処理装置1は、基線の両端位置となる基準部の絶対位置を示す基準部位置情報を地
図DB4から参照することで、上述の基線の長さをそれぞれ算出する。
【0082】
なお、地
図DB4には、基線を構成する基準部の組み合わせ及び当該基線の長さに関する情報が含まれてもよい。この場合、情報処理装置1は、当該情報を参照することで、各基線を構成する基準部の組み合わせと各基線の長さとを決定することができる。
【0083】
次に、情報処理装置1は、カメラ71が出力する角度対応画像Iaに基づき、各基線を構成する各基準部を検出し、各基線の両端がなす角度(
図4〜
図7では角度θ1と角度θ2)を算出する(ステップS14)。この場合、例えば、情報処理装置1は、角度対応画像Ia中においてステップS12で選定した各基準部を検出し、検出した各基準部のうち、基線の両端となる基準部間の画素数に基づき、上述の角度を算出する。なお、情報処理装置1は、角度と画素とが対応していない画像をカメラ71が出力する場合には、当該画像から角度対応画像Ia又はこれと同等の情報を生成することで、上述の角度を算出してもよい。
【0084】
そして、情報処理装置1は、ステップS13で算出した各基線の長さ及びステップS14で算出した各基線の両端がなす角度等に基づき、自車位置Pを算出する(ステップS15)。この場合、情報処理装置1は、例えば、2つの基線が連結するように3つの基準部を選定した場合には、正弦定理に基づく自車位置Pの算出方法(
図4及び
図5参照)又は円周角の定理に基づく自車位置Pの算出方法(
図7参照)のいずれかを用いて自車位置Pを算出する。一方、情報処理装置1は、4つ以上の基準部を選定する場合には、円周角の定理に基づく自車位置Pの算出方法(
図6参照)を用いて自車位置Pを算出する。
【0085】
次に、本実施例による効果について補足説明する。
【0086】
現在考えられている高精度位置推定方法として、道路周辺の地物等の特徴点までの距離及び方向等を推定し、地図データに記録された特徴点の情報と比較することで、車両の現在位置及び姿勢を算出する方法が存在する。この場合、特徴点を検出する外界センサとしては、例えば、カメラ、ライダ、レーダなどを用いる。
【0087】
上述の位置推定方法の第1の問題点は、検出すべき特徴点を正確に測ることができる車両の位置が限られていることである。そのため、車両が移動して複数の特徴点を確認できるまでは、正確な位置推定ができない場合がある。上述の位置推定方法の第2の問題点は、特徴点を検出する外界センサの種類によって取得するデータが異なり、互換性の確保が難しいことである。上述の位置推定方法の第3の問題点は、道路周辺の地物等の特徴点が変化しやすいことである。特徴点として採用される広告看板や標識などは、変更されることが多い。また、路面ペイントは(特に雪国等において)劣化しやすく、描き直したペイントが前回のペイントと同一でない場合もある。上述の位置推定方法の第4の問題点は、特徴点の情報として地図データに記憶するデータ量が膨大になりやすいことである。例えば、ライダ等において用いられる占有格子地図(Occupancy Grid Map:OGM)、NDT(Normal Distributions Transform)データ等は、データ量が大きい。上述の位置推定方法の第5の問題点は、地図データに記憶する特徴点の情報を生成するのに車両を用いて実測する必要があり、手間がかかることである。
【0088】
これに対し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法は、第1の問題点に関し、道路よりも遠い位置に存在する基準部を用いることができるため、自車位置Pの算出可能な範囲が広いという利点がある。また、ビルや家などの建物は、2階建て以上になることが多いため、路肩に駐車中の車両が存在する場合であっても、建物のエッジ部分等を基準部として好適に計測することが可能である。同様に、電柱を基準部として用いる場合であっても、電柱は支える電線の下を車両が通過できるように12m程度(3階建て)の高さがあるため、路肩に駐車中の車両等の存在によらずに好適に計測を行うことができる。また、基準部として鉛直なエッジ部分等を計測するため、計測が比較的容易であり、かつ、計測を行う車両の姿勢によらずに計測を行うことが可能である。
【0089】
また、第2の問題に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、カメラを用いる実施例について説明したが、必要な基準部の車両に対する方向を検出可能な外界センサであればライダ等の他の外界センサを用いてもよく、使用する外界センサの種別に依存しないという利点がある。第3の問題に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、電柱や信号機などの柱状物や建物の鉛直なエッジ部分を使用するため、看板や標識、建築物の壁の模様などが変わっても位置推定精度に影響がないという利点がある。なお、建物の柱の構造は、設計及び建設時に行政による許認可があり、建設後に無断で形を変形することができない。また、建物の耐用年数は30年から50年以上あるため、建て替え等が頻繁に生じない。
【0090】
第4の問題に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、基準部毎に位置情報が地図データに格納されていればよいため、必要なデータ量は、NDTデータ等と比較して遥かに小さい。第5の問題点に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、電柱や信号機などの柱状物や建物の鉛直なエッジ部分を基準部とし、地
図DB4にそれらの位置情報を格納させる。この位置情報は、例えば航空写真計測により求めることも可能であり、車両を用いて実測することなく基準部の位置情報を生成することが可能である。
【0091】
以上説明したように、本実施例に係る情報処理装置1は、車両周辺の地物を含む角度対応画像Iaを取得し、角度対応画像Ia中の地物に関連する少なくとも3つの基準部を抽出する。そして、情報処理装置1は、少なくとも3つの基準部から基準部の組み合わせを少なくとも2つ選択し、組み合わせの各々に対し、組み合わせに対する車両位置を基準とした角度に関する情報を取得する。そして、情報処理装置1は、地
図DB4に基づき、上述の組み合わせに対応する2つの基準部の地図上における位置情報と、上述の組み合わせに対応する基線の長さに関する情報と、を夫々取得する。そして、情報処理装置1は、上述の角度に関する情報と、上述の長さに関する情報と、上述の位置情報と、から、地図上における車両の位置である自車位置Pを算出する。これにより、情報処理装置1は、自車位置Pを好適に算出することができる。
【0092】
[変形例]
次に、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0093】
(変形例1)
情報処理装置1は、カメラ71から取得した角度対応画像Iaを用いて第1基線及び第2基線に関する角度θ1及び角度θ2(
図4〜
図7参照)を算出する代わりに、他の外界センサが出力するデータを用いて上述の角度θ1及び角度θ2を算出してもよい。例えば、情報処理装置1は、ライダの出力に基づき、上述の角度θ1及び角度θ2を算出してもよい。
【0094】
この場合、例えば、ライダは、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光が物体で反射した反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づく走査情報(スキャンデータ)を出力する出力部とを有する。走査情報は、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、その照射方向での物体までの距離との組み合わせを示す点群データである。従って、情報処理装置1は、ライダが生成した点群データから、第1基線及び第2基線の両端を構成する基準部に相当する点群データを抽出し、抽出した点群データが示す上述の照射方向に基づき、上述の角度θ1及び角度θ2を算出する。この場合、例えば、情報処理装置1は、第1基線の一端を構成する基準部に相当する点群データが示す照射方向の平均値と、第1基線の他端を構成する基準部に相当する点群データが示す照射方向の平均値との差を、角度θ1として算出する。同様に、情報処理装置1は、第2基線の一端を構成する基準部に相当する点群データが示す照射方向の平均値と、第2基線の他端を構成する基準部に相当する点群データが示す照射方向の平均値との差を、角度θ2として算出する。
【0095】
この態様によっても、情報処理装置1は、本実施例における自車位置Pの算出に必要な、基線の両端がなす角度を好適に算出することができる。
【0096】
(変形例2)
情報処理装置1が実行する自車位置Pの算出処理を、車両に存在する端末装置と通信を行うサーバ装置が実行してもよい。
【0097】
図9は、変形例2における自車位置算出システムの構成例を示す。
図9に示すように、変形例2に係る自車位置算出システムは、サーバ装置に相当する情報処理装置1Aと、車両と共に移動する端末装置1Bとを有する。情報処理装置1Aと端末装置1Bとは、通信網5を介してデータ通信を行う。また、端末装置1Bは、例えば、
図1に示す情報処理装置1と同等の構成を有し、カメラ71から角度対応画像Iaを取得する。
【0098】
この場合、情報処理装置1Aは、
図2に示す地
図DB4のデータ構造と同等のデータ構造を有する地図データを記憶しており、端末装置1Bから供給される情報に基づき、
図8のフローチャートの処理を実行する。この場合、情報処理装置1Aは、ステップS11において、端末装置1BからGPS等に基づく暫定自車位置Pgの情報を受信し、ステップS12において、地図データを参照して少なくとも3つの基準部を選定する。また、情報処理装置1Aは、ステップS13において、地図データを参照することで、各基線の長さ(距離L1及び距離L2)を算出する。また、情報処理装置1Aは、ステップS14において、端末装置1Bから供給される角度対応画像Iaに基づき、各基準部を検出し、各基線の両端がなす角度(角度θ1及び角度θ2)を算出する。そして、情報処理装置1Aは、ステップS15において、上述の基線の長さ及び角度等に基づき、自車位置Pを算出する。そして、情報処理装置1Aは、算出した自車位置Pの情報を端末装置1Bへ送信する。
【0099】
このように、情報処理装置1Aは、端末装置1Bから受信する情報に基づき、端末装置1Bが存在する車両に対する自車位置Pを算出することができる。
【0100】
(変形例3)
情報処理装置1は、第1基線と第2基線に用いた基準部とは異なる基準部に基づき設定した第3基線の両端がなす角度θ3に基づき、参照した基準部情報が示す基準部と、実際に計測した基準部との同一性を判定してもよい。
【0101】
具体的には、情報処理装置1は、自車位置Pの算出後、第1基線と第2基線に用いた基準部とは異なる基準部を一端とする第3基線を設定し、自車位置Pを基準とした第3基線の両端がなす角度θ3を計測する。そして、情報処理装置1は、地
図DB4に記録された第3基線の両端をなす基準部の位置情報と、算出した自車位置Pとに基づき、算出した自車位置Pを基準とした第3基線の両端がなす角度θ3を理論的に(即ち地図上において)算出する。そして、情報処理装置1は、計測した角度θ3と、理論的に算出した角度θ3とが所定差以内である場合、参照した基準部情報が示す基準部と、実際に計測した基準部とが正しく対応していると判定する。この場合、情報処理装置1は、算出した自車位置Pが正確であるとみなし、当該自車位置Pを用いて地図表示の制御や車両の制御などを行う。一方、情報処理装置1は、計測した角度θ3と、理論的に算出した角度θ3とが所定差より大きい場合、参照した基準部情報が示す基準部と、実際に計測した基準部とが正しく対応していないと判定する。この場合、情報処理装置1は、算出した自車位置Pは正確でないと判定し、当該自車位置Pの算出に用いた基準部とは異なる基準部を基準として再び自車位置Pの算出を行う。角度θ3は、本発明における「第2角度」の一例である。
【0102】
この態様により、情報処理装置1は、参照した基準部情報が示す基準部と、実際に計測した基準部との同一性を的確に判定し、算出した自車位置Pの正確性の検証を好適に行うことができる。