特開2020-24237(P2020-24237A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-24237(P2020-24237A)
(43)【公開日】2020年2月13日
(54)【発明の名称】光学製品
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20200121BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20200121BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20200121BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20200121BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20200121BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20200121BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20200121BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200121BHJP
【FI】
   G02B1/115
   G02B5/08 A
   G02B5/26
   G02B5/28
   B32B17/06
   B01J35/02 J
   B01J21/06 M
   B01J37/02 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-242185(P2016-242185)
(22)【出願日】2016年12月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】松坂 慶二
(72)【発明者】
【氏名】能勢 正章
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝也
(72)【発明者】
【氏名】青木 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】今関 秀和
(72)【発明者】
【氏名】水町 靖
(72)【発明者】
【氏名】野村 康之
(72)【発明者】
【氏名】濱 敬二
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
2K009
4F100
4G169
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA03
2H042DA04
2H042DA05
2H042DA07
2H042DA08
2H042DA12
2H042DB02
2H042DB04
2H042DC02
2H042DE01
2H042DE08
2H148FA05
2H148FA12
2H148FA18
2H148FA22
2H148FA24
2H148GA04
2H148GA17
2H148GA33
2K009AA06
2K009BB02
2K009CC03
2K009DD03
4F100AA17C
4F100AA19D
4F100AA20D
4F100AA21C
4F100AB01E
4F100AB10E
4F100AB13E
4F100AB16E
4F100AB17E
4F100AB24E
4F100AG00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100EH66B
4F100EH66C
4F100EH66D
4F100JD09
4F100JD10
4F100JL08C
4F100JN06
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4F100JN18A
4F100JN18B
4F100JN18C
4F100JN18D
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00D
4G169AA02
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA03A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA14A
4G169BA14B
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB06B
4G169BC42B
4G169BC50B
4G169BC56B
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169ED02
4G169ED04
4G169EE08
4G169FA03
4G169FB01
4G169HA01
4G169HA03
4G169HB01
4G169HB06
4G169HC16
4G169HD12
4G169HE06
4G169HE08
(57)【要約】
【課題】触媒効果を発揮しつつ、所望の分光特性を得ることができる光学製品を提供する。
【解決手段】3層以上の多層膜を成膜したガラス基材を有する光学製品は、前記多層膜は、少なくとも1層の低屈折率層と、少なくとも1層の高屈折率層とを組み合わせて用いることで、前記光学製品の分光特性を調整するようになっており、前記ガラス基材から最も遠い最上層が前記低屈折率層であり、前記最上層に隣接した前記高屈折率層が光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする機能層であり、以下の条件式を満たす。
60nm≦TL≦350nm (1)
220nm≦Tcat≦700nm (2)
ここで、
TL:前記最上層の膜厚
Tcat:前記機能層の膜厚
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の多層膜を成膜したガラス基材を有する光学製品において、
前記多層膜は、少なくとも1層の低屈折率層と、少なくとも1層の高屈折率層とを組み合わせて用いることで、前記光学製品の分光特性を調整するようになっており、
前記ガラス基材から最も遠い最上層が前記低屈折率層であり、
前記最上層に隣接した前記高屈折率層が光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする機能層であり、
以下の条件式を満たす光学製品。
60nm≦TL≦350nm (1)
220nm≦Tcat≦700nm (2)
ここで、
TL:前記最上層の膜厚
Tcat:前記機能層の膜厚
【請求項2】
前記機能層が、Tiを主成分とする酸化物から形成されている請求項1に記載の光学製品。
【請求項3】
前記最上層がSiO2から形成されている請求項1又は2に記載の光学製品。
【請求項4】
前記最上層がSiO2とAl23の混合物から形成されている請求項1又は2に記載の光学製品。
【請求項5】
前記多層膜の各層は蒸着法で成膜されており、いずれかの層はイオンアシストデポジションで成膜されている請求項1〜4のいずれかに記載の光学製品。
【請求項6】
前記多層膜は可視域において反射防止特性を有する請求項1〜5のいずれかに記載の光学製品。
【請求項7】
前記多層膜は可視域において半透過または高反射特性を有する請求項1〜5のいずれかに記載の光学製品。
【請求項8】
前記多層膜は近赤外域において反射防止特性を有する請求項1〜7のいずれかに記載の光学製品。
【請求項9】
前記多層膜は近赤外域の光を70%以上反射する特性を有する請求項1〜7のいずれかに記載の光学製品。
【請求項10】
前記多層膜は紫外域の光を70%以上反射する特性を有する請求項1〜9のいずれかに記載の光学製品。
【請求項11】
前記多層膜は、可視域の光及び近赤外域の光のいずれか一つ以上を反射する金属膜を有する請求項1〜10のいずれかに記載の光学製品。
【請求項12】
前記金属膜はAg、Au、Cr、Al、Cu、Niのいずれかを主成分とする請求項11に記載の光学製品。
【請求項13】
以下の条件式を満たす請求項1〜12のいずれかに記載の光学製品。
1.3≦NL≦1.5 (3)
1.9≦NH≦2.45 (4)
ここで、
NL:前記低屈折率層の材料のd線での屈折率
NH:前記高屈折率層の材料のd線での屈折率
【請求項14】
前記ガラス基材が光学パワーを有し、以下の条件式を満たす請求項1〜13のいずれかに記載の光学製品。
1.7≦Ns≦2.2 (5)
ここで、
Ns:前記ガラス基材のd線での屈折率
【請求項15】
前記ガラス基材が光学パワーを有さず、以下の条件式を満たす請求項1〜13のいずれかに記載の光学製品。
1.45≦Ns≦1.65 (6)
ここで、
Ns:前記ガラス基材のd線での屈折率
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層膜を成膜した光学製品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば酸化チタンは、高い光触媒効果を有することが知られている。より具体的には、酸化チタンにUV光が照射されると、酸化還元反応が強く促進されると共に、酸化チタンの表面が、水に濡れ易い親水性を呈するため、雨等の水滴で洗浄される、いわゆるセルフクリーニング作用を有することが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、低屈折率層及び高屈折率層を交互に積層し、最上層が低屈折率層である多層反射防止膜を有し、少なくとも最上層の直下の高屈折率層が光触媒活性を有する酸化チタン又は酸化チタンを含有する複合膜のような金属酸化物の層である物品が開示されている。かかる物品は、例えば眼鏡、カメラ、双眼鏡、顕微鏡などのレンズとして用いることができ、防汚、防曇などの機能を発揮できるとされている。かかる技術を、汚れやすく且つユーザーが清掃しにくい,例えば車載用カメラやガラス建材などの光学製品に適用したいという要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−329904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術では、光触媒機能を発揮するTiO2の膜厚が200nm以下となっており、汚れやすい環境に置かれた光学製品に対し十分な光触媒効果を実現することができない恐れがある。一方で、TiO2の膜厚を増大させれば、ある程度光触媒機能を発揮できるようにはなるが、それにより所望の光学特性を得ることができなくなるという問題もある。
【0006】
本発明の目的の1つは、光触媒効果を発揮しつつ、所望の分光特性を得ることができる光学製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学製品は、3層以上の多層膜を成膜したガラス基材を有する光学製品において、
前記多層膜は、少なくとも1層の低屈折率層と、少なくとも1層の高屈折率層とを組み合わせて用いることで、前記光学製品の分光特性を調整するようになっており、
前記ガラス基材から最も遠い最上層が前記低屈折率層であり、
前記最上層に隣接した前記高屈折率層が光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする機能層であり、
以下の条件式を満たす。
60nm≦TL≦350nm (1)
220nm≦Tcat≦700nm (2)
ここで、
TL:前記最上層の膜厚
Tcat:前記機能層の膜厚
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光触媒効果を発揮しつつ、所望の分光特性を得ることができる光学製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態にかかる光学製品の断面を模式的に示す図である。
図2】実施例である供試番号1−1の多層膜の分光特性を示す図である。
図3】実施例である供試番号1−2の多層膜の分光特性を示す図である。
図4】実施例である供試番号1−3の多層膜の分光特性を示す図である。
図5】比較例である供試番号1−4の多層膜の分光特性を示す図である。
図6】比較例である供試番号1−5の多層膜の分光特性を示す図である。
図7】実施例である供試番号2−1の多層膜の分光特性を示す図である
図8】実施例である供試番号2−2の多層膜の分光特性を示す図である。
図9】実施例である供試番号2−3の多層膜の分光特性を示す図である。
図10】実施例である供試番号2−4の多層膜の分光特性を示す図である。
図11】実施例である供試番号3−1の多層膜の分光特性を示す図である
図12】実施例である供試番号3−2の多層膜の分光特性を示す図である。
図13】実施例である供試番号3−3の多層膜の分光特性を示す図である。
図14】実施例である供試番号3−4の多層膜の分光特性を示す図である。
図15】実施例である供試番号4−1の多層膜の分光特性を示す図である
図16】実施例である供試番号4−2の多層膜の分光特性を示す図である。
図17】実施例である供試番号4−3の多層膜の分光特性を示す図である。
図18】実施例である供試番号4−4の多層膜の分光特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかる光学製品の断面を模式的に示す図である。図1(a)に示す光学製品は、ガラス基板GL上に低屈折率層Lと高屈折率層Hとが交互に積層された構造の多層膜MCを有するものである。但し、ガラス基板GLに高屈折率層Hが接していても良い。このような光学製品は光の透過機能・反射機能を有し、例えば車載用レンズや通信用レンズ、建材として用いることができる。また図1において、ガラス基材と機能層の間に位置する層を、高屈折率層や低屈折率層の代わりに、中間屈折率層の等価膜として置換しても良い。
【0011】
一方、図1(b)に示す光学製品は、ガラス基板GL上に金属膜Mを成膜し、更にその上に高屈折率層Hと低屈折率層Lとが交互に積層された構造の多層膜MCを有するものである。但し金属膜Mに高屈折率層Hが接していても良い。このような光学製品は光の反射機能を有し、例えば反射鏡や建材、車載用ミラーとして用いることができる。
【0012】
図1において、ガラス基材GLから最も遠い最上層が低屈折率層Lであり、最上層に隣接した高屈折率層Hが光触媒機能を有する金属酸化物の機能層である。比較的強度が高い低屈折層Lを最上層とすることで、耐傷性を向上できる。又、機能層は、最上層を通じてUV光で励起した活性酸素を用いて光触媒機能を発揮するため、最上層にできるだけ近い位置に置くことが好ましい。最上層に隣接して機能層を設けることで、例えば光触媒機能を有効に発揮できる。又、機能層として、最上層に隣接して100nm以上の膜厚とすることが望ましく、更に光触媒効果、光活性効果を持つ金属酸化物を用いることで、表面有機物を除去し最上層の親水性を維持できるので好ましい。TiO2を用いた機能層は、IADを用いて成膜すると光触媒効果が高まるので好ましい。
【0013】
「光触媒機能」とは、太陽光や人工光が入射することにより強力な酸化力が生じ、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を有効に除去することができたり、親水作用により、水滴が表面にとどまる事を防ぎ、また油性等の汚れが定着せずに水などで洗浄されるなどのセルフクリーニング機能をいい、例えば二酸化チタンが持つ機能である。尚、「最上層に隣接する」とは、最上層と機能層が密着している場合の他、最上層と機能層との間に、その機能の発現を妨げないとみなせる層(例えば20nm以下の層)を設ける場合も含む。
【0014】
更に、本実施の形態の光学製品は以下の条件式を満たす。
60nm≦TL≦350nm (1)
220nm≦Tcat≦700nm (2)
ここで、
TL:最上層の膜厚
Tcat:最上層に隣接した高屈折率層(機能層)Hの膜厚
【0015】
(1)式の値が上限以下であると、最上層を通じてUV光で励起した活性酸素をやり取りすることにより光触媒効果を発揮できる。一方、(1)式の値が下限以上であると、強固な最上膜を形成できるから十分な耐傷性を確保できる。尚、好ましくは,以下の式を満たすことである。
220nm≦Tcat≦600nm (2’)
更に好ましくは、以下の式を満たすことである。
60nm≦TL≦250nm (1’)
【0016】
(2)式の値が下限以上であると、機能層の膜厚を確保できるから、十分な光触媒効果を期待できる。一方、機能層の厚さが増大すればするほど光触媒効果を期待できるが、その代わり多層膜に要求される所望の分光特性を得にくくなるので、(2)式の値は上限以下とすることが望ましい。尚、好ましくは,以下の式を満たすことである。
250nm≦Tcat≦600nm (2’’)
【0017】
最上層に隣接した高屈折率層(機能層)Hが、Tiを主成分とする酸化物(例えばTiO2)から形成されていると好ましい。TiO2等のTi酸化物は光触媒効果が非常に高いからである。
【0018】
最上層がSiO2から形成されていると好ましい。夜間や屋外などではUV光が入射しにくく、Tiを主成分とする酸化物では親水効果が低下するが、かかる場合でも最上層をSiO2から形成することで親水効果を発揮でき、また耐傷性もより高められる。最上層にSiO2を用いる場合、成膜後に500℃で2時間の加熱処理を施すことで、耐傷性が向上する。
【0019】
最上層がSiO2とAl23の混合物(但し、SiO2の組成比が90重量%以上)から形成されていると好ましい。これにより夜間や屋外などでも親水効果を発揮でき、またSiO2とAl23の混合物とすることで耐傷性もより高められる。最上層にSiO2とAl23の混合物を用いる場合、成膜後に500℃で2時間の加熱処理を施すことで、耐傷性が向上する。尚、最上層の一部又は全部を成膜する際にイオンアシストデポジション(以下、IADという)を用いると好ましい。これにより耐傷性を向上することができる。
【0020】
多層膜MCは蒸着法で成膜されており、いずれかの層はIADで成膜されていると好ましい。IADによる成膜で分光特性のシフトズレを抑制できる。
【0021】
図1(a)に示す多層膜MCは、可視域において反射防止特性を有すると好ましい。ここで「可視域」とは波長420nm〜680nmの範囲をいう。又、ここでの「反射防止特性」とは、可視域において光の反射率が2%以下であり、望ましくは1%以下,より望ましくは0.5%以下であることをいう。これにより可視域での反射防止効果を得られ、撮像レンズなどに用いると好適である。
【0022】
図1(a)又は(b)に示す多層膜MCは、可視域において半透過または高反射特性を有すると好ましい。ここでの「半透過特性」とは、可視域における光の透過率が30%以上、70%以下の場合をいい、「高反射特性」とは、可視域において光の反射率が90%以上であることをいう。これにより可視域での半透過ミラーや全反射ミラーが得られる。
【0023】
図1(a)又は(b)に示す多層膜MCは、近赤外域において反射防止特性を有すると好ましい。ここで「近赤外域」とは波長700nm〜2000nmの範囲をいう。又、ここでの「反射防止特性」とは、近赤外域において光の反射率が2%以下であり、望ましくは1%以下,より望ましくは0.5%以下であることをいう。これにより近赤外域での反射防止効果が得られる。
【0024】
図1(a)又は(b)に示す多層膜MCは、近赤外域の光を70%以上反射する特性を有すると好ましい。これにより近赤外域での反射ミラーや、IRカットフィルタが得られる。
【0025】
図1(a)又は(b)に示す多層膜MCは、紫外域の光を70%以上反射する特性を有すると好ましい。ここで「紫外域」とは波長350nm〜400nmの範囲をいう。なお紫外域における光の反射率が90%以上であることが望ましく、さらにより望ましくは95%以上であることをいう。これにより紫外域での反射ミラーや、紫外線カットフィルタが得られる。
【0026】
多層膜MCは、可視域の光、近赤外域の光のいずれか一つ以上を反射する金属膜又は誘電体多層膜を有しても構わない。ここでの「反射特性」とは、可視域又は近赤外域において光の反射率が70%以上であり、望ましくは85%以上であることをいう。
【0027】
金属膜Mを用いる場合、Ag、Au、Cr、Al、Cu、Niのいずれかを主成分とすると好ましい。これらを適宜用いることで、使用可能域や反射率を任意に調整できる。「主成分とする」とは、当該元素の含有量が51重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは100重量%であることを意味する。
【0028】
光学製品が以下の条件式を満たすと好ましい。
1.3≦NL≦1.5 (3)
1.9≦NH≦2.45 (4)
ここで、
NL:低屈折率層の材料のd線での屈折率
NH:高屈折率層の材料のd線での屈折率
【0029】
(3)、(4)式を満たすことで、所望の光学特性を有する光学製品を得ることができる。ここで、d線とは波長587.56nmの波長の光をいう。低屈折率層の素材として、d線での屈折率が1.48であるSiO2や、d線での屈折率が1.385であるMgF2を用いることができる。又、(4)式を満たす特定材料として、Ta、Hf、Zr、Nbの酸化物を好適に用いることができる。
【0030】
ガラス基材GLが光学パワーを有する場合、以下の条件式を満たすことが好ましい。
1.7≦Ns≦2.2 (5)
ここで、
Ns:ガラス基材GLのd線での屈折率
【0031】
光学設計上、ガラス基材のd線での屈折率として(5)式を満たすことで,コンパクトな構成とした上で光学製品の光学性能を高められる。(5)式を満たすガラス基材に本発明の多層膜を成膜することで、特に外界に対して露出するレンズ等に用いることができ、優れた耐環境性能と光学性能を両立することができる。
【0032】
一方、ガラス基材GLが光学パワーを有さない場合、以下の条件式を満たすことが好ましい。
1.45≦Ns≦1.65 (6)
ここで、
Ns:ガラス基材GLのd線での屈折率
【0033】
窓ガラス等の建材として光学製品を適用する場合、比較的安価でありながら高い強度を有する屈折率1.52程度のガラス基材を用いることが望ましいからである。
【0034】
本実施の形態によれば、多層膜最上層SiO2の膜厚、密度、成膜処方および最上層に隣接した機能層のTiO2膜厚を最適化し光触媒効果の最大化を図り、合わせて分光特性調整層を設けることにより可視域、近赤外域に至る波長帯における任意の分光特性を持ち合わせた光触媒光学多層膜を提供することができる。
【0035】
(実施例)
以下、上述した実施の形態に好適な実施例を、比較例と比較して評価する。以下の実施例、比較例の多層膜を形成する上で、株式会社シンクロン製の成膜装置BES−1300を用い、IADのイオン源としてNIS−175を用いた。
【0036】
(機能層の膜厚に関する評価)
本発明者らは、光学パワーを持つガラス基材(屈折率1.804)上に、機能層の膜厚(d(nm))を変化させつつ蒸着法にて9層の多層膜を形成して試験に供した。より具体的には、表1に示すように、ガラス基材TAF3(HOYA株式会社製:屈折率1.804)上に、SiO2を用いた低屈折率層、OA600(キヤノンオプトロン株式会社製の素材)を用いた高屈折率層,TiO2を用いた機能層を表1に示す順序で積層して成膜した。最上層としてはSiO2を用いた。各層の成膜処方及び膜構成(ガラス基板に接する層を1層目とする、以下同じ)を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
OA600は、Ta25、TiO、Ti25の混合物であり、その具体的な組成は表2に示す通り、酸化タンタルを主成分とする。
【0039】
【表2】
【0040】
表1及び後述する表中の屈折率n(λ)は、以下の式で求めた。尚、本明細書中、屈折率はd線(波長587.56nm)で測定するものとする。
n(λ)=A0+A1/(λ−A2
ここで、λはd線の波長であり、実施例及び比較例で用いる素材のA0、A1、A2は、それぞれ以下の値である。
TAF3:A0=1.768、A1=14.724(nm)、A2=181.535(nm)
B270(白板):A0=1.504、A1=6.912(nm)、A2=193.866(nm)
M−BACD12:A0=1.561、A1=9.387(nm)、A2=160.63(nm)
OA600:A0=2.014、A1=31.680(nm)、A2=233.891(nm)
SiO2:A0=1.460、A1=0(nm)、A2=0(nm)
H4:A0=2.100、A1=0(nm)、A2=0(nm)
TiO2(機能層):A0=2.013、A1=36.149(nm)、A2=284.651(nm)
TiO2:(高屈折層1)A0=2.200、A1=71.220(nm)、A2=234.000(nm)
TiO2:(高屈折層2)A0=2.230、A1=71.220(nm)、A2=234.000(nm)
【0041】
成膜処方は表1に示す通りであるが、各層の成膜に関して、成膜速度RATE(Å/SEC)、酸素ガスの導入の有無及び導入する場合にはその導入量を変更して,3つの実施例(供試番号1−1〜1−3)と、2つの比較例(供試番号1−4、1−5)を作製し、以下の試験に供した。又、最上層の膜厚TLは85nm前後に固定した。成膜に際してIADは用いなかった。それぞれ加熱温度は340℃、開始真空度は3.00E−03Paとした。図2〜6は、供試番号1−1〜1−5の多層膜の分光特性を示す図である。
【0042】
評価項目として、「光触媒効果測定」は、供試品にYAZAWA社のブラックライト(型番BL20)を供試品から距離30mm離してUV光を5分間照射し、その後、inkintelligent社の「visualiser Pen」を用いて色変化を段階的に評価した。ここで、色変化度が極小のものは光触媒効果がなし(評価×)、色変化度が大のものは光触媒効果がある(評価○)とした。
【0043】
(評価結果の考察)
供試番号1−1〜1−3の多層膜については、機能膜の膜厚Tcatが300〜582nmであるところ、光触媒効果測定の評価が○となった(後述する表8参照)。又、各多層膜は、図2〜4に示すように主として可視域で反射率が1.5%以下(許容値を2%とする)と、可視域反射防止膜として良好な分光特性を実現している。
【0044】
これに対し、供試番号1−4の多層膜については、図5に示すように主として可視域で反射率が1%以下と良好な分光特性を実現しているが、機能膜の膜厚Tcatが85nmであるところ、光触媒効果測定の評価が×であった。これは、機能膜の膜厚が薄すぎて光触媒機能を十分発揮できなかったことによるものといえる。
【0045】
一方、供試番号1−5の多層膜については、機能膜の膜厚Tcatが814nmであるところ、光触媒効果測定の評価が○であったが、図6に示すように可視域で反射率が許容値2%を超えてしまい、十分な反射防止効果が得られていないことがわかる。すなわち、機能膜の膜厚Tcatが厚すぎると、分光特性が悪化することが分かる。
【0046】
以上の結果より、トレードオフの関係となりがちな光触媒効果と分光特性とをバランス良く確保するには、機能膜の膜厚を少なくとも220nm以上、700nm以下とすることが好ましいといえる。
【0047】
(2) 本発明者らは、光学パワーを持つガラス基材上に、分光特性を変化させつつ蒸着法にて15層又は7層の多層膜を形成して試験に供した。より具体的には、表3に示すように、ガラス基材TAF3(HOYA株式会社製:屈折率1.804)、又はM−BACD12(HOYA株式会社製:屈折率1.580)上に、SiO2を用いた低屈折率層、OA600(キヤノンオプトロン株式会社製の素材)を用いた高屈折率層,TiO2を用いた機能層を表3に示す順序で積層して成膜した。最上層としてはSiO2を用いた。各層の成膜処方及び膜構成を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
成膜処方は表3に示す通りであるが、各層の成膜に関して、成膜速度RATE(Å/SEC)、酸素ガスの導入量を変更して,4つの実施例(供試番号2−1〜2−4)を作製し、光触媒効果と分光特性をそれぞれ評価した。成膜に際してIADは用いなかった。又、最上層の膜厚TLは97〜228nmとした。それぞれ加熱温度は340℃、開始真空度は3.00E−03Paとした。図7〜10は、供試番号2−1〜2−4の多層膜の分光特性を示す図である。
【0050】
供試番号2−1〜2−4の多層膜については、機能膜の膜厚Tcatが244〜427nmであるところ、光触媒効果測定の評価が○となった(後述する表8参照)。又、供試番号2−1の多層膜は、図7に示すように主として近赤外域(波長700nm〜1050nm)で反射率が1%以下と、近赤外域反射防止膜として良好な分光特性を実現している。供試番号2−2の多層膜は、図8に示すように主として近赤外域(波長1200nm〜1800nm)で反射率が1%以下と、近赤外域反射防止膜として良好な分光特性を実現している。供試番号2−3の多層膜は、図9に示すように主として可視域(450nm〜850nm)で反射率が2%以下と、可視域反射防止膜として良好な分光特性を実現している。供試番号2−4の多層膜は、図10に示すように主として近赤外域(波長1200nm〜1800nm)で反射率が1.5%以下と、近赤外域反射防止膜として良好な分光特性を実現している。
【0051】
(3) 本発明者らは、光学パワーを持たないガラス基材上に、分光特性を変化させつつ蒸着法にて8層,10層又は12層の多層膜を形成して試験に供した。より具体的には、表4に示すように、ガラス基材B270(SCHOTT社製:屈折率1.52、白板ともいう)上に、金属膜、SiO2を用いた低屈折率層、OA600(キヤノンオプトロン株式会社製の素材)を用いた高屈折率層,屈折率2.032のTiO2を用いた機能層を表4に示す順序で積層して成膜した。最上層としてはSiO2を用いた。各層の成膜処方及び膜構成を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
成膜処方は表4に示す通りであるが、各層の成膜に関して、成膜速度RATE(Å/SEC)、酸素ガスの導入量、金属膜の素材を変更して,4つの実施例(供試番号3−1〜3−4)を作製し、光触媒効果と分光特性をそれぞれ評価した。供試番号3−1の金属膜はAlであり、供試番号3−2の金属膜はCrであり、供試番号3−3の金属膜はCuであり、供試番号3−4の金属膜はNiとした。成膜に際してIADは用いなかった。又、最上層の膜厚TLは77〜89nmとした。それぞれ加熱温度は340℃、開始真空度は3.00E−03Paとした。図11〜14は、供試番号3−1〜3−4の多層膜の分光特性を示す図である。
【0054】
供試番号3−1〜3−4の多層膜については、機能膜の膜厚Tcatが300〜351nmであるところ、光触媒効果測定の評価が○となった(後述する表8参照)。又、供試番号3−1の多層膜は、図11に示すように主として可視域から近赤外域(波長400nm〜1950nm)で反射率が75%以上と、広帯域反射ミラーとして良好な分光特性を実現している。供試番号3−2の多層膜は、図12に示すように主として可視域(波長400nm〜650nm)で反射率が70%以上と、可視域反射ミラーとして良好な分光特性を実現している。供試番号3−3の多層膜は、図13に示すように主として可視域から近赤外域で反射率が85%以上と、広帯域反射ミラーとして良好な分光特性を実現している。供試番号3−4の多層膜は、図14に示すように主として可視域(波長400nm〜650nm)で反射率が75%以上と、可視域反射ミラーとして良好な分光特性を実現している。
【0055】
(4) 本発明者らは、光学パワーを持たないガラス基材上に、分光特性を変化させつつ蒸着法にて26層〜199層の多層膜を形成して試験に供した。より具体的には、表5〜7に示すように、ガラス基材B270(SCHOTT社製:屈折率1.52)上に、SiO2を用いた低屈折率層、H4(MERCK社製:チタン酸ランタン(LaTiOx)、屈折率2.401のTiO2、屈折率2.431のTiO2、又はOA600(キヤノンオプトロン株式会社製の素材)を用いた高屈折率層,屈折率2.132のTiO2を用いた機能層を表5に示す順序で積層して成膜した。最上層としてはSiO2を用いた。各層の成膜処方及び膜構成を表5〜7に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
成膜処方は表5〜7に示す通りであるが、各層の成膜に関して、成膜速度RATE(Å/SEC)、酸素ガスの導入量、IADを用いる場合にはその処方を設定して,4つの実施例(供試番号4−1〜4−4)を作製し、光触媒効果と分光特性をそれぞれ評価した。又、最上層の膜厚TLは86〜250nmとした。それぞれ加熱温度は340℃、開始真空度は3.00E−03Paとした。図15〜18は、供試番号4−1〜4−4の多層膜の分光特性を示す図である。尚、供試番号4−2では、光を反射させる膜として誘電体多層膜を用いている。
【0060】
尚、「APC」は、Auto Pressure Controlの略で分圧を調整したことを意味し、「SCCM」は、standard cc/minの略であり、1気圧(大気圧1013hPa)、0℃で1分間あたりに何cc流れたかを示す単位である。
【0061】
供試番号4−1〜4−4の多層膜については、機能膜の膜厚Tcatが392〜472nmであるところ、光触媒効果測定の評価が○となった(後述する表8参照)。又、供試番号4−1の多層膜は、図15に示すように主として可視域(波長360nm〜700nm)で反射率が50%前後と、可視域半透過膜として良好な分光特性を実現している。供試番号4−2の多層膜は、図16に示すように主として可視域(波長400nm〜750nm)で反射率が95%以上と、可視域反射ミラーとして良好な分光特性を実現している。供試番号4−3の多層膜は、図17に示すように主として、紫外域(400nm以下)で反射率が85%以上で、可視域(波長420nm〜700nm)で反射率が2%以下で、且つ近赤外領域(800nm〜1150nm)で反射率が95%以上の波長選択性を有するUV−IRカットフィルタとして良好な分光特性を実現している。供試番号4−4の多層膜は、図18に示すように主として、紫外域(400nm以下)で反射率が95%以上で、可視域(波長400nm〜750nm)で反射率が5%以下で、且つ近赤外領域(800nm〜1950nm)で反射率が88%以上の波長選択性を有するUV−IRカットフィルタとして良好な分光特性を実現している。
【0062】
(5)まとめ
以上の検討結果を、実施例と比較例とに分けて表8にまとめて示す。ここで、
Tcat:最上層に隣接した機能層の膜厚(nm)
TL:最上層の膜厚(nm)
NL:低屈折率層の材料のd線での屈折率
NH:高屈折率層の材料のd線での屈折率
Ns:ガラス基材のd線での屈折率
である。
【0063】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、光触媒効果を発揮しつつ、所望の分光特性を得ることができる光学製品を提供することができるから、車載用レンズや通信用レンズ,或いは建材に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0065】
L 低屈折率層
H 高屈折率層
M 金属層
GL ガラス基材
MC 多層膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18