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特開2020-27128光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-27128(P2020-27128A)
(43)【公開日】2020年2月20日
(54)【発明の名称】光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20200124BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20200124BHJP
【FI】
   G02B6/12 336
   G02B6/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-150460(P2018-150460)
(22)【出願日】2018年8月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小勝負 信建
(72)【発明者】
【氏名】片寄 里美
(72)【発明者】
【氏名】笠原 亮一
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB15
2H147AB17
2H147AC11
2H147AC17
2H147BD03
2H147BE03
2H147BE06
2H147BE15
2H147BG08
2H147EA14A
2H147EA14C
2H147EA16D
2H147EA18D
2H147EA19D
2H147FB01
2H147FB15
2H147FD19
2H147FE02
2H147GA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光導波路デバイスにおけるアサーマル化を実現し、より簡便で低廉な、光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法を提供する。
【解決手段】光導波路デバイスを調整する方法は、波長が1520nm乃至1560nmである信号光および波長が375nm乃至455nmである青色光が通過する1または複数の光導波路22、23と、光導波路が通過する溝25と、溝に充填された樹脂26とを備える光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法であって、信号光と青色光とを、同一または互いに異なる1または複数の光導波路を通過させ、同一または互いに異なる樹脂を通過させる工程を備え、樹脂を通過させる工程は、青色光を樹脂に照射することによって樹脂の屈折率を変化させ、樹脂の屈折率の変化に対応して樹脂を透過した信号光の透過波長を変化させる工程である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が1520nm乃至1560nmである信号光および波長が375nm乃至455nmである青色光が通過する1または複数の光導波路と、前記光導波路が通過する溝と、前記溝に充填された樹脂とを備える光導波路デバイスを透過する前記信号光の透過波長を調整する方法であって、
前記信号光と前記青色光とを、同一または互いに異なる前記1または複数の光導波路を介して、同一または互いに異なる前記樹脂に入射させる工程であって、前記青色光を前記樹脂に照射することによって前記樹脂の屈折率を変化させ、前記樹脂の屈折率の変化に対応して前記樹脂を透過する前記信号光の透過波長を変化させる工程を備える、
光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【請求項2】
前記光導波路デバイスは、アレイ導波路回折格子、マッハツェンダ干渉計、リング共振器、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【請求項3】
前記1または複数の光導波路は石英のみからなり、
前記樹脂を通過させる工程において、前記信号光と前記青色光とが同一の前記1または複数の光導波路を介して、同一または互いに異なる前記樹脂に入射させる、
請求項1または2に記載の光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【請求項4】
前記樹脂は、光学樹脂であって、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリレート共重合体、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ポリプロピレン、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンブロックゴム、スチレンポリオレフィンゴム、フッ素ゲル、フッ素ゴム、またはこれらの組み合わせその他の有機材料である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【請求項5】
前記青色光を発生させる青色光用光源の出力を調整することにより、前記樹脂の屈折率の変化に対応させて前記樹脂を透過する前記信号光の透過波長が変化する速度を調整する工程をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【請求項6】
前記信号光と前記青色光とを、同一または互いに異なる前記1または複数の光導波路を介して、同一または互いに異なる前記樹脂に入射させる工程の前に、前記1または複数の光導波路の温度を調整する工程をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【請求項7】
前記樹脂を透過した前記信号光の前記透過波長の変化をモニタしながら、前記樹脂の屈折率を変化させ、前記透過波長が所定の基準値に合致した場合に、前記光導波路デバイスに前記青色光を入力することを停止する工程をさらに備える、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【請求項8】
前記樹脂は、前記光導波路デバイスの中の2つの箇所に配置された第1の樹脂および第2の樹脂を含み、
最初に、前記青色光を前記第1の樹脂に照射して、前記第1の樹脂の屈折率を変化させ、
次いで、前記青色光を前記第2の樹脂に照射して、前記第2の樹脂の屈折率を変化させる工程をさらに備え、
前記第2の樹脂に照射する前記青色光のパワーは、前記第1の樹脂に照射する前記青色光のパワーよりも低い、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路デバイスを透過した信号光の透過波長を調整する方法に関するものであって、具体的には、光導波路デバイス内の光導波路が通過する樹脂のみに波長375nm乃至455nmの青色光を照射して当該樹脂の屈折率を変化させる信号光の透過波長を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の分野において、情報容量を増加させるために複数の信号をそれぞれ別々の波長に重畳させ、それらを単一の光ファイバ内を伝送させる波長分割多重方式が用いられている。この方式において、波長の異なる光を合分波する光波長合分波器として、温度無依存アレイ導波路回折格子(Athermal arrayed waveguide grating、以下、アサーマルAWGという)が重要な役割を果たしている。
【0003】
光波長合分波器は、その内部の石英ガラスの屈折率が温度依存性を有することや石英ガラス自体の熱膨張により、温度変化に伴って、光波長合分波器を透過した光の波長が大きく変動してしまうという問題を有している。従来、この問題に対して、ヒータによる加熱などによって石英ガラスの温度を一定に保持するようにして用いるか、または石英ガラスで構成されているスラブ導波路の内側面上に溝を設けてその溝の内部に屈折率の温度依存性が石英ガラスと異なる、すなわち光波長合分波器の構成全体で屈折率の温度依存性を相殺するような、ポリマーなどの樹脂を充填することが行われている。このように、温度が変化しても光波長合分波器を透過した光の波長が変動しないように光波長合分波器の温度無依存化が図られている。ここで、温度無依存化とすることをアサーマルまたはアサーマル化という。
【0004】
また、AWGによる分波波長は、製造工程において生じる光回路の製造のゆらぎにより、国際電気通信連合(International Telecommunication Union、ITU)により国際的に標準化され勧告されている標準波長としばしばずれが生じる。従来、製造工程において生じる分波波長のずれは、製造したAWGにエキシマレーザから出射するハイパワーの紫外域レーザを照射して、その紫外域レーザの波長をモニタしながらAWGを構成している石英製の光導波路の屈折率を変化させて、AWGによる分波波長をトリミングする方法が用いられている(特許文献1)。
【0005】
また、アサーマルAWGにおいて、光路内に形成された三角形状の溝に充填させたポリマーに紫外線を照射し、ポリマーの屈折率を変化させることにより、アサーマルAWGによる分波波長をトリミングする方法も提案されている(特許文献2)。
【0006】
また、AWGの透過光のスペクトル形状は、通常ガウシアン形状である。そこで、光源の波長に対するトレランスを向上させ、かつ温度に対するトレランスを与えるために、AWGの透過光のスペクトル形状の先端をフラットとする装置構成が提案されている。すなわち、AWGの入力側に設けられたスラブ導波路にマッハツェンダ干渉計(Mach−Zehnder interferometer、以下MZIという)を接続する装置構成が提案されている。このとき、MZI自体もAWGと同様にアサーマル化する必要があるため、MZIの短アーム側および長アーム側の導波路に溝が設けられ、その溝に屈折率を調整するための樹脂が充填されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-154043号公報
【特許文献2】特表2003-523528号公報
【特許文献3】国際公開WO2010/079761号公報
【特許文献4】特開2012-14151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の場合、MZIは、その位相をプラスマイナス0.005ラジアン程度の精度で合致させなければ、透過光のスペクトル形状の先端を平坦とすることができない。したがって、MZIの位相を調整するために、MZIの導波路にも紫外線を照射して導波路の屈折率を変化させ位相をトリミングする必要がある(特許文献3)。つまり、このAWGにMZIを組み合わせてその構成全体をアサーマル化するためには、工程数の増加が課題となる。
【0009】
また、アサーマルAWGの導波路中の溝への充填材料として、同じ基本骨格構造を有し側鎖の種類が異なっている、屈折率の異なる2つの樹脂を混合して用いることにより、透過光の波長を最適に調整する方法も提案されている(特許文献4)。この調整方法は、チップ毎に個別に屈折率の調整のための樹脂の混合作業が必要となり、作業量が多く煩雑化を招来する課題がある。
【0010】
またさらに、AWGやMZIなどの光導波路デバイスにおいて、光導波路である石英ガラスに紫外線を照射して屈折率を調整する場合には、エキシマレーザなどの大型且つ高パワー出力の紫外線光源が必要であり、同様に、光導波路中に設けられた溝の充填材料である樹脂に紫外線を照射してその屈折率を調整する場合にも、高パワー出力の紫外線ランプが必要となり、コスト面における課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものである。本発明の一実施形態は、波長が1520nm乃至1560nmである信号光および波長が375nm乃至455nmである青色光が通過する1または複数の光導波路と、光導波路が通過する溝と、溝に充填された樹脂とを備える光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法である。
【0012】
本発明の一実施形態は、より具体的には、信号光と青色光とを、同一または互いに異なる1または複数の光導波路を通過させ、同一または互いに異なる樹脂を通過させる工程を備え、樹脂を通過させる工程は、青色光を樹脂に照射することによって樹脂の屈折率を変化させ、樹脂の屈折率の変化に対応して樹脂を透過した信号光の透過波長を変化させる工程である、光導波路デバイスを透過する信号光の透過波長を調整する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、AWG、MZI、またはリング共振器等の光導波路デバイスの透過波長または波形をトリミングする際に生じる光導波路デバイス全体への紫外線照射工程を簡便なものとするためになされたものである。低パワー(1mW〜数10mW)出力で半導体LDから出射される波長375nm乃至455nmの青色光を、光導波路を介して、通信用の信号光が通過する樹脂部のみを通過させることにより、樹脂部の屈折率を調整することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に依れば、信号光が通過する光導波路の径は10um程度と小さな断面積のため、低パワー出力による青色光でもパワー密度が高くなる。その結果、大型で高パワー出力のエキシマレーザやUVランプを使用せずとも、効率的に樹脂部の屈折率を調整することができる。
【0015】
また、本発明に依れば、光導波路デバイスを備える光回路をファイバ付きモジュールとしてパッケージングした後や、このパッケージングした状態で光導波路デバイス内を連続通光して、経年劣化の結果透過光の波長にずれが生じた場合でも、波長を調整または再調整することができるという利点がある。
【0016】
またさらに、本発明に依れば、カプラを介して、青色光と信号光とを同時に光導波路デバイスに入力し、透過光の波長をモニタしながら光導波路かつ/または樹脂部の屈折率を調整して、透過光の波長を調整することができる。その結果、1pmレベルの高い精度で透過光の波長を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)はアサーマルAWGの構成を示す模式図であり、(b)はアサーマルAWGを透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。
図2】(a)はアサーマルMZIの構成を示す模式図であり、(b)はアサーマルMZIを透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。
図3】(a)はアサーマル・リング共振器の構成を示す模式図であり、(b)はアサーマル・リング共振器を透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。
図4】入力側にMZIを備えるアサーマルAWGの構成を示す模式図である。
図5】(a)はアサーマルMZIに信号光と青色光とを同時に入力して信号光の透過波長を調整する場合の光回路構成の模式図であり、(c)はアサーマルMZIを透過した透過光のスペクトルを示すグラフである。(b)は、(a)の一部を拡大した図である。
図6図5に示すアサーマルMZI50を透過した信号光の透過波長の時間に対する変化を示すグラフである。
図7】(a)はアサーマルAWGに信号光と青色光とを同時に入力して信号光の透過波長を調整する場合の光回路構成の模式図であり、(b)はアサーマルMZIを透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。
図8図7に示すアサーマルAWG70を透過した信号光の透過波長の時間に対する変化を示すグラフである。
図9】(a)はアサーマルAWGの入力側にアサーマルMZIを接続した、アサーマルMZI付きアサーマルAWG90に信号光と青色光とを同時に入力して信号光の透過波長を調整する場合の光回路構成の模式図であり、(b)はこのアサーマルMZI付きアサーマルAWG90を透過した信号光の透過スペクトルを示す模式図である。
図10】アサーマルMZI20の短アーム側入力ポート27aから高パワーの信号光を入力した場合における信号光の透過波長シフト量の信号光入力時間に対する変化を示すグラフである。
図11】(a)はアサーマルMZI20に信号光と青色光とを同時に入力して基準波長からシフトした信号光の透過波長を再調整する場合の光回路構成の模式図であり、(b)はアサーマルMZI20を透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。また、本発明の実施形態は、本発明の要旨の範囲を逸脱しない限り、以下の例示に何ら限定されることはない。
【0019】
まず、本発明の実施形態で用いる光導波路デバイスについて、以下の(1)乃至(4)で説明する。
【0020】
(1)アサーマルAWG
図1(a)は、アサーマルAWGの構成を示す模式図であり、図1(b)は、アサーマルAWGを透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。図1(b)のグラフの横軸は波長を、縦軸は透過率を示す。図1(b)のグラフ内の実線は水平偏波成分、点線は垂直偏波成分の透過率を示している。
【0021】
アサーマルAWG10は、石英基板11の上に入力用チャネル導波路12、入力側スラブ導波路13、移相用チャネル導波路14、出力側スラブ導波路16、出力用チャネル導波路15、溝17、樹脂18を備えている。これらの要素を備えた構成が1チップのアサーマルAWG10である。
【0022】
入力用チャネル導波路12は、光をアサーマルAWG10に入力するために備えられており、1本の光導波路である。移相用チャネル導波路14および出力用チャネル導波路15は、複数本の導波路で構成されている。入力用チャネル導波路12から入力された光は、それぞれ光学的に接続されている入力側スラブ導波路13、移相用チャネル導波路14、および出力側スラブ導波路16をこの順に通過して、分波された光が出力用チャネル導波路15から出力される。
【0023】
アサーマルAWG10は、通常のAWGの上記構成要素に加えて、温度無依存化のために入力側スラブ導波路13上に溝17をさらに備え、溝17の内部には樹脂18が充填されている。図1(a)に示すアサーマルAWG10の構成において、溝17は入力側スラブ導波路13に形成されているが、出力用スラブ導波路16上に形成しても良いし、また移相用チャネル導波路14上に形成しても良い。また、溝17の形状は三角溝または三日月溝であって、複数備えられていることが好ましい。
【0024】
樹脂18は、光学樹脂であって、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂を採用することができる。さらに、樹脂18は、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリレート共重合体、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ポリプロピレン、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンブロックゴム、スチレンポリオレフィンゴム、フッ素ゲル、フッ素ゴムその他の有機材料であって、波長375nm乃至455nmの光を照射してその屈折率が変化する材料である限り、特に制限無く採用できる。
【0025】
アサーマルAWG10における中心透過波長λCは、以下の式により与えられる。ここで、ncはコアの屈折率、npolymerは樹脂の屈折率、ΔLは移相用導波路における隣接する導波路間の光路長差、ΔLpolymerは樹脂18が充填されている溝17における隣接する導波路間の光路長差、およびmは回折次数を表す。
【0026】
【数1】
【0027】
通常の光通信波長帯域におけるアサーマルAWGの構成において、入力する信号光の波長を1.55μmとした場合、アサーマルAWGを透過した信号光の周波数特性は、波長1520nm乃至1560nmに1本のスペクトルが現れる。このとき、m=34である。製造工程において生じる設計の揺らぎにより、チップ毎にΔLおよびΔLpolymerが若干異なっている。このためITUグリッドに対して、最大で数100pmの波長のずれが生じる。
【0028】
ここで、ITUグリッドとは、ITU−TG.691勧告に準拠している波長間隔のことである。
【0029】
光通信に用いるアサーマルAWGは、その透過波長をITUグリッドに対して正確に合致させる必要があり、その合致の精度は10pmのレベルが求められる。アサーマルAWG10は、信号光が通過する樹脂18の屈折率を変えることにより、透過波長を調整することができる。
【0030】
(2)アサーマルMZI
図2(a)は、アサーマルMZI20の構成を示す模式図であり、図2(b)は、アサーマルMZI20を透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフ(b)である。図2(b)のグラフの横軸は波長を、縦軸は透過率を示す。
【0031】
アサーマルMZI20は、導波路基板21の上に長アーム側導波路22、短アーム側導波路23が配置されている。
【0032】
アサーマルMZI20は、短アーム側と長アーム側とのそれぞれに、溝25とその溝25に充填された樹脂26がさらに備えられている。短アーム側導波路23および長アーム側導波路22は、それぞれ樹脂26を通過するように配置され、樹脂26が充填されている溝25を挟んで入力ポート側と出力ポート側とに、互いに近接している部位であるカプラ部24が形成されている。これらの要素を備えた構成が1チップのアサーマルMZI20である。
【0033】
短アーム側に設けられた溝と長アーム側に設けられた溝25との光の進行方向の長さには差が設けられ、アサーマル条件を満たすように溝25の光の進行方向の長さが決められる。
【0034】
光は、アサーマルMZI20の一方の端に設けられている短アーム側入力ポート27aおよび長アーム側入力ポート27bから入力される。短アーム側入力ポート27aから入力された光は、短アーム側導波路23の中を通過し、短アーム側の溝25に充填された樹脂26を通過して、短アーム側出力ポート28aから出力される。同様に、長アーム側入力ポート27bから入力された光は、長アーム側導波路22の中を通過し、長アーム側の溝25に充填された樹脂26を通過して、長アーム側出力ポート28bから出力される。このとき2箇所のカプラ部24のそれぞれで、短アーム側導波路23を通過する光と長アーム側導波路22を通過する光とが干渉する。
【0035】
その結果、短アーム側出力ポート28aおよび長アーム側出力ポート28bから出力される光は、図2(b)に示すように、周期的な透過スペクトル形状を示す。マスクの精度誤差、ガラスや樹脂26の屈折率のばらつきにより、チップ毎に波長が異なる。光通信に用いるアサーマルMZIは、アサーマルAWGと同様に、その透過波長をITUグリッドに対して正確に合致させる必要がある。
【0036】
(3)アサーマル・リング共振器
図3(a)は、アサーマル・リング共振器の構成を示す模式図であり、図3(b)は、アサーマル・リング共振器を透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。図3(b)のグラフの横軸は波長を、縦軸は透過率を示す。
【0037】
アサーマル・リング共振器30は、導波路基板31の上に直線導波路32,33、リング導波路34が配置されている。直線導波路32,33とリング導波路34とは、互いが近接している部位であるカプラ部37を形成している。
【0038】
アサーマル・リング共振器30は、リング導波路34が通過する位置に溝35、溝35に充填した樹脂36が更に備えられている。
【0039】
入力ポート38aに入力された光は直線導波路32の中を、また入力ポート38bに入力された光は直線導波路33の中を通過し、それぞれ出力ポート39a,39bにから出力される。光は、一方の直線導波路31または32の中を通過中にカプラ部37において、リング導波路34を通過している光と光学カップリング現象により励振を生じることにより、光の一部または全部が他方の直線導波路32または33移行して進行する。その結果、出力ポート39aまたは39bから出力される光は、図3(b)に示すように、リング導波路34内で発生している発振波長において透過率が低下する周期的な透過スペクトル形状を示す。
【0040】
直線導波路32,33およびリング導波路34は、石英ガラス製であって、その屈折率の温度依存性dn/dT(nは屈折率を、Tは温度を示す)は正の値を有する。一方、樹脂36の屈折率の温度依存性dn/dTは、負の値を有する。ここで、溝35の幅に対するリング導波路34の長さの比と、石英ガラス、樹脂36のそれぞれのdn/dTの比とが等しくなるように設定することによって、リング共振器のアサーマル化を図ることができる。このアサーマル化の結果、アサーマル・リング共振器30を透過する光の透過特性をアサーマル化することが可能である。
【0041】
(4)アサーマルMZI付きアサーマルAWG
図4は、入力側にMZIを備えるアサーマルAWGの構成を示す模式図である。この構成を本願明細書において「アサーマルMZI付きアサーマルAWG」という。
【0042】
アサーマルMZI付きアサーマルAWG40は、アサーマルAWG部の入力側スラブ導波路45の入力に、アサーマルMZI部が接続されている。ここで、アサーマルMZI付きアサーマルAWG40の構成の内、アサーマルAWG部は、入力側スラブ導波路45、移相用チャネル導波路43、出力用チャネル導波路42、出力側スラブ導波路42、樹脂部44を備えている。樹脂部44は、溝および当該溝に充填された樹脂を含んで構成されており、出力側スラブ導波路42の内部に配置されている。
【0043】
また、アサーマルMZI付きアサーマルAWG40の構成の内、アサーマルMZI部は、長アーム側導波路46、樹脂部48,49、短アーム側導波路47、およびカプラ410を備えている。ここで、樹脂部は、短アーム側と長アーム側とのそれぞれに、溝および当該溝を充填している樹脂を含んで構成されている。短アーム側導波路47は樹脂部48を、長アーム側導波路46は樹脂部49を、それぞれを通過するように配置されている。
【0044】
アサーマルMZI付きアサーマルAWG40は、MZIの波長とA-AWGの波長を合わせることにより、MZI付きアレイ導波路回折格子の透過スペクトルの先端部分を平坦(フラットトップ)形状にすることができる。
【0045】
アサーマルMZI付きアサーマルAWG40に、光を入力側導波路411から入力し出力用チャネル導波路41から出力する場合、アサーマルMZI部の透過波長とアサーマルAWG部の透過波長とが正確に合致するときに、出力した光のスペクトル形状はガウシアン形状でなく、スペクトルの先端部分が平坦(フラットトップ)な矩形形状となる。このため、アサーマルAWG部からの透過波長をITUグリッドに合致させ、さらに、アサーマルMZI部から透過した光のスペクトルの先端部分が平坦となるように、アサーマルMZI部からの透過波長を調整する必要がある。
【0046】
(実施例1)青色光の照射によるアサーマルMZIからの透過波長の調整(長波側シフト、短波側シフトの調整)
図5(a)は、アサーマルMZI50に信号光と青色光とを同時に入力して信号光の透過波長を調整する場合の光回路構成の模式図であり、図5(c)は、アサーマルMZIを透過した透過光のスペクトルを示すグラフである。図5(b)は、図5(a)の一部を拡大した図である。図5(c)のグラフの横軸は波長を、縦軸は透過率を示す。
【0047】
アサーマルMZI50の構成は、図2(a)に示すアサーマルMZI20の構成に、青色光用短アーム側導波路54と青色光用長アーム側導波路55とを加えた構成である。
【0048】
アサーマルMZI50の長アーム側および短アーム側には溝25が設けられ、当該溝25には、樹脂26としてシリコーン樹脂が充填されている。この溝25の幅は、アサーマルMZI50を透過した信号光の波長が温度無依存になるように設定されている。
【0049】
アサーマルMZI50に入力する光の光源は、ファイバ付きレーザ光源(出力波長:405nm)(以下、405nmレーザ光源という)51およびファイバ付きASE白色光源(出力波長:1550nm)(以下、1550nmレーザ光源という)52である。本実施例において、1550nmレーザ光源52は信号光の光源として、405nmレーザ光源51は屈折率調整用の青色光の光源として用いられている。
【0050】
さらに、本実施例において、信号光および青色光は、通信波長帯用の3dBカプラ53を通過させてアサーマルMZI50に入力する。この3dBカプラ53のコアの材料として、ピュアシリカを用いることが望ましい。ここで、ピュアシリカとは、発光中心となる希土類元素を含まない石英(SiO2)を意味する。3dBカプラ53のコアとしてゲルマニウム(Ge)ドープのコアを有するカプラを用いた場合、青色光の通過によりフォトダークニング現象が生じ、信号光の強度ロスが増大するためである。3dBカプラ53のコアと同様に、アサーマルMZI50に備えられる導波路のコアがピュアシリカのコアを有する導波路であることが好ましく、青色光と信号光とが同時に通過する部分の光導波路のコアがピュアシリカのコアを有することが特に好ましい。
【0051】
まず、405nmレーザ光源51から射出された青色光と1550nmレーザ光源52から射出された信号光とは、3dBカプラ53にそれぞれ入力され、1つのファイバに合波される。3dBカプラ53で合波された光は、短アーム側入力ポート27aに入力される。405nmレーザ光源51から射出された青色光は、3dBカプラ53に入力されると3dBカプラ53をマルチモードの伝搬モードで分岐することなくスルーして短アーム側入力ポート27aに入力される。一方、1550nmレーザ光源52から射出された信号光は、5:5、すなわち等しい光強度で2つに分岐されてアサーマルMZI50の短アーム側入力ポート27aおよび長アーム側入力ポート27bに入力される。
【0052】
アサーマルMZI50に入力された青色光は、アサーマルMZIの短アーム側導波路を直進して短アーム側出力ポート28bから出力される。一方、短アーム側入力ポート27aおよび長アーム側入力ポート27bから入力された1550nmの信号光は、アサーマルMZI50の内部で干渉を生じ、短アーム側出力ポート28aおよび長アーム側出力ポート28bから出力される。ここで、長アーム側出力ポート28bから出力された信号光をスペクトルアナライザにより解析すると、図5(c)に示すように周期的な透過スペクトル形状を有する。
【0053】
さらに、この透過スペクトルが短波側へとシフトすることが観測される。これは、青色光が樹脂26が充填されている溝25を通過する時に、樹脂26が青色光に照射され、その結果、樹脂26の屈折率が増大することに依るものである。
【0054】
次に、アサーマルMZI50に光を入力するポートを短アーム側入力ポート27aから長アーム側入力ポート27bへと切り替えて、長アーム側へと青色光を入力した。短アーム側入力ポート27aへと光を入力した場合と同様に、405nmレーザ光源51から射出された青色光は、3dBカプラ53に入力されると3dBカプラ53をマルチモードで伝搬して、分岐することなくスルーし長アーム側入力ポート27bに入力される。一方、1550nmレーザ光源から射出された信号光は、等しい光強度で2つに分岐されてアサーマルMZI50の短アーム側入力ポート27aおよび長アーム側入力ポート27bに入力される。
【0055】
短アーム側出力ポート28aから出力された信号光をスペクトルアナライザにより解析すると、図5(c)に示すように周期的な透過スペクトル形状を有している。この透過スペクトルは、短アーム側入力ポート27aから光を入力した場合とは反対に、長波側へとシフトする。
【0056】
図6は、図5に示すアサーマルMZI50を透過した信号光の透過波長の時間に対する変化を示すグラフである。横軸は樹脂26に対する青色光の照射時間を、縦軸は信号光の透過波長のシフト量を示す。黒丸のプロットは青色光を長アーム側入力ポート27bへ入力した場合であり、白丸のプロットは短アーム側入力ポート27aへ入力した場合の値を示す。このときの405nmレーザ光源51の出力は、1.8mWである。アサーマルMZI50を構成する光導波路の温度は25℃である。
【0057】
図6に示すように、青色光を短アーム側に入力すると信号光の透過波長を短波側に、長アーム側に入力すると信号光の透過波長を長波側にシフトさせることができることが分かる。すなわち、アサーマルMZI50において、青色光を短アーム側または長アーム側へと入力することにより、信号光の透過波長を短波側または長波側へとシフトさせる波長調整が可能となる。
【0058】
ここで、405nmレーザ光源51の出力を50mWへ増大させると信号光の波長を数分で100pm短波側へとシフトさせることができた。図6に示す結果より、405nmレーザ光源51の出力が1.8mWの場合には、信号光の透過波長を100pm短波側へとシフトさせるために約10分程度の時間を要する。
【0059】
また、405nmレーザ光源51の出力をさらに増大させて100mWとし、それに加えて、アサーマルMZI50に信号光および青色光を入力する前に予めアサーマルMZI50を構成する光導波路の温度を60℃に設定して、波長調整した結果、10分程度で400pmの長波側へと透過波長をシフトさせることが可能であった。図6に示す結果より、405nmレーザ光源51の出力を1.8mWとし、アサーマルMZI50を構成する光導波路の温度を60℃とした場合には、信号光の透過波長を400pm長波側へとシフトさせるために、おおよそ30分程度の時間を要する。
【0060】
つまり、本実施例に依れば、青色光の光源の出力の増大に従って信号光の透過波長がシフトする時間が短くなり、すなわち、より高速に波長調整をすることが可能である。また、同様に、アサーマルMZI50を構成する光導波路の温度の上昇に従って信号光の透過波長がシフトする時間が短くなり、すなわち、より高速に波長調整をすることが可能である。
【0061】
また、上記の例では、信号光が通過する光導波路に青色光も同時に通過させているが、光導波路内の青色光の通過、つまり光導波路のコアへの青色光の照射によって信号光の強度ロスが増大する場合がある。この場合には、アサーマルMZIに青色光のみを入力する光導波路を別途設けることが好ましい。
【0062】
アサーマルMZI50において、青色光用短アーム側導波路54および青色光用長アーム側導波路55は、青色光を溝25に充填されている樹脂26に照射するための光導波路である。この青色光用短アーム側導波路54および青色光用長アーム側導波路55を備えることにより、樹脂26が充填された溝25よりも入力側に近い領域において、青色光は青色光用短アーム側導波路54または青色光用長アーム側導波路55を通過し、信号光は短アーム側導波路23または長アーム側導波路22を通過する構成となる。
【0063】
図5(b)は、図5(a)の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図を示している。青色光用短アーム側導波路54のコアの径は、短アーム側導波路23のコアの径よりも小さく、具体的には、短アーム側導波路23のコアの径の1/3の大きさである。信号光は、この青色光用短アーム側導波路54へ入力することが出来ず、青色光用短アーム側導波路54の中を通過することもできない。つまり、この青色光用短アーム側導波路54を設けた場合、信号光は、青色光の照射の影響を受けずに、短アーム側導波路23および溝25に充填された樹脂26を通過することができる。一方、青色光は、入力ポートの変更および溝25に到達する前に設けられた青色光用短アーム側導波路54内の通過をさせることで、溝25に充填された樹脂26を照射することができる。このとき、溝25を通過した後の光導波路の構成は、青色光用短アーム側導波路54の設置有無に依らず同じである。
【0064】
すなわち、アサーマルMZI50は、青色光用短アーム側導波路54および青色光用長アーム側導波路55を備えることにより、樹脂26が充填されている溝25より後の光導波路の構成の変更を伴わずに、信号光の強度ロスの増大を抑制することが可能である。
【0065】
(実施例2)青色光の照射によるアサーマルAWGからの透過波長の調整
図7(a)は、アサーマルAWG70に信号光と青色光とを同時に入力して信号光の透過波長を調整する場合の光回路構成の模式図であり、図7(b)は、アサーマルMZIを透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。図7(b)のグラフの横軸は波長を、縦軸は透過率を示す。また、図7(b)において、実線は水平偏波成分、点線は垂直偏波成分の透過率を示している。
【0066】
アサーマルAWG70の構成は、図1(a)に示すアサーマルAWG10の構成に、青色光用入力側導波路71を加えた構成である。この青色光用入力側導波路71は、入力用チャネル導波路12と分離されており、青色光のみを通過させ溝17に充填されている樹脂18に青色光を照射するための光導波路である。本実施例において、樹脂18はシリコーン樹脂である。
【0067】
アサーマルAWG70に入力する光の光源は、405nmレーザ光源73および1550nmレーザ光源72である。本実施例において、1550nmレーザ光源72は信号光の光源として、405nmレーザ光源73は屈折率調整用の青色光の光源として用いられている。
【0068】
まず、1550nmレーザ光源72から射出された信号光を、ファイバを介して入力用チャネル導波路12に入力する。同様に、405nmレーザ光源73から射出された青色光を、ファイバを介して青色光用入力側導波路71に入力する。青色光用入力側導波路71の中を通過した青色光は、入力用スラブ導波路13に達すると放射状に広がり溝17に充填された樹脂18を照射して、樹脂18の屈折率を変化させる。したがって、信号光がその波長毎に通過する部分に位置する溝17に充填された樹脂18の屈折率が変化する。
【0069】
図8は、図7に示すアサーマルAWG70を透過した信号光の透過波長の時間に対する変化を示すグラフである。横軸は樹脂18に対する青色光の照射時間を、縦軸は信号光の透過波長のシフト量を示す。このときの405nmレーザ光源73の出力は、18mWである。
【0070】
信号光の透過波長が短波側または長波側のいずれにシフトをするかは、溝25に充填された樹脂18の種類によって決定される。通常、樹脂18としてシリコーン樹脂を採用した場合、シリコーン樹脂に青色光を照射すると、その屈折率は増大し、それに伴って信号光の透過波長は長波側にシフトする。また、樹脂18としてアクリル系の樹脂を採用した場合、屈折率は減少し、信号光の透過波長は短波側にシフトする。
【0071】
図8に示すように、樹脂18に対する青色光の照射時間に対して、信号光の透過波長は単調に長波側にシフトする。
【0072】
なお、実施例1におけるアサーマルMZI50からの透過波長のシフト量よりもシフト量が小さいのは、アサーマルAWG70の構成において、入力側スラブ導波路13の中で青色光が放射状に広がるため、溝17に充填された樹脂18に照射される青色光のパワー密度がアサーマルMZI50の構成による場合よりも弱くなったためである。
【0073】
(実施例3)青色光の照射によるアサーマル・リング共振器からの透過波長の調整
実施例2と同様の条件で、アサーマルAWG70に代えてアサーマル・リング共振器30を用いて実施した場合にも、実施例2と同様に信号光の透過波長を調整することができた。
【0074】
(実施例4)アサーマルMZI付きアサーマルAWG
図9(a)は、アサーマルAWGの入力側にアサーマルMZIを接続した、アサーマルMZI付きアサーマルAWG90に信号光と青色光とを同時に入力して信号光の透過波長を調整する場合の光回路構成の模式図であり、図9(b)は、このアサーマルMZI付きアサーマルAWG90を透過した信号光の透過スペクトルを示す模式図(b)である。図9(b)において、点線96は出力側スラブ導波路42内の樹脂部44に青色光を照射した後の信号光の透過スペクトルであり、実線97はそれに次いでアサーマルMZI部内の樹脂部48,49に青色光を照射した後の信号光の透過スペクトルを示す。
【0075】
アサーマルMZI付きアサーマルAWG90の構成は、図4に示すアサーマルMZI付きアサーマルAWG40の構成に、青色光用入力側導波路94,95を加えた構成である。青色光用入力側導波路94,95は、青色光のみを通過させ樹脂部44,48,49の樹脂に青色光を照射するための光導波路である。本実施例において、樹脂部44,48,49の樹脂はシリコーン樹脂である。
【0076】
青色光用入力側導波路94は、入力側導波路411と分離しており、アサーマルMZI付きアサーマルAWG90の入力側に位置するカプラ411に接続されている。青色光用入力側導波路95は、出力用チャネル導波路41と分離しており、アサーマルMZI付きアサーマルAWG90の出力側に位置する出力側スラブ導波路42に接続されている。
【0077】
アサーマルMZI付きアサーマルAWG90に入力する光の光源は、405nmレーザ光源91,92および1550nmレーザ光源93である。本実施例において、1550nmレーザ光源93は信号光の光源として、405nmレーザ光源91,92は屈折率調整用の青色光の光源として用いられている。405nmレーザ光源91から射出された青色光は青色光用入力側導波路94に入力され、405nmレーザ光源92から射出された青色光は青色光用入力側導波路95に入力される。
【0078】
まず、405nmレーザ光源92から射出された青色光を青色光用入力側導波路95の中を通過させ出力側スラブ導波路42に入力する。このとき、出力側スラブ導波路42において樹脂部44の樹脂が入力された青色光によって照射され、それに伴い樹脂部44の樹脂の屈折率が変化する。ここで、信号光を入力し出力用チャネル導波路41から出力される信号光の透過スペクトルの中心波長をITUグリッドに合致させるように、樹脂部44の樹脂の屈折率を調整する。このとき、信号光の透過スペクトルの形状は、図9(b)に示すように、ガウシアン形状96でありその中心波長と基準波長、すなわちITUグリッドとを一致させる。
【0079】
次に、405nmレーザ光源91から射出された青色光を青色光用入力側導波路94の中を通過させ樹脂部48,49に入力する。このとき、樹脂部48,49の樹脂が入力された青色光によって照射され、それに伴い樹脂部48,49の樹脂の屈折率が変化する。ここで、信号光を入力し出力用チャネル導波路41から出力される信号光の透過スペクトルの形状をガウシアン形状96から矩形形状97となるように、樹脂部48,49の樹脂の屈折率を調整する。
【0080】
本実施例において、405nmレーザ光源91の出力は、405nmレーザ光源92の出力に比べて低く設定され、具体的には405nmレーザ光源92の出力の1/10程度の出力値である。したがって、樹脂部48,49の樹脂の屈折率を調整する際に、405nmレーザ光源91から射出された青色光は、出力側スラブ導波路42の中の樹脂部44まで到達し得ず、または樹脂部44まで到達しても樹脂部44の樹脂の屈折率を変化させるのに足る強度よりも強度が低い。つまり、一旦、405nmレーザ光源92から射出された青色光が照射されて屈折率を調整された樹脂部44の樹脂の屈折率は、405nmレーザ光源91から射出された青色光がアサーマルMZI付きアサーマルAWG90に入力されても変化しない。すなわち、上記の順序に従って405nmレーザ光源91,92から射出された青色光をアサーマルMZI付きアサーマルAWG90に入力することにより、樹脂部44の樹脂の屈折率を再度調整する必要がない。
【0081】
(実施例5)光導波路デバイスへの高パワーの信号光入力により信号光の透過波長が短波側へシフトした場合における透過波長の回復方法
図10は、アサーマルMZI20の短アーム側入力ポート27aから高パワーの信号光を入力した場合における信号光の透過波長シフト量の信号光入力時間に対する変化を示すグラフである。横軸はアサーマルMZI20への信号光の入力時間を、縦軸は信号光の透過波長のシフト量を示す。信号光の光源の出力は、200mWである。
【0082】
アサーマルMZI20の短アーム側入力ポート27aから光源の出力が200mWの信号光を入力すると、信号光の透過波長は瞬時に70pm程度短波側にシフトする。アサーマルMZI20への信号光の入力時間の増加に従って、信号光の透過波長の短波側へのシフト量が徐々に大きくなり、信号光の透過波長の短波側へのシフト量は、最大で140pm程度に達して飽和する。ITUグリッド間隔は400pmとされているのに対して、この信号光の透過波長の短波側へのシフト量は大きく、好ましくないものである。
【0083】
本実施例では、この短波側にシフトした信号光の透過波長をアサーマルMZI20に青色光を入力することによって元の透過波長へと回復する方法について説明する。
【0084】
図11(a)は、アサーマルMZI20に信号光と青色光とを同時に入力して基準波長からシフトした信号光の透過波長を再調整する場合の光回路構成の模式図であり、図11(b)は、アサーマルMZI20を透過した信号光の透過スペクトルを示すグラフである。図11(b)のグラフの横軸は波長を、縦軸は透過率を示す。
【0085】
アサーマルMZI20に入力する光の光源は、405nmレーザ光源51および1550nmレーザ光源111である。本実施例において、1550nmレーザ光源111は信号光の光源として、405nmレーザ光源51は屈折率調整用の青色光の光源として用いられている。
【0086】
まず、アサーマルMZI20の短アーム側入力ポート27aに高パワーな1550nmレーザ光源111から射出された信号光を入力した状態で、長アーム側入力ポート27bに405nmレーザ光源51(出力:数mW)から射出された青色光を入力する。
【0087】
高パワーの信号光は、エルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium Doped optical Fiber Amplifier、以下EDFAという)を通過してアサーマルMZI20に入力され、短アーム側出力ポート28aから出力される。このとき、EDFAを通過した信号光は、1550nmレーザ光源111から射出された信号光の波長以外にEDFA内で発生する自然放出光かつ/または誘導放出光の波長を含んでいる。そこで、長アーム側出力ポート28bから出力される信号光の透過波長の内、1550nm以外の波長についてスペクトルアナライザにより測定すると、アサーマルMZI20を透過した信号光の透過スペクトルを観測できる。
【0088】
長アーム側入力ポート27bから青色光を入力し、長アーム側導波路22が通過する溝25に充填されている樹脂26に青色光を照射し、樹脂26の屈折率を変化させ、長アーム側出力ポート28bから出力される信号光の透過波長の内1550nm以外の波長が長波側へとシフトしていくのをモニタしながら、長アーム側出力ポート28bから出力される信号光の透過波長とITUグリッドとが一致したときに、アサーマルMZI20への青色光の入力を停止する。
【0089】
また、上記のように高パワーの光源から射出された信号光を入力するだけでなく、通常のパワーである10mW以下の光源から射出された信号光を入力した場合においても、それを長期継続的に行うと、信号光の透過波長が短波側または長波側へとシフトする。たとえば、アサーマルMZIを、10年乃至20年間使用した場合、信号光の透過波長が最大で数10pmシフトする場合もある。
【0090】
本発明の実施形態に依れば、このように信号光の透過波長が大きくシフトしたアサーマルMZIを新規なものに交換することなく、その信号光の透過波長が大きくシフトしたアサーマルMZIの短アーム側または長アーム側に青色光を入力して、溝に充填された樹脂の屈折率を調整することのみにより、信号光の透過波長が大きくシフトしたアサーマルMZIを透過した信号光の透過波長を元の透過波長に回復させることができる。
【符号の説明】
【0091】
10、70 アサーマルAWG
11 石英基板
12 入力用チャネル導波路
13、45 入力側スラブ導波路
14、43 移相用チャネル導波路
15、41 出力用チャネル導波路
16、42 出力側スラブ導波路
17、25、35 溝
18、26、36 樹脂
20、50 アサーマルMZI
21、31 導波路基板
22、46 長アーム側導波路
23、47 短アーム側導波路
24、37 カプラ部
27a 短アーム側入力ポート
27b 長アーム側入力ポート
28a 短アーム側出力ポート
28b 長アーム側出力ポート
30 アサーマル・リング共振器
32、33 直線導波路
34 リング導波路
38a、38b 入力ポート
39a、39b 出力ポート
40、90 アサーマルMZI付きアサーマルAWG
44、48、49 樹脂部
410 カプラ
411 入力側導波路
51、73、91、92 405nmレーザ光源
52、72、93 ASE白色光源
53 3dBカプラ
54 青色光用短アーム側導波路
55 青色光用長アーム側導波路
57a 青色光用短アーム側入力ポート
57b 青色光用長アーム側入力ポート
71、94、95 青色光用入力側導波路
96 ガウシアン形状スペクトル
97 矩形形状スペクトル
111 1550nmレーザ光源
112 EDFA
113 スペクトルアナライザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11