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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-44999(P2020-44999A)
(43)【公開日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20200303BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20200303BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20200303BHJP
   F21S 41/135 20180101ALI20200303BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20200303BHJP
   F21S 41/63 20180101ALI20200303BHJP
   F21S 41/65 20180101ALI20200303BHJP
   F21W 102/165 20180101ALN20200303BHJP
【FI】
   B60Q1/14 Z
   B60Q1/04 E
   F21S41/16
   F21S41/135
   F21S41/20
   F21S41/63
   F21S41/65
   F21W102:165
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2018-175259(P2018-175259)
(22)【出願日】2018年9月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA07
3K339BA12
3K339BA25
3K339BA26
3K339BA30
3K339CA01
3K339DA05
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA04
3K339KA06
3K339KA09
3K339LA31
3K339LA34
3K339LA35
3K339MA01
3K339MA07
3K339MC03
3K339MC14
3K339MC36
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】 違和感を覚えることを抑制し得る車両用灯具を提供する。
【解決手段】 前照灯1は、光源51からの光の位相を変調する位相変調部53と、位相変調部53から出射する光を受光するイメージセンサ82R,82G,82Bと、制御部71と、を備える。イメージセンサ82R,82G,82Bは、結像した光を受光する。制御部71は、出射する光の位相分布が第1位相分布となるように制御された位相変調部53から出射してイメージセンサ82R,82G,82Bが受光する光を第1画像として取得し、第2画像を算出し、第2位相分布を算出し、出射する光の位相分布が第2位相分布となるように制御された位相変調部53から出射してイメージセンサが受光する光を第3画像として取得し、第4画像を算出し、第3位相分布を算出し、第3位相分布にランダムな位相分布を付与した第4位相分布を算出して当該第4位相分布を第1位相分布とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源からの光が入射する二次元配列された複数のドットを含み、入射する前記光の位相を前記複数のドットごとに変調する位相変調部と、
前記位相変調部から出射する一部の光を受光するイメージセンサと、
制御部と、
を備え、
前記イメージセンサは、結像した前記一部の光を受光し、
前記制御部は、
前記位相変調部から出射する光の位相分布が第1位相分布となるように前記位相変調部を制御する第1制御処理と、
前記第1制御処理がされた前記位相変調部から出射して前記イメージセンサが受光する前記一部の光を第1画像として取得する第1画像取得処理と、
前記第1画像を目標画像に近づけた第2画像を算出する第2画像算出処理と、
前記第2画像の輝度分布を位相分布に変換した第2位相分布を算出する第2位相分布算出処理と、
前記位相変調部から出射する光の位相分布が前記第2位相分布となるように前記位相変調部を制御する第2制御処理と、
前記第2制御処理がされた前記位相変調部から出射して前記イメージセンサが受光する前記一部の光を第3画像として取得する第3画像取得処理と、
前記第3画像の画素配列を転置させた第4画像を算出する第4画像算出処理と、
前記第4画像の輝度分布を位相分布に変換した第3位相分布を算出する第3位相分布算出処理と、
前記第3位相分布にランダムな位相分布を付与した第4位相分布を算出して当該第4位相分布を前記第1位相分布とする入れ換え処理と、
を含む位相分布生成処理によって前記目標画像に対応する目標位相分布を算出する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2画像は、前記第1画像におけるそれぞれの画素と前記目標画像におけるそれぞれの画素とを比較して、前記第1画像におけるそれぞれの画素の輝度のうち対応する前記目標画像における画素の輝度よりも所定値以上大きい画素の輝度が当該輝度よりも小さい輝度に置換された画像とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記一部の光の波長帯域は、前記位相変調部から出射する他の一部の光が含む波長帯域の少なくとも一部である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記一部の光を結像するフーリエ変換レンズを更に備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記制御部は、前記位相変調部を制御して当該位相変調部から出射する前記一部の光を結像させる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記位相変調部から出射する他の一部の光の発散角を調整する投影レンズを更に備える
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記位相変調部から出射する光を前記一部の光と他の一部の光に分離する分光部を更に備える
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記分光部は、前記他の一部の光に対する前記一部の光の分離比を変更可能とされ、少なくとも前記第3画像取得処理の際に、前記分離比を大きくする
ことを特徴とする請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記光源は、前記分離比の変化に応じて出射する前記光の強度を調節する
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記光源は複数の発光素子を有し、
前記一部の光と他の一部の光とは別個の前記発光素子から出射し、
前記一部の光は、前記他の一部の光と合波されることなく、前記イメージセンサで受光される
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記一部の光は、前記制御部が前記位相分布生成処理を行わないときに、前記発光素子から非出射とされる
ことを特徴とする請求項10に記載の車両用灯具。
【請求項12】
前記光源は複数の発光素子を有し、
前記位相変調部は前記複数の発光素子ごとに設けられる複数の位相変調素子を有し、
少なくとも2つの前記発光素子は、互いに波長帯域の異なる光を出射する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項13】
前記イメージセンサは、互いに波長帯域の異なる光を出射する前記少なくとも2つの発光素子にそれぞれ対応する少なくとも2つの前記位相変調素子ごとに設けられ、
前記目標画像は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに設けられ、
前記制御部は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに前記位相分布生成処理によって前記目標位相分布を算出する
ことを特徴とする請求項12に記載の車両用灯具。
【請求項14】
前記光源は複数の発光素子を有し、
前記位相変調部は少なくとも1つの位相変調素子を有し、
少なくとも2つの前記発光素子は、互いに波長帯域の異なる光を出射し、
互いに波長帯域の異なる前記光を出射する前記少なくとも2つの発光素子は、当該発光素子ごとに交互に前記光を出射し、
前記少なくとも2つの発光素子から出射する複数の前記光は、共通の位相変調素子に入射し、
前記少なくとも2つの発光素子からの前記光が入射する前記位相変調素子は、入射する前記光の波長帯域に応じて当該光の位相を前記複数のドットごとに変調する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項15】
前記イメージセンサは、前記少なくとも2つの発光素子からの前記光が入射する前記位相変調素子に対して設けられ、
前記目標画像は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに設けられ、
前記制御部は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに前記位相分布生成処理によって前記目標位相分布を算出する
ことを特徴とする請求項14に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相変調素子を有する車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具として、自動車用ヘッドライトに代表される車両用前照灯や、路面等に画像を描画する描画装置等が知られている。ところで、車両用灯具における投影する画像を所望の画像とするために様々な構成が検討されている。
【0003】
下記特許文献1には、入射光の位相を変調して当該入射光を回折して出射する位相変調素子の一種である空間変調素子を用いて画像を投影するニアアイ装置が開示されており、例えば、このような空間変調素子を車両用灯具に用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016−519790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の空間変調素子によって投影される画像は、この空間変調素子から出射する光の位相分布に対応する画像となる。このため、所望の画像が投影されるような位相分布を求め、空間変調素子から出射する光に当該位相分布が生じるように空間変調素子を制御する必要がある。上記特許文献1のニアアイ装置では、反復フーリエ変換法を用いてこの位相分布を演算している。しかし、反復フーリエ変換法では、演算結果が収束するまでにフーリエ変換と逆フーリエ変換との演算を何回も反復するため、演算時間が長くなる傾向がある。このため、所望の画像を投影するまでの時間が長くなるという懸念がある。
【0006】
そこで、本発明は、所望の画像を投影するまでの時間を短縮し得る車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため、本発明の車両用灯具は、光を出射する光源と、前記光源からの光が入射する二次元配列された複数のドットを含み、入射する前記光の位相を前記複数のドットごとに変調する位相変調部と、前記位相変調部から出射する一部の光を受光するイメージセンサと、制御部と、を備え、前記イメージセンサは、結像した前記一部の光を受光し、前記制御部は、前記位相変調部から出射する光の位相分布が第1位相分布となるように前記位相変調部を制御する第1制御処理と、前記第1制御処理がされた前記位相変調部から出射して前記イメージセンサが受光する前記一部の光を第1画像として取得する第1画像取得処理と、前記第1画像を目標画像に近づけた第2画像を算出する第2画像算出処理と、前記第2画像の輝度分布を位相分布に変換した第2位相分布を算出する第2位相分布算出処理と、前記位相変調部から出射する光の位相分布が前記第2位相分布となるように前記位相変調部を制御する第2制御処理と、前記第2制御処理がされた前記位相変調部から出射して前記イメージセンサが受光する前記一部の光を第3画像として取得する第3画像取得処理と、前記第3画像の画素配列を転置させた第4画像を算出する第4画像算出処理と、前記第4画像の輝度分布を位相分布に変換した第3位相分布を算出する第3位相分布算出処理と、前記第3位相分布にランダムな位相分布を付与した第4位相分布を算出して当該第4位相分布を前記第1位相分布とする入れ換え処理と、を含む位相分布生成処理によって前記目標画像に対応する目標位相分布を算出することを特徴とする。
【0008】
このような車両用灯具では、上記のように、位相変調部は、光源からの光の位相を複数のドット毎に変調するため、位相分布が変調された光が位相変調部から出射される。位相の異なる光は互いに干渉しあって回折されるため、位相変調部から出射する光は、当該光の位相分布に応じて回折する。このため、制御部によって位相変調部を制御して位相変調部から出射する光の位相分布を調節することで、位相変調部から出射する光の回折を制御することができ、位相変調部から出射する光を所望の画像を投影する光とすることができる。このため、この車両用灯具では、制御部は、位相変調部から出射し目標画像を投影する光の位相分布である目標位相分布を算出する。
【0009】
具体的には、制御部は、上記のように、第1制御処理と、第1画像取得処理と、第2画像算出処理と、第2位相分布算出処理と、第2制御処理と、第3画像取得処理と、第4画像算出処理と、第3位相分布算出処理と、入れ換え処理と、を含む位相分布生成処理によって、光の位相分布の反復フーリエ変換を行い、目標画像に対応する目標位相分布を算出する。
【0010】
第1画像取得処理では、制御部は、第1制御処理によって位相変調部から出射する光の位相分布が第1位相分布となるように制御された位相変調部から出射してイメージセンサが受光する光を第1画像として取得する。上記のように、イメージセンサは結像した光を受光するため、第1画像は位相変調部から出射した光が結像した画像となる。ここで、光を結像することによって得られる画像は、当該光の位相分布をフーリエ変換した画像となることが知られている。このため、この第1画像は、概ね第1位相分布をフーリエ変換した画像である。従って、この車両用灯具では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いることで、第1位相分布のフーリエ変換の演算を省略している。
【0011】
制御部は、第2画像算出処理において、第1画像取得処理によって取得した第1画像を目標画像に近づけた第2画像を算出し、第2位相分布算出処理において、この第2画の輝度分布を位相分布に変換した第2位相分布を算出する。なお、この輝度分布の位相分布への変換は、第2画像の輝度分布の各輝度を所定の係数で位相に比例変換し、この各位相を2πで除算した際の剰余を算出し、算出された剰余を対応する輝度と置換する演算とされる。
【0012】
第3画像取得処理では、制御部は、第2制御処理によって位相変調部から出射する光の位相分布が第2位相分布となるように制御された位相変調部から出射してイメージセンサが受光する光を第3画像として取得する。そして、第4画像算出処理では、この第3画像の画素配列を転置させた第4画像を算出する。ここで、光を結像することによって得られる画像を転置させた画像は、当該光の位相分布を逆フーリエ変換した画像となることが知られている。このため、この第4画像は、概ね第2位相分布を逆フーリエ変換した画像である。従って、この車両用灯具では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いることで、第2位相分布の逆フーリエ変換の演算の一部を省略している。
【0013】
制御部は、第3位相分布算出処理において、この第4画像の輝度分布を位相分布に変換した第3位相分布を算出し、入れ換え処理において、この第3位相分布にランダムな位相分布を付与した第4位相分布を算出して当該第4位相分布を第1位相分布とする。制御部が上記の各処理を繰り返すことで、第2画像は輝度も含めて目標画像に近づき、このような第2画像を投影する光の位相分布が算出される。なお、この輝度分布の位相分布への変換は、上記第2位相分布算出処理と同様に、第4画像の輝度分布の各輝度を所定の係数で位相に比例変換し、この各位相を2πで除算した際の剰余を算出し、算出された剰余を対応する輝度と置換する演算とされる。
【0014】
このように、この車両用灯具では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いて、光の位相分布の反復フーリエ変換におけるフーリエ変換の演算と逆フーリエ変換の演算の一部を省略している。このため、この車両用灯具は、反復フーリエ変換におけるフーリエ変換と逆フーリエ変換とを演算によって行う場合と比べて、目標位相分布を算出する際の演算量を少なくして演算時間を短縮し得る。従って、この車両用灯具は、所望の画像を投影するまでの時間を短縮し得る。
【0015】
前記第2画像は、前記第1画像におけるそれぞれの画素と前記目標画像におけるそれぞれの画素とを比較して、前記第1画像におけるそれぞれの画素の輝度のうち対応する前記目標画像における画素の輝度よりも所定値以上大きい画素の輝度が当該輝度よりも小さい輝度に置換された画像とされることとされても良い。
【0016】
前記一部の光の波長帯域は、前記位相変調部から出射する他の一部の光が含む波長帯域の少なくとも一部であることとしても良い。
【0017】
前記車両用灯具は、前記一部の光を結像するフーリエ変換レンズを更に備えることとしても良い。
【0018】
このような構成にすることで、位相変調部から出射する一部の光を安定して結像させることができる。
【0019】
或いは、前記制御部は、前記位相変調部を制御して当該位相変調部から出射する前記一部の光を結像させることとしても良い。
【0020】
このような構成にすることで、フーリエ変換レンズ等を備えなくても位相変調部から出射する一部の光を結像させることができ、車両用灯具を簡易な構成とし得る。
【0021】
この場合、前記車両用灯具は、前記位相変調部から出射する他の一部の光の発散角を調整する投影レンズを更に備えることとしても良い。
【0022】
位相変調部から出射する他の一部の光は、結像した後発散するように伝搬する。この車両用灯具は、投影レンズによってこの光の発散角を調整するため、発散角が調節された光を車両の外部に出射することができる。従って、投影レンズを備えない場合と比べて、投影する画像の大きさを所望の大きさにし易い。
【0023】
前記位相変調部から出射する光を前記一部の光と他の一部の光に分離する分光部を更に備えることとしても良い。
【0024】
このような構成にすることで、出射する光がイメージセンサにのみ入射する発光素子を光源が有していなくても位相変調部から出射する一部の光をイメージセンサに受光させることができ、車両用灯具を簡易な構成とし得る。
【0025】
この場合、前記分光部は、前記他の一部の光に対する前記一部の光の分離比を変更可能とされ、少なくとも前記第3画像取得処理の際に、前記分離比を大きくすることとしても良い。
【0026】
位相変調部から出射する光の位相分布が第2位相分布となるように制御される位相変調部から出射する光が結像した画像は、目標画像と大きく異なる。このため、位相変調部がこのように制御されるときには、目標画像と大きく異なる画像が車両の外部に投影されることになる。この車両用灯具では、分光部は、このようなときに、他の一部の光に対する一部の光の分離比を大きくする。このため、車両の外部に出射される光の強度が低下され、目標画像と大きく異なる画像が目立ちにくくなり、運転者や車外の人間等が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0027】
この場合、前記光源は、前記分離比の変化に応じて出射する前記光の強度を調節することとしても良い。
【0028】
上記のように分離比を大きくすることで、イメージセンサで受光される光の強度が増加される。この車両用灯具では、上記のように、分離比の変化に応じて出射する光の強度を調節する。このため、車両用灯具は、分離比の変化に応じてイメージセンサで受光される光の強度が増加することを抑制でき、イメージセンサに不具合が生じることを抑制し得る。
【0029】
前記光源は複数の発光素子を有し、前記一部の光と他の一部の光とは別個の前記発光素子から出射し、前記一部の光は、前記他の一部の光と合波されることなく、前記イメージセンサで受光されることとしても良い。
【0030】
このような構成にすることで、イメージセンサで受光される光の強度と車両の外部に照射される光の強度とを個別に調節することができる。このため、例えば、イメージセンサの性能に応じた強度の光をイメージセンサに受光させたり、所望の強度の光を車両の外部に照射したりすることが容易となる。
【0031】
この場合、前記一部の光は、前記制御部が前記位相分布生成処理を行わないときに、前記発光素子から非出射とされることとしても良い。
【0032】
このような構成にすることで、光源が一部の光を常時出射する場合と比べて、光源における消費電力量を低減することができる。
【0033】
前記光源は複数の発光素子を有し、前記位相変調部は前記複数の発光素子ごとに設けられる複数の位相変調素子を有し、少なくとも2つの前記発光素子は、互いに波長帯域の異なる光を出射することとしても良い。
【0034】
この車両用灯具では、少なくとも2つの発光素子から互いに波長帯域の異なる光が出射し、これら光の位相分布が変調された光がこれら発光素子に対応する位相変調素子から出射する。つまり、少なくとも2つの位相変調素子から互いに波長帯域の異なる光が出射する。このため、この車両用灯具では、所望の色の画像を投影し得る。
【0035】
この場合、前記イメージセンサは、互いに波長帯域の異なる光を出射する前記少なくとも2つの発光素子にそれぞれ対応する少なくとも2つの前記位相変調素子ごとに設けられ、前記目標画像は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに設けられ、前記制御部は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに前記位相分布生成処理によって前記目標位相分布を算出することとしても良い。
【0036】
この車両用灯具では、互いに波長帯域の異なる光を出射する少なくとも2つの位相変調素子のそれぞれに対して位相分布生成処理によって目標位相分布が算出される。このため、制御部は、互いに波長帯域の異なる光を出射する少なくとも2つの位相変調素子をそれぞれの目標位相分布に基づいて制御することができる。このため、この車両用灯具は、投影される画像に色のにじみが生じることを抑制し得る。また、この車両用灯具は、複数の色から構成される画像を投影し得る。
【0037】
前記光源は複数の発光素子を有し、前記位相変調部は少なくとも1つの位相変調素子を有し、少なくとも2つの前記発光素子は、互いに波長帯域の異なる光を出射し、互いに波長帯域の異なる前記光を出射する前記少なくとも2つの発光素子は、当該発光素子ごとに交互に前記光を出射し、前記少なくとも2つの発光素子から出射する複数の前記光は、共通の位相変調素子に入射し、前記少なくとも2つの発光素子からの前記光が入射する前記位相変調素子は、入射する前記光の波長帯域に応じて当該光の位相を前記複数のドットごとに変調することとしても良い。
【0038】
この車両用灯具では、少なくとも2つの発光素子からの光が入射する位相変調素子から順次波長帯域の異なる光が出射する。ところで、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で波長帯域の異なる光つまり色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。このため、人の視覚の時間分解能よりも短い周期でこの位相変調素子から波長帯域の異なる光が出射される場合には、この位相変調素子から出射する光を人の視覚的に合成させることができる。従って、この車両用灯具は、この位相変調素子から出射する光によって所望の色の画像を投影し得る。また、この車両用灯具では、少なくとも2つの発光素子から出射する光の位相分布を変調する位相変調素子を共通の位相変調素子とすることができるため、部品点数を減少し得る。
【0039】
この場合、前記イメージセンサは、前記少なくとも2つの発光素子からの前記光が入射する前記位相変調素子に対して設けられ、前記目標画像は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに設けられ、前記制御部は、前記少なくとも2つの発光素子ごとに前記位相分布生成処理によって前記目標位相分布を算出することとしても良い。
【0040】
この車両用灯具では、波長帯域の異なる光を出射する少なくとも2つの発光素子ごとに目標位相分布が算出される。このため、制御部は、少なくとも2つの発光素子から出射する光が入射する共通の位相変調素子と、当該位相変調素子に入射する光の波長帯域に応じて制御することができる。このため、この車両用灯具は、投影される画像に色のにじみが生じることを抑制し得る。また、この車両用灯具は、複数の色から構成される画像を投影し得る。
【発明の効果】
【0041】
以上のように本発明によれば、所望の画像を投影するまでの時間を短縮し得る車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1実施形態における車両用灯具を概略的に示す図である。
図2図1に示す光学系ユニットの拡大図である。
図3図2に示す位相変調素子の正面図である。
図4図3に示す位相変調素子の一部の厚さ方向の断面を概略的に示す図である。
図5】本発明の第1実施形態における車両用灯具の一部と灯具制御システムとを含むブロック図である。
図6】本発明の第1実施形態における車両用灯具から出射する光によって投影する画像の例を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態における制御部の制御フローチャートを示す図である。
図8】位相分布生成処理における制御部の制御フローチャートを示す図である。
図9】本発明の第2実施形態における車両用灯具を図1と同様に示す図である。
図10図9に示す光学系ユニットの拡大図である。
図11】本発明の第3実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。
図12】本発明の第4実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。
図13】本発明の第5実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における車両用灯具を示す図であり、車両用灯具の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。本実施形態の車両用灯具は自動車用の前照灯1とされる。自動車用の前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものであり、左右の前照灯は左右方向に概ね対称の構成とされる。従って、本実施形態では、一方の前照灯について説明する。図1に示すように、本実施形態の前照灯1は、筐体10と、灯具ユニット20とを主な構成として備える。
【0045】
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0046】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニット20が収容されている。
【0047】
本実施形態の灯具ユニット20は、ヒートシンク30と、冷却ファン40と、カバー59と、光学系ユニット50とを主な構成として備え、不図示の構成により筐体10に固定されている。
【0048】
ヒートシンク30は、概ね水平方向に延在する金属製のベース板31を有し、当該ベース板31の下方の面側には複数の放熱フィン32がベース板31と一体に設けられている。冷却ファン40は放熱フィン32と隙間を隔てて配置され、ヒートシンク30に固定されている。この冷却ファン40の回転による気流によりヒートシンク30は冷却される。また、ヒートシンク30におけるベース板31の上面にはカバー59が配置されている。
【0049】
カバー59は、ヒートシンク30のベース板31上に固定されている。カバー59は概ね矩形の形状をしており、例えばアルミニウム等の金属から成る。カバー59の内側の空間には、光学系ユニット50が収容されている。カバー59の前部には光学系ユニット50から出射する光が透過可能な開口59Hが形成されている。なお、カバー59の内壁に光吸収性を持たせるために、これらの内壁に黒アルマイト加工等が施されることが好ましい。カバー59の内壁が光吸収性を持つことで、意図しない反射や屈折等によりこれらの内壁に光が照射された場合であっても、照射光が反射して開口59Hから意図しない方向に出射することが抑制され得る。
【0050】
図2は、図1に示す光学系ユニットの拡大図である。なお、図2では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー59等の記載が省略されている。図2に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、光源51と、位相変調部53と、第1受光光学系54Rと、第2受光光学系54Gと、第3受光光学系54Bと、合成光学系55とを備える。
【0051】
本実施形態の光源51は、所定の波長帯域の光を出射する。すなわち、光源51は複数の波長の光を出射する。具体的には、光源51は、3つの発光素子51R,51G,51Bと、3つのコリメートレンズ52R,52G,52Bとを有する。3つの発光素子51R,51G,51Bは、互いに異なる所定の波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子とされる。本実施形態では、発光素子51Rはパワーのピーク波長が例えば638nmの赤色のレーザ光を出射し、発光素子51Gはパワーのピーク波長が例えば515nmの緑色のレーザ光を出射し、発光素子51Bはパワーのピーク波長が例えば445nmの青色のレーザ光を出射する。このため、これら発光素子51R,51G,51Bは、互いに波長帯域の異なる光を出射する。なお、光学系ユニット50は、不図示の回路基板を有しており、これら発光素子51R,51G,51Bは当該回路基板に実装されている。
【0052】
コリメートレンズ52Rは、発光素子51Rから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。コリメートレンズ52Gは、発光素子51Gから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズであり、コリメートレンズ52Bは、発光素子51Bから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。これらコリメートレンズ52R,52G,52Bに替わって、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズとスロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとがそれぞれ個別に設けられていても良い。
【0053】
本実施形態の位相変調部53は、3つの位相変調素子53R,53G,53Bを有する。位相変調素子53R,53G,53Bのそれぞれは、二次元配列された複数のドットを含み、入射する光の位相をこの複数のドットごとに変調するようにされており、位相分布が変調された光がそれぞれの位相変調素子53R,53G,53Bから出射される。位相の異なる光は互いに干渉しあって回折されるため、それぞれの位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光は、当該光の位相分布に応じて回折する。このため、それぞれの位相変調素子53R,53G,53Bは、入射する光を回折して出射するとも理解できる。本実施形態のこれら位相変調素子53R,53G,53Bは、入射する光を反射しつつ光の位相分布を変調する反射型の位相変調素子とされ、例えば、反射型の液晶パネルであるLCOS(Liquid Crystal on Silicon)とされる。
【0054】
位相変調素子53Rは発光素子51Rに対応し、位相変調素子53Gは発光素子51Gに対応し、位相変調素子53Bは発光素子51Bに対応している。つまり、これら位相変調素子53R,53G,53Bは光源51の発光素子51R,51G,51Bごとに設けられている。位相変調素子53Rには発光素子51Rから出射しコリメートレンズ52Rでコリメートされた赤色のレーザ光が入射し、この位相変調素子53Rは、この赤色のレーザ光の位相分布を変調した第1の光DLRを出射する。位相変調素子53Gには発光素子51Gから出射しコリメートレンズ52Gでコリメートされた緑色のレーザ光が入射し、この位相変調素子53Gは、この緑色のレーザ光の位相分布を変調した第2の光DLGを出射する。位相変調素子53Bには発光素子51Bから出射しコリメートレンズ52Bでコリメートされた青色のレーザ光が入射し、この位相変調素子53Bは、この青色のレーザ光の位相分布を変調した第3の光DLBを出射する。このため、位相変調部53から出射するこれら光DLR,DLG,DLBの波長帯域は、光源51から出射する光の波長帯域と同じである。
【0055】
第1受光光学系54Rは、位相変調素子53Rに対して設けられ、分光部80Rと、フーリエ変換レンズ81Rと、イメージセンサ82Rとを備える。分光部80Rは、位相変調素子53Rから出射する第1の光DLRを一部の光と他の一部の光に分離する。分光部80Rで分離された一部の光がフーリエ変換レンズ81Rに入射し、他の一部の光が第1受光光学系54Rから出射する。このため、第1受光光学系54Rから出射する光は、位相変調素子53Rから出射する第1の光DLRの一部であり、以下では、この光についても第1の光DLRと表す。分光部80Rとして、例えばプリズム型ビームスプリッタ、平面型ビームスプリッタ、ウェッジ基板等が挙げられる。本実施形態の分光部80Rにおける光の分離比は、一定とされている。
【0056】
フーリエ変換レンズ81Rは、分光部80Rで分離された一部の光を結像するレンズである。本実施形態のフーリエ変換レンズ81Rは、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。
【0057】
イメージセンサ82Rは、受光面で受光した光を電気信号に変換して出力する光学素子であり、光を受光する複数の受光部を有し、受光面に入射する光を二次元画像として出力する。イメージセンサ82Rは、受光面がフーリエ変換レンズ81Rの焦点または焦点近傍に位置するように配置され、フーリエ変換レンズ81Rによって結像される光を受光する。イメージセンサ82Rとして、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等が挙げられる。
【0058】
第2受光光学系54Gは、位相変調素子53Gに対して設けられ、分光部80Gと、フーリエ変換レンズ81Gと、イメージセンサ82Gとを備える。第3受光光学系54Bは、位相変調素子53Bに対して設けられ、分光部80Bと、フーリエ変換レンズ81Bと、イメージセンサ82Bとを備える。分光部80Gは、位相変調素子53Gから出射する第2の光DLGを一部の光と他の一部の光に分離し、分光部80Bは、位相変調素子53Bから出射する第3の光DLBを一部の光と他の一部の光に分離する。分光部80G,80Bとして、例えば、上記の分光部80Rと同様に、プリズム型ビームスプリッタ、平面型ビームスプリッタ、ウェッジ基板等が挙げられる。分光部80Gで分離された一部の光がフーリエ変換レンズ81Gに入射し、他の一部の光が第2受光光学系54Gから出射する。また、分光部80Bで分離された一部の光がフーリエ変換レンズ81Bに入射し、他の一部の光が第3受光光学系54Bから出射する。このため、第2受光光学系54Gから出射する光は、位相変調素子53Gから出射する第2の光DLGの一部であり、第3受光光学系54Bから出射する光は、位相変調素子53Bから出射する第3の光DLBの一部である。以下では、第2受光光学系54Gから出射する光も第2の光DLGと表し、第3受光光学系54Bから出射する光も第3の光DLBと表す。本実施形態のこれら分光部80G,80Bにおける光の分離比は、一定とされている。
【0059】
フーリエ変換レンズ81Gは、分光部80Gで分離された一部の光を結像するレンズであり、フーリエ変換レンズ81Bは、分光部80Bで分離された一部の光を結像するレンズである。本実施形態のこれらフーリエ変換レンズ81G,81Bは、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。
【0060】
イメージセンサ82G,82Bは、イメージセンサ82Rと同様に、受光面で受光した光を電気信号に変換して出力する光学素子である。これらイメージセンサ82G,82Bは、光を受光する複数の受光部を有し、受光面に入射する光を二次元画像として出力する。イメージセンサ82Gは、受光面がフーリエ変換レンズ81Gの焦点または焦点近傍に位置するように配置され、フーリエ変換レンズ81Gによって結像される光を受光する。イメージセンサ82Bは、受光面がフーリエ変換レンズ81Bの焦点または焦点近傍に位置するように配置され、フーリエ変換レンズ81Bによって結像される光を受光する。イメージセンサ82G,82Bとして、例えば、上記のイメージセンサ82Rと同様に、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等が挙げられる。
【0061】
合成光学系55は、第1光学素子55fと第2光学素子55sとを有する。第1光学素子55fは、第1受光光学系54Rから出射する第1の光DLRと、第2受光光学系54Gから出射する第2の光DLGとを合成する光学素子である。本実施形態では、第1光学素子55fは、第1の光DLRを透過すると共に第2の光DLGを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGとを合成する。また、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGと、第3受光光学系54Bから出射する第3の光DLBとを合成する光学素子である。本実施形態では、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGを透過すると共に第3の光DLBを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する。このような第1光学素子55f、第2光学素子55sとして、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタを挙げることができる。この酸化膜の種類や厚みをコントロールすることで、所定の波長よりも長い波長の光と透過し、この波長よりも短い波長の光を反射する構成とすることができる。
【0062】
こうして、合成光学系55において第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとが合成され、この光が合成光学系55から出射する。なお、図1図2では、第1の光DLRは実線で示され、第2の光DLGは破線で示され、第3の光DLBは一点鎖線で示され、これら光DLR,DLG,DLBはずらして示されている。
【0063】
次に、位相変調部53が有する位相変調素子53R、位相変調素子53G、及び位相変調素子53Bの構成について詳細に説明する。
【0064】
本実施形態では、位相変調素子53R、位相変調素子53G、及び位相変調素子53Bは同様の構成とされる。このため、以下では位相変調素子53Rについて説明し、位相変調素子53G及び位相変調素子53Bについてはその説明を適宜省略する。
【0065】
図3は、図2に示す位相変調素子の正面図である。なお、図3にはコリメートレンズ52Rから出射するレーザ光が入射する領域51Aが破線で示されている。位相変調素子53Rは、長方形の外形を有し、当該長方形内に二次元配列された複数の変調部を有しており、それぞれの変調部は、当該変調部に入射する光の位相分布を変調し、この位相分布を変調した光を出射する。それぞれの変調部は、二次元配列された複数のドットを含んでいる。この変調部は、コリメートレンズ52Rから出射するレーザ光が入射する領域51A内に一つ以上位置するように形成される。また、図3に示すように、位相変調素子53Rには駆動回路60Rが電気的に接続され、この駆動回路60Rは、位相変調素子53Rの横側に接続される走査線駆動回路と、位相変調素子53Rの上下方向の一方側に接続されるデータ線駆動回路とを有する。
【0066】
図4は、図3に示す位相変調素子の一部の厚さ方向の断面を概略的に示す図である。本実施形態の位相変調素子53Rは、図4に示すように、シリコン基板62、駆動回路層63、複数の電極64、反射膜65、液晶層66、透明電極67、透光性基板68を主な構成として備える。
【0067】
複数の電極64は、シリコン基板62の一方の面側に上記の変調部の各ドットDTに対応して二次元配列されており、ドットDTはそれぞれ電極64を含んでいる。駆動回路層63は、図3に示す駆動回路60Rの走査線駆動回路及びデータ線駆動回路に接続される回路が配置される層であり、シリコン基板62と複数の電極64との間に配置される。透光性基板68は、シリコン基板62の一方の側で当該シリコン基板62と対向するように配置され、例えばガラス基板とされる。透明電極67は、透光性基板68のシリコン基板62側の面上に配置される。液晶層66は、液晶分子66aを有し、複数の電極64と透明電極67との間に配置される。反射膜65は、複数の電極64と液晶層66との間に配置され、例えば誘電体多層膜とされる。コリメートレンズ52Rから出射するレーザ光は、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の面から入射する。
【0068】
図4に示すように、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の面から入射する光Lは、透明電極67及び液晶層66を透過し、反射膜65で反射され、液晶層66及び透明電極67を透過して透光性基板68から出射される。ここで、特定の電極64と透明電極67との間に電圧が印加されると、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の液晶分子66aの配向が変化し、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の屈折率が変化する。液晶分子66aの配向は、印加される電圧に応じて変化するため、この電圧に応じて屈折率も変化する。液晶層66の屈折率が変化されることで上記のように当該液晶層66を透過する光Lの光路長が変化するため、当該液晶層66を透過して位相変調素子53Rから出射する光の位相を変化させることができる。上記のように、複数の電極64は、変調部の各ドットDTに対応して配置されているため、各ドットDTに対応する電極64と透明電極67との間に印加される電圧が制御されることで、各ドットDTから出射する光の位相がそれぞれ変調される。位相変調素子53Rは、このように各ドットDTにおける液晶層66の屈折率を調整することで、ドットDTから出射する光の位相がそれぞれ変調し、位相分布が変調された光を出射する。上記のように、位相の異なる光は互いに干渉しあって回折されるため、位相変調素子53Rから出射する光は、当該光の位相分布に応じて回折する。このため、位相変調素子53Rは、各ドットDTにおける液晶層66の屈折率を調整して出射する光の位相分布を制御することで、光の配光パターンを所望の配光パターンにしたり、この光が照射される領域を変化させたりできる。
【0069】
本実施形態では、位相変調素子53Rは、当該位相変調素子53Rにおけるそれぞれの変調部から出射する光の位相分布が同じ位相分布となるように、各ドットDTにおける光の位相を変調する。また、位相変調素子53Gは、当該位相変調素子53Gにおけるそれぞれの変調部から出射する光の位相分布が同じ位相分布となるように、各ドットDTにおける光の位相を変調する。また、位相変調素子53Bは、当該位相変調素子53Bにおけるそれぞれの変調部から出射する光の位相分布が同じ位相分布となるように、各ドットDTにおける光の位相を変調する。そして、変調部から出射する光の位相分布が所望の配光パターンの光の位相分布となるように各ドットDTにおける光の位相を変調することで、変調部から出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。
【0070】
図5は、本実施形態における車両用灯具の一部と灯具制御システムとを含むブロック図である。図5に示すように、本実施形態の灯具制御システム70では、駆動回路60R,60G,60B、電源回路61R,61G,61B、目標画像生成部73、ライトスイッチ74、記憶部75、イメージセンサ82R,82G,82B等が制御部71に電気的に接続され、目標画像生成部73には検知装置72が電気的に接続されている。この制御部71は、灯具ユニット20に備えられても良く、車両の電子制御装置の一部とされても良い。
【0071】
駆動回路60Gは位相変調素子53Gに電気的に接続され、駆動回路60Bは位相変調素子53Bに電気的に接続される。駆動回路60G,60Bは、駆動回路60Rと同様に、位相変調素子53G,53Bの横側に接続される走査線駆動回路と、位相変調素子53R,53Bの上下方向の一方側に接続されるデータ線駆動回路とを有する。駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、位相変調素子53R,53G,53Bの各ドットDTに印加する電圧をそれぞれ調整する。位相変調素子53R,53G,53Bは、駆動回路60R,60G,60Bによって印加される電圧に応じて各ドットDTにおける液晶層66の屈折率を調整する。本実施形態では、位相変調素子53R,53G,53Bにおけるそれぞれの変調部から出射する光の位相分布が制御部71の後述する位相分布生成処理によって算出される目標位相分布となるように、各ドットDTにおける液晶層66の屈折率を調整する。
【0072】
本実施形態では、この目標位相分布は、位相変調素子53R,53G,53Bごとに算出される。それぞれの目標位相分布は、位相変調素子53Rから出射する一部の光である第1の光DLRと、位相変調素子53Gから出射する一部の光である第2の光DLGと、位相変調素子53Bから出射する一部の光である第3の光DLBとが合成光学系55で合成された光によって所望の配光パターンが形成される位相分布とされる。この所望の配光パターンには輝度分布も含まれる。このため、本実施形態では、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の一部である光DLR,DLG,DLBが合成された光によって特定の配光パターンを形成する場合、光DLR,DLG,DLBのそれぞれは、この特定の配光パターンと重なると共にこの特定の配光パターンの強度分布に基づいた強度分布とされる。また、光DLR,DLG,DLBが合成された光によって形成される配光パターンにおける強度が高い部位では、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の一部である光DLR,DLG,DLBの強度もそれぞれ高くなる。
【0073】
図1図2に示すように、位相変調素子53Rから出射する一部の光である第1の光DLRと、位相変調素子53Gから出射する一部の光である第2の光DLGと、位相変調素子53Bから出射する一部の光である第3の光DLBとは、合成光学系55で合成される。この合成された光は、カバー59の開口59Hから出射し、フロントカバー12を介して前照灯1から出射する。この光は、位相変調素子53R,53G,53Bのそれぞれの目標位相分布に基づいて位相変調素子53R,53G,53Bからそれぞれ出射する光の一部が合成された光であるため、前照灯1から出射する光の配光パターンはこれら目標位相分布に基づく配光パターンとなる。
【0074】
電源回路61Rは発光素子51Rに電気的に接続され、電源回路61Gは発光素子51Gに電気的に接続され、電源回路61Bは発光素子51Bに電気的に接続される。これら電源回路61R,61G,61Bには不図示の電源が接続されている。電源回路61R,61G,61Bのそれぞれは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から発光素子51R,51G,51Bに供給される電力を調整して、発光素子51R,51G,51Bから出射するレーザ光の強度を調節する。なお、電源回路61R,61G,61Bは、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって発光素子51R,51G,51Bに供給される電力を調整しても良い。この場合、デューティーサイクルを調節することによって、これら発光素子51R,51G,51Bから出射するレーザ光の強度が調節される。
【0075】
検知装置72は、車両前方に位置する所定の対象物を検知する。検知装置72が検知する対象物として、例えば、先行車や対向車等の車両、歩行者、標識等が挙げられる。また、検知装置72の構成として、例えば、図示せぬカメラ、画像処理部、検知部等を備える構成が挙げられる。カメラは車両前方を撮影し、このカメラによって撮影される画像には、前照灯1から出射する光が照射される領域の少なくとも一部が含まれる。画像処理部は、カメラによって撮影された画像に画像処理を施す。検知部は、画像処理部によって画像処理された情報から対象物の存在及び対象物の存在位置を検知する。検知装置72は、車両前方に位置する所定の対象物を検知した場合に、対象物の存在及び対象物の存在位置の情報を目標画像生成部73に送る。この対象物の存在位置は、例えば、車両から所定の距離離れた鉛直面上における前照灯1から出射する光の配光パターンに対する対象物の相対的な位置とされ、この鉛直面上における対象物が位置している領域も含まれる。なお、検知装置72が検知する対象物、対象物の種類の数、及び検知装置72の構成は特に限定されるものではない。例えば、検知装置72は、カメラに替わって、例えばミリ波レーダ、赤外線レーダなどを用いて対象物と非接触で当該対象物の存在及び存在位置を検知するものとされも良く、カメラとミリ波レーダや赤外線レーダとを組み合わせて対象物と非接触で当該対象物の存在及び存在位置を検知するものとされても良い。
【0076】
目標画像生成部73は、検知装置72によって検知された対象物の存在位置の情報に基づいて、前照灯1から出射される光によって投影される画像を算出し、当該画像に関する情報を制御部71に出力する。本実施形態では、目標画像生成部73は、検知装置72の図示せぬカメラによって撮影された画像に基づいて前照灯1が投影する目標画像を算出する。そして、この目標画像の赤色成分の画像である第1目標画像、緑色成分の画像である第2目標画像、青色成分の画像である第3目標画像をそれぞれ目標画像の情報として制御部71に出力する。つまり、目標画像生成部73は、互いに波長帯域の異なる光を出射する発光素子51R,51G,51Bごとに目標画像を設けていると理解できる。本実施形態では、目標画像生成部73は、ハイビームの配光パターンのうち検知された対象物と重なる領域の少なくとも一部が暗くされた配光パターンの画像を、前照灯1から投影させる目標画像として算出する。
【0077】
ライトスイッチ74は、運転者が前照灯1からの光の出射または非出射を指示するスイッチである。例えば、ライトスイッチ74がオンされる場合、ライトスイッチ74は前照灯1から画像の投影を指示する信号を出力する。
【0078】
記憶部75には、前照灯1が投影する所定の画像に関する情報が格納される。具体的には、本実施形態の所定の画像はハイビームの配光パターンの画像である。そして、このハイビームの配光パターンの画像に対応する所定の光の位相分布が格納される。具体的には、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布である第1基準位相分布と、位相変調素子53Gから出射する光の位相分布である第2基準位相分布と、位相変調素子53Bから出射する光の位相分布である第3基準位相分布とが格納される。第1基準位相分布は、位相変調素子53Rから出射する光が所定の画像における赤色成分を抜き出した画像を投影する配光パターンとなるような位相変調素子53Rから出射する光の位相分布である。第2基準位相分布は、位相変調素子53Gから出射する光が所定の画像における緑色成分を抜き出した画像を投影する配光パターンとなるような位相変調素子53Gから出射する光の位相分布である。第3基準位相分布は、位相変調素子53Bから出射する光が所定の画像における青色成分を抜き出した画像を投影する配光パターンとなるような位相変調素子53Bから出射する光の位相分布である。
【0079】
図6は本実施形態における車両用灯具から出射する光によって投影する画像の例を示す図である。具体的には、図6(A)は記憶部75に格納される所定の画像であり、ハイビームの配光パターンの画像を示す図である。図6(B)及び図6(C)は、目標画像生成部73によって算出される目標画像である。図6(B)はハイビームの配光パターンにおいて特定の領域が暗くされる配光パターンの画像を示す図であり、図6(C)はハイビームの配光パターンにおける別の特定の領域が暗くされる配光パターンの画像を示す図である。なお、理解を容易にするため、図6では、それぞれの画像には当該画像を投影する際の車両前方の風景が重ね合わされており、Sは水平線を示し、配光パターンが太線で示され、この配光パターンは、車両から25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされている。
【0080】
図6(A)に示される画像のハイビームの配光パターンPHは白色である。また、ハイビームの配光パターンPHのうち領域LA1は最も輝度が高い領域であり、領域LA2、領域LA3、領域LA4の順に輝度が低くなる。
【0081】
図6(B)に示される画像の配光パターンP1は、ハイビームの配光パターンPHにおける特定の領域AR1が暗くされる配光パターンである。つまり、配光パターンP1における特定の領域AR1の輝度は、ハイビームの配光パターンPHにおける特定の領域AR1の輝度よりも低い。この特定の領域AR1は、検知装置72によって対象物として検知される歩行者PEの全体と重なっている。また、配光パターンP1における特定の領域AR1以外における輝度分布は、ハイビームの配光パターンPHにおける領域AR1の領域以外における輝度分布と同じとされる。前照灯1が図6(B)に示される画像を投影する場合、この配光パターンP1の光が照射され、歩行者PEが前照灯1から出射する光を眩しく感じることを抑制し得る。
【0082】
図6(C)に示される画像の配光パターンP2は、ハイビームの配光パターンPHにおける特定の領域AR1と異なる別の特定の領域AR2が暗くされる配光パターンである。つまり、配光パターンP2における特定の領域AR2の輝度は、ハイビームの配光パターンPHにおける特定の領域AR2の光の輝度よりも低い。この特定の領域AR2は、検知装置72によって対象物として検知される対向車OVの全体と重なっている。また、配光パターンP2における特定の領域AR2以外における輝度分布は、ハイビームの配光パターンPHにおける領域AR2の領域以外における輝度分布と同じとされる。前照灯1が図6(C)に示される画像を投影する場合、この配光パターンP2の光が照射され、対向車OVの運転者が前照灯1から出射する光を眩しく感じることを抑制し得る。なお、図6(A)において、ハイビームの配光パターンPHにおける特定の領域AR2は破線で示されている。本実施形態では、配光パターンP2における特定の領域AR2は、領域LA2内に位置し、この特定の領域AR2の光の強度は、領域LA2の強度よりも低くされる。
【0083】
次に、本実施形態の前照灯1の動作について説明する。具体的には、車両前方の状況に応じて出射する光の配光パターンをハイビームの配光パターンPHから別の配光パターンに変化する動作について説明する。図7は、本実施形態における制御部の制御フローチャートを示す図である。
【0084】
まず、ステップSP1において、ライトスイッチ74がオンされ、ライトスイッチ74から光の出射を指示する信号が制御部71に入力される場合、制御部71の制御フローはステップSP2に進む。一方、ステップSP1において、この信号が制御部71に入力されない場合、制御部71の制御フローはステップSP6に進む。
【0085】
ステップSP2において、検知装置72が車両前方に位置する所定の対象物を検知せず、目標画像生成部73から目標画像に関する情報が制御部71に入力されない場合、制御部71の制御フローはステップSP3に進む。一方、ステップSP2においてこの情報が制御部71に入力される場合、制御部71の制御フローはステップSP4に進む。
【0086】
ステップSP3において、制御部71は、記憶部75に格納されるハイビームの配光パターンの画像に対応する所定の光の位相分布に基づいて、位相変調素子53R,53G,53Bを制御する。具体的には、制御部71は、この情報に基づく信号を駆動回路60R,60G,60Bに出力し、駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、位相変調素子53R,53G,53Bの各ドットDTに印加する電圧をそれぞれ調整する。この電圧は、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布が上記第1基準位相分布となり、位相変調素子53Gから出射する光の位相分布が上記第2基準位相分布となり、位相変調素子53Bから出射する光の位相分布が上記第3基準位相分布となるような電圧とされる。また、制御部71は、電源回路61R,61G,61Bに所定の信号を出力し、電源回路61R,61G,61Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から発光素子51R,51G,51Bに所定の電力を供給する。このため、発光素子51R,51G,51Bは、それぞれ所定の強度のレーザ光を出射する。発光素子51R,51G,51Bから出射するレーザ光が対応する位相変調素子53R,53G,53Bに入射し、位相変調素子53R,53G,53Bから光DLR,DLG,DLBが出射する。これら光DLR,DLG,DLBの一部は合成光学系55で合成され、この合成された光が前照灯1から出射する。ここで、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の位相分布は、ハイビームの配光パターンPHの画像に対応する基準位相分布となるようにされているため、白色のハイビームの配光パターンPHの光が前照灯1から出射する。
【0087】
本実施形態では、ステップSP3において、制御部71は、これら位相変調素子53R,53G,53Bの制御とこれら発光素子51R,51G,51Bの制御とを同時に行う。しかし、制御部71はこれらの制御を順次行っても良い。
【0088】
ステップSP2において、検知装置72が車両前方に位置する所定の対象物を検知し、目標画像生成部73から目標画像に関する情報が制御部71に入力される場合、制御部71の制御フローはステップSP4に進む。ステップSP4において、制御部71は、位相分布生成処理を行う。位相分布生成処理は、位相変調素子53R、位相変調素子53G、及び位相変調素子53Bのそれぞれに対して行われる。本実施形態では、これら位相変調素子53R,53G,53Bに対する位相分布生成処理は、同様の処理とされる。このため、以下では位相変調素子53Rに対する位相分布生成処理について説明し、位相変調素子53G及び位相変調素子53Bに対する位相分布生成処理はその説明を適宜省略する。
【0089】
図8は、位相分布生成処理における制御部の制御フローチャートを示す図である。図8に示すように、位相分布生成処理は、第1制御処理と、第1画像取得処理と、第2画像算出処理と、第2位相分布算出処理と、第2制御処理と、第3画像取得処理と、第4画像算出処理と、第3位相分布算出処理と、入れ換え処理と、を含んでいる。位相分布生成処理では、まず、ステップSP11において、制御部71は、第1制御処理として、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布が所定の第1位相分布となるように位相変調素子53Rを制御する。具体的には、制御部71は、所定の第1位相分布に基づいて駆動回路60Rに信号を出力し、駆動回路60Rは、制御部71から入力する信号に基づいて、位相変調素子53Rの各ドットDTに印加する電圧をそれぞれ調整する。この電圧は、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布が所定の第1位相分布となるような電圧とされる。なお、所定の第1位相分布は、ランダムな位相分布であれば良く、特に限定されるものではない。
【0090】
次にステップSP12において、制御部71は、第1画像取得処理として、第1制御処理がされた位相変調素子53Rから出射してイメージセンサ82Rが受光する光を第1画像として取得する。具体的には、制御部71は、電源回路61Rに所定の信号を出力し、電源回路61Rは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から発光素子51Rに所定の電力を供給する。このため、発光素子51Rから所定の強度のレーザ光が出射し、このレーザ光が位相変調素子53Rに入射し、このレーザ光の位相分布が変調された光が位相変調素子53Rから出射する。位相変調素子53Rから出射する光は、分光部80Rで一部の光と他の一部の光に分離され、分光部80Rで分離された一部の光がフーリエ変換レンズ81Rによって結像され、この結像された光がイメージセンサ82Rによって受光される。イメージセンサ82Rは、この受光した光を電気信号に変換して二次元画像として制御部71に出力する。このようにして、制御部71は、イメージセンサ82Rから出力される二次元画像を第1画像として取得する。ここで、光を結像することによって得られる画像は、当該光の位相分布をフーリエ変換した画像となることが知られている。このため、この第1画像は、概ね所定の第1位相分布をフーリエ変換した画像である。従って、この位相分布生成処理では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いることで、第1位相分布のフーリエ変換の演算を省略している。
【0091】
次にステップSP13において、制御部71は、第2画像算出処理として、ステップSP12において取得した第1画像を目標画像生成部73から入力された第1目標画像に近づけた第2画像を算出する。この第1目標画像は、上記のように前照灯1から投影させる画像の赤色成分の画像である。具体的には、本実施形態の制御部71は、第1目標画像の縦方向の画素数と第1画像の縦方向の画素数とが同じとなり、第1目標画像の横方向の画素数と第1画像の横方向の画素数とが同じとなるような画像処理を第1画像に施す。なお、この画像処理は特に限定されるものではない。しかし、この画像処理は、第1画像中の像が変形しない画像処理とされ、例えば、画像を拡大したり縮小したりする画像処理や、画像の一部を切り出して新たな画像とする画像処理や、これら画像処理が組み合わされた画像処理とされる。なお、この画像処理は省略されても良い。例えば、第1目標画像の縦方向の画素数と第1画像の縦方向の画素数とが同じとなり、第1目標画像の横方向の画素数と第1画像の横方向の画素数とが同じとなるイメージセンサ82Rを用いることで、この画像処理を省略し得る。
【0092】
次に、本実施形態の制御部71は、この画像処理が施された第1画像におけるそれぞれの画素と第1目標画像におけるそれぞれの画素とを比較する。そして、制御部71は、この画像処理が施された第1画像におけるそれぞれの画素の輝度のうち対応する第1目標画像における画素の輝度よりも所定値以上大きい画素の輝度が当該輝度よりも小さい輝度に置換された画像を算出し、算出された画像を第2画像とする。このように算出される第2画像中の像の輪郭は、第1画像中の像の輪郭よりも第1目標画像中の像の輪郭に近づいている。このようにして、制御部71は、第1画像を第1目標画像に近づけた画像を算出する。なお、第2画像算出処理は、第1画像を第1目標画像に近づけた第2画像を算出することができれば良く、第2画像を算出する方法は、特に限定されるものではない。
【0093】
次にステップSP14において、制御部71は、第2位相分布算出処理として、ステップSP13において算出した第2画像の輝度分布を位相分布に変換した第2位相分布を算出する。具体的には、この輝度分布の位相分布への変換は、第2画像の輝度分布の各輝度を所定の係数で位相に比例変換し、この各位相を2πで除算した際の剰余を算出し、算出された剰余を対応する輝度と置換する演算とされる。なお、輝度は、例えば、位相変調素子53RのそれぞれのドットDTが光の位相を変調させることができる最大の変調量よりも小さくなるように変換される。
【0094】
次にステップSP15において、制御部71は、第2制御処理として、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布がステップSP14において算出された第2位相分布となるように位相変調素子53Rを制御する。具体的には、制御部71は、第2位相分布に基づいて駆動回路60Rに信号を出力し、駆動回路60Rは、制御部71から入力する信号に基づいて、位相変調素子53Rの各ドットDTに印加する電圧をそれぞれ調整する。この電圧は、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布が第2位相分布となるような電圧とされる。このように制御された位相変調素子53Rにおける出射面には、第2画像算出処理によって算出した第2画像と概ね同じ画像が表示される。つまり、位相変調素子53Rにおける出射面に第2画像算出処理によって算出した第2画像を表示させることは、第2位相分布算出処理と第2制御処理とをすることと理解できる。なお、本実施形態では、ステップSP13からステップSP15において、発光素子51Rから所定の強度のレーザ光が出射されたままとされる。しかし、発光素子51Rからのレーザ光が非出射とされても良い。
【0095】
次にステップSP16において、制御部71は、第3画像取得処理として、第2制御処理がされた位相変調素子53Rから出射してイメージセンサ82Rが受光する光を第3画像として取得する。発光素子51Rから所定の強度のレーザ光が出射されたままとされているため、発光素子51Rから出射するレーザ光が位相変調素子53Rに入射し、このレーザ光の位相分布が変調された光が位相変調素子53Rから出射する。なお、発光素子51Rからのレーザ光が非出射とされている場合、ステップSP12と同様にして、制御部71は、発光素子51Rから所定の強度のレーザ光が出射させる。位相変調素子53Rから出射する光は、分光部80Rで一部の光と他の一部の光に分離され、分光部80Rで分離された一部の光がフーリエ変換レンズ81Rによって結像され、この結像された光がイメージセンサ82Rによって受光される。イメージセンサ82Rは、この受光した光を電気信号に変換して二次元画像として制御部71に出力する。このようにして、制御部71は、イメージセンサ82Rから出力される二次元画像を第3画像として取得する。
【0096】
次にステップSP17において、制御部71は、第4画像算出処理として、ステップSP16において取得した第3画像の画素配列を転置させた第4画像を算出する。ここで、光を結像することによって得られる画像を転置させた画像は、当該光の位相分布を逆フーリエ変換した画像となることが知られている。このため、この第4画像は、概ね第2位相分布を逆フーリエ変換した画像である。従って、この位相分布生成処理では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いることで、第2位相分布の逆フーリエ変換の演算の一部を省略している。
【0097】
次にステップSP18において、制御部71は、第3位相分布算出処理として、ステップSP17において算出した第4画像の輝度分布を位相分布に変換した第3位相分布を算出する。具体的には、ステップSP14と同様に、この輝度分布の位相分布への変換は、第4画像の輝度分布の各輝度を所定の係数で位相に比例変換し、この各位相を2πで除算した際の剰余を算出し、算出された剰余を対応する輝度と置換する演算とされる。なお、輝度は、例えば、位相変調素子53RのそれぞれのドットDTが光の位相を変調させることができる最大の変調量よりも小さくなるように変換される。
【0098】
次にステップSP19において、制御部71は、入れ換え処理として、ステップSP18において算出した第3位相分布にランダムな位相分布を付与した第4位相分布を算出し、ステップSP11に戻って、この第4位相分布を所定の第1位相分布として第1制御処理を行う。なお、ランダムな位相分布は、特に限定されるものではない。
【0099】
このように、ステップSP11からステップSP19までの処理を1サイクルとするとき、制御部71は、このサイクルを所定の回数行う。このサイクルを複数回行うことで、ステップSP12において取得される第1画像は目標画像生成部73から入力された第1目標画像に近づくように収束する。このように第1目標画像に近づいた第1画像を更に第1目標画像に近づけた画像が第2画像であり、第2画像の輝度分布を位相分布に変換した第2位相分布を概ね逆フーリエ変換したものが第3位相分布である。つまり、第3位相分布は、当該第3位相分布を逆フーリエ変換すると第1目標画像に近づいた画像となる位相分布であり、このような位相分布の光が所定距離以上離れた領域に照射されることで、当該領域には第1目標画像に近づいた画像が投影される。本実施形態の制御部71はこのような第3位相分布を位相変調素子53Rに対する第1目標位相分布として、位相分布生成処理を終了する。なお、本実施形態では、ステップSP16からステップSP19において、発光素子51Rから所定の強度のレーザ光が出射されたままとされる。しかし、発光素子51Rからのレーザ光が非出射とされても良い
【0100】
制御部71は、上記の位相変調素子53Rに対する位相分布生成処理と同時に、位相変調素子53G及び位相変調素子53Bに対する位相分布生成処理を行い、位相変調素子53Gに対する第2目標位相分布及び位相変調素子53Bに対する第3目標位相分布も算出する。そして、制御部71の制御フローは、ステップSP5に進む。
【0101】
ステップSP5において、制御部71は、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布がステップSP4において算出した第1目標位相分布となるように位相変調素子53Rを制御する。また、制御部71は、位相変調素子53Rと同様に、位相変調素子53Gから出射する光の位相分布がステップSP4において算出した第2目標位相分布となるように位相変調素子53Rを制御し、位相変調素子53Bから出射する光の位相分布がステップSP4において算出した第3目標位相分布となるように位相変調素子53Rを制御する。具体的には、制御部71は、第1目標位相分布、第2目標位相分布、及び第1目標位相分布に基づいて、駆動回路60R,60G,60Bにそれぞれ信号を出力し、駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、位相変調素子53R,53G,53Bの各ドットDTに印加する電圧をそれぞれ調整する。位相変調素子53Rの各ドットDTに印加される電圧は、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布が第1目標位相分布となるような電圧とされる。位相変調素子53Gの各ドットDTに印加される電圧は、位相変調素子53Gから出射する光の位相分布が第2目標位相分布となるような電圧とされる。位相変調素子53Bの各ドットDTに印加される電圧は、位相変調素子53Bから出射する光の位相分布が第3目標位相分布となるような電圧とされる。発光素子51R,51G,51Bから所定の強度のレーザ光が出射されたままとされているため、これら発光素子51R,51G,51Bから出射するレーザ光がそれぞれ位相変調素子53R,53G,53Bに入射する。このため、光の位相分布が第1目標位相分布となるような光が位相変調素子53Rから出射し、光の位相分布が第2目標位相分布となるような光が位相変調素子53Gから出射し、光の位相分布が第3目標位相分布となるような光が位相変調素子53Bから出射する。この位相変調素子53Rから出射する光は、前照灯1から投影させる目標画像の赤色成分の画像である第1目標画像を投影するような光であり、位相変調素子53Gから出射する光は、前照灯1から投影させる目標画像の緑色成分の画像である第2目標画像を投影するような光であり、この位相変調素子53Bから出射する光は、前照灯1から投影させる目標画像の青色成分の画像である第3目標画像を投影するような光である。そして、このような位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光は、図1図2に示すように、それぞれ分光部80R,80G,80Bで一部の光と他の一部の光とに分離される。分光部80R,80G,80Bで分離されたこれら一部の光はそれぞれイメージセンサ82R,82G,82Bに受光されものの、これら他の一部の光である光DLR,DLG,DLBは、合成光学系55で合成され、フロントカバー12を介して前照灯1から出射する。
【0102】
このようにして、目標画像生成部73によって算出された目標画像が前照灯1によって投影される。図6(B)及び図6(C)に例示されるように、目標画像生成部73によって算出される目標画像は、ハイビームの配光パターンPHのうち対象物と重なる領域の少なくとも一部が暗くされた配光パターンの画像であるため、このような配光パターンの光が前照灯1から出射する。
【0103】
上記のようにステップSP1においてライトスイッチ74から光の出射を指示する信号が制御部71に入力されずに制御部71の制御フローがステップSP6に進んだ場合、制御部71は、発光素子51R,51G,51Bを制御して発光素子51R,51G,51Bからのレーザ光を非出射にする。この場合、電源回路61R,61G,61Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から発光素子51R,51G,51Bへの電力の供給を停止する。このため、発光素子51R,51G,51Bはレーザ光を非出射とし、前照灯1は光を非出射とする。
【0104】
このように、本実施形態の前照灯1は、検知装置72が車両前方に位置する所定の対象物を検知しない場合、ハイビームの配光パターンPHの光を出射する。一方、検知装置72が車両前方に位置する所定の対象物を検知する場合、この前照灯1は、対象物の少なくとも一部と暗くされる特定の領域とが重なる配光パターンP1,P2の光を出射する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の前照灯1は、光を出射する発光素子51R,51G,51Bと、位相変調素子53R,53G,53Bと、イメージセンサ82R,82G,82Bと、制御部71と、を備える。位相変調素子53R,53G,53Bは、発光素子51R,51G,51Bからの光が入射する二次元配列された複数のドットDTを含み、入射する前記光の位相を複数のドットDTごとに変調する。イメージセンサ82R,82G,82Bは、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する一部の光を受光する。位相変調素子53R,53G,53Bから出射する一部の光はそれぞれ結像し、この結像した一部の光をイメージセンサ82R,82G,82Bが受光する。
【0106】
制御部71は、位相分布生成処理によって目標画像の赤色成分である第1目標画像に対応する第1目標位相分布、目標画像の緑色成分である第2目標画像に対応する第2目標位相分布、及び目標画像の青色成分である第3目標画像に対応する第3目標位相分布を算出する。位相分布生成処理は、第1制御処理と、第1画像取得処理と、第2画像算出処理と、第2位相分布算出処理と、第2制御処理と、第3画像取得処理と、第4画像算出処理と、第3位相分布算出処理と、入れ換え処理と、を含む。第1制御処理は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の位相分布がそれぞれ第1位相分布となるように位相変調素子53R,53G,53Bを制御する処理である。第1画像取得処理は、第1制御処理がされたそれぞれの位相変調素子53R,53G,53Bから出射する一部の光であって、イメージセンサ82R,82G,82Bがそれぞれ受光するこの一部の光をそれぞれ第1画像として取得する処理である。第2画像算出処理は、イメージセンサ82Rが受光する第1画像を第1目標画像に近づけた第2画像と、イメージセンサ82Gが受光する第1画像を第2目標画像に近づけた第2画像と、イメージセンサ82Bが受光する第1画像を第3目標画像に近づけた第2画像とをそれぞれ算出する処理である。第2位相分布算出処理は、第2画像算出処理で算出されたそれぞれの第2画像の輝度分布に対応する第2位相分布をそれぞれ算出する処理である。第2制御処理は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の位相分布がそれぞれ第2位相分布算出処理によって算出されたそれぞれの第2位相分布となるように位相変調素子53R,53G,53Bを制御する処理である。第3画像取得処理は、第2制御処理がされた位相変調素子53R,53G,53Bから出射する一部の光であって、イメージセンサ82R,82G,82Bがそれぞれ受光するこの一部の光をそれぞれ第3画像として取得する処理である。第4画像算出処理は、第3画像取得処理で取得されたそれぞれの第3画像の画素配列を転置させた第4画像をそれぞれ算出する処理である。第3位相分布算出処理は、第4画像算出処理で算出されたそれぞれの第4画像の輝度分布に対応する第3位相分布をそれぞれ算出する処理である。入れ換え処理は、第3位相分布算出処理で算出されたそれぞれの第3位相分布にランダムな位相分布を付与した第4位相分布をそれぞれ算出し、これら第4位相分布をそれぞれ第1位相分布とする処理である。
【0107】
本実施形態の前照灯1では、上記のように、位相変調素子53R,53G,53Bは、発光素子51R,51G,51Bからの光の位相を複数のドットDTごとに変調するため、位相分布が変調された光が位相変調素子53R,53G,53Bから出射される。位相の異なる光は互いに干渉しあって回折されるため、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光は、当該光の位相分布に応じて回折する。このため、制御部71によって位相変調素子53R,53G,53Bを制御して位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の位相分布を調節することで、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の回折を制御することができる。そして、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光が合成された光によって、所望の画像を投影することができる。
【0108】
また、制御部71は、上記の位相分布生成処理によって、光の位相分布の反復フーリエ変換を行い、目標画像の赤色成分である第1目標画像に対応する第1目標位相分布、目標画像の緑色成分である第2目標画像に対応する第2目標位相分布、及び目標画像の青色成分である第3目標画像に対応する第3目標位相分布を算出する。
【0109】
第1画像取得処理では、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の位相分布が第1位相分布となるように制御された位相変調素子53R,53G,53Bから出射してイメージセンサ82R,82G,82Bがそれぞれ受光する光を第1画像としてそれぞれ取得する。上記のように、イメージセンサ82R,82G,82Bは結像した光を受光するため、それぞれの第1画像は位相変調素子53R,53G,53Bから出射した光が結像した画像となる。ここで、光を結像することによって得られる画像は、当該光の位相分布をフーリエ変換した画像となることが知られている。このため、それぞれの第1画像は、概ね第1位相分布をそれぞれフーリエ変換した画像である。従って、本実施形態の前照灯1では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いることで、それぞれの第1位相分布のフーリエ変換の演算を省略している。
【0110】
また、第3画像取得処理では、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光の位相分布が第2位相分布となるように制御された位相変調素子53R,53G,53Bから出射してイメージセンサ82R,82G,82Bが受光する光を第3画像として取得する。そして、第4画像算出処理では、それぞれの第3画像の画素配列を転置させた第4画像をそれぞれ算出する。ここで、光を結像することによって得られる画像を転置させた画像は、当該光の位相分布を逆フーリエ変換した画像となることが知られている。このため、それぞれの第4画像は、概ね第2位相分布をそれぞれ逆フーリエ変換した画像である。従って、本実施形態の前照灯1では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いることで、第2位相分布の逆フーリエ変換の演算の一部を省略している。
【0111】
このように、本実施形態の前照灯1では、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いて、光の位相分布の反復フーリエ変換におけるフーリエ変換の演算と逆フーリエ変換の演算の一部を省略している。このため、本実施形態の前照灯1は、反復フーリエ変換におけるフーリエ変換と逆フーリエ変換とを演算によって行う場合と比べて、目標位相分布を算出する際の演算量を少なくして演算時間を短縮し得る。従って、本実施形態の前照灯1は、所望の画像を投影するまでの時間を短縮し得る。
【0112】
また、本実施形態の前照灯1では、光源51は複数の発光素子51R,51G,51Bを有し、位相変調部53は複数の発光素子51R,51G,51Bごとに設けられる複数の位相変調素子53R,53G,53Bを有する。これら発光素子51R,51G,51Bは、互いに波長帯域の異なる光を出射する。このため、発光素子51Rから出射した光の位相分布が変調された光が発光素子51Rに対応する位相変調素子53Rから出射する。発光素子51Gから出射した光の位相分布が変調された光が発光素子51Gに対応する位相変調素子53Gから出射し、発光素子51Bから出射した光の位相分布が変調された光が発光素子51Bに対応する位相変調素子53Bから出射する。つまり、複数の位相変調素子53R,53G,53Bから互いに波長帯域の異なる光が出射する。このため、本実施形態の前照灯1は、こられの光が合成された光によって、所望の色の画像を投影し得る。
【0113】
また、本実施形態の前照灯1では、上記のように、複数の受光光学系54R,54G,54Bは、互いに波長帯域の異なる光を出射する複数の発光素子51R,51G,51Bにそれぞれ対応する複数の位相変調素子53R,53G,53Bごとに設けられる。このため、イメージセンサ82R,82G,82Bは、複数の位相変調素子53R,53G,53Bごとに設けられる。また、本実施形態の前照灯1では、目標画像の赤色成分である第1目標画像と、目標画像の緑色成分である第2目標画像と、目標画像の青色成分である第3目標画像とが設けられる。つまり、目標画像は、互いに波長帯域の異なる光を出射する発光素子51R,51G,51Bごとに設けられている。また、制御部71は、複数の位相変調素子53R,53G,53Bごとに上記の位相分布生成処理によって目標位相分布を算出する。このため、制御部71は、互いに波長帯域の異なる光を出射する位相変調素子53R,53G,53Bをそれぞれの目標位相分布に基づいて制御することができる。このため、本実施形態の前照灯1は、投影される画像に色のにじみが生じることを抑制し得る。また、本実施形態の前照灯1は、複数の色から構成される画像を投影し得る。なお、これら位相変調素子53R,53G,53Bは発光素子51R,51G,51Bにそれぞれ対応しているため、制御部71は、発光素子51R,51G,51Bごとに目標位相分布を算出すると理解できる。
【0114】
また、本実施形態の前照灯1は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBをそれぞれ一部の光と他の一部の光に分離する分光部80R,80G,80Bを備える。このため、出射する光がイメージセンサ82R,82G,82Bにのみ入射する発光素子を光源51が有していなくても位相変調部53から出射する一部の光をイメージセンサ82R,82G,82Bに受光させることができ、前照灯1を簡易な構成とし得る。
【0115】
また、本実施形態の前照灯1では、それぞれの受光光学系54R,54G,54Bは、分光部80R,80G,80Bで分離された一部の光である光DLR,DLG,DLBを結像するフーリエ変換レンズ81R,81G,81Bを備えている。このため、本実施形態の前照灯1は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する一部の光である光DLR,DLG,DLBを安定して結像させることができる。
【0116】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図9図10を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0117】
図9は、本発明の第2実施形態における車両用灯具を図1と同様に示す図であり、図10は、図9に示す光学系ユニットの拡大図である。なお、図10では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー59等の記載が省略されている。図9図10に示すように、本実施形態の前照灯1は、灯具ユニット20が投影レンズ85を備える点、第1受光光学系54R、第2受光光学系54G、及び第3受光光学系54Bがそれぞれフーリエ変換レンズ81R,81G,81Bを備えない点において、第1実施形態の前照灯1と異なる。投影レンズ85は、入射する光の発散角を調節するレンズである。光学系ユニット50から出射する光DLR,DLG,DLBが投影レンズ85に入射し、これら光DLR,DLG,DLBの発散角が投影レンズ85で調整される。本実施形態では、投影レンズ85は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。
【0118】
本実施形態における制御部71は、位相変調素子53R,53G,53Bをそれぞれ制御して位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光のそれぞれを結像させる。具体的には、制御部71は、位相変調素子53Rから出射し分光部80Rで合成光学系55側に分離された光である第1の光DLRと、位相変調素子53Gから出射し分光部80Gで合成光学系55側に分離された光である第2の光DLGと、位相変調素子53Rから出射し分光部80Bで合成光学系55側に分離された光である第3の光DLBとが、概ね同じ位置で結像するように位相変調素子53R,53G,53Bをそれぞれ制御する。このように結像される光DLR,DLG,DLBは、結像した後発散するように伝搬する。なお、これら光DLR,DLG,DLBが結像する位置は、投影レンズ85よりも光学系ユニット50側とされる。このようにされることで、光DLR,DLG,DLBの発散角が投影レンズ85で調整され、発散角が調整された光DLR,DLG,DLB光がフロントカバー12を介して前照灯1から出射する。
【0119】
位相変調素子53R,53G,53Bが上記のよう制御される場合、位相変調素子53Rから出射し分光部80Rでイメージセンサ82R側に分離された光と、位相変調素子53Gから出射し分光部80Gでイメージセンサ82G側に分離された光と、位相変調素子53Bから出射し分光部80Bでイメージセンサ82B側に分離された光も結像する。つまり、制御部71は、位相変調素子53R,53G,53Bを制御してこれら光を結像させているとも理解できる。本実施形態では、イメージセンサ82Rは、分光部80Rでイメージセンサ82R側に分離された光の結像またはこの結像位置の近傍に受光面が位置するように配置される。また、イメージセンサ82Gは、分光部80Gでイメージセンサ82G側に分離された光の結像またはこの結像位置の近傍に受光面が位置するように配置され、イメージセンサ82Bは、分光部80Bでイメージセンサ82B側に分離された光の結像またはこの結像位置の近傍に受光面が位置するように配置される。このため、イメージセンサ82Rは、位相変調素子53Rから出射して結像する光を受光し、イメージセンサ82Gは、位相変調素子53Gから出射して結像する光を受光し、イメージセンサ82Bは、位相変調素子53Bから出射して結像する光を受光する。従って、本実施形態の前照灯1は、第1実施形態と同様に、光を結像することによって生じるフーリエ変換作用を用いて、光の位相分布の反復フーリエ変換におけるフーリエ変換の演算と逆フーリエ変換の演算の一部を省略することができる。従って、本実施形態の前照灯1は、反復フーリエ変換におけるフーリエ変換と逆フーリエ変換とを演算によって行う場合と比べて、目標位相分布を算出する際の演算量を少なくして演算時間を短縮し得る。
【0120】
また、本実施形態の前照灯1は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射して車両の外部に照射される光の発散角を調整する投影レンズ85を備える。このため、本実施形態の前照灯1は、発散角が調節された光を車両の外部に出射することができ、投影レンズ85を備えない場合と比べて、投影する画像の大きさを所望の大きさにし易い。
【0121】
また、本実施形態の前照灯1では、制御部71は、位相変調素子53R,53G,53Bをそれぞれ制御して位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBのそれぞれを結像させる。この結像する光がイメージセンサ82R,82G,82Bで受光される。このため、本実施形態の前照灯1は、フーリエ変換レンズ等を備えなくても位相変調素子53R,53G,53Bから出射する一部の光を結像させることができ、前照灯1を簡易な構成とし得る。
【0122】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図11を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0123】
図11は、本発明の第3実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。なお、図11では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー59等の記載が省略されている。図11に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、光源51がテスト用発光素子51Tとコリメートレンズ52Tとを更に備える点、位相変調部53がテスト用位相変調素子53Tを更に備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と異なる。また、本実施形態の光学系ユニット50は、第1受光光学系54R、第2受光光学系54G、及び第3受光光学系54Bに替わって、フーリエ変換レンズ81Tとイメージセンサ82Tとを備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と異なる。
【0124】
本実施形態のテスト用発光素子51Tは、発光素子51Rと同様に、パワーのピーク波長が例えば638nmの赤色のレーザ光を出射する。テスト用発光素子51Tは、他の発光素子51R,51G,51Bと同様に、不図示の回路基板に実装されており、制御部71によって制御される。
【0125】
コリメートレンズ52Tは、テスト用発光素子51Tから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。
【0126】
本実施形態のテスト用位相変調素子53Tは、他の位相変調素子53R,53G,53Bと同様に、入射する光を反射しつつ光の位相分布を変調する反射型の位相変調素子とされ、制御部71によって制御される。テスト用位相変調素子53Tにはテスト用発光素子51Tから出射しコリメートレンズ52Tでコリメートされた赤色のレーザ光が入射し、このテスト用位相変調素子53Tは、この赤色のレーザ光の位相分布を変調した光DLTを出射する。
【0127】
フーリエ変換レンズ81Tは、テスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTを結像するレンズである。本実施形態のフーリエ変換レンズ81Tは、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。
【0128】
イメージセンサ82Tは、受光面で受光した光を電気信号に変換して出力する光学素子であり、光を受光する複数の受光部を有し、受光面に入射する光を二次元画像として制御部71に出力する。イメージセンサ82Tは、受光面がフーリエ変換レンズ81Tの焦点または焦点近傍に位置するように配置され、フーリエ変換レンズ81Tによって結像される光を受光する。
【0129】
本実施形態では、位相変調部53の位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBは、それぞれ合成光学系55で合成され、車両の外部に照射される。一方、位相変調部53のテスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTは、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBと合波されることなく、結像されてイメージセンサ82Tで受光される。このため、位相変調部53から出射する一部の光としてテスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTが結像されてイメージセンサ82Tで受光され、他の一部の光として位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBが車両の外部に照射されると理解できる。また、上記のように、テスト用発光素子51Tから出射する光のピーク波長と発光素子51R出射する光のピーク波長とは同じとされる。このため、テスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTの波長帯域は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBの波長帯域の一部である。
【0130】
本実施形態では、目標画像生成部73は、前照灯1から投影させる目標画像の赤色成分の画像であるテスト用目標画像を算出し、制御部71における位相分布生成処理は、出射する光がイメージセンサ82Tで受光されるテスト用位相変調素子53Tに対して行われる。なお、本実施形態における位相分布生成処理における制御部の制御フローチャートは、第1実施形態と同様であるため、本実施形態における位相分布生成処理については図8を参照して説明する。また、第1実施形態における位相分布生成処理と同一または同様の処理については、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0131】
本実施形態における位相分布生成処理のステップSP11において、制御部71は、テスト用位相変調素子53Tから出射する光の位相分布が所定の第1位相分布となるようにテスト用位相変調素子53Tを制御する。また、制御部71は、テスト用発光素子51Tから所定の強度のレーザ光が出射するようにテスト用発光素子51Tを制御する。次にステップSP12において、制御部71は、第1制御処理がされたテスト用位相変調素子53Tから出射してイメージセンサ82Tが受光する光を第1画像として取得する。制御部71は、上記第1実施形態と同様に、ステップSP13において第2画像を算出し、ステップSP14において第2位相分布を算出する。次にステップSP15において、制御部71は、テスト用位相変調素子53Tから出射する光の位相分布がステップSP14において算出された第2位相分布となるようにテスト用位相変調素子53Tを制御する。次にステップSP16において、制御部71は、第2制御処理がされたテスト用位相変調素子53Tから出射してイメージセンサ82Tが受光する光を第3画像として取得する。制御部71は、上記第1実施形態と同様に、ステップSP17において第4画像を算出し、ステップSP18において第3位相分布を算出する。制御部71は、ステップSP19において、上記第1実施形態と同様に、第3位相分布にランダムな位相分布を付与した第4位相分布を算出し、ステップSP11に戻って、この第4位相分布を所定の第1位相分布として第1制御処理を行う。制御部71は、上記第1実施形態と同様に、ステップSP11からステップSP19までのサイクルを所定の回数行い、テスト用位相変調素子53Tに対するテスト用目標位相分布を算出する。また、制御部71は、テスト用発光素子51Tを制御して当該テスト用発光素子51Tからのレーザ光を非出射として、位相分布生成処理を終了する。このため、本実施形態のテスト用発光素子51Tは、位相分布生成処理を行わないときに、レーザ光を非出射する。
【0132】
本実施形態における制御部71は、上記の位相分布生成処理によって算出されたテスト用目標位相分布に基づいて、位相変調素子53Rに対する第1目標位相分布と、位相変調素子53Gに対する第2目標位相分布と、位相変調素子53Bに対する第3目標位相分布とを算出する。具体的には、制御部71は、テスト用目標位相分布を位相変調素子53Rに対する第1目標位相分布とする。テスト用発光素子51Tから出射する光の波長帯域は、発光素子51Rから出射する光の波長帯域と概ね同じである。このため、位相変調素子53Rから出射する光の位相分布が第1目標位相分布となるように制御された位相変調素子53Rから出射する光は、目標画像の赤色成分の画像を投影するような光となる。また、制御部71は、第1目標位相分布に補正を施して、第2目標位相分布を算出する。この補正は、第1目標位相分布が、位相変調素子53Gから出射する光の位相分布であって、この光が目標画像の緑色成分の画像を投影するような光となるような位相分布となる補正である。また、制御部71は、第1目標位相分布に補正を施して、第3目標位相分布を算出する。この補正は、第1目標位相分布が、位相変調素子53Bから出射する光の位相分布であって、この光が目標画像の青色成分の画像を投影するような光となるような位相分布となる補正である。これらの補正は、それぞれの位相変調素子53G,53Bから出射する光の波長帯域に基づく補正である。このような補正として、例えば、予め定められた比例定数による補正が挙げられる。
【0133】
そして、制御部71は、上記のように算出される第1目標位相分布に基づいて位相変調素子53Rを制御し、上記のように算出される第2目標位相分布に基づいて位相変調素子53Gを制御し、上記のように算出される第3目標位相分布に基づいて位相変調素子53Bを制御する。これら位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBが車両の外部に照射される。
【0134】
本実施形態の前照灯1では、上記のように、複数の位相変調素子53R,53G,53Bから互いに波長帯域の異なる光が出射する。このため、本実施形態の前照灯1は、こられの光が合成された光によって、所望の色の画像を投影し得る。
【0135】
また、本実施形態の前照灯1では、位相変調部53の位相変調素子53R,53G,53Bには、発光素子51R,51G,51Bから出射する光が入射し、これら位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBは、それぞれ合成光学系55で合成され、車両の外部に照射される。一方、位相変調部53のテスト用位相変調素子53Tには、テスト用発光素子51Tから出射する光が入射し、このテスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTは結像されてイメージセンサ82Tで受光される。つまり、光DLR,DLG,DLBと光DLTとは別個の発光素子から出射している。また、この光DLTは光DLR,DLG,DLBと合波されることなく、イメージセンサ82Tで受光されている。このため、イメージセンサ82Tで受光される光DLTの強度と車両の外部に照射される光DLR,DLG,DLBの強度とを個別に調節することができる。このため、例えば、イメージセンサ82Tの性能に応じた強度の光をイメージセンサ82Tに受光させたり、所望の強度の光を車両の外部に照射したりすることが容易となる。
【0136】
また、本実施形態の前照灯1では、イメージセンサ82Tで受光される光DLTは、制御部71が位相分布生成処理を行わないときに、テスト用発光素子51Tから非出射とされる。このため、イメージセンサ82Tで受光される光DLTを常時出射する場合と比べて、光源51における消費電力量を低減することができる。
【0137】
また、本実施形態の前照灯1では、制御部71は、複数の位相変調素子53R,53G,53Bのうち位相変調素子53Rに対する第1目標位相分布を位相分布生成処理によって算出し、この第1目標位相分布から他の位相変調素子53G,53Bに対する目標位相分布を算出する。このため、本実施形態の前照灯1は、複数のイメージセンサを備えなくても複数の位相変調素子のそれぞれに対する目標位相分布を算出することができ、前照灯1を簡易な構成とし得る。
【0138】
また、本実施形態の前照灯1では、制御部71は、位相変調素子53Gから出射する光の位相分布であって、この光が目標画像の緑色成分の画像を投影するような光となるような位相分布となる補正を第1目標位相分布に施して位相変調素子53Gに対応する第2目標位相分布を算出する。また、制御部71は、位相変調素子53Bから出射する光の位相分布であって、この光が目標画像の青色成分の画像を投影するような光となるような位相分布となる補正を第1目標位相分布に施して位相変調素子53Bに対応する第3目標位相分布を算出する。このため、位相変調素子53R,53G,53Bのそれぞれに対応する目標位相分布は、それぞれの位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBの波長帯域に応じた位相分布となる。このため、本実施形態の前照灯1は、光DLR,DLG,DLBが合成された光によって投影される目標画像に色のにじみが生じることを抑制し得る。なお、制御部71は、第1目標位相分布を第2目標位相分布としても良く、第1目標位相分布を第3目標位相分布としても良い。しかし、投影する画像に色のにじみが生じることを抑制する観点では、制御部71は、第1目標位相分布に補正を施して、第2目標位相分布と第3目標位相分布とを算出することが好ましい。
【0139】
なお、本実施形態の前照灯1では、上記のように、位相変調部53から出射する一部の光であるテスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTの波長帯域は、位相変調部53から出射する他の一部の光である位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBの波長帯域の一部とされた。しかし、テスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTの波長帯域は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBの波長帯域と異なっていても良い。つまり、光源51における発光素子のうちテスト用発光素子51Tから出射する光の波長帯域は、他の発光素子51R,51G,51Bの波長帯域と異なっていても良い。例えば、テスト用発光素子51Tから出射する光の波長帯域は、不可視光線の波長帯域とされても良い。この場合、意図せずテスト用発光素子51Tから出射する光が車両の外部に照射されたとしても、この光によって投影する画像に影響が生じることを抑制し得る。なお、テスト用発光素子51Tから出射する光の波長帯域が他の発光素子51R,51G,51Bの波長帯域と異なっている場合、制御部71は、例えば、上記の位相生成処理によって算出される第1目標位相分布に、第2目標位相分布や第3目標位相分布に施される補正と同様の補正を施す。このため、制御部71の演算量を低減する観点では、テスト用発光素子51Tから出射する光の波長帯域は、他の発光素子51R,51G,51Bの少なくとも一部であることが好ましい。
【0140】
ところで、位相分布生成処理において、位相変調素子から出射する光の位相分布が第2位相分布となるように制御される位相変調素子から出射する光が結像した画像は、目標画像と大きく異なる。しかし、本実施形態の前照灯1では、位相分布生成処理の際のテスト用位相変調素子53Tから出射する光DLTは、イメージセンサ82Tで受光され、車両の外部に照射されない。このため、目標画像と大きく異なる画像が車両の外部に照射されないため、運転者や車外の人間等が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0141】
また、本実施形態では、前照灯1は、テスト用発光素子51Tと異なる3つの発光素子51R,51G,51Bを備えていた。しかし、前照灯1は、テスト用発光素子51Tと別個の発光素子を少なくとも1つ備えていれば良い。
【0142】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図12を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0143】
図12は、本発明の第4実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。なお、図12では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー59等の記載が省略されている。図12に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、第1受光光学系54R、第2受光光学系54G、及び第3受光光学系54Bに替わって、共通受光光学系54Sを備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と異なる。
【0144】
本実施形態の共通受光光学系54Sは、分光部80Sと、光学フィルタ86と、フーリエ変換レンズ81Sと、イメージセンサ82Sとを備える。分光部80Sは、合成光学系55から出射する光DLR,DLG,DLBを一部の光と他の一部の光に分離する。分光部80Sとして、例えば、第1実施形態の分光部80Rと同様に、プリズム型ビームスプリッタ、平面型ビームスプリッタ、ウェッジ基板等が挙げられる。分光部80Sで分離された一部の光が光学フィルタ86に入射し、他の一部の光が共通受光光学系54Sから出射して車両の外部に照射される。このため、共通受光光学系54Sから出射する光は、合成光学系55から出射する光DLR,DLG,DLBの一部であり、以下では、この光についても光DLR,DLG,DLBと表す。本実施形態の分光部80Rにおける光の分離比は、一定とされている。
【0145】
光学フィルタ86は、複数の位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBのうち、いずれかの光を透過し、他の光を非透過とする光学素子である。本実施形態では、光学フィルタ86は、位相変調素子53Rから出射する第1の光DLRを透過し、位相変調素子53G,53Bから出射する光DLG,DLBを非透過とする。このような光学フィルタ86として、例えば、上記の第1光学素子55fと同様の波長選択フィルタを挙げることができる。
【0146】
フーリエ変換レンズ81Sは、光学フィルタ86を透過した第1の光DLRを結像するレンズである。本実施形態のフーリエ変換レンズ81Sは、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。
【0147】
イメージセンサ82Sは、受光面で受光した光を電気信号に変換して出力する光学素子であり、光を受光する複数の受光部を有し、受光面に入射する光を二次元画像として制御部71に出力する。イメージセンサ82Sは、受光面がフーリエ変換レンズ81Sの焦点または焦点近傍に位置するように配置され、フーリエ変換レンズ81Sによって結像される光を受光する。このように分光部80Sで分離された第1の光DLRの一部がイメージセンサ82Sで受光され、第1の光DLRの他の一部が車外に出射する。このため、イメージセンサ82Sで受光される光の波長帯域は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射して分光部80Sで分離された他の一部の光DLR,DLG,DLBの波長帯域の一部である。
【0148】
本実施形態では、目標画像生成部73は、前照灯1から投影させる目標画像の赤色成分の画像である第1目標画像を算出し、制御部71における位相分布生成処理は、出射する光の一部がイメージセンサ82Sで受光される位相変調素子53Rに対して行われる。制御部71は、上記第3実施形態の位相分布生成処理と同様にして、位相変調素子53Rに対する第1目標位相分布を算出し、この第1目標位相分布から他の位相変調素子53G,53Bに対する目標位相分布を算出する。例えば、制御部71は、上記第3実施形態と同様の補正を第1目標位相分布に施して、他の位相変調素子53G,53Bに対する目標位相分布を算出する。
【0149】
制御部71は、算出される第1目標位相分布に基づいて位相変調素子53Rを制御し、算出される第2目標位相分布に基づいて位相変調素子53Gを制御し、算出される第3目標位相分布に基づいて位相変調素子53Bを制御する。そして、これら位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBが車両の外部に照射される。
【0150】
本実施形態の前照灯1では、上記のように、複数の位相変調素子53R,53G,53Bから互いに波長帯域の異なる光が出射する。このため、本実施形態の前照灯1は、こられの光が合成された光によって、所望の色の画像を投影し得る。
【0151】
また、本実施形態の前照灯1では、上記のように、制御部71は、複数の位相変調素子53R,53G,53Bのうち位相変調素子53Rに対する第1目標位相分布を位相分布生成処理によって算出し、この第1目標位相分布から他の位相変調素子53G,53Bに対する目標位相分布を算出する。このため、本実施形態の前照灯1は、上記第3実施形態と同様に、複数のイメージセンサを備えなくても複数の位相変調素子のそれぞれに対する目標位相分布を算出することができ、前照灯1を簡易な構成とし得る。
【0152】
また、本実施形態の前照灯1では、光学フィルタ86には、分光部80Sで分離された一部の光が入射する。このため、分光部80Sで分離された他の一部の光の波長帯域は位相変調部53から出射する光の波長帯域と同じとなるため、投影する画像の色味が変化することを抑制し得る。
【0153】
また、本実施形態の前照灯1では、制御部71は、上記第3実施形態と同様の補正を第1目標位相分布に施して、他の位相変調素子53G,53Bに対する目標位相分布を算出する。このため、本実施形態の前照灯1は、上記第3実施形態と同様に、光DLR,DLG,DLBが合成された光によって投影される目標画像に色のにじみが生じることを抑制し得る。
【0154】
なお、本実施形態では、分光部80Gで分離された一部の光が入射する光学フィルタ86を例に説明した。しかし、分光部80Gで分離された一部の光が光学フィルタ86に入射し、光学フィルタ86を透過した光がイメージセンサ82Sで受光されれば良い。例えば、光学フィルタ86は、フーリエ変換レンズ81Sから出射する光が光学フィルタ86に入射するように配置されても良い。
【0155】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図13を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0156】
図13は、本発明の第5実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。なお、図13では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー59等の記載が省略されている。図13に示すように、本実施形態の位相変調部53は、3つの位相変調素子53R,53G,53Bに替わって、1つの位相変調素子53Sを備える点において、第1実施形態の位相変調部53と異なる。また、本実施形態の光学系ユニット50は、第1受光光学系54R、第2受光光学系54G、及び第3受光光学系54Bに替わって、共通受光光学系54Sを備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と異なる。
【0157】
本実施形態では、位相変調素子53Sの構成は第1実施形態の位相変調素子53R,53G,53Bと同様の構成とされる。この位相変調素子53Sには、合成光学系55から出射する光が入射する。具体的には、発光素子51Rから出射するレーザ光は、コリメートレンズ52Rでコリメートされ、合成光学系55の第1光学素子55f及び第2光学素子55sを透過して、位相変調素子53Sに入射する。発光素子51Gから出射するレーザ光は、コリメートレンズ52Gでコリメートされ、合成光学系55の第1光学素子55fで反射され、第2光学素子55sを透過して、位相変調素子53Sに入射する。発光素子51Bから出射するレーザ光は、コリメートレンズ52Bでコリメートされ、合成光学系55の第2光学素子55sで反射されて、位相変調素子53Sに入射する。なお、これら発光素子51R,51G,51Bから出射するレーザ光は、位相変調素子53Sに入射すれば良く、合成光学系55の構成は限定されない。例えば、これらレーザ光は、合成光学系55を介さずに位相変調素子53Sに入射されても良い。つまり、発光素子51R,51G,51Bから出射するレーザ光が合成光学系55を介さずに位相変調素子53Sに入射するように、発光素子51R,51G,51B、コリメートレンズ52R,52G,52B、及び位相変調素子53Sが配置されても良い。
【0158】
本実施形態では、発光素子51R,51G,51Bに供給される電力が調整されて、これら発光素子51R,51G,51Bごとに交互にレーザ光が出射される。つまり、発光素子51Rがレーザ光を出射しているときは発光素子51Gと発光素子51Bはレーザ光を非出射とし、発光素子51Gがレーザ光を出射しているときは発光素子51Rと発光素子51Bはレーザ光を非出射とし、発光素子51Bがレーザ光を出射しているときは発光素子51Rと発光素子51Gはレーザ光を非出射とする。そして、このような発光素子51R,51G,51Bごとのレーザ光の出射が順次切り換えられる。このため、これら発光素子51R,51G,51Bから出射する互いに波長帯域の異なるレーザ光が順次位相変調素子53Sに入射し、位相変調素子53Sは入射するレーザ光の位相分布を変調した光を順次出射する。このため、位相変調素子53Sは発光素子51R,51G,51Bごとのレーザ光の出射の切り換りに同期して互いに波長帯域の異なる光を順次出射する。
【0159】
本実施形態の共通受光光学系54Sは、分光部80Sと、フーリエ変換レンズ81Sと、イメージセンサ82Sとを備える。分光部80Sは、位相変調素子53Sから出射する光を一部の光と他の一部の光に分離する。分光部80Sで分離された一部の光がフーリエ変換レンズ81Sに入射し、他の一部の光が共通受光光学系54Sから出射して車両の外部に照射される。本実施形態の分光部80Sにおける光の分離比は、一定とされている。
【0160】
フーリエ変換レンズ81Sは、分光部80Gで分離された一部の光を結像するレンズである。本実施形態のフーリエ変換レンズ81Sは、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。
【0161】
イメージセンサ82Sは、受光面で受光した光を電気信号に変換して出力する光学素子であり、光を受光する複数の受光部を有し、受光面に入射する光を二次元画像として制御部71に出力する。イメージセンサ82Sは、受光面がフーリエ変換レンズ81Sの焦点または焦点近傍に位置するように配置され、フーリエ変換レンズ81Sによって結像される光を受光する。このように位相変調素子53Sから出射する光のうちの分光部80Gで分離された一部の光がイメージセンサ82Sで受光される。このため、イメージセンサ82Sで受光される光の波長帯域は、位相変調素子53R,53G,53Bから出射する光DLR,DLG,DLBの波長帯域の一部である。
【0162】
次に、本実施形態の位相変調素子53Sからの光の出射について説明する。具体的には、所定の配光パターンであるハイビームの配光パターンの光を前照灯1が出射する場合を例に説明する。
【0163】
本実施形態では、制御部71は、上記のような発光素子51R,51G,51Bごとのレーザ光の出射の切り換りに同期して位相変調素子53Sを制御する。このため、この位相変調素子53Sは、入射するレーザ光の波長帯域に応じて当該レーザ光の位相分布を変調し、位相分布が変調された光が位相変調素子53Sから出射される。また、制御部71は、上記第1実施形態と同様に、記憶部75に格納されるハイビームの配光パターンの画像に対応する所定の光の位相分布に基づいて、位相変調素子53Sを制御する。具体的には、制御部71は、位相変調素子53Sに発光素子51Rから出射するレーザ光が入射する場合には、位相変調素子53Sから出射する光の位相分布が上記第1基準位相分布となるように位相変調素子53Sを制御する。このため、位相変調素子53Sに発光素子51Rから出射するレーザ光が入射する場合、ハイビームの配光パターンの画像における赤色成分を抜き出した画像を投影するような配光パターンの光が位相変調素子53Sから射する。また、制御部71は、位相変調素子53Sに発光素子51Gから出射するレーザ光が入射する場合には、位相変調素子53Sから出射する光の位相分布が上記第2基準位相分布となるように位相変調素子53Sを制御する。このため、位相変調素子53Sに発光素子51Gから出射するレーザ光が入射する場合、ハイビームの配光パターンの画像における緑色成分を抜き出した画像を投影するような配光パターンの光が位相変調素子53Sから射する。また、制御部71は、位相変調素子53Sに発光素子51Bから出射するレーザ光が入射する場合には、位相変調素子53Sから出射する光の位相分布が上記第3基準位相分布となるように位相変調素子53Sを制御する。このため、位相変調素子53Sに発光素子51Bから出射するレーザ光が入射する場合、ハイビームの配光パターンの画像における青色成分を抜き出した画像を投影するような配光パターンの光が位相変調素子53Sから射する。
【0164】
位相変調素子53Sは、このように入射するレーザ光の波長帯域に応じて当該レーザ光の位相分布を変調することで、ハイビームの赤色成分の光と、ハイビームの緑色成分の光と、ハイビームの青色成分の光とを順次出射する。つまり、位相変調素子53Sは、上記第1実施形態における第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBを順次出射する。これら光DLR,DLG,DLBは、それぞれカバー59の開口59Hから出射し、フロントカバー12を介して前照灯1の外部に順次照射される。このとき、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBは、車両から所定の距離離れた焦点位置において、それぞれの光が照射される領域が互いに重なるように照射される。この焦点位置は、例えば車両から25m離れた位置とされる。なお、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBは、この焦点位置においてそれぞれの光DLR,DLG,DLBが照射される領域の外形が概ね一致するように照射されることが好ましい。また、本実施形態では、発光素子51R,51G,51Bから出射されるレーザ光のそれぞれの出射時間の長さは概ね同じとされるため、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さも概ね同じとなる。
【0165】
ところで、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。本実施形態において、発光素子51Rがレーザ光を出射してから再度発光素子51Rがレーザ光を出射するまでの時間が人の視覚の時間分解能よりも短くされた場合、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で位相変調素子53Sから出射する光DLR,DLG,DLBが繰り返し照射され、赤色の第1の光DLRと緑色の第2の光DLGと青色の第3の光DLBとが残像現象によって合成される。上記のように、この光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さは概ね同じであるととともに、発光素子51R,51G,51Bから出射されるレーザ光の強度は、所定の強度とされる。このため、残像現象によって合成される光の色は、第1実施形態における光DLR,DLG,DLBが合成された光と同じ白色となる。また、位相変調素子53Sから出射するこれら光DLR,DLG,DLBの位相分布は、ハイビームの配光パターンPHの画像に対応する基準位相分布となるようにされているため、白色のハイビームの配光パターンPHの光が前照灯1から出射する。
【0166】
発光素子51R,51G,51Bからレーザ光を繰り返し出射する周期は、残像現象によって合成される光のちらつきを感じることを抑制する観点から、1/15s以下とされることが好ましい。人の視覚の時間分解能は概ね1/30sである。車両用灯具であれば、光の出射の周期が2倍程度であれば光のちらつきを感じることを抑制できる。この周期が1/30s以下であれば、人の視覚の時間分解能を概ね超える。従って、光のちらつきを感じることをより抑制できる。また、光のちらつきを感じることをより抑制する観点では、この周期は1/60s以下であることが好ましい。
【0167】
次に、本実施形態における制御部71の位相分布生成処理について説明する。なお、本実施形態における位相分布生成処理における制御部の制御フローチャートは、第1実施形態と同様であるため、本実施形態における位相分布生成処理については図8を参照して説明する。また、第1実施形態における位相分布生成処理と同一または同様の処理については、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0168】
本実施形態では、制御部71は、位相変調素子53Sから光が出射されるタイミングに応じて、位相分布生成処理における第1画像取得処理及び第3画像生成処理を行う点で、上記第1実施形態における制御部71と異なる。
【0169】
本実施形態では、目標画像生成部73は、上記第1実施形態と同様に、前照灯1から投影させる目標画像の赤色成分の画像である第1目標画像、緑色成分の画像である第2目標画像、青色成分の画像である第3目標画像をそれぞれ算出する。制御部71における位相分布生成処理は、発光素子51R,51G,51Bごとに対して行われる。具体的には、制御部71は、発光素子51Rに対する位相分布生成処理における第1画像取得処理及び第3画像生成処理を、発光素子51Rからの光が位相変調素子53Sに入射しているときに行う。このため、位相変調素子53Rから出射してイメージセンサ82Rが受光する光の波長帯域は、発光素子51Rから出射する光の波長帯域と同じとなる。このため、制御部71がイメージセンサ82Sによって取得する第1画像及び第3画像は、それぞれ発光素子51Gから出射する光に対応する。制御部71は、このようにして取得される第1画像及び第3画像を用いて、発光素子51Rに対する目標位相分布を算出する。また、制御部71は、発光素子51Gに対する位相分布生成処理における第1画像取得処理及び第3画像生成処理を、発光素子51Gからの光が位相変調素子53Sに入射しているときに行う。このため、位相変調素子53Sから出射してイメージセンサ82Sが受光する光の波長帯域は、発光素子51Gから出射する光の波長帯域と同じとなり、イメージセンサ82Sによって取得される第1画像及び第3画像は、それぞれ発光素子51Gから出射する光に対応する。制御部71は、このようにして取得される第1画像及び第3画像を用いて、発光素子51Gに対する目標位相分布を算出する。また、制御部71は、発光素子51Bに対する位相分布生成処理における第1画像取得処理及び第3画像生成処理を、発光素子51Bからの光が位相変調素子53Sに入射しているときに行う。このため、位相変調素子53Sから出射してイメージセンサ82Sが受光する光の波長帯域は、発光素子51Gから出射する光の波長帯域と同じとなり、イメージセンサ82Sによって取得される第1画像及び第3画像は、それぞれ発光素子51Bから出射する光に対応する。制御部71は、このようにして取得される第1画像及び第3画像を用いて、発光素子51Gに対する目標位相分布を算出する。
【0170】
制御部71は、それぞれの発光素子51R,51G,51Bに対する位相分布生成処理を同時に行う。本実施形態では、制御部71は、位相変調素子53Sに入射する光の波長帯域に応じて、これら発光素子51R,51G,51Bに対する位相分布生成処理を進める。具体的には、制御部71は、発光素子51Rからの光が位相変調素子53Sに入射しているときに発光素子51Rに対する位相分布生成処理における第1画像取得処理または第3画像生成処理を行う。また、制御部71は、発光素子51Gからの光が位相変調素子53Sに入射しているときに発光素子51Gに対する位相分布生成処理における第1画像取得処理または第3画像生成処理を行う。また、制御部71は、発光素子51Bからの光が位相変調素子53Sに入射しているときに発光素子51Bに対する位相分布生成処理における第1画像取得処理または第3画像生成処理を行う。つまり、制御部71は、イメージセンサ82Sが受光する光の切り換りに応じてイメージセンサ82Sから画像を取得するため、それぞれの発光素子51R,51G,51Bに対する目標位相分布を算出するまでにかかる時間を短くし得る。なお、それぞれの発光素子51R,51G,51Bに対する目標位相分布を順次算出しても良い。例えば、発光素子51Rに対する目標位相分布を算出した後、発光素子51Gに対する目標位相分布を算出し、更にその後に発光素子51Bに対する目標位相分布を算出しても良い。
【0171】
制御部71は、算出したそれぞれの発光素子51R,51G,51Bに対する目標位相分布に基づいて、位相変調素子53Sを制御する。具体的には、制御部71は、位相変調素子53Sに発光素子51Rからの光が入射する場合、位相変調素子53Sから出射する光の位相分布が算出した発光素子51Rに対する目標位相分布となるように位相変調素子53Sを制御する。このように制御された位相変調素子53Sから目標画像の赤色成分の光である第1の光DLRが出射される。また、制御部71は、位相変調素子53Sに発光素子51Gからの光が入射する場合、位相変調素子53Sから出射する光の位相分布が算出した発光素子51Gに対する目標位相分布となるように位相変調素子53Sを制御する。このように制御された位相変調素子53Sから目標画像の緑色成分の光である第2の光DLGが出射される。また、制御部71は、位相変調素子53Sに発光素子51Bからの光が入射する場合、位相変調素子53Sから出射する光の位相分布が算出した発光素子51Bに対する目標位相分布となるように位相変調素子53Sを制御する。このように制御された位相変調素子53Sから目標画像の青色成分の光である第3の光DLBが出射される。そして、これら光DLR,DLG,DLBが残像現象によって合成され、前照灯1によって目標画像が投影される。
【0172】
本実施形態の前照灯1では、上記のように、3つ発光素子51R,51G,51Bからの光が入射する位相変調素子53Sから順次波長帯域の異なる光DLR,DLG,DLBが出射する。上記のように、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で波長帯域の異なる光つまり色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像現象によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。このため、人の視覚の時間分解能よりも短い周期でこの位相変調素子53Sから波長帯域の異なる光DLR,DLG,DLBが出射される場合には、この位相変調素子53Sから出射する光を人の視覚的に合成させることができる。従って、本実施形態の前照灯1は、この位相変調素子53Sから出射する光DLR,DLG,DLBによって所望の色の画像を投影し得る。
【0173】
また、本実施形態の前照灯1では、3つ発光素子51R,51G,51Bから出射する光の位相分布を変調する位相変調素子を共通の位相変調素子とすることができるため、部品点数を減少し得る。
【0174】
また、本実施形態の前照灯1では、波長帯域の異なる光を出射する3つの発光素子51R,51G,51Bに対してイメージセンサ82Sが設けられ、これら発光素子51R,51G,51Bごとに目標位相分布が算出される。このため、制御部71は、3つ発光素子51R,51G,51Bから出射する光が入射する共通の位相変調素子53Sを、当該位相変調素子53Sに入射する光の波長帯域に応じて制御することができる。このため、本実施形態の前照灯1は、投影される画像に色のにじみが生じることを抑制し得る。また、本実施形態の前照灯1は、複数の色から構成される画像を投影し得る。
【0175】
なお、本実施形態では、3つの発光素子51R,51G,51Bが、これら発光素子51R,51G,51Bごとに交互に光を出射していた。しかし、少なくとも2つの発光素子が、当該発光素子ごとに交互に光を出射していれば良い。この場合、少なくとも2つの発光素子から出射する光が入射する位相変調素子から出射する光は残像現象によって合成され、この残像現象によって合成される光と他の位相変調素子から出射する光とが合成されて、所望の画像が投影される。また、この場合、少なくとも2つの発光素子から出射する光が入射する位相変調素子に対してイメージセンサが設けられることで、複数の色から構成される画像を投影し得る。
【0176】
また、本実施形態では、制御部71における位相分布生成処理は、それぞれの発光素子51R,51G,51Bに対して行われた。しかし、制御部71における位相分布生成処理は、少なくとも1つの発光素子に対して行われていれば良い。この場合、制御部71は、位相分布生成処理によって算出される目標位相分布から他の発光素子に対する目標位相分布を算出する。例えば、制御部71は、位相分布生成処理によって算出される目標位相分布に、上記第3実施形態と同様の補正を施して、他の発光素子に対する目標位相分布を算出しても良い。
【0177】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0178】
例えば、上記実施形態では、車両の前方に画像を投影する前照灯1を例に説明したが、車両用灯具が投影する画像は特に限定されない。
【0179】
また、上記実施形態では、位相分布生成処理は、第1制御処理と、第1画像取得処理と、第2画像算出処理と、第2位相分布算出処理と、第2制御処理と、第3画像取得処理と、第4画像算出処理と、第3位相分布算出処理と、入れ換え処理と、を含んでいた。しかし、位相分布生成処理は、これらの処理以外の処理を含んでいても良い。例えば、第2画像算出処理によって算出された第2画像と目標画像とを比較して、第2画像と目標画像との差異が所定の範囲内かどうかを判定する判定処理を含んでいても良い。この場合、制御部71は、この差異が所定の範囲内の場合に位相分布生成処理を終了することとしても良く、位相分布生成処理における演算時間を短縮し得る。
【0180】
また、上記実施形態では、目標画像は、所定の配光パターンのうち一部の領域が暗くされた配光パターンの画像とされた。この場合、制御部71は、位相分布生成処理の1サイクル目の第1画像を記憶部75に格納されている所定の配光パターンの画像とし、位相分布生成処理の1サイクル目の第1制御処理と第1画像取得処理とを省略して位相分布生成処理を行っても良い。このような構成によれば、位相分布生成処理における演算時間を短縮し得る。また、この場合、目標画像は所定の配光パターンの画像と大きく異なるものではないため、位相分布生成処理が上記の判定処理を更に含むことで、位相分布生成処理における演算が収束するまでのサイクル数を低減し得る。このため、位相分布生成処理における演算時間を短縮し得る。
【0181】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、発光素子51R,51G,51Bが互いに波長帯域の異なる光を出射し、位相変調素子53R,53G,53Bのそれぞれに対してイメージセンサ82R,82G,82Bが設けられていた。しかし、位相変調素子53R,53G,53Bのうち少なくとも1つに対して受光光学系が設けられても良い。このような構成によれば、所望の色の画像を投影し得る。なお、この場合、対応する受光光学系が設けられない位相変調素子に対する目標位相分布は、例えば、上記第3実施形態と同様にして、位相分布生成処理によって算出される目標位相分布から算出する。また、イメージセンサは、互いに波長帯域の異なる光を出射する発光素子51R,51G,51Bのうち少なくとも2つの発光素子にそれぞれ対応する少なくとも2つの位相変調素子ごとに設けられても良い。このような構成によれば、複数の色から構成される画像を投影し得る。なお、この場合、対応する受光光学系が設けられない位相変調素子に対する目標位相分布は、例えば、上記第3実施形態と同様にして、位相分布生成処理によって算出される目標位相分布から算出する。
【0182】
また、上記実施形態では、位相変調素子53R,53G,53B,53Sは、反射型の位相変調素子とされた。しかし、位相変調素子は、二次元配列された複数のドットを含み、入射する前記光の位相を前記複数のドットごとに変調することができれば良い。例えば、位相変調素子は、液晶パネルであるLCD(Liquid Crystal display)や、シリコン基板上に複数の反射体が形成されたGLV(Grating Light Valve)とされも良い。LCDは、透過型の位相変調素子である。このLCDは、上記の反射型の液晶パネルであるLCOSと同様に、各ドットにおいて液晶層を挟み込む一対の電極の間に印加される電圧を制御することで、各ドットから出射する光の位相の変化量が調整され、出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。なお、この一対の電極は透明電極とされる。また、GLVは、反射型の位相変調素子である。このGLVは、反射体のたわみを電気的に制御することによって、入射する光を回折して出射するとともに出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。
【0183】
また、上記実施形態では、複数の変調部を有する位相変調素子53R,53G,53B,53Sを例に説明した。しかし、変調部の数、大きさ、外形等は特に限定されるものではない。例えば、位相変調素子は1つの変調部を有し、この1つの変調部によって入射する光の位相分布を変調させても良い。
【0184】
また、上記第1実施形態から第4実施形態では、複数の発光素子とそれぞれの発光素子に一対一で対応する複数の位相変調素子とを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、複数の位相変調素子は、一体に形成されても良い。このような位相変調素子の構成として、位相変調素子が複数の発光素子のそれぞれに一対一で対応する複数の領域に分割される構成を挙げることができる。このような構成の位相変調素子は、それぞれの領域で当該領域に対応する発光素子から出射する光の位相分布を変調する。このような車両用灯具によれば、複数の位相変調素子が一体に形成されるため、部品点数を減少し得る。
【0185】
また、上記実施形態では、第1光学素子55fは、第1の光DLRを透過すると共に第2の光DLGを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGとを合成し、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGを透過すると共に第3の光DLBを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成した。しかし、例えば、第1光学素子55fにおいて第3の光DLBと第2の光DLGとが合成され、第2光学素子55sにおいて第1光学素子55fで合成された第3の光DLB及び第2の光DLGと第1の光DLRとが合成される構成とされても良い。この場合、上記実施形態において、発光素子51R、コリメートレンズ52R、及び位相変調素子53Rと、発光素子51B、コリメートレンズ52B、及び位相変調素子53Bとの位置が入れ替わる。また、上記実施形態において、所定の波長帯域の光を透過し、他の波長帯域の光を反射するバンドパスフィルタが第1光学素子55fや第2光学素子55sに用いられても良い。また、上記実施形態では、合成光学系55は、それぞれの位相変調素子から出射する光を合成すれば良く、上記実施形態の構成や上記構成に限定されない。
【0186】
また、上記実施形態では、光学系ユニット50は、第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する合成光学系55を備えていた。しかし、光学系ユニット50は、合成光学系55を備えていなくても良い。
【0187】
また、上記実施形態では、光の分離比が一定とされた分光部80R,80G,80B,80Sを例に説明した。しかし、分光部は、光の分離比を変化させることができるものであっても良い。分離比が可変の分光部としては、例えば入射角度を変えることで分離比を変化させることができるビームスプリッタと当該ビームスプリッタを回動させるアクチュエータとを有する装置が挙げられる。このような構成の場合、位相変調生成処理の少なくとも第3画像取得処理の際に、車両の外部に出射される光の強度が低下するように、分光部は分離比を変更しても良い。つまり、光が分光部で一部の光と他の一部の光とに分離され、この一部の光がイメージセンサで受光される場合、少なくとも第3画像取得処理の際に、分光部は、この他の一部の光に対するこの一部の光の分離比を、第1画像取得処理の際におけるこの分離比よりも大きくしても良い。この場合、車両の外部に出射される光の強度が低下され、目標画像と大きく異なる画像が目立ちにくくなり、運転者や車外の人間等が違和感を覚えることを抑制し得る。また、上記のように分光部が分離比を変更可能とされる場合、光源は、この分離比の変化に応じて出射する光の強度を調節することとしても良い。上記の分離比が大きくなることで、イメージセンサで受光される光の強度が増加される。しかし、この光源は、この分離比の変化に応じて出射する光の強度を調節する。このため、分離比の変化に応じてイメージセンサで受光される光の強度が増加することを抑制でき、イメージセンサに不具合が生じることを抑制し得る。なお、分光部の光の分離比が一定とされる場合であっても、位相変調生成処理の少なくとも第3画像取得処理の際に、光源は出射する光の強度を低下させても良い。この場合でも、目標画像と大きく異なる画像が目立ちにくくなり、運転者や車外の人間等が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0188】
また、上記実施形態では、目標画像生成部73によって前照灯1が投影する目標画像が算出されていた。しかし、目標画像は予め記憶部75等に格納され、制御部71がこの目標画像を読みだしても良い。また、目標画像は、外部、例えば車両の制御装置等から制御部71に入力されても良い。
【0189】
また、上記実施形態では、灯具ユニット20は光学系ユニット50から出射する光が入射する結像レンズを含む結像レンズ系を備えていなかった。しかし、灯具ユニット20は、結像レンズ系を備え、光学系ユニット50から出射する光をこの結像レンズ系を介して出射させても良い。このような構成にすることで、画像を大きく投影し易くし得る。なお、ここでの広いとは、車両から所定の距離離れた鉛直面上に形成される配光パターンを比べた際に広いことを表している。
【0190】
また、上記実施形態では、複数の発光素子を有する光源と複数の位相変調素子を有する位相変調部とを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、光学系ユニットは、少なくとも1つ発光素子を有する光源と、少なくとも1つの位相変調素子を有する位相変調部とを備えれば良い。例えば、光学系ユニットは、白色のレーザ光を出射する1つの発光素子と、この発光素子から出射する白色のレーザ光が入射する1つの位相変調素子とを備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明によれば、所望の画像を投影するまでの時間を短縮し得る車両用灯具が提供され、自動車等の車両用灯具の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0192】
1・・・前照灯(車両用灯具)
10・・・筐体
20・・・灯具ユニット
50・・・光学系ユニット
51・・・光源
51R,51G,51B・・・発光素子
51T・・・テスト用発光素子
53・・・位相変調部
53R,53G,53B,53S・・・位相変調素子
53T・・・テスト用位相変調素子
54R,54G,54B・・・受光光学系
55・・・合成光学系
55f・・・第1光学素子
55s・・・第2光学素子
71・・・制御部
80R,80G,80B,80S・・・分光部
81R,81G,81B,81S,81T・・・フーリエ変換レンズ
82R,82G,82B,82S,82T・・・イメージセンサ
85・・・投影レンズ
図1
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