特開2020-45502(P2020-45502A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2020-45502シリコーンゴム表面の光硬質化方法およびシリコーンゴム成型体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-45502(P2020-45502A)
(43)【公開日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】シリコーンゴム表面の光硬質化方法およびシリコーンゴム成型体
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20200303BHJP
【FI】
   C08J7/00 304
   C08J7/00CFH
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-237645(P2019-237645)
(22)【出願日】2019年12月27日
(62)【分割の表示】特願2016-41956(P2016-41956)の分割
【原出願日】2016年3月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】木村 恒雄
【テーマコード(参考)】
4F073
【Fターム(参考)】
4F073AA07
4F073BA33
4F073BB01
4F073CA46
4F073CA72
4F073GA01
4F073HA11
4F073HA12
(57)【要約】
【課題】 シリコーンゴム表面を光沢変化なくゴム質感を残したまま、耐摩耗性表面へと硬質化し得、さらに、ゴムの耐油浸透性をも向上させ得るシリコーンゴム表面の光硬質化方法および硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 シリコーンゴム成型体の表面に、例えば、キセノンエキシマランプ等によって、波長200nm以下の真空紫外光を照射エネルギー10〜3,000mJ/cm2の範囲で照射し、照射した部分に光酸化反応による酸化層を形成して硬質化する工程(A)を備えるシリコーンゴム表面の光硬質化方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム成型体の表面における照射される部分の全面に波長200nm以下の真空紫外光を、不活性ガス雰囲気下または真空下で照射エネルギー400〜3,000mJ/cm2の範囲で照射し、照射した部分に光酸化反応による酸化層を形成して硬質化する工程(A)を備え、
前記真空紫外光の光源が、キセノンエキシマランプであることを特徴とするシリコーンゴム表面の光硬質化方法。
【請求項2】
前記照射エネルギーが、400〜2,500mJ/cm2である請求項1記載のシリコーンゴム表面の光硬質化方法。
【請求項3】
酸素体積比で5vol%以下の雰囲気下で前記照射が行われる請求項1または2記載のシリコーンゴム表面の光硬質化方法。
【請求項4】
前記工程(A)で光照射された前記シリコーンゴム成型体を、150℃以下の温度で熟成する工程(B)を備える請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーンゴム表面の光硬質化方法。
【請求項5】
シリコーンゴム成型体の表面における照射される部分の全面に波長200nm以下の真空紫外光を、不活性ガス雰囲気下または真空下で照射エネルギー400〜3,000mJ/cm2の範囲で照射し、照射した部分に光酸化反応による酸化層を形成して硬質化する工程(A)を備え、
前記真空紫外光の光源が、キセノンエキシマランプであることを特徴とする硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体の製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)で光照射された前記シリコーンゴム成型体を、150℃以下の温度で熟成する工程(B)を備える請求項5記載の硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム表面の光硬質化方法およびシリコーンゴム成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーンゴム成型物品では、ゴム表面に文字、文様、刻印、着色、印刷などを施して意匠性を付与することが行われている。これら意匠性表面は、衣服や指などとの接触にさらされて摩耗し、かすれて判読できなくなる等で意匠性が損なわれるという問題があった。
このため、シリコーンゴム表面の耐摩耗性を向上させるべく、ゴム表面に、低摩擦性を付与できる硬質シリコーンコーティングを施すことが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、フェニルブロックポリマーに、少量のジメチルポリシロキサンを添加した表面滑り性を有する塗膜が開示されているが、この塗膜には、ゴムに追従できずにクラックを生じるという問題がある。
また、特許文献2〜4では、高強度でかつ表面滑り性の塗膜を与える組成物として、R3SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノシロキサンと官能基含有シリル基で分子鎖末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサンの縮合物とをベースにした縮合硬化型組成物が開示されているものの、塗膜の表面耐摩耗性については言及されていない。
なお、特許文献2の組成物において、湿式シリカ、乾式シリカ等の充填剤添加による表面凹凸付与、フェニルブロックポリマー添加による表面硬質化、チタン酸エステル添加による表面凹凸化等を検討したが、いずれも表面の耐摩耗性の効果は得られず、表面粘着やクラック発生等の不具合を生じてしまうことがわかった。
【0004】
このように、上記各特許文献のような、シリコーンコーティングを塗工する方法では、光沢のある表面外観となってしまい、ゴム質感や手触りを損なってしまうばかりでなく、硬質シリコーンコーティングでは伸びをほとんど有しないため、成型品、ガスケットおよびパッキン等の変形や、伸びに追従できず、表面割れやクラックが生じてしまう。
また、コーティングでは、煩雑な工程が必要となるうえに、樹脂基材と一体成型されたシリコーンゴム成型物では熱による樹脂の変質が問題となる。
しかも、付加型コーティングでは成型品由来、環境由来の付加毒の影響による硬化不良、表面べたつきが発生する虞もあった。
さらに、シリコーンゴムでは、汗の成分である水分、塩分、油分等がシリコーンゴムに浸透、透過し、接点障害やタッチ感の低下を引き起こすことが問題になる場合もあるが、シリコーンコーティングによる保護層では、これらの問題を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−100667号公報
【特許文献2】特開2004−143331号公報
【特許文献3】特許第5521905号公報
【特許文献4】特許第5644556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、シリコーンゴム表面を光沢変化なくゴム質感を残したまま、耐摩耗性表面へと硬質化し得、さらに、ゴムの耐油浸透性をも向上させ得るシリコーンゴム表面の光硬質化方法および硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シリコーンゴムに対して真空紫外光を所定の照射エネルギーにて照射することで、シリコーンゴム表面に光酸化反応による酸化層が形成され、ゴム表面が光沢の上昇なくゴムのタック等の質感や手触りなど維持したまま硬質化できるのみならず、硬質化したゴム表面が優れた耐摩耗性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. シリコーンゴム成型体の表面に波長200nm以下の真空紫外光を照射エネルギー10〜3,000mJ/cm2の範囲で照射し、照射した部分に光酸化反応による酸化層を形成して硬質化する工程(A)を備えることを特徴とするシリコーンゴム表面の光硬質化方法、
2. 前記真空紫外光を、不活性ガス雰囲気下で照射する1のシリコーンゴム表面の光硬質化方法、
3. 前記真空紫外光の光源が、キセノンエキシマランプである1または2のシリコーンゴム表面の光硬質化方法、
4. 前記工程(A)で光照射された前記シリコーンゴム成型体を、150℃以下の温度で熟成する工程(B)を備える1〜3のいずれかのシリコーンゴム表面の光硬質化方法、
5. シリコーンゴム成型体の表面に波長200nm以下の真空紫外光を照射エネルギー10〜3,000mJ/cm2の範囲で照射し、照射した部分に光酸化反応による酸化層を形成して硬質化する工程(A)を備えることを特徴とする硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体の製造方法、
6. 前記工程(A)で光照射された前記シリコーンゴム成型体を、150℃以下の温度で加熱する工程(B)を備える5の硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体の製造方法、
7. その表面の少なくとも一部に光酸化層を有するシリコーンゴム成型体
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリコーンゴム表面の光硬質化方法によれば、シリコーンゴム成型体に、指触感の変化、光沢の上昇、およびクラックのない耐摩耗性表面を簡便に形成することができる。
本発明の方法で得られた硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体は、各種電子機器の保護カバー、携帯電話、スマートフォンやリモコン等のキーパッド、電子写真複写機やプリンター等のシリコーンゴム製ロールなどに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の光硬質化方法の一実施形態に係る概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るシリコーンゴム表面の光硬質化方法は、シリコーンゴム成型体の表面に波長200nm以下の真空紫外光を照射エネルギー10〜3,000mJ/cm2の範囲で照射し、照射した部分に光酸化反応による酸化層を形成して硬質化する工程(A)を備える。
このように、波長200nm以下の真空紫外光による高エネルギー線を照射することで、シリコーンゴム表面分子中の側鎖有機基の大部分が切断されるうえ、酸素を介してSi−O−Si結合が形成されてゴム表面が硬質化されて、耐摩耗性が向上すると考えられる。
【0012】
本発明で用いられるシリコーンゴムとしては、特に限定されるものではなく、その具体例としては、従来各種シリコーンゴム成型品の成型に使用されている過酸化物加硫によるミラブル型シリコーンゴム、ヒドロシリル化架橋による射出成型用液状シリコーンゴム等が挙げられ、また成型体の形状も任意である。
シリコーンゴム表面の形状にも特に制限はなく、平面でも曲面でもよく、文字やイラスト等の刻印や印刷が施されていてもよい。このような意匠性を施した表面に対して、本発明の光硬質化を行うと、摩耗や傷付き等によりその意匠性が損なわれることが抑制されるため、特に有効である。
【0013】
真空紫外光の照射エネルギーは、上述したような光酸化反応を生じさせて酸化層を形成して表面を硬質化し、耐摩耗性を向上できる限り特に限定されるものではないが、十分な光酸化反応を生じさせて表面を硬質化させるとともに、過剰な光反応を抑制して、ゴム表面の光沢の上昇を抑え、また、ゴム質感の低下を防止するという観点から、10〜3,000mJ/cm2の範囲が好ましく、100〜2,500mJ/cm2がより好ましく、300〜2,500mJ/cm2がより一層好ましく、400〜2,500mJ/cm2がさらに好ましい。
真空紫外光の照射時間は、照射エネルギーの強度や、後述する酸化層の厚さ等によって変動するものであるため一概に規定することはできないが、上述した照射エネルギーの範囲であれば、通常、5秒から1時間であり、10秒〜30分が好ましい。
【0014】
真空紫外光を照射するための光源の具体例としては、キセノン(Xe)エキシマランプ(中心波長172nm)、Krエキシマランプ(146nm)、Arエキシマランプ(126nm)、ArBrエキシマランプ(165nm)、ArClエキシマランプ(175nm)、ArFエキシマランプ(193nm)、F2エキシマレーザー(153nm)、低圧水銀ランプ(185nm)、シンクロトロン放射光等が挙げられるが、なかでも汎用的に利用されているXeエキシマランプが好ましい。
【0015】
真空紫外光を照射する雰囲気や圧力範囲としては、上述したような光酸化反応を生じさせて酸化層を形成して表面を硬質化し、耐摩耗性を向上できる限り特に限定されるものではない。
照射雰囲気としては、大気(空気)下でも不活性ガス雰囲気下でもよいが、酸素存在下にて照射を行うと真空紫外光の強度が低下するため、不活性ガス雰囲気下が好ましい。また、酸素体積比でいうと、18vol%以下が好ましく、特に10vol%以下がより好ましく、5vol%以下がより一層好ましい。
照射時の圧力範囲としては、真空から常圧であればよいが、真空(減圧)とするには、真空ポンプなどの機器や設備が必要となるばかりでなく、工程も多くなることから、常圧が好ましい。
【0016】
シリコーンゴム成型体において、真空紫外光を照射する範囲は特に限定されるものではなく、成型体全面に照射しても、上述した意匠が施された特定の範囲のみに照射してもよい。
特定範囲のみに照射する場合は、照射が必要ない部分を公知のマスキング材にて適宜マスキングしてもよい。
【0017】
本発明の光硬質化方法で、シリコーンゴム成型体の表面に形成される酸化層の厚さは特に限定されるものではないが、ゴム表面に十分な耐摩耗性を付与するとともに、ゴム表面における光沢増加、割れやクラックの発生、ゴム触感の喪失等を防止するという観点から、0.1nm〜1μmが好ましく、0.2nm〜500nmがより好ましい。
なお、硬質化の指標としては、学振式摩耗試験機において、200g荷重の摩耗子先端面に幅20mm、長さ40mmのJIS L 0803に準拠したネル布を取付け、シリコーンゴム表面上を50mmの間を毎分30回で4,000往復させた際の摩耗前後での算術平均粗さの差(ΔRa)で表され、算術平均粗さの差(ΔRa)が、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。
【0018】
さらに、本発明の方法では、上述した工程(A)で光照射したシリコーンゴム成型体を熟成する工程(B)を備えていてもよい。
このように工程(A)後に熟成することで、SiOHなどの酸素含有末端同士の結合を促進させてSi−O−Si結合が形成されるため、より硬質化できる。
熟成温度としてはSiOHの結合が促進される範囲であれば、特に限定されるものではないが、20〜150℃の範囲が好適である。
熟成時間としても特に限定されるものではないが、上述した温度範囲であれば、10分から5時間程度であり、30分から2時間が好ましい。
熟成雰囲気としては、真空紫外光照射と同様であり、照射時の雰囲気下でもよいが、大気下が好ましい。
【0019】
次に、図面を参照しつつ、本発明の光硬質化方法の一実施形態を説明する。
図1に示されるように、シリコーンゴム成型体11の表面の一部に、波長200nm以下の真空紫外光12を照射する。
これにより、シリコーンゴム成型体11の真空紫外光照射表面にて光酸化反応が生じ、酸化層11Aが形成されるとともに耐摩耗性表面へと硬質化し、硬質化された表面を有するシリコーンゴム成型体11が得られる。
なお、真空紫外光の照射方向、照射部位、およびシリコーンゴム成型体の形状等は、上記実施形態のものに限られず、任意のものとすることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
液状シリコーンゴム(KET−6026−70A/B、信越化学工業(株)製)を用いてLIM成型を行い、厚さ2mm、150mm×150mm形状のシートRAを作製した。
次いで、窒素雰囲気下(酸素濃度1vol%以下)、キセノンエキシマランプ照射ユニット(SCQ05、ウシオ電機(株)製)を用いて中心波長172nmの真空紫外光を照射強度10mW/cm2、照射時間1分、照射エネルギー600mJ/cm2の条件で照射し、シリコーンゴムシートAを得た。
【0022】
[実施例2]
照射エネルギーを1,200mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴムシートBを得た。
【0023】
[実施例3]
照射エネルギーを2,400mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴムシートCを得た。
【0024】
[実施例4]
照射雰囲気を真空下(1.3kPa)とし、照射エネルギーを450mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴムシートDを得た。
【0025】
[実施例5]
実施例4で得られたシリコーンゴムシートDを、照射終了後、大気下で120℃のオーブンにて1時間加熱してシリコーンゴムシートEを得た。
【0026】
[比較例1]
照射エネルギーを3,600mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴムシートRBを得た。
【0027】
[比較例2]
シリコーンコーティング材(X−33−258、信越化学工業(株)製)をケイドライ 132−S(日本製紙クレシア(株)製)に含浸させ、実施例1と同様にして作製したシリコーンゴムRAに塗布し、温度25℃、相対湿度45%下で2日間硬化させ、シリコーンゴムシートRCを得た。
【0028】
[比較例3]
シリコーンコーティング材(X−33−258、信越化学工業(株)製)を、シリコーンコーティング材(X−93−1755−1、信越化学工業(株)製)に変更した以外は、比較例3と同様にしてシリコーンゴムシートRDを得た。
【0029】
上記実施例1〜5および比較例1〜3で作製したシリコーンゴムシートおよび実施例1で作製したシリコーンゴムシートRA(比較例4)について、下記項目を評価した。結果を表1,2に示す。
〔目視外観〕
光沢変化および表面割れの有無を目視で観察した。
〔顕微鏡観察〕
20倍の光学顕微鏡にてクラックの有無を観察した。
〔指触感〕
シート表面を指触にて確認した。
〔摩耗試験後の外観〕
学振式摩耗試験機(HEIDON 18 Scraching Intensity Tester、新東科学(株)製)を用い、200g荷重の摩耗子先端面に幅20mm、長さ40mmのJIS L 0803に準拠したネル布を取付け、シリコーンゴムシート表面上を50mmの間を毎分30回で4,000往復させた後のシート表面の摩耗跡を目視で観察し、下記レベルに基づいて判断した。
レベル4:摩耗跡なし(シートRAと変わらない)
レベル3:摩耗跡があまり目立たない
レベル2:摩耗跡が目立つ
レベル1:摩耗跡がはっきり判る
〔耐油浸透性〕
フェノールレッドで着色したステアリン酸をシリコーンゴム表面に塗布し、80℃のオーブン中に72時間保持した後、シリコーンゴムを切断し、その断面の着色性を観察した。
〔算術平均粗さの差(ΔRa)〕
レーザー顕微鏡(VK−8710、(株)キーエンス製)を用い、シリコーンゴム表面の摩耗前後の表面形状を測定した。観察エリアは100μmにて、算術平均面粗さ(Ra)を測定し、摩耗前後の平均粗さの差(ΔRa)を求めた。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
表1に示されるように、実施例1〜3で作製したシートA〜Cの目視外観では、シートRA(比較例4)に比べて光沢の上昇はほとんどなく、割れや、クラックも観察されなかった。また、摩耗性試験後の目視観察では照射エネルギーが大きくなるにつれて摩耗跡は目立たなくなり、算術平均粗さの差(ΔRa)も小さくなった。さらに、耐油浸透性では着色し難くなった。
一方、照射エネルギーをより大きくした比較例1で得られたシートRBでは、摩耗跡は確認されなかったものの、光沢の上昇やクラック発生、指触感が硬いことが観察された。
真空下で照射した実施例4で得られたシートDでは、実施例1と同じ挙動を示し、さらに照射後に加熱を行った実施例5で得られたシートEでは、シートDよりも指触感は僅かに硬くなったが、光沢変化はなく、摩耗性試験での跡も確認されなかった。さらに、耐油浸透性でも着色は見られなかった。
これに対し、光照射の代わりにシリコーンコーティングを塗布することで摩耗性の向上を試みた比較例2,3で得られたシートRC,RDでは、摩耗性試験での傷付きにくさは向上したものの、光沢の上昇、指触感が硬くなり、耐油浸透性では僅かであるが着色がみられた。
【符号の説明】
【0033】
11 シリコーンゴム成型体
11A 酸化層
12 真空紫外光
図1