特開2020-55259(P2020-55259A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2020-55259インクジェット記録装置及び中間転写体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-55259(P2020-55259A)
(43)【公開日】2020年4月9日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及び中間転写体
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20200313BHJP
【FI】
   B41J2/01 101
   B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-188893(P2018-188893)
(22)【出願日】2018年10月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 暁
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FD01
2C056FD13
2C056FD20
2C056HA29
2C056HA44
2C056HA45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中間転写体においてより高い強度や耐久性を得ることができ、かつインクに対して適切にエネルギー線を照射することができるインクジェット記録装置及び当該中間転写体を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドから吐出されたインクが着弾して一次画像が形成される中間転写体10を有し、中間転写体上のインクを記録媒体に転写して画像を記録する転写部と、所定のエネルギー線を発生させるエネルギー線発生源と、を備え、中間転写体は、記録ヘッドから吐出されたインクが着弾する外周面10aを備えた環状の形状を有し、エネルギー線発生源で発生したエネルギー線を放射するエネルギー線放射部を内部に有し、エネルギー線放射部から放射されたエネルギー線を外周面から射出させて当該外周面上のインクに照射可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾して一次画像が形成される中間転写体を有し、当該中間転写体上のインクを記録媒体に転写して当該記録媒体に画像を記録する転写部と、
所定のエネルギー線を発生させるエネルギー線発生源と、
を備え、
前記中間転写体は、
前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾する外周面を備えた環状の形状を有し、
前記エネルギー線発生源が発生させた前記エネルギー線を放射するエネルギー線放射部を内部に有し、
前記エネルギー線放射部から放射された前記エネルギー線を前記外周面から射出させて当該外周面上のインクに照射可能である
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記エネルギー線放射部に前記エネルギー線発生源が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記中間転写体の側端部には、前記エネルギー線発生源に電気的に接続された端子が設けられており、当該端子を介して外部から前記エネルギー線発生源に電力が供給されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記エネルギー線発生源は、前記中間転写体の外部に設けられており、
前記エネルギー線放射部は、
前記エネルギー線発生源から前記中間転写体に入射した前記エネルギー線を前記外周面に沿った方向に伝播させる伝播部と、
前記伝播部内の前記エネルギー線の一部を、前記外周面を通って前記中間転写体の外部に向かう方向に反射させる反射部と
を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記伝播部は、前記中間転写体の前記外周面と内周面との間の側面から入射した前記エネルギー線を前記外周面に沿った方向に伝播させることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記エネルギー線放射部は、前記外周面と平行な面に沿って面状に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記エネルギー線放射部及び前記エネルギー線発生源は、前記外周面と平行な面に沿って面状に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクは、前記エネルギー線の照射により粘度が変化するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドは、所定の波長域の光により硬化反応が進行して粘度が増大する前記インクを吐出し、
前記エネルギー線は、前記波長域内の光を含む
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記中間転写体には、前記外周面をなす保護層が表面に設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記外周面が所定の周回経路で周回するように前記中間転写体を周回移動させる中間転写体駆動部を備え、
前記エネルギー線放射部は、各々独立に前記エネルギー線を放射可能な複数の副放射部を有し、
前記複数の副放射部は、各副放射部の位置における前記周回移動の方向に沿って配列されている
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドは、前記周回経路のうち所定の着弾範囲内にインクが着弾するようにインクを吐出し、
前記転写部は、前記周回経路のうち所定の転写範囲において前記中間転写体上のインクを前記記録媒体に転写し、
前記複数の副放射部のうち、前記周回移動の方向について前記着弾範囲の下流側端部から前記転写範囲の下流側端部までの間にある副放射部の少なくとも一部が前記エネルギー線を放射する
ことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記複数の副放射部のうち前記転写範囲にある副放射部から放射される前記エネルギー線の第1の強度と、前記転写範囲にある副放射部を除いた副放射部から放射される前記エネルギー線の第2の強度とが異なることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記第1の強度は、前記第2の強度より大きいことを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾して一次画像が形成される中間転写体を有し、当該中間転写体上のインクを記録媒体に転写して当該記録媒体に画像を記録する転写部と、所定のエネルギー線を発生させるエネルギー線発生源と、を備えるインクジェット記録装置に用いられる前記中間転写体であって、
前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾する外周面を備えた環状の形状を有し、
前記エネルギー線発生源が発生させた前記エネルギー線を放射するエネルギー線放射部を内部に有し、
前記エネルギー線放射部から放射された前記エネルギー線を前記外周面から射出させて当該外周面上のインクに照射可能である
ことを特徴とする中間転写体。
【請求項16】
前記エネルギー線放射部には、前記エネルギー線を発生させるエネルギー線発生源が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の中間転写体。
【請求項17】
前記エネルギー線放射部は、
外部から当該中間転写体に入射した前記エネルギー線を前記外周面に沿った方向に伝播させる伝播部と、
前記伝播部内の前記エネルギー線の一部を、前記外周面を通って前記中間転写体の外部に向かう方向に反射させる反射部と
を有することを特徴とする請求項15に記載の中間転写体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び中間転写体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドのノズルから吐出させたインクを環状の中間転写体(例えば、無端状のベルト)の外周面に着弾させて一次画像を形成し、この一次画像を記録媒体に転写させて当該記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置がある。このようなインクジェット記録装置では、所定のエネルギー線を照射することで中間転写体から記録媒体への転写容易性が変化するインク(典型的には、エネルギー線の照射により粘度が増大するインク(紫外線硬化性インク等))を用いると、中間転写体上のインクに対して適切にエネルギー線を照射することで、中間転写体から記録媒体に容易かつ確実にインクが転写されるようにインクの状態を調整することができる。
【0003】
インクの転写容易性を変化させる方法としては、例えば、インクの中間転写体側の表面の粘度をある程度高くすることで、インクを中間転写体から容易に剥離可能な状態としつつ、インクの中間転写体側とは反対側(記録媒体側)の表面の粘度上昇を抑えることで、インクを記録媒体に密着しやすい状態に維持する方法がある。このように、インクの記録媒体側表面の粘度をある程度低く保ちつつ中間転写体側表面の粘度を高める方法としては、エネルギー線が透過する部材で中間転写体を構成し、当該中間転写体の外周面に着弾したインクに対し、中間転写体を通して内周面側からエネルギー線を照射する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−150456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中間転写体をエネルギー線が透過する材質の部材で構成しようとすると、より高い強度や耐久性を確保するのが困難であるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、中間転写体においてより高い強度や耐久性を得ることができ、かつインクに対して適切にエネルギー線を照射することができるインクジェット記録装置及び当該中間転写体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェット記録装置の発明は、
インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾して一次画像が形成される中間転写体を有し、当該中間転写体上のインクを記録媒体に転写して当該記録媒体に画像を記録する転写部と、
所定のエネルギー線を発生させるエネルギー線発生源と、
を備え、
前記中間転写体は、
前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾する外周面を備えた環状の形状を有し、
前記エネルギー線発生源が発生させた前記エネルギー線を放射するエネルギー線放射部を内部に有し、
前記エネルギー線放射部から放射された前記エネルギー線を前記外周面から射出させて当該外周面上のインクに照射可能である
ことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記エネルギー線放射部に前記エネルギー線発生源が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記中間転写体の側端部には、前記エネルギー線発生源に電気的に接続された端子が設けられており、当該端子を介して外部から前記エネルギー線発生源に電力が供給されることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記エネルギー線発生源は、前記中間転写体の外部に設けられており、
前記エネルギー線放射部は、
前記エネルギー線発生源から前記中間転写体に入射した前記エネルギー線を前記外周面に沿った方向に伝播させる伝播部と、
前記伝播部内の前記エネルギー線の一部を、前記外周面を通って前記中間転写体の外部に向かう方向に反射させる反射部と
を有することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記伝播部は、前記中間転写体の前記外周面と内周面との間の側面から入射した前記エネルギー線を前記外周面に沿った方向に伝播させることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記エネルギー線放射部は、前記外周面と平行な面に沿って面状に設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2又は3に記載のインクジェット記録装置において、
前記エネルギー線放射部及び前記エネルギー線発生源は、前記外周面と平行な面に沿って面状に設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インクは、前記エネルギー線の照射により粘度が変化するものであることを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、所定の波長域の光により硬化反応が進行して粘度が増大する前記インクを吐出し、
前記エネルギー線は、前記波長域内の光を含む
ことを特徴としている。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記中間転写体には、前記外周面をなす保護層が表面に設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記外周面が所定の周回経路で周回するように前記中間転写体を周回移動させる中間転写体駆動部を備え、
前記エネルギー線放射部は、各々独立に前記エネルギー線を放射可能な複数の副放射部を有し、
前記複数の副放射部は、各副放射部の位置における前記周回移動の方向に沿って配列されている
ことを特徴としている。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、前記周回経路のうち所定の着弾範囲内にインクが着弾するようにインクを吐出し、
前記転写部は、前記周回経路のうち所定の転写範囲において前記中間転写体上のインクを前記記録媒体に転写し、
前記複数の副放射部のうち、前記周回移動の方向について前記着弾範囲の下流側端部から前記転写範囲の下流側端部までの間にある副放射部の少なくとも一部が前記エネルギー線を放射する
ことを特徴としている。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の副放射部のうち前記転写範囲にある副放射部から放射される前記エネルギー線の第1の強度と、前記転写範囲にある副放射部を除いた副放射部から放射される前記エネルギー線の第2の強度とが異なることを特徴としている。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1の強度は、前記第2の強度より大きいことを特徴としている。
【0021】
また、上記目的を達成するため、請求項15に記載の中間転写体の発明は、
インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾して一次画像が形成される中間転写体を有し、当該中間転写体上のインクを記録媒体に転写して当該記録媒体に画像を記録する転写部と、所定のエネルギー線を発生させるエネルギー線発生源と、を備えるインクジェット記録装置に用いられる前記中間転写体であって、
前記記録ヘッドから吐出されたインクが着弾する外周面を備えた環状の形状を有し、
前記エネルギー線発生源が発生させた前記エネルギー線を放射するエネルギー線放射部を内部に有し、
前記エネルギー線放射部から放射された前記エネルギー線を前記外周面から射出させて当該外周面上のインクに照射可能である
ことを特徴としている。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の中間転写体において、
前記エネルギー線放射部には、前記エネルギー線を発生させるエネルギー線発生源が設けられていることを特徴としている。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項15に記載の中間転写体において、
前記エネルギー線放射部は、
外部から当該中間転写体に入射した前記エネルギー線を前記外周面に沿った方向に伝播させる伝播部と、
前記伝播部内の前記エネルギー線の一部を、前記外周面を通って前記中間転写体の外部に向かう方向に反射させる反射部と
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従うと、中間転写体においてより高い強度や耐久性を得ることができ、かつインクに対して適切にエネルギー線を照射することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
図2】ヘッドユニットの構成を示す模式図である。
図3】中間転写体の構成を示す平面図である。
図4図3のA−A線における中間転写体の断面を示す図である。
図5】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】中間転写体上のインクの硬化動作を説明する図である。
図7】第2の実施形態に係る中間転写体の構成を示す平面図である。
図8図7のB−B線における中間転写体の断面を示す図である。
図9】実験に用いた中間転写体の構成及び実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のインクジェット記録装置及び中間転写体に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、インクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、画像形成部2と、転写部3と、制御部4(図5参照)などを備えている。インクジェット記録装置1は、転写部3のベルト状の中間転写体10に対して画像形成部2からインクを吐出して中間転写体10(像担持体)の外周面(画像形成面)に一次画像を形成し、当該一次画像を形成しているインクを記録媒体Mに転写することで記録媒体Mに画像を記録する。記録媒体Mとしては、紙、樹脂板、金属、布帛、ゴムなどの種々の媒体が用いられ得る。また、紙としては、普通紙、板紙、塗工紙、レジンコート紙、合成紙などを挙げることができる。
【0028】
画像形成部2は、中間転写体10の外周面に対して画像データに基づいてノズルからインクを吐出して、外周面上に一次画像を形成する。画像形成部2は、複数色、ここでは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット21Y、21M、21C、21K(以下では、これらのうち任意の一つをヘッドユニット21とも記す)を有する。これらの複数のヘッドユニット21は、それぞれのインク吐出面が適宜な間隔で中間転写体10の外周面に対向して配置されている。なお、ヘッドユニット21の数は3つ以下又は5つ以上であってもよい。
【0029】
図2は、ヘッドユニット21の構成を示す模式図であり、ヘッドユニット21を中間転写体10の外周面に相対する側から見た平面図である。ヘッドユニット21は、板状の支持部21aと、支持部21aに設けられた貫通孔に篏合した状態で支持部21aに固定された複数の(ここでは8つの)記録ヘッド211とを有する。記録ヘッド211は、ノズル213の開口部が設けられたインク吐出面212が支持部21aの貫通孔から外周面側に向けて露出した状態で支持部21aに固定されている。
【0030】
記録ヘッド211では、複数のノズル213が、中間転写体10の周回移動の方向(以下では周回移動方向とも記す)と交差する方向(本実施形態では周回移動方向と直交する幅方向)に等間隔にそれぞれ配列されている。本実施形態では、各記録ヘッド211は、幅方向に等間隔に一次元配列されたノズル213の列(ノズル列)を4つ有している。これらの4つのノズル列は、ノズル213の幅方向についての位置が重ならないように幅方向の位置が互いにずらされて配置されている。なお、記録ヘッド211が有するノズル列の数は4つに限られず、3つ以下又は5つ以上であっても良い。
【0031】
ヘッドユニット21における8つの記録ヘッド211は、ノズル213の幅方向についての配置範囲が連続するように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット21に含まれるノズル213の幅方向についての配置範囲は、中間転写体10の外周面のうち一次画像が形成可能な領域の幅方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット21は、一次画像の形成時には位置が固定されて用いられ、中間転写体10の周回移動に応じて周回移動方向についての所定間隔の各位置に対してノズル213からインクを吐出することで、シングルパス方式で一次画像を形成する。各ノズル213からインクを吐出させるためのインク吐出機構としては、圧電素子を用いたピエゾ式のものであっても良いし、インクを加熱して噴出させるサーマル式のものであっても良い。
【0032】
ヘッドユニット21のノズルから吐出されるインクとしては、所定のエネルギー線を照射することで中間転写体10から記録媒体Mへの転写容易性(転写性)が変化するものが用いられる。このようなインクとして典型的なものは、エネルギー線の照射により粘度が変化するインクである。粘度が変化するインクを用いると、例えば、中間転写体10の外周面に着弾したインクのうち外周面に接触している側(以下、単に外周面側と記す)の表面の粘度を高めることで、中間転写体10からインクを容易に剥離させることが可能となる。一方、インクの中間転写体10側とは反対側(記録媒体M側)の表面の粘度上昇を抑えることで、インクを記録媒体Mに密着しやすい状態に維持することができる。
本実施形態では、紫外線を照射することで硬化反応が進行して粘度が増大する紫外線硬化性インクが用いられている。
【0033】
また、本実施形態で用いられるインクは、温度によってゲル状とゾル状との間で相変化する相変化インクである。ヘッドユニット21のノズル213からは、加熱によりゲル状になったインクが吐出され、中間転写体10の外周面に着弾したインクは、冷却されることで速やかにゲル状になる。このゲル状になったインクに対して紫外線照射による粘度調整が行われる。
本実施形態で用いられるインクは、光重合性化合物(モノマー)、光重合開始剤、ゲル化剤及び着色剤を含む。このうち光重合性化合物は、紫外線が照射されることにより重合反応が進行して高分子化する化合物である。この高分子化により、インクが増粘して硬化する。光重合開始剤は、上記重合反応を開始させるための化合物である。ゲル化剤は、インクが加熱されてゾル化温度以上になるとインク中に溶解してインクをゾル化させ、インクが冷却されてゲル化温度以下になると架橋構造を形成したり繊維状会合体を形成したりすることによりインクをゲル化させる性質を有する化合物である。また、着色剤は、当該インクに係る色の顔料又は染料を含む。
【0034】
図1における転写部3は、中間転写体10と、図示しない給紙部から供給された記録媒体Mとを移動、接触させて、中間転写体10に形成された一次画像を記録媒体Mに転写させる。転写部3は、中間転写体10と、駆動ローラー31と、従動ローラー32と、加圧ローラー33と、搬送ローラー34と、定着部35などを備えている。
【0035】
中間転写体10は、画像形成部2から吐出されたインクが着弾する外周面を備えた環状の(無端状の)形状を有するベルト体である。中間転写体10の外周面には、着弾したインクによって一次画像が形成され、当該一次画像が記録媒体Mに転写される。中間転写体10は、駆動ローラー31、従動ローラー32及び加圧ローラー33に巻きかけられており、駆動ローラー31の回転動作に従って、外周面が所定の周回経路を周回するように周回移動する。中間転写体10のうち少なくとも画像形成部2と対向する部分は、平坦な面を有する図示しない支持部材により支持されて水平面が形成されている。
【0036】
中間転写体10の内部(外周面と内周面との間)には、外周面を通って中間転写体10の外部に向かう方向に紫外線を放射する紫外線放射部13(エネルギー線放射部)(図3)が設けられており、中間転写体10は、紫外線放射部13から放射された紫外線を外周面から射出させて当該外周面上のインクに照射可能な構成となっている。中間転写体10上のインクは、紫外線放射部13からの紫外線が照射されることで粘度がある程度増大する。以下では、この、転写前のインクの粘度を中間転写体10上で増大させる工程を「仮硬化」とも記す。
【0037】
以下、中間転写体10の詳細な構成について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、中間転写体10の構成を示す平面図である。この図3は、中間転写体10を外周面側から見た図である。
また、図4は、図3のA−A線における中間転写体10の断面を示す図である。
【0038】
図3に示されるように、中間転写体10には、幅方向についての両端部を除く略全面に、紫外線を放射(発光)する紫外線放射部13が設けられている。紫外線放射部13は、中間転写体10の周回移動方向についての全周に亘って、中間転写体10の外周面と平行な面に沿って面状に設けられている。
【0039】
詳しくは、紫外線放射部13は、各々独立に紫外線を放射可能な複数の副放射部130を有している。これらの複数の副放射部130は、各副放射部130の位置における周回移動方向に沿って配列されている。各副放射部130は、外周面に垂直な方向から見て矩形をなしており、当該矩形の領域において紫外線を放射する面光源である。
副放射部130の周回移動方向についての長さは、特には限られないが、後述する紫外線照射区間の制御を所望の態様で行うことができる程度の長さとすることができる。また、中間転写体10の外周面において、一次画像が各々形成される複数の画像形成領域が予め定められている場合には、この画像形成領域ごとに副放射部130を設けても良い。
【0040】
また、図3に示されるように、中間転写体10の外周面のうち幅方向の両端部には、副放射部130に電気的に接続されている端子131a及び端子133aが露出している。詳しくは、幅方向について副放射部130の一方側に端子131aが露出しており、副放射部130の他方側に端子133aが露出している。
【0041】
図4に示されるように、中間転写体10は、内周面10b側から順に、基材11、弾性層12、副放射部130(紫外線放射部13)、保護層14が積層された構造を有している。
【0042】
基材11は、中間転写体10の各部が積層される基部となる無端ベルト状の部材である。基材11は、その下面が中間転写体10の内周面10bを構成する。よって、基材11は、当該基材11に所定の張力が掛かった状態で駆動ローラー31、従動ローラー32及び加圧ローラー33と当接しつつ、これらのローラーとの間の摩擦力によりローラーの回りを周回移動する。このため、基材11としては、ローラーとの摩擦や周回移動に伴う変形によって摩耗や劣化が生じにくい材質、例えばポリイミドといった樹脂などが用いられる。このような材質の基材11を用いることで、中間転写体10に必要な強度及び耐久性が確保される。
【0043】
弾性層12は、シリコンゴムといった弾性部材からなる層であり、基材11の上面を覆うように中間転写体10の全周に亘って形成されている。弾性層12を設けることで、表面にエンボス加工等による凹凸を有する記録媒体Mにインク(一次画像)を転写する場合に、記録媒体Mの表面に追随するように中間転写体10の各部を厚さ方向に変形させることができる。これにより、表面に凹凸を有する記録媒体Mに対しても適切にインクを転写することが可能となる。
【0044】
また、これらの基材11及び弾性層12は、不透明な材質(紫外線が透過しない材質)のものを用いることができる。これは、基材11及び弾性層12が副放射部130より下層(内周面10b側)にあるため、不透明であっても副放射部130から外周面10aへの紫外線の放射を阻害しないためである。
【0045】
副放射部130(紫外線放射部13)は、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた発光素子である。副放射部130は、弾性層12の上に順に積層された陰極131、有機発光層132(エネルギー線発生源)及び陽極133を有している。また、副放射部130の幅方向の両端には、副放射部130と略同一の高さの樹脂等からなるスペーサー部材15が設けられている。
なお、副放射部130としては、有機EL素子に代えて無機EL素子が用いられても良い。
【0046】
陰極131は、副放射部130の形成領域の全体に亘って設けられており、例えばアルミニウム等の金属からなる。陰極131は、幅方向の一端側において、スペーサー部材15を貫通する上下導通部131bを介して、スペーサー部材15上に設けられた端子131aに電気的に接続されている。
【0047】
有機発光層132は、例えば陰極131側から順に電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層等が積層された構成を有し、陰極131と陽極133との間に電圧が印加されて駆動電流が流れることで発光する。有機発光層132から放射される光には、インクの硬化反応を進行させる波長域(ここでは紫外領域)の光が含まれている。なお、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層の一部を省略しても良い。
【0048】
陽極133は、有機発光層132上に、副放射部130の形成領域の全体に亘って設けられており、例えばITO(酸化インジウムスズ)等の透明な材質のものが用いられる。陽極133は、幅方向の他端側においてスペーサー部材15上まで延設されており、当該延設されている部分により端子133aが構成されている。
【0049】
端子131a及び端子133aの表面には、中間転写体10の周回移動における所定のタイミングで一対の導電パッド60が当接するようになっている。副放射部130の有機発光層132は、端子131a及び端子133aに一対の導電パッド60が当接している期間において、当該導電パッド60からの電力供給を受けて、供給される電力に応じた強度で紫外線を放射する。一対の導電パッド60は、2以上の副放射部130を同時に発光させることができるように、周回移動方向について異なる複数の位置に設けられている。
端子131a及び端子133aに対する電力供給手段は、導電パッド60によるものに限られず、導電ブラシといった他の手段を用いても良い。
【0050】
なお、端子131a及び端子133aを露出させるための構成は、図4のようにスペーサー部材15を用いたものに限られない。例えば、陰極131及び陽極133を直接弾性層12上に延設させる構成としても良い。
また、端子131a及び端子133aの双方を、幅方向についての一方側に露出させても良い。
また、端子131a、133aのうち一方又は両方を、外周面10a以外の面(例えば内周面10b)に露出させても良い。
また、陰極131及び陽極133のうちいずれか一方(通常は、内周面側の陰極131)を、中間転写体10の全周に亘って一繋がりに形成しても良い。この場合には、例えば一繋がりに形成された陰極131(端子131a)に対して一箇所で電力供給のための導電パッド60を当接させれば良いため、構成を簡素化することができる。あるいは、陰極131に接続された端子131aを中間転写体10の内周面10bに露出させるとともに、駆動ローラー31、従動ローラー32及び加圧ローラー33の少なくとも一つの表面を導体により構成し、当該導体を介して陰極131を所定の電位(接地電位等)としても良い。
【0051】
有機発光層132から放射された光の一部は、図4の上方に進行し、陽極133及び保護層14を透過して外周面10aから外部に射出され、一部は陰極131で反射した後に上方に向けて進行して外周面10aから外部に射出される。また、他の一部の光は、陽極133や保護層14の表面(あるいは有機発光層132が多層の場合にはこれらの界面)と陰極131との間で構成される共振構造内を複数回反射した後に外周面10aから外部に射出される。
【0052】
保護層14は、副放射部130(紫外線放射部13)の上面を覆うように中間転写体10の全周に亘る表面に形成された薄膜層であり、コート層(被覆層)と言い換えることもできる。保護層14の表面は、中間転写体10の外周面10aを構成する。したがって、保護層14の表面には、ヘッドユニット21から吐出されたインクが着弾して一次画像が形成され、当該一次画像の転写のためにニップ部Nにおいて記録媒体Mが当接する。保護層14は、これらのインクや記録媒体M等との接触から紫外線放射部13を保護する。
【0053】
保護層14としては、記録媒体Mよりもインクが表面に濡れ広がりやすい材質のものが用いられる。これにより、インクを隙間なく濡れ広げるために必要な単位面積当たりのインク量を低く抑えることができる。また、保護層14上に濡れ広がったインクを記録媒体Mに転写することで、記録媒体M上に直接インクを吐出する方法と比較して、べた画像等におけるインクの抜けによるむらを生じにくくすることができる。
【0054】
また、保護層14には、紫外線が透過する材質のものが用いられる。よって、紫外線放射部13から放射された紫外線は、保護層14を透過して外周面10aから外部に射出され、その一部が外周面10a上のインクに照射される。保護層14としては、例えばPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)といったフッ素樹脂を用いることができる。
【0055】
このように、外周面10a上のインクに対し、紫外線放射部13から(外周面10a側から)紫外線を照射することで、インクの記録媒体M側の表面の粘度をある程度低く保ちつつ、外周面10a側の表面の硬化反応を進行させて粘度を高めることができる。インクの外周面10a側の粘度を高めることで、インクを外周面10aから容易に剥離できるようになり、また転写時のインクの潰れによる画質低下を抑えることができる。他方で、インクの記録媒体M側の表面の粘度を低く保つことで、インクが記録媒体Mに密着しやすい状態で維持されるため、容易に記録媒体Mにインクを転写することが可能となる。
【0056】
図1に示される駆動ローラー31は、図示しないモーターの駆動によって回転軸を中心に回転する。従動ローラー32は、駆動ローラー31から所定距離離間して配置され、駆動ローラー31の回転軸と平行な回転軸を中心に中間転写体10の周回移動に伴って回転する。
【0057】
加圧ローラー33には、中間転写体10が張架されている。加圧ローラー33は、中間転写体10のたわみを吸収可能に可動に設けられていてもよい。
【0058】
搬送ローラー34は、図示しない給紙部から供給された記録媒体Mを外周面に保持した状態で回転することで、ローラー回転方向に記録媒体Mを搬送する。搬送ローラー34は、加圧ローラー33との間にニップ部Nを形成するように配置されている。中間転写体10及び記録媒体Mは、このニップ部Nに挟み込まれて加圧される。これにより、中間転写体10の外周面上のインク(一次画像)が記録媒体Mに転写され、当該記録媒体Mに画像が記録される。
なお、記録媒体Mが搬送ローラー34の外周面に保持されて搬送される態様に代えて、加圧ローラー33と搬送ローラー34とのニップ部Nに記録媒体Mが(図1の右方向から水平に)直接差し込まれる態様としても良い。
【0059】
定着部35は、紫外線を放射する光源を有し、搬送ローラー34上の記録媒体Mの表面に対して紫外線を照射する。定着部35は、搬送ローラー34による記録媒体Mの搬送方向についてニップ部Nの下流側において、搬送ローラー34の外周面に対向する位置に設けられている。定着部35からの紫外線照射により、記録媒体Mに転写されたインクが完全に硬化して、アンカー効果により記録媒体Mの表面に固着して定着する。以下、この定着部35によりインクを硬化させる工程を「本硬化」とも記す。
定着部35を通過した記録媒体Mは、搬送ローラー34の外周面から取り外されて、図示しない所定の排紙部に搬送される。
【0060】
なお、中間転写体10の周回移動方向についてニップ部Nと駆動ローラー31との間に、中間転写体10の外周面10aをクリーニングするためのクリーニング部が設けられていてもよい。クリーニング部で用いられるクリーニング用の部材としては、布帛、不織布、ブレード部材などが用いられ得る。また、インクや汚れなどを剥離させるためのクリーニング液を外周面10a又はクリーニング用の部材に付与する構成を有していてもよい。
【0061】
図5は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、制御部4と、ヘッド制御部214及び記録ヘッド211を有するヘッドユニット21と、紫外線放射部13を有する中間転写体10と、定着部35と、発光駆動部51と、ローラー駆動部52(中間転写体駆動部)と、操作表示部53と、通信部54と、バス55などを備える。
【0062】
制御部4は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。制御部4は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)及び記憶部44などを有する。
【0063】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。
【0064】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0065】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0066】
記憶部44には、通信部54を介して外部機器から入力された、記録対象の画像データや当該画像データの記録動作に係る動作設定を含むジョブデータなどが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0067】
ヘッド制御部214は、制御部4から供給される制御信号に基づいて、中間転写体10の周回移動に応じた適切なタイミングで画像データや制御信号を記録ヘッド211内のヘッド駆動部に出力することで、記録ヘッド211のノズルからインクを吐出させる。
【0068】
発光駆動部51は、制御部4から供給される制御信号に基づいて、複数の導電パッド60に対して、それぞれ紫外線放射部13の有機発光層132を発光させるための所定の駆動信号を供給する。
【0069】
ローラー駆動部52は、制御部4から供給される制御信号に基づいて、駆動ローラー31を回転させるモーターに対して設定速度での回転動作を行わせる駆動信号を出力することで、中間転写体10を所定の速度で周回移動させる。
【0070】
操作表示部53は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部53は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部4に出力する。
【0071】
通信部54は、外部機器との間で通信を行って情報の送受信を行う。通信部54は、LANによる有線又は無線による通信に係る各種通信規格に対応した通信制御を行う。受信されるデータには、上述のジョブデータが含まれる。送信されるデータには、ジョブデータに応じた画像記録動作の進捗に係るステータス情報などが含まれる。
【0072】
バス55は、制御部4と各部との間で信号の送受信を行う信号経路である。
【0073】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1における中間転写体10上のインクの硬化動作について説明する。
【0074】
図6は、中間転写体10上のインクの硬化動作を説明する図である。
図6では、中間転写体10(外周面10a)の周回経路のうち、画像形成部2から吐出されたインクが着弾する着弾範囲R1から、中間転写体10上のインクが記録媒体Mに転写される転写範囲R2(すなわち、ニップ部Nの範囲)までの区間が拡大されて描かれている。周回移動方向について着弾範囲R1から転写範囲R2までの各位置では、外周面10a上に着弾したインクが付着した状態となっている。以下では、着弾範囲R1の下流側端部から転写範囲R2の下流側端部までの範囲(すなわち、外周面10a上でインクが移送される範囲)を、「インク移送範囲」と記す。
【0075】
本実施形態のインクジェット記録装置1では、インク移送範囲にある副放射部130のうち一部の副放射部130のみが紫外線を放射するようになっている。具体的には、転写範囲R2にある副放射部130Aと、周回移動方向について副放射部130Aの上流側に隣接する所定数の(図6では3つの)副放射部130Bとが紫外線を放射し、その他の副放射部130は紫外線を放射しないようになっている。すなわち、図6における副放射部130Aに対応する位置と、3つの副放射部130Bに対応する位置に、副放射部130に電力を供給するための導電パッド60が設けられており、他の位置には導電パッド60が設けられていない(あるいは、導電パッド60を設けた上で電力が供給されないようにしても良い)。
【0076】
さらに、転写範囲R2にある副放射部130Aから放射される紫外線の強度I1(第1の強度)は、副放射部130Bから放射される紫外線の強度I2(第2の強度)より大きくなっている。すなわち、発光駆動部51は、副放射部130Aに対応する位置に設けられた導電パッド60に、3つの副放射部130Bに対応する位置に設けられた導電パッド60よりも大きな電力を供給する。
【0077】
このような構成により、外周面10a上のインクがニップ部Nに進入する前の所定区間において、3つの副放射部130Bにより、強度I2の紫外線が外周面10a側からインクに照射されてインクが仮硬化される。この結果、ニップ部Nに進入する前のインクの粘度が、外周面10a側が硬く、外周面10a側とは反対側が相対的に柔らかい状態に調整される。
その後、ニップ部Nに進入したインクに対して、副放射部130Aによってより大きな強度I1の紫外線が外周面10a側から照射される。これにより、ニップ部N内において記録媒体Mに転写されているインクの粘度をさらに増大させて(硬化反応を進行させて)、記録媒体Mへのインクの密着度が高められる。周回移動方向についての副放射部130の長さをニップ部Nの長さに近付けることで、ニップ部N内のインクに対してより正確に、強度I1の紫外線を照射することができる。
ニップ部Nを通過した記録媒体M上のインクは、上述したとおり、定着部35からの紫外線照射により本硬化される。
【0078】
なお、中間転写体10上のインクの硬化動作は、図6に示したものに限られない。
例えば、紫外線を放射する全ての副放射部130から、均一な強度の紫外線が放射されるようにしても良い。
また、インク移送範囲にある全ての副放射部130から紫外線を放射させても良い。
また、ヘッドユニット21のインク吐出動作を始めとするインクジェット記録装置1の各部の動作に問題が生じない場合には、中間転写体10の全周に亘る全ての副放射部130から紫外線を放射させても良い。この場合、紫外線放射部13を、単一の副放射部130からなる構成とし、陰極131、有機発光層132及び陽極133が中間転写体10の全周に亘って一繋がりに形成された構成とすることができる。また、端子131a及び端子133aについても中間転写体10の全周に亘って一繋がりに形成し、中間転写体10の位置によらず導電パッド60が常に端子131a及び端子133aのいずれかの位置に当接する態様とすれば良い。
【0079】
(実施形態の効果)
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、インクを吐出する記録ヘッド211と、記録ヘッド211から吐出されたインクが着弾して一次画像が形成される中間転写体10を有し、当該中間転写体10上のインクを記録媒体Mに転写して当該記録媒体Mに画像を記録する転写部3と、紫外線を発生させる有機発光層132と、を備え、中間転写体10は、記録ヘッド211から吐出されたインクが着弾する外周面10aを備えた環状の形状を有し、有機発光層132が発生させた紫外線を放射する紫外線放射部13を内部に有し、紫外線放射部13から放射された紫外線を外周面10aから射出させて当該外周面10a上のインクに照射可能である。
このような構成によれば、中間転写体10の内部(すなわち、外周面10aと内周面10bとの間)から外周面10a上のインクに対して紫外線を照射することができる。これにより、インクの記録媒体M側の表面の粘度をある程度低く保ちつつ、外周面10a側の表面の硬化反応を進行させて粘度を高めることができる。インクの外周面10a側の粘度を高めることで、インクを外周面10aから容易に剥離できるようになり、また転写時のインクの潰れによる画質低下を抑えることができる。他方で、インクの記録媒体M側の表面の粘度を低く保つことで、インクが記録媒体Mに密着しやすい状態で維持されるため、容易に記録媒体Mにインクを転写することが可能となる。
また、中間転写体10の内部に紫外線放射部13を設けたことで、中間転写体10の全体を透過させてインクに紫外線を照射する従来の構成と比較して、より効率良く紫外線をインクに照射することができる。よって、インクの転写性を容易に高めることができる。
また、中間転写体10の内部に紫外線放射部13を設けた構成によれば、中間転写体10及び記録媒体Mが不透明なローラーのニップ部において挟持されている状態において、記録媒体Mに転写中のインクに対して中間転写体10から紫外線を照射することができる。よって、ローラーによる押圧と紫外線照射によるインクの硬化とを同時に行うことができるため、より確実かつ強固にインクを記録媒体Mに定着させることができる。
また、中間転写体10の内部に紫外線放射部13を設けたことで、中間転写体10のうち紫外線放射部13より内周面10b側の部材については、紫外線透過性を有しない材質のものを用いることができる。すなわち、紫外線放射部13より内周面10b側の部材については、強度や耐久性を重視した材質のものを用いることができる。このため、本実施形態の構成によれば、中間転写体10においてより高い強度や耐久性を得ることができ、かつインクに対して中間転写体10側から適切に紫外線を照射することができる。
【0080】
また、紫外線放射部13に、紫外線を発生させる有機発光層132が設けられた構成とすることで、紫外線の光源とインクとの距離を極めて近くすることができる。よって、より効率良く紫外線をインクに照射することができるため、インクの転写性をより容易かつ確実に高めることができる。また、中間転写体10の外部に紫外線の光源を設ける必要がないため、インクジェット記録装置1の構成の簡素化や小型化を実現することができる。
【0081】
また、中間転写体10の側端部には、有機発光層132に電気的に接続された端子131a、133aが設けられており、当該端子131a、133aを介して外部から有機発光層132に電力が供給される。これにより、簡易な構成で有機発光層132を発光させて紫外線放射部13から紫外線を放射させることができる。
【0082】
また、紫外線放射部13は、外周面10aと平行な面に沿って面状に設けられている。これにより、外周面10a上の各部のインクに対する紫外線の露光量のばらつきを小さく抑えることができる。
【0083】
また、紫外線放射部13(本実施形態では、さらに有機発光層132)は、外周面10aと平行な面に沿って面状に設けられている。これにより、外周面10a上の各部のインクに対する紫外線の露光量のばらつきを小さく抑えることができる。
【0084】
また、本実施形態で用いられるインクは、エネルギー線としての紫外線の照射により粘度が変化するものである。これにより、中間転写体10の内部から紫外線を照射することで、転写前のインクの粘度を、外周面10a側が硬く、外周面10a側とは反対側が相対的に柔らかい状態に調整することができる。よって、中間転写体10からのインクの剥離を容易にしつつ、記録媒体Mに対するインクの密着性を高めることができる。
【0085】
また、記録ヘッド211は、所定の紫外領域の光により硬化反応が進行して粘度が増大するインクを吐出し、有機発光層132から放射される紫外線は、上記紫外領域内の光を含む。これにより、紫外線硬化性インクの転写性を容易かつ確実に高めることができる。
【0086】
また、中間転写体10には、外周面10aをなす保護層14が表面に設けられている。これにより、紫外線放射部13を、インクや記録媒体M等との接触から保護することができる。よって、中間転写体10に汚れや傷が付くのを抑制することができ、中間転写体10の耐久性を高めることができる。
【0087】
また、インクジェット記録装置1は、外周面10aが所定の周回経路で周回するように中間転写体10を周回移動させるローラー駆動部52を備え、紫外線放射部13は、各々独立に紫外線を放射可能な複数の副放射部130を有し、複数の副放射部130は、各副放射部130の位置における周回移動の方向に沿って配列されている。これにより、中間転写体10のうち所定の一部の範囲のみにおいて、外周面10a上のインクに対する紫外線の照射を選択的に行うことができる。これにより、インクに対する紫外線照射時間を簡易な方法で調整することができる。また、有機発光層132の発光期間を短縮できるため、有機発光層132の経時劣化を抑えて使用可能期間(寿命)を延ばすことができる。
【0088】
また、記録ヘッド211は、周回経路のうち所定の着弾範囲R1内にインクが着弾するようにインクを吐出し、転写部3は、周回経路のうち所定の転写範囲R2において中間転写体10上のインクを記録媒体Mに転写し、複数の副放射部130のうち、周回移動方向について着弾範囲R1の下流側端部から転写範囲R2の下流側端部までの間にある副放射部130の少なくとも一部が紫外線を放射する。これにより、また、記録ヘッド211のノズル213と対向し得る範囲(図6の着弾範囲R1)を除いた範囲で紫外線が照射されるため、ノズル213内でインクが硬化してノズル213に目詰まりが生じる不具合の発生を抑制することができる。
【0089】
また、複数の副放射部130のうち転写範囲R2にある副放射部130から放射される紫外線の強度I1と、転写範囲R2にある副放射部130を除いた副放射部130から放射される紫外線の強度I2とが異なる。これにより、転写前のインクの粘度を所望の状態に調整しつつ、転写範囲R2内で転写中のインクに対して、転写状態を向上させることのできる強度の紫外線を照射して、転写品質を高めることができる。
【0090】
また、強度I1を、強度I2より大きくすることで、転写範囲R2内で転写されているインクを記録媒体Mに対してより強く密着させて定着させることができる。
【0091】
また、第1の実施形態に係る中間転写体10は、記録ヘッド211から吐出されたインクが着弾する外周面10aを備えた環状の形状を有し、有機発光層132が発生させた紫外線を放射する紫外線放射部13を内部に有し、紫外線放射部13から放射された紫外線を外周面10aから射出させて当該外周面10a上のインクに照射可能である。これにより、中間転写体10においてより高い強度や耐久性を得ることができ、かつインクに対して中間転写体10側から適切に紫外線を照射することができる。
【0092】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、エネルギー線放射部としての紫外線放射部13が、外部から中間転写体10の内部に入射した紫外線を、外周面10aを通って中間転写体10の外部に向かう方向に反射させるものである点で上記第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0093】
図7は、第2の実施形態に係る中間転写体10の構成を示す平面図である。
また、図8は、図7のB−B線における中間転写体10の断面を示す図である。
【0094】
図7及び図8に示されるように、本実施形態では、中間転写体10の外部に、紫外線を放射する紫外線光源70(エネルギー線発生源)が設けられている。詳しくは、紫外線光源70は、中間転写体10の側面10c(外周面10aと内周面10bとの間の面)に対して紫外線を照射可能な位置に設けられている。
また、本実施形態の発光駆動部51は、紫外線光源70に対して所定の駆動信号を供給することで、各紫外線光源70から紫外線を放射させる。
【0095】
中間転写体10の内部に設けられた紫外線放射部13は、複数の副放射部130を有し、各副放射部130は、中間転写体10の幅方向の全体に亘って設けられている。すなわち、本実施形態の中間転写体10では、幅方向についての両端に端子が設けられていない。
【0096】
図8に示されるように、本実施形態の副放射部130は、紫外線光源70から中間転写体10に入射した紫外線を外周面10aに沿った方向に伝播させる導光板134(伝播部)と、導光板134内の紫外線の一部を、外周面10aを通って中間転写体10の外部に向かう方向に反射させる反射板135(反射部)とを有している。このうち反射板135は、弾性層12の上面に設けられており、導光板134は、反射板135と保護層14との間に設けられている。
【0097】
導光板134は、保護層14よりも屈折率の大きい材質からなり、上面(保護層14側の面)に対して臨界角以下の入射角で入射した紫外線を全反射させることで、紫外線を外周面10aに沿った方向に伝播させる。
反射板135は、表面に凹凸が設けられており、当該凹凸に入射した紫外線を入射面の向きに応じた方向に反射させる。入射面は、導光板134を伝播している紫外線を外周面10a方向に反射させやすい向きで形成されている。なお、反射板135を設けず、導光板134と弾性層12との界面に凹凸を設けて当該凹凸により紫外線を反射させるようにしても良い。この場合は、当該界面により「反射部」が構成される。
このような構成の副放射部130を有する中間転写体10によっても、外周面10a上のインクに対して外周面10a側から紫外線を照射することができる。
【0098】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においても、図6と同様に紫外線照射区間の制御が行われる。すなわち、図6における副放射部130Aに対応する位置と、3つの副放射部130Bに対応する位置に、それぞれ紫外線光源70が設けられており、他の位置には紫外線光源70が設けられていない(あるいは、紫外線光源70を設けた上で、当該紫外線光源70が紫外線を放射しないようにしても良い)。
さらに、転写範囲R2を含む位置にある副放射部130Aに対して紫外線光源70から照射される紫外線の強度は、副放射部130Bに対して紫外線光源70から照射される紫外線の強度より高くなっている。すなわち、発光駆動部51は、副放射部130Aに対応する位置に設けられた紫外線光源70により、3つの副放射部130Bに対応する位置に設けられた紫外線光源70よりも高い強度で紫外線を放射させる。この結果、第1の実施形態と同様に、副放射部130Aから放射される紫外線の強度I1が、副放射部130Bから放射される紫外線の強度I2より大きくなる。
【0099】
(実施形態の効果)
以上のように、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置1では、エネルギー線発生源としての紫外線光源70が中間転写体10の外部に設けられており、紫外線放射部13は、紫外線光源70から中間転写体10に入射したエネルギー線を外周面10aに沿った方向に伝播させる導光板134と、導光板134内の紫外線の一部を、外周面10aを通って中間転写体10の外部に向かう方向に反射させる反射板135とを有する。これにより、中間転写体10の内部に光源を設けない構成においても、中間転写体10の内部から外周面10a上のインクに対して紫外線を照射することができる。また、このような構成とすることで、第1の実施形態と比較して中間転写体10の構造をより簡素にすることができるため、中間転写体10の強度や耐久性をより容易に高めることができる。
【0100】
また、導光板134は、中間転写体10の外周面10aと内周面10bとの間の側面10cから入射した紫外線を外周面10aに沿った方向に伝播させる。これにより、中間転写体10の側面に光源を配置する簡易な構成で、中間転写体10の内部から外周面10a上のインクに対して紫外線を照射することができる。
【0101】
(実施例)
次に、上記各実施形態の効果を確認するために行った実験について説明する。
図9は、実験に用いた中間転写体10の構成及び実験結果を示す図である。
この実験は、上記各実施形態の構成に対応する中間転写体10の5つの実施例と、従来技術に対応する中間転写体10の2つの比較例と、を対象に行った。実験では、中間転写体10上のインクに対する紫外線照射、及び記録媒体Mへのインクの転写動作を繰り返し行い、記録媒体Mへのインクの転写率に係る転写性の評価、及び中間転写体10の耐久性の評価を行った。
【0102】
実施例1の中間転写体10は、厚さ80μmのポリイミドからなる基材11と、厚さ200μmのシリコンゴムからなる弾性層12と、厚さ200μmの有機EL方式の発光素子からなる紫外線放射部13と、厚さ15μmのPFAからなる保護層14とを有するものとした。
実施例2の中間転写体10は、実施例1の紫外線放射部13を、厚さ400μmの導光板134及び反射板135からなるものに変更したものである。
実施例3の中間転写体10は、実施例1の紫外線放射部13を、厚さ300μmの無機EL方式の発光素子に変更したものである。
実施例4の中間転写体10は、実施例1の構成から保護層14を削除したものである。
実施例5の中間転写体10は、実施例1の構成と同一であり、後述するように実施例1とは紫外線の露光パターンを異ならせた。
これらのうち実施例1、3−5は、第1の実施形態に対応し、実施例2は、第2の実施形態に対応する。
【0103】
比較例1、比較例2の中間転写体10としては、内部に紫外線放射部13を有しない従来の構成のものを用いた。
具体的には、比較例1の中間転写体10は、実施例4の構成から紫外線放射部13を削除したものである。
また、比較例2の中間転写体10は、比較例1の構成において、基材11の材質を透明なPET(ポリエチレンテレフタラート)に変更したものである。
【0104】
図9における「露光パターン(A〜C)」は、それぞれ以下の内容を表す。
露光パターンAは、インク移送範囲の全体に亘って均一な強度で露光(紫外線の照射)を行うものである。すなわち、露光パターンAでは、副放射部130ごとの紫外線照射強度の調整は行わず、発光させる全ての副放射部130で紫外線照射強度を均一とした。この露光パターンAにおいて、ニップ部Nに進入する前にインクが受ける積算露光量(当該インクに含まれる光重合開始剤の反応波長である395nmでの積算露光量、以下同じ)は、100mJ/cm2であり、ニップ部N内でインクが受ける積算露光量は、0.3mJ/cm2であった。
露光パターンBは、図6に示した例のように、ニップ部Nに進入する前にインクに照射される紫外線の強度I2より、ニップ部N内でインクに照射される紫外線の強度I1を高くするものである。この露光パターンBにおいて、ニップ部Nに進入する前にインクが受ける積算露光量は、50mJ/cm2であり、ニップ部N内でインクが受ける積算露光量は、400mJ/cm2であった。
露光パターンCは、従来技術に係る露光方法であり、インクがニップ部Nに進入する前においてのみ紫外線を照射するものである。この露光パターンBにおいて、ニップ部Nに進入する前にインクが受ける積算露光量は、100mJ/cm2であった。
【0105】
図9における「放射位置」は、インクに対して照射される紫外線の放射位置(発光位置)を表す。すなわち、「内側」は、インクの中間転写体10側で紫外線を放射(発光)させたことを表し、「外側」は、インクの中間転写体10側とは反対側(記録媒体M側)で紫外線を放射(発光)させたことを表す。
詳しくは、実施例1〜5では、上記各実施形態のように、中間転写体10の内部に設けられた紫外線放射部13から外周面上のインクに向けて紫外線を放射させた。
比較例1では、インクの中間転写体10側とは反対側に設けられた光源から外周面上のインクに紫外線を照射した。
比較例2では、中間転写体10の全体を透明な部材で構成し、中間転写体10の内周面側に設けられた光源から中間転写体10を通して外周面上のインクに紫外線を照射した。
【0106】
インクの転写性については、以下の基準に基づいて評価を行った。すなわち、転写率(転写されたインクの割合)が95%以上であった場合を「◎」、転写率が90%以上95%未満であった場合を「○」、転写率が85%以上90%未満であった場合を「△」、転写率が85%未満であった場合を「×」とした。
また、中間転写体10の耐久性については、以下の基準に基づいて評価を行った。すなわち、目視で中間転写体10に汚れや傷の発生が見られなかった場合を「◎」、目視で中間転写体10に汚れや傷の発生が見られたが画質に影響がなかった場合を「○」、中間転写体10の汚れや傷による画質不良が発生した場合を「×」とした。
【0107】
図9の「実験結果」の欄に示されているように、インクの転写性については、実施例1〜5では「○」以上の評価結果が得られた。これは、実施例1〜5では、中間転写体10の内部に設けられた紫外線放射部13からインクに紫外線を照射することで、インクの外周面10a側が硬く、記録媒体M側が相対的に柔らかい状態を形成できたことによる。特に、ニップ部N内における紫外線の照射強度を高めた実施例5では、記録媒体Mへのインクの定着性が良好であり「◎」の評価結果が得られた。
他方で、インクの記録媒体M側から紫外線を照射した比較例1では、記録媒体Mへの転写前にインクの記録媒体M側が硬くなり、また中間転写体10側が相対的に柔らかく剥離しにくい状態となったことに起因して「×」の評価結果となった。
また、中間転写体10の内周面側から中間転写体10を通してインクに紫外線を照射した比較例2では、比較例1よりも転写率が高かったものの、実施例1〜5よりも中間転写体10における紫外線の吸収が大きいことに起因して「△」の評価結果となった。
【0108】
また、中間転写体10の耐久性については、ポリイミドの基材11を用いた実施例1〜5、及び比較例1において「○」以上の評価結果が得られた。特に、中間転写体10の表面に保護層14を設けた実施例1〜3、5では、「◎」の評価結果が得られた。
他方で、ポリイミドより強度や耐久性に劣るPETの基材11を用いた比較例2では、「×」の結果となった。
【0109】
これらの実験結果、中間転写体10の内部から紫外線を放射させた実施例1〜5と、比較例1、2との比較により、中間転写体10の内部から紫外線を放射することで所望の状態でインクの増粘(硬化)させることができ、転写率を向上させることができるとともに、必要な耐久性を確保できることが確認された。
また、保護層14を設けた実施例1〜3、5と、保護層14のない実施例4との比較により、中間転写体10の表層に保護層14を設けることで汚れや傷が付くのを抑制することができ、中間転写体10の耐久性を向上できることが確認された。
また、ニップ部Nでの紫外線強度を高めた実施例5と、実施例1〜4との比較により、インクがニップ部Nに進入する前にインクをある程度増粘(硬化)させた上で、ニップ部N内でより強い紫外線を照射することで、アンカー効果によりインクの記録媒体Mへの密着力を高めて転写率を向上できることが確認された。
【0110】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記各実施形態では、紫外線硬化性の相変化インクを例に挙げて説明したが、インクの種別はこれに限られない。
例えば、分散媒としての水に顔料粒子等の色材を分散させた水系インクを用いても良い。水系インクでは、吐出性向上やインク物性の調整などの目的で水溶性有機溶媒がさらに添加されていても良い。水系インクを用いる場合に中間転写体10の内部に設けるエネルギー放射部は、赤外線を放射する赤外線放射部や、マイクロ波を照射するマイクロ波放射部とすることができる。これらのエネルギー放射部から外周面10a上のインクに赤外線やマイクロ派を照射することでインクが加熱され、インクの溶媒水分を除去して増粘(硬化)させることができる。また、中間転写体10の内部に、エネルギー放射部として熱放射部(ヒーター)を設けても良い。
【0111】
また、相変化インクに代えて、吐出後に液体の状態を維持するインクを用いても良い。
【0112】
また、所定のエネルギー線の照射により、粘度以外の転写容易性に係る特性が変化するインクを用いても良い。例えば、エネルギー線の照射により化学変化が生じて中間転写体10の表面や記録媒体Mの表面との架橋力が変化するインクを用いても良い。
【0113】
また、中間転写体10は、無端状のベルトに限られず、インクが着弾する外周面を備えた環状の形状を有する種々の部材を用いることができる。例えば、中間転写体10として、形状が固定された円筒状の部材を用いても良い。
【0114】
また、駆動ローラー31、従動ローラー32、加圧ローラー33及び搬送ローラー34のうち少なくとも一部の内部に、ハロゲンヒーターなどの加熱部材を設けても良い。これにより、周回移動している中間転写体10を加熱して、中間転写体10上のインクの粘度をより適切に調整することができる。
【0115】
また、上記各実施形態では、シングルパス形式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、記録ヘッド211を走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0117】
1 インクジェット記録装置
2 画像形成部
3 転写部
4 制御部
10 中間転写体
10a 外周面
10b 内周面
10c 側面
11 基材
12 弾性層
13 紫外線放射部
130 副放射部
131 陰極
131a、133a 端子
132 有機発光層
133 陽極
134 導光板
135 反射板
14 保護層
15 スペーサー部材
21 ヘッドユニット
31 駆動ローラー
32 従動ローラー
33 加圧ローラー
34 搬送ローラー
35 定着部
51 発光駆動部
52 ローラー駆動部
53 操作表示部
54 通信部
55 バス
60 導電パッド
70 紫外線光源
211 記録ヘッド
212 インク吐出面
213 ノズル
214 ヘッド制御部
M 記録媒体
N ニップ部
R1 着弾範囲
R2 転写範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9