特開2020-70196(P2020-70196A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-70196(P2020-70196A)
(43)【公開日】2020年5月7日
(54)【発明の名称】窒化物半導体層の成長方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20200410BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20200410BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20200410BHJP
   H01L 33/12 20100101ALI20200410BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20200410BHJP
   C30B 23/08 20060101ALI20200410BHJP
【FI】
   C30B29/38 Z
   H01L33/16
   H01L33/32
   H01L33/12
   H01L21/205
   C30B23/08 P
   C30B23/08 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-202529(P2018-202529)
(22)【出願日】2018年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】廣木 正伸
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 一英
(72)【発明者】
【氏名】牧本 俊樹
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
5F241
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB02
4G077BE11
4G077DA05
4G077DB08
4G077DB16
4G077ED05
4G077ED06
4G077EF03
4G077HA02
4G077SC06
4G077TA04
4G077TC13
4G077TC19
4G077TK01
5F045AA05
5F045AB09
5F045AB14
5F045AB17
5F045AC15
5F045AD09
5F045AD10
5F045AF09
5F045BB07
5F045CA10
5F045DA53
5F241AA40
5F241CA23
5F241CA40
5F241CA46
5F241CA66
(57)【要約】
【課題】異種基板の上に、結晶品質がより高い窒化物半導体層が成長できるようにする。
【解決手段】まず、第1工程S101で、窒化物半導体とは異なる結晶から構成された基板(異種基板)の上に窒化物半導体からなるバッファー層を結晶成長する。第1工程S101では、バッファー層を構成する窒化物半導体が分解する範囲の温度条件で、バッファー層の成長表面に、バッファー層を構成する窒化物半導体のIII族元素が析出しない範囲の厚さにバッファー層を結晶成長する。第2工程S102で、バッファー層の上に窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長する。第2工程では、半導体層を構成する窒化物半導体が分解しない範囲の温度条件で半導体層をエピタキシャル成長する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体とは異なる結晶から構成された基板の上に窒化物半導体からなるバッファー層を結晶成長する第1工程と、
前記バッファー層の上に窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長する第2工程と
を備え、
前記第1工程では、前記バッファー層を構成する窒化物半導体が分解する範囲の温度条件で、前記バッファー層の成長表面に、前記バッファー層を構成する窒化物半導体のIII族元素が析出しない範囲の厚さに前記バッファー層を結晶成長し、
前記第2工程では、前記半導体層を構成する窒化物半導体が分解しない範囲の温度条件で前記半導体層をエピタキシャル成長する
ことを特徴とする窒化物半導体層の成長方法。
【請求項2】
請求項1記載の窒化物半導体層の成長方法において、
前記バッファー層は、InNから構成し、
前記第1工程では、温度条件を550℃以上とする
ことを特徴とする窒化物半導体層の成長方法。
【請求項3】
請求項2記載の窒化物半導体層の成長方法において、
前記第1工程では、前記バッファー層を厚さ30nm以下に成長する
ことを特徴とする窒化物半導体層の成長方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体層の成長方法において、
前記基板は、六方晶系の結晶から構成され、前記基板の表面は、c面とされていることを特徴とする窒化物半導体層の成長方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化物半導体層の成長方法において、
前記基板は、サファイア基板であることを特徴とする窒化物半導体層の成長方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒化物半導体層の成長方法において、
前記半導体層は、InNから構成することを特徴とする窒化物半導体層の成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイアなどの窒化物半導体とは異なる結晶から構成された基板の上に窒化物半導体からなる半導体層を成長する窒化物半導体層の成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、InNなどの窒化物半導体は、青色や短波長領域の発光ダイオードなどの半導体材料として幅広く使われている。窒化物半導体は、有機金属気相成長(MOVPE)法や分子線エピタキシ(MBE)法などを用いて成長されているが、成長基板として、窒化物半導体ではないサファイア基板、Si基板、SiC基板などの異種基板が用いられることが多い。
【0003】
ここで、これらの異種基板上へ、InNなどの窒化物半導体を直接成長させると、良好な窒化物半導体層が得られないことが知られている。このため、結晶品質の高い窒化物半導体層を成長するために、様々な技術が開発されている。例えば、厚さ30nm程度のInNバッファー層を、成長温度300℃の低温で成長し、この低温成長InN層の上に、金属Inが析出しない範囲の成長温度550℃程度の高温でInN層を成長する方法(二段階成長法)がある(非特許文献1参照)。この2段階成長法により、図9に示すように、c面サファイア基板201の上に、低温で成長したInNバッファー層202を介して高温で成長したInN層203が形成される。
【0004】
ただし、サファイア基板201上に300℃で成長したInNバッファー層202は、平坦であるが、成長温度が低いので、十分な結晶品質を得ることができないと報告されている。一方で、InNは、成長温度条件が550℃以上で分解するので、550℃以上の成長温度でInN薄膜を成長した場合には、成長表面に金属Inが析出する。従って、層厚の厚いInN層を得るためには、金属Inが析出しない温度範囲で、できるだけ高温でInN層を成長することが望ましいとされている(非特許文献1参照)。
【0005】
また、上述した技術では、低温バッファー層は平坦であるが、結晶性が十分でないので、比較的高い温度で成長したInN層をバッファー層として用いる報告例もある(非特許文献2参照)。この報告によれば、図10に示すように、c面サファイア基板301の上に、成長温度520℃という比較的高温でInNバッファー層302を成長し、この後、前述した二段階成長法を用い、比較的低温で成長したInNバッファー層303を形成し、この上に、約400nmのInN層304を成長している。
【0006】
520℃という比較的高温で成長したInNバッファー層302の厚さは、約10nmである。また、約400nmの厚さの厚いInN層304の成長温度は550℃であるので、c面サファイア基板301の上に成長したInNバッファー層302の成長温度よりも高い。なお、c面サファイア基板301上に成長したInNバッファー層302の成長温度は、InNが分解する温度より低く、成長表面に金属Inが析出しない成長温度の範囲内である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】名西 他、「InNおよびInGaNの結晶成長と構造および特性の評価」、応用物理、第72巻、第5号、565−571頁、2003年。
【非特許文献2】山口 智広 他、「高温InNバッファ層導入による高品質InN膜の実現」、日本結晶成長学会誌、30巻、3号、95頁、2003年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、従来の技術では、非特許文献2の方法であっても、バッファー層の成長温度が、高い結晶性が得られる温度より低い。このため、従来の技術では、異種基板の上に、結晶品質がより高い窒化物半導体層を成長することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、異種基板の上に、結晶品質がより高い窒化物半導体層が成長できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る窒化物半導体層の成長方法は、窒化物半導体とは異なる結晶から構成された基板の上に窒化物半導体からなるバッファー層を結晶成長する第1工程と、バッファー層の上に窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長する第2工程とを備え、第1工程では、バッファー層を構成する窒化物半導体が分解する範囲の温度条件で、バッファー層の成長表面に、バッファー層を構成する窒化物半導体のIII族元素が析出しない範囲の厚さにバッファー層を結晶成長し、第2工程では、半導体層を構成する窒化物半導体が分解しない範囲の温度条件で半導体層をエピタキシャル成長する。
【0011】
上記窒化物半導体層の成長方法において、バッファー層は、InNから構成し、第1工程では、温度条件を550℃以上とすればよい。この場合、第1工程では、バッファー層を厚さ30nm以下に成長すればよい。
【0012】
上記窒化物半導体層の成長方法において、基板は、六方晶系の結晶から構成され、基板の表面は、c面とされているとよい。
【0013】
上記窒化物半導体層の成長方法において、基板は、サファイア基板であればよい。
【0014】
上記窒化物半導体層の成長方法において、半導体層は、InNから構成されていればよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、異種基板の上に、窒化物半導体が分解する範囲の温度条件で、バッファー層の成長表面に、窒化物半導体のIII族元素が析出しない範囲の厚さにバッファー層を結晶成長するようにしたので、異種基板の上に、結晶品質がより高い窒化物半導体層が成長できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態おける窒化物半導体層の成長方法について説明するフローチャートである。
図2図2は、実施の形態における窒化物半導体層の成長方法により形成された窒化物半導体層の層構成を示す断面図である。
図3図3は、実施例で作製した厚さ200nmのInN層の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
図4図4は、実施例で作製した各条件のInN層に対して、X線回折のωスキャンスペクトルを測定した。これらのωスキャンスペクトルにおけるInN層のピークの半値幅と成長温度との関係を示す特性図である。
図5図5は、実施例で作製した本発明における半導体層と、成長温度600℃で、c面サファイア基板の上に直接成長したInN層(比較例)との、X線回折スペクトル(2θ−ωスキャン)の比較を示す特性図である。
図6図6は、600℃の高温で成長したInNバッファー層の厚さと、InNによる半導体層の電子濃度との関係を示す特性図である。
図7図7は、600℃の高温で成長したInNバッファー層の厚さと、InNによる半導体層における電子の移動度との関係を示す特性図である。
図8図8は、高温InNバッファー層の成長温度と、この上に成長したInN層における電子の移動度との関係を示す特性図である。
図9図9は、2段階成長法により形成された窒化物半導体層の層構成を示す断面図である。
図10図10は、非特許文献2に報告された窒化物半導体層の層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態おける窒化物半導体層の成長方法について図1を参照して説明する。
【0018】
まず、第1工程S101で、窒化物半導体とは異なる結晶から構成された基板(異種基板)の上に窒化物半導体からなるバッファー層を結晶成長する。基板は、例えば、サファイア基板など六方晶系の結晶から構成され、表面(成長面)がc面とされていればよい。第1工程S101では、バッファー層を構成する窒化物半導体が分解する範囲の温度条件で、バッファー層の成長表面に、バッファー層を構成する窒化物半導体のIII族元素が析出しない範囲の厚さにバッファー層を結晶成長する。例えば、バッファー層は、InNから構成し、第1工程では、温度条件を550℃以上とすればよい。また、バッファー層は、厚さ30nm以下に成長すればよい。
【0019】
次に、第2工程S102で、バッファー層の上に窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長する。第2工程では、半導体層を構成する窒化物半導体が分解しない範囲の温度条件で半導体層をエピタキシャル成長する。例えば、半導体層をInNから構成する場合、第2工程では、550℃未満の成長温度条件とすることができる。実施の形態における窒化物半導体層の成長方法によれば、異種基板の上に窒化物半導体からなるバッファー層を、より高い結晶品質で成長できる高温で形成して高い結晶品質が得られているので、あまり高い成長温度とすることなく、高い結晶品質が維持された状態で、半導体層をエピタキシャル成長することができる。
【0020】
以上に説明した実施の形態における窒化物半導体層の成長方法により、図2に示すように、サファイアなどによる異種基板101の上に、窒化物半導体からなるバッファー層102が結晶成長され、バッファー層102の上に、窒化物半導体からなる半導体層103がエピタキシャル成長した状態が得られる。
【0021】
従来の二段階成長法では、低温において成長した薄い窒化物半導体のバッファー層の上に、より高温で窒化物半導体層を成長することで、バッファー層に高温の熱処理が加わる状態とし、引き続き成長する窒化物半導体薄膜のための高い結晶品質の成長表面を形成する。このように、高温で窒化物半導体層を成長することによって得られる高い結晶品質の成長表面をもとにして窒化物半導体層成長することで、窒化物半導体層の結晶性を向上させている。
【0022】
これに対して、本発明では、高温で薄く窒化物半導体を結晶成長させてバッファー層を形成することで、バッファー層の表面(成長表面)を高い結晶品質に形成する。
【0023】
ここで、例えば、InNは550℃以上で分解するので、InNをバッファー層として高温で厚く形成すると、成長表面に金属Inが析出するとともに、島状成長が起こるので、表面の平坦性は劣化する。このため、従来の技術では、InNが分解しない550℃未満の温度でInNによるバッファー層の成長が行われてきた。
【0024】
しかしながら、異種基板の上であっても、550℃以上で成長したInN層(バッファー層)においては、後述するように、X線回折のωスキャンスペクトルの半値幅は極めて狭くなる。このことは、分解が始まる550℃以上の高温で成長したInN層自体の結晶配向性が大幅に向上することを示している。
【0025】
また、本発明では、高温で成長するInN層(バッファー層)の厚さを30nm以下と薄くするこことで、成長表面における金属Inの析出を抑制している。
【0026】
これらの結果、本発明によれば、異種基板の上に形成したバッファー層の上に、窒化物半導体による厚い半導体層を、高い結晶品質でエピタキシャル成長することができる。
【0027】
[実施例]
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。まず、プラズマMBE法を用い、c面サファイア基板上にInN層を直接成長した。InN層の成長においては、InセルからInの分子線を加熱した基板表面に照射するとともに、プラズマで活性化した窒素ガスを基板表面に供給した。窒素ガスの流量は2sccmとし、プラズマパワーは500Wとした。また、InN層の厚さを200nmと固定して、成長温度を、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃変化させ、これらの成長温度毎にInN層を直接成長した。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1013hPaの流体が1分間に1cm3流れることを示す。
【0028】
これらのInN層の表面の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を図3に示す。成長した層の厚さを200nmと厚く形成しているため、温度条件によっては、InN層の成長表面は、平坦性が悪化して凹凸が形成されている。成長温度が高くなるとともに、凹凸が大きくなり、表面の平坦性が劣化する。
【0029】
また、各条件のInN層に対して、X線回折のωスキャンスペクトルを測定した。これらのωスキャンスペクトルにおけるInN層のピークの半値幅と成長温度との関係を図4に示す。成長温度が高くなるとともに、半値幅が急激に減少する。特に、成長温度600℃の条件では、半値幅が極めて狭い。また、成長温度600℃の条件では、結晶の径が大きいので、この上に形成する窒化物半導体の層の結晶核として利用できると考えられる。
【0030】
以上のことを踏まえて、600℃の高温で成長した厚さの薄いInNによるバッファー層を用い、この上に、成長温度300℃でInNからなる半導体層を、厚さ200nmにエピタキシャル成長した。このようにして形成(エピタキシャル成長)したInNからなる半導体層と、成長温度600℃で、c面サファイア基板の上に直接成長したInN層(比較例)との、X線回折スペクトル(2θ−ωスキャン)の比較を図5示す。なお、バッファー層は、厚さ30nmとした。
【0031】
前述したように、InNの分解温度を超える600℃でInNを厚く成長すると、成長したInNの表面の平坦性が劣化する。このため、600℃と高温で成長したInNバッファー層の厚さ30nmとは、InNバッファー層の表面の平坦性が劣化しない成長温度で成長した場合の範囲の厚さを示している。
【0032】
従来の報告例と同様に、成長温度600℃でc面サファイア基板の上に直接成長した比較例のInN層では、図5の(b)に示すように、金属Inの析出によるピークが観測された。これに対し、本発明によるInNからなる半導体層は、図5の(a)に示すように、金属Inの析出は観測されなかった。この理由としては、600℃で成長するInNバッファー層の厚さを30nmまで薄くしていることが考えられる。このため、本発明において、高温で成長するInNからなるバッファー層の厚さは、30nm以下であることが望ましい。
【0033】
次に、実施の形態におけるInNからなる半導体層、および比較例のInN層の各々に、蒸着法などによりAl/Au電極を形成し、この電極を用いてvan der Pauw法を用いたホール効果測定を行った。実施の形態におけるInNからなる半導体層においては、この下に形成しているバッファー層の層厚が異なる複数のサンプルについて、測定を実施している。なお、実施の形態におけるInNからなる半導体層および、比較例のInN層のいずれも、n型伝導を示した。
【0034】
図6に、600℃の高温で成長したInNバッファー層の厚さと、InNによる半導体層の電子濃度との関係を示す。高温バッファー層を用いずに、c面サファイア基板上にInN層を直接成長した比較例の電子濃度は、バッファー層の厚さを0nmとしてプロットしている。図6に示すように、バッファー層の有無にかかわらず、電子濃度はほぼ一定である。
【0035】
図7に、600℃の高温で成長したInNバッファー層の厚さと、InNによる半導体層における電子の移動度との関係を示す。高温バッファー層を用いずに、c面サファイア基板上にInN層を直接成長した比較例における電子の移動度は、バッファー層の厚さを0nmとしてプロットしている。本発明の特徴である高温で成長したInNバッファー層を用いることにより、電子の移動度が10倍も増加している。このように、本発明により、InN層の結晶品質を飛躍的に向上させることができる。
【0036】
図8に、高温InNバッファー層の成長温度と、この上に成長したInN層における電子の移動度との関係を示す。バッファー層の厚さを30nmとし、InN層の厚さを200nmとし、バッファー層の成長温度を変化させて移動度を測定した。InNからなるバッファー層の成長温度を550℃以上とすることで、この上に形成したInN層においては、高い電子の移動度が得られることがわかる。従って、InNからなるバッファー層の成長温度は、550℃以上であることが望ましい。
【0037】
なお、上述では、窒化物半導体としてInNを例に説明したが、これに限るものではなく、窒化物半導体は、GaN、AlGaN、InGaNであっても同様の効果が期待できる。ただし、GaN、AlGaN、InGaNを、InNバッファー層に引き続いて成長する場合、各窒化物半導体の成長に適した温度条件とすればよく、半導体層のエピタキシャル成長において、バッファー層の成長温度以上であってもよい。
【0038】
また、上述した実施例では、窒化物半導体とは異なる異種基板としてc面サファイア基板の例を示したが、a面やm面などのサファイア基板、さらには、Si基板やSiC基板を用いた場合でも同様な効果が期待できる。また、上述した実施例では、InNからなる半導体層の厚さを200nmとしたが、これに限るものではなく、バッファー層の上に形成する半導体層の層厚は、例えば、200nm以上としてもよいことは言うまでもない。
【0039】
以上に説明したように、本発明によれば、異種基板の上に、窒化物半導体が分解する範囲の温度条件で、バッファー層の成長表面に、窒化物半導体のIII族元素が析出しない範囲の厚さにバッファー層を結晶成長するようにしたので、異種基板の上に、結晶品質がより高い窒化物半導体層が成長できるようになる。このように、高い結晶品質の窒化物半導体の層が得られるので、この層を利用して作製するデバイスの特性を改善することが期待できる。
【0040】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0041】
101…異種基板、102…バッファー層、103…半導体層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10