特開2020-72663(P2020-72663A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テラヴィア ホールディングス, インコーポレイテッドの特許一覧
特開2020-72663従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産
<>
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000103
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000104
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000105
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000106
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000107
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000108
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000109
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000110
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000111
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000112
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000113
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000114
  • 特開2020072663-従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産 図000115
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-72663(P2020-72663A)
(43)【公開日】2020年5月14日
(54)【発明の名称】従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/13 20060101AFI20200417BHJP
   C12P 7/64 20060101ALI20200417BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20200417BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20200417BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20200417BHJP
   A23K 10/26 20160101ALN20200417BHJP
【FI】
   C12N1/13ZNA
   C12P7/64
   C12N15/29
   C12N15/31
   C12N15/52
   A23K10/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】187
(21)【出願番号】特願2019-191850(P2019-191850)
(22)【出願日】2019年10月21日
(62)【分割の表示】特願2017-15080(P2017-15080)の分割
【原出願日】2009年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/118,590
(32)【優先日】2008年11月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/118,994
(32)【優先日】2008年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/174,357
(32)【優先日】2009年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/219,525
(32)【優先日】2009年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】509328423
【氏名又は名称】テラヴィア ホールディングス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スコット フランクリン
(72)【発明者】
【氏名】アラビンド ソマンチ
(72)【発明者】
【氏名】カレン エスピナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ルデンコ
(72)【発明者】
【氏名】ペネロペ チュア
【テーマコード(参考)】
2B150
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AE05
2B150DD47
2B150DD49
2B150DD56
2B150DD59
2B150DD60
4B064AD85
4B064BJ05
4B064CA08
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA20
4B065AA83X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA13
4B065CA43
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】従属栄養微生物における、用途に応じた油の生産の提供。
【解決手段】Prototheca内で油、燃料、油脂化学品、及び他の化合物を生成する方法及び組成物が提供されており、油を生み出す微生物、このような微生物を低コストで育てる方法を含む。例えば、リパーゼ、ショ糖トランスポーター、ショ糖インベルターゼ、フルクトキナーゼ、多糖分解酵素、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素、及び/又はアシルキャリアータンパク質をコードする外来遺伝子を含むPrototheca細胞は、再生可能なディーゼル、バイオディーゼル、再生可能なジェット燃料のような輸送燃料を製造するのに有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2008年11月28日に出願した米国仮出願第61/118,590号、2008年12月1日に出願した米国仮出願第61/118,994号、2009年4月30日に出願した米国仮出願第61/174,357号、2009年6月23日に出願した米国仮出願第61/219,525号の利益を請求する。これらの出願は、それぞれ、あらゆる目的のために内容全体が参照により組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照)
本明細書は、添付した1〜72ページに示されるように、配列表を含んでいる。
【0003】
本発明は、微生物から作られる、油、燃料、油脂化学品の生成に関する。特定的には、本開示は、油を生み出す微細藻類、脂質、脂肪酸エステル、脂肪酸、アルデヒド、アルコール、アルカンといった有用な化合物を産生するために微生物を育てる方法、並びに、上述の微生物の遺伝子を組み換えて、微細藻類による油の産生効率を高め、産生される油の種類及び組成物を変える方法に関する。
【背景技術】
【0004】
化石燃料は、有機材料が地下に埋まった地質堆積物のうち、燃焼性のものを指す一般的な用語であり、腐敗した植物及び動物から作られ、地殻の熱及び圧力に何億年もさらされることによって、未精製油、石炭、天然ガス又は重油に変換されたものである。化石燃料は、限りある再生不可能な資源である。
【0005】
世界経済によってエネルギーの必要性が増しているが、炭化水素のコストも重くのしかかってきている。エネルギー以外でも、プラスチック及び化学薬品の製造業者を含む多くの産業には、製造プロセスの原料としての炭化水素の供給力が大きく関与している。現行の供給源に代わる費用効率のよい代替法があれば、エネルギー及びこれらの原材料の費用が高騰するのを緩和することができるだろう。
【0006】
PCT公開番号第2008/151149号は、油を生成するために微細藻類を育てる方法及び材料を記載しており、特に、微細藻類Chlorella protothecoidesが生成する油から、ディーゼル燃料を生成することを例として挙げている。微細藻類において油を生成するための改良法、特に、色素を含まずに、鎖長が短く、飽和度の高い油を高収率及び高効率で製造する方法が依然として必要とされている。本発明は、この要求を満たすものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外来遺伝子を含むPrototheca属の細胞を提供し、ある実施形態では、この細胞は、Prototheca moriformis、Prototheca
krugani、Prototheca stagnora又はPrototheca
zopfiiといった種の株であり、他の実施形態では、この細胞は、配列番号11〜19の1つ以上に対するヌクレオチド同一性が少なくとも70%、75%、80%、85%又は95%の23S rRNA配列を有している。ある種の細胞では、外来遺伝子はコード配列であり、プロモーターと動作可能に連結した状態であり、ある実施形態では、プロモーターは、Prototheca属の種に内在する遺伝子に由来する。さらなる実施形態では、コード配列は、ショ糖インベルターゼ、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素、アシルキャリアータンパク質、および抗生物質への耐性を付与するタンパク質からなる群から選択されるタンパク質をコードする。鎖長がC8、C10、C12又はC14の1つ以上の脂肪族アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼのいくつかの実施形態としては、配列番号59、61、63、138〜140からなる群から選択される1つ以上の配列に対するアミノ酸同一性が少なくとも50%、60%、70%、80%又は90%のアシル−ACPチオエステラーゼが挙げられる。さらなる実施形態では、コード配列は、微細藻類に由来するプラスチド標的配列を含んでおり、ある実施形態では、微細藻類は、Prototheca属又はChlorella属の種、及びChlorellaceae科に属する他の属の種である。ある実施形態では、プラスチド標的配列は、配列番号127〜133の1つ以上に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも20%、25%、35%、45%又は55%であり、プラスチドのプラスチドゲノムには存在しない外来遺伝子によってコードされるタンパク質を標的とすることができる。他の実施形態では、プロモーターは、細胞培地の窒素量の減少又は枯渇に応答して上方調節され、例えば、細胞外の環境が、少なくとも10mM又は5mMの窒素を含む状態から、窒素を含まない状態に変わると、Prototheca属の細胞の転写産物量で決定した場合、少なくとも3倍上方調節される。さらなる実施形態では、プロモーターは、配列番号91〜102の1つに含まれる50ヌクレオチド以上のセグメントを含む。他の実施形態では、上述の細胞は、配列番号11〜19の1つ以上に対するヌクレオチド同一性が少なくとも70%、75%、80%、85%又は95%の23S rRNA配列を有している。他の実施形態では、外来遺伝子は、細胞の染色体に組み込まれる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
外来遺伝子を含む、Prototheca属の細胞。
(項目2)
前記外来遺伝子が、コード配列であり、プロモーターに動作可能に連結している、項目1に記載の細胞。
(項目3)
前記プロモーターが、Prototheca属の種に内在する遺伝子に由来する、項目2に記載の細胞。
(項目4)
前記コード配列が、ショ糖インベルターゼ、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素、アシルキャリアータンパク質、抗生物質への耐性を付与するタンパク質からなる群から選択されるタンパク質をコードする、項目2に記載の細胞。
(項目5)
前記タンパク質が、鎖長がC8、C10、C12又はC14の1つ以上の酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼである、項目4に記載の細胞。
(項目6)
前記脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼが、配列番号59、61、63、138〜140からなる群から選択される1つ以上の配列に対するアミノ酸同一性が少なくとも50%である、項目5に記載の細胞。
(項目7)
前記コード配列が、微細藻類に由来するプラスチド標的配列を含む、項目5に記載の細胞。
(項目8)
前記プラスチド標的配列が、Prototheca属の種に由来する、項目7に記載の細胞。
(項目9)
前記プラスチド標的配列が、配列番号127〜133の1つ以上に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも25%であり、プラスチドのプラスチドゲノムには存在しない外来遺伝子によってコードされるタンパク質を標的とすることができる、項目7に記載の細胞。(項目10)
細胞外の環境が、少なくとも5mMの窒素を含む状態から、窒素を含まない状態に変わると、前記プロモーターが、Prototheca属の細胞において、少なくとも3倍上方調節される、項目2に記載の細胞。
(項目11)
前記プロモーターが、配列番号91〜102の1つに含まれる50ヌクレオチド以上のセグメントを含む、項目10に記載の細胞。
(項目12)
前記外来遺伝子は、前記細胞の染色体に組み込まれる、項目1に記載の細胞。
(項目13)
前記細胞は、配列番号11〜19の1つ以上に対するヌクレオチド同一性が少なくとも75%の23S rRNA配列を有している、項目1に記載の細胞。
(項目14)
前記細胞が、Prototheca moriformis、Prototheca krugani、Prototheca stagnora又はPrototheca zopfiiである、項目1に記載の細胞。
(項目15)
外来の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を含み、C8〜C14が少なくとも4%の脂質プロフィールを有する、Prototheca属の細胞。
(項目16)
C8の量が少なくとも0.3%である、項目15に記載の細胞。
(項目17)
C10の量が少なくとも2%である、項目15に記載の細胞。
(項目18)
C12の量が少なくとも2%である、項目15に記載の細胞。
(項目19)
C14の量が少なくとも4%である、項目15に記載の細胞。
(項目20)
C8〜C14の量が少なくとも30%である、項目15に記載の細胞。
(項目21)
外来のショ糖インベルターゼ遺伝子をさらに含む、項目15に記載の細胞。
(項目22)
前記細胞が、配列番号11〜19の1つ以上に対するヌクレオチド同一性が少なくとも75%の23S rRNA配列を有している、項目15に記載の細胞。
(項目23)
前記細胞が、Prototheca moriformis、Prototheca krugani、Prototheca stagnora又はPrototheca zopfiiである、項目15に記載の細胞。
(項目24)
前記外来の脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子は、前記細胞の染色体に組み込まれる、項目15に記載の細胞。
(項目25)
項目15に記載の細胞を育てることを含む、C8〜C14が少なくとも4%のトリグリセリド組成物を生産する方法。
(項目26)
C8の量が少なくとも0.3%である、項目25に記載の細胞。
(項目27)
C10の量が少なくとも2%である、項目25に記載の細胞。
(項目28)
C12の量が少なくとも2%である、項目25に記載の細胞。
(項目29)
C14の量が少なくとも4%である、項目25に記載の細胞。
(項目30)
C8〜C14の量が少なくとも30%である、項目25に記載の細胞。
(項目31)
項目15に記載の細胞を育てることを含み、前記細胞が、ショ糖インベルターゼをコードする外来遺伝子をさらに含み、ショ糖が炭素源として与えられる、トリグリセリド組成物を生産する方法。
(項目32)
前記ショ糖インベルターゼが、配列番号3、20〜29、90の1つ以上に対するアミノ酸同一性が少なくとも50%である、項目31に記載の方法。
(項目33)
a.C8〜C14が少なくとも4%、および
b.以下の1つ以上の属性:
i.総カロチノイドが0.4マイクログラム/ml未満;
ii.リコピンが0.001マイクログラム/ml未満;
iii.βカロチンが0.02マイクログラム/ml未満;
iv.油脂1kgあたり、クロロフィルが0.02ミリグラム未満;
v.油脂100gあたり、γ−トコフェロールが0.40〜0.60ミリグラム;
vi.油脂100gあたり、カンペステロールが3〜9mg;
vii.油脂1gあたり、総トコトリエノール量が0.5ミリグラム未満
の脂質プロフィールを有する、トリグリセリド油脂組成物。
(項目34)
C8の量が少なくとも0.3%である、項目33に記載のトリグリセリド油脂組成物。(項目35)
C10の量が少なくとも2%である、項目33に記載のトリグリセリド油脂組成物。
(項目36)
C12の量が少なくとも2%である、項目33に記載のトリグリセリド油脂組成物。
(項目37)
C12の量が少なくとも4%である、項目33に記載のトリグリセリド油脂組成物。
(項目38)
C10〜C14の量が少なくとも30%である、項目33に記載のトリグリセリド油脂組成物。
(項目39)
項目33の油と、大豆、菜種、キャノーラ、パーム、パーム核、ココナツ、トウモロコシ、野菜くず、ナンキンハゼ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、鶏脂、牛脂、豚脂、微細藻類、大型藻類、クフェア、亜麻、ピーナッツ、上質のホワイトグリース、ラード、カメリナ・サティバ、カラシの種子、カシューナッツ、オーツ麦、ハウチワマメ、ケナフ、キンセンカ、麻、コーヒー、亜麻仁(亜麻)、ヘーゼルナッツ、ユーホルビア、カボチャの種、コリアンダー、ツバキ、ゴマ、ベニバナ、イネ、アブラギリ、ココア、コプラ、ケシ、トウゴマの実、ピーカン、ホホバ、ジャトロファ、マカダミア、ブラジルナッツ、アボカド、石油、又は上述のいずれかの油の留分からなる群から選択される少なくとも1つの他の組成物とのブレンド。
(項目40)
トランスエステル化、水素化、ハイドロクラッキング、脱酸素、異性化、インターエステル化、ヒドロキシル化、遊離脂肪酸を得るための加水分解、鹸化からなる群から選択される1つ以上の化学反応を行うことを含む、項目33に記載の油を処理する方法。
(項目41)
項目33に記載の油の水素化及び異性化から作られる燃料。
(項目42)
項目33に記載の油のトランスエステル化から作られる燃料。
(項目43)
ASTM D86 T10−T90の蒸留範囲が、少なくとも25℃である、Prototheca属の細胞から単離されたトリグリセリドから作られるアルカン組成物。
(項目44)
脂肪酸アルキルエステル組成物であって、前記組成物が、ASTM D6751 A1の冷状態浸漬時間が120秒未満である、Prototheca属の細胞から単離されたトリグリセリドから作られる、脂肪酸アルキルエステル組成物。
(項目45)
(a)20〜30モル%のガラクトース;55〜65モル%のグルコース;5〜15モル%のマンノースからなるリストに基づく1つ以上の単糖類を含む多糖類と;
(b)タンパク質と;
(c)配列番号11〜19の1つ以上に対するヌクレオチド同一性が少なくとも75%の23S rRNA配列を含むDNAと;
(d)外来遺伝子とを含む、組成物。
(項目46)
前記外来遺伝子が、ショ糖インベルターゼ及び脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼから選択される、項目45に記載の組成物。
(項目47)
前記外来遺伝子が、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼであり、前記組成物が、C8〜C14が少なくとも4%の脂質プロフィールを有する脂質をさらに含む、項目46に記載の組成物。
(項目48)
前記組成物が、動物の餌として消費するように作成される、項目45に記載の組成物。
【0008】
本発明の細胞のさらなる実施形態では、細胞は、Prototheca属の細胞であり、外来の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を含み、細胞の総脂質の少なくとも4%がC8〜C14であり、C8の量は、細胞の総脂質の少なくとも0.3%であり、C10の量は、細胞の総脂質の少なくとも2%であり、C12の量は、細胞の総脂質の少なくとも2%であり、C14の量は、細胞の総脂質の少なくとも4%であり、C8〜C14の量は、細胞の総脂質の10〜30%、20〜30%、又は少なくとも10%、20%、又は30%であるという脂質プロフィールを有する。ある実施形態では、細胞は、外来のショ糖インベルターゼ遺伝子をさらに含んでいる。ある実施形態では、細胞は、Prototheca moriformis、Prototheca krugani、Prototheca stagnora又はPrototheca zopfiiといった種の株であり、他の実施形態では、細胞は、配列番号11〜19の1つ以上に対するヌクレオチド同一性が少なくとも70%、75%、80%、85%又は95%の23S rRNA配列を有している。他の実施形態では、外来の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子は、細胞の染色体に組み込まれる。本発明の他の実施形態は、C8〜C14が、w/w又は面積百分率でトリグリセリド組成物の少なくとも4%であり、C8の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも0.3%であり、C10の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも2%であり、C12の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも2%であり、C14の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも4%であり、C8〜C14のの量が、w/w又は面積百分率で10〜30%、20〜30%、又は少なくとも10%、20%、又は30%であるような脂質プロフィールを有するトリグリセリド組成物を製造する方法を含む。また、本発明は、上述の細胞を育てることを含む、トリグリセリド組成物を製造する方法を含み、ここで、この細胞は、ショ糖インベルターゼをコードする外来遺伝子も含んでおり、ショ糖が炭素源として与えられる。ある実施形態では、ショ糖インベルターゼは、配列番号3、20〜29、90の1つ以上に対するアミノ酸同一性が少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%である。
【0009】
本発明の実施形態は、トリグリセリド油脂組成物、及びトリグリセリド油脂組成物を含有する細胞を含み、このトリグリセリド油脂組成物は、C8〜C14が少なくとも4%という脂質プロフィールを有しており、さらに、総カロチノイドが0.1〜0.4μg/ml、総カロチノイドが0.4μg/ml未満、リコピンが0.001μg/ml未満であり;油1kgあたり、β−カロチンが0.02μg/ml未満、クロロフィルが0.02mg未満であり;油100gあたり、γ−トコフェロールが0.40〜0.60mgであり;油1gあたり、総トコトリエノールが0.2〜0.5mg、油1gあたり、総トコトリエノールが0.4mg未満、油100gあたり、カンペステロールが4〜8mg、油100gあたり、スチグマステロールが40〜60mgのうち、1つ以上の属性を有している。本発明のある実施形態では、トリグリセリド油脂組成物は、C8〜C14が、w/w又は面積百分率でトリグリセリド組成物の少なくとも4%であり、C8の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも0.3%であり、C10の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも2%であり、C12の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも2%であり、C14の量が、w/w又は面積百分率で少なくとも4%であり、C8〜C14の量が、w/w又は面積百分率で10〜30%、20〜30%、又は少なくとも10%、20%、又は30%であるという脂質プロフィールを有している。他の実施形態では、トリグリセリド油脂組成物を、大豆、菜種、キャノーラ、パーム、パーム核、ココナツ、トウモロコシ、野菜くず、ナンキンハゼ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、鶏脂、牛脂、豚脂、微細藻類、大型藻類、クフェア、亜麻、ピーナッツ、上質のホワイトグリース、ラード、カメリナ・サティバ、カラシの種子、カシューナッツ、オーツ麦、ハウチワマメ、ケナフ、キンセンカ、麻、コーヒー、亜麻仁(亜麻)、ヘーゼルナッツ、ユーホルビア、カボチャの種、コリアンダー、ツバキ、ゴマ、ベニバナ、イネ、アブラギリ、ココア、コプラ、ケシ(pium
poppy)、トウゴマの実、ピーカン、ホホバ、ジャトロファ、マカダミア、ブラジルナッツ、アボカド、石油、又は上述のいずれかの油の留分からなる群から選択される少なくとも1つの他の組成物とブレンドする。
【0010】
また、本発明の方法は、トランスエステル化、水素化、ハイドロクラッキング、脱酸素、異性化、インターエステル化、ヒドロキシル化、遊離脂肪酸を得るための加水分解、鹸化からなるリストに基づく1つ以上の化学反応を行うことによって上述の油を処理することを含む。また、本発明は、上述の油の水素化及び異性化によって作られる炭化水素燃料、及び上述の油のトランスエステル化によって作られる脂肪酸アルキルエステルも含む。ある実施形態では、炭化水素燃料は、Prototheca属の細胞から単離されたトリグリセリドから作られ、ここで、ASTM D86 T10−T90の蒸留範囲は、少なくとも25℃である。他の実施形態では、脂肪酸アルキルエステル燃料は、Prototheca属の細胞から単離されたトリグリセリドから作られ、この組成物は、ASTM D6751 A1の冷状態浸漬時間は、120秒未満である。
【0011】
また、本発明は、(a)20〜30モル%のガラクトース;55〜65モル%のグルコース;5〜15モル%のマンノースからなるリストに基づく1つ以上の単糖類を含む多糖類と;(b)タンパク質と;(c)配列番号11〜19の1つ以上に対するヌクレオチド同一性が少なくとも70%、75%、80%、85%又は95%の23S rRNA配列を含むDNAと;(d)外来遺伝子とを含む組成物も含む。ある実施形態では、外来遺伝子は、ショ糖インベルターゼ及び脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼから選択され、さらなる実施形態では、組成物は、C8〜C14が少なくとも4%の脂質プロフィールを有する脂質をさらに含む。他の実施形態では、組成物は、動物の餌として消費するように処方される。
【0012】
本発明は、Prototheca属の細胞の培地における窒素量の減少又は枯渇に応答して上方調節され、例えば、細胞外の環境が、少なくとも10mM又は5mMの窒素を含む状態から、窒素を含まない状態に変わると、細胞の転写産物量で決定した場合、少なくとも3倍上方調節されるような、プロモーターをコードする組み換え核酸を含む。ある実施形態では、組み換え核酸は、配列番号91〜102の1つに含まれる50ヌクレオチド以上のセグメントを含む。また、本発明は、発現カセットを含む核酸ベクターを含み、この発現カセットは、(a)Prototheca属の細胞内で活性なプロモーターと;(b)このプロモーターに動作可能に連結し、コード配列のコドンの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、又は80%に対し、表1の最も好ましいコドン又は2番目に好ましいコドンを含むような、コード配列とを含む。ある種のベクターでは、コード配列は、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼを有するフレーム内に、プラスチド標的配列を含み、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼとしては、鎖長がC8、C10、C12又はC14の1つ以上の脂肪族アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有するチオエステラーゼが挙げられる。ある種のベクターは、あるタンパク質がPrototheca属の細胞のプラスチドを標的とするように仕向けることが可能なペプチドをコードするプラスチド標的配列を含み、例えば、微細藻類に由来するもの、及び、プラスチド標的配列が、配列番号127〜133の1つ以上に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも20%、25%、35%、45%又は55%であり、あるタンパク質がPrototheca属の細胞のプラスチドを標的とするように仕向けることが可能なものが挙げられる。本発明のさらなるベクターは、Prototheca属の細胞の核ゲノムに内在する核酸配列を含み、この配列は、少なくとも200ヌクレオチド長であり、ある種のベクターは、Prototheca属の細胞の核ゲノムに内在する第1の核酸配列及び第2の核酸配列を含み、この第1の配列及び第2の配列が、(a)それぞれ、少なくとも200ヌクレオチド長であり;(b)発現カセットに隣接しており;(c)Protothecaの同じ染色体上に、5、10、15、20、50kBを超えて離れることがない場所に位置している。
【0013】
また、本発明は、配列番号134〜135の片方又は両方に対するヌクレオチド同一性が少なくとも80%、90%、95%又は98%の組み換え核酸、及び、配列番号136〜137の片方又は両方に対するアミノ酸同一性が少なくとも80%、90%、95%又は98%のタンパク質をコードする組み換え核酸も含む。
【0014】
また、本発明は、(a)固定炭素源が存在する条件下で、Prototheca属の細胞集合を培養することと、(b)この培養した微生物から脂質成分を単離することとを含み、(a)において、(i)細胞が、外来遺伝子を含み;(ii)細胞が、細胞乾燥重量の少なくとも10%、20%、30%、40%、60%、又は70%を脂質として蓄積し;(iii)固定炭素源が、ソルガム及び解重合されたセルロース系材料からなる群から選択される、トリグリセリド組成物を生成する方法も含む。ある実施形態では、固定炭素源は、トウモロコシ茎葉、Miscanthus、飼料用ソルガム、テンサイパルプ、サトウキビの絞りかすからなる群から選択される、解重合されたセルロース系材料であり、場合により、培養工程の前に水で洗浄しておく。いくつかの方法では、固定炭素源は、解重合されたセルロース系材料であり、解重合されたセルロース系材料のグルコース濃度は、培養工程の前に、少なくとも300g/リットル、少なくとも400g/リットル、少なくとも500g/リットル、又は少なくとも600g/リットルの濃度になるまで濃縮されており、細胞が成長し、脂質を蓄積するように、時間をかけて培養物に供給する。いくつかの方法では、外来遺伝子は、鎖長がC8、C10、C12又はC14の1つ以上の酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードし、いくつかの方法では、トリグリセリドは、C8〜C14が少なくとも4%という脂質プロフィールを有しており、さらに、総カロチノイドが0.1〜0.4μg/ml、油1kgあたり、クロロフィルが0.02mgであり;油100gあたり、γ−トコフェロールが0.40〜0.60mgであり;油1gあたり、総トコトリエノールが0.2〜0.5mg、油100gあたり、カンペステロールが4〜8mg、油100gあたり、スチグマステロールが40〜60mgの1つ以上の属性を有している。
【0015】
本発明のさらなる方法は、(a)解重合されたセルロース系材料が存在する条件下で、微生物の集合を培養することと、(b)この培養した微生物から脂質成分を単離することとを含み、(a)において、(i)解重合されたセルロース系材料を、培養工程の前に水で洗浄しておき;(ii)細胞が、細胞乾燥重量の少なくとも10%、20%、30%、40%、60%、又は70%を脂質として蓄積し;(iii)解重合されたセルロース系材料が、育てる工程の前に、グルコース濃度が少なくとも300、400、500、又は600g/リットルになるまで濃縮されており;(iv)微生物が、解重合されたセルロース系材料において、少なくとも300、400、500、又は600g/リットルのグルコースが微生物に供給されるような流加回分反応で培養される、トリグリセリド組成物を生成することを含む。ある実施形態では、固定炭素源は、トウモロコシ茎葉、Miscanthus、飼料用ソルガム、テンサイパルプ、サトウキビの絞りかすからなる群から選択される、解重合されたセルロース系材料である。さらなる実施形態では、微生物は、Prototheca属の種であり、鎖長がC8、C10、C12又はC14の1つ以上の酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼのような、外来遺伝子を含む。本発明のさらなる方法は、炭素源としてショ糖が存在する条件下、配列番号30に対するヌクレオチド同一性が少なくとも90%又は96%の23S rRNA配列を有する細胞を育てることを含む、トリグリセリド油脂を生産することを含む。
【0016】
また、本発明は、トリグリセリド油脂に対して、トランスエステル化、水素化、ハイドロクラッキング、脱酸素、異性化、インターエステル化、ヒドロキシル化、加水分解、鹸化からなるリストに基づく1つ以上の化学反応を行うことを含む、化学物質を生産する方法を含み、ここで、この油は、C8〜C14が少なくとも4%という脂質プロフィールを有しており、さらに、総カロチノイドが0.1〜0.4μg/ml、油1kgあたり、クロロフィルが0.02mgであり;油100gあたり、γ−トコフェロールが0.10〜0.60mgであり;油1gあたり、総トコトリエノールが0.1〜0.5mg、油100gあたり、カンペステロールが1〜8mg、油100gあたり、スチグマステロールが10〜60mgの1つ以上の属性を有している。ある種の方法は、鎖長がC8、C10、C12又はC14の1つ以上の脂肪族アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を含むPrototheca属の細胞を育てることによって、油を生産することによって行われる。いくつかの方法では、加水分解反応は、鹸化、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素加水分解、触媒的加水分解、加圧熱水による加水分解からなる群から選択され、油がグリセロールと脂肪酸とに分解する触媒的加水分解反応を含む。さらなる方法では、脂肪酸は、アミノ化反応を受け、脂肪族窒素化合物を生成するか、又はオゾン分解反応を受け、一塩基酸及び二塩基酸を生成する。ある実施形態では、油は、酵素による分解及び加圧による分解からなる群から選択される、トリグリセリド分解方法を受ける。いくつかの方法では、加水分解反応の後に縮合反応が起こる。他の方法は、油の水素化処理反応を行うことを含み、場合により、この生成物は、水素化処理反応の前に、又は水素化処理反応と同時に脱酸素反応又は縮合反応を受ける。ある方法は、気体除去反応をさらに含む。さらなる方法は、加水分解反応、水素化、水素化−水素化分解の連続反応、水素化分解−水素化の連続反応、水素化−水素化分解反応の組み合わせからなる群から選択される脱酸素反応を行うことによって上述の油を処理することを含む。ある方法では、脱酸素反応の後に縮合反応を行う。他の方法は、上述の油に対してエステル化反応を行うことを含み、場合により、インターエステル化反応又はトランスエステル化反応を行うことを含む。他の方法は、上述の油に対してヒドロキシル化反応を行うことを含み、場合により、ヒドロキシル化反応の後に縮合反応を行う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、炭素源としてソルガムを用いて成長させた、Prototheca種及びChlorella luteoviridis株SAG 2214の成長曲線を示す。
図2図2は、炭素源としてソルガムを用いて成長させた、Prototheca種及びChlorella luteoviridis株SAG 2214の成長曲線を示す。
図3図3は、グルコース及びショ糖を用いた場合の、SAG 2214の経時的な成長を示す。
図4図4は、実施例3で記載されるような、Prototheca形質転換を用いたカセットのマップを示す。
図5図5は、実施例3で記載されるような、UTEX株1435の3つの形質転換体のサザンブロット分析の結果を示す。
図6図6は、コドンが最適化されたsuc2(酵母ショ糖インベルターゼ(yInv))トランス遺伝子構築物と、コドンが最適化されていないsuc2(酵母ショ糖インベルターゼ(yInv))トランス遺伝子構築物の模式図を示す。関連する制限クローニングサイトが示されており、矢印は転写方向を示している。
図7図7aは、セルロース系から誘導された糖類(トウモロコシ茎葉、ビートパルプ、ソルガムの茎、Miscanthus、グルコース対照)を用いて成長させたPrototheca moriformisの結果を示す。成長は、光学密度の測定値であらわされている(A750の読み)。図7bは、異なる濃度のトウモロコシ茎葉から誘導されたセルロース系糖を用い、グルコース/キシロース対照と比較した場合の、Prototheca moriformisを用いた成長実験の結果を示す。図7cは、キシロースが、Prototheca培養物における脂質産生に及ぼす影響を示す。図7dは、塩濃度(NaSO)及び消泡剤が、Protothecaの成長に及ぼす影響を(細胞乾燥重量(DCW)で)示す。
図8図8は、種々のセルロース系材料(サトウキビの絞りかす、ソルガムの茎、Miscanthus、ビートパルプ)の熱水処理、及び得られた糖の流れが、Protothecaの成長に及ぼす影響を示す。
図9図9は、熱水処理を何回も繰り返し行った後、セルロース系バイオマス(サトウキビの絞りかす、ソルガムの茎、Miscanthus、ビートパルプ)内のヒドロキシメチルフルフラール類(HMF)及びフルフラール類の量が減っていることを示す。
図10図10は、発酵槽において、従属栄養物の油産生に用いるのに適した糖の流れを作り出すための、セルロース系材料の糖化プロセスの模式図を示す。
図11図11は、熱水処理を何回も繰り返し行った後、爆発させたサトウキビの絞りかす内のHMF及びフルフラール類の濃度が減っていることを示す。
図12図12は、Prototheca形質転換で使用されるチオエステラーゼ構築物の模式図を示す。異種β−チューブリン(Neoを動かす)及びグルタミン酸脱水素酵素プロモーターは、それぞれ、Chlamydomonas reinhardtii及びChlorella sorokinianaから誘導されている。硝酸還元酵素3’UTRは、Chlorella vulgarisから誘導された。関連する制限クローニングサイトが示されており、矢印は転写方向を示している。
図13図13は、Protothecaトリグリセリド油脂から生成する、再生可能なディーゼル油のクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、Prototheca及び特定の関連する微生物が、油、燃料、他の炭化水素又は脂質組成物を経済的に大量に産生するという予測できない有利な性質を有しているという発見と、これらの性質を改良するために、上述の微生物を遺伝的に変えるための方法及び試薬の発見とから生じたものである。これらの微生物によって産生される油は、他の用途の中でも、輸送燃料、石油化学、及び/又は食品及び香粧品産業で使用することができる。脂質のトランスエステル化によって、バイオディーゼルに有用な長鎖脂肪酸エステルが得られる。他の酵素プロセス及び化学プロセスを、脂肪酸、アルデヒド、アルコール、アルカン、アルケンを生成するように調節することができる。いくつかの用途では、再生可能なディーゼル、ジェット燃料、又は他の炭化水素化合物を生成する。また、本発明は、生産性を高め、脂質収量を増やし、及び/又は、本明細書に記載される組成物を高い費用効率で生成するために、微細藻類を育てる方法を提供する。
【0019】
読者が読みやすいように、本発明の詳細な説明をいくつかの章に分けている。第I章は、本明細書で用いる用語の定義を記載している。第2章は、本発明の方法で有用な培養条件を記載している。第3章は、遺伝子操作の方法及び材料を記載している。第4章は、ショ糖を利用することが可能となるようにProtothecaを遺伝子操作することを記載している。第5章は、脂質生合成を改変するためのProtothecaの遺伝子操作を記載している。第6章は、燃料及び化学物質を製造する方法を記載している。第7章は、本発明の実施例及び実施形態を開示している。本発明の詳細な説明の後に、本発明の種々の態様及び実施形態を説明する実施例が続く。
【0020】
(I.定義)
他の意味であると定義されていない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び化学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解している意味を有する。以下の参考文献は、本発明で用いられる多くの用語に関する一般的な定義に関する知識を与えるものである。Singleton et al.、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版、1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編集、1988);The Glossary of Genetics、第5版、R.Rieger et al.(編集)、Springer Verlag(1991);Hale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、他の意味であると明記されていない限り、以下の用語は、それらに属する以下の意味を有する。
【0021】
「微細藻類内で活性」は、微細藻類内で機能を発揮する核酸を指す。例えば、トランスジェニック微細藻類に抗生物質耐性を付与するために、抗生物質耐性遺伝子を動かすために用いられるプロモーターは、微細藻類内で活性である。
【0022】
「アシルキャリアータンパク質」又は「ACP」は、脂肪酸合成中に成長していくアシル鎖に、4’−ホスホパンテテイン部分の末端チオールにおいてチオールエステルとして結合するタンパク質であり、脂肪酸シンターゼ複合体の成分を含む。
【0023】
「アシル−CoA分子」又は「アシル−CoA」は、補酵素Aの4’−ホスホパンテテイン部分の末端チオールの位置で、チオールエステル結合によって補酵素Aに共有結合したアシル部分を含む分子である。
【0024】
「面積百分率」は、サンプル中の全ての脂肪酸を、検出前に脂肪酸メチルエステル(FAME)に変換し、FAME GC/FID検出法を用いて観察したピークの面積を指す。例えば、炭素原子14個で、不飽和部のない脂肪酸(C14:0)について、分離したピークが、任意の他の脂肪酸、例えば、C14:1と比較すると観察される。それぞれの種類のFAMEに対するピーク面積は、混合物中のその組成物における割合と正比例しており、サンプル中に存在する全ピークの合計に基づいて算出される(すなわち、[特定のピークの面積/測定した全ピークの合計面積]×100)。本発明の油及び細胞の脂質プロフィールについて述べる場合、「C8〜C14が少なくとも4%」は、細胞中、又は抽出したグリセロ脂質組成物中の総脂肪酸のうち、少なくとも4%が、炭素原子が8個、10個、12個又は14個の鎖長を有することを意味している。
【0025】
「純培養」は、他の生物によって汚染されていない、微生物の培養物である。
【0026】
「バイオディーゼル」は、ディーゼルエンジンの燃料として使用するのに適した、生物によって生成された脂肪酸アルキルエステルである。
【0027】
「バイオマス」は、細胞の成長及び/又は増殖によって生成する物質である。バイオマスは、細胞及び/又は細胞内成分、並びに、限定されないが、細胞によって分泌された化合物のような細胞外物質を含有していてもよい。
【0028】
「バイオリアクター」は、細胞を場合により懸濁物の状態で培養する、閉じられた筐体又は部分的に閉じられた筐体である。
【0029】
「触媒」は、生成物の一部分とならずに、反応剤の化学反応を容易にするか、又は促進することができる、分子又は高分子複合体のような薬剤である。触媒は、反応速度を高め、その後で、同じ触媒が、生成物を得るための別の反応剤として作用してもよい。触媒は、一般的に、反応に必要な合計活性化エネルギーを小さくするため、反応がすばやく進行するか、又は低い温度で進行する。従って、反応の平衡状態にすばやく達し得る。触媒の例としては、生体触媒である酵素;生体触媒ではない熱;石油精製プロセスで用いる金属が挙げられる。
【0030】
「セルロース系材料」は、セルロースを消化して得られる物質であり、グルコース及びキシロース、場合により、二糖類、オリゴ糖、リグニン、フルフラール類及び他の化合物のようなさらなる化合物を含む。セルロース系材料の供給源の非限定的な例としては、サトウキビの絞りかす、テンサイパルプ、トウモロコシ茎葉、木片、おがくず、スイッチグラスが挙げられる。
【0031】
「共生培養」、及び「共生生育」及び「共生発酵」などのこの用語の変形は、同じバイオリアクター内に2種類以上の細胞が存在することを指す。2種類以上の細胞は、全てが微細藻類のような微生物であってもよく、異なる細胞種と共に培養された微細藻類細胞であってもよい。培養条件は、2種類以上の細胞の成長及び/又は増殖を進めるような条件であってもよく、又は、2種類以上の細胞のうち1種類、又は部分的な集合の成長及び/又は繁殖を容易にしつつ、残りの細胞の成長を維持する条件であってもよい。
【0032】

「補因子」は、酵素がその酵素活性を発揮するのに必要な、基質以外の任意の分子である。
【0033】
「相補的DNA」又は「cDNA」は、メッセンジャーRNA(mRNA)の逆転写又は増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)を介する)によって通常得られるmRNAのDNA複写物である。
【0034】
「育てられた」、及びこの語句の別の言い方である「培養された」、「発酵された」は、選択した条件及び/又は制御された条件を利用することによって、1つ以上の細胞の成長(細胞の大きさ、細胞成分が増え、及び/又は細胞活性が高まる)及び/又は増殖(有糸分裂によって細胞の数が増える)を意図的に進めることを指す。成長と増殖を組み合わせて、繁殖と呼ぶ場合もある。選択した条件及び/又は制御された条件の例としては、十分に定義されている培地(pH、イオン強度、炭素源のような既知の特徴を有する)、特定の温度、酸素圧、二酸化炭素濃度、バイオリアクター内の成長を用いることが挙げられる。育てることは、微生物の成長又は増殖が自然に起こること、又は人の介入なしに起こることを指さず、例えば、微生物が地中で最終的に化石化し、未精製油を生成するような天然の成長は、育てられたとは言わない。
【0035】
「細胞溶解」は、低張な環境における細胞の溶解である。細胞溶解は、細胞内側への過剰な浸透作用、又は水の移動によって生じる(水分過剰)。細胞は、内部の水の浸透圧に耐えられず、爆発する。
【0036】
「脱脂した食料」及び「脱脂した微生物バイオマス」は、機械的な力を使って(すなわち、連続圧搾機で圧縮して)、又は溶媒抽出を利用して、又は両者を使って油(脂質を含む)を抽出するか、又は単離した後の微生物バイオマスである。脱脂した食料は、微生物バイオマスから油/脂質を抽出又は単離する前と比較して、油/脂質の量が減っているが、油/脂質はいくらか残っている。
【0037】
「発現ベクター」、「発現構築物」、「プラスミド」又は「組み換えDNA構築物」は、例えば、組み換え手段又は直接的な化学合成によって、人の介入によって発生した核酸を指し、一連の特定の核酸エレメントは、宿主細胞内で特定の核酸を転写及び/又は翻訳することができる。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス又は核酸フラグメントの一部分であってもよい。典型的には、発現ベクターは、プロモーターに動作可能に連結した、転写されるべき核酸を含む。
【0038】
「外来遺伝子」は、細胞に導入された(「形質転換された」)RNA及び/又はタンパク質を発現するようなコードを有する核酸である。形質転換された細胞は、組み換え細胞と呼ばれることもあり、この細胞に、さらなる外来遺伝子が導入されてもよい。外来遺伝子は、形質転換される細胞と異なる種に由来していてもよく(つまり、異種)、同じ種に由来していてもよい(つまり、同種)。従って、外来遺伝子は、この細胞のゲノムでは異なる位置にあるような同種遺伝子を含んでいてもよく、内在する遺伝子複製物と比較して、異なる制御下にある同種遺伝子を含んでいてもよい。外来遺伝子は、この細胞の2種類以上の複製物中に存在していてもよい。外来遺伝子は、ゲノムへの挿入物として細胞中に維持されてもよく、又はエピソーム分子として細胞中に維持されてもよい。
【0039】
「外部から与えられた」は、細胞培養物の培地に与えられた分子を指す。
【0040】
「連続圧搾機で圧縮する」は、大豆や菜種のような原材料から油を抽出する機械的な方法である。連続圧搾機は、スクリュー型の機械であり、ケージで覆われた円筒形の空洞を通すことによって材料を圧縮する。原材料は、圧搾機の片側から入り、ケーキが他方から出ていく間に、ケージ内にあるバーの間から油がしみ出て、集められる。この機械は、スクリューからの摩擦及び連続的な圧力を利用し、原材料を動かし、圧縮する。油は、固形物が通過することができない小さな開口部からしみ出る。原材料が圧縮されていくと、典型的には、摩擦によって熱が発生する。
【0041】
「脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ」は、脂質合成中に、アシルキャリアータンパク質(ACP)から脂肪酸が開裂するのを触媒する酵素である。
【0042】
「脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素」は、アシル−CoA分子から一級アルコールへの還元を触媒する酵素である。
【0043】
「脂肪酸アシル−CoA還元酵素」は、アシル−CoA分子からアルデヒドへの還元を触媒する。
【0044】
「脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素」は、脂肪族アルデヒドからアルカンへの変換を触媒する酵素である。
【0045】
「脂肪族アルデヒド還元酵素」は、アルデヒドから一級アルコールへの還元を触媒する酵素である。
【0046】
「固定炭素源」は、培地中で、周囲温度及び周囲圧力で固体又は液体の形態として存在し、培地で培養されている微生物が利用することが可能な、炭素を含有する分子、典型的には有機分子である。
【0047】
「ホモジネート」は、物理的に破壊されたバイオマスである。
【0048】
「炭化水素」は、水素原子と炭素元素のみを含む分子であり、炭素原子は、直鎖、分枝鎖、環状、又は部分的に環状の骨格になるように共有結合しており、この骨格に水素原子が接続している。炭化水素化合物の分子構造は、最も単純で天然ガスの構成成分であるメタン(CH)から、未精製油、石油、ビチューメン中にみられるアスファルテンのようなある種の分子のように、非常に重く、非常に複雑なものまでさまざまである。炭化水素は、気体、液体又は固体の形態であってもよく、これらの形態を任意に組み合わせた形態であってもよく、骨格内の隣接する炭素原子間に1つ以上の二重結合又は三重結合を有していてもよい。従って、この用語には、直鎖、分枝鎖、環状、又は部分的に環状のアルカン、アルケン、脂質、パラフィンが含まれる。例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、スクアレンが挙げられる。
【0049】
「水素:炭素比」は、原子単位であらわした、分子中の水素原子と炭素原子との比率である。この比率は、炭化水素分子中の炭素原子及び水素原子の数を述べるときに用いられ得る。例えば、最も大きな比率を有する炭化水素は、メタンCHである(4:1)。
【0050】
「疎水性画分」は、水系相への溶解度よりも、疎水性相への溶解性が高いような、物質の一部分又は画分である。疎水性画分は、実質的に水には溶解せず、通常は非極性である。
【0051】
「脂質収量の増加」は、例えば、培養物1リットルあたりの細胞乾燥重量が増加すること、脂質を構築する細胞の割合が増えること、又は、単位時間あたりの培養容積1リットルあたり、脂質の合計量が増えることのような、微生物培養物の生産性の増加を指す。
【0052】
「誘発性プロモーター」は、特定の刺激に応答し、動作可能に連結した遺伝子の転写に介在するプロモーターである。
【0053】
「動作可能に連結した状態で」は、制御配列(典型的には、プロモーター)、連結した配列(典型的には、タンパク質をコードする配列、コード配列とも呼ばれる)のような、2個の核酸配列間の機能的な連結である。プロモーターは、遺伝子の転写に介在することができる場合、外来遺伝子と動作可能に連結した状態である。
【0054】
「系中」は、「その場で」又は「その元々の位置で」という意味である。
【0055】
「栄養物の制限濃度」は、培養している微生物の増殖を制限するような、培養物中の化合物の濃度である。「栄養物の非制限濃度」は、所与の培養期間中に、最大限の増殖を支援するような濃度である。従って、所与の培養期間中に生成する細胞の数は、栄養物が非制限濃度である場合よりも、制限濃度存在する場合には少なくなる。最大限の増殖を支援する濃度よりも多く栄養物が存在する場合には、培養物中に栄養物が「過剰で」あると言われる。
【0056】
「リパーゼ」は、水に不溶性の脂質基質内のエステル結合を加水分解するのを触媒する水溶性酵素である。リパーゼは、脂質がグリセロール及び脂肪酸に加水分解されるのを触媒する。
【0057】
「脂質改変酵素」は、脂質の共有結合構造を変える酵素を指す。脂質改変酵素の例としては、リパーゼ、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素が挙げられる。
【0058】
「脂質経路に関連する酵素」は、脂質代謝、すなわち、脂質合成、改変又は変性においてなんらかの役割をはたす任意の酵素であり、脂質を化学的に改変するタンパク質、及びキャリアータンパク質である。
【0059】
「脂質」は、非極性溶媒(例えば、エーテル及びクロロホルム)に可溶性であり、水には比較的溶けないか、完全に不溶性の分子種である。脂質分子は、主に、疎水性の性質を有する長い炭化水素鎖かららなるため、これらの性質を有している。脂質の例としては、脂肪酸(飽和及び不飽和);グリセリド又はグリセロ脂質(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド又は天然の脂肪、ホスホグリセリド、グリセロリン脂質);グリセリド以外のもの(スフィンゴ脂質、コレステロール及びステロイドホルモンを含むステロール脂質、テルペノイド、脂肪族アルコール、ワックス、ポリケツドを含むプレノール脂質);複雑な脂質誘導体(糖に連結した脂質、又は糖脂質、タンパク質に連結した脂質)が挙げられる。「脂肪」は、「トリアシルグリセリド」と呼ばれる脂質の下位集団である。
【0060】
「溶解物」は、溶解した細胞内容物を含む溶液である。
【0061】
「溶解」は、生物有機体の原形質膜、場合により、細胞壁を、多くは生物有機体の一体性を失わせるような機械的な機構、ウイルスによる機構、又は浸透力による機構によって、細胞内成分を少なくともいくらか放出させるのに十分な程度まで破壊することである。
【0062】
「溶解すること」は、細胞内成分を少なくともいくらか放出させるのに十分な程度まで、生物有機体又は細胞の原形質膜、場合により、細胞壁を分断することである。
【0063】
「微細藻類」は、葉緑体又はプラスチドを含み、場合により、光合成を行うことができる真核性微生物であるか、又は、光合成を行うことができる原核性微生物である。微細藻類には、固定炭素源をエネルギーとして代謝することができない偏性光合成独立栄養生物と、単に固定炭素源がないと生存することができない従属栄養生物とが存在する。微細藻類には、細胞分裂の直後に、妹細胞から分離するChlamydomonasのような単細胞有機体、2種類の別個の細胞型を有する単純な多細胞光合成細菌である、例えば、Volvoxのような細菌が含まれる。微細藻類は、Chlorella、Dunaliella、Protothecaのような細胞を含む。また、微細藻類には、Agmenellum、Anabaena、Pyrobotrysのような、細胞−細胞接着性を示す他の細菌の有機体も含まれる。また、微細藻類には、特定のdinoflagellate algae種、及びPrototheca属の種のような、光合成を行う能力が失われている偏性従属栄養微生物も含まれる。
【0064】
「微生物」及び「細菌」は、微細な単細胞有機体である。
【0065】
「自然に共発現する」は、2種類のタンパク質あるいは遺伝子に関する際、例えば、2種類のタンパク質をコードする遺伝子が、共通の制御配列の制御下にあるため、又は、上述の2種類のタンパク質をコードする遺伝子が、同じ刺激に応答して発現するため、そのタンパク質又は遺伝子が、これらが誘導される組織又は有機体で自然に共発現することを意味する。
【0066】
「浸透圧衝撃」は、浸透圧が突然下がることによって、細胞が溶液中で破裂することである。浸透圧衝撃は、時に、誘発されてこのような細胞の細胞成分が溶液内に放出される。
【0067】
「多糖分解酵素」は、任意の多糖の加水分解又は糖化を触媒することができる任意の酵素である。例えば、セルラーゼは、セルロースの加水分解を触媒する。
【0068】
「多糖類」又は「グリカン」は、単糖類がグリコシド結合によって接続したもので構成される炭水化物である。セルロースは、特定の植物細胞壁を構成する多糖である。セルロースは、酵素によって解重合し、キシロース及びグルコースのような単糖類や、これより大きな二糖類及びオリゴ糖を生成し得る。
【0069】
「プロモーター」は、核酸の転写に関連する核酸制御配列である。本明細書で使用される場合、プロモーターは、転写開始部位の近くに、必要な核酸配列を含み、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合には、TATAエレメントを含む。また、プロモーターは、場合により、遠位エンハンサーエレメント又はリプレッサーエレメントを含み、これらは、転写開始部位から数千塩基対離れた位置にあってもよい。
【0070】
「組み換え体」は、外来の核酸を導入するか、又は天然の核酸を変えることによって改変された細胞、核酸、タンパク質又はベクターである。従って、例えば、組み換え細胞は、この細胞の天然の(組み換えされていない)形態にはみられない遺伝子を発現するか、又は、組み換えされていない細胞によって発現する遺伝子とは異なる天然遺伝子を発現する。「組み換え核酸」は、例えば、in vitroで、一般的に核酸を操作することによって元々作られている核酸が、ポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼ、又はそれ以外のものを用いて、天然には通常みられない形態になっているような核酸である。組み換え核酸は、例えば、動作可能に連結した状態にある2種類以上の核酸を配置することによって生成させてもよい。従って、天然では通常は接続していないDNA分子を結合させることによってin vitroで生成した核酸又は発現ベクターの単離物は、両方とも本発明の目的で組み換えであると考える。組み換え核酸が作られ、宿主細胞又は有機体に導入されると、宿主細胞の細胞機構を用いてin vivoで複製し得るが、このような核酸は、いったん組み換え状態で産生すると、その後に細胞内で複製されたものであっても、本発明の目的で組み換えと考える。同様に、「組み換えタンパク質」は、組み換え技術によって、すなわち、組み換え核酸の発現によって作られるタンパク質である。
【0071】
「再生可能なディーゼル」は、脂質の水素化及び脱酸素によって生成するアルカン混合物(例えば、C10:0、C12:0、C14:0、C16:0、C18:0)である。
【0072】
「糖化」は、バイオマス、通常はセルロース系バイオマス又はリグノセルロース系バイオマスを、グルコース及びキシロースのような単糖類に変換するプロセスである。「糖化された」又は「解重合された」セルロース系材料又はバイオマスは、糖化によって単糖類に変換されたセルロース系材料又はバイオマスを指す。
【0073】
「音波処理」は、音波エネルギーを用いることによって、細胞のような生体材料を破壊する過程である。
【0074】
「フルフラール種」は、2−フランカルボキサアルデヒド、又は同じ基本構造の特徴を保持した誘導体である。
【0075】
「茎葉」は、穀物を収穫した後に残る、作物の茎及び葉を乾燥させたものである。
【0076】
「ショ糖利用遺伝子」は、発現すると、ショ糖をエネルギー源として利用する能力を補助する遺伝子である。ショ糖利用遺伝子によってコードされるタンパク質は、本明細書では「ショ糖利用酵素」と呼ばれ、ショ糖トランスポーター、ショ糖インベルターゼ、グルコキナーゼやフルクトキナーゼのようなヘキソキナーゼを含む。
【0077】
(II.育てること)
本発明は、一般的には、脂質を生成させるために、Prototheca株、特定的には、組み換えPrototheca株を育てることに関する。読者が読みやすいように、この章をいくつかの節に分けている。第1節は、Prototheca種及びPrototheca株と、新しいPrototheca種及びPrototheca株、関連する微細藻類をゲノムDNA比較によって同定するやり方について記載している。第2節は、育てるのに有用なバイオリアクターについて記載している。第3節は、育てるための培地について記載している。第4節は、本発明の例示的な育てる方法に従って油を生成することについて記載している。
【0078】
(1.Prototheca種及びPrototheca株)
Protothecaは、高濃度の脂質を産生することができ、特に、燃料生成に適した脂質を産生することができるため、脂質の生成に使用するのに卓越した微生物である。Protothecaによって産生される脂質は、他の微細藻類によって産生される脂質よりも鎖長が短く、飽和度が高い炭化水素鎖を含んでいる。さらに、Protothecaの脂質は、一般的に、色素を含まず(クロロフィル及び特定のカロチノイドの濃度が検出不可能なほど低く)、いかなる状況でも、他の微細藻類から得られる脂質よりもかなり色素の含有量が低い。さらに、本発明によって与えられる組み換えPrototheca細胞を用い、他の微生物から脂質を産生する場合と比較して、低コストで、高収率及び高効率で脂質を生成させることができる。本発明の方法で用いる具体的なPrototheca株としては、が挙げられる。それに加え、この微細藻類は、従属栄養性で成長し、Prototheca wickerhamii、Prototheca stagnora(UTEX 327を含む)、Prototheca ポートoricensis、Prototheca moriformis(UTEX株1441、1435を含む)、Prototheca zopfiiとして遺伝子操作することができる。Prototheca属の種は、偏性従属栄養生物である。
【0079】
本発明で使用するProtothecaの種は、ゲノムの特定標的領域を増幅させることによって同定することができる。例えば、特定のPrototheca種又はPrototheca株の同定は、プライマーと、任意のゲノム領域を用いた方法とを用い、例えば、Wu et al.、Bot.Bull.Acad.Sin.(2001)42:115−121 Identification of Chlorella spp. isolates using ribosomal DNA Sequencesに記載されている方法を用いて、核及び/又は葉緑体のDNAを増幅させ、塩基配列を決定することによって行うことができる。Protothecaだけではなく、同様の脂質プロフィール及び産生能を有する他の炭化水素及び脂質を産生する有機体の種を同定するために、リポソームの内部に転写されたスペーサー(ITS1及びITS2 rDNA)、23S rRNA、18S rRNA、及び他の保存されたゲノム領域を増幅させ、塩基配列を決定する、当業者によって十分に確率された系統発生解析の方法を用いてもよい。例えば、藻類を同定し、分類する方法は、例えば、Genetics、2005年8月;170(4):1601−10及びRNA、2005年4月;11(4):361−4を参照。
【0080】
従って、ゲノムDNA比較を用い、本発明で使用すべき微細藻類の適切な種を同定することができる。保存されたゲノムDNA領域、例えば、限定されないが、23S rRNAをコードするDNAを、微細藻類の種から増幅させ、本発明で使用する好ましい微細藻類に分類学的に関連する微細藻類の種をスクリーニングするために、コンセンサス配列を比較することができる。Prototheca属に含まれる種に対し、このようなDNA配列比較を行った例を以下に示す。ゲノムDNA比較は、株の収集中にうまく同定できなかった微細藻類の種を同定するのにも有用な場合がある。株の収集では、表現型及び形態学的特徴に基づいて、微細藻類の種を同定することが多いだろう。これらの特徴を使用すると、微細藻類の種又は属を間違ってカテゴリー分けしてしまうことがある。ゲノムDNA比較を用いることは、系統発生的関係に基づいて微細藻類種をカテゴリー分けする良好な方法であろう。
【0081】
本発明で使用する微細藻類は、典型的には、配列番号11〜19に列挙されている少なくとも1つの配列に対するヌクレオチド同一性が少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、又は少なくとも85%の23S rRNAをコードするゲノムDNA配列を有する。
【0082】
ヌクレオチド同一性又はアミノ酸同一性の割合を決定するために配列を比較する場合、典型的には、ある配列を参照配列として作用させ、これと試験配列とを比較する。配列比較アルゴリズムを用いた場合、試験配列及び参照配列をコンピューターに入力し、部分配列の座標を指定し、必要な場合、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムが、指定したプログラムパラメーターに基づいて、試験配列を参照配列と比較して配列同一性の割合を算出する。
【0083】
比較のために、例えば、Smith & Waterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)による局地的ホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)によるホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)と同様の方法で検索することによって、これらのアルゴリズムをコンピューター制御によって実施することによって(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIの、GAP、BESTFIT、FASTA、TFASTA)、又は、視覚的な観察(一般的に、前出のAusubel et al.を参照)によって、配列の最適アラインメントを行うことができる。
【0084】
配列同一性の割合及び配列類似性を決定するのに適した他のアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムであり、Altschul et al.、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology
Information(ウェブアドレスはwww.ncbi.nlm.nih.gov)に公開されている。このアルゴリズムは、検索配列の中で、データベース配列中の同じ長さの文字列と整列させたときに、ある正の値である閾値Tとマッチするか、又は閾値Tを満足するような長さWの短い文字列を特定することによって、スコアが最も大きくなる配列対(HSP)をまず特定することを含む。Tは、近隣の文字列スコアの閾値と呼ばれる(Altschul et al.、前出)。これらの初期の近隣の文字列ヒットが、これらの配列に含まれるもっと長いHSPを見つけるための初期検索の出発点として作用する。この文字列のヒットを、累積アラインメントスコアが増加していく限りは、それぞれの配列に沿って両方向に拡張していく。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメーターM(マッチングした残基対に対するリワードスコア;常に0より大きい)及びパラメーターN(マッチングしない残基に対するペナルティースコア;常に0より小さい)を用いて算出される。アミノ酸配列の場合、スコアの行列を用いて累積スコアを算出する。それぞれの方向への文字列ヒットの拡張は、累積アラインメントスコアが、到達した最大値からXの大きさだけ下がった場合、1つ以上のマイナス値のスコアをもつ残基のアラインメントの累積のため、累積スコアが0又は0未満になった場合、又は、いずれかの配列が末端まできた場合に中止される。核酸又はポリペプチドが本発明の範囲内にあるかどうかを特定するためには、BLASTプログラムのデフォルトパラメーターが適している。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、文字列長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4をデフォルトとして用い、両鎖を比較する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプロフラムを、文字列長(W)3、期待値(E)10、BLOSUM62スコア行列をデフォルトとして用いる。TBLATNプログラム(ヌクレオチド配列のタンパク質配列を用いる)は、文字列長(W)3、期待値(E)10、BLOSUM62スコア行列をデフォルトとして用いる(Henikoff & Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)。
【0085】
BLASTアルゴリズムは、配列同一性の割合を算出することに加え、2つの配列間の類似性の統計分析も行う(例えば、Karlin & Altschul、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって与えられる類似性の測定値は、ひとつには最小合計確率(P(N))があり、この値は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列が偶然マッチする確率の指標を与える。例えば、試験核酸と参照核酸とを比較したときの最小合計確率が、0.1未満、より好ましくは、約0.01未満、最も好ましくは、約0.001未満であるときに、この核酸は、参照配列と類似していると考える。
【0086】
本発明で用いるための微生物の選択に影響を及ぼす他の考慮事項としては、油、燃料、油脂化学品を生成するのに適した脂質又は炭化水素の生成に加え、(1)細胞重量を基準とした割合で脂質含有量が高いこと;(2)成長が容易であること;(3)遺伝子操作が容易であること;(4)バイオマスの処理が容易であることが挙げられる。特定の実施形態では、野生型の微生物又は遺伝子操作された微生物から、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、又は少なくとも70%、又はそれ以上が脂質である細胞が得られる。好ましい有機体は、従属栄養的に成長する有機体である(光が存在しない状態で、糖を用いる)。
【0087】
(2.バイオリアクター)
微生物を、遺伝子操作を行うという目的で、及び炭化水素(例えば、脂質、脂肪酸、アルデヒド、アルコール、アルカン)を生成するという目的で培養する。前者の種類の培養では、小スケールで実施し、最初は、少なくとも、原料微生物が成長可能な条件下で実施する。炭化水素を生成させるための培養は、通常は、バイオリアクター中、大スケールで実施する(例えば、10,000リットル、40,000リットル、100,000リットル、又はそれより大きなバイオリアクター)。Protothecaを、典型的には、バイオリアクター内の液体培地にて、本発明の方法で培養する。典型的には、バイオリアクターには光を入れない
バイオリアクター又は発酵槽を用い、生理学的周期の種々の段階を経て、微細藻類細胞を培養する。バイオリアクターは、従属栄養を成長及び増殖させる方法で用いると、多くの利点を与える。食品において用いるためのバイオマスを生成させるために、微細藻類を、好ましくは、液体中で、一例として懸濁培養物中で、大量に発酵させる。鋼鉄製発酵槽のようなバイオリアクターは、非常に大きな容積の培養物を収容する(種々の本発明の実施形態では、40,000リットル以上の容量を有するバイオリアクターを用いる)。また、バイオリアクターによって、典型的には、温度、pH、酸素圧、二酸化炭素濃度のような培養条件を制御することができる。例えば、バイオリアクターは、典型的には、例えば、酸素又は窒素のような気体成分を液体培養物にバブリングすることが可能な配管に接続したポートを用いて構築することができる。また、培地のpH、微量元素が何であるか及びその濃度、他の培地構成要素のような他の培養パラメーターは、バイオリアクターを用いて簡単に操作することができる。
【0088】
バイオリアクターは、微細藻類が繁殖され、数が増える間、培地がバイオリアクターを流れるような構成であってもよい。ある実施形態では、例えば、播種した後であるが、細胞が所望の密度になる前に、培地をバイオリアクターに注入してもよい。別の状況では、培養開始時にバイオリアクターを培地で満たし、培養物を播種した後は、培地を注入しない。言い換えると、微細藻類のバイオマスを、微細藻類が繁殖され、数が増える間、水性媒体中で培養する。しかし、水性培地の量は、この期間全体でバイオリアクターを流れていない。従って、ある実施形態では、水性培地は、播種した後に、バイオリアクターを流れない。
【0089】
スピニングブレード、インペラー、揺動機構、撹拌棒、加圧気体を注入する手段のようなデバイスを備えるバイオリアクターを用い、微細藻類の培養物を混合することができる。混合は、連続的であってもよく、断続的であってもよい。例えば、ある実施形態では、微細藻類が望ましい数に増えるまで微細藻類を繁殖させるために、気体及び培地を入れるのに乱流を用いる形態は維持されない。
【0090】
気体、固体、半固体、液体を、微細藻類を含むバイオリアクターチャンバーに入れるため、又は抽出するために、バイオリアクターポートを用いてもよい。多くのバイオリアクターは、2個以上のポートを備えているが(例えば、1つは培地を入れるため、他方はサンプリングのため)、1種類の基質だけを1個のポートから入れたり、出したりする必要はない。例えば、バイオリアクターに培地を流し、その後で、サンプリングしたり、ガスを入れたり、ガスを出したり、又は他の目的のために1個のポートを使用してもよい。好ましくは、培養物の純培養性を損なうことなく、サンプリングポートを繰り返し用いることができる。サンプリングポートは、サンプルの流れを止めるか、開始させるか、又は連続的なサンプリング手段を与えるようなバルブ又は他のデバイスを備えるような構成であってもよい。バイオリアクターは、典型的には、培養物を播種することができるような少なくとも1個のポートを備えており、このようなポートを、培地又は気体を入れるような他の目的で用いることもできる。
【0091】
バイオリアクターポートによって、微細藻類の培養物の気体内容物を操作することができる。説明のために、バイオリアクターの容積の一部分は、液体ではなく気体であってもよく、バイオリアクターの気体注入口から、ポンプによって気体をバイオリアクターに入れることができる。ポンプによってバイオリアクターへと有益に入れることが可能な気体としては、空気、空気/CO混合物、アルゴンのような希ガス、他の気体が挙げられる。バイオリアクターは、典型的には、バイオリアクターにガスを入れる速度をユーザーが制御することができるように取り付けられている。上述のように、バイオリアクターへの気体の流れを増やすことによって、培養物の混合性を高めることができる。
【0092】
気体の流れを増やすことは、培地の濁度にも影響を及ぼす。乱流は、バイオリアクターに入った気体が培地表面でバブリングするように、水性培地の液量より低いところに気体注入ポートを配置することによって起こすことができる。1種類以上の気体がポートを出て行き、気体が外に逃げ、それにより、バイオリアクター中に圧力が蓄積されるのを防ぐ。好ましくは、気体流出ポートは、バイオリアクターに微生物が入り込んで汚染されることを防ぐような「一方向」バルブにつながっている。
【0093】
(3.培地)
微細藻類の培地は、典型的には、固定窒素源、固定炭素源、微量元素、場合により、pHを維持するためのバッファー、ホスフェート(典型的には、リン酸塩として与えられる)のような成分を含有する。他の成分は、特に、海水微細藻類の場合には、塩化ナトリウムのような塩を含んでいてもよい。窒素源としては、有機窒素源及び無機窒素源が挙げられ、例えば、限定されないが、分子状窒素、硝酸エステル、硝酸塩、アンモニア(純水なもの、又は塩形態、例えば、(NHSO及びNHOH)、タンパク質、大豆ミール、コーンスティープリカー、酵母抽出物が挙げられる。微量元素の例としては、例えば、それぞれZnCl、HBO、CoCl・6HO、CuCl・2HO、MnCl・4HO、(NHMo24・4HOのような形態の亜鉛、ホウ素、コバルト、銅、マンガン、モリブデンが挙げられる。
【0094】
本発明の方法で有用な微生物は、世界中の種々の場所及び環境で発見されている。他の種からの単離、及び得られる進化多様性の結果として、最適な成長、及び脂質及び/又は炭化水素構成要素の最適な発生のための特定の成長培地は、予測することが困難な場合がある。ある場合では、特定の微生物株は、ある種の阻害成分が存在するか、又は、特定の微生物株が必要とするある種の必須栄養分が必要量存在しないために、特定の成長培地上で成長することができない場合がある。
【0095】
固体及び液体の成長培地は、一般的に、さまざまな供給源から入手可能であり、さまざまな微生物株に適した特定の培地を調製する方法の説明は、例えば、オンラインでは、藻類の培養物を収集するためのAustin、1 University Station
A6700、Austin、Texas、78712−0183のテキサス大学によって運営されているサイトhttp://www.utex.org/で見つけることができる(UTEX)。例えば、種々の淡水培地及び塩水培地としては、PCT公開番号第2008/151149号に記載されているものが挙げられ、この文献は、参照により組み込まれる。
【0096】
特定の例では、プロテオース培地は、純培養の培地に適しており、培地1リットル(pH約6.8)は、プロテオースペプトン1gを、Bristol Medium 1リットルに加えることによって調製することができる。Bristol mediumは、水溶液中に、2.94mMのNaNO、0.17mMのCaCl・2HO、0.3mMのMgSO・7HO、0.43mM、1.29mMのKHPO、1.43mMのNaClを含む。1.5%寒天培地の場合、寒天15gを上述の溶液1リットルに加えればよい。この溶液に蓋をし、オートクレーブにかけ、次いで、使用するまで冷蔵温度で保存する。別の例は、Prototheca単離培地(PIM)であり、10g/Lのフタル酸水素カリウム(KHP)、0.9g/Lの水酸化ナトリウム、0.1g/Lの硫酸マグネシウム、0.2g/Lのリン酸水素カリウム、0.3g/Lの塩化アンモニウム、10g/Lのグルコース、0.001g/Lの塩酸チアミン、20g/Lの寒天、0.25g/Lの5−フルオロシトシンを含み、pH範囲が5.0〜5.2である(Pore、1973、App.Microbiology、26:648−649を参照)。本発明の方法と共に用いるのに適した他の培地は、上に特定したURLを閲覧することによって、又はSAG、CCAP又はCCALAのような、微生物の培地を保有している他の機関に助言を求めることによって、簡単に特定することができる。SAGは、ゲッティンゲン大学(ドイツ、ゲッティンゲン)のCulture Collection of Algaeを指し、CCAPは、Scottish Association for Marine Science(英国、スコットランド)によって管理されている藻及び原生動物の培養株保存機関を指し、CCALAは、Institute of Botany(トシェボニュ、チェコ共和国)の藻研究所の培養株保存機関を指す。さらに、米国特許第5,900,370号は、Prototheca種の従属栄養性発酵に適した培地の処方及び条件について記載している。
【0097】
油の生成について、固定炭素源の費用は、油生成を経済的なものにするには十分低くなければならないため、固定炭素源の選択が重要である。従って、適切な炭素源は、例えば、アセテート、フロリドシド、フルクトース、ガラクトース、グルクロン酸、グルコース、グリセロール、ラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、ラムノース、ショ糖、及び/又はキシロースを含むが、これらの化合物を含有する原材料の選択は、本発明の方法の重要な態様である。本発明の方法で有用な適切な原材料としては、例えば、黒液、トウモロコシデンプン、解重合されたセルロース系材料、乳清、糖液、ジャガイモ、ソルガム、ショ糖、テンサイ、サトウキビ、イネ、小麦が挙げられる。また、炭素源は、混合物として、例えば、ショ糖と解重合されたテンサイパルプの混合物として与えられてもよい。1つ以上の炭素源は、1つ以上の外から与えられた固体炭素源の少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約500μM、少なくとも約5mM、少なくとも約50mM、少なくとも約500mMの濃度で供給されてもよい。本発明のための特に関心のある炭素源としては、セルロース(解重合された形態で)、グリセロール、ショ糖、ソルガムが挙げられ、これらについては、以下にさらに詳細に記載する。
【0098】
本発明によれば、原材料として解重合されたセルロース系バイオマスを用い、微生物を培養してもよい。セルロース系バイオマス(例えば、トウモロコシ茎葉のような茎葉)は安価であり、入手が容易であるが、この物質を酵母のための原材料として使用する試みは長年失敗している。特定的には、このような原材料は、酵母の成長を阻害することがわかっており、酵母は、セルロース系材料から生成した五炭糖(例えば、ヘミセルロースから生成したキシロース)を用いることができない。対照的に、微細藻類は、処理したセルロース系材料を用いて成長することができる。セルロース系材料は、一般的に、約40〜60%のセルロースと;約20〜40%のヘミセルロースと;10〜30%のリグニンとを含む。
【0099】
適切なセルロース系材料としては、草及び木のエネルギー作物、及び農業用作物から得られた残渣、すなわち、主要な食品又は繊維製品の分野から除去されなかった植物の一部、主に茎及び葉が挙げられる。例としては、農業廃棄物、例えば、サトウキビの絞りかす、モミ殻、トウモロコシ繊維(茎、葉、皮及び穂軸を含む)、麦わら、稲わら、テンサイパルプ、シトラスパルプ、柑橘類の皮;森林の廃棄物、例えば、硬材及び軟材の間伐、伐採作業から得られる硬材及び軟材の残渣;木材廃棄物、例えば、製材工場の廃棄物(木片、おがくず)、パルプ工場の廃棄物;都市廃棄物、例えば、都市固形廃棄物の紙片、都会の廃材、都市の伐採した草のような、都市の緑廃棄物;木材製造の廃棄物が挙げられる。さらなるセルロース含有材料としては、スイッチグラス、ハイブリッドポプラ材、Miscanthus、テンサイ繊維、ソルガム繊維のような専用のセルロース含有作物が挙げられる。このような材料から生成する五炭糖としては、キシロースが挙げられる。
【0100】
細菌が上述の材料を含む糖類を利用することができる効率を高めるために、セルロース系材料を処理する。本発明は、上述の材料を、細菌(例えば、微細藻類及び油産生酵母)の従属栄養性培養物で用いるのに適しているように酸爆発させた後、セルロース系材料を処理するための新規方法を提供する。上述のように、リグノセルロース系バイオマスは、セルロース、β1,4結合したグルコース(六炭糖)の結晶性ポリマー、ヘミセルロース、主にキシロース(五炭糖)で構成され、少量のマンノース、ガラクトース、アラビノース、リグニンで構成されている、ゆるく会合したポリマー、シナピルアルコール及びその誘導体で構成される複雑な芳香族ポリマー、α1,4結合したポリガラクツロン酸の直鎖であるペクチンのような、種々の画分で構成されている。セルロース及びヘミセルロースがポリマー構造であるため、これらの中に含まれる糖類(例えば、単糖類のグルコース及びキシロース)は、多くの細菌によって有効に使用する(代謝する)ことができるような形態ではない。このような細菌の場合、セルロース系バイオマスをさらに処理し、このポリマーを構成している単糖類を作成することは、セルロース系材料を原材料(炭素源)として有効に利用するのに非常に役立つ場合がある。
【0101】
セルロース又はセルロース系バイオマスに、「爆発」と呼ばれるプロセスを行い、このプロセスで、バイオマスは、高温高圧で、希硫酸(又は他の酸)で処理される。このプロセスは、セルロース系及びヘミセルロース系の画分をグルコースモノマー及びキシロースモノマーにする酵素加水分解を効率よく行うことができるようにバイオマスを調節する。得られた単糖類は、セルロース系糖と呼ばれる。その後に、セルロース系糖が微生物に利用され、種々の代謝物(例えば、脂質)を産生する。酸爆発工程によって、ヘミセルロース画分が、構成成分である単糖類へと部分的に加水分解する。これらの糖類を、さらなる処理によって、バイオマスから完全に遊離させることができる。ある実施形態では、さらなる処理は、爆発した材料を熱水で洗浄することを含む熱水処理であり、これによって、塩のような混入物質が除去される。この工程は、セルロース系エタノール発酵では、このようなプロセスで用いられる糖の濃度はもっと薄いため、必要ではない。他の実施形態では、さらなる処理は、さらなる酸処理である。さらに他の実施形態では、さらなる処理は、爆発した材料の酵素加水分解である。また、これらの処理を任意の組み合わせで用いてもよい。この種の処理は、遊離する糖の種類(例えば、五炭糖対六炭糖)、このプロセス中で糖類が遊離する段階に影響を及ぼす場合がある。その結果、五炭糖又は六炭糖のどちらかが主成分の異なる糖の流れを作成することができる。これらの五炭糖又は六炭糖を豊富に含む流れは、異なる炭素利用能を有する特定の微生物用に向けることができる。
【0102】
本発明の方法は、典型的には、エタノール発酵で達成されるよりも高い細胞密度になるまで発酵することを含む。従属栄養セルロース系の油を生成するための培養物の密度が高いため、固定炭素源(例えば、セルロース系から誘導される糖の流れ)は、好ましくは、濃縮された形態である。解重合されたセルロース系材料のグルコース濃度は、好ましくは、育てる工程の前に、少なくとも300g/L、少なくとも400g/L、少なくとも500g/L、又は少なくとも600g/Lであり、場合により、細胞が成長し、脂質を蓄積する間ずっと、上述の物質を細胞に供給するような流加回分式で育てる。セルロース系糖の流れは、セルロース系エタノールの生成においては、この濃度範囲又はこの濃度範囲付近で用いられない。従って、リグノセルロース系の油を生成している間、非常に高密度の細胞を生成し、維持するために、炭素原材料を、非常に濃縮された形態で従属栄養培養物に運ばなければならない。しかし、油産生微生物の基質ではなく、油産生微生物によって代謝されないような供給物流中の任意の成分は、バイオリアクター中に蓄積し、その成分が、毒性であるか、又は望ましい最終産物を生成するのを阻害する場合には、問題となり得るであろう。リグニン及びリグニンから誘導される副産物、フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類のような炭水化物から誘導される副産物、セルロース系材料の生成から誘導される塩(爆発プロセス及びその次の中和プロセスの両方で)、さらに、代謝されていないペントース/ヘキソース糖ですら、エタノール発酵では問題となり得る場合があり、これらの影響は、初期原材料中のこれらの物質の濃度が高いプロセスでは、顕著に大きくなる。本明細書に記載されるリグノセルロース系の油を大量生成するのに用いることが可能な六炭糖について、300g/Lの範囲(又はそれ以上)の糖濃度を達成するために、これらの毒性のある物質の濃度は、典型的には、セルロース系バイオマスのエタノール発酵中に存在する濃度の20倍より高くなり得る。
【0103】
セルロース系材料の爆発プロセスによる処理は、かなりの量の硫酸、熱、圧力を利用するため、炭水化物の副産物、つまり、フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類が遊離する。フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類は、ヘミセルロースの加水分解中に、キシロースを水和してフルフラール及び水にすることによって生成する。本発明のある実施形態では、これらの副産物(例えば、フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類)は、バイオリアクターに入れる前に、糖化されたリグノセルロース系材料から除去される。本発明の特定の実施形態では、炭水化物の副産物を除去するプロセスは、爆発したセルロース系材料の熱水処理である。それに加え、本発明は、リグノセルロース系の油を生成するのに、フルフラール類又はヒドロキシメチルフルフラール類のような化合物に耐え得る株を用いる方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、発酵培地中のフルフラール類に耐え得るだけでなく、リグノセルロース系の油を生成させている間に、実際には、これらの副産物を代謝することができるような方法及び微生物も提供する。
【0104】
また、この爆発プロセスは、顕著な量の塩も生じる。例えば、爆発の典型的な条件によって、爆発したセルロース系バイオマスを、水:固形分(乾燥重量)を10:1の比率で再び懸濁させた場合、5mS/cmを超える導電率が生じ得る。本発明の特定の実施形態では、爆発したバイオマスを希釈したものに対し、酵素による糖化を行い、得られた上澄みを、バイオリアクター中で使用するために最大25倍まで濃縮する。濃縮した糖の流れ中の塩濃度(導電率で測定した場合)は、許容できないほど高い場合がある(最大1.5M Naに相当)。同様に、その後の酵素による糖化プロセスのために、爆発した物質を中和すると、さらなる塩が生成する。本発明は、上のようにして得られる濃縮したセルロース系糖の流れを、リグノセルロース系の油を生成するための従属栄養プロセスで使用することができるように、これらの塩を除去する方法を提供する。ある実施形態では、これらの塩を除去する方法は、限定されないが、DOWEX Marathon MR3のような樹脂を用いた脱イオン化である。特定の実施形態では、樹脂を用いた脱イオン化工程は、糖の濃縮前に行うか、又は、糖化の前のバイオマスのpH調節及び熱水処理の前に行うか、又はこれらの任意の組み合わせであってもよく、他の実施形態では、この工程は、これらの1つ以上のプロセスの後に行う。他の実施形態では、爆発プロセス自体を、塩が許容されない高濃度で生成するのを避けるように変更する。例えば、セルロース系バイオマスを硫酸(又は他の酸)で爆発させるのに代わる代替法は、セルロース系バイオマスが酵素加水分解(糖化)を受けやすくなるような機械的なパルプ化である。さらに他の実施形態では、高濃度の塩に耐性の天然微生物株、又は高濃度の塩に耐性を有するように遺伝子操作された株を用いる。
【0105】
油産生細菌を用いて従属栄養性のリグノセルロース系油の生成で使用するための、爆発したセルロース系バイオマスを調製するプロセスに好ましい実施形態を図10に略図で示している。工程Iは、爆発したセルロース系バイオマスを再懸濁させたもののpHを、5.0〜5.3の範囲に調節した後、セルロース系バイオマスを3回洗浄することを含む。この洗浄工程は、脱塩性及びイオン交換性の樹脂、逆浸透膜、熱水処理(上述のようなもの)の使用、又は、脱イオン水に再懸濁させ、遠心分離するのを単に繰り返す、といった種々の手段によって達成することができる。この洗浄工程によって、セルロース系の流れの導電率が100〜300μS/cmになり、かなりの量のフルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類が除去される。この洗浄工程からデカンテーションを行い、ヘミセルロース画分から遊離した五炭糖を濃縮するために残しておいてもよい。工程IIは、洗浄したセルロース系バイオマスを酵素によって糖化することを含む。好ましい実施形態では、Accellerase(Genencor)を用いる。工程IIIは、糖化されたバイオマスを遠心分離するか、又はデカンテーションし、次いですすぐことによる、糖の回収を含む。得られたバイオマス(固形分)は、エネルギー密度が高く、リグニンを豊富に含む成分であり、これを燃料として使用してもよく、廃棄するために送ってもよい。遠心分離/デカンテーション及びすすぎを行うプロセス中で回収された糖の流れを集める。工程IVは、透過物を回収しつつ、混入している固形物を除去する精密濾過を含む。工程Vは、濃縮工程を含み、この工程は、減圧エバポレーターを用いることによって達成されてもよい。この工程は、場合により、P’2000(Sigma/Fluka)のような消泡剤の添加を含んでいてもよく、この作業は、得られる糖原料のタンパク質含有量によっては、時に必要である。
【0106】
本発明の方法の別の実施形態では、炭素源は、バイオディーゼルのトランスエステル化から得られる、酸性化されたグリセロール及び酸性化されていないグリセロールを含むグリセロールである。一実施形態では、炭素源は、グリセロールと、少なくとも1つの他の炭素源とを含んでいる。ある場合では、グリセロール及び少なくとも1つの他の固定炭素源の全てが、発酵開始時に微生物に与えられる。ある場合では、グリセロール及び少なくとも1つの他の固定炭素源が、微生物に対して所定の比率で同時に与えられる。ある場合では、グリセロール及び少なくとも1つの他の固定炭素源が、発酵している間、所定の速度で細菌に供給される。
【0107】
ある種の微細藻類は、グルコースが存在する状態よりも、グリセロールが存在する状態ですばやく細胞分裂を受ける(PCT公開番号第2008/151149号)。これらの状況では、細胞に、細胞の密度をすばやく上げるためにグリセロールを供給し、次いで、脂質の蓄積を高めるためにグルコースを供給するような二段階成長プロセスによって、脂質が産生する効率を高めることができる。トランスエステル化プロセスのグリセロール副産物を使用することによって、この物質が生成プロセスに戻されると、経済的に顕著な利点を与える。例えば、グリセロール及びグルコースの混合物のような他の供給方法も同様に与えられる。また、このような混合物を供給することによって、同じ経済的な利点が得られる。それに加え、本発明は、ショ糖のような代わりとなる糖をグリセロールとの種々の組み合わせで微細藻類に供給する方法を提供する。
【0108】
本発明の方法の別の実施形態では、炭素源は、ショ糖であり、ショ糖を含む複雑な原材料、例えば、サトウキビの処理から得られる濃いサトウキビ汁を含む。一実施形態では、培地は、少なくとも1つのショ糖利用酵素をさらに含む。ある場合では、培地は、ショ糖インベルターゼを含む。一実施形態では、ショ糖インベルターゼ酵素は、微生物の集合が発現する外来のショ糖インベルターゼ遺伝子によってコードされる分泌可能なショ糖インベルターゼ酵素である。従って、いくつかの状況では、以下の第IV章にさらに詳細に記載されるように、微細藻類は、ショ糖トランスポーター、ショ糖インベルターゼ、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、又はフルクトキナーゼのようなショ糖利用酵素を発現するように遺伝子操作されている。
【0109】
ショ糖を含有する複雑な原材料としては、サトウキビの処理から得られる廃棄糖液が挙げられ、サトウキビ処理の価値の低い上述の廃棄生成物によって、炭化水素及び他の油の生成において、顕著に費用を節約することができる。本発明の方法で有用な、ショ糖を含有する別の複雑な原材料は、ソルガムであり、ソルガムシロップ及び純粋なソルガムを含む。ソルガムシロップは、甘いソルガムの茎の汁から生成する。ソルガムシロップの糖プロフィールは、主に、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ショ糖からなる。
【0110】
(4.油の生成)
本発明の方法に従って油を生成する場合、例えば、光が培養物にあたらないような、きわめて大きな(40,000リットル以上の)発酵槽の場合のように、細胞を暗い場所で培養することが好ましい。Prototheca種は、固定炭素源を含有する培地内で、光が存在しない状態で、油を生成するように成長し、増殖する。このような成長は、従属栄養性の成長として知られている。
【0111】
一例として、脂質を生成する微細藻類細胞の播種物質が培地に入れられ、細胞が増殖し始めるまでに遅延期間(遅延期)が存在する。遅延期間の後、増殖速度は徐々に上がっていき、対数期すなわち指数増殖期に入る。次いで、指数増殖期の後、窒素のような栄養物が少なくなったり、毒性基質が増えたり、菌体数感知機構のために増殖が遅くなる。このように増殖が遅くなった後、増殖が止まり、細胞は、細胞に与えられている特定の環境に依存して、静止期又は安定成長状態に入る。脂質を豊富に含むバイオマスを得るために、培養物は、典型的には、指数増殖期が終わった後に良好に収穫され、指数増殖期は、窒素又は別の鍵となる栄養物(炭素以外のもの)を枯渇させることによって初期に終わらせてもよく、細胞は、過剰に存在する炭素源を脂質に変換する。培養条件のパラメーターは、油の合計生成量、生成する脂質種の組み合わせ、及び/又は特定の油の生成を最適にするように操作することができる
上述のように、細胞が成長周期の種々の期間を経るように、バイオリアクター又は発酵槽を用いる。一例として、脂質を生成する細胞の播種物質が培地に入れられ、細胞が増殖し始めるまでに遅延期間(遅延期)が存在する。遅延期間の後、増殖速度は徐々に上がっていき、対数期すなわち指数増殖期に入る。次いで、指数増殖期の後、栄養物が少なくなったり、及び/又は毒性基質が増えたりするために増殖が遅くなる。このように増殖が遅くなった後、増殖が止まり、細胞は、細胞に与えられている特定の環境に依存して、静止期又は安定成長状態に入る。本明細書に開示されている細胞による脂質の生成は、対数期の間に行ってもよく、細胞分裂しない状態で、脂質を生成し続けるように、栄養物を供給するか、又は栄養物がまだ利用可能であるような静止期を含め、log期の後に行ってもよい。
【0112】
好ましくは、本明細書に記載されている条件及び当該技術分野で既知の条件を用いて成長させた微生物は、脂質を少なくとも約20重量%、好ましくは、少なくとも約40重量%、より好ましくは、少なくとも約50重量%、最も好ましくは、少なくとも約60重量%含む。プロセスの条件は、特定の用途に適した脂質の収量を高めるように、及び/又は、生成費用を減らすように調節することができる。例えば、特定の実施形態では、微細藻類を、グルコースのような固定炭素エネルギーを過剰量与えつつ、制限濃度の1つ以上の栄養物、例えば、窒素、リン又は硫黄が存在する状態で培養する。窒素による制限は、窒素が過剰に与えられている培地における微生物脂質収量よりも、微生物脂質収量を増やす傾向がある。特定の実施形態では、脂質収量の増加は、少なくとも約10%、約50%、約100%、約200%、又は約500%である。全培養期間の一部又は全期間にわたって、制限量の栄養物が存在する状態で細菌を培養してもよい。特定の実施形態では、栄養物の濃度は、全培養期間の間に、制限濃度及び非制限濃度を少なくとも2回繰り返す。過剰量の炭素を与えつつ、窒素量を制限するか、又はまったく窒素を含まない状態で、時間を延長させて培養を続けることによって、細胞の脂質含有量を増やすことができる。
【0113】
別の実施形態では、脂質経路に関連する酵素(例えば、脂肪酸合成酵素)のための1つ以上の補因子が存在する状態で、脂質を産生する細菌(例えば、微細藻類)を培養することによって、脂質収量を増やす。一般的に、補因子の濃度は、補因子が存在しない状態での微生物脂質収量よりも、微生物脂質(例えば、脂肪酸)の量を増やすのに十分な濃度である。特定の実施形態では、補因子をコードする外来遺伝子を含む細菌(例えば、微細藻類)を培養物に含むことによって、培養物に補因子を与える。又は、補因子の合成に関与するタンパク質をコードする外来遺伝子を含有する細菌(例えば、微細藻類)を含むことによって、培養物に補因子を与えてもよい。特定の実施形態では、適切な 補因子は、ビオチン、パントテン酸化合物のような、脂質経路に関連する酵素に必要な任意のビタミンを含む。本発明で使用するのに適した補因子をコードする遺伝子、又はこのような補因子の合成に関与する遺伝子は、十分に知られており、上述のような構築物及び技術を用い、細菌(例えば、微細藻類)に導入することができる。
【0114】
本明細書に記載されているバイオリアクター、培養条件、従属栄養性成長及び増殖方法の特定の例を任意の適切な様式で組み合わせ、微生物の成長効率、及び脂質及び/又はタンパク質の生成効率を高めることができる。
【0115】
乾燥重量で、高い割合の油/脂質が蓄積した微細藻類のバイオマスは、異なる培養方法を用いて作成されており、この方法は、当該技術分野で知られている(PCT公開番号第2008/151149号)。本明細書に記載されている培養方法で作成され、本発明で有用な微細藻類のバイオマスは、乾燥重量で、少なくとも10%の微細藻類の油を含む。ある実施形態では、微細藻類のバイオマスは、乾燥重量で、微細藻類の油を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも55%、又は少なくとも60%含む。ある実施形態では、微細藻類のバイオマスは、乾燥重量で、微細藻類の油を10〜90%、25〜75%、40〜75%、又は50〜70%含む。
【0116】
本明細書に記載されているバイオマスの微細藻類の油、又は本発明の方法及び組成物で使用するために、バイオマスから抽出された微細藻類の油は、1つ以上の別個の脂肪酸エステル側鎖を有するグリセロ脂質を含む。グリセロ脂質は、1個、2個又は3個の脂肪酸分子でエステル化されたグリセロール分子から成り、脂肪酸分子は、長さはさまざまであってもよく、種々の飽和度を有していてもよい。脂肪酸分子(及び微細藻類の油)の長さ及び飽和度の特徴によって、以下の第IV章にさらに詳細に記載されるように、培養条件又は脂質経路の操作によって、本発明の微細藻類の油中の脂肪酸分子の性質又は比率を改変するように操作することができる。従って、藻の油の特定のブレンドは、2種類以上の微細藻類に由来するバイオマス又は藻の油を混合することによって、1種類の藻の中で調製されてもよく、又は、本発明の藻の油と、大豆、菜種、キャノーラ、パーム、パーム核、ココナツ、トウモロコシ、野菜くず、ナンキンハゼ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、鶏脂、牛脂、豚脂、微細藻類、大型藻類、クフェア、亜麻、ピーナッツ、上質のホワイトグリース、ラード、カメリナ・サティバ、カラシの種子、カシューナッツ、オーツ麦、ハウチワマメ、ケナフ、キンセンカ、麻、コーヒー、亜麻仁(亜麻)、ヘーゼルナッツ、ユーホルビア、カボチャの種、コリアンダー、ツバキ、ゴマ、ベニバナ、イネ、アブラギリ、ココア、コプラ、ケシ(pium poppy)、トウゴマの実、ピーカン、ホホバ、ジャトロファ、マカダミア、ブラジルナッツ、アボカド、石油、又は上述のいずれかの油の留分のような他の供給源に由来する油とをブレンドすることによって調製されてもよい。
【0117】
油の組成、すなわち、グリセロ脂質の脂肪酸構成要素の性質及び比率も、少なくとも2種類の別個の微細藻類に由来するバイオマス又は油を混ぜあわせることによって操作することができる。ある実施形態では、少なくとも2種類の別個の微細藻類は、異なるグリセロ脂質プロフィールを有している。この別個の種類の微細藻類を、好ましくは、それぞれの油を生成するような従属栄養条件下で、本明細書に記載されるように一緒に培養してもよく、又は別個に培養してもよい。異なる種類の微細藻類は、細胞のグリセロ脂質の構成成分である別個の脂肪酸を異なる割合で含有していてもよい。
【0118】
一般的に、Prototheca株は、鎖長がC8〜C14の脂肪酸をほとんど含まないか、まったく含まない。例えば、Prototheca moriformis(UTEX 1435)、Prototheca krugani(UTEX 329)、Prototheca stagnora(UTEX 1442)、Prototheca zopfii(UTEX 1438)は、C8脂肪酸をまったく含まず(又は検出可能な量含まず)、C10脂肪酸を0〜0.01%、C12脂肪酸を0.03〜2.1%、C14脂肪酸を1.0〜1.7%含んでいる。
【0119】
ある場合では、鎖長がC8〜10の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含むProtheca株は、鎖長C8の脂肪酸を少なくとも0.3%、少なくとも0.8%、少なくとも1.5%以上、鎖長C10の脂肪酸を少なくとも0.3%、少なくとも1.0%、少なくとも3.0%、少なくとも5%以上有している。別の状況では、鎖長がC12の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含むProtheca株は、鎖長C12の脂肪酸を少なくとも3.0%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも13%以上、鎖長C14の脂肪酸を少なくとも1.5%、少なくとも2%、又は少なくとも3%以上有している。他の場合では、鎖長がC14の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含むProtheca株は、鎖長C14の脂肪酸を少なくとも4.0%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%以上、鎖長C12の脂肪酸を少なくとも0.4%、少なくとも1%、少なくとも1.5%、又はそれ以上有している。
【0120】
非限定的な例では、鎖長がC8及びC10の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含むProtheca株は、鎖長C8の脂肪酸を0.3〜1.58%、鎖長C10の脂肪酸を0.35〜6.76%有している。他の非限定的な例では、鎖長がC12の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含むProtheca株は、鎖長C12の脂肪酸を3.9〜14.11%、鎖長C14の脂肪酸を1.95〜3.05%有する。他の非限定的な例では、鎖長がC14の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含むProtheca株は、鎖長C14の脂肪酸を4.40〜17.35%、鎖長C12の脂肪酸を0.4〜1.83面積%含む。ある場合では、鎖長がC8及びC14の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含むProtheca株は、中鎖(C8〜C14)脂肪酸を3.5〜20%有している。ある状況では、トランスジェニックPrototheca株を、外来遺伝子を保持するような一定で高選択的な圧力下で保持することは、特定の鎖長を有する望ましい脂肪酸が増えるため、有益である。非限定的な例では、実施例5は、C14選択性のチオエステラーゼ外来遺伝子を含有するPrototheca moriformisの培養物を保持すると、鎖長がC14の脂肪酸が2倍に増えることを示している(鎖長がC8〜C14の脂肪酸が30%を超える)。また、高濃度の外来遺伝子を保持することは、本明細書に開示されている相同組み換えベクター及び相同組み換え法を用い、細胞の核染色体に外来遺伝子を挿入することによっても達成することができる。外来遺伝子が核染色体に組み込まれた組み換え細胞は、本発明の目的のひとつである。
【0121】
また、微細藻類の油は、微細藻類が産生する他の構成要素を含んでいてもよく、培地から微細藻類の油に組み込まれた他の構成要素を含んでいてもよい。これらの他の構成要素は、微細藻類の種、バイオマスから微細藻類の油を回収するのに用いられる抽出方法、微細藻類の油組成に影響を与え得る他の因子のような微細藻類を培養するために用いられる培養条件に基づいて、さまざまな量で存在してもよい。このような構成要素の非限定的な例としては、0.1〜0.4μg/mlの量で存在するカロチノイド、0〜0.02mg/kgの量で存在するクロロフィル、0.4〜0.6mg/油100gの量で存在するγ−トコフェロール、0.2〜0.5mg/油gの量で存在する総トコトリエノールが挙げられる。
【0122】
他の構成要素としては、限定されないが、リン脂質、トコフェロール、トコトリエノール、カロチノイド(例えば、α−カロチン、β−カロチン、リコピンなど)、キサントフィル(例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、α−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン)、及び種々の有機化合物又は無機化合物が挙げられる。
【0123】
ある場合では、Prototheca種から抽出した油は、0.02mg/kg以下のクロロフィルを含む。ある場合では、Prototheca種から抽出した油は、0.4mcg/ml以下の総カロチノイドを含む。ある場合では、Protothecaの油は、油100gあたり、0.40〜0.60mgのγ−トコフェロールを含む。その他の場合では、Protothecaの油は、油1gあたり、0.2〜0.5mgの総トコトリエノールを含む。
【0124】
(III.遺伝子操作方法及び材料)
本発明は、本発明の方法で有用なPrototheca細胞及び組み換え宿主細胞、限定されないが、組み換えPrototheca moriformis、Prototheca zopfii、Prototheca krugani、Prototheca
stagnora宿主細胞を遺伝的に改変する方法及び材料を提供する。読者が読みやすいように、これらの方法及び材料の記載をいくつかの節に分けている。第1節では、形質転換方法について記載している。第2節では、相同組み換えを用いた遺伝子操作方法について記載している。第3節では、発現ベクター及び成分について記載している。
【0125】
(1.操作方法−形質転換)
細胞を、例えば、微粒子銃、エレクトロポレーション(Maruyama et al.(2004)、Biotechnology Techniques 8:821−826)、ガラスビーズによる形質転換、及び炭化ケイ素ウィスカーによる形質転換のような任意の適切な技術によって形質転換することができる。使用可能な別の方法は、プロトプラストを作成し、CaCl及びポリエチレングリコール(PEG)を用い、組み換えDNAを微細藻類細胞に導入することを含む(Kim et al.(2002)、Mar.Biotechnol.4:63−73、この論文は、Chorella ellipsoideaを形質転換するために、この方法を用いることを報告している)。微細藻類の共形質転換を利用し、2種類の別個のベクター分子を細胞に同時に導入することができる(例えば、Protist 2004 Dec;155(4):381−93)。
【0126】
微粒子銃による方法(例えば、Sanford、Trends In Biotech.(1988)6:299 302、米国特許第4,945,050号;エレクトロポレーション(Fromm et al.、Proc. Nat’l.Acad.Sci.(USA)(1985)82:5824 5828);レーザービーム、マイクロインジェクション、又はDNAを微細藻類に導入することが可能な任意の他の方法の使用を、Prototheca細胞を形質転換するために用いることができる。
【0127】
(2.操作方法−相同組み換え)
相同組み換えは、相補的DNA配列を整列させ、相同領域の置き換えを可能にすることである。標的となるゲノム配列(「テンプレート」)と同種の配列を含むトランスジェニックDNA(「ドナー」)を有機体に導入し、次いで、対応するゲノム同種配列の部位にあるゲノムで組み換えが起こる。このプロセスの機構的な工程は、ほとんどの場合、(1)同種DNAセグメントを対にすることと;(2)ドナーDNA分子内に二本鎖開裂部分を導入することと;(3)自由になったドナーDNA末端が、テンプレートDNA分子に侵入した後、DNA合成が起こることと;(4)二本鎖開裂部分の修復事象が起こり、最終的な組み換え産物が得られることとを含む。
【0128】
宿主又は有機体で相同組み換えを行う能力は、分子の遺伝子レベルで行うことができ、用途に応じた油を産生することができる油産生細菌の生成に有用であるといった多くの実用的意義がある。相同組み換えは、それ自体の本来の性質により、正確な遺伝子標的事象であり、従って、同じ標的配列を用いて作られたほとんどのトランスジェニック系は、表現型の観点では本質的に同一であり、それほど多くの形質転換事象をスクリーニングする必要はない。また、相同組み換えは、遺伝子が宿主の染色体に挿入される事象を標的としており、これにより、遺伝子の選択が存在しない状態であっても、優れた遺伝子安定性が得られる。染色体上の遺伝子座が異なることは、異種プロモーター/UTRに由来するものであっても、遺伝子発現に影響を与えると考えられるため、相同組み換えは、よく知られていないゲノム環境にある遺伝子座を検索し、これらの環境が遺伝子発現に与える影響を評価する方法になり得る。
【0129】
相同組み換えを用いる特に有用な遺伝子操作は、プロモーター/UTRのような選択特異的な宿主制御エレメントが、非常に特異的な様式で異種遺伝子を発現させることである。例えば、異種C12:0特異的なFATB(チオエステラーゼ)遺伝子カセット及び適切な選択マーカーを用いて内在するステアロイルACPデサチュラーゼ遺伝子を正確に切断すると、C18:1脂肪酸の内在濃度が顕著に減るとともに、C12:0脂肪酸の濃度が増加すると予想される。実施例13は、内在するPrototheca moriformisステアロイルACPデサチュラーゼ遺伝子を切除するのに適した相同組み換え標的構築物を記載している。
【0130】
相同組み換えが、正確な遺伝子標的事象であるため、十分なフランキング領域が特定されていれば、目的の遺伝子又は領域の中にある任意のヌクレオチドを正確に改変するために用いることができる。従って、相同組み換えは、RNA及び/又はタンパク質の遺伝子発現に影響を及ぼす制御配列を改変する手段として用いることもできる。また、相同組み換えは、基質特異性、親和性及びKmのような酵素活性を改変する試みにおいて、タンパク質コード領域を改変するために用いることもでき、これにより、宿主細胞の代謝に望ましい変化を起こすことができる。相同組み換えは、遺伝子標的化、遺伝子変換、遺伝子欠失、遺伝子重複、遺伝子反転を生じるようにホストゲノムを操作し、プロモーター、エンハンサー、3’UTRのような遺伝子発現制御エレメントを交換するための強力な手段を与える。
【0131】
相同組み換えは、内在する宿主細胞ゲノム内にある目的の遺伝子又は領域を「標的とする」ために、内在する配列の一部を含む標的構築物を用いることによって行うことができる。このような標的配列は、目的の遺伝子又は領域の5’末端に位置していてもよく、目的の遺伝子/領域の3’末端に位置していてもよく、目的の遺伝子/領域に隣接していてもよい。このような標的構築物を、さらなるベクター骨格を有する超らせん構造のプラスミドDNAとして、ベクター骨格を有さないPCR産物として、又は線状分子として宿主細胞内で形質転換してもよい。ある場合では、まず、制限酵素を用いて、トランスジェニックDNA(ドナーDNA)内にある同種配列にさらすことが有益な場合がある。この工程によって、組み換え効率が増し、望ましくない事象の発生を減らすことができる。組み換え効率を高める他の方法としては、処理されるゲノム配列に対して同種の線状末端を含有する形質転換されたトランスジェニックDNAを作成するためにPCRを用いることが挙げられる。
【0132】
(3.ベクター及びベクター成分)
本発明に従う微生物を形質転換するためのベクターは、本明細書の開示を考慮して、当業者には有名な既知の技術によって調製することができる。ベクターは、典型的には、1つ以上の遺伝子を含有しており、それぞれの遺伝子は、望ましい生成物(遺伝子産物)を発現するようにコードしており、この遺伝子発現を制御し、組み換え細胞内の特定の位置に向かうように遺伝子産物を標的化するような1つ以上の制御配列に動作可能に連結している。読者の助けとなるように、この節をいくつかの副節に分けている。A副節は、制御配列、典型的には、ベクター上に含まれている制御配列、及び本発明によって提供される新規制御配列について記載している。B副節は、遺伝子、典型的には、ベクターに含まれる遺伝子、及び新規コドン最適化方法、及び本発明によって提供される方法によって調製される遺伝子について記載している。
【0133】
(A.制御配列)
制御配列は、コード配列の発現を制御するか、又は遺伝子産物を、細胞内又は細胞外の特定の位置に向かわせる核酸である。発現を制御する制御配列としては、例えば、コード配列の転写を制御するプロモーター、コード配列の転写を止めるターミネーターが挙げられる。別の制御配列は、コード配列の末端に位置する3’非翻訳配列であり、ポリアデニル化シグナルをコードする。遺伝子産物を特定の位置に向かわせる制御配列としては、シグナルペプチドをコードする配列が挙げられ、この配列は、細胞内又は細胞外の特定の位置に、この配列が結合したタンパク質を向かわせる。
【0134】
従って、微細藻類において外来遺伝子を発現するような例示的なベクターの設計は、望ましい遺伝子産物(例えば、選択可能なマーカー、脂質経路改変酵素、又はショ糖利用酵素)のためのコード配列を、微細藻類内で活性なプロモーターと動作可能に連結した状態で含む。又は、ベクターが、目的のコード配列と動作可能に連結した状態でプロモーターを含まない場合、コード配列を、ベクターの組み込み位置で内在するプロモーターに動作可能に連結するように、細胞内で形質転換してもよい。プロモーターを用いずに形質転換する方法は、微細藻類でうまく働くことがわかっている(例えば、Plant Journal 14:4、(1998)、pp.441−447)。
【0135】
多くのプロモーターは、微細藻類内で活性であり、形質転換される藻に内在するプロモーター、形質転換される藻に内在しないプロモーター(すなわち、他の藻に由来するプロモーター、高等植物に由来するプロモーター、植物ウイルス又は藻ウイルスに由来するプロモーター)を含む。微細藻類内で活性な、具体的な外来のプロモーター及び/又は内在するプロモーター(微細藻類中で機能する抗生物質耐性のある遺伝子)は、PCT公開番号第2008/151149号及びこの明細書に引用されている参考文献に記載されている)。
【0136】
外来遺伝子を発現させるために用いられるプロモーターは、その外来遺伝子に天然で連結しているプロモーターであってもよく、又は、異種遺伝子であってもよい。ある種のプロモーターは、1つより多い微細藻類において活性である。他のプロモーターは、種に特異的である。具体的なプロモーターとしては、以下の実施例で用いられる、Chlamydomonas reinhardtiiに由来するβ−チューブリンのようなプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CMV)及びクロレラウイルスのような、微細藻類の複数の種の中で活性であることが示されているウイルスプロモーターが挙げられる(例えば、Plant Cell Rep.2005 Mar;23(10−11):727−35;J Microbiol.2005 Aug;43(4):361−5;Mar Biotechnol(NY).2002 Jan;4(1):63−73)。Prototheca内で外来遺伝子を発現させるのに適切な別のプロモーターは、Chlorella sorokinianaグルタミン酸脱水素酵素プロモーター/5’UTR(配列番号69)である。場合により、これらの配列のうち、プロモーターを含有し、少なくとも10、20、30、40、50、又は60ヌクレオチド、又はそれ以上が使用される。Prototheca内で外来遺伝子を発現させるのに有用な代表的なプロモーターは、本明細書の配列表に列挙されており、例えば、Chlorella HUP1遺伝子のプロモーター(配列番号1)、Chlorella ellipsoidea硝酸還元酵素プロモーター(配列番号2)がある。Chlorellaウイルスプロモーターを、Prototheca内で遺伝子を発現させるために用いることもでき、例えば、米国特許第6,395,965号の配列番号1〜7が挙げられる。Prototheca内で活性なさらなるプロモーターは、例えば、Biochem Biophys Res Commun.1994 Oct 14;204(1):187−94;Plant Mol Biol.1994 Oct;26(1):85−93;Virology.2004 Aug 15;326(1):150−9;及び、Virology.2004 Jan 5;318(1):214−23に見いだすことができる。
【0137】
プロモーターは、一般的に、構成的であるか、又は誘発性であると特徴づけることができる。構成的プロモーターは、一般的に、いつでも(又は、細胞周期の特定の時期に)同じレベルで活性であるか、又は発現を起こすように機能する。誘発性プロモーターは、これとは異なり、刺激に応答したときのみ、活性である(又は不活性化する)か、又は顕著に上方調節されるか、又は下方調節される。どちらの種類のプロモーターも、本発明の方法での用途がある。本発明で有用な誘発性プロモーターとしては、例えば、外から与えられる低分子(例えば、配列番号1の場合には、グルコース)、温度(熱いか、又は冷たい)、培地中の窒素不足などの刺激に応答して、動作可能に連結した遺伝子の転写に介在するプロモーターが挙げられる。適切なプロモーターは、本質的にサイレント遺伝子である遺伝子の転写を活性化させることができるか、又は、低濃度で転写されるような動作可能に連結した遺伝子の転写を上方調節し、好ましくは、かなり上方調節することができる。
【0138】
停止領域の制御配列の包含は任意であり、利用される場合には、停止領域は比較的置き換え可能であるため、その選択は、主に簡便なものである。停止領域は、転写開始領域(プロモーター)に由来するものであってもよく、目的のDNA配列に由来するものであってもよく、又は、別の供給源から得られるものであってもよい。例えば、Chen and Orozco、Nucleic Acids Res.(1988)16:8411。
【0139】
また、本発明は、制御配列及び組み換え遺伝子、及び目的の遺伝子を区画化して発現するための、これらを含むベクターを提供する。標的とするための細胞小器官は、葉緑体、プラスチド、ミトコンドリア、小胞体である。それに加え、本発明は、制御配列及び組み換え遺伝子、細胞の外側にタンパク質を分泌するための、これらを含むベクターを提供する。
【0140】
Protothecaの核ゲノム内で発現するタンパク質は、プラスチド標的シグナルを用い、プラスチドを標的としてもよい。Chlorellaに内在するプラスチド標的配列は知られており、例えば、プラスチドを標的とするタンパク質をコードする、Chlorella核ゲノム内の遺伝子、例えば、GenBank寄託番号AY646197及びAF499684が挙げられ、一実施形態では、このような制御配列は、Protothecaプラスチドでタンパク質を発現させることを標的とするために、本発明のベクター内で使用される。
【0141】
以下の実施例は、宿主細胞の正しい区画に異種タンパク質を向かわせるために、プラスチド標的配列を使用することを記載している。cDNAライブラリーは、Prototheca moriformis細胞及びChlorella protothecodies細胞を用いて作られ、以下の実施例12及び実施例11に記載されている。配列をBLASTに供し、プラスチド/葉緑体へと向かう既知のタンパク質に対する相同性について分析した。これらのタンパク質をコードするcDNAをクローン化し、これらのcDNAからプラスチド標的配列を単離した。cDNAライブラリーから同定された、藻のプラスチド標的配列のアミノ酸配列、及び以下の異種発現の実施例で用いられた植物脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼのアミノ酸配列は、配列番号127〜133に列挙されている。
【0142】
本発明の別の実施形態では、Prototheca内でのポリペプチドの発現は、小胞体を標的としている。発現ベクター内の適切な保持シグナル又は選別シグナルによって、タンパク質が確実に小胞体(ER)に保持され、ゴルジ体の下流には行かない。例えば、Wageningen UR−Plant Research InternationalのIMPACTベクター1.3ベクターは、よく知られているKDEL保持シグナル又は選別シグナルを含んでいる。このベクターを用い、ERを保持することは、発現レベルが5倍以上に高まることが報告されているという点で、実益がある。この現象の主な理由は、ERが、細胞質に存在するプロテアーゼより低い濃度のプロテアーゼを含んでいるか、及び/又は、細胞質に存在するプロテアーゼとは異なる、発現したタンパク質の翻訳後の分解に関与するプロテアーゼを含んでいるからだと思われる。緑色微細藻類内で機能するER保持シグナルが知られている。例えば、Proc Natl Acad Sci
USA.2005 Apr 26;102(17):6225−30を参照。
【0143】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチドは、細胞から出て、培地に分泌することを標的としている。本発明の方法に従ってPrototheca内で使用することが可能な、Chlorella内で活性なシグナルの分泌については、Hawkins et al.、Current Microbiology Vol.38(1999)、pp.335−341を参照。
【0144】
(B.遺伝子及びコドンの最適化)
典型的には、遺伝子は、プロモーターと、コード配列と、停止制御配列とを含む。組み換えDNA技術によって組み立てられる場合、遺伝子は、発現カセットと呼ばれることもあり、組み換え遺伝子を宿主細胞に導入するために使用されるベクターに簡便に挿入するために、制限配列に隣接していてもよい。発現カセットは、ゲノム由来のDNA配列、又は相同組み換えにいよって発現カセットをゲノムに安定に組み込みやすくすることを標的とした他の核酸に隣接していてもよい。又は、ベクター及びその発現カセットは、組み込まれないままであってもよく、この場合には、ベクターは、典型的には、異種ベクターDNAを複製するために与えることができるような、複製起源を含んでいてもよい。
【0145】
ベクター上に存在する共通の遺伝子は、タンパク質をコードする遺伝子であり、この発現によって、このタンパク質を含有する組み換え細胞が、このタンパク質を発現しない細胞と分化する。このような遺伝子、及びその対応する遺伝子産物は、選択可能なマーカーと呼ばれる。任意のさまざまな選択可能なマーカーが、Protothecaを形質転換するのに有用なトランス遺伝子構築物中で用いられてもよい。適切な選択可能なマーカーの例としては、G418耐性遺伝子、硝酸還元酵素遺伝子(Dawson et al.(1997)、Current Microbiology 35:356−362を参照)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(HPT;Kim et al.(2002)、Mar. Biotechnol.4:63−73を参照)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、フレオマイシン対する耐性を付与するble遺伝子(Huang et al.(2007)、Appl.Microbiol.Biotechnol.72:197−205)が挙げられる。微細藻類の抗生物質に対する感度を決める方法はよく知られている。例えば、Mol Gen Genet.1996 Oct 16;252(5):572−9。
【0146】
本発明の目的のために、本発明の組み換え宿主細胞を調製するために用いられる発現ベクターは、遺伝子のひとつが選択可能なマーカーである場合、少なくとも2個、多くは3個の遺伝子を含んでいるだろう。例えば、本発明の遺伝子改変されたProtothecaは、選択可能なマーカーに加え、例えば、ショ糖インベルターゼ遺伝子又はアシルACP−チオエステラーゼ遺伝子のような1つ以上の外来遺伝子を含む本発明のベクターで形質転換させることによって作られてもよい。1個又は全部の遺伝子が、誘発性プロモーターを用いて発現してもよく、これにより、これらの遺伝子が発現する相対的なタイミングを制御し、脂質収量及び脂肪酸エステルへの変換を高めることができる。2種以上の外来遺伝子の発現は、同じ誘発性プロモーターで制御されていてもよく、異なる誘発性(又は構成的)プロモーターで制御されていてもよい。後者の状況では、第1の外来遺伝子の発現は、第1の期間に誘発されてもよく(この間に、第2の外来遺伝子の発現が誘発されてもよく、誘発されなくてもよく)、第2の外来遺伝子の発現は、第2の期間に誘発されてもよい(この間に、第1の外来遺伝子の発現が誘発されてもよく、誘発されなくてもよい)。
【0147】
他の実施形態では、2種以上の外来遺伝子(任意の選択可能なマーカーに加えて)は、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ及び脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、アルコール産物を与えるこれらの組み合わせ作用である。さらに、限定されないが、アルデヒドを生成するための脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ及び脂肪酸アシル−CoA還元酵素のような他の外来遺伝子の組み合わせも提供される。一実施形態では、ベクターは、アルカンを生成するための、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素の組み合わせを与える。これらのそれぞれの実施形態では、1つ以上の外来遺伝子が、誘発性プロモーターを用いて発現してもよい。
【0148】
2種以上の外来遺伝子を発現する、他の代表的な本発明のベクターとしては、ショ糖トランスポーター及びショ糖インベルターゼ酵素の両方をコードするベクター、選択可能なマーカーと、分泌されたショ糖インベルターゼとの両方をコードするベクターが挙げられる。いずれかの種類のベクターで形質転換された組み換えProtothecaは、サトウキビ(サトウキビから誘導される糖類)を炭素源として使用する能力が操作されているため、低い製造コストで脂質を産生する。上述の2種類の外来遺伝子の挿入は、定方向変異誘発法及び/又はランダム変異導入法によって多糖生合成を乱すことと組み合わせることができ、脂質産生へと進む炭素の流れが大きくなる方向に進む。個々に、及び組み合わせて、栄養転換、脂質の産生を変えるような操作、外来の酵素を用いた処理によって、微生物が産生する脂質の組成が変わる。この変化によって、産生する脂質の量、他の脂質に対する的な1つ以上の炭化水素種の相対量、及び/又は微生物が産生する脂質種の種類を変えることができる。例えば、微細藻類を、TAGの量及び/又は割合を増やすように操作することができる。
【0149】
組み換えタンパク質の最適な発現のために、形質転換されるべき宿主細胞で優先的に用いられるコドンを用いてmRNAを生成するコード配列を利用することが有益である。従って、トランス遺伝子の適切な発現は、トランス遺伝子のコドンの使用が、トランス遺伝子を発現する有機体の特定のコドンの偏りと適合していることが必要な場合がある。この影響の元になる正確な機構は多くあるが、利用可能なアミノアシル化されたtRNAプールと、細胞内で合成されるタンパク質との適切なバランス、この要求を満たす場合に、トランスジェニックメッセンジャーRNA(mRNA)をもっと効果的な翻訳との組み合わせを含む。トランス遺伝子内のコドンの使用が最適化されていない場合、利用可能なtRNAプールは、異種mRNAの効率的な翻訳を可能にするのに十分ではなく、その結果、リボソームが失速し、停止し、トランスジェニックmRNAが不安定になる場合がある。
【0150】
本発明は、Prototheca内で組み換えタンパク質が首尾よく発現するのに有用な、コドンが最適化された核酸を提供する。Prototheca種内のコドンの使用を、Prototheca moriformisから単離されたcDNA配列を研究することによって分析した。この分析から、24,000を超えるコドンを調べ、以下の表1に結果を示している。
【0151】
【表1】
【0152】
他の実施形態では、組み換えベクター内の遺伝子は、Prototheca株以外の微細藻類株に関して言うと、コドンが最適化されている。例えば、微細藻類内で発現させるために遺伝子を記録する方法は、米国特許第7,135,290号に記載されている。コドンの最適化に関するさらなる情報は、例えば、GenBankのコドン利用に関するデータベースが利用可能である。
【0153】
本発明の方法及び材料によって、外来遺伝子をProtothecaに導入することが可能な場合、ショ糖の利用及び脂質経路の改変に関する遺伝子は、以下の章で記載するように、特に興味深い。
【0154】
(IV.ショ糖の利用)
実施形態では、本発明の組み換えPrototheca細胞は、1つ以上の外来のショ糖利用遺伝子をさらに含む。種々の実施形態では、1つ以上の遺伝子は、フルクトキナーゼ、グルコキナーゼ、ヘキソキナーゼ、ショ糖インベルターゼ、ショ糖トランスポーターからなる群から選択される1つ以上のタンパク質をコードする。例えば、ショ糖トランスポーター及びショ糖インベルターゼの発現によって、Protothecaは、ショ糖を培地から細胞に移動させ、ショ糖を加水分解し、グルコース及びフルクトースを得ることができる。場合により、フルクトキナーゼは、内在するヘキソキナーゼ活性が、フルクトースの最大リン酸化には不十分であるような状況でも同様に発現することができる。適切なショ糖トランスポーター典枝は、Genbank寄託番号CAD91334、CAB92307、CAA53390である。適切なフルクトキナーゼの例は、寄託番号P26984、P26420、CAA43322である。
【0155】
一実施形態では、本発明は、ショ糖インベルターゼを分泌するPrototheca宿主細胞を提供する。ショ糖インベルターゼの分泌は、ショ糖を細胞に移動させることが可能なトランスポーターを発現する必要性をなくす。というのは、分泌されたインベルターゼが、ショ糖分子をグルコース分子及びフルクトース分子に変換するのを触媒し、これらの分子が運ばれ、本発明によって提供される最近によって利用されるからである。例えば、分泌シグナル(例えば、配列番号4(酵母に由来する)、配列番号5(高等植物に由来する)、配列番号6(真核性のコンセンサス分泌シグナルなど)、配列番号7(高等植物及び真核性のコンセンサスに由来するシグナル配列の組み合わせ)を用いたショ糖インベルターゼ(例えば、配列番号3)の発現によって、インベルターゼ活性が細胞外で発生する。このようなタンパク質の発現は、本明細書に開示されている遺伝子操作方法によって可能となるが、それによって細胞外グルコースをエネルギー源としてすでに利用可能な細胞が、ショ糖を細胞外エネルギー源として利用することができる。
【0156】
ショ糖を含有する培地中でインベルターゼを発現するPrototheca種は、油を生成するのに好ましい微細藻類の種である。実施例3は、組み換え酵母インベルターゼを発現し、組み換えPrototheca細胞から分泌させるために、本発明の方法及び試薬をどのように使用することができるかを示している。この完全に活性なタンパク質の発現及び細胞外での標的化によって、得られた宿主細胞がショ糖を用いて成長し、一方、形質転換されていない対応する細胞は、ショ糖を用いて成長することができない。従って、本発明は、コドンが最適化されたインベルターゼ遺伝子、限定されないが、酵母インベルターゼ遺伝子が、インベルターゼ活性及びショ糖の加水分解によって評価される場合に、インベルターゼ遺伝子が発現するようにゲノムに組み込まれたものを含むPrototheca組み換え細胞を提供する。また、本発明は、Prototheca組み換え細胞がショ糖を用いて成長することが可能であり、形質転換されていない対応する細胞は、ショ糖を用いて成長することができないため、Prototheca組み換え細胞内で選択可能なマーカーとして有用なインベルターゼ遺伝子も提供し、さらに、藻の分子の遺伝子学のために選択可能な強力なマーカーとしてインベルターゼを用いて、組み換え宿主細胞を選別する方法も提供する。
【0157】
Prototheca内でショ糖インベルターゼを首尾よく発現することも、異種(組み換え)タンパク質を、藻の細胞内で発現させることができ、細胞から外に出し、完全に活性で機能的な形態で培地に首尾よく移すことができるという点で、本発明の別の態様を示している。従って、本発明は、微細藻類内でさまざまで多様なタンパク質を発現させ、これらのタンパク質を宿主細胞の外で集める方法及び試薬を提供する。このようなタンパク質としては、例えば、工業用酵素、例えば、リパーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、エステラーゼ、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、ラクターゼ、異性化酵素、インベルターゼ、及び治療用タンパク質、例えば、成長因子、サイトカイン、2個の軽鎖と2個の重鎖を含む全長抗体、Fab、scFv(一本鎖可変フラグメント)、camellid型抗体、抗体フラグメント、抗体フラグメント融合物、抗体−受容体重合物、インスリン、インターフェロン、インスリン様成長因子が挙げられる。
【0158】
Prototheca内でショ糖インベルターゼを首尾よく発現させることも、Prototheca内でタンパク質を分泌させるために、藻の中で真菌トランジットペプチドを使用するための方法及び試薬を提供し、あるペプチドを機能させるかどうかを決定する方法及び試薬、また、Prototheca細胞内でトランジットペプチドとして機能させる能力を提供するという点で、本発明の別の態様を示している。本発明の方法及び試薬を、タンパク質を細胞の外側に首尾よく移動させることができ、酵母インベルターゼがこれらの方法で大きな有用性を有するような他のトランジットペプチドを同定するためのツール及びプラットフォームとして用いることができる。この例で示されているように、内在する酵母インベルターゼトランジットペプチドの除去、及び宿主である藻に内在するか、又は他の供給源(真核性、原核性、ウイルス)に由来する他のトランジットペプチドによる置き換えによって、任意の目的のペプチドが、細胞から出て行くタンパク質を導くトランジットペプチドとして機能させることが可能かどうかを特定することができる。
【0159】
適切なショ糖インベルターゼの例としては、Genbank寄託番号CAB95010、NP_012104、CAA06839で特定されるものが挙げられる。適切なインベルターゼの非限定的な例を以下の表2に列挙している。それぞれの列挙したインベルターゼのアミノ酸配列は、以下の配列表に含まれている。ある場合では、本発明の方法及びベクターで使用するのに適した外来のショ糖利用遺伝子は、表2から選択されるショ糖インベルターゼとのアミノ酸同一性が少なくとも40%、50%、60%、75%、又は90%、又はそれ以上であるショ糖インベルターゼをコードする。
【0160】
【表2】
【0161】
Protothecaによって、インベルターゼを培地に分泌させると、細胞は、純粋な試薬グレードのグルコースを用いても成長するため、サトウキビの処理から得た廃棄糖液を用いても同様に細胞を成長させることができる。サトウキビ処理の価値の低い廃棄産物を用いることによって、脂質及び他の油の生成において、費用を顕著に節約することができる。従って、本発明は、Prototheca微生物の集合を含む微生物の培養物を提供し、この培養物は、(i)ショ糖と、(ii)ショ糖インベルターゼ酵素とを含む。種々の実施形態では、培養物中のショ糖は、ソルガム、テンサイ、サトウキビ、糖液、又は解重合されたセルロース系材料に由来するものである(場合により、リグニンを含んでいてもよい)。別の態様では、本発明の方法及び試薬は、組み換えProtothecaが利用可能な原材料の数及び種類を顕著に増やす。ここに例示した細菌は、ショ糖を利用することができるように変えられているが、セルロース系のような原材料を、セルラーゼ、ペクチナーゼ、異性化酵素などを分泌する能力を有する本発明の操作された宿主細菌が利用することができるように、本発明の方法及び試薬を適用してもよく、その結果、酵素反応の分解産物に単純に耐え得るというだけではなく、宿主が炭素源として利用する。
【0162】
(V.脂質経路の操作)
ショ糖を含有する原材料のような原材料をProtothecaが利用する能力を変えることに加え、本発明は、産生する脂質の性質及び/又は割合を変えるように改変された組み換えProtothecaも提供する。上述の経路は、さらに、又は上述のことに変えて、脂質の酵素処理によって産生する種々の脂質分子及び脂肪酸経路の中間体の性質及び/又は割合を変えるように改変されてもよい。種々の実施形態では、本発明の組み換えPrototheca細胞は、形質転換されていない対応する細胞と比較して、単位容積あたり及び/又は単位時間あたりの脂質収量が最適化されており、炭素鎖長(例えば、再生可能なディーゼルを生成するための、又は、脂質原材料を必要とする産業的な化学用途のための)を有しており、二重結合又は三重結合の数が減っており、場合によりゼロになっており、特定の脂質種又は個々の脂質の集合について、水素:炭素比が大きくなっている。
【0163】
特定の実施形態では、脂肪酸の合成に対し、代謝における分岐点を制御するような1つ以上の鍵となる酵素を上方調節するか、又は下方調節し、脂質の産生を高める。上方調節は、例えば、転写を増やす強力なプロモーターエレメント及び/又はエンハンサーエレメントを用い、例えば、目的の酵素をコードする遺伝子が発現するような発現構築物を用いて細胞を形質転換することによって達成することができる。このような構築物は、形質転換体を選択することができるような選択可能なマーカーを含んでいてもよく、それにより、構築物が増幅され、コードされた酵素の発現量が増える。本発明の方法に従って上方調節するのに適した酵素の例としては、ピルビン酸をアセチル−CoAに変換する役割を担うピルビン酸脱水素酵素(例えば、微細藻類由来のもの、Genbank寄託番号NP_415392;AAA53047;Q1XDM1;CAF05587を含む)が挙げられる。ピルビン酸脱水素酵素を上方調節すると、アセチル−CoAの産生量が増え、それによって脂肪酸の合成量が増える。アセチル−CoAカルボキシラーゼは、脂肪酸合成の最初の工程を触媒する。従って、この酵素を上方調節すると、脂肪酸の産生量を増やすことができる(例えば、微細藻類由来のもの、Genbank寄託番号BAA94752;AAA75528;AAA81471;YP_537052;YP_536879;NP_045833;BAA57908を含む)。また、脂肪酸合成中に、アシル鎖を成長させるアシルキャリアータンパク質(ACP)を上方調節することによって、脂肪酸産生量を増やすこともできる(例えば、微細藻類由来のもの、Genbank寄託番号A0T0F8;P51280;NP_849041;YP_874433を含む)。グリセロール−3−ホスフェートアシルトランスフェラーゼは、脂肪酸合成の律速工程を触媒する。この酵素を上方調節すると、脂肪酸の産生量を増やすことができる(例えば、微細藻類由来のもの、Genbank寄託番号AAA74319;AAA33122;AAA37647;P44857;ABO94442を含む)。
【0164】
遺伝子の上方調節及び/又は下方調節は、脂肪酸の生合成経路に関する遺伝子の発現を制御する包括的な制御因子に適用することができる。従って、脂肪酸合成の1つ以上の包括的な制御因子を、適切な場合に上方調節するか、又は下方調節し、それぞれ、複数の脂肪酸合成遺伝子の発現を阻害するか、又は高め、最終的に、脂質の産生量を増やすことができる。例としては、ステロール制御エレメント結合タンパク質(SREBP)、例えば、SREBP−1a及びSREBP−1c(例えば、Genbank寄託番号NP_035610及びQ9WTN3を参照)。
【0165】
また、本発明は、脂質改変酵素、例えば、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ(表3を参照)、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素(表4を参照)、脂肪酸アシル−CoA還元酵素(表5を参照)、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素(表6を参照)、脂肪族アルデヒド還元酵素、スクアレンシンターゼ(GenBank寄託番号AF205791を参照)をコードする1つ以上の外来遺伝子を含むように改変された組み換えPrototheca細胞を提供する。ある実施形態では、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼと、自然に共発現するアシルキャリアータンパク質とをコードする遺伝子が、場合により、他の脂質改変酵素をコードする1つ以上の遺伝子とともに、Prototheca細胞内で形質転換される。他の実施形態では、ACP及び脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、これらが特定の組織及び有機体で自然に共発現するか否かにかかわらず、両者が本発明の細菌及び方法で一緒に用いられると、利点を付与するような親和性を互いに有していてもよい。従って、本発明は、自然に共発現するこれらの酵素対、及び、ACPから特定の長さの炭素鎖が開裂しやすくなるように、互いに相互作用する親和性を有している酵素対を包含している。
【0166】
さらに他の実施形態では、デサチュラーゼをコードする外来遺伝子を、脂質の飽和度を変える他の脂質改変酵素をコードする1つ以上の遺伝子とともに、Prototheca細胞内で形質転換する。ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(例えば、Genbank寄託番号AAF15308;ABM45911;AAY86086)は、例えば、ステアロイル−ACPからオレイル−ACPへの変換を触媒する。この遺伝子を上方調節すると、細胞が産生する一価飽和脂肪酸の比率を増やす事ができ、一方、下方調節すると、一価不飽和物の比率を減らすことができる。同様に、例えば、ω−6脂肪酸デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラーゼ、又はω−6−オレイン酸デサチュラーゼのような1つ以上のグリセロ脂質デサチュラーゼの発現によって、飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の比率を変えるように制御することができる。ある実施形態では、デサチュラーゼは、望ましい炭素鎖長によって選択することができ、デサチュラーゼは、特定の炭素鎖を有する基質、又は特定の範囲内にある炭素長を有する基質の中で、位置特異的に改変させることができる。
【0167】
従って、特定の実施形態では、本発明の細菌を、アシル−ACPチオエステラーゼ、アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素、又は自然に共発現するアシルキャリアータンパク質から選択される1つ以上の外来遺伝子を発現するように遺伝子操作する。適切な発現方法は、リパーゼ遺伝子の発現に関して上に記載されており、他の方法の中で、特に、誘発的発現及び区画化された発現が挙げられる。脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、脂質合成中に、アシルキャリアータンパク質(ACP)から脂肪酸を開裂させる。さらなる酵素処理によって、開裂した脂肪酸と補酵素とが組み合わさって、アシル−CoA分子が得られる。このアシル−CoAは、脂肪酸アシル−CoA還元酵素が酵素活性を発揮してアルデヒドを生じるための基質であり、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素が酵素活性を発揮してアルコールを生じるための基質である。上述のように特定した、脂肪酸アシル−CoA還元酵素の作用によって産生するアルデヒドは、さらに、脂肪族アルデヒド還元酵素が酵素活性を発揮してアルコールを生じるための基質であるか、又は、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素が酵素活性を発揮してアルカン又はアルケンを生じるための基質である。
【0168】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成する脂肪酸、グリセロ脂質、又は対応する一級アルコール、アルデヒド、アルカン又はアルケンは、8個、10個、12個、又は14個の炭素原子を含む。ディーゼル、バイオディーゼル、再生可能なディーゼル又はジェット燃料を生成するために好ましい脂肪酸、又は工業用途のための、対応する一級アルコール、アルデヒド、アルカン及びアルケンは、8〜14個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、上述の脂肪酸、及び他の対応する炭化水素分子は、飽和であり(炭素−炭素二重結合又は三重結合を含まない);一価飽和であり(二重結合が1個);多価不飽和であり(2種以上の二重結合);直鎖であるか(環状ではない)、又は分枝鎖である。燃料生成の場合、飽和度が高い方が好ましい。
【0169】
すぐ上に記載されている酵素は、特定の数の炭素原子を含む基質の加水分解に対し、優先的な特異性を有する。例えば、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、炭素原子を12個含む脂肪酸をACPから優先的に開裂させ得る。ある実施形態では、ACP及び長さ特異的なチオエステラーゼは、組み合わせると特に有用なような、お互いに対する親和性を有する場合がある(例えば、外来のACP及びチオエステラーゼ遺伝子は、これらが誘導される特定の組織又は有機体で自然に共発現する場合がある)。従って、種々の実施形態では、本発明の組み換えPrototheca細胞は、酵素活性(例えば、ACPからの脂肪酸開裂、アシル−CoAをアルデヒド又はアルコールに還元すること、又は、アルデヒドからアルカンへの変換)を、基質に含まれる炭素原子の数によって特異的に触媒するようなタンパク質をコードする外来遺伝子を含んでいてもよい。この酵素の特異性は、種々の実施形態では、炭素原子を8〜34個、好ましくは、8〜18個、より好ましくは、8〜14個有する基質に対する特異性であり得る。好ましい特異性は、炭素原子が少ない、すなわち12個から、多い、すなわち18個含む基質に対する特異性である。
【0170】
非限定的ではあるが、代表的な例において、本発明は、外来のチオエステラーゼを発現し、従って、形質転換されていないPrototheca細胞の脂質プロフィールと比較して、そのチオエステラーゼが特異的な鎖長の脂質を豊富に含む、ベクター及びPrototheca宿主細胞を提供する。示されているチオエステラーゼは、(i)Cinnamomum camphorum FatB1(GenBank寄託番号Q39473、アミノ酸配列は配列番号59であり、プラスチド標的配列(PTS)を含まないアミノ酸配列は、配列番号139であり、コドンが最適化された表1のcDNA配列は、配列番号60であり)、炭素鎖長が14の脂肪酸アシル−ACP基質を好む;(ii)Cuphea hookeriana FatB2(GenBank寄託番号AAC49269、アミノ酸配列は配列番号61であり、PTSを含まないアミノ酸配列は、配列番号138であり、コドンが最適化された表1のcDNA配列は、配列番号62であり)、炭素鎖長が8〜10の脂肪酸アシル−ACP基質を好む;(iii)Umbellularia Fat B1(GenBank寄託番号Q41635、アミノ酸配列は、配列番号63に含まれており、PTSを含まないアミノ酸配列は、配列番号139にあり、コドンが最適化された表1のcDNA配列は、配列番号64にあり)、炭素鎖長が12の脂肪酸アシル−ACP基質を好む。
【0171】
本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した他の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼとしては、限定されないが、表3に列挙されたものが挙げられる。
【0172】
【表3-1】
【0173】
【表3-2】
【0174】
【表3-3】
【0175】
以下の実施例は、Prototheca種のCuphea hookeriana、Umbellularia californica、Cinnamomun camphoraに由来する異種脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼを首尾よく標的化し、発現させることについて記載している。さらに、宿主細胞で異種脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼを発現させると、脂肪酸プロフィールが変わることが確認された。これらの結果は、一般的には、藻と高等植物のチオエステラーゼとの配列同一性がなく、Prototheca moriformisの脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼと、上に列挙した異種脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼとにも配列同一性がないことから、本当に予想できない結果であった。2種類のPrototheca moriformisのアシル−ACPチオエステラーゼを単離し、配列を決定した。2種類のcDNAの配列は、互いに高い同一性を有していることが示され、ヌクレオチドレベルでは、12箇所だけが異なっており、アミノ酸レベルでは、5箇所だけが異なっており、このうちの4箇所がプラスチドトランジットペプチド内にあった。Prototheca moriformisから得たゲノム配列をさらに分析し、これら2種類のcDNAが、実際には別個のコンティグでコードされており、相同性は高いけれども、2個の別個の遺伝子によってコードされていることが確認された。この2種類のPrototheca moriformis脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、P.moriformis脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ−1及びP.moriformis脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ−2のcDNA及びアミノ酸配列を、配列番号134〜137として列挙している。
【0176】
これら2種類のcDNAのアミノ酸配列を、NCBIデータベースに対してBLASTによって決定し、2種類の最も相同性の配列は、Chlamydomonas reinhardtii及びArabidopsis thalianaに由来する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼであった。驚くべきことに、Prototheca moriformisの脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼと高等植物のチオエステラーゼとのアミノ酸同一性のレベルはかなり低く、同一性はわずか49%及び37%であった。それに加え、これらの脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼの中にある触媒トライアド(NXHX36C)のアミノ酸末端部分周囲の配列もわずかに異なっている。観察した40種類の高等植物の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼのうち、39種において、トライアドのアミノ末端のN残基及びH残基の周囲に配列LDMNQHがあり、一方、同定した全ての藻の配列は、配列MDMNGHを有していることが示された。アミノ酸配列同一性が低く、チオエステラーゼの触媒トライアド周囲が異なっていることから、実施例で得られ、記載されている外来の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼの発現がうまくいったという結果は、予想できないものであり、特に、外来の脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼの活性が、内在するProtothecaアシルキャリアータンパク質との機能的なタンパク質−タンパク質相互作用に依存しているという事実から、予想できないものであった。
【0177】
本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素としては、限定されないが、表4に列挙したものが挙げられる。
【0178】
【表4】
【0179】
本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した脂肪酸アシル−CoA還元酵素としては、限定されないが、表5に列挙したものが挙げられる。
【0180】
【表5】
【0181】
本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素としては、限定されないが、表6に列挙したものが挙げられる。
【0182】
【表6】
【0183】
自然に共発現する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ及びアシルキャリアータンパク質の組み合わせは、本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適している。
【0184】
炭化水素改変酵素又は脂質改変酵素のさらなる例としては、以下のいずれかの米国特許に含まれるか、以下のいずれかの米国特許で参照されているか、又は以下のいずれかの米国特許に含まれるか又は参照されている核酸配列によってコードされるアミノ酸配列が挙げられる:第6,610,527号;第6,451,576号;第6,429,014号;第6,342,380号;第6,265,639号;第6,194,185号;第6,114,160号;第6,083,731号;第6,043,072号;第5,994,114号;第5,891,697号;第5,871,988号;第6,265,639号、さらに、以下のGenBank寄託番号で記載されているもの:AAO18435;ZP_00513891;Q38710;AAK60613;AAK60610;AAK60611;NP_113747;CAB75874;AAK60612;AAF20201;BAA11024;AF205791;CAA03710。
【0185】
本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した他の酵素としては、表3〜6に列挙したタンパク質の1つとのアミノ酸同一性が少なくとも70%であり、対応する望ましい酵素活性(例えば、アシルキャリアータンパク質からの脂肪酸の開裂、アシル−CoAからアルデヒド又はアルコールへの還元、又はアルデヒドからアルカンへの変換)を示すものが挙げられる。さらなる実施形態では、酵素活性は、上述の望ましい配列の1つとの同一性が少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%の配列に存在し、これらは全て、完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。
【0186】
発現させるべき外来遺伝子の望ましい組み合わせを選択することによって、細菌が生成する産物を用途に応じて調節することができ、次いで、この産物を水系バイオマスから抽出してもよい。例えば、細菌は、(i)脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子と;場合により、(ii)自然に共発現するアシルキャリアータンパク質、又は脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼとの親和性を有する(又はその逆の)それ以外のアシルキャリアータンパク質と;場合により、(iii)脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素又は脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードする外来遺伝子と;場合により、(iv)脂肪族アルデヒド還元酵素又は脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素をコードする外来遺伝子とを含んでいてもよい。細菌は、本明細書に記載の培養条件で、ACPに結合した脂肪酸を合成し、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、ACPから脂肪酸を開裂させることを触媒し、さらなる酵素処理によって脂肪酸アシル−CoA分子を与える。存在する場合、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素は、アシル−CoAからアルコールへの還元を触媒する。同様に、脂肪酸アシル−CoA還元酵素が存在する場合、この酵素は、アシル−CoAからアルデヒドへの還元を触媒する。脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードする外来遺伝子が存在し、発現してアルデヒド産物を与えるような実施形態では、第3の外来遺伝子によってコードされる脂肪族アルデヒド還元酵素が、アルデヒドからアルコールへの還元を触媒する。同様に、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素が存在する場合、この触媒は、アルデヒドからアルカン又はアルケンへの変換を触媒する。
【0187】
このような酵素をコードする遺伝子は、Chlorella protothecoidesのような、顕著な量の脂質産生を示すことがすでに知られている細胞から得ることができる。脂質産生の役割を担うことがすでに知られている遺伝子、例えば、二重結合を飽和させる酵素をコードする遺伝子は、レシピエント細胞内で個々に形質転換されてもよい。しかし、本発明を実施するために、どの遺伝子が必要となるかといった推測的仮定を行う必要はない。微細藻類において脂質産生を変える(向上させる)ことが可能な遺伝子を特定する方法は、PCT公開番号第2008/151149号に記載されている。
【0188】
従って、本発明は、同じ種の野生型細胞と比較して、異なるレベルで脂質経路に関連する酵素を発現するように遺伝子操作されたPrototheca細胞を提供する。ある場合では、遺伝子操作された細胞は、野生型細胞と同じ条件で成長させた場合に、野生型細胞と比べて脂質を多く産生する。ある場合では、上述の細胞は、野生型細胞よりも高いレベルで脂質経路に関連する酵素を発現するように遺伝子操作されているか、及び/又は、野生型細胞よりも高いレベルで脂質経路に関連する酵素を発現するように選択される。ある場合では、脂質経路に関連する酵素は、ピルビン酸脱水素酵素、アセチル−CoAカルボキシラーゼ、アシルキャリアータンパク質、グリセロール−3 ホスフェートアシルトランスフェラーゼからなる群から選択される。ある場合では、上述の細胞は、野生型細胞よりも低いレベルで脂質経路に関連する酵素を発現するように遺伝子操作されているか、及び/又は、野生型細胞よりも低いレベルで脂質経路に関連する酵素を発現するように選択される。細胞が、脂質経路に関連する酵素を低いレベルで発現する少なくとも1つの実施形態では、脂質経路に関連する酵素は、クエン酸シンターゼを含む。
【0189】
ある実施形態では、上述の細胞は、野生型細胞と比べ、異なるレベルで脂肪酸合成の包括的な制御因子を発現するように遺伝子操作されているか、及び/又は、異なるレベルで脂肪酸合成の包括的な制御因子を発現するように選択され、それにより、複数の脂肪酸合成遺伝子の発現レベルは、野生型細胞と比べて変化している。ある場合では、脂質経路に関連する酵素は、脂肪酸を改変する酵素を含む。ある場合では、脂質経路に関連する酵素は、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ、グリセロ脂質デサチュラーゼから選択される。
【0190】
他の実施形態では、本発明は、1つ以上の外来遺伝子を含有する油産生細菌に関し、ここで、外来遺伝子は、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素、アシルキャリアータンパク質からなる群から選択されるタンパク質をコードする。一実施形態では、外来遺伝子は、プロモーターに動作可能に連結した状態であり、刺激に応答して、誘発的であるか、又は抑制的である。ある場合では、刺激は、外から与えられる低分子、熱さ、冷たさ、培地中の窒素が制限されていること、又は窒素がないことからなる群から選択される。ある場合では、外来遺伝子は、細胞内のある区画で発現する。ある実施形態では、細胞内の区画は、葉緑体、プラスチド、ミトコンドリアからなる群から選択される。ある実施形態では、細菌は、Prototheca moriformis、Prototheca krugani、Prototheca stagnora、又はPrototheca zopfiiである。
【0191】
一実施形態では、外来遺伝子は、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードする。ある場合では、外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、アシルキャリアータンパク質(ACP)から、炭素が8〜18の脂肪酸が開裂することを触媒する。ある場合では、外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が10〜14の脂肪酸が開裂することを触媒する。一実施形態では、外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が12の脂肪酸が開裂することを触媒する。
【0192】
一実施形態では、外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素をコードする。ある場合では、外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が8〜18の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルコールへと還元することを触媒する。ある場合では、外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が10〜14の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルコールへと還元することを触媒する。一実施形態では、外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が12の脂肪酸アシル−CoAをドデカノールへと還元することを触媒する。
【0193】
また、本発明は、2個の外来遺伝子を含有する組み換えPrototheca細胞も提供しており、第1の外来遺伝子は、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードし、第2の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、アシルキャリアータンパク質からなる群から選択されるタンパク質をコードする。ある場合では、この2個の外来遺伝子は、それぞれプロモーターに動作可能に連結した状態であり、刺激に応答して誘発的である。ある場合では、それぞれのプロモーターは、培地中の窒素が制限されているか、又は窒素がないといった同じ刺激に応答して誘発的である。培地中の制限されているか、又は窒素がまったくないことによって、Prototheca種のようなある種の微生物では油の産生が刺激され、油をより高いレベルで産生のを誘発する引き金として用いることができる。本明細書に開示されている遺伝子操作方法と組み合わせて用いる場合、脂質量は、細胞乾燥重量の割合として、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%のような高いレベルまで引き上げられ得;本明細書に開示されている方法は、このようなレベルの脂質を有する細胞を提供し、ここで、脂質は、C8〜C14が少なくとも4%であり、C8が少なくとも0.3%であり、C10が少なくとも2%であり、C12が少なくとも2%であり、C14が少なくとも2%である。ある実施形態では、細胞は、細胞乾燥重量によって25%を超える脂質を有しており、C8〜C14が少なくとも10%、C8〜C14が少なくとも20%、C8〜C14が少なくとも30%、C8〜C14が10〜30%、C8〜C14が20〜30%の脂質を含む。
【0194】
本明細書に開示されている新しい油は、ヤシ油、パーム核油、ココナツ油のような中鎖脂肪酸が多い他の天然に存在する油とは明らかに異なっている。例えば、カロチノイドのような混入物質の濃度は、ヤシ油やパーム核油において、本発明の油におけるよりもはるかに高い。パーム油及びパーム核油は、特に、本発明の油よりも、α−カロチン、β−カロチン、リコピンを非常に多く含んでいる。それに加え、パーム油及びパーム核油では、20種類を超える異なるカロチノイドが見つかっているが、一方、実施例からは、本発明の油は、含有するカロチノイド種の種類が非常に少なく、濃度も非常に低いことが示されている。それに加え、トコトリエノールのようなビタミンE化合物の濃度は、パーム油、パーム核油、ココナツ油では、本発明の油と比べてかなり大きい。
【0195】
一実施形態では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が8〜18の脂肪酸が開裂することを触媒する。ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素をコードし、この酵素は、炭素が8〜18の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルコールへと還元するのを触媒する。ある場合では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が10〜14の脂肪酸が開裂することを触媒し、第2の外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が10〜14の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルコールへと還元するのを触媒し、ここで、チオエステラーゼと還元酵素は、同じ炭素鎖長に作用する。一実施形態では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が12の脂肪酸が開裂することを触媒し、第2の外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が12の脂肪酸アシル−CoAをドデカノールへと還元することを触媒する。ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードし、この酵素は、炭素が8〜18の脂肪酸アシル−CoAを、対応するアルデヒドへと還元することを触媒する。ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ内で必然的に一緒に発現するアシルキャリアータンパク質をコードする。
【0196】
ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードし、細菌は、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素をコードする第3の外来遺伝子をさらに含む。ある場合では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が8〜18の脂肪酸が開裂することを触媒し、第2の外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が8〜18の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルデヒドへと還元するのを触媒し、第3の外来遺伝子によってコードされる脱炭酸酵素は、炭素が8〜18の脂肪族アルデヒドから対応するアルカンへの変換を触媒し、ここで、チオエステラーゼ、還元酵素、脱炭酸酵素は、同じ炭素鎖長に作用する。
【0197】
ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、アシルキャリアータンパク質をコードし、細菌は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素からなる群から選択されるタンパク質をコードする第3の外来遺伝子をさらに含む。ある場合では、第3の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードし、細菌は、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素をコードする第4の外来遺伝子をさらに含む。
【0198】
また、本発明は、培地中で、組み換えPrototheca細胞の集合を培養することを含む、アルコールを生成する方法を提供し、ここで、細胞は、(i)脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードする第1の外来遺伝子と、(ii)脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素をコードする第2の外来遺伝子とを含み、細胞は、アシルキャリアータンパク質(ACP)に結合した脂肪酸を合成し、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、ACPから脂肪酸が開裂するのを触媒し、さらなる処理によって脂肪酸アシル−CoAが得られ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素は、アシル−CoAからアルコールへの還元を触媒する。
【0199】
また、本発明は、Prototheca細胞内で脂質分子を生成する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、培地中でPrototheca細胞の集合を培養することを含み、ここで、この細胞は、(i)脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードする第1の外来遺伝子と、(ii)脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素をコードする第2の外来遺伝子とを含み、細菌は、アシルキャリアータンパク質(ACP)に結合した脂肪酸を合成し、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、ACPから脂肪酸が開裂するのを触媒し、さらなる処理によって脂肪酸アシル−CoAが得られ、脂肪酸アシル−CoA還元酵素は、アシル−CoAからアルデヒドへの還元を触媒する。
【0200】
また、本発明は、Prototheca細胞内で、特定の炭素鎖長を有する脂肪酸分子を生成する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、培地中でPrototheca細胞の集合を培養することを含み、ここで、この細胞は、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子を含み、特定の炭素鎖長、例えば、炭素原子が8個、10個、12個、又は14個の炭素鎖長に対して特異的であるか、これらの鎖長を好む活性を有しており、細菌は、アシルキャリアータンパク質(ACP)に結合した脂肪酸を合成し、チオエステラーゼは、脂肪酸が特定の炭素鎖長を有するように合成された場合には、ACPから、その脂肪酸を開裂することを触媒する。
【0201】
上述の種々の実施形態では、Prototheca細胞は、脂質経路に関連する酵素をコードする少なくとも1つの外来遺伝子を含むことができる。ある場合では、脂質経路に関連する酵素は、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ、グリセロ脂質デサチュラーゼ、ピルビン酸脱水素酵素、アセチル−CoAカルボキシラーゼ、アシルキャリアータンパク質、グリセロール−3 ホスフェートアシルトランスフェラーゼからなる群から選択される。他の場合では、Prototheca細胞は、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪族アルデヒド脱炭酸酵素、及び/又はアシルキャリアータンパク質からなる群から選択される脂質改変酵素を含有する。
【0202】
(VI.燃料及び化学物質の生成)
本発明の方法に従って燃料を生成する場合、本発明の細胞が産生する細胞を収穫するか、又は任意の従来の方法によって、それ以外の方法で集める。全細胞の抽出によって脂質を単離することができる。まず、細胞を破壊し、次いで、例えば、上述のような遠心分離を用いることによって、細胞内の脂質及び細胞膜/細胞壁に関連する脂質、及び細胞外の炭化水素を細胞塊から分けることができる。微生物中で生成する細胞内脂質を、ある実施形態では、微生物の細胞を溶解させた後に抽出する。抽出したら、脂質をさらに精製し、油、燃料又は油脂化学品を作り出す。
【0203】
培養が終了したら、微生物を発酵ブロスから分離することができる。場合により、分離は、遠心分離によって行い、濃縮ペーストを作成する。遠心分離によって、微生物に由来するかなりの量の細胞内の水が除去されず、この工程は乾燥工程ではない。次いで、バイオマスを場合により、洗浄溶液(例えば、脱イオン水)を用いて洗浄し、発酵ブロス及び発酵片を取り除く。場合により、洗浄した微生物バイオマスを乾燥させ(乾燥機で乾燥させる、凍結乾燥させる、など)、その後に細胞を破壊してもよい。又は、発酵が完全に終わっている場合には、細胞を発酵ブロスの一部又は全部と分離することなく溶解させてもよい。例えば、細胞を溶解させたときに、細胞と細胞外の液体とのv:v比が1:1未満であってもよい。
【0204】
脂質を含有する微生物を溶解し、溶解物を作成してもよい。本明細書で詳細に記載するように、微生物を溶解する工程(細胞溶解とも呼ばれる)は、熱による溶解、塩基を加えること、酸を加えること、プロテアーゼのような酵素、アミラーゼのような多糖分解酵素を用いること、超音波を用いること、機械的な溶解、浸透圧衝撃を用いること、溶解性ウイルスに感染させること、及び/又は1つ以上の溶解遺伝子の発現を含む、任意の簡便な手段によって行うことができる。溶解を行い、微生物によって産生された細胞内分子を放出させる。微生物を溶解させるための、これらのそれぞれの方法を単独の方法として用いてもよく、同時又は連続して、組み合わせとして用いてもよい。細胞の破壊度は、顕微鏡分析によって観察することができる。本明細書に記載した1つ以上の方法を用い、典型的には、70%を超える細胞の破壊が観察される。好ましくは、細胞の破壊は、80%を超えており、より好ましくは、90%を超えており、最も好ましくは、約100%である。
【0205】
特定の実施形態では、成長した後に微生物を溶解させ、例えば、抽出又はさらなる処理のために、細胞内の脂質及び/又は炭化水素がさらされる程度を増やす。リパーゼ発現(例えば、誘発性プロモーターによる)又は細胞溶解のタイミングは、脂質及び/又は炭水化物の収量を最適化するように調節することができる。以下に、いくつかの溶解技術を記載している。これらの技術を個々に用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0206】
本発明の一実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁物を加熱することを含む。この実施形態では、微生物を含む発酵ブロス(又は、発酵ブロスから単離した微生物の懸濁物)を、微生物、すなわち、微生物の細胞壁及び細胞膜が分解するか、又は破壊するまで加熱する。典型的には、かけられる温度は、少なくとも50℃である。もっと効率よく細胞を溶解させるために、もっと高い温度、例えば、少なくとも30℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、又はそれ以上の温度を使用する。熱処理によって細胞を溶解することは、微生物を沸騰させることによって行ってもよい。又は、熱処理(沸騰させない)をオートクレーブ中で行ってもよい。熱処理された溶解物を、さらなる処理のために冷却してもよい。また、細胞の破壊は、蒸気による処理によって、すなわち、加圧した蒸気を加えることによって行ってもよい。細胞を破壊するための微細藻類の蒸気処理は、例えば、米国特許第6,750,048号に記載されている。ある実施形態では、蒸気処理は、蒸気を発酵槽に吹き込み、ブロスを所望の温度に約90分未満、好ましくは約60分未満、より好ましくは約30分未満維持することによって行ってもよい。
【0207】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁物に塩基を加えることを含む。塩基は、少なくとも、使用した微生物の水系タンパク質化合物の一部分を加水分解するのに十分なほど強いことが必要である。タンパク質を溶解するのに有用な塩基は、化学分野で知られている。本発明の方法で有用な、例示的な塩基としては、限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい塩基はKOHである。細胞を破壊するための微細藻類の塩基処理は、例えば、米国特許第6,750,048号に記載されている。
【0208】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁物に酸を加えることを含む。酸による溶解は、10〜500mNの濃度、又は好ましくは、40〜160nMの濃度の酸を用いて行うことができる。酸による溶解は、好ましくは、室温より高い温度(例えば、40〜160℃、好ましくは、50〜130℃の温度)で行われる。中程度の温度(例えば、室温〜100℃、特に、室温〜65℃)の場合、酸による処理は、有益には、音波処理又は他の細胞破壊方法と組み合わせてもよい。
【0209】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、酵素を用いることによって微生物を溶解することを含む。微生物を溶解するのに好ましい酵素は、プロテアーゼ、及びヘミセルラーゼのような多糖分解酵素(例えば、Aspergillus nigerに由来するヘミセルラーゼ;Sigma Aldrich、セントルイス、モントリオール;#H2125)、ペクチナーゼ(例えば、Rhizopus sp.に由来するペクチナーゼ;Sigma Aldrich、セントルイス、モントリオール;#P2401)、Mannaway 4.0L(Novozymes)、セルラーゼ(例えば、Trichoderma virideに由来するセルロース;Sigma Aldrich、セントルイス、モントリオール;#C9422)、ドリセラーゼ(例えば、Basidiomycetes sp.に由来するドリセラーゼ;Sigma Aldrich、セントルイス、モントリオール;#D9515)である。
【0210】
本発明の他の実施形態では、溶解は、例えば、多糖分解酵素のようなセルラーゼ、場合により、Chlorella又はChlorellaウイルスに由来するもの、又は、プロテアーゼ、例えば、Streptomyces griseusプロテアーゼ、キモトリプシン、プロテイナーゼK、Degradation of Polylactide
by Commercial Proteases、Oda Yet al.、Journal of Polymers and the Environment、第8巻、Number 1、2000年1月、pp.29−32(4)、Alcalase 2.4 FG(Novozymes)、に列挙されているプロテアーゼ、Flavourzyme 100L(Novozymes)のような酵素によって行われる。先に示したプロテアーゼ及び多糖分解酵素の任意の組み合わせを含む、プロテアーゼと多糖分解酵素の任意の組み合わせを用いてもよい。
【0211】
別の実施形態では、溶解は、連続圧搾機を用いて行うことができる。このプロセスでは、バイオマスに、高圧状態で、スクリュー型デバイスを用いて力を加え、細胞を溶解させ、細胞内脂質を放出させ、細胞内のタンパク質及び繊維(及び他の成分)と分離させる。
【0212】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、超音波を用いて、すなわち、音波処理によって行われる。従って、高周波数の音を用いて細胞を溶解させることができる。音は、電子的に発生させ、適切に濃縮した細胞懸濁物に対し、金属片を介して伝搬させてもよい。この音波処理(又は超音波処理)は、細胞懸濁物中に空洞を作り出すことに基づいて、細胞の一体性を破壊する。
【0213】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、機械的な溶解によって行われる。細胞は、機械的に溶解されてもよく、場合により、炭化水素(例えば、脂質)を集めやすいように均質化してもよい。例えば、加圧による破壊を利用し、細胞を含有するスラリーを制水型オリフィス弁にポンプで圧送してもよい。高圧(1500barまで)をかけ、その後、出口ノズルを通して瞬間的に拡散させてもよい。細胞の破壊は、弁での衝撃、オリフィス内での大きな液体剪断力、放出による急な圧力低下といった3種類の異なる機構によって行われ、これにより、細胞が爆発する。この方法によって、細胞内の分子が放出される。又は、ボールミルを用いてもよい。ボールミルの場合、ビーズのような小さな研磨粒子を含む懸濁物中で細胞を撹拌する。細胞は、剪断力、ビーズ間で研磨されること、ビーズと衝突することによって破壊される。ビーズは、細胞を破壊して、細胞内容物を放出させる。また、細胞は、細胞を破壊するためのブレンド(例えば、例として高速ブレンダー又はWaringブレンダー)を用いるか、フレンチプレスを用いるか、又は細胞壁が弱い場合には、遠心分離を用い、剪断力によって破壊されてもよい。
【0214】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、浸透圧衝撃を与えることによって行われる。
【0215】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を溶解性ウイルスに感染させることを含む。本発明で用いるのに微生物を溶解するのに適したさまざまなウイルスが知られており、特定の微生物に特定の溶解性ウイルスを選択し、使用することは、当業者の知識の範囲内である。例えば、paramecium bursaria chlorellaウイルス(PBCV−1)は、特定の単細胞性の、真核性のクロレラに似た緑色の藻の中で複製し、溶解させる、大きな20面体のプラークを形成する二本鎖DNAウイルスのグループ(Phycodnaviridae科、クロロウイルス属)の原型である。従って、培養物を任意の適切なクロレラウイルスに感染させることによって、任意の感染しやすい微細藻類を溶解させることができる。Chlorella種を、クロレラウイルスを用いて感染させる方法は知られている。例えば、Adv.Virus Res.2006;66:293−336;Virology、1999年4月25日;257(1):15−23;Virology、2004年1月5日;318(1):214−23;Nucleic Acids Symp.Ser.2000;(44):161−2;J.Virol.2006年3月;80(5):2437−44;Annu.Rev.Microbiol.1999;53:447−94を参照。
【0216】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、自己消化を含む。この実施形態では、本発明の微生物を、微生物を溶解する溶解性タンパク質を生成するように遺伝子操作する。この溶解遺伝子を、誘発性プロモーターを用いて発現させ、まず、細胞は、発酵槽内で望ましい密度まで成長し、その後、プロモーターの誘発によって、細胞を溶解させる溶解遺伝子が発現する。一実施形態では、溶解遺伝子は、多糖分解酵素をコードしている。特定の他の実施形態では、溶解遺伝子は、溶解性ウイルスに由来する遺伝子である。従って、例えば、Chlorellaウイルスに由来する溶解遺伝子を、藻の細胞中で発現させてもよい。Virology 260、308−315(1999);FEMS Microbiology Letters 180(1999)45−53;Virology 263、376−387(1999);Virology 230、361−368(1997)を参照。溶解遺伝子の発現は、好ましくは、誘発性プロモーター、例えば、低分子、光、熱及び他の刺激の存在のような刺激によって誘発される、微細藻類内で活性なプロモーターを用いてなされる。
【0217】
上述の方法によって生成した細胞溶解物から脂質を分離するための種々の方法が利用可能である。例えば、脂質及び脂質誘導体、例えば、脂肪族アルデヒド、脂肪族アルコール、アルカンのような炭化水素を、疎水性溶媒、例えば、ヘキサンで抽出してもよい(Frenz et al.1989、Enzyme Microb.Technol.、11:717を参照)。また、脂質及び脂質誘導体を、液化によって抽出してもよく(例えば、Sawayama et al.1999、Biomass and Bioenergy 17:33−39、及びInoue et al.1993、Biomass Bioenergy 6(4):269−274を参照);油の液化によって抽出してもよく(例えば Minowa et al.1995、Fuel 74(12):1735−1738を参照);超臨界CO抽出によって抽出してもよい(例えば、Mendes
et al.2003、Inorganica Chimica Acta 356:328−334を参照)。Miao及びWuは、Chlorella prototheocoidesの培養物から、微細藻類の脂質を回収するプロトコルを記載しており、このプロトコルでは、細胞を遠心分離処理によって集め、蒸留水で洗浄し、凍結乾燥によって乾燥させた。得られた細胞粉末を乳鉢で細かく粉砕し、次いで、n−ヘキサンで抽出した。Miao及びWu、Biosource Technology(2006)97:841−846。
【0218】
従って、本発明の微生物によって生成した脂質、脂質誘導体、炭化水素を、有機溶媒を用いた抽出によって回収することができる。ある場合では、好ましい有機溶媒は、ヘキサンである。典型的には、事前に溶解物成分を分離させることなく、溶解物に有機溶媒を直接加える。一実施形態では、上述の1つ以上の方法によって生成した溶解物を、脂質及び/又は炭化水素成分が有機溶媒と溶液を形成するのに十分な時間、有機溶媒と接触させる。ある場合では、溶液をその後にさらに精製し、特定の望ましい脂質成分又は炭化水素成分を回収する。ヘキサンによる抽出方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0219】
本明細書に記載されるように、細胞によって産生される脂質及び脂質誘導体、例えば、脂肪族アルデヒド、脂肪族アルコール、アルカンのような炭化水素を、上述のように、リパーゼのような1つ以上の酵素を用いて改変してもよい。炭化水素が、細胞の外の環境に存在する場合、1つ以上の酵素を、この酵素が炭化水素を改変しするか、又は炭化水素前駆体からの合成を完結させるような条件下で、この環境に加えてもよい。又は、炭化水素を、細胞材料から部分的又は完全に単離してから、酵素のような1つ以上の触媒を加えてもよい。このような触媒は、外から加えられ、触媒の活性は、細胞の外で生じるか、又はin vitroで生じる。
【0220】
従って、in vivoで細胞によって産生されるか、又は、in vitroで酵素によって改変される脂質及び炭化水素は、本明細書に記載されるように、従来の手段によってさらに処理されてもよい。処理は、「クラッキング」して、炭化水素分子を小さくし、水素:炭素比を大きくすることを含んでいてもよい。触媒によるクラッキング方法及び熱によるクラッキング方法は、炭化水素及びトリグリセリド油脂の処理において通常用いられる。触媒による方法は、固体酸触媒のような触媒の使用を含む。触媒は、シリカ−アルミナ又はゼオライトであってもよく、この触媒により、炭素−炭素結合が不均衡又は非対称に破壊され、カルボカチオンとヒドリドアニオンが生じる。これらの反応性中間体は、次いで、転移するか、又は別の炭化水素にヒドリドが移動する。このように、この反応によって、中間体が再生し、自己連鎖的な機構を生じ得る。また、炭化水素を処理し、炭化水素中の炭素−炭素二重結合又は三重結合を減らしてもよく、場合によりゼロにしてもよい。また、炭化水素を処理し、炭化水素中の環又は環状構造を除去するか、又は取り除いてもよい。また、水素:炭素比が大きくなるように、炭化水素を処理してもよい。この処理は、水素添加(「水素化」)及び/又は炭化水素を小さな炭化水素にする「クラッキング」を含んでいてもよい。
【0221】
熱による方法は、炭化水素を小さくするために、高温及び高圧の使用を含む。約800℃の高温及び約700kPaの高圧を用いてもよい。これらの条件によって「軽質」のものが発生し、軽質との用語は、水素を多く含む炭化水素分子を指すために用いられ(光量子束によって区別する場合)、また、縮合により、水素が相対的に失われた、重い炭化水素分子によっても生成する。この方法によって、均衡、又は対称的に破壊され、アルケンを生じ、このアルケンは、場合により、上述のように酵素によって飽和になってもよい。
【0222】
触媒による方法及び熱による方法は、植物において、炭化水素の処理及び油の精製を行うのに標準的な方法である。従って、本明細書に記載されるような細胞が産生した炭化水素を集め、従来の手段によって処理するか、又は精製することができる。微細藻類が産生した炭化水素のハイドロクラッキングに関する論文は、Hillen et al.(Biotechnology and Bioengineering、Vol.XXIV:193−205(1982))を参照。代替的な実施形態では、画分を、有機化合物、熱及び/又は無機化合物のような別の触媒で処理する。バイオディーゼル内の脂質を処理する場合、本明細書の第IV章に記載されているトランスエステル化プロセスを使用する。
【0223】
本発明の方法によって生成する炭化水素は、さまざまな工業用途で有用である。例えば、ほぼあらゆる種類の洗浄剤及び洗浄調製物で用いられるイオン系界面活性剤である直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)の生成は、一般的に、炭素原子が10〜14の鎖を含む炭化水素を利用する。例えば、米国特許第6,946,430号;第5,506,201号;第6,692,730号;第6,268,517号;第6,020,509号;第6,140,302号;第5,080,848号;第5,567,359号を参照。例えば、米国特許第5,942,479号;第6,086,903号;第5,833,999号;第6,468,955号;第6,407,044号に記載されるように、界面活性剤、例えば、LASを、パーソナルケア組成物及び洗浄剤で用いてもよい。
【0224】
再生可能な生物由来の出発物質を、化石燃料から誘導される出発物質と置き換えて利用可能であり、その使用が望ましいために、バイオディーゼル、再生可能なディーゼル、ジェット燃料といった燃料に、生物由来の炭化水素成分を用いることに関心が高まっている。生物由来の材料から炭化水素成分を生成する方法が緊急に必要とされている。本発明は、本明細書に記載の方法によって生成した脂質を生物由来の原料として用い、バイオディーゼル、再生可能なディーゼル、ジェット燃料を生成するような、バイオディーゼル、再生可能なディーゼル、ジェット燃料を生成する方法を提供することによって、この要求を満たす。
【0225】
従来のディーゼル燃料は、パラフィン系炭化水素を豊富に含む石油留分である。これらの沸点範囲は、370°F〜780°F(約188°C〜約416°C)と広範囲であり、ディーゼルエンジン車のような圧縮点火エンジンでの燃焼に適している。American Society of Testing and Materials(ASTM)は、例えば、セタン価、曇り点、引火点、粘度、アニリン点、硫黄含有量、含水量、灰分、銅板腐食、炭素残渣のような他の燃料特性の許容範囲とともに、沸点範囲に従って、ディーゼルのグレードを確立している。技術的には、バイオマス、又は適切なASTM仕様を満たすそれ以外のものから誘導される任意の炭化水素留分を、ディーゼル燃料(ASTM D975)、ジェット燃料(ASTM D1655)、又は脂肪酸メチルエステルである場合にはバイオディーゼル(ASTM D6751)と定義できる。
【0226】
抽出の後、本明細書に記載されているような微生物バイオマスから回収した脂質成分及び/又は炭化水素成分を、化学処理し、ディーゼル車及びジェットエンジン用の燃料を製造することができる。
【0227】
バイオディーゼルは、生成物の原材料に依存して、金色から濃い褐色までの色をした液体である。実質的に水には混和せず、高い沸点を有し、蒸気圧が低い。バイオディーゼルは、ディーゼルエンジン車で使用するために、ディーゼルと等価な処理した燃料を指す。バイオディーゼルは、生分解性であり、毒性がない。従来のディーゼル燃料に比べて、バイオディーゼルのさらなる利点は、エンジンの摩耗が少ないことである。典型的には、バイオディーゼルは、C14〜C18のアルキルエステルを含む。種々のプロセスによって、バイオマス又は脂質が生成し、本明細書に記載されるように、単離してディーゼル燃料にする。バイオディーゼルを生成する好ましい方法は、本明細書に記載されるような脂質のトランスエステル化である。バイオディーゼルで用いるのに好ましいアルキルエステルは、メチルエステル又はエチルエステルである。
【0228】
本明細書に記載の方法によって生成するバイオディーゼルは、単独で用いてもよく、ほとんどのディーゼルエンジン車における任意の濃度で、従来のディーゼル燃料とブレンドしてもよい。従来のディーゼル燃料(石油ディーゼル)とブレンドする場合、バイオディーゼルは、約0.1%〜約99.9%存在してもよい。世界のほとんどで、燃料混合物中のバイオディーゼルの量を述べるために、「B」ファクターとして知られるシステムを用いる。例えば、20%のバイオディーゼルを含む燃料は、B20というラベルが付けられる。純粋なバイオディーゼルは、B100と呼ばれる。
【0229】
また、バイオディーゼルを、家庭用ボイラ及び商業用ボイラの加熱燃料として用いてもよい。既存の灯油式ボイラは、ゴム部材を備える可能性があり、バイオディーゼルで動かすために改造する必要がある。改造プロセスは、通常は、比較的単純なものであり、バイオディーゼルが強い溶媒であるため、ゴム部材を合成部材と交換することを含む。バイオディーゼルの溶媒力が強いため、バイオディーゼルを燃やすと、ボイラの効率は上がるだろう。バイオディーゼルを、純粋な超低硫黄ディーゼル(ULSD)燃料の潤滑性を向上させるために、ディーゼル配合物の添加剤として用いてもよく、バイオディーゼルは硫黄を含有しないため、有益である。バイオディーゼルは、石油系ディーゼルよりも良好な溶媒であり、石油系ディーゼルで走っていた車両の燃料ラインに残る残留分の沈殿を分解するために用いてもよい。
【0230】
バイオディーゼルは、油を豊富に含むバイオマスに含まれるトリグリセリドのトランスエステル化によって生成することができる。従って、本発明の別の態様では、バイオディーゼルを生成する方法が提供されている。好ましい実施形態では、バイオディーゼルを生成する方法は、(a)本明細書に開示されている方法を用い、脂質を含有する微生物を育てる工程と、(b)脂質を含有する微生物を溶解させ、溶解物を生成する工程と、(c)溶解した微生物から脂質を単離する工程と、(d)脂質組成物をトランスエステル化する工程とを含み、これによってバイオディーゼルが生成する。微生物を成長させ、微生物を溶解させ、溶解物を生成し、有機溶媒を含む培地中、溶解物を処理し、不均一な混合物を生成し、処理した溶解物を脂質組成物に分離する方法は、上に記載されており、バイオディーゼルを生成する方法でも用いることができる。
【0231】
バイオディーゼルの脂質プロフィールは、通常は、原材料である油の脂質プロフィールと非常によく似ている。本発明の方法及び組成物によって与えられる他の油をトランスエステル化し、(a)C8〜C14が少なくとも4%であり;(b)C8が少なくとも0.3%であり;(c)C10が少なくとも2%であり;(d)C12が少なくとも2%であり;(3)C8〜C14が少なくとも30%である脂質プロフィールを有するバイオディーゼルを得ることができる。
【0232】
脂質組成物をトランスエステル化し、バイオディーゼルとして有用な長鎖脂肪酸エステルを得ることができる。好ましいトランスエステル化反応について、以下に概略を説明しており、塩基触媒によるトランスエステル化と、組み換えリパーゼを用いたトランスエステル化を含む。塩基触媒によるトランスエステル化プロセスでは、トリアシルグリセリドを、アルカリ触媒、典型的には、水酸化カリウム存在下、メタノール又はエタノールのようなアルコールと反応させる。この反応から、メチルエステル又はエチルエステルと、副生成物としてグリセリン(グリセロール)とが生成する。
【0233】
動物性油及び植物性油は、典型的には、遊離脂肪酸と三価アルコールであるグリセロールとのエステルであるトリグリセリドから作られる。トランスエステル化において、トリアシルグリセリド(TAG)中のグリセロールを、メタノール又はエタノールのような短鎖アルコールと交換する。典型的な反応スキームは、以下のとおりである。
【0234】
【化1】
【0235】
この反応では、アルコールを塩基で脱プロトン化し、もっと強い求核試薬にする。一般的に、エタノール又はメタノールを大過剰に用いる(最大50倍まで)。通常は、この反応は、非常にゆっくりと進むか、まったく進まないであろう。反応をもっとすばやく進めるために、熱とともに、酸又は塩基を用いてもよい。トランスエステル化反応によって酸又は塩基は消費されず、従って、これらは反応剤ではなく、触媒である。ほとんど全てのバイオディーゼルは、低い温度及び低い圧力のみを必要とし、変換収率が98%を超えるため、塩基触媒による技術を用いて生成されている(但し、出発原料の油は、水分量が低く、遊離脂肪酸の量が少ないことを条件とする)。
【0236】
また、トランスエステル化は、塩基の代わりに、リパーゼのような酵素を用いて上述のように行われる。リパーゼによって触媒されるトランスエステル化は、例えば、TAGと低級アルコールとのモル比が、1:1より大きく、好ましくは約3:1の比率で、室温〜80℃の温度で行われて得る。トランスエステル化で用いるのに適したリパーゼとしては、限定されないが、表7に列挙されるものが挙げられる。トランスエステル化に有用なリパーゼの他の例は、例えば、米国特許第4,798,793号;第4,940,845号、第5,156,963号;第5,342,768号;第5,776,741号、WO89/01032号に見いだされる。このようなリパーゼとしては、限定されないが、Rhizopus、Aspergillus、Candida、Mucor、Pseudomonas、Rhizomucor、Candida、Humicolaの微生物によって産生されるリパーゼ及び膵臓リパーゼが挙げられる。
【0237】
【表7】
【0238】
バイオディーゼルに適した脂肪酸エステルを生成するために、リパーゼを用いることの課題の1つは、リパーゼの価格が、強塩基プロセスで用いる水酸化ナトリウム(NaOH)の価格よりもかなり高いことである。この課題は、リサイクル可能な固定化されたリパーゼを用いることによって対処される。しかし、固定化されたリパーゼの活性は、生成費用の観点で、リパーゼによるプロセスが、強塩基プロセスと匹敵するようになるような最低限のサイクル数リサイクルした後にも維持されていなければならない。固定化されたリパーゼは、典型的には、トランスエステル化で用いられる低級アルコールによって毒化されやすい。米国特許第6,398,707号(Wu et al.に対し、2002年6月4日発行)は、固定化されたリパーゼを高める方法、及び活性が低下した、固定化されたリパーゼを再生する方法を記載している。いくつかの適切な方法は、固定化されたリパーゼを、炭素原子数が3個未満のアルコールに所定時間、好ましくは、0.5〜48時間、より好ましくは、0.5〜1.5時間浸すことを含む。また、いくつかの適切な方法は、不活性化した、固定化されたリパーゼを、炭素原子が3個を超えないアルコールで洗浄し、次いで、この不活性化した、固定化されたリパーゼを、植物油に0.5〜48時間浸すことを含む。
【0239】
特定の実施形態では、組み換えリパーゼを、リパーゼが作用して脂質を産生する同じ微生物中で発現する。適切な組み換えリパーゼとしては、上の表7に列挙されているもの、及び/又は上の表7に列挙されているGenbank寄託番号を有するもの、又は、上の表7に列挙されているリパーゼの1つとのアミノ酸同一性が少なくとも70%であり、リパーゼ活性を示すポリペプチドが挙げられる。さらなる実施形態では、酵素活性は、上に記載した配列の1つとの同一性が少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%の配列に存在し、これらは全て、完全に記載されているかのように参照により組み込まれる。リパーゼ及び選択可能なマーカーをコードするDNAは、好ましくは、コドンが最適化されたcDNAである。微細藻類において発現させるための遺伝子を書き換える方法は、米国特許第7,135,290号に記載されている。
【0240】
バイオディーゼルに関する一般的な国際標準は、EN 14214である。ASTM D6751は、米国及びカナダで参照されている最も一般的なバイオディーゼル標準である。ドイツは、DIN EN 14214を使用しており、英国は、BS EN 14214の順守が必要である。上述の製品がこれらの標準を満たしているか否かを決定するための基本的な工業用試験としては、典型的には、ガスクロマトグラフィー、HPLCなどが挙げられる。上述の品質表寿を満たすバイオディーゼルは、非常に毒性が低く、毒性の評価(LD50)は、50mL/kgより大きい。
【0241】
ASTM標準を満たすバイオディーゼルは、毒性が低くなければならないが、堆積物として溶液から結晶化し、及び/又は沈殿し、沈む傾向のある混入物質が存在している場合がある。堆積物の生成は、バイオディーゼルが低い温度で使用される場合、特に問題である。堆積物又は沈殿は、燃料の流れを減らし、燃料ラインを詰まらせ、フィルターを詰まらせるなどの問題を引き起こす場合がある。もっと品質の高い製品を製造するために、バイオディーゼル中の上述の混入物質及び堆積物を除去することに特に対処するプロセスが、当該技術分野でよく知られている。このようなプロセスの例としては、限定されないが、リン脂質及び遊離脂肪酸のような混入物質を除去するための、油の前処理(例えば、ガム状物質の除去、苛性ソーダによる精製、シリカ吸着剤による濾過)及び冷却状態での濾過が挙げられる。冷却状態での濾過は、生成した後のバイオディーゼル中に存在する任意の粒状物及び堆積物を除去するために特に開発されたプロセスである。このプロセスは、バイオディーゼルを冷却し、低い温度で燃料を用いる場合に生成するかもしれない任意の堆積物又は沈殿を濾別する。このようなプロセスは、当該技術分野でよく知られており、米国特許公開第2007−0175091号に記載されている。適切な方法は、バイオディーゼルを約38℃より低い温度まで冷却し、不純物及び混入物質をバイオディーゼル液体中、粒状物として析出させる。次いで、この冷却したバイオディーゼル材料に、珪藻土又は他の濾過材料を加えてスラリーを作成し、次いで、これを葉状圧力フィルター又は他の種類のフィルターで濾過し、粒状物を除去する。次いで、濾過したバイオディーゼルを、最終的なバイオディーゼル製品が得られるように、研磨フィルターに通し、残った任意の堆積物及び珪藻土を除去する。
【0242】
実施例14は、Prototheca moriformisに由来するトリグリセリド油脂を用いた、バイオディーゼルの生成について記載している。実施例14で生成したバイオディーゼルのASTM D6751 A1法による、Cold Soak Filterabilityは、容積300mlで120秒であった。この試験は、B100 300mlを濾過し、40°F(約4.5°C)で16時間冷却し、室温まで加温し、減圧下、ステンレス鋼の支持材を取り付けた0.7マイクロメートルガラス繊維を用いて濾過する。本発明の油を、トランスエステル化し、冷状態浸漬時間が、120秒未満、100秒未満、90秒未満のバイオディーゼルを得ることができる。
【0243】
バイオディーゼルが、特定の冷温で使用される場合、次のプロセスを用いてもよい。このようなプロセスは、脱ろう及び画分化を含む。両プロセスは、曇り点(バイオディーゼルが結晶化し始める温度)を下げることによって、冷状態での流動性を高め、冬の燃料の性能を高める。バイオディーゼルを脱ろうするために、いくつかのアプローチが存在する。アプローチのひとつは、バイオディーゼルと、石油ディーゼルとをブレンドすることである。別のアプローチは、バイオディーゼルの曇り点を下げることが可能な添加剤を使用することである。別のアプローチは、添加剤中で混合し、飽和物質を結晶化させ、次いで結晶を濾別することによって、飽和メチルエステルを無差別に除去することである。画分化は、メチルエステルを個々の成分又は画分に選択的に分離し、これにより、特定のメチルエステルを除去するか、又は含むようにすることができる。画分化方法は、尿素による画分化、溶媒による画分化、熱による蒸留が挙げられる。
【0244】
本発明の方法によって提供される別の価値の高い燃料は、再生可能なディーゼルであり、C10:0、C12:0、C14:0、C16:0及びC18:0のようなアルカンを含み、従って、バイオディーゼルとは区別することができる。高品質の再生可能なディーゼルは、ASTM D975の標準に適合している。本発明の方法によって生成する脂質は、再生可能なディーゼルを製造する原材料として役立たせることができる。従って、本発明の別の態様では、再生可能なディーゼルを製造する方法が提供される。再生可能なディーゼルは、熱水で処理すること(熱水処理);水素化処理;間接的な液化といった、少なくとも3種類のプロセスで製造することができる。これらのプロセスによって、エステルではない留分が得られる。これらのプロセスの間、本明細書に記載されるように生成し、単離されたトリアシルグリセリドを、アルカンへと変換する。
【0245】
一実施形態では、再生可能なディーゼルを生成する方法は、(a)脂質を含有する微生物を本明細書に開示されている方法を用いて育てることと、(b)微生物を溶解させ、溶解物を生成する工程と、(c)溶解した微生物から脂質を単離する工程と、(d)脂質を脱酸素し、熱水処理してアルカンを生成することとを含み、これによって再生可能なディーゼルが得られる。再生可能なディーゼルを製造するのに適した脂質は、ヘキサンのような有機溶媒を用い、微生物バイオマスから抽出することによって、又は米国特許第5,928,696号に記載されるような他の方法によって得ることができる。いくつかの適切な方法は、機械的に加圧し、遠心分離処理することを含んでいてもよい。
【0246】
いくつかの方法では、まず、微生物脂質を、熱処理と組み合わせてクラッキングし、それぞれ、炭素鎖長を短くし、二重結合を飽和させる。次いで、この物質を異性化し、これも熱水処理と組み合わせる。次いで、ナフサ画分を蒸留によって除去し、次いで、さらに蒸留し、ASTM D975の標準を満たすように、ディーゼル燃料中の望ましい成分を蒸気にし、蒸留しつつ、D975の標準を満たすのに望ましいものよりも重い成分は残す。トリグリセリド油脂を含む油を化学的に改変する熱水処理方法、ハイドロクラッキング方法、脱酸素方法、異性化方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、European patent applications EP1741768(A1);EP1741767(A1);EP1682466(A1);EP1640437(A1);EP1681337(A1);EP1795576(A1);米国特許第7,238,277号;第6,630,066号;第6,596,155号;第6,977,322号;第7,041,866号;第6,217,746号;第5,885,440号;第6,881,873号を参照。
【0247】
再生可能なディーゼルを生成する方法の一実施形態では、脂質を処理してアルカンを得ることは、脂質組成物の熱水処理によって行われる。熱水処理において、典型的には、バイオマスを、高温高圧下、水中で反応させて、油と残留する固体を生成させる。変換温度は、典型的には、300°F〜660°F(約149°C〜約349°C)であり、圧力は、水が主に液体のままであるのに十分な圧力であり、100〜170標準大気圧(atm)である。反応時間は、15〜30分程度である。反応が終了した後、有機物を水から分離する。それにより、ディーゼルに適した留分が得られる。
【0248】
再生可能なディーゼルを製造するいくつかの方法では、トリグリセリドを処理する第1の工程は、二重結合を飽和させる水素化処理であり、次いで、水素及び触媒存在下、高温で脱酸素させる。いくつかの方法では、水素化及び脱酸素は、同じ反応中に起こる。他の方法では、水素化の前に脱酸素が起こる。次いで、場合により、これも水素及び触媒が存在する条件で、異性化を行う。ナフサ成分は、好ましくは、蒸留によって除去される。例えば、米国特許第5,475,160号(hydrogenation of triglycerides);第5,091,116号(deoxygenation,hydrogenation and gas removal);第6,391,815号(hydrogenation);第5,888,947号(isomerization)を参照。
【0249】
トリグリセリドを水素化するのに適した方法のひとつは、銅、亜鉛、マグネシウム、ランタニウムの塩の水溶液と、アルカリ金属、又は好ましくは、炭酸アンモニウムの別の溶液とを調製することを含む。この2種類の溶液を、約20℃〜約85℃の温度まで加熱し、触媒を生成させるために、沈殿容器のpHが5.5〜7.5に維持されるように、沈殿容器に秤量しながら一緒に加える。沈殿容器にさらなる水を最初に入れておいてもよく、又は、塩溶液及び沈殿溶液と同時に入れてもよい。得られた沈殿を十分に洗浄し、乾燥させ、約300℃で焼結し、約100℃〜約400℃の範囲の温度で、水素で活性化する。次いで、容器中、1つ以上のトリグリセリドを接触させ、上述の触媒存在下、水素と反応させてもよい。この反応槽は、トリクルベッド反応槽、固定床気体−固体反応槽、充填気泡反応槽、連続撹拌型タンク反応槽、スラリー相反応槽、又は当該技術分野で既知の任意の他の適切な反応槽であってもよい。このプロセスは、バッチ式で行ってもよく、連続的な様式で行ってもよい。反応温度は、典型的には、約170℃〜約250℃の範囲であり、一方、反応圧力は、典型的には、約300psig〜約2000psigの範囲内にある。さらに、本発明のプロセスにおいて、水素とトリグリセリドとのモル比は、典型的には、約20:1〜約700:1の範囲にある。このプロセスは、典型的には、約0.1hr−1〜約5hr−1の範囲の重量空間速度(WHSV)で行われる。当業者は、反応に必要な時間は、使用する温度、水素とトリグリセリドとのモル比、水素の分圧によってさまざまであることを認識するだろう。このような水素化プロセスで生成する生成物は、脂肪族アルコール、グリセロール、微量のパラフィン及び未反応のトリグリセリドを含む。これらの生成物を、典型的には、例えば、蒸留、抽出、濾過、結晶化などの従来の手段によって分離する。
【0250】
石油精製業者は、水素化処理を利用し、原料を水素で処理することによって不純物を除去する。水素化処理による変換温度は、典型的には、300°F〜700°F(約149°C〜約371°C)である。圧力は、典型的には、40〜100atmである。反応時間は、典型的には、10〜60分程度である。固体触媒を利用し、特定の反応速度を上げ、特定の生成物の選択性を上げ、水素の消費量を最適化する。
【0251】
油を脱酸素するのに適した方法は、油を約350°F〜約550°F(約177°C〜約288°C)の範囲の温度まで加熱することと、少なくとも大気圧よりも高い圧力で、少なくとも5分間、加熱した油を窒素と連続的に接触させることとを含む。
【0252】
異性化に適した方法は、アルカリ異性化、及び当該技術分野で既知の他の油異性化を含む。
【0253】
熱水処理及び水素化処理によって、最終的に、トリグリセリド供給物の分子量が低下する。トリグリセリド分子は、水素化処理条件で、プロパン分子と、3種類のこれより重い炭化水素分子、典型的には、C8〜C18の範囲の炭化水素分子の4種類の炭化水素へと還元される。
【0254】
従って、一実施形態では、本発明の脂質組成物で行われる1つ以上の化学反応の生成物は、ASTM D975の再生可能なディーゼルを有するアルカン混合物である。微生物による炭化水素の産生は、Metzger et al.Appl Microbiol
Biotechnol(2005)66:486−496及びA Look Back
at the U.S. Department of Energy’s Aquatic Species Program:Biodiesel from Algae、NREL/TP−580−24190、John Sheehan、Terri Dunahay、John Benemann and Paul Roessler(1998)にまとめられている。
【0255】
ディーゼル燃料の蒸留特性は、T10−T90(それぞれ、容積で10%及び90%が留出した温度)の観点で記載される。再生可能なディーゼルは、Prototheca moriformisトリグリセリド油脂から作られ、実施例14に記載されている。実施例14で作られた物質のT10−T90は、57.9℃であった。本明細書に開示されている油の水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開示されている蒸留及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、本明細書に開示されている方法に従って作られるトリグリセリド油脂を用い、他のT10−T90範囲、例えば、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、60℃、65℃の再生可能なディーゼル組成物を生成することができる。
【0256】
実施例14で作られる材料のT10は、242.1℃であった。本明細書に開示されている油の方法水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開示されている蒸留及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、他のT10値、例えば、T10が180〜295、190〜270、210〜250、225〜245、少なくとも290の再生可能なディーゼル組成物を生成してもよい。
【0257】
実施例14で作られる材料のT90は、300℃であった。本明細書に開示されている油の方法水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開示されている蒸留及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、他のT90値、例えば、T90が280〜380、290〜360、300〜350、310〜340、少なくとも290の再生可能なディーゼル組成物を生成してもよい。
【0258】
実施例14で作られる材料の最終沸点(FBP)は、300℃であった。本明細書に開示されている油の方法は、水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開示されている蒸留及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、他のFBP値、例えば、FBPが290〜400、300〜385、310〜370、315〜360、少なくとも300の再生可能なディーゼル組成物を生成してもよい。
【0259】
本発明の方法及び組成物によって提供される他の油に、水素化処理、異性化、他の共有結合の改変を組み合わせて行ってもよく、(a)C8〜C14が少なくとも4%であり、;(b)C8が少なくとも0.3%;(c)C10が少なくとも2%;(d)C12が少なくとも2%;(3)C8〜C14が少なくとも30%の脂質プロフィールを有する油を含む。
【0260】
従来の超低硫黄ディーゼルは、2工程プロセスによって、バイオマスの任意の形態から製造してもよい。第1に、バイオマスを、水素及び一酸化炭素を豊富に含む気体状混合物である合成ガスに変換する。次いで、この合成ガスを、触媒によって液体に変換する。典型的には、液体の生成は、Fischer−Tropsch(FT)合成を用いて行われる。この技術は、石炭、天然ガス、重油に応用される。従って、再生可能なディーゼルを製造する方法のさらに別の好ましい実施形態では、脂質組成物を処理し、アルカンを得ることは、脂質組成物を間接的に液状化することによって行われる。
【0261】
また、本発明は、ジェット燃料を生成する方法を提供する。ジェット燃料は、透明から麦わら色である。最も一般的な燃料は、航空機A−1と分類される、鉛を含んでいない/パラフィン油系の燃料であり、国際的な標準化された一連の仕様を満たすように製造される。ジェット燃料は、多種類の異なる炭化水素の混合物であり、おそらく、数千種類以上が含まれているだろう。これらの物質の大きさの範囲(分子量又は炭素数)は、例えば、凍結点又は発煙点のような生成物の要求によって制限される。ケロシン(Kerosone)型の航空機燃料(Jet A及びJet A−1を含む)は、炭素数が約8〜16の炭素分布を有する。ワイドカット型又はナフサ型の航空機燃料(Jet Bを含む)は、典型的には、炭素数が約5〜15の炭素分布を有する。
【0262】
両方の航空機燃料(Jet A及びJet B)は、多くの添加剤を含み得る。有用な添加剤としては、限定されないが、酸化防止剤、帯電防止剤、腐食阻害剤、燃料計凍結阻害(FSII)剤が挙げられる。酸化防止剤は、ガム化を防ぎ、通常は、アルキル化フェノール系のものであり、例えば、AO−30、AO−31又はAO−37である。帯電防止剤は、静電気を発散させ、火花を防ぐ。ジノニルナフチルスルホン酸(DINNSA)を活性な成分として含むStadis 450は、一例である。腐食阻害剤、例えば、DCI−4Aは、民間用燃料及び軍事用燃料に用いられ、DCI−6Aは、軍事用燃料に用いられる。FSII剤としては、例えば、Di−EGMEが挙げられる。
【0263】
本発明の一実施形態では、ジェット燃料は、藻の燃料と、既存のジェット燃料とをブレンドすることによって作られる。本発明の方法によって生成した脂質を、原材料として使い、ジェット燃料を製造する。従って、本発明の別の態様では、ジェット燃料を生成する方法が提供される。これとともに、本発明の方法によって生成される脂質からジェット燃料を製造する、流体触媒クラッキング(FCC)及び水素化脱酸素(HDO)の2つの方法が提供される。
【0264】
流体触媒クラッキング(FCC)は、重い未精製画分から、オレフィン、特にプロプレンを製造するのに用いられる方法のひとつである。本発明の方法によって生成した脂質を、オレフィンへと変換することができる。このプロセスは、生成した脂質をFCCゾーンに流すことと、ジェット燃料として有用な、オレフィンを含む生成物流を集めることとを含む。生成した脂質を、クラッキング条件で、クラッキング触媒と接触させ、ジェット燃料として有用なオレフィン及び炭化水素を含む生成物流を得る。
【0265】
一実施形態では、ジェット燃料を生成する方法は、(a)脂質を含有する微生物を、本明細書に開示されている方法を用いて育てることと、(b)微生物を溶解させ、溶解物を生成する工程と、(c)溶解した微生物から脂質を単離する工程と、(d)脂質組成物を処理することとを含み、それによって、ジェット燃料が作られる。ジェット燃料を生成する方法の一実施形態では、脂質組成物は、流体触媒クラッキングゾーンへと流れてもよく、一実施形態では、脂質組成物と、クラッキング触媒とをクラッキング条件で接触させ、C〜Cオレフィンを含む生成物流を得てもよい。
【0266】
この方法の特定の実施形態では、脂質組成物に存在し得る任意の混入物質を除去することが望ましい場合がある。従って、脂質組成物を、流体触媒クラッキングゾーンに流す前に、脂質組成物を前処理する。前処理は、脂質組成物と、イオン交換樹脂とを接触させることを含み得る。イオン交換樹脂は、AmberlystTM−15のような酸性イオン交換樹脂であり、脂質組成物が上向又は下向に流れる、反応槽中の床として用いてもよい。他の前処理は、脂質組成物を、硫酸、酢酸、硝酸又は塩酸のような酸と接触させることによる、穏和な酸洗浄を含んでいてもよい。接触は、通常は、周囲温度及び周囲圧力で、希釈酸溶液を用いて行われる。
【0267】
脂質組成物は、場合により前処理されており、これをFCCゾーンに流し、このゾーンで、炭化水素系成分をクラッキングしてオレフィンにする。触媒クラッキングは、反応ゾーンで、脂質組成物を、細かく分割した粒状物質で構成される触媒と接触させることによって行われる。反応は、ハイドロクラッキングとは対照的な触媒クラッキングであり、水素を加えない状態で行われるか、又は水素を消費する状態で行われる。クラッキング反応が進むにつれて、かなりの量のコークスが触媒上に蓄積する。再生ゾーンで、触媒から高温でコークスを燃焼させることによって、触媒は再生する。コークスを含有する触媒は、本明細書では「コークス化触媒」と呼ばれ、反応ゾーンから再生ゾーンへと連続的に移動し、再生し、再生ゾーンから、本質的にコークスを含まない再生された触媒に置き換わる。種々の気体流によって触媒粒子を流動化すると、反応ゾーンと再生ゾーンとの間を触媒が移動することができる。炭化水素をクラッキングする方法、例えば、流動化した触媒流の中で本明細書に記載の脂質組成物の炭化水素をクラッキングし、反応ゾーンと再生ゾーンとの間を触媒が移動し、再生槽でコークスを燃焼させる方法は、FCCプロセスの分野で当業者には周知である。例示的なFCC用途、及びC〜Cオレフィンを得るために、脂質組成物をクラッキングするのに有用な触媒は、米国特許第6,538,169号、第7,288,685号に記載されており、これらの文献は、内容全体が参照により組み込まれる。
【0268】
適切なFCC触媒は、一般的に、少なくとも2つの成分を含み、この2つの成分は、同じマトリックス上にあってもよく、同じマトリックス上になくてもよい。ある実施形態では、2つの成分は、両方とも、反応容器全体を循環していてもよい。第1の成分は、一般的に、流動化した触媒クラッキングの分野で用いられる、よく知られている任意の触媒、例えば、活性アモルファスクレイ型触媒及び/又は高い活性を有する結晶性分子ふるいを含んでいる。分子ふるい触媒は、望ましい生成物に対する選択性がかなり向上しているため、アモルファス触媒よりも好ましい場合がある。いくつかの好ましい実施形態では、ゼオライトを、FCCプロセスの分子ふるいとして用いてもよい。好ましくは、第1の触媒成分は、大きな孔のゼオライト、例えば、Y型ゼオライト、活性アルミナ材料、シリカ又はアルミナのいずれかを含むバインダー材料、カオリンのような不活性フィラーを含んでいる。
【0269】
一実施形態では、本発明の脂質組成物のクラッキングは、FCCゾーンのライザー部分、又はリフト部分で起こる。脂質組成物は、ノズルによってライザー部分に導入され、その結果、脂質組成物がすばやく蒸気になる。触媒を接触させる前に、脂質組成物は、一般的には、約149℃〜約316℃(300°F〜600°F)の温度を有しているであろう。この触媒は、ブレンド容器からライザー部分に流れ、この部分で、約2秒又はそれより短い時間、脂質組成物と接触する。
【0270】
ブレンドされた触媒及び反応した脂質組成物の蒸気は、出口を通って、ライザー上部から排出され、オレフィンを含むクラッキングした生成物の蒸気流の中で分離し、かなりの量のコークスで覆われた、一般的に「コークス触媒」と呼ばれる触媒粒子を集める。望ましい生成物が望ましくない他の生成物にさらに変換されるのを促進するおそれがある、脂質組成物と触媒とが接触している時間を最小限にする試みにおいて、旋回アームの配置のような、セパレーターの配置を利用し、生成物流からコークス化触媒をすばやく離すことができる。セパレーター、例えば、旋回アームセパレーターは、チャンバの下側部分に位置するストリッピングゾーンを備えるチャンバの上側部分に位置している。旋回アームの配置から離れた触媒は、ストリッピングゾーンに落ちる。軽質オレフィン及びいくつかの触媒を含む、クラッキングした炭化水素を含むクラッキングした生成物の蒸気流は、サイクロンとつながった管を通ってチャンバを出る。サイクロンは、生成物の蒸気流から、残留する触媒粒子を除去し、粒子の濃度を非常に低いレベルまで下げる。次いで、生成物の蒸気流は、分離容器の上側を出る。サイクロンによって分離された触媒は、分離容器に戻り、次いで、ストリッピングゾーンに戻る。ストリッピングゾーンは、蒸気と向流で接触させることによって、触媒表面から吸着した炭化水素を除去する。
【0271】
炭化水素の分圧は、低い状態で軽質オレフィンを生成しやすくするように働く。従って、ライザーの圧力は、約172〜約241kPa(25〜35psia)に設定し、炭化水素の分圧は約35〜172kPa(5〜25psia)に設定し、好ましい炭化水素の分圧は、約69〜138kPa(10〜20psia)である。このように比較的低い炭化水素の分圧は、希釈剤が脂質組成物の10〜55wt%、好ましくは、約15wt%になる程度まで、蒸気を希釈剤として用いることによって達成される。同等な炭化水素分圧を達成するために、乾燥ガスのような他の希釈剤を用いてもよい。
【0272】
ライザー出口でのクラッキングした蒸気の温度は、約510℃〜621℃(950°F〜1150°F)であろう。しかし、ライザー出口の温度が566℃(1050°F)より高いと、もっと気体は乾燥し、もっとオレフィンが増える。一方、ライザー出口の温度が566℃(1050°F)より低いと、エチレン及びプロピレンが減る。従って、約566℃〜約630℃の好ましい温度で、約138kPa〜約240kPa(20〜35psia)の好ましい圧力で、FCCプロセスを行うことが好ましい。このプロセスの別の条件は、脂質組成物に対する触媒の比率であり、この比率は、約5〜約20、好ましくは、約10〜約15の間で異なる。
【0273】
ジェット燃料を生成する方法の一実施形態では、脂質組成物は、FCC反応槽のリフト部分に導入される。リフト部分での温度は、非常に熱く、約700℃(1292°F)〜約760℃(1400°F)の範囲であり、脂質組成物に対する触媒の比率は、約100〜約150であろう。脂質組成物をリフト部分に導入すると、かなりの量のプロピレン及びエチレンを生成するであろうことが予測される。
【0274】
本明細書で記載されるように生成した脂質組成物及び脂質を用い、ジェット燃料を生成する方法の別の実施形態では、脂質組成物又は脂質の構造は、水素化脱酸素(HDO)と呼ばれるプロセスによって破壊される。HDOは、水素を用いて酸素を除去することを意味し、つまり、この材料の構造を破壊しつつ、酸素を除去することを意味する。オレフィン系二重結合を水素化し、任意の硫黄化合物及び窒素化合物を除去する。硫黄の除去は、水素化脱硫黄(HDS)と呼ばれる。原材料(脂質組成物又は脂質)の前処理及び純度は、触媒の寿命に関わる。
【0275】
一般的に、HDO/HDS工程において、水素を、供給原料(脂質組成物又は脂質)と混合し、この混合物を、並流として、単一成分又は二成分の供給原料として触媒床に流す。HDO/MDS工程の後、生成物の画分を分離し、別個の異性化反応槽に流す。生物学的出発物質のための異性化反応槽は、並流反応槽として文献に記載されている(FI 100 248)。
【0276】
供給される炭化水素、例えば、本明細書の脂質組成物又は脂質を水素化することによって燃料を生成するプロセスは、脂質組成物又は脂質を、第1の水素化ゾーンを通って水素ガスとともに並流として流すことによって行われ、その後に、水素ガスを、炭化水素流出物に対して向流で第2の水素化ゾーンに流すことによって、炭化水素流出物を第2の水素化ゾーンでさらに水素化する。C〜Cオレフィンを生成するために、脂質組成物をクラッキングするのに有用な、例示的なHDO用途及び触媒は、米国特許第7,232,935号に記載されており、内容全体が参照により組み込まれる。
【0277】
典型的には、水素化脱酸素工程において、本明細書の脂質組成物又は脂質のような生物学的成分の構造は分解され、酸素化合物、窒素化合物、リン化合物、硫黄化合物、軽質炭化水素が気体として除去され、オレフィン性結合は水素化される。このプロセスの第2の工程、すなわち、いわゆる異性化工程では、炭化水素鎖を分岐させ、低温でパラフィンの性能を向上させるために、異性化が起こる。
【0278】
クラッキングプロセスの第1の工程、すなわち、HDO工程では、水素ガス及び水素化されるべき本明細書の脂質組成物又は脂質は、HDO触媒床系に向かって並流又は向流で流れ、この触媒床系は、1つ以上の触媒床、好ましくは、1〜3個の触媒床を有する。HDO工程は、典型的には、並流の様式で操作される。2種以上の触媒床を含むHDO触媒床系の場合には、床のうち1つ以上を、向流の原理を用いて操作してもよい。HDO工程では、圧力は、20〜150barを変動し、好ましくは、50〜100barを変動し、温度は、200〜500℃で変動し、好ましくは、300〜400℃の範囲で変動する。HDO工程では、周期律表のVII族及び/又はVIB族の金属を含む既知の水素化触媒を用いてもよい。好ましくは、水素化触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMo又はCoMoの触媒であり、担持体は、アルミナ及び/又はシリカである。典型的には、NiMo/Al触媒及びCoMo/Al触媒を用いる。
【0279】
HDO工程の前に、本明細書の脂質組成物又は脂質を、場合により、穏和な条件下で前水素化することにより処理し、二重結合の副作用を避けることができる。このような前水素化は、前水素化触媒存在下、温度が50〜400℃、水素圧が1200bar、好ましくは、150〜250℃の温度で、水素圧が10〜100barで行われる。触媒は、周期律表のVIII族及び/又はVIB族の金属を含んでいてもよい。好ましくは、前水素化触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMo又はCoMoの触媒であり、担持体は、アルミナ及び/又はシリカである。
【0280】
HDO工程からの水素を含む気体の流れを冷却し、次いで、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素化合物、リン化合物、硫黄化合物、気体状軽質炭化水素及び他の不純物をここから除去する。圧縮した後、精製された水素又はリサイクルされた水素を第1の触媒床に戻すか、及び/又は、触媒床の間に戻し、抜き取られた気体の流れを構成する。圧縮された液体から水が取り除かれる。この液体を第1の触媒又は触媒床の間に流す。
HDO工程の後、生成物に対し、異性化工程を行う。このプロセスにとって、炭化水素を異性化触媒と接触させる前に、可能な限り完全に不純物が除去されることが重要である。異性化工程は、場合により、ストリッピング工程を含んでおり、HDO工程の反応生成物を、水蒸気又は軽質炭化水素、窒素又は水のような適切な気体を用いてストリッピングすることによって精製してもよい。この場合によって行われるストリッピング工程は、異性化触媒の上流にあるユニットで、向流様式で行われ、気体及び液体が互いに接触するか、又は向流の原理を利用する別個のストリッピングユニット中、実際の異性化反応槽の前に行われる。
ストリッピング工程の後、水素ガス及び本明細書の水素化された脂質組成物又は脂質と、場合により、n−パラフィン混合物は、1個又は複数個の触媒床を含む反応異性化ユニットを通る。異性化工程の触媒床は、並流又は向流の様式で操作されてもよい。
【0281】
このプロセスについて、異性化工程に向流の原理が適用されることが重要である。異性化工程では、このことは、場合により行われるストリッピング工程、又は異性化反応工程、又はこの両方の工程を向流の様式で行うことによってなされる。異性化工程では、圧力は、20〜150bar、好ましくは、20〜100barの範囲で変動し、温度は、200〜500℃、好ましくは、300〜400℃である。異性化工程では、当該技術分野で知られている異性化触媒を用いてもよい。適切な異性化触媒は、分子ふるい及び/又はVII属の金属及び/又はキャリアを含んでいる。好ましくは、異性化触媒は、SAPO−11又はSAPO41又はZSM−22又はZSM−23又はフェライト、Pt、Pd又はNi、Al又はSiOを含む。典型的な異性化触媒は、例えば、Pt/SAPO−11/Al、Pt/ZSM−22/Al、Pt/ZSM−23/Al、Pt/SAPO−11/SiOである。異性化工程及びHDO工程は、同じ加圧容器で行われてもよく、別個の加圧容器で行われてもよい。場合により行われる前水素化は、HDO工程及び異性化工程と加圧容器で行われてもよく、別個の加圧容器で行われてもよい。
【0282】
従って、一実施形態では、1つ以上の化学反応の生成物は、ASTM D1655ジェット燃料を含むアルカン混合物である。ある実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、硫黄含有量が10ppm未満である。他の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、蒸留曲線のT10値が、205℃未満である。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、最終沸点(FBP)が300℃未満である。別の実施形態では、ASTM
1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、引火点が少なくとも38℃である。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、密度が775K/M〜840K/Mである。さらに別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、凍結点が−47℃未満である。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、正味の燃焼熱が、少なくとも42.8MJ/Kである。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、水素含有量が、少なくとも13.4質量%である。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、定量重量分析JFTOTで、260℃で試験した場合、熱安定性を有し、Hg3mm未満である。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、存在するガム状物が7mg/dl未満である。
【0283】
従って、本発明は、微細藻類の脂質を化学的に改変し、種々の工業用途及び他の用途で有用な生成物を得る種々の方法を開示している。本明細書に開示されている方法によって精製する油を改変するプロセスの例としては、限定されないが、油の加水分解、油の水素化処理、油のエステル化が挙げられる。微細藻類の油の改変によって、望ましい機能のために選択された誘導体の油脂化学品へとさらに改変することが可能な、基本的な油脂化学品が得られる。燃料生成プロセスについて上述のと類似した様式で、これらの化学的な改変を、本明細書に記載されている微生物の培養物から生成した油に対して行ってもよい。基本的な油脂化学品の例としては、限定されないが、石鹸、脂肪酸、脂肪酸メチルエステル、グリセロールが挙げられる。誘導体の油脂化学品としては、限定されないが、脂肪族ニトリル、エステル、ダイマー酸、四級アンモニウムカチオン、界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、脂肪族アルコールサルフェート、樹脂、乳化剤、脂肪族アルコール、オレフィン、高級アルカンが挙げられる。
【0284】
本発明の方法によって生成するグリセロ脂質に由来する脂肪酸構成要素を加水分解することによって、他の有用な化学物質を生成するように誘導体化することが可能な遊離脂肪酸が得られる。加水分解は、水及び触媒の存在下で起こり、触媒は、酸であっても、塩基であってもよい。以下に報告されているように、放出された遊離脂肪酸を誘導体化して、種々の生成物を得ることができる。米国特許第5,304,664号(Highly sulfated fatty acids);第7,262,158号(Cleansing compositions);第7,115,173号(Fabric softener compositions);第6,342,208号(Emulsions
for treating skin);第7,264,886号(Water repellant compositions);第6,924,333号(Paint additives);第6,596,768号(Lipid−enriched ruminant feedstock);第6,380,410号(Surfactants for detergents and cleaners)。
【0285】
加水分解に関し、本発明の一実施形態では、トリグリセリド油脂を、場合により、まず、水又は水酸化ナトリウムのような液体培地中で加水分解し、グリセロール及び石鹸を得る。種々の適切なトリグリセリド加水分解方法が存在し、限定されないが、鹸化、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素加水分解(本明細書で、分解とも呼ばれる)、加圧熱水を用いた加水分解が挙げられる。当業者は、油脂化学品を生成するためにトリグリセリド油脂を加水分解する必要はないことを理解するだろう。むしろ、油を、他の既知のプロセスによって、望ましい油脂化学品に直接変換してもよい。例えば、トリグリセリド油脂を、エステル化によって、メチルエステル脂肪酸に直接変換してもよい。
【0286】
ある実施形態では、本明細書に開示されている方法によって生成した油の触媒的加水分解は、油をグリセロールと脂肪酸とに分解することによって起こる。上述のように、脂肪酸を、誘導体の油脂化学品を得るためのいくつかの他の改変によって、さらに処理してもよい。例えば、一実施形態では、脂肪酸は、アミノ化反応を受け、脂肪族窒素化合物を生成してもよい。別の実施形態では、脂肪酸は、オゾン分解を受け、一塩基酸及び二塩基酸を生成してもよい。
【0287】
他の実施形態では、加水分解は、本明細書で生成した油の分解によって起こり、油脂化学品を生成してもよい。いくつかの本発明の好ましい実施形態では、トリグリセリド油脂を分解してから、他のプロセスを行ってもよい。当業者は、限定されないが、酵素分解及び加圧分解を含む多くの適切なトリグリセリド分解方法が存在することを認識しているであろう。
【0288】
一般的に、酵素による油分解方法は、酵素リパーゼを、水/油混合物に作用する生体触媒として使用する。次いで、酵素分解によって、油又は脂肪を、それぞれグリセロールと遊離脂肪酸とに分解する。次いで、グリセロールは、水相に移動し、一方、有機相には、遊離脂肪酸が豊富に含まれる。
【0289】
酵素分解反応は、一般的に、有機相と水相との間の相の境界で起こり、酵素は、相の境界にしか存在しない。相の境界に来たトリグリセリドが、分解反応に寄与するか、又は分解反応に参加する。反応が進むにつれて、脂肪酸の占有密度又は濃度が、遊離脂肪酸と比較すると、まだグリセリドと化学的に結合しており、相の境界での占有密度又は濃度が低くなり、その結果、反応が遅くなる。特定の実施形態では、酵素分解を室温で行ってもよい。当業者は、所望な脂肪酸へと分解するのに適切な条件を知っているであろう。
【0290】
例として、反応速度は、界面の境界面が増えることによって速くすることができる。反応が終了したら、遊離脂肪酸を、有機相から酵素を含まずに分離し、まだグリセリドと化学的に結合した脂肪酸を含む残渣を、再び再び供給するか、又はリサイクルし、分解させるべき新しい油又は脂肪と混合する。この様式で、リサイクルされたグリセリドについて、次いで、さらなる酵素分解プロセスを行う。ある実施形態では、遊離脂肪酸を、このような様式で部分的に分解した油又は脂肪から抽出する。この様式で、化学的に結合している脂肪酸(トリグリセリド)が、分解プロセスに戻されるか、又は再び供給される場合、酵素の消費を顕著に減らすことができる。
【0291】
分解度は、測定した酸価を、所与の油又は脂肪からコンピューターで割り出すことが可能な理論的に可能な酸価で割った比率として決定される。好ましくは、酸価は、標準的な一般的な方法による滴定手段によって測定される。又は、グリセロール水相の密度は、分解度の測定値として測ることができる。
【0292】
一実施形態では、本明細書に記載されているような分解プロセスは、生成した油のアルカリ精製プロセスから得られる、いわゆる石鹸ストックに含まれるモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドを分解するのにも適している。このように、石鹸ストックは、それより前に天然の油が脂肪酸へと鹸化されることなく、定量的に変換することができる。この目的で、石鹸に化学的に結合している脂肪酸は、好ましくは、酸を加えることによって、分解の前に放出される。特定の実施形態では、分解プロセスのために、水及び酵素に加えて、緩衝溶液を用いる。
【0293】
一実施形態では、本発明の方法に従って生成した油に対し、加水分解方法として鹸化を行うことができる。動物性油及び植物性油は、典型的には、遊離脂肪酸と三価アルコールであるグリセロールとのエステルであるトリグリセリド(TAG)から作られる。アルカリ加水分解反応において、TAG中のグリセロールが除去され、ナトリウム又はカリウムのようなアルカリ金属と会合し、脂肪酸塩を生成することができる、3個のカルボン酸アニオンが残る。このスキームで、カルボン酸の構成要素が、グリセロール部分から開裂し、ヒドロキシル基によって置き換えられる。この反応で用いられる塩基(例えば、KOH)の量は、望ましい鹸化度によって決定される。目的が、例えば、TAG組成物に元も存在している油をいくらか含んでいる石鹸を生成することである場合、TAGの全てを脂肪酸に変換するのには十分でない塩基の量が、反応混合物に入れられる。通常は、この反応は水溶液中で行われ、ゆっくりと進むが、熱を加えて反応を速め得る。脂肪酸塩の沈殿は、例えば、水溶性のアルカリ金属ハロゲン化物(例えば、NaCl又はKCl)のような塩を反応混合物に加えることによって促進され得る。好ましくは、塩基は、NaOH又はKOHのようなアルカリ金属の水酸化物である。又は、例えば、トリエタノールアミン及びアミノメチルプロパノールを含め、アルカノールアミンのような他の塩基を反応スキームで用いてもよい。ある場合では、これらの代替法は、透明な石鹸製品を作るのに好ましい場合がある。
【0294】
いくつかの方法では、化学的な改変の第1の工程は、二重結合を飽和させるための水素化処理であってもよく、次いで、水素及び触媒が存在する条件下、高温で脱酸素を行う。他の方法では、水素化及び脱酸素は、同じ反応で行ってもよい。さらに他の方法では、脱酸素は、水素化の前に行う。次いで、場合により、異性化を行ってもよく、これも水素及び触媒の存在下で行ってもよい。最後に、所望の場合、気体及びナフサ成分を除去することができる。例えば、米国特許第5,475,160号(hydrogenation of triglycerides);第5,091,116号(deoxygenation,hydrogenation and gas removal);第6,391,815号(hydrogenation);第5,888,947号(isomerization)を参照。
【0295】
本発明のある実施形態では、トリグリセリド油脂を、部分的に脱酸素するか、又は完全に脱酸素する。脱酸素反応によって、限定されないが、脂肪酸、脂肪族アルコール、ポリオール、ケトン、アルデヒドのような所望な生成物が得られる。一般的に、いかなる特定の理論によっても限定されないが、脱酸素反応は、限定されないが、水素化分解、水素化、連続的な水素化−水素化分解、連続的な水素化分解−水素化、水素化−水素化分解反応の組み合わせを含む種々の異なる反応経路の組み合わせを含んでおり、その結果、脂肪酸又は脂肪酸エステルから酸素が少なくとも部分的に除去され、脂肪族アルコールのような反応生成物が生成し、さらなるプロセスによって、この生成物を所望な化学物質へと簡単に変換することができる。例えば、一実施形態では、脂肪族アルコールを、FCC反応によってオレフィンへと変換してもよく、縮合反応によって高級アルカンへと変換してもよい。
【0296】
このような化学的な改変のひとつは水素化であり、水素化は、グリセロ脂質又は遊離脂肪酸の脂肪酸構成要素中にある二重結合に水素を添加することである。水素化プロセスによって、液体の油が、特定の用途ではさらに適切な場合がある半固体又は固体の脂肪へと変換される。
【0297】
本明細書に記載の方法によって生成する油の水素化は、米国特許第7,288,278号(Food additives or medicaments);第5,346,724号(Lubrication products);第5,475,160号(Fatty alcohols);第5,091,116号(Edible oils);第6,808,737号(Structural fats for margarine and spreads);第5,298,637号(Reduced−calorie fat substitutes);第6,391,815号(Hydrogenation catalyst and sulfur adsorbent);第5,233,099号及び第5,233,100号(Fatty alcohols);第4,584,139号(Hydrogenation catalysts);第6,057,375号(Foam suppressing agents);第7,118,773号(Edible emulsion spreads)に報告されているように、本明細書で提供している1つ以上の方法及び/又は材料と組み合わせて行うことができる。
【0298】
当業者は、種々のプロセスを用いて炭水物を水素化してもよいことを認識するだろう。適切な方法のひとつは、炭水化物を、水素化反応槽中で、水素化生成物を得るのに十分な条件で、水素又は適切な気体と混合した水素及び触媒と接触させることを含む。水素化触媒は、一般的に、Cu、Re、Ni、Fe、Co、Ru、Pd、Rh、Pt、Os、Ir、及びこれらの合金又は任意の組み合わせを、単独で、又は、W、Mo、Au、Ag、Cr、Zn、Mn、Sn、B、P、Bi、及びこれらの合金又は任意の組み合わせのようなプロモーターとともに含んでいてもよい。他の有効な水素化触媒材料としては、レニウムで改変された、担持されたニッケル又はルテニウムが挙げられる。一実施形態では、水素化触媒も、触媒の望ましい機能性に依存して、任意の担持体を含んでいてもよい。水素化触媒を、当業者に既知の方法によって調製してもよい。
【0299】
ある実施形態では、水素化触媒は、担持されたVIII属の金属触媒、金属スポンジ材料(例えば、スポンジニッケル触媒)を含んでいる。ラネーニッケルは、本発明で用いるのに適した、活性化されたスポンジニッケルの一例である。他の実施形態では、本発明の水素化反応は、ニッケル−レニウム触媒又はタングステンによって改変されたニッケル触媒を含む触媒を用いて行われる。本発明の水素化反応に適切な触媒の一例は、炭素に担持されたニッケル−レニウム触媒である。
【0300】
一実施形態では、適切なラネーニッケル触媒を、適切な等重量のニッケル及びアルミニウムの合金を、アルカリ水溶液、例えば、約25重量%の水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液で処理することによって調製し得る。アルミニウムを、アルカリ水溶液によって選択的に溶解し、ほとんどがニッケルで、少量のアルミニウムを含むスポンジ型の材料を得る。最初の合金は、生成したスポンジニッケル触媒に約1〜2重量%が残るような量で、プロモーター金属(すなわち、モリブデン又はクロム)を含んでいる。別の実施形態では、水素化触媒は、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)、塩化ルテニウム(III)の水溶液を用い、適切な支持材料に含浸させて調製する。次いで、この溶液を乾燥させ、含水量が約1重量%未満の固体を得る。次いで、回転式のボール型炉で、水素を流しつつ、300℃(焼成しない)〜400℃(焼成する)で4時間かけて、この固体を大気圧で還元してもよい。冷却し、触媒を窒素で不活性化した後、窒素中、5容積%の酸素を触媒に2時間流す。
【0301】
特定の実施形態では、記載されている触媒は、触媒担持体を含む。触媒担持体は、触媒を安定化し、担持する。使用される触媒担持体の種類は、選択した触媒及び反応条件に依存する。本発明に適した担持体としては、限定されないが、炭素、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、バナジア、窒化物、窒化ホウ素、ヘテロポリ酸、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛、クロミア、ゼオライト、カーボンナノチューブ、炭素フラーレン、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0302】
本発明で用いられる触媒は、当業者に既知の従来の方法を用いて調製することができる。適切な方法としては、限定されないが、初期湿潤法、蒸発させ、含浸させる方法、化学蒸着法、洗浄−コーティング、マグネトロンスパッタリング技術などが挙げられる。
【0303】
水素化反応を行う際の条件は、出発物質及び望ましい生成物の種類によって変わるだろう。当業者は、本開示の利益とともに、適切な反応条件を認識しているであろう。一般的に、水素化反応は、80℃〜250℃の温度で行われ、好ましくは、90℃〜200℃、最も好ましくは、100℃〜150℃の温度で行われる。ある実施形態では、水素化反応は、500KPa〜14000KPaの圧力で行われる。
【0304】
本発明の水素化分解反応で用いられる水素としては、外から加えられる水素、リサイクルした水素、系中で生成した水素、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「外から加えられる水素」は、バイオマス反応自体に由来する水素ではなく、別の供給源からシステムに加えられた水素を指す。
【0305】
本発明のある実施形態では、出発物質の炭水化物を、小さな分子に変換することが望ましく、この小さな分子は、望ましい高級炭化水素へと簡単に変換されるだろう。この変換の適切な方法のひとつは、水素化分解反応によるものである。炭水化物の水素化分解を行う種々のプロセスが知られている。適切な方法のひとつは、水素化分解反応槽中で、小さな分子又はポリオールを含む反応生成物を得るのに十分な条件で、水素又は適切な気体と混合した水素及び水素化分解触媒と接触させることを含む。本明細書で使用される場合、用語「小さな分子又はポリオール」は、小さな分子量を有する任意の分子を含み、出発の炭水化物よりも炭素原子又は酸素原子の数が少ないものを含み得る。一実施形態では、この反応生成物は、ポリオール及びアルコールを含む小さな分子を含む。当業者は、水素化分解反応を行うのに適切な方法を選択することができるであろう。
【0306】
ある実施形態では、5炭糖及び/又は6炭糖又は糖アルコールを、水素化分解触媒を用い、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロールに変換してもよい。水素化分解触媒としては、Cr、Mo、W、Re、Mn、Cu、Cd、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os及びこれらの合金又は任意の組み合わせを、単独で、又は、Au、Ag、Cr、Zn、Mn、Sn、Bi、B、O、及びこれらの合金又は任意の組み合わせのようなプロモーターとともに含んでいてもよい。また、水素化分解触媒は、遷移金属(例えば、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、マンガン、銅、カドミウム)又はVIII族の金属(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム)を含む炭素系パイロポリマー触媒を含んでいてもよい。特定の実施形態では、水素化分解触媒は、上述の金属を、アルカリ土類金属酸化物と組み合わせたもの、又は、触媒活性のある担持体に接着したものを含んでいてもよい。特定の実施形態では、水素化分解反応で記載されている触媒は、水素化反応について上に記載したような触媒担持体を含んでいてもよい。
【0307】
水素化分解反応を行う際の条件は、出発物質及び望ましい生成物の種類によって変わるだろう。当業者は、本開示の利益とともに、この反応を行うのに適切な反応条件を認識しているであろう。一般的に、水素化分解反応は、110℃〜300℃の温度で行われ、好ましくは、170℃〜220℃、最も好ましくは、200℃〜225℃の温度で行われる。ある実施形態では、水素化分解反応は、塩基性条件で行われ、好ましくは、pHが8〜13、さらにより好ましくは、pHが10〜12の条件で行われる。ある実施形態では、水素化分解反応は、60KPa〜16500KPaの範囲の圧力で、好ましくは、1700KPa〜14000KPa、さらにより好ましくは、4800KPa〜11000KPaの圧力で行われる。
【0308】
本発明の水素化分解反応で用いられる水素としては、外から加えられる水素、リサイクルした水素、系中で生成した水素、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0309】
ある実施形態では、上述の反応生成物を、縮合反応槽(図1に縮合反応槽110として模式的に示している)中、縮合反応によって高級な炭化水素へと変換されてもよい。このような実施形態では、反応生成物の縮合は、高級な炭化水素を生成することが可能な触媒が存在する条件で行われる。理論によって限定されることを意図していないが、高級な炭化水素の生成は、炭素−炭素結合、又は炭素−酸素結合の生成を含む、段階的な付加反応によって進むと考えられる。得られた反応生成物は、以下にさらに詳細に記載されるように、これらの部分を含む任意の数の化合物を含んでいる。
【0310】
特定の実施形態では、適切な縮合触媒としては、酸触媒、塩基触媒、又は酸/塩基触媒が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「酸/塩基触媒」は、酸と塩基の両方の機能を有する触媒を指す。ある実施形態では、縮合触媒としては、限定されないが、ゼオライト、カーバイド、窒化物、ジルコニア、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、ホスフェート、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化物、ヘテロポリ酸、無機酸、酸で改変された樹脂、塩基で改変された樹脂、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、縮合触媒としては、改変剤も含まれる。適切な改変剤としては、La、Y、Sc、P、B、Bi、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、縮合触媒は、金属を含んでいてもよい。適切な金属としては、Cu、Ag、Au、Pt、Ni、Fe、Co、Ru、Zn、Cd、Ga、In、Rh、Pd、Ir、Re、Mn、Cr、Mo、W、Sn、Os、合金、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0311】
特定の実施形態では、縮合反応で記載されている触媒は、水素化反応について上に記載した触媒担持体を含んでいてもよい。特定の実施形態では、縮合触媒は、自立型である。本明細書で使用される場合、用語「自立型」は、触媒が、担持体として機能する別の材料を必要としないことを意味する。他の実施形態では、縮合触媒を、触媒を担持するのに適した別個の担持体と組み合わせて使用する。一実施形態では、縮合触媒担持体は、シリカである。
【0312】
縮合反応が起こる条件は、出発物質及び望ましい生成物の種類によって変わるだろう。当業者は、本開示の利益とともに、この反応を行うのに適切な反応条件を認識しているであろう。ある実施形態では、縮合反応は、提示されている反応の熱力学が好ましくなるような温度で行われる。縮合反応の温度は、出発物質の特定のポリオール又はアルコールによって変わるだろう。ある実施形態では、縮合反応の温度は、80℃〜500℃の範囲であり、好ましくは、125℃〜450℃、最も好ましくは、125℃〜250℃の範囲である。ある実施形態では、縮合反応は、0Kpa〜9000KPaの範囲の圧力で行われ、好ましくは、0KPa〜7000KPa、さらにより好ましくは、0KPa〜5000KPaの範囲の圧力で行われる。
【0313】
本発明で得られる高級なアルカンとしては、限定されないが、炭素原子が4〜30個の分枝鎖又は直鎖のアルカン、炭素原子が4〜30個の分枝鎖又は直鎖のアルケン、炭素原子が5〜30個のシクロアルカン、炭素原子が5〜30個のシクロアルケン、アリール、縮合アリール、アルコール、ケトンが挙げられる。適切なアルカンとしては、限定されないが、ブタン、ペンタン、ペンテン、2−メチルブタン、ヘキサン、ヘキセン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2,−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、ヘプテン、オクタン、オクテン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3−ジメチルヘキサン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、ノナン、ノネン、デカン、デセン、ウンデカン、ウンデセン、ドデカン、ドデセン、トリデカン、トリデセン、テトラデカン、テトラデセン、ペンタデカン、ペンタデセン、ノニルデカン、ノニルデセン、エイコサン、エイコセン、ウンエイコサン、ウンエイコセン、ドエイコサン、ドエイコセン、トリエイコサン、トリエイコセン、テトラエイコサン、テトラエイコセン、及びこれらの異性体が挙げられる。これらの生成物のいくつかは、燃料として用いるのに適し得る。
【0314】
ある実施形態では、シクロアルカン及びシクロアルケンは置換されていない。他の実施形態では、シクロアルカン及びシクロアルケンは、一置換されている。さらに他の実施形態では、シクロアルカン及びシクロアルケンは、多置換されている。置換されたシクロアルカン及びシクロアルケンを含む実施形態では、置換された基としては、限定されないが、炭素原子が1〜12個の分枝鎖又は直鎖のアルキル、炭素原子が1〜12個の分枝鎖又は直鎖のアルキレン、フェニル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。適切なシクロアルカン及びシクロアルケンとしては、限定されないが、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチル−シクロペンタン、メチル−シクロペンテン、エチル−シクロペンタン、エチル−シクロペンテン、エチル−シクロヘキサン、エチル−シクロヘキセン、及びこれらの異性体、及び任意のこれらの組み合わせが挙げられる。
【0315】
ある実施形態では、生成したアリールは、置換されていない。別の実施形態では、生成したアリールは、一置換されている。置換アリールを含む実施形態では、置換された基としては、限定されないが、炭素原子が1〜12個の分枝鎖又は直鎖のアルキル、炭素原子が1〜12個の分枝鎖又は直鎖のアルキレン、フェニル、及び任意のこれらの組み合わせが挙げられる。本発明に適したアリールとしては、限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、パラキシレン、メタキシレン、及び任意のこれらの組み合わせが挙げられる。
【0316】
本発明で生成したアルコールは、炭素原子を4〜30個有している。ある実施形態では、アルコールは環状である。他の実施形態では、アルコールは、分岐している。別の実施形態では、アルコールは、直鎖である。本発明に適したアルコールとしては、限定されないが、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプチルデカノール、オクチルデカノール、ノニルデカノール、エイコサノール、ウンエイコサノール、ドエイコサノール、トリエイコサノール、テトラエイコサノール、及びこれらの異性体が挙げられる。
【0317】
本明細書で生成するケトンは、炭素原子を4〜30個有している。一実施形態では、ケトンは環状である。別の実施形態では、ケトンは、分岐している。別の実施形態では、ケトンは、直鎖である。本発明に適したケトンとしては、限定されないが、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノン、トリデカノン、テトラデカノン、ペンタデカノン、ヘキサデカノン、ヘプチルデカノン、オクチルデカノン、ノニルデカノン、エイコサノン、ウンエイコサノン、ドエイコサノン、トリエイコサノン、テトラエイコサノン、及びこれらの異性体が挙げられる。
【0318】
別のこのような化学的な改変は、インターエステル化である。天然で生成するグリセロ脂質は、脂肪酸の構成要素が均一に分布していない。油に関しては、インターエステル化は、異なるグリセロ脂質の2個のエステル間のアシル基が交換することを指す。インターエステル化のプロセスは、グリセロ脂質の混合物の脂肪酸構成要素を、分布パターンを改変するように再配置することができるという機構を与える。インターエステル化は、よく知られている化学プロセスであり、一般的には、アルカリ金属又はアルカリ金属アルキレート(例えば、ナトリウムメトキシド)のような触媒存在下、油混合物を所定時間(例えば、30分)加熱すること(約200℃まで)を含む。このプロセスを用い、油混合物の脂肪酸構成要素の分布パターンをランダム化することができ、又は、望ましい分布パターンを作成するようにすることができる。このような脂質の化学的な改変方法は、本明細書に与えられている材料、例えば、細胞乾燥重量の割合で、脂質として少なくとも20%含む微生物バイオマスで行うことができる。
【0319】
脂肪酸の特定の分布パターンを求める、方向性を持ったインターエステル化は、油混合物を、融解が起こり得るいくつかのTAGの融点よりも低い温度に維持することによって行うことができる。これにより、これらのTAGが選択的に結晶化し、それらが結晶化する際に、反応混合物から効果的に除去される。このプロセスを、例えば、油中のほとんどの脂肪酸が沈殿するまで行ってもよい。方向性を持ったインターエステル化を、例えば、長鎖脂肪酸を、これよりも鎖が短い対応する脂肪酸と置き換えることによって、カロリー含有量が低い生成物を得るために使用してもよい。また、方向性を持ったインターエステル化を用い、望ましくないtrans異性体を生じてしまう可能性がある水素化を行うことなく、所望の融解特性を有しており、食品添加物又は製品(例えば、マーガリン)中で求められている構造的特徴を有するような脂肪混合物を含む生成物を得ることができる。
【0320】
本明細書で記載されている方法によって生成する油のインターエステル化は、1つ以上の方法及び/又は材料、又は米国特許第6,080,853号(Nondigestible fat substituted);第4,288,378号(Peanut butter stabilizer);第5,391,383号(Edible spray oil);第6,022,577号(Edible fats for food
products);第5,434,278号(Edible fats for food products);第5,268,192号(Low calorie nut products);第5,258,197号(Reduce calorie edible compositions);第4,335,156号(Edible fat product);第7,288,278号(Food additives or medicaments);第7,115,760号(Fractionation
process);第6,808,737号(Structural fats);第5,888,947号(Engine lubricants);第5,686,131号(Edible oil mixtures);第4,603,188号(Curable urethane compositions)で報告されているように、生成物を生成するための1つ以上の方法及び材料と組み合わせて行うことができる。
【0321】
一実施形態では、本発明によれば、上に記載されているように、油をトランスエステル化した後に、米国第6,465,642号で報告されているように、ポリオールポリオールを用いてトランスエステル化した生成物の反応を行う。このようなエステル化及び分離プロセスは、石鹸存在下、低級アルキルエステルとポリオールとを反応させる工程と;生成物の混合物から、残った石鹸を除去する工程と;生成物の混合物を水で洗浄し、乾燥させ、不純物を取り除く工程と;生成物の混合物を精製のために漂白する工程と;生成物の混合物中のポリオール脂肪酸ポリエステルから、未反応の低級アルキルエステルの少なくとも一部分を分離する工程と;未反応の低級アルキルエステルを分離させたものをリサイクルする工程とを含んでいてもよい。
【0322】
また、トランスエステル化は、米国特許第6,278,006号に報告されているように、短鎖脂肪酸エステルを有する微生物バイオマスを用いて行ってもよい。一般的に、トランスエステル化は、適切な触媒存在下、短鎖脂肪酸エステルを、油に加え、この混合物を加熱することによって行われてもよい。ある実施形態では、油は、反応混合物の約5重量%〜約90重量%含まれる。ある実施形態では、短鎖脂肪酸エステルは、反応混合物の約10重量%〜約50重量%含まれていてもよい。触媒の非限定的な例としては、塩基触媒、ナトリウムメトキシド、硫酸及び酸性クレイのような無機酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸のような有機酸、Amberlyst 15のような酸性樹脂を含む酸触媒が挙げられる。ナトリウム及びマグネシウムのような金属、金属ヒドリドも有用な触媒である。
【0323】
別のこのような化学的な改変は、ヒドロキシル化であり、二重結合に水を付加し、飽和状態にし、ヒドロキシル部分を組み込むことを含む。ヒドロキシル化プロセスは、グリセロ脂質の1つ以上の脂肪酸構成要素をヒドロキシ脂肪酸に変換する機構を与える。ヒドロキシル化は、例えば、米国特許第5,576,027号に報告されている方法によって行うことができる。ヒマシ油及びその誘導体を含むヒドロキシル化脂肪酸は、食品添加物、界面活性剤、色素湿潤剤、消泡剤、撥水添加剤、可塑剤、香粧品用乳化剤及び/又は消臭剤、及びエレクトロニクス、医薬、塗料、インク、接着剤、滑沢剤のような、いくつかの工業用途での成分として有用である。グリセリドのヒドロキシル化をどのように行うかの一例を以下に示す。脂肪を、好ましくは、ヘプタンと組み合わせて約30〜50℃の温度まで加熱し、この温度に30分以上維持してもよく;次いで、この混合物に酢酸を加えた後、硫酸水溶液を加え、次いで、過酸化水素水溶液を1時間かけて混合物に少量ずつ加えてもよく;過酸化水素水溶液を加えた後、温度を少なくとも約60℃まで上げ、少なくとも6時間撹拌してもよく;撹拌した後、この混合物を静置し、反応によって生成した下側の水層を除去しつつ、反応によって生成した上側のヘプタン層を約60℃の温度を有する熱水で洗浄してもよく;次いで、洗浄したヘプタン層を水酸化カリウム水溶液でpHが約5〜7になるまで中和し、次いで、減圧下で蒸留によって除去してもよく;次いで、反応生成物を減圧下、100℃で乾燥させ、乾燥した生成物を、減圧条件下、蒸気で消臭し、珪藻土を用いて約50℃〜60℃で濾過してもよい。
【0324】
本明細書に記載されている微生物油のヒドロキシル化を、1つ以上の方法及び/又は材料と組み合わせて行ってもよく、米国特許第6,590,113号(Oil−based
coatings and ink);第4,049,724号(Hydroxylation process);第6,113,971号(Olive oil butter);第4,992,189号(Lubricants and lube additives);第5,576,027号(Hydroxylated milk);第6,869,597号(Cosmetics)で報告されているように、生成物を生成するための1つ以上の方法及び材料と組み合わせて行ってもよい。
【0325】
ヒドロキシル化されたグリセロ脂質をエストライドに変換することができる。エストライドは、ヒドロキシル化された脂肪酸構成要素が、別の脂肪酸分子でエステル化されたグリセロ脂質からなる。ヒドロキシル化されたグリセロ脂質をエストライドに変換することは、Isbell et al.、JAOCS 71(2):169−174(1994)に記載されるように、グリセロ脂質及び脂肪酸の混合物を加熱し、この混合物を鉱物酸と接触させることによって行うことができる。エストライドは、米国特許第7,196,124号(エラストマー材料および床仕上げ材);第5,458,795号(高温度での用途のための濃化油);第5,451,332号(工業用途のための液体);第5,427,704号(燃料添加剤);第5,380,894号(潤滑油、グリース、可塑剤、印刷インク)で報告されているものに限定されないが、種々の用途で有用である。
【0326】
微生物油で行うことが可能な他の化学反応としては、米国特許第6,051,539号で報告されているように、トリアシルグリセロールと、シクロプロパン化剤と反応させ、流動性及び/又は酸化安定性を高めること;米国特許第6,770,104号で報告されているように、トリアシルグリセロールからワックスを製造すること;「The effect of fatty acid composition on the acrylation kinetics of epoxidized triacylglycerols」、Journal of the American Oil Chemists’ Society、79:1、59−63(2001)及びFree Radical Biology and Medicine、37:1、104−114(2004)に報告されているように、トリアシルグリセロールをエポキシ化することが挙げられる。
【0327】
上述のような燃料及び化学製品のために、油を生み出す微生物バイオマスを作成すると、脱脂したバイオマス食料が生成される。脱脂した食料は、藻の油を調製したときの副産物であり、例えば、反すう動物、鳥類、ブタ、水産養殖のような農場動物用の動物の餌として有用である。得られた食料は、油含有量が減ってはいるが、高品質のタンパク質、炭水化物、繊維、灰分、残留油、及び動物の餌に適した他の栄養物はいまだ含まれている。油分離プロセスによって細胞は大部分が溶解しているため、脱脂した食料は、このような動物によって簡単に消化される。脱脂した食料を、場合により、例えば、動物の餌の中で、穀物のような他の成分と組み合わせてもよい。脱脂した食料は、均一な粉末であるため、押出機、エクスパンダー又は市販されている別の種類の機械を用いてペレットへと圧縮することができる。
【0328】
本発明について上に詳細に説明し、以下の実施例で例示するが、これらは説明のために与えられたものであり、特許請求の範囲に書かれた発明を限定するために与えられているのではない。
【実施例】
【0329】
(VII.実施例)
(実施例1:Protothecaを培養する方法)
細胞乾燥重量で高い割合の油を得るようにPrototheca株を育てた。凍結保存した細胞を室温で解凍し、細胞500μlを、2%グルコースを含む培地4.5ml(4.2g/L KHPO、3.1g/L NaHPO、0.24g/L MgSO・7HO、0.25g/L クエン酸一水和物、0.025g/L CaCl 2HO、2g/L 酵母抽出物)に入れ、6ウェルプレートで撹拌しつつ(200rpm)、28℃で7日間成長させた。細胞乾燥重量は、あらかじめ秤量しておいたエッペンドルフ管中、培養物1mlを14,000rpmで5分間遠心分離することによって決定した。培養物の上澄みを棄て、得られた細胞ペレットを脱イオン水1mlで洗浄した。培養物を再び遠心分離処理し、上澄みを棄て、細胞ペレットを凍結するまで−80℃に置いた。次いで、サンプルを24時間凍結乾燥し、細胞乾燥重量を算出した。培養物中の総脂質を決定するために、培養物3mlを取り出し、Ankomシステム(Ankom Inc.、Macedon、NY)を用い、製造業者のプロトコルに従って分析した。サンプルを、Amkom XT10抽出機を用い、製造業者のプロトコルに従って、溶媒抽出した。酸によって加水分解して乾燥させたサンプルと、溶媒抽出して乾燥させたサンプルとの質量差として、総脂質を決定した。細胞乾燥重量での油の割合を測定した値を表8に示す。
【0330】
【表8】
【0331】
上の表22に列挙した微細藻類サンプルの遺伝子型を解析した。藻のバイオマスからゲノムDNAを以下のように単離した。液体培養物から、細胞(約200mg)を14,000×gで5分間遠心分離処理した。次いで、細胞を滅菌蒸留水に再び懸濁させ、14,000×gで5分間遠心分離処理し、上澄みを棄てた。このバイオマスに、直径約2mmの1個のガラスビーズを加え、この管を−80℃で少なくとも15分間置いた。サンプルを取り出し、研磨バッファー(1% Sarkosyl、0.25M ショ糖、50mM
NaCl、20mM EDTA、100mM Tris−HCl、pH 8.0、RNase A 0.5ug/μl)150μlを加えた。ペレットを短時間ボルテックスすることによって再び懸濁させた後、5M NaCl 40μlを加えた。サンプルを簡単にボルテックスした後、5% CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)66μlを加え、最後に短時間ボルテックスした。次いで、サンプルを65℃で10分間インキュベートした後、14,000×gで10分間遠心分離処理した。新しい管に上澄みを移し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール 12:12:1 300μlで1回抽出し、次いで、14,000×gで5分間遠心分離処理した。0.7体積部のイソプロパノール(約190μl)を含む新たな管に、得られた水相を移し、ひっくり返すことによって混合し、室温で30分間インキュベートするか、又は4℃で一晩インキュベートした。14,000×gで10分間遠心分離処理することによってDNAを回収した。次いで、得られたペレットを70%エタノールで2回洗浄した後、100%エタノールで最後に洗浄した。ペレットを室温で20〜30分風乾した後、10mM TrisCl、1mM EDTA(pH8.0)50μlで再び懸濁させた。
【0332】
上述のように調製した藻の全DNA5μlを、これを10mM Tris、pH8.0で1:50に希釈した。最終容積が20μlのPCR反応を以下のように設定した。2×iProof HFマスターミックス(BIO−RAD)10μlを、0.4μlのプライマーSZ02613(10mMストック濃度の5’−TGTTGAAGAATGAGCCGGCGAC−3’(配列番号9))に加えた。このプライマー配列は、Gen Bank寄託番号L43357の位置567〜588であり、高等植物及び藻のプラスチドゲノムにおいて高度に保存されている。次いで、これに0.4μlのプライマーSZ02615(10mMストック濃度の5’−CAGTGAGCTATTACGCACTC−3’(配列番号10))を加えた。このプライマー配列は、Gen Bank寄託番号L43357の位置1112〜1093と相補性であり、高等植物及び藻のプラスチドゲノムにおいて高度に保存されている。次いで、希釈した全DNA5μl及びdHO 3.2μlを加えた。PCR反応を以下のように行った。98℃、45秒;98℃、8秒;53℃、12秒;72℃、20秒を35サイクル繰り返した後、72℃で1分、25℃で保持。PCR産物を精製するために、核反応物に10mM Tris、pH8.0 20μlを加えた後、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール 12:12:1 40μlで抽出し、ボルテックスし、14,000×gで5分間遠心分離処理した。PCR反応物をS−400カラム(GE Healthcare)に入れ、3,000×gで2分間遠心分離処理した。次いで、精製したPCR産物を、PCR8/GW/TOPOへとTOPOGRAPHYクローン化し、LB/Specプレートで陽性クローンを選択した。精製したプラスミドDNAについて、M13の順プライマー及び逆プライマーを用い、両方向で配列を決定した。23S rRNA DNAの配列が決定された全部で12種類のPrototheca株を選択し、これらの配列を、配列表に列挙している。株及び配列表の番号のまとめは、以下にある。UTEX 1435(配列番号15)配列との全体的な違いについて、配列を分析した。最も違う配列として、2対があらわれた(UTEX 329/UTEX 1533及びUTEX 329/UTEX 1440)。これら両者の場合で、ペアワイズアラインメントから、一対の配列同一性が75.0%であった。UTEX 1435の配列同一性の割合も、以下に示している。
【0333】
【化2】
【0334】
上に列挙した株の部分集合から得られた脂質サンプルについて、HPLCを用いて脂質プロフィールを分析した。結果を以下の表9に示す。
【0335】
【表9】
【0336】
以下の実施例12及び実施例11に記載するように、UTEX 1435(Prototheca moriformis)又はUTEX 250(Chlorella protothecoides)のcDNAライブラリーを分析することによって、藻のプラスチドのトランジットペプチドを同定した。他の既知のプラスチドを標的とするタンパク質に対し、BLASTによって相同性がヒットしたことに基づいて、プラスチドを標的とすると思われるタンパク質をコードするcDNAを、ソフトウェアプログラムPSORT(http://psort.ims.u−tokyo.ac.jp/form.html)、ChlotoP(http://www.cbs.dtu.dk/services/ChloroP/)、TargetP(http://www.cbs.dtu.dk/services/TargetP/)でさらに分析した。これらの3種類のプログラムのうち、少なくとも1つで同定された、プラスチドトランジットペプチド候補物質を、適切なゲノムDNAからPCR増幅させた。以下は、このスクリーニングで同定された、藻のプラスチド標的配列(PTS)のアミノ酸配列のまとめである。また、以下の異種発現の実施例で用いられる植物脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼのアミノ酸配列も含まれている。
【0337】
【化3】
【0338】
(実施例2:種々の原材料でProtothecaを培養すること)
(A.ソルガム)
以下の株は、唯一の炭素源としてソルガムを利用することが可能であることが示された。Prototheca moriformis株UTEX 1435、UTEX 1437、UTEX 288、UTEX 1439、UTEX 1441、UTEX 1434、Prototheca stagnora株UTEX 1442。「UTEX」という名称は、University of Texas、1 University State A6700、Austin、Texas 78712−0183の藻の培養株保存機関がつけた株の番号であることを示す。
【0339】
純粋なソルガムは、Maasdam Sorghum Mills(Lynnville、Iowa)から購入し、糖プロフィールは、フルクトースが21.0%w/w、デキストロースが28.0%w/w、ショ糖が16.0%w/w、マルトースが0.5%w/w未満であった。培養物を、2%、5%、又は7%(v/v)の純粋なソルガム(純粋なストックから希釈した)を唯一の炭素源として含む液体培地中で成長させ、培養物を約350rpmで振とうしつつ、暗い場所で従属栄養的に成長させた。この培養物から得たサンプルを、24、40、48、67、89時間で抜き取り、分光光度計でA750の読みを用いて成長を測定した。図1〜2に示しているとおりに試験したそれぞれの株について、成長を観察した。
【0340】
(B.セルロース)
爆発した湿ったトウモロコシ茎葉、Miscanthus、飼料用ソルガム、ビートパルプ及びサトウキビの絞りかすを1.4%硫酸溶液中で調理し、得られたスラリーを脱水することによって、The National Renewable Energy Laboratory(Golden、CO)で調製した。乾燥させ、重量測定法で固形分の割合を決定し、その値は以下のとおりであった。トウモロコシ茎葉、固形分25%;Miscanthus、固形分28.7%;飼料用ソルガム、固形分26.7%;サトウキビの絞りかす、固形分26%。
【0341】
爆発した湿ったセルロース系材料サンプル(トウモロコシ茎葉又はスイッチグラス)100gを、脱イオン水で最終容積が420mLになるように再び懸濁させ、10N NaOHを用いてpHを4.8に調節した。ビートパルプの場合、乾燥させた固体9.8gを、脱イオン水350mLに入れ、10N NaOHを用いてpHを4.8に調節した。上の全ての原材料について、セルロース系材料を糖化するために、乾燥バイオマス1gあたり、酵素0.25mlの比率で、Accellerase 1000(Genencor、New York)を用いた。サンプルを振とうしつつ(110rpm)、50℃で72時間インキュベートした。各サンプルのpHを、NaOHで7.0に調節し(容積変化は無視できるほどわずか)、0.22μmフィルターで滅菌濾過し、以下に詳細に示すプロセスで使用した。もっと大きなスケールのプロセスでは、原材料の滅菌濾過を補助するために、タンジェント流濾過(TFF)又は精密濾過工程のさらなる工程を行う以外は、同じ糖化手順に従った。それぞれの調製した原材料から得られるサンプルを、HPLC/ELSDを用いたシステム又はヘキソキナーゼを用いるキット(Sigma)を用いてグルコース及びキシロースの濃度を決定するための保存しておいた。さらに、ビートパルプの場合、最初に、他の原材料と同じ容積にしておき、pHを4.0に調節し、ペクチナーゼ処理を50℃で24時間行った。次いで、洗浄工程を行わなかった場合には、pHを4.8に調節し、洗浄工程を行った場合には、pHを5.3に調節した。次いで、上に記載した他の原材料に用いたのと同じ手順で、酵素による糖化を行った。
【0342】
微細藻類Prototheca moriformis株UTEX 1435について、上述のように調製した一連のセルロース系原材料(トウモロコシ茎葉、ビートパルプ、ソルガムの茎、Miscanthus及びグルコース対照)を用いて成長する能力について評価した。微細藻類の培養物を、炭素源だけが異なる上の実施例1に記載した条件で成長させた。炭素源は、4%グルコース(対照条件の場合)又はセルロース系材料の利用可能なグルコースによって測定されるような4%グルコースであった。セルロース系成長をA750の読みによって評価し、培養時間は168時間であり、A750の読みは、培養を開始してから48、72、96、120、144、168時間めのものであった。図7aからわかるように、Prototheca moriformis培養物は、トウモロコシ茎葉中で最もよく成長した。使用した他のセルロース系原材料であるMiscanthus、ソルガムの茎、ビートパルプは全て、成長を阻害していることが示された。
【0343】
トウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系糖を用いた上述の結果に基づいて、トウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系糖を異なる濃度で用い、対照としてグルコース試薬を用いて、Prototheca moriformisにおける脂質の蓄積についても評価した。完全にトウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系糖に由来する18g/Lのグルコース中(図7bの100%トウモロコシ茎葉条件)、トウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系糖に由来する9g/Lのグルコースに、9g/Lのグルコース試薬を添加したもの(図7bの、50%トウモロコシ茎葉にグルコースを18g/Lになるまで添加した条件)、トウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系糖に由来する9g/Lのグルコース(50%トウモロコシ茎葉、添加していない;図7bのグルコース9g/Lの条件)、浸透圧対照としての、42g/Lのグルコース試薬及び13g/Lのキシロース試薬の対照培養物で培養物を成長させた。対照培養物を除き、培養物にセルロース系糖を供給し、グルコース濃度を20g/Lに維持し、対照培養物は、グルコース試薬を供給し、グルコース濃度を20g/Lに維持した。培養物の細胞乾燥重量に基づいて成長を測定し、脂質の生産性は、細胞乾燥重量の百分率として計算した。総脂質は、上の実施例1に記載したようなAnkom酸加水分解/溶媒抽出システムを用い、重量測定法で決定した。
【0344】
図7bからわかるように、バイオマスの蓄積量(DCWによって決定される)に基づいて、トウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系の全ての濃度は、グルコースのみが供給された対照培地よりも優れていた(DCWが高かった)。全ての条件について、脂質の産生をDCWの割合として算出した。トウモロコシ茎葉とともに成長させるとバイオマスの蓄積量が高くなったことに加え、トウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系を用いた条件では、脂質の蓄積量もグルコース対照条件と比較して、高くなった。これらのデータから、セルロース系から誘導される糖を与えることに加え、トウモロコシ茎葉は、バイオマスの蓄積量の増加(成長)及び生成物の収量増加に関与するさらなる栄養物/成分を与えていることが示される。
【0345】
セルロース系原材料が、グルコースに加え、いくつかの成分を含有しているため、主要な炭素源(通常は、限定されないが、グルコース)が消費されるにつれて、セルロース系から誘導される糖がもっと多く培養物中に供給されるため、これらのさらなる成分のいくつかは、培養中に望ましくない濃度まで蓄積してしまうことがある。例えば、セルロース系から誘導される糖原材料中に存在するキシロースは、微細藻類を高密度で育てている間に、成長及び最終生成物の産生を阻害する濃度まで蓄積してしまう場合がある。Protothecaを育てている間にキシロースが蓄積することの影響を調べるために、培養物を培地中で4%グルコースととも成長させ、0、10g/L、25g/L、50g/L、100g/Lのキシロースを追加した。培養して6日後に、上述の方法を用い、成長及び脂質の蓄積を評価した。図7cからわかるように、驚くべきことに、試験した中で最も高濃度のキシロースも、Prototheca moriformisが成長し、脂質を蓄積する能力を阻害せず、実際には、キシロース濃度が最も高い場合に、培養物はよりよく成長しており、脂質の蓄積量も増えていた。この現象を調べるために、野生型Prototheca moriformisが代謝することができない炭素源であるショ糖を用いて同様の実験を行った。ショ糖を用いた場合に、なんら良い影響は観察されず、このことは、キシロースを用いたときに、成長及び脂質の蓄積の向上がみられたのは、培地中に代謝されない成分が高濃度に存在することから生じる浸透圧以外の機構が関与しており、キシロースに特異的であることを示唆している。
【0346】
代謝されない糖に加え、リグノセルロース系から誘導される糖の濃度が高くなっていく結果として、塩が阻害濃度まで蓄積する場合がある。典型的なセルロース系材料調製の間に、HSOを用いて酸加水分解工程を行い、次いで、NaOHを用いて酸を中和するために、リグノセルロース系糖の生成中に、NaSOが生成する。塩濃度が成長及び脂質の産生に及ぼす影響を評価するために、Prototheca moriformis培養物を、0〜700mMの濃度範囲のNaSOで、4%グルコースを追加した培地中で成長させた。図7dに示されているように、DCWの蓄積によって測定した場合、NaSO濃度が25mMを超えると、特に、80mM、240mM、700mMの濃度で顕著な成長阻害が観察された。それに加え、消泡剤P2000の影響についても同じ試験で評価した。消泡剤化合物は、バイオマスの生産性に顕著な良い影響を有していた。脂質の生産性についても、それぞれの条件で評価し、NaSOが80mMを超える場合、特に240mM及び700mMの場合に阻害性であったのに対し、消泡剤P2000を加えると、脂質の生産性が顕著に上がった。従って、一実施形態では、本発明の方法の培養工程は、消泡剤を含む培地中で培養することを含む。
【0347】
上に記載した結果及び図7aにまとめた結果に基づいて、セルロース系原材料中に、成長度を悪くする阻害剤が存在しているようである。本発明は、この物質を熱水で洗浄すること(熱水処理)によって、このような化合物を除去する手段を提供する。図8は、セルロース系原材料に由来する糖を用い、熱水で1回洗浄した場合の、A750で測定した場合の成長結果をまとめたものである。培養条件は、図7aでまとめたプロセスで使用したものと同じであった。図7aに示した結果と比較して、熱水でたった1回洗浄しただけで、Prototheca moriformis培養物は、グルコース対照と比較して、試験した全てのセルロース系原材料中で、特に、サトウキビの絞りかす、ソルガムの茎、Miscanthus、ビートパルプ中で良好に成長した。それぞれの条件について、脂質の生産性も試験した。ビートパルプを用いた条件以外は、グルコース対照と匹敵する結果が得られており、セルロース系材料から誘導される糖の中で成長した培養物を熱水で1回洗浄すると、グルコース対照よりも脂質の生産性が良くなることが示された。
【0348】
セルロース系バイオマスを熱水処理(熱水洗浄)する場合に、考えられる影響のひとつは、材料の酸爆発によって放出されるフルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類の除去である。フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類の存在は、図7aにまとめたプロセスのいくつかで観察された成長の制限に関与していた可能性がある。熱水処理が、フルフラール類(FA)及びヒドロキシメチルフルフラール類(HMF)の濃度にどのような影響を与えているかを評価するために、サトウキビの絞りかす(B)、ソルガムの茎(S)、Miscanthus(M)又はビートパルプ(BP)から誘導されたセルロース系バイオマスを1回〜3回洗浄して得られる上澄みについて、HPLCによってFA及びHMFをアッセイした。図8に示されるように、FA及びHMFの濃度は、各洗浄工程で顕著に減少している。この結果は、FA及びHMFが、微細藻類の成長の阻害剤であり(図7aからわかるように)、熱水処理によってこれらの化合物が除去され、微細藻類の成長が向上し、対照グルコース条件における成長よりも良好であった(図8からわかるように)という観察結果と一致している。
【0349】
種々の熱水で処理されたリグノセルロース系から誘導される糖とともに成長したPrototheca moriformis培養物の脂質プロフィールに及ぼす影響について評価した。Prototheca moriformis培養物は、以下の4回洗浄したセルロース系原材料とともに成長させた。Miscanthus、サトウキビの絞りかす、ソルガムの茎、グルコース濃度は、これらのセルロース系糖を供給しつつ、20g/Lに維持された。培養が完結したら、それぞれの条件から得られた微細藻類バイオマスについて、実施例1に記載の方法を用いて脂質プロフィールを分析した。脂質プロフィール分析の結果(面積%であらわされている)を、以下の表10にまとめている。各条件を2回ずつ試験し、それぞれの2回分の試験結果が含まれている。セルロース系原材料を用いて成長させると、グルコース対照と比較して、脂質プロフィールにおいて顕著な再分配が生じていた。例えば、グルコース対照条件と比較して、全てのセルロース系原材料において、C18:0の面積%が顕著に増加していた。
【0350】
【表10】
【0351】
トウモロコシ茎葉を爆発させ、Accellerase酵素を用いて糖化し、減圧蒸発を用いて、セルロース系糖の流れを作成した。この糖の流れを、Prototheca moriformis成長アッセイで、グルコース濃度4%で試験した。成長アッセイの結果、成長度が非常に悪いことが示され、セルロース系糖の流れについて、導電率(塩含有量)を試験した。導電率は非常に高く、700mMのナトリウムに匹敵する量よりもかなり高く、上に記載し、図7dに示されているように、阻害性であることが示されている濃度であった。本発明の方法は、リグノセルロース系から誘導される微細藻類の油の生成において、これらの原材料を利用する前に、リグノセルロース系から誘導される糖から塩を減らすか、又は除去する方法を含む。しかし、驚くべきことに、濃縮した糖の流れを脱塩するのに樹脂を用いることはできず、まずは、濃縮した糖の流れを希釈する必要がある。この本発明の実施形態を示すために、トウモロコシ茎葉材料から誘導されるセルロース系糖を、8倍に希釈してから、樹脂を用いて混入している塩を除去した。濃縮状態である出発物質の初期導電率は、87mS/cmであり、一方、8倍に希釈した流れの導電率は、pH5.61で10990μS/cmであった。以前の研究から、脱イオン化の前に、濃縮した糖の流れを希釈し損なうと、塩を定量的に除去できないとともに、糖の流れから顕著な量のグルコースが失われることを示していた。3種類の異なる床容積を有するIEX樹脂(DOWEX Marathon MR3)を用いた(1:2、1:4、1:10)。表11は、混合床イオン交換(IEX)樹脂が、あらかじめ濃縮しておいたトウモロコシ茎葉から誘導されるセルロース系の流れを希釈した原材料において、塩を顕著に減らす(導電率によって測定した場合)能力を示す結果をまとめたものである。
【0352】
【表11】
【0353】
床容積:セルロース系原材料が1:4のものを利用し、材料を8倍に再濃縮するプロセスによって、ナトリウム濃度は、通常のバイオマス及び脂質が蓄積する範囲内に十分におさまる。又は、脱イオン化又は塩除去は、糖化の前又は糖化の後に行ってもよいが、糖の流れを濃縮する前に行う。塩の除去が、糖の流れを濃縮する前に行われると、塩除去の前に糖の流れを希釈する工程が必要ではないと思われる。
【0354】
この実施例は、セルロース系の油生成で使用するのに、爆発したセルロース系材料を洗浄することが有効であることを示している。上述のように、セルロース系から誘導される糖を、塩を除去せずに濃縮すると(爆発したセルロース系材料を作成し、次いで処理すると本来はこうなる)、最適な発酵よりも低い結果が得られる。以下に記載するプロセスで処理した材料は、その次の鹸化に適したpHを有していた。それに加え、この材料の導電率は、出発原材料よりも顕著に下がっていた(100分の1より低かった)。従って、その後に発酵で使用すべき濃縮した糖は、過剰な塩が存在することによる阻害性を有していなかった。さらなる利点は、セルロース系材料からフルフラール類が除去されることであると考えられる。ヘミセルロース系画分から除去された任意のキシロース又はグルコースは、棄てられてもよく、好ましくは、再び濃縮し、発酵で使用されてもよい。
【0355】
初期の開始重量が湿った状態で65kgであり、導電率が15,000μS/cmであり、pHが2.4の爆発した濡れたサトウキビの絞りかす(NREL、Colorado)を、脱イオン水128kgに入れ、10N NaOHでpHを4.6に調節し、得られた導電率は6,800μS/cmであった。一定分量の懸濁させた物質を、風袋重量を測った(重量=t)アルミニウムパンに取り出し、濡れた状態の重量(重量=w)を記録した後、これを110℃で3時間乾燥させることによって固形分の割合を評価した。乾燥させた後、サンプルを取り出してデシケーターに入れ、室温(25℃)まで戻し、その時点で、再び重量を測った(重量=d)。固形分の割合は、固形分%=[(d−t/w−t)]×100で算出した。導電率は、Thermo Electron Orion 3 Star Conductivity測定機で測定した。
【0356】
サトウキビの絞りかすを、ステンレス鋼反応槽(容量150L)中、セルロース系スラリー(初期の固形分の割合は8.2%)を温度50℃で連続的に混合することによって、半連続的な様式で洗浄した。回転負荷式ポンプで反応容器からセルロース系物質を1.9〜3.8kg/分の流速でSharples Model 660デカンター遠心分離機に取り出した。液体透過物を、バッチごとに保持しておき(約35〜175kgごと、以下の表12を参照)、表12に記載されるように、糖の合計(グルコース及びキシロース)及び固形分の割合を評価するために、均一な一定分量を取り出した。セルロース系材の導電率及びpHは、それぞれ脱イオン水及び10N NaOHを加えることによって制御した。表12のサンプル1〜10は、デカンテーションされた遠心分離透過物をあらわしており、これらの画分中に存在する固形分及び糖は、最終的な洗浄済みセルロース系材料からは除去されている。合計固形分の物質収支を、除去された固形分から、失われた固形分を引き算し、糖化に使う最終的な固形分を足したものと比較し、上述のプロセスで99%が回収されていた。図8は、集められ、表12に記載されている11種類の遠心分離透過物それぞれにおける、フルフラール及びヒドロキシメチルフルフラール類の濃度(mg/L)をまとめたものである。これらのデータは、サトウキビの絞りかすからフルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類がきれいに除去されていることを示している。
【0357】
【表12】
【0358】
Protothecaが、セルロース系から誘導された原材料を利用する能力を示す別の場合において、Prototheca moriformis(UTEX 1435)を、セルロース系から誘導される糖を固定炭素原材料として用い、3Lのバイオリアクターで育てた。凍結保存した細胞を室温で解凍して播種物質を調製し、実施例1に記載した基本的な微細藻類培地を基本とし、1g/L(NHSO、4g/L酵母抽出物及び微量元素溶液と、4%グルコースとを加えた播種培地300mLに細胞1mLを加え、振とうしながら(200rpm)28℃で1日間成長させた。この培養物を用い、0.26mLのAntifoam 204(Sigma、USA)を加えた培地1Lを含む3Lバイオリアクターに播種した。この発酵槽を28℃に制御し、KOHを加えることによってpHを6.8に維持した。溶解酸素を、乱流撹拌し、空気を流すことによって、30%の飽和状態に維持した。トウモロコシ茎葉から得たセルロース系糖原材料を培地に供給し、グルコースを0〜10g/Lに維持した。セルロース系糖原材料を塩が300mMになるまで脱塩することは、精製した糖原材料対照と比較して、同様の細胞乾燥重量及び脂質蓄積量を確保するために必須であった。セルロース系糖原材料の脱塩は、上述の方法を用いておこなった。発酵機のサンプルを取り出し、発酵性能をモニタリングした。細胞重量の蓄積は、光学密度及び細胞乾燥重量によってモニタリングした。また、グルコース、キシロース、アンモニア、カリウム、ナトリウム及びフルフラールの濃度も決定し、発酵時間の間モニタリングした。脂質濃度は、上に記載した重量測定方法によって決定した。
【0359】
(実施例3:Protothecaを形質転換する方法)
(A.微粒子銃によってProtothecaを形質転換する一般的な方法)
Seashell Technology製のS550d金担体を、製造業者のプロトコルに従って調製した。線状プラスミド(20μg)を、結合バッファー50μl及びS550d金担体60μl(30mg)と混合し、氷中、1分間インキュベートした。沈殿バッファー(100μl)を加え、この混合物を氷中でさらに1分間インキュベートした。ボルテックスした後、DNAでコーティングされた粒子を、5415C微量遠心器で10,000rpmで10秒間回転させることによって、ペレット状にした。この金ペレットを冷たい100%エタノール500μlで洗浄し、微量遠心器で軽く撹拌することによってペレット状にし、氷冷したエタノール50μlで再び懸濁させた。軽く(1〜2秒)音波処理した後、10μlのDNAコーティングされた粒子を、すぐにキャリア膜に移した。
【0360】
Prototheca株を、プロテオース培地(2g/L 酵母抽出物、2.94mM
NaNO、0.17mM CaCl・2HO、0.3mM MgSO・7HO、0.4mM KHPO、1.28mM KHPO、0.43mM NaCl)中、旋回シェーカー上に置いて細胞密度が2×10細胞/mlになるまで成長させた。この細胞を収穫し、滅菌蒸留水で1回洗浄し、培地50μlに再び懸濁させた。非選択的なプロテオース培地プレートの中央の1/3に1×10細胞を広げた。この細胞を、PDS−1000/He Biolistic Particle Deliveryシステム(Bio−Rad)で撃った。破裂ディスク(1100psi及び1350psi)を用い、上述のプレートを、スクリーン/マクロキャリアの集合体から9cm及び12cm下に置く。細胞を25℃で12〜24時間回復させた。回復したら、ゴム製スパチュラで細胞をプレートから掻き取り、培地100μlと混合し、適切に選別した抗生物質を含むプレートに広げた。播種してから25℃で7〜10日経過後、形質転換された細胞を示すコロニーが、1100psi及び1350psiの破裂ディスクからのプレート上にあるのが目視で確認され、距離は9cm及び12cmであった。コロニーを取り出し、2回目の選択のために選択的な寒天プレートにスポットとして乗せた。
【0361】
(B.G418耐性遺伝子を用いたProtothecaの形質転換)
Prototheca moriformis及びG418に感受性の他のPrototheca株を、以下に記載の方法を用いて形質転換することができる。G418は、アミノ配糖体抗生物質であり、80Sリボソームの機能を阻害し、それによって、タンパク質合成を阻害する。対応する耐性遺伝子は、リン酸化の間に機能し、G418を不活性化する。Prototheca株UTEX 1435、UTEX 1439、UTEX 1437を形質転換のために選択した。これら3種類全てのPrototheca株について、上に記載した方法を用いて遺伝子型を解析した。これら3種類全てのPrototheca株が、同一の23S rRNAゲノム配列(配列番号15)を有していた。
【0362】
全ての形質転換カセットを、EcoRI−SacIフラグメントとしてpUC19へとクローン化した。Sambrook and Russell、2001に従って、全てのベクターの構築に標準的な分子生物学技術を用いた。C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTRは、EcoRI−AscIフラグメントとして、プラスミドpHyg3からPCRによって得た(Berthold et al.、(2002)Protist:153(4)、pp 401−412)。Chlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRは、以下のプライマー対を用いて、UTEX株1803から選択したゲノムDNAからPCRによって得た。
【0363】
順方向:
5’TGACCTAGGTGATTAATTAACTCGAGGCAGCAGCAGCTCGGATAGTATCG3’(配列番号35)
逆方向:
5’CTACGAGCTCAAGCTTTCCATTTGTGTTCCCATCCCACTACTTCC3’(配列番号36)
Chlorella sorokinianaグルタミン酸脱水素酵素プロモーター/UTRは、以下のプライマー対を用いたPCRによって、UTEX株1230から単離したゲノムDNAのPCRによって得た。
【0364】
順方向:5’GATCAGAATTCCGCCTGCAACGCAAGGGCAGC3’(配列番号37)
逆方向:5’GCATACTAGTGGCGGGACGGAGAGAGGGCG3’(配列番号38)
コドンの最適化は、Prototheca moriformisに対する表1のコドンに基づいた。コドンが最適化されていないネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)カセットの配列を、AscI−XhoIフラグメントとして合成し、この配列は、Genbank寄託番号YP_788126の配列に基づいた。また、コドンが最適化されたnptIIカセットも、このGenbank寄託番号に基づいた。
【0365】
上述の3種類のPrototheca株を、上述の微粒子銃による方法を用いて形質転換した。簡単に述べると、2%グルコースを含有する液体培地中、Prototheca株が望ましい細胞密度(1×10細胞/mL〜5×10細胞/mL)になるまで、ヘテロ親和性に成長させた。細胞を収穫し、滅菌蒸留水で1回洗浄し、1×10細胞/mLになるように再び懸濁させた。次いで、細胞0.5mLを、非選択的な固体培地プレートに広げ、滅菌フード内で乾燥させた。この細胞を、PDS−1000/He Biolistic Particle Deliveryシステム(Bio−Rad)で撃った。細胞を25℃で24時間回復させた。回復したら、プレートを滅菌培地1mLで洗浄することによって細胞を取り除き、100μg/mLのG418を含有する新たなプレートに移した。細胞を滅菌フード内で乾燥させ、室温で3週間までの期間、コロニーをプレート上に形成させた。UTEX 1435、UTEX 1439、UTEX 1437のコロニーを取り出し、2回目の選択のために選択的な寒天プレートにスポットとして乗せた。
【0366】
上述の2回目の選択で生き残ったコロニーの一部分を少量の容積で培養し、標準的な分子生物学方法を用い、ゲノムDNA及びRNAを抽出した。形質転換されていないもの(WT)、形質転換体から抽出したゲノムDNA、及びプラスミドDNAについてサザンブロットを行った。各サンプルから得たDNAを、以下の処理をした後に、0.8%寒天ゲル上で操作した:消化していないもの(U)、AvrIIで消化されたもの(A)、NcoIで消化されたもの(N)、SacIで消化されたもの(S)。これらのゲルから得たDNAを、Nylon+膜(Amersham)でブロットした。これらの膜を、nptII遺伝子の完全なコード領域に対応するフラグメント(NeoRプローブ)でプローブ化した。図4は、形質転換で使用されるカセットのマップを示す。図5は、β−チューブリン::neo::nit(配列番号39)で形質転換された形質転換体(形質転換体1及び2)、又はグルタミン酸脱水素酵素:neo:nit(配列番号40)形質転換された形質転換体(形質転換体3)の3種類の形質転換体(全て、UTEX株1435で作成)(1、2、3)のサザンブロット分析の結果を示す。グルタミン酸脱水素酵素:neo:nitで形質転換されたプラスミドを対照として操作し、NcoI及びSacIの両方で切断した。AvrIIは、このプラスミドを切断しない。形質転換されていないUTEX株1435から単離したゲノムDNAは、NeoRプローブにハイブリダイゼーションしていないことが示されている。
【0367】
コドンが最適化されたグルタミン酸脱水素酵素:neo:nit(配列番号41)構築物及びコドンが再提起化されたβ−チューブリン::neo::nit(配列番号42)構築物を含むさらなる形質転換体を取り出し、サザンブロット分析によって分析した。予想されたように、SacIで消化したもののみが、形質転換DNAの線形化を示している。これらの形質転換事象は、形質転換プラスミドのオリゴマーの形態で起こる組み込み事象と一致している。形質転換プラスミドDNA内部で、制限酵素で消化したもののみが、これらの分子を、形質転換プラスミドの大きさまで小さくする。
【0368】
Prototheca株UTEX 1437及び1439をグルタミン酸脱水素酵素::neo::nitカセットで形質転換して生成した形質転換体のサザンブロット及び分析も行った。ブロットをNeoRプローブでプローブし、その結果は、UTEX1435形質転換体の結果と類似していた。この結果は、形質転換プラスミドのオリゴマー化及び組み込むによって特徴づけられる組み込み事象を示す。この種類の組み込み事象は、Dictyostelium discoideumではかなりよく起こることが知られている(例えば、Kuspa、A.及びLoomis、W.(1992)PNAS、89:8803−8807及びMorio et al.、(1995)J.Plant Res.108:111−114を参照)。
【0369】
形質転換プラスミドの発現をさらに確認するために、選択した形質転換体について、ノーザンブロット分析及びRT−PCR分析を行った。RNAの抽出は、製造業者の指示に従って、Sambrook and Russel、2001に公開されている方法に従って、Trizol Reagentを用いて行った。5種類の UTEX 1435形質転換体及び形質転換されていないUTEX 1435(対照レーン)から単離した全RNA(15μg)を、1%寒天−ホルムアルデヒドゲルで分離し、ナイロン膜にブロットした。このブロットを、形質転換体1及び3のトランス遺伝子配列に特異的な、neo−nonが最適化されたプローブにハイブリダイズした。2つの他の形質転換体のRNAは、neo−トランス遺伝子のコドンが最適化された形態を発現し、最適化されたneo遺伝子と最適化されていないneo遺伝子との配列相同性に基づいて予想されたように、顕著に低いハイブリダイゼーションシグナルを示した。
【0370】
形質転換されていないPrototheca株UTEX 1435と、2種類の代表的なUTEX 1435形質転換体とから、RNA(1μg)を抽出し、オリゴdTプライマー又は遺伝子特異的なプライマーを用いて逆転写した。その後、これらのcDNA(2個組)について、SYBR−Green qPCR化学を用い、以下のプライマー(nptII)を用いて、ABI Veriti ThermocyclerでqPCR分析を行った。
【0371】
順方向:5’GCCGCGACTGGCTGCTGCTGG3’(配列番号43)
逆方向:5’AGGTCCTCGCCGTCGGGCATG3’(配列番号44)
可能性のあるゲノムDNAの混入は、逆転写酵素陰性の対照サンプルによって除外された。この結果は、これらの株を形質転換するために用いたNeoR遺伝子は、形質転換体において積極的に転写されることを示した。
【0372】
(C.分泌した異種ショ糖インベルターゼを用いた、Protothecaの形質転換)
以下の全ての実験を、Ueno et al.、(2002)J Bioscience and Bioengineering 94(2):160−65に記載されている基本培地に基づき、液体培地/寒天プレートを用いて行い、米国特許第5,900,370号に記載される微量の無機成分と、1×DASビタミンカクテル(1000×溶液):トリシン:9g、チアミンHCL:0.67g、ビオチン:0.01g、シアノコバラミン(ビタミンB12):0.008g、パントテン酸カルシウム:0.02g及びp−アミノ安息香酸:0.04g)とを添加した。
【0373】
2種類のプラスミド構築物を、標準的な組み換えDNA技術を用いて組み立てた。酵母ショ糖インベルターゼ遺伝子(片方のコドンは最適化されており、もう片方のコドンは最適化されていない)suc2は、Chlorella reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTRの制御下にあり、Chlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを有していた。コドンが最適化されていない(Crβ−tub::NCO−suc2::CvNitRed)構築物、配列番号57と、コドンが最適化された(Crβ−tub::CO−suc2::CvNitRed)構築物、配列番号58に対する配列(5’UTR及び3’UTRの配列を含む)は、配列表に列挙されている。コドンの最適化は、Prototheca spについては、表1に基づいて行った。図6は、関連する制限クローニングサイトを有する2種類の構築物の模式図を示しており、矢印は、転写方向を示している。Neo R(表1を用いて、コドンが最適化されている)によって、選択を行った。
【0374】
DNA/金マイクロキャリアの調製:DNA/複数個の金マイクロキャリアの調製は、使用前に行い、マイクロキャリアに塗布されるまでは、氷の上で保存しておいた。プラスミドDNA(TEバッファー中)を、結合バッファー50μlに加えた。金ビーズの飽和は、金担体3mgにプラスミド15μgで達成された。結合バッファー及びDNAをボルテックスによって十分に混合した。DNA及び結合バッファーは、金担体分子にプラスミドを均一に結合させるために、金を加える前にあらかじめ混合しておかなければならない。S550d(Seashell Technologies、San Diego、CA)60μlを、DNA/結合バッファー混合物に加えた。50mg/mlの金原液の場合、60μlを加えると、最適な比率は15μg DNA/3mg 金担体となった。金担体/DNA混合物を、氷上で1分間インキュベートし、次いで、沈殿バッファー100μlを加えた。この混合物を氷上で再び1分間インキュベートし、次いで、短時間ボルテックスし、室温、10,000rpmで10秒間遠心分離処理し、金担体をペレット状にした。上澄みをピペットで注意深く棄て、ペレットを氷冷した100%エタノール500μlで洗浄した。金粒子は、10,000rpmで10秒間、再び遠心分離処理を行うことによって、再びペレット状にした。エタノールを除去し、この金の混合物に、氷冷したエタノール50μlを加えた。金をマクロキャリアに塗布する直前に、マイクロチップを用い、金/エタノールを、MISONIX超音波器で、レベル2に設定して1〜2秒間、短時間の超音波処理をし、再び懸濁させた。再び懸濁させたらすぐに、分散した金粒子10μlをマクロキャリアに移し、滅菌フード中で乾燥させた。
【0375】
2種類のPrototheca moriformis株(UTEX 1435及び1441)を、凍結保存したバイアルから取り出し、2%グルコースを含む液体培地中、従属栄養的に成長させた。それぞれの株を、密度が10細胞/mlになるまで成長させた。この種培養物を、新しい培地で密度が10細胞/mlになるまで希釈し、最終的な細胞密度が約10細胞/mlになるまで、12〜15時間成長させた。微細藻類を50mlの円錐管に等分し、3500rpmで10分間遠心分離処理した。この細胞を、新しい培地で洗浄し、3500rpmで10分間、再び遠心分離処理した。次いで、細胞を、新しい培地で、密度が1.25×10細胞/mlになるように再び懸濁させた。
【0376】
滅菌フード内で、上述のように調製した細胞0.4mlを取り出し、寒天プレート(選択剤を含まない)の中央に直接置いた。このプレートを水平の円運動でゆっくりと回し、直径3cm以下の場所に細胞を均一に分配した。滅菌フード中、細胞をプレート上で約30〜40分間乾燥させ、次いで、プレートとマクロキャリアとの距離が6cm離れた状態で、破裂ディスク圧1350psiで撃った。次いで、プレートに蓋をして、パラフィルムで包み、光量の低い状態で24時間インキュベートした。
【0377】
24時間回復させた後、細胞叢に滅菌培地1ml(グルコースを含まない)を加えた。この細胞を。、滅菌ループを用いて再び懸濁させ、この細胞叢に対し、水平の円運動を与え、滅菌ピペットを用い、再び懸濁させた細胞を集めた。次いで、細胞を、2%グルコース及び100μg/mlのG418を含む新しい寒天プレートに播種した。播種してから7〜12日間でコロニーがあらわれた。個々のコロニーを取り出し、2%グルコース及び100μg/ml G418を含む選択的な培地で成長させた。野生型(形質転換されていない)細胞及びトランスジェニック細胞を、トランス遺伝子がうまく導入されているか、組み込まれているか、発現するかについて分析した。
【0378】
形質転換されたPrototheca moriformis UTEX 1435及び1441、及びこれらの野生型(形質転換されていない)対応する細胞のゲノムDNAを、標準的な方法を用いて単離した。簡単に述べると、細胞を、標準的な卓上型エッペンドルフ遠心器(model 5418)で、14,000rpmで5分間遠心分離処理し、DNAを抽出する前に急速冷凍した。それぞれ細胞100〜200mgずつ(濡れた状態の重量)に、溶解バッファー(100mM Tris HCl、pH8.0、1% Lauryl Sarcosine、50mM NaCl、20mM EDTA、0.25M ショ糖、0.5mg/ml RNase A)200μLを加えることによって、細胞ペレットを溶解させ、30〜60秒間ボルテックスした。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)及びNaClを、それぞれ1%及び1M入れ、細胞抽出物を60〜65℃で10分間インキュベートした。その後、抽出物を14,000rpmで10分遠心分離処理することによって透明にし、得られた上澄みを、等容積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出した。次いで、サンプルを、14,000rpmで5分間遠心分離処理し、水相を除去した。0.7容積のイソプロパノールを用い、DNAを沈殿させた。14,000rpmで10分間遠心分離処理することによって、DNAをペレット状にし、80%エタノールで2回洗浄し、エタノールで1回洗浄した。乾燥させた後、DNAを、10mM Tris HCl、pH 8.0に再び懸濁させ、DNAの濃度をPicoGreen蛍光定量アッセイ(Molecular
Probes)で決定した。
【0379】
形質転換されたPrototheca moriformis UTEX 1435及び1441、及びこれらの野生型(形質転換されていない)対応する細胞に由来するRNAを標準的な方法を用いて単離した。簡単に述べると、細胞を、標準的な卓上型エッペンドルフ遠心器(model 5418)で、14,000rpmで5分間遠心分離処理し、RNAを抽出する前に急速冷凍した。細胞100mg(濡れた状態の重量)ごとにTrizol試薬(Sigma)1mLを加え、1〜2分ボルテックスすることによって細胞ペレットを溶解させた。サンプルを室温で5分間インキュベートし、次いで、Trizol試薬1mLあたり、クロロホルム200μLで調節した。徹底した振とうの後、細胞を室温で15分間インキュベートし、次いで、冷蔵庫で冷やしておいた卓上型微小遠心分離器で、14,000rpmで15分間遠心分離処理した。上側の水相に分配されたRNAを除去し、イソプロパノール(Trizol試薬1mlあたり、500μL)を加え、沈殿させた。10分間遠心分離処理することによってRNAを集め、得られたペレットを80%エタノール1mlで2回洗浄し、乾燥させ、RNAseを含まない水に再び懸濁させた。RNAの濃度は、RiboGreen蛍光定量アッセイ(Molecular Probes)によって概算された。
【0380】
G418抗生物質耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子及び酵母インベルターゼの発現を、逆転写定量PCR分析(RT−qPCR)を用い、形質転換されていないPrototheca moriformis UTEX 1435及び1441、形質転換体T98(UTEX 1435形質転換体)及びT97(UTEX 1441形質転換体)でアッセイした。全RNA20ng(上述のように単離した)について、iScript SYBR Green RT−PCRキット(BioRad Laboratories)及びネオマイシン耐性遺伝子を標的とするプライマー対(順方向のプライマー5’CCGCCGTGCTGGACGTGGTG3’及び逆方向のプライマー5’GGTGGCGGGGTCCAGGGTGT3’;それぞれ、配列番号65及び66)を用い、suc2インベルターゼ転写物(順方向のプライマー5’CGGCCGGCGGCTCCTTCAAC3’、逆方向のプライマー5’GGCGCTCCCGTAGGTCGGGT3’;それぞれ、配列番号67及び68)を用い、1工程のRT−qPCR分析を行った。内在するβ−チューブリン転写物は、PCR増幅の内部の陽性対照として用い、相対的な転写量を概算するための正規化参照としても用いた。
【0381】
コドンが最適化された構築物及びコドンが最適化されていない構築物を、両方とも、上述のように、UTEX 1435及び1441 Prototheca moriformis細胞内で形質転換した。最初に、両構築物を用いて形質転換体を得て、トランス遺伝子の存在をサザンブロット分析によって確認し、次いで、RTPCRによって確認し、トランス遺伝子に由来するDNA及びmRNAが存在することを確認した。サザンブロット分析の場合、上述のように単離したゲノムDNAを、0.7%寒天ゲル上で、1×TAEバッファーを用いて電気泳動させた。Sambrook et al.(Molecular Cloning;A Laboratory Manual、第2版、Cold
Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載されているようにゲルを処理した。Sambrook et alに記載されているようにランダムプライミング及びハイブリダイゼーションを実施して、プローブを調製した。コドンが最適化された構築物及びコドンが最適化されていない構築物から得た形質転換体は、インベルターゼカセットが存在していることを示しており、一方、形質転換されていない対照は、陰性であった。コドンが最適化された構築物及びコドンが最適化されていない構築物をを用い、インベルターゼmRNAを形質転換体中でも検出した。
【0382】
形質転換体が、活性なインベルターゼタンパク質を発現していたことを確認するために、上述の形質転換体をショ糖プレートに播種した。コドンが最適化されていないカセットを含む形質転換体は、ショ糖を含有するプレートでは成長することができず、このことは、SUC2タンパク質をコードする遺伝子及びmRNAが存在していたが、そのタンパク質は、(1)翻訳されなかったか、又は(2)翻訳されても、ショ糖を唯一の炭素源として用いて成長するのに十分なレベルまでは蓄積しなかったことを示している。コドンが最適化されたカセットを含む形質転換体は、ショ糖を含有するプレートで成長した。これらの形質転換体によって発現するインベルターゼの量を評価するために、2種類のクローン(T98及びT97)に対し、2%ショ糖を唯一の炭素源として含む液体培地中で48時間成長させた後、固体培地から掻き取った全細胞のインベルターゼアッセイを行ない、培養物の上澄みを直接サンプリングし、この上澄みに含まれる糖を定量した。
【0383】
インベルターゼアッセイの場合、細胞(T98及びT97)を、2%ショ糖を含有するプレートで成長させ、プレートから掻き取り、インベルターゼ活性についてアッセイした。掻き取った細胞10μlを、50mM NaOAc pH 5.1溶液40μlと混合した。0.5Mショ糖12.5μlを細胞混合物に加え、37℃で10〜30分間インキュベートした。反応を止めるために、0.2M KHPO 75μlを加えた。放出されたグルコースをアッセイするために、Sigma(GAGO−20アッセイキット)から再構築した試薬(グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ + o−Dianisidine)500μlを、それぞれの管に加え、37℃で30分間インキュベートした。グルコースの標準曲線も、このときに作成した(範囲:グルコース25μg〜0.3μg)。インキュベートした後、6N HCl 500μlを加えて反応を止め、発色させた。このサンプルを、540nmで読み取った。放出されたグルコースの量は、グルコース標準曲線から、式y=mx+cを用いて算出した。式中、yは、540nmでの読みであり、xは、グルコースのμg数である。グルコースの重さをグルコースのモル数に変換し、加水分解されたショ糖のモル数と、生成したグルコースのモル数との当モル関係が与えられれば、このデータは、単位時間あたりに加水分解したショ糖をnmolとしてあらわしたものであった。このアッセイから、T98クローンもT97クローンも、両方ともショ糖を加水分解する能力があることが示され、このことは、機能的なショ糖インベルターゼが、細胞によって産生され、分泌されたことを示している。
【0384】
藻を48時間成長させた後の液体培地について、糖を分析する場合、T97細胞及びT98細胞を、2%ショ糖を含有する培地で48時間成長させ、糖を分析するために、培地を処理した。それぞれの形質転換体(及び、陰性対照である、形質転換されていない細胞)から得られた培養ブロスを、14,000rpmで5分間遠心分離処理した。得られた上澄みを取り出し、HPLC/ELSD(蒸発光散乱検出)を行った。各サンプルの糖の量を、外部標準及び線形回帰分析を用いて決定した。形質転換体の培地中のショ糖濃度は、非常に低かった(1.2g/L未満、ほとんどの場合、0g/L)。陰性対照では、ショ糖の濃度は高いままであり、48時間成長させた後に、約19g/Lであった。
【0385】
これらの結果は、インベルターゼ活性の結果と一致しており、これらの結果をあわせて、コドンが最適化された形質転換体T97及びT98は、活性なショ糖インベルターゼを分泌し、これにより、いずれも培地中の唯一の炭素源であるショ糖を利用することができない(1)コドンが最適化されていない形質転換体、(2)形質転換されていない野生型微細藻類と比較して、ショ糖が唯一の炭素源であっても微細藻類が利用することが可能となることを示す。
【0386】
機能的なショ糖インベルターゼ(SUC2)トランス遺伝子を発現し、分泌するPrototheca moriformis株T98及びT97について、ショ糖を唯一の炭素源として用い、成長及び脂質産生をアッセイした。
【0387】
野生型(形質転換されていない)株、T98株及びT97株を、4%グルコース又は4%ショ糖を唯一の炭素源として含有する成長培地(上述のもの)中、従属栄養条件で約6日間成長させた。成長は、A750での光学密度の読みによって決定して、4種類全てのサンプルを24時間ごとに測定し、培養物の細胞乾燥重量及び脂質プロフィールを、6日間成長させた後に決定した。グルコース条件及びショ糖条件の両方で成長させたトランスジェニック株の光学密度の読みは、グルコース条件で成長させた野生型の株と匹敵する値であった。これらの結果から、トランスジェニック株は、唯一の炭素源としてグルコース又はショ糖のいずれを用いても、グルコース条件での野生型株と等しい速度で成長することができるが示されている。形質転換されていない野生型の株は、ショ糖のみの条件では成長しなかった。
【0388】
グルコースを用いて成長させた野生型株と、ショ糖を用いて成長させたT98株のバイオマスについて、脂質プロフィールを分析した。乾燥させたバイオマス(凍結乾燥した)から、Acid Hydrolysis System(Ankom Technology、NY)を用い、製造業者の指示に従って、脂質サンプルを調製した。脂質プロフィールの決定は、実施例4に記載されるように行った。唯一の炭素源としてグルコースを用いて成長させた、形質転換されていないPrototheca moriformis UTEX 1435株、唯一の炭素源としてショ糖を用いて成長させた、2コロニーのT98株(ショ糖インベルターゼトランス遺伝子で形質転換されたUTEX 1435)の脂質プロフィールを、表13に開示する(野生型UTEX 1435及びT98のクローン8及びクローン11。C:19:0の脂質を内部較正対照として用いた。
【0389】
【表13】
【0390】
野生型Prototheca moriformis UTEX 1435から抽出した油(溶媒抽出によるか、又は連続圧搾機を用いる(上の実施例44の方法を参照))について、カロチノイド、クロロフィル、トコフェロール、他のステロール及びトコトリエノールを分析した。結果を以下の表14にまとめる。
【0391】
【表14】
【0392】
G418(又は別の抗生物質)の代わりにsuc2トランス遺伝子構築物を含むクローンの選択因子として、唯一の炭素源としてショ糖を用いる能力を、陽性suc2遺伝子形質転換体を用いて評価した。陽性形質転換体の部分集合を、24回増殖する間は抗生物質を選択せず、唯一の炭素源としてショ糖を含むプレートで成長させた。次いで、このクローンを、唯一の炭素源としてグルコースを含み、G418を含むプレートを用いてチャレンジ試験した。一部のクローンは、グルコース+G418条件で成長せず、このことは、トランス遺伝子が発現していないことを示す。唯一の炭素源としてショ糖を含み、G418を含まないプレートを用い、プレートの半分にsuc2トランス遺伝子を発現するクローンを線状に塗り、プレートのあと半分に野生型Prototheca moriformisを線状に塗り、さらなる実験を行った。野生型でも、トランス遺伝子を含有するPrototheca moriformis細胞でも、成長がみられた。野生型Prototheca moriformisは、ショ糖を用いて成長する能力は示されていないため、この結果は、抗生物質への耐性とは異なり、ショ糖/インベルターゼ選択の使用は、細胞自律的ではないことを示している。形質転換体が、野生型の成長を支えるのに十分なショ糖インベルターゼをプレート/培地に分泌し、ショ糖が、フルクトース及びグルコースへと加水分解されたためであるという可能性が非常に高い。
【0393】
(実施例4:外来のTE遺伝子を用いた組み換えPrototheca)
上述のように、Prototheca株を、外来遺伝子で形質転換することができる。Prototheca moriformis(UTEX 1435)を、上述の方法を用いて、Umbellularia californica C12チオエステラーゼ遺伝子又はCinnamomum camphora C14チオエステラーゼ遺伝子(表1に従って、両方ともコドンが最適化されているもの)のいずれかを用いて形質転換した。それぞれの形質転換構築物は、チオエステラーゼトランス遺伝子を発現させるような、Chlorella sorokinianaグルタミン酸脱水素酵素プロモーター/5’UTR領域(配列番号69)を含んでいた。Umbellularia californica C12チオエステラーゼ(配列番号70)又はCinnamomum camphora C14チオエステラーゼ(配列番号71)のチオエステラーゼトランス遺伝子コード領域、それぞれ、天然の推定プラスチド標的配列を有している。チオエステラーゼコード配列の直後に、c−末端 3x−FLAGタグのコード配列(配列番号72)があり、次いで、Chlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTR(配列番号73)が続いている。Prototheca moriformis形質転換で用いたチオエステラーゼ構築物の図を図9に示す。
【0394】
DNA、金マイクロキャリア、Prototheca moriformis(UTEX 1435)細胞の調製を、上の実施例3に記載した方法を用いて行った。金マイクロキャリア−DNA混合物を用いて微細藻類を撃ち、2%グルコースと、100μg/mlのG418とを含む選択プレートに播種した。コロニーを7〜12日間成長させ、コロニーをそれぞれの形質転換プレートから取り出し、DNA構築物の組み込みを、サザンブロットアッセイを用いてスクリーニングし、チオエステラーゼ構築物の発現を、RT−PCRを用いてスクリーニングした。
【0395】
C12チオエステラーゼ形質転換プレート及びC14チオエステラーゼ形質転換プレートの両方から陽性クローンを取り出し、構築物の組み込みを、サザンブロットアッセイを用いてスクリーニングした。サザンブロットアッセイは、配列番号70及び配列番号71の配列に基づき最適化されたcプローブを用い、標準的な方法(上の実施例3に記載されている方法)を用いて行った。形質転換プラスミドDNAを陽性対照として実施した。構築物の取り込みについてポジティブであったクローンの中で、C12チオエステラーゼ及びC14チオエステラーゼの発現について逆転写定量PCR(RT−qPCR)分析をするために一部を選択した。
【0396】
上の実施例3に記載した方法を用いてRNAの単離を行い、陽性クローンについて、各クローンから全RNA20ngを用い、以下に記載したプライマー対と、iScript
SYBR Green RT−PCRキット(Bio−Rad Laboratories)を製造業者のプロトコルに従って用い、RT−qPCRを行った。野生型(形質転換されていない)Prototheca moriformisの全RNAは、陰性対照として含まれていた。mRNAの発現は、陰性対照と比較して、相対的に何倍の発現であるか(RFE)であらわす。C12チオエステラーゼ形質転換RT−qPCRスクリーニングで使用したプライマーは、以下のとおりであった。
【0397】
U.californica C12チオエステラーゼPCRプライマー
順方向:5’CTGGGCGACGGCTTCGGCAC3’(配列番号74)
逆方向:5’AAGTCGCGGCGCATGCCGTT3’(配列番号75)
C14チオエステラーゼ形質転換RT−qPCRスクリーニングで使用したプライマーは、以下のとおりであった。
【0398】
Cinnamomum camphora C14チオエステラーゼPCRプライマー
順方向:5’TACCCCGCCTGGGGCGACAC3’(配列番号76)
逆方向:5’CTTGCTCAGGCGGCGGGTGC3’(配列番号77)
陽性クローンにおけるC12チオエステラーゼ発現のRT−qPCR結果から、陰性対照と比較して、約40倍から2000倍を超えて発現量が増加したという、RFEの増加が示された。同様の結果が、陽性クローンにおけるC14チオエステラーゼ発現でもみられ、陰性対照と比較して、約60倍から1200倍を超えて発現量が増加したという、RFEの増加がみられた。
【0399】
それぞれの形質転換から得た陽性クローンの部分集合(サザンブロット及びRT−qPCRアッセイでスクリーニングした場合)を集め、窒素を枯渇させた状態で成長させ、総脂質の産生及びプロフィールを分析した。脂質サンプルは、各クローンから得たバイオマスを乾燥させたものから調製した。それぞれのトランスジェニッククローンの乾燥バイオマス20〜40mgを、3% HSO MeOH溶液2mLに再び懸濁させ、適切な量の内部標準(C19:0)を含むトルエン200ulを加えた。この混合物を軽く超音波処理してバイオマスを分散させ、次いで、65〜70℃で2時間加熱した。ヘプタン2mLを加え、脂肪酸メチルエステルを抽出した後、6% KCO(aq)2mLを加え、酸を中和した。混合物を激しく撹拌し、標準的なFAME GC/FID(脂肪酸メチルエステルガスクロマトグラフィー炎イオン化検出)方法を用いたクロマトグラフィー分析のために、上側の層の一部を、NaSO(無水)の入ったバイアルに移した。陽性クローンの脂質プロフィール(面積%としてあらわされる)を野生型陰性対照と比較した結果を、以下の表15及び表16にまとめている。表15に示されているように、C12形質転換体におけるC12産生の増加は、約5倍の増加(クローンC12−5)から、11倍を超える増加(クローンC12−1)にまでわたっていた。C14形質転換体におけるC14産生の増加は、約1.5倍の増加から、約2.5倍の増加にまでわたっていた。
【0400】
【表15】
【0401】
【表16】
【0402】
上述の実験は、Prototheca moriformis(UTEX 1435)が、2種類の異なるチオエステラーゼ(C12及びC14)のトランス遺伝子構築物でうまく形質転換されており、トランス遺伝子がうまく発現しているというだけではなく、発現したタンパク質が、プラスチドを正しく標的としており、形質転換の結果、機能的な効果(脂質プロフィールの予想通りの変化)が得られていることを示している。天然のプラスチド標的配列(配列番号78)を有する、(表1に従がって) コドンが最適化されたCuphea hookeriana C8〜10チオエステラーゼコード領域を含む発現構築物を用いて、同じ形質転換実験を行なったが、脂質プロフィールは変わらなかった。C8〜10トランス遺伝子をPrototheca moriformis(UTEX
1435)に導入するのは成功し、サザンブロット分析によって確認されたが、野生型の株と比較して、この形質転換体で、C8又はC10の脂肪酸産生量に変化はないことが検出された。
【0403】
(実施例5:藻のプラスチド標的配列を有する外来の植物TEを用いた、Prototheca moriformis株の生成)
藻の葉緑体/プラスチド標的配列を使用すると、中鎖(C8〜C14)チオエステラーゼの発現量が高まり、その後に、Prototheca moriformis(UTEX 1435)において中鎖脂質の産生量が高まるかどうかを観察するために、数種類の藻の推定プラスチド標的配列をChlorella protothecoides及びPrototheca moriformisからクローン化した。Cuphea hookeriana C8〜10チオエステラーゼ、Umbellularia californica C12チオエステラーゼ、Cinnamomum camphora C14チオエステラーゼに由来するチオエステラーゼ構築物は、Chlorella sorokiniana グルタミン酸脱水素酵素プロモーター/5’UTR及びChlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを用いて作られた。チオエステラーゼコード配列を、天然のプラスチド標的配列を除去し、この天然の配列を、Chlorella protothecoidesゲノム及びPrototheca moriformisゲノムに由来するプラスチド標的配列と置き換えることによって改変した。チオエステラーゼ発現構築物及びこれらの対応する配列の識別番号を以下に列挙している。また、それぞれの形質転換プラスミドは、上の実施例3に記載したものと同一のNeo制限構築物を含んでいた。さらに、別の藻から誘導されるプロモーター、Chlamydomonas reinhardtii β−チューブリンプロモーターも、チオエステラーゼ構築物と組み合わせて試験した。「天然の」プラスチド標的配列は、高等植物のチオエステラーゼプラスチド標的配列を指す。これらの実験で用いる構築物のまとめを以下に記載している。
【0404】
【化4】
【0405】
【化5】
【0406】
それぞれの構築物を、Prototheca moriformis(UTEX 1435)内で形質転換し、上の実施例4に記載されている方法を用い、G418を用いて選択を行った。それぞれの形質転換から、数種類の陽性クローンを取り出し、チオエステラーゼトランス遺伝子の存在についてサザンブロット分析を用いてスクリーニングした。チオエステラーゼトランス遺伝子の発現は、RT−PCRを用いて確認した。それぞれの形質転換から得た陽性クローンの部分集合(サザンブロット及びRT−PCRアッセイでスクリーニングした場合)を選択し、脂質プロフィール分析のために成長させた。脂質サンプルは、各クローンから得たバイオマスサンプルを乾燥させたものから調製し、脂質プロフィール分析は、実施例4に記載されている酸加水分解方法を用いて行った。チオエステラーゼトランス遺伝子に対応する脂肪酸の面積百分率の変化を、野生型の値、及び、天然プラスチド標的配列を有するチオエステラーゼで形質転換されたクローンと比較した。
【0407】
実施例4に記載しているように、天然のプラスチド標的配列を有するCuphea hookeriana C8〜10チオエステラーゼ構築物で形質転換されたクローンは、C8及びC10の脂肪酸の量が、野生型と同じであった。藻のプラスチド標的配列を有するCuphea hookeriana C8〜10チオエステラーゼ構築物(構築物1〜3)で形質転換されたクローンは、構築物3の場合、C10の脂肪酸が10倍よりもっと多くなり、構築物1及び2の場合、C10の脂肪酸の増加率は40倍を超えた(野生型と比較した場合)。天然のプラスチド標的配列を有するUmbellularia californica C12チオエステラーゼ構築物で形質転換されたクローンは、野生型と比較した場合、C12脂肪酸において、6〜8倍と中程度の増加であった。藻のプラスチド標的配列を有するUmbellularia californica C12チオエステラーゼ構築物(構築物4〜7)で形質転換されたクローンは、構築物4の場合、C12脂肪酸において、増加率が80倍を超え、構築物6の場合、C12脂肪酸において、増加率は約20倍であり、構築物7の場合、C12脂肪酸において、増加率は約10倍であり、構築物5の場合、C12脂肪酸において、増加率は約3倍であった(全て野生型と比較した場合)。天然プラスチド標的配列又は構築物8(Chlorella protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼプラスチド標的配列を有する)のいずれかを有する、Cinnamomum camphora C14チオエステラーゼで形質転換されたクローンは、野生型と比較した場合、C14脂肪酸の量が約2〜3倍増加した。概して、藻のプラスチド標的配列チオエステラーゼ構築物で形質転換されたクローンは、天然の高等植物の標的配列を用いた場合よりも、対応する鎖長の脂肪酸の量が、何倍も大きくなっていた。
【0408】
(A.Clamydomonas reinhartii β−チューブリンプロモーター)
さらなる異種チオエステラーゼ発現構築物を、C.sorokinanaグルタミン酸脱水素酵素プロモーターの代わりに、Chlamydomonas reinhardtii β−チューブリンプロモーターを用いて調製した。構築物のエレメント及び発現構築物の配列は、上に列挙している。それぞれの構築物を、上述の方法を用いて、Prototheca moriformis UTEX 1435宿主細胞内で形質転換した。それぞれの構築物の成功及び生産性を評価するために、それぞれの構築物の陽性クローンの部分集合から、脂質プロフィールを作成した。脂質プロフィールは、野生型の宿主細胞に対し、脂肪酸の量を比較したものである(面積%であらわされる)。「平均」の列は、陽性クローンの部分集合の数平均をあらわす。「サンプル」の列は、スクリーニングして一番良かった陽性クローンをあらわしている(一番良いとは、対応する鎖長の脂肪酸産生の面積%が最も変化したサンプルであると定義される)。「低−高」の列は、スクリーニングしたクローンから得た脂肪酸の最も低い面積%と、最も高い面積%をあらわしたものである。構築物9〜23の脂質プロフィールの結果を以下にまとめている。
【0409】
【化6】
【0410】
【化7】
【0411】
【化8】
【0412】
【化9】
【0413】
【化10】
【0414】
【化11】
【0415】
構築物9〜13は、Cuphea hookeriana C8〜10チオエステラーゼ構築物を含む発現ベクターであった。上にまとめたデータからわかるように、最もよい結果は、構築物11を用いたときであり、サンプルのC8脂肪酸は、1.57面積%であり(これに対し、野生型では0)、C10の脂肪酸は、6.76面積%である(これに対し、野生型では0)。また、C12脂肪酸において、中程度の増加もみられた(約2〜5倍の増加)。C.sorokinanaグルタミン酸脱水素酵素プロモーターの制御下にある場合、天然プラスチド標的配列の産生量は変化しなかったが、同じ発現構築物が、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーターによって動かされると、宿主細胞において、C8〜C10脂肪酸の産生量が顕著に変化した。このことは、Prototheca種において、チオエステラーゼを異種発現するという特質のさらなる証拠である。C.reinhardtii β−チューブリンプロモーターC8〜10チオエステラーゼ構築物を含む全てのクローンは、C.sorokinana グルタミン酸脱水素酵素プロモーターC8〜10チオエステラーゼ構築物を含むクローンよりも、C8〜10脂肪酸の量が大きく増えた。構築物13の脂質プロフィールのデータは得られていないため、上には含めていない。
【0416】
構築物14〜18は、Umbellularia californica C12チオエステラーゼ構築物を含む発現ベクターであった。上にまとめたデータからわかるように、最もよい結果は、構築物15(P.moriformisイソペンテニルジホスフェートシンターゼのプラスチド標的配列)及び17(C.protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼプラスチド標的配列)を用いたときであった。C12脂肪酸産生量が最も大きく変化したのは、構築物17を用いたときであり、C12脂肪酸の量は、野生型が0.04面積%であるのに対し、14.11面積%まで増えた。また、C14脂肪酸の量でも、中程度の変化(約2倍)がみられた。C.sorokinanaグルタミン酸脱水素酵素プロモーターを有する同じ構築物と比較した場合、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーターを有する場合も同じ傾向があり、C.protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼ及びP.moriformisイソペンテニルジホスフェートシンターゼのプラスチド標的配列は、両方のプロモーターを有する場合に、C12脂肪酸の量が最も大きく変化した。
【0417】
構築物19〜23は、Cinnamomum camphora C14チオエステラーゼ構築物を含む発現ベクターであった。上にまとめたデータからわかるように、最もよい結果は、構築物22及び構築物23を用いたときであった。C14脂肪酸産生量が最も大きく変化したのは、構築物22を用いたときであり、C14脂肪酸の量は、野生型が1.40%であるのに対し、17.35面積%まで増えた(C140及びC141の値を合わせた場合)。また、C12脂肪酸も変化が見られた(5〜60倍)。C.sorokinanaグルタミン酸脱水素酵素プロモーターを有する同じ構築物と比較した場合、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーターを有する場合と同じ傾向があり、C.protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼ及びP.moriformisステアロイルACPデサチュラーゼのプラスチド標的配列は、両方のプロモーターを有する場合に、C14脂肪酸の量が最も大きく変化した。藻のチオエステラーゼ発現構築物と一致して、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター構築物は、C8〜14脂肪酸の量において、C.sorokinianaグルタミン酸脱水素酵素よりも産生量が大きく変化した。
【0418】
構築物22に由来する2種類の陽性クローンを選択し、高い選択圧を与えた状態で成長させた(50mg/L G418)。6日間培養した後に、クローンを採集し、それらの脂質プロフィールを、上述の方法を用いて決定した。脂質プロフィールのデータを以下にまとめており、面積%であらわしている。
【0419】
【化12】
【0420】
両クローンは、一定の高い選択圧を与えた状態で、C14脂肪酸及びC12脂肪酸の産生量が、上の構築物22を用いた場合の約2倍まで増加した。これらのクローンは、野生型細胞では、C12〜C14脂肪酸は1.5面積%であったのに対し、C12〜C14脂肪酸の生産量は30面積%を超えていた。
【0421】
(実施例6:Cuphea palustris及びUlmus americancaのチオエステラーゼをPrototheca内で異種発現)
Prototheca種における上述のチオエステラーゼの異種発現は成功したことを受け、Cuphea palustris及びUlmus americanaに由来する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードする、(表1に従って)コドンが最適化された配列を含む発現カセットを構築し、以下に記載する。
【0422】
【化13】
【0423】
Ulmus americana(コドンが最適化されたコード配列)を、発現カセットに挿入することができる。Ulmus americanaチオエステラーゼのための天然プラスチド標的配列を含まない、コドンが最適化されたコード配列を配列番号108として列挙しており、任意の望ましいプラスチド標的配列及び発現エレメント(すなわち、プロモーター/5’UTR及び3’UTR)を融合させることができる。
【0424】
これらの発現カセットを、上述の方法を用い、Prototheca種内で形質転換することができる。陽性クローンを、発現構築物に、抗生物質に耐性の遺伝子(例えば、neoR)を含む状態でスクリーニングでき、G418を含有するプレート/培地でスクリーニングすることができる。陽性クローンを、異種チオエステラーゼコード領域に特異的なプローブを用いサザンブロットアッセイを用いて確認することができ、構築物の発現も、RT−PCRと、異種チオエステラーゼのコード領域に特異的なプライマーとを用いて確認することができる。陽性クローンの二次的確認は、宿主細胞の脂質プロフィールにおいて、脂肪酸量の変化を調べることによって行うことができる。上の実施例からわかるように、Prototheca種におけるチオエステラーゼの異種発現は、特定のチオエステラーゼに特徴的なものであり得る。プロモーターエレメント及びプラスチド標的配列(及び他の発現制御エレメント)を、チオエステラーゼの発現(及び、その後に続く対応する脂肪酸の増加)が望ましいレベルになるまで置き換えてもよい。
【0425】
(実施例7:二重形質転換体−2種類の異種タンパク質の同時発現)
微細藻類のPrototheca moriformis株(UTEX 1435)を、上に開示した方法を用い、S.cerevisiaeインベルターゼの分泌形態をコードする酵母ショ糖インベルターゼsuc2遺伝子を含む発現構築物を用いて形質転換した。この遺伝子の発現の成功、及びペリプラズムに対する標的化によって、宿主細胞は、唯一の炭素源としてショ糖を用いて(利用して)従属栄養条件で成長することができるようになった(上の実施例3に示されるとおり)。発現される第2の遺伝子群は、アシルキャリアータンパク質からアシル部分が開裂することに関与するチオエステラーゼである。特定的には、Cuphea hookerianaに由来するチオエステラーゼ(C8〜10選択性のチオエステラーゼ)、Umbellularia californicaに由来するチオエステラーゼ(C12選択性のチオエステラーゼ)、Cinnamomum
camphoraに由来するチオエステラーゼ(C14選択性のチオエステラーゼ)である。これらのチオエステラーゼ発現カセットは、Prototheca moriformis又はChlorella protothecoidesのいずれかに由来する、N末端の微細藻類のプラスチド標的配列との融合物としてクローン化され、これらは、(上の実施例において)天然の高等植物のプラスチド標的配列よりも最適であることが示されている。チオエステラーゼ遺伝子の発現の成功、及びプラスチドに対する標的化によって、宿主細胞内の脂肪酸プロフィールが無視できない程度に変化した。これらのプロフィールの変化は、それぞれのチオエステラーゼの酵素特異性又は優先性と一致している。Prototheca moriformis(UTEX 1435)内でアセンブリされ、形質転換された二重発現構築物のまとめを以下に述べる。それぞれの構築物は、C.reinhardtii β−チューブリン5’UTR/プロモーターの制御下で、酵母のsuc2遺伝子を含んでおり、C.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRと、C.sorokinanaグルタミン酸脱水素酵素5’UTRの制御下で、微細藻類のプラスチド標的配列と、天然配列とが置き換わった高級植物チオエステラーゼを含んでおり、C.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを含んでいた。組み立てられ、Prototheca moriformis(UTEX 1435)内に形質転換された構築物のチオエステラーゼ部分について、まとめを以下に述べる。suc2遺伝子及びチオエステラーゼ遺伝子を用いた完全な二重発現カセットは、配列識別表に列挙される。
【0426】
【化14】
【0427】
実施例5に記載したチオエステラーゼカセットを有する同様の二重発現構築物(例えば、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTRのような異なるプロモーター制御下にある)も、標準的な分子生物学法及び本明細書に記載されている方法を用いて作成することができる。
【0428】
それぞれの発現構築物を含む陽性クローンを、ショ糖が唯一の炭素源である場合に、ショ糖を含有するプレートで成長することができるという能力を選択因子として用いてスクリーニングした。それぞれの構築物の形質転換から得た陽性クローンの部分集合を選択し、発現構築物の存在を、サザンブロットアッセイを用いて確認した。また、酵母ショ糖インベルターゼの機能を、ショ糖加水分解アッセイを用いて確認した。陽性クローンを選択し、唯一の炭素源として、ショ糖を初期濃度40g/Lで含む培地中で成長させた。唯一の炭素源としてグルコースを同じ初期濃度40g/Lで含む培地中で成長させた野生型Prototheca moriformis(UTEX 1435)の陰性対照も含めた。ショ糖の利用を、YSI 2700 Biochemistry Analyzerにショ糖に特異的な膜を取り付け、培地中のショ糖の量を測定することによって、一連の実験で測定した。6日間培養した後に、培養物を採集し、上に記載したのと同じ方法を用いて、脂質プロフィールを処理した。脂質プロフィールの結果を表17にまとめており、面積%で示している。
【0429】
【表17】
【0430】
ショ糖利用アッセイのために選択した全ての陽性クローンは、培地中のショ糖を加水分解することができており、6日間培養した時点で、培地中のショ糖濃度は測定することができなかった。このデータは、陽性クローンの選択ツールとしてショ糖をうまく用いることができることに加え、外来の酵母suc2ショ糖インベルターゼ遺伝子が正しく標的となっており、形質転換体中で発現していることを示している。上の表17に示されているように、構築物24(C8〜10チオエステラーゼ)を発現するクローンは、C10脂肪酸を測定可能なレベルで増やしていた(8倍程度増加)。同様に、構築物25(C12チオエステラーゼ)及び構築物26(C14チオエステラーゼ)を発現するクローンは、対応する中鎖脂肪酸を測定可能なレベルで増やしていた。これらを合わせ、このデータは、Prototheca moriformisの2種の組み換えタンパク質(例えば、ショ糖インベルターゼ及び脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ)の同時発現がうまくいっていることを示しており、両方とも、宿主有機体の表現型の有用な定量的な変化を与えている。
【0431】
(実施例8:C14チオエステラーゼ形質転換体におけるC10〜C14脂肪酸産生に対する、グリセロールの影響)
全てのチオエステラーゼ形質転換から得たクローンを選択し、さらに評価した。構築物8(Cinnamomum camphora C14 TE)を発現するクローンの1つを、グルコースのみ、フルクトースのみ、グリセロールのみといった異なる炭素源を用いて従属栄養的に成長させた。グルコースのみの条件では、フルクトースのみの条件や、グリセロールのみの条件と比較して、細胞の成長度が大きく、総脂質産生量も大きかった。しかし、グリセロールのみの条件で産生したC12〜14脂肪酸の割合は、グルコースのみの条件で得られた割合よりも2倍多かった。
【0432】
(実施例9:Protoheca moriformis内でのArabidopsis thalianaインベルターゼの発現)
微細藻類のPrototheca moriformis株(UTEX 1435)を、上述の方法を用い、Arabidopsis thalianaに由来するインベルターゼと関連する、コドンが(表1に従って)最適化された細胞壁を含む発現構築物を用いて形質転換した。Arabidoposisインベルターゼ配列は、効果的にERを標的とし、最終的にはペリプラズムを標的とするように、酵母インベルターゼ(SUC2 タンパク質)に由来するN末端の39アミノ酸を含むように改変された。検出しやすくするために、組み換えタンパク質のC末端に、Flagエピトープを付け加えた。トランス遺伝子を、Chlorella sorokiniannaグルタミン酸脱水素酵素プロモーター/5’UTR領域及びChlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTR領域を用い、発現ベクター内でクローン化した。このトランス遺伝子カセットのDNA配列を配列番号89として列挙しており、翻訳されたアミノ酸配列を、配列番号90として列挙している。ショ糖を含有する培地/プレートを用い、陽性クローンをスクリーニングし、選択した。陽性クローンの部分集合について、トランス遺伝子の存在、インベルターゼの発現を、Flagタグかしたインベルターゼのサザンブロット分析及びウエスタンブロット分析によって確認した。これらのスクリーニングから、脂質の生産性及びショ糖利用のアッセイのために、10種類の陽性クローンが選ばれた。唯一の炭素源としてショ糖を含む培地で、10種のクローン全てを成長させ、陽性対照であるsuc2インベルターゼ形質転換体も含めた。陰性対照である野生型 Prototheca moriformisも成長させたが、グルコースを含有する培地で行った。6日後、細胞を採集し、乾燥させ、総脂質の割合を細胞乾燥重量によって決定した。また、培地についても、ショ糖の合計消費量を分析した。
【0433】
10種類全ての陽性クローンが、ショ糖を加水分解することができたが、ほとんどのクローンは、実験終了時に細胞乾燥重量によって決定してみると、野生型又は陽性対照のsuc2酵母インベルターゼ形質転換体のほぼ半分しか成長しなかった。同様に、10種類全ての陽性クローンが、野生型又は陽性対照の形質転換体と比較した場合に、ほぼ半分の総脂質を産生していた。このデータは、Prototheca内で多様なショ糖インベルターゼがうまく異種発現したことを示している。
【0434】
(実施例10:Prototheca krugani、Prototheca stagnora、Prototheca zopfiiにおける、酵母インベルターゼ(suc2)の異種発現)
Prototheca属の種を用いた形質転換方法が一般的に適用可能かどうかを試験するために、Prototheca krugani(UTEX 329)、Prototheca stagnora(UTEX 1442)、Prototheca zopfii(UTEX 1438)といった3種類の他のPrototheca種を選択した。これら3種類の株を、実施例1に記載した培地及び条件で成長させ、上述の方法を用いて脂質プロフィールを決定した。3種類のPrototheca株から得た脂質プロフィールのまとめを、面積%で以下にまとめている。
【0435】
【化15】
【0436】
これら3種の株を、酵母インベルターゼ(suc2)発現カセット(配列番号58)を用い、上の実施例3に記載の方法を用いて形質転換した。この酵母インベルターゼ(suc2)発現カセットは、上の実施例3で、Prototheca moriformis(UTEX 1435)内で働くことが示されている。この形質転換体を、ショ糖を含有するプレート/培地を用いてスクリーニングした。それぞれのPrototheca種の陽性クローンの部分集合を選択し、サザンブロット分析によって、トランス遺伝子の存在を確認した。それぞれの種から確認された10種の陽性クローンを、ショ糖加水分解の分析及び脂質の生産性のために選択した。クローンを、唯一の炭素源としてショ糖を含む培地中で成長させ、グルコースで成長させた対応する野生型と比較した。6日後、培養物を採集し、乾燥させ、総脂質の割合及び細胞乾燥重量を評価した。また、それぞれの培養物から得た培地について、一連の実験期間中、ショ糖含有量をYSI2700 Biochemistry Analyzerを用いて調べ、ショ糖の加水分解を分析した。3種類全ての種から得たクローンが、ショ糖を加水分解することができ、Prototheca
stagnora及びPrototheca zopfiiの形質転換体は、Prototheca kruganiよりももっと効率的にショ糖を加水分解することができた。3種類の形質転換体の総脂質の産生量及び細胞乾燥重量は、グルコースで成長させた対応する野生型と匹敵する値であった。このデータは、Prototheca属の複数の種において、形質転換がうまくいき、外来遺伝子を発現したことが示されている。
【0437】
(実施例11:藻から誘導されるプロモーター及び微細藻類で使用するための遺伝子)
(A.Chlorella protothecoidesに由来する5’UTR及びプロモーターの配列)
混合栄養的に成長するChlorella protothecoides(UTEX
250)から、標準的な技術を用いてcDNAライブラリーを作成した。cDNA配列に基づいて、Seegene’s DNA Walkingキット(ロックビル、MD)を用い、コード領域の上流を「ウォーキングする」ために、特定の既知のハウスキーピング遺伝子においてプライマーを設計した。単離された配列は、アクチン(配列番号31)と、伸長因子−1a(EF1a)(配列番号32)プロモーター/UTRとを含み、これらは、両方とも、イントロン(小文字で示されているもの)と、エクソン(大文字のイタリックで示されている)と、予測開始部位(太字)と、2個のβ−チューブリンプロモーター/UTRエレメント:アイソフォームA(配列番号33)及びアイソフォームB(配列番号34)とを含む。
【0438】
(B.C.protothecoidesに由来する、脂質の生合成酵素及びプラスチド標的配列)
上述のcDNAライブラリーから、Chlorella protothecoides(UTEX 250)において、脂質代謝に機能するタンパク質をコードする3種類のcDNAを、上述の方法と同じ方法を用いてクローン化した。アシルACPデサチュラーゼ(配列番号45及び46)及び2種類のゲラニルゲラニルジホスフェートシンターゼ(配列番号47〜50)のヌクレオチド及びアミノ酸配列は、以下の配列表に含まれている。さらに、プラスチドを標的とする推定シグナル配列を有する3種類のcDNAもクローン化した。グリセルアルデヒド−3−ホスフェート脱水素酵素(配列番号51及び52)、酸素発生複合体タンパク質OEE33(配列番号53及び54)、Clpプロテアーゼ(配列番号55及び56)のヌクレオチド及びアミノ酸配列は、以下の配列表に含まれている。ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列において、推定プラスチド標的配列には、下線を引いている。トランス遺伝子の産物が、細菌のプラスチド、例えば、脂質改変酵素を標的とするように仕向けるために、プラスチド標的配列を用いることができる。
【0439】
(実施例12:Prototheca moriformisに由来する、窒素応答性の5’UTR/プロモーター)
Prototheca moriformis(UTEX 1435)から、標準的な技術を用いてcDNAライブラリーを作成した。Prototheca moriformis細胞を、窒素が枯渇した条件下で48時間成長させた。次いで、5%の播種物質(v/v)を低窒素環境に移し、細胞を24時間ごとに7日間採集した。培養して約24時間後、培地への窒素の供給を完全に絶った。集めたサンプルを、ドライアイス及びイソプロパノールですぐに凍結させた。次いで、凍結した細胞ペレットサンプルから全RNAを単離し、各サンプルの一部をRT−PCR試験のために残しておいた。サンプルから採集した全RNAの残りに、polyA選択を行った。それぞれの条件から、等モル量のpolyAで選択したRNAを保存しておき、ベクターpcDNA3.0(Invitrogen)でcDNAを作成するために使用した。このようにして得られた保存しておいたcDNAライブラリーから、ほぼ1200種類のクローンを無作為に取り出し、両方の鎖について塩基配列を決定した。これらの1200個の配列の中から、ほぼ68種類の異なるcDNAを選択し、リアルタイムRT−PCR試験で使用するためのcDNA特異的なプライマーを設計するのに使用した。
【0440】
保存容器に入れておいた細胞ペレットサンプルから単離したRNAを、上のように作成したcDNA特異的なプライマーセットを用い、リアルタイムRT−PCT試験で基質として使用した。この保存しておいたRNAをcDNAに変換し、68個の遺伝子特異的なプライマーセットそれぞれについて、RT−PCRの基質として使用した。閾値サイクル数、つまりC数を用い、68種のcDNAそれぞれについて、時間経過にともなって集めたそれぞれのRNAサンプル内の相対的な転写産物量を示した。窒素が豊富にある状態と、窒素が枯渇している状態との間で、顕著な増加を示す(3倍以上)cDNAを、窒素の枯渇によって発現を上方調節する有望な遺伝子としてフラグ付けした。本明細書で記載しているように、窒素の枯渇/制限は、油産生微生物が脂質産生する際の既知の誘発因子である。
【0441】
窒素の枯渇/制限の間、発現が上方調節されるような、cDNAから得た推定プロモーター/5’UTR配列を同定するために、窒素が枯渇した状態で成長させたPrototheca moriformis(UTEX 1435)から全DNAを単離し、次いで、454 sequencing technology(Roche)を用い、塩基配列を決定した。上のRT−PCR結果によって、上方調節されるとフラグ化されたcDNAを、454 genomic sequencing readsから生じる、アセンブリしたコンティグに対し、BLASTを用いて比較した。cDNAの5’末端を特定のコンティグに対してマッピングし、可能な場合、5’フランキングDNAの500bpを超える部分を使用し、プロモーター/UTRを推定した。次いで、プロモーター/5’UTRの存在を確認し、ゲノムDNAのPCR増幅を用いてクローン化した。個々のcDNA 5’末端を用い、3’プライマーを設計し、454コンティグアセンブリの5’末端を使用し、5’遺伝子特異的なプライマーを設計した。
【0442】
第1のスクリーニングとして、推定プロモーターの1つである、Aat2(アンモニウムトランスポーター、配列番号99)から単離した5’UTR/プロモーターを、C.sorokinanaグルタミン酸脱水素酵素プロモーターの代わりに、上の実施例5に記載したChlorella protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼトランジットペプチドを用い、Cinnamomum camphora C14チオエステラーゼ構築物内でクローン化した。この構築物を、配列番号112として列挙している。この推定プロモーターを試験するために、チオエステラーゼ構築物をPrototheca moriformis細胞内で形質転換し、上述の方法を用い、低/無窒素状態でC14/C12脂肪酸の増加についてスクリーニングすることによって、実際のプロモーター活性を確かめた。cDNA/ゲノムスクリーニングから単離した推定窒素制御プロモーターを、同じ方法を用いて同様に試験することができる。
【0443】
cDNA/ゲノムスクリーニングから単離した他の推定窒素制御プロモーター/5’UTRは、以下のものであった。
【0444】
【化16】
【0445】
何倍増加したかは、低窒素培地で24時間培養した後の、cDNA産出量が何倍増えたかを指す。
【0446】
(実施例13:Prototheca種における相同組み換え)
トランス遺伝子の相同組み換えは、上の実施例に記載した形質転換方法と比べ、いくつかの利点を有する。第1に、相同組み換えではないトランス遺伝子の導入は、細胞に導入されるプラスミドの複製数が制御されないので、予測不可能となり得る。また、相同組み換えではないトランス遺伝子の導入は、プラスミドがエピソームを保有し得、次の細胞分裂のときに失われるので、
不安定となり得る。相同組み換えの別の利点は、遺伝子標的を「ノックアウト」し、エピトープタグを導入し、内在する遺伝子のプロモーターを切り替え、遺伝子標的をそれ以外の方法で変える(例えば、点変異の導入)ことができることである。
【0447】
KE858と呼ばれるPrototheca moriformis(UTEX 1435)ゲノムの特定領域を用い、2種類のベクターを構築した。KE858は、1.3kbのゲノムフラグメントであり、タンパク質のトランスファーRNA(tRNA)に対する相同性が共通のタンパク質のコード領域の一部を包含している。サザンブロットは、KE858配列が、Prototheca moriformis(UTEX 1435)ゲノムの単一配列に存在することを示した。構築され、SZ725(配列番号103)と呼ばれる第1の種類のベクターは、上の実施例3で使用される、最適化された酵母インベルターゼ(suc2)遺伝子も含んでいるpUC19ベクター骨格にクローン化された全1.3kbのKE858フラグメントで構成されていた。KE858フラグメントは、標的構築物の他の場所のどこにも生じない固有のSnaB1部位を含んでいた。構築され、SZ726(配列番号126)と呼ばれる第2の種類のベクターは、KE858ゲノム配列のSnaB1部位に酵母インベルターゼ遺伝子(suc2)を挿入することによって破壊されたKE858配列で構成されていた。酵母インベルターゼ遺伝子に隣接するKE858配列を含む完全なDNAフラグメントは、ベクター骨格からEcoRIで消化することによって切り出され、KE858領域のどちらかの末端で切断されている。
【0448】
両方のベクターを用い、酵母インベルターゼ遺伝子(suc2)を、Prototheca moriformis(UTEX 1435)ゲノムの対応するKE858領域に直接的に相同組み換えした。相同組み換えで標的とされるゲノム領域と相同性の直鎖DNAを、ベクター構築物SZ725をSnaB1で消化し、ベクター構築物SZ726をEcoRIで消化することによって露出させた。次いで、消化されたベクター構築物を、上の実施例3に記載の方法を用い、Prototheca moriformis培養物に導入した。次いで、それぞれのベクター構築物から得た形質転換体を、ショ糖プレートを用いて選択した。それぞれのベクターの形質転換から得た、10種類の独立した、クローン的に純粋な形質転換体を、酵母インベルターゼ遺伝子が望ましいゲノム位置でうまく組み換えられているか(サザンブロットを用いる)、トランス遺伝子の安定性について分析した。
【0449】
SZ725形質転換体のサザンブロット分析は、分析用に取り出した10種類の形質転換耐のうち、4種類が、予想通りの組み換えバンドを含んでおり、このことは、ベクター上にあるKE858配列と、ゲノム内にあるKE858配列とで1箇所の交叉が起こったことを示している。対称的に、SZ726形質転換体の10種類全てが、予想通りの組み換えバンドを含んでおり、このことは、酵母インベルターゼトランス遺伝子に隣接するKE858配列を有するpSZ726のEcoRIフラグメントと、ゲノムの対応するKE858領域とで2箇所の交叉が起こったことを示している。
【0450】
選択せずに、15世代にわたって形質転換体を成長させることによって、ショ糖インベルターゼ発現及びトランス遺伝子の安定性を評価した。サザンブロットによってトランス遺伝子が陽性の4種類のSZ725形質転換体及び10種類のSZ276形質転換体を選択し、それぞれの形質転換体から、48個の単一コロニーを、まずはグルコースを含有する培地で選択せずに成長させ、次いで、唯一の炭素源としてショ糖を含有する培地で選択しつつ成長させた。10種類全てのSZ276形質転換体(100%)が、15世代後もショ糖を用いて成長する能力を保持しており、一方、SZ725形質転換体の約97%が、15世代後も、ショ糖を用いて成長する能力を保持していた。2箇所の交叉が起こる(SZ726ベクター)ことによって導入されたトランス遺伝子は、世代を超えて倍加していく間もきわめて高い安定性を有している。対称的に、1箇所の交叉が起こる(SZ725 ベクター)ことによって導入されたトランス遺伝子は、トランス遺伝子がタンデムに複写されて導入され、トランス遺伝子に隣接する繰り返し相同領域が組み換えられ、その間に位置するトランスジェニックDNAを切断してしまうため、世代を超えて倍加していく間に、ある程度不安定になり得る。
【0451】
これらの実験は、相同組み換えをうまく使用して、異種ショ糖インベルターゼ遺伝子が有機体の核染色体に安定に組み込まれたPrototheca形質転換体を作成することを示している。相同組み換えが成功すると、遺伝子の欠失、点変異、望ましい遺伝子産物のエピトープタグ化のようなPrototheca内の他のゲノム改変も可能になる。また、これらの実験は、真核性微細藻類の核ゲノムにおける相同組み換えを最初に実証した系であることも示している。
【0452】
(A.内在するPrototheca moriformis遺伝子をノックアウトするための、相同組み換えの使用)
上の実施例11に記載されるPrototheca moriformis cDNA/ゲノムのスクリーニングでは、内在するステアロイルACPデサチュラーゼ(SAPD)cDNAが同定された。ステアロイルACPデサチュラーゼ酵素は、脂質合成経路の一部であり、脂肪酸アシル鎖に二重結合を導入する機能がある。ある場合では、脂肪酸プロフィールを変えるために、脂質経路に関連する酵素の発現をノックアウトするか、又は減らすことが有益な場合がある。内在するステアロイルACPデサチュラーゼ酵素の発現を減らす(又はノックアウトする)ことができるかどうか、そして、不飽和脂肪酸の対応する減少が、宿主細胞の脂質プロフィールでみられるかどうかを評価するために、相同組み換え構築物を作成した。Prototheca moriformis(UTEX 1435)に由来するステアロイルACPデサチュラーゼ遺伝子の約1.5kbのコード配列を同定し、クローン化した(配列番号104)。0.5kbのSAPDコード配列を5’末端(5’標的部位)で用い、次いでChlorella vulgaris 3’UTRを有するChlamydomonas reinhardtii コドンが最適化された酵母ショ糖インベルターゼsuc2遺伝子を動かすβ−チューブリンプロモーターを用いて相同組み換え構築物を構築した。次いで、Prototheca moriformis SAPDコード配列の残り(約1kb)を、C.vulgaris 3’UTRの後に挿入し、3’標的部位を作った。相同組み換えカセットの配列を配列番号105に列挙している。上に示されるように、微細藻類を形質転換する前にカセットを線状にし、露出されている末端を残すことによって、相同組み換えカセットを核ゲノムに組み込むのがうまくいく率が増す。Prototheca moriformisに内在するSAPD酵素を標的とする相同組み換えカセットを線状にし、次いで、宿主細胞(Prototheca moriformis、UTEX 1435)内で形質転換した。うまく組み込むと、二箇所の相互組み換えが起こることによって、宿主ゲノムから、内在するSAPD酵素のコード領域が失われ、一方、新しく挿入されたsuc2遺伝子の発現は、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーターによって制御されるであろう。唯一の炭素源としてショ糖を含むプレート/培地を用い、得られたクローンをスクリーニングすることができる。相同組み換えカセットがうまく組み込まれたクローンは、唯一の炭素源としてショ糖を用いて成長する能力を有しており、脂質プロフィールにおける脂肪酸の最終的な飽和度が変わることは、二次的な確認因子として役立つであろう。さらに、酵母ショ糖インベルターゼsuc2遺伝子に特異的なプローブを用いたサザンブロットアッセイ、及びRT−PCRによって、陽性クローンにおけるインベルターゼ遺伝子の存在及び発現を確認することができる。代替法として、β−チューブリンプロモーターを含まない同じ構築物を用い、内在するSAPD酵素コード領域を切断することができる。この場合、新しく挿入された酵母ショ糖インベルターゼsuc2遺伝子は、内在するSAPDプロモーター/5’UTRによって制御されるであろう。
【0453】
(実施例14:燃料生成)
(A.連続圧搾機及び圧縮助剤を用いた、微細藻類に由来する油を抽出)
ドラム乾燥機を用い、DCWで38%の油を含む微細藻類バイオマスを乾燥させ、得られた含水量は5〜5.5%であった。バイオマスをFrench L250プレスに供給した。バイオマス30.4kg(67lbs.)をプレスに供給したが、油は回収されなかった。同じ乾燥させた微生物バイオマスに、種々の割合のスイッチグラスを圧縮助剤として組み合わせ、プレスに供給した。乾燥微生物バイオマス及び20%w/w スイッチグラスを組み合わせることによって、最終的には最も良好な油回収率が得られた。次いで、圧縮したケーキをヘキサンで抽出し、スイッチグラスが20%の条件で、最終収率は、61.6%の利用可能な油(重量によって算出)の総量であった。細胞乾燥重量の50%を超える油を有するバイオマスは、油を放出させるために、スイッチグラスのような圧縮助剤を使う必要はなかった。
【0454】
(B.脱脂したPrototheca moriformisバイオマスの単糖類組成物)
Prototheca moriformis(UTEX 1435)を、上の実施例45に記載したような条件及び栄養培地(4%グルコースを含む)で成長させた。次いで、微細藻類のバイオマスを採集し、ドラム乾燥機を用いて乾燥させた。乾燥させた藻のバイオマスを溶解し、上の実施例44に記載されているような連続圧搾機を用いて油を抽出した。圧縮したバイオマス中に残った油を、石油エーテルを用いて溶媒抽出した。脱脂した食料から、Rotovapor(Buchi Labortechnik AG、Switzerland)を用いて、残った石油エーテルを蒸発させた。酸性メタノリシスによって、サンプルから生成した単糖類メチル配糖体のペル−O−トリメチルシリル(TMS)誘導体について、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)を組み合わせた装置を用いて、脱脂した食料についてグリコシル(単糖類)組成物の分析を行った。脱脂した食料サンプルに、1M HClメタノール溶液中、80℃で約20時間かけてメタノリシスを行ない、次いで、メタノール中、ピリジン及び無水酢酸を用いて再N−アセチル化した(アミノ糖を検出するため)。次いで、このサンプルを、80℃で30分、Tri−Sil(Pierce)で処理することによって、ペル−O−トリメチルシリル化した(Merkle and Poppe(1994)Methods Enzymol.230:1−15及びYork et al.、(1985)Methods Enzymol.118:3−40を参照)。All Tech EC−1石英ガラスキャピラリーカラム(30m×内径0.25mm)を用い、5975b MSDを取り付けたHP 6890 GCで、TMSメチル配糖体のGC/MS分析を行った。保持時間を標準物質と比較することによって、単糖類を同定し、これらの炭水化物特性を質量分析スペクトルによって確認した。サンプルあたり、20μgのイノシトールをサンプルに加えた後、内部標準として誘導体化した。脱脂したPrototheca moriformis(UTEX 1435)バイオマスの単糖類のプロフィールを以下の表18にまとめている。サンプルから得た炭水化物の合計割合は、28.7%であると算出された。
【0455】
【表18】
【0456】
脱脂した食料の炭水化物含有量及び単糖類組成物は、この食料を動物の餌として、又は動物の餌配合物の一部として用いるのに適切である。従って、一態様では、本発明は、上の表に記載される製品含有量を含む、脱脂した食料を提供する。
【0457】
(C.Protothecaの油に由来するバイオディーゼルの生成)
上に記載した方法に従って生成した、Prototheca moriformis UTEX 1435から得た脱ガム油に、トランスエステル化を行い、脂肪酸メチルエステルを得た。結果を以下に示す。
【0458】
油の脂質プロフィールは、以下のとおりであった。
【0459】
【化17】
【0460】
【表19-1】
【0461】
【表19-2】
【0462】
バイオディーゼルの脂質プロフィールは、原材料油の脂質プロフィールと非常に似ていた。本発明の方法及び組成物によって与えられる他の油を、トランスエステル化し、(a)C8〜C14が少なくとも4%であり;(b)C8が少なくとも0.3%であり;(c)C10が少なくとも2%であり;(d)C12が少なくとも2%であり;(3)C8〜C14が少なくとも30%であるといった脂質プロフィールを有するバイオディーゼルを得ることができる。
【0463】
生成したバイオディーゼルのASTM D6751 A1法による冷状態浸漬時の濾過性は、容積300mlで120秒であった。この試験は、B100 300mlを濾過し、40°F(約4.5°C)まで16時間かけて冷やし、室温まで加温し、ステンレス鋼の支持板がついた0.7マイクロメートルガラス繊維フィルターを用い、減圧下で濾過することを含む。本発明の油を、トランスエステル化し、冷状態浸漬時間が120秒未満、100秒未満、90秒未満のバイオディーゼルを作成することができる。
【0464】
(D.再生可能なディーゼルの生成)
上に記載の方法に従って生成した、Prototheca moriformis UTEX 1435に由来する脱ガム油は、上の実施例Xでバイオディーゼルを製造するために使用した油と同じ脂質プロフィールを有しており、この油をトランスエステル化し、再生可能なディーゼルを生成させてもよい。
【0465】
まず、上述の油を水素化処理し、酸素とグリセロール骨格を取り除き、n−パラフィンを得た。次いで、n−パラフィンをクラッキングし、異性化した。この物質のクロマトグラムを図13に示している。次いで、この物質を冷状態で濾過し、約5%のC18材料を除去した。冷状態で濾過した後、材料全容積から引火点のために抜き取り、引火点、ASTM D−86の蒸留分布、曇り点、粘度を評価した。引火点は63℃であり;粘度は2.86cSt(センチストークス)であり;曇り点は4℃であった。ASTM D86の蒸留値を表20に示している。
【0466】
【表20】
【0467】
生成した物質のT10−T90は、57.9℃であった。本明細書に開示されている油の水素化処理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留及び分別の方法(例えば、冷却濾過)を使用し、本明細書に開示されている方法に従って生成したトリグリセリド油脂を用いて、他のT10−T90範囲、例えば、20、25、30、35、40、45、50、60、65℃を有する再生可能なディーゼル組成物を作成することができる。
【0468】
生成した物質のT10は、242.1℃であった。本明細書に開示されている油の水素化処理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留及び分別の方法(例えば、冷却濾過)を利用し、他のT10値、例えば、T10が180〜295、190〜270、210〜250、225〜245、少なくとも290の再生可能なディーゼル組成物を作成することができる。
【0469】
生成した物質のT90は、300℃であった。本明細書に開示されている油の水素化処理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留及び分別の方法(例えば、冷却濾過)を利用し、他のT90値、例えば、T90が280〜380、290〜360、300〜350、310〜340、少なくとも290の再生可能なディーゼル組成物を作成することができる。
【0470】
生成した物質のFBPは、300℃であった。本明細書に開示されている油の水素化処理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留及び分別の方法(例えば、冷却濾過)を利用し、他のFBP値、例えば、FBPが290〜400、300〜385、310〜370、315〜360、少なくとも300の再生可能なディーゼル組成物を作成することができる。
【0471】
本発明の方法及び組成物によって得られる他の油を、(a)C8〜C14が少なくとも4%であり;(b)C8が少なくとも0.3%であり;(c)C10が少なくとも2%であり;(d)C12が少なくとも2%であり;(3)C8〜C14が少なくとも30%であるといった脂質プロフィールを有するを含む、水素化処理、異性化、及び他の共有結合改変を組み合わせて行うことができる。
【0472】
(実施例15:Chlorella luteoviridisによるショ糖の利用)
(A.グルコース及びショ糖による、SAG 2214の成長)
SAG 2214(Chlorella luteoviridisとして命名)について、グルコース又はショ糖のいずれかを含有する培地で、暗い場所で成長を試験した。従属栄養液体培養は、
凍結させたバイアルからの播種物質を用い、唯一の炭素源として4%グルコース又は4%ショ糖を含有する培地中で開始された。培養物を200rpmで振とうしつつ、暗い場所で成長させた。0時間、24時間、48時間、72時間の時間点で、培養物からサンプルを採取し、750nmでの相対吸光度(UV Mini1240、Shimadzu)によって、成長を測定した。SAG 2214は、グルコースの場合も、ショ糖の場合と同じように成長し、このことは、この微細藻類は、唯一の炭素源として、グルコースと同じようにショ糖も有効に利用することができることを示している。この実験の結果を図3に示す。
【0473】
(B.SAG 2214の脂質の生産性及び脂肪酸プロフィール)
微細藻類株SAG 2214を、唯一の炭素源としてグルコース又はショ糖を含む液体培地中で、上の実施例32に記載したのと似た条件で育てた。7日後、細胞乾燥重量を算出するために、細胞を採集した。細胞を遠心分離処理し、24時間凍結乾燥させた。乾燥させた細胞ペレットを秤量し、1リットルあたりの細胞乾燥重量を算出した。また、脂質を分析するために細胞を採集し、室温で、4000×gで10分間遠心分離処理した。上澄みを棄て、脂質分析及び脂肪酸プロフィールのために、標準的なガスクロマトグラフィー(GC/FID)手順を用いてサンプルを処理した。結果を表21及び表22にまとめる。
【0474】
【表21】
【0475】
【表22】
【0476】
(C.SAG 2214と、他のChlorella luteoviridis株とのゲノム比較)
微細藻類株SAG 2214は、炭素源としてショ糖を用いて成長することができるため、一般的に興味深いことが判明した(上に示した)。この株の成長特性に加え、他の微細藻類の種との分類学上の関係性も関心事であった。Chlorella luteoviridis株としてSAG collectionによって命名されている、SAG 2214の23S rRNA遺伝子を配列決定し、SAG及びUTEX collectionによってChlorella luteoviridisとして同定されている9種類の他の株の23S rRNAゲノム配列と比較した。これらの株は、UTEX 21、22、28、257、258、SAG株2133、2196、2198、2203であった。使用したDNA遺伝子型決定法は、上の実施例1に記載した方法と同じであった。Geneious DNA分析ソフトウェアを用い、配列アラインメント及び無根系統樹を作成した。遺伝子型を決定した他の9種類の株の中で、UTEX 21、22、28、257は、同一の23S rRNA DNA配列(配列番号106)を有していた。その他の5種類のChlorella luteoviridis株は、UTEX 21、22、28、257と非常に相同性の23S rRNA配列を有していた。
【0477】
SAG 2214(配列番号30)に由来する23S rRNA遺伝子配列は、他の9種類のC.luteoviridis株の23S rRNA遺伝子配列とは明らかに異なっており、他の株にはみられなかった大きな挿入部を有していた。この23S rRNA遺伝子配列をBLASTでさらに分析すると、Leptosira属及びTrebouxia属のメンバー(地衣類の共生藻部分のメンバーである)と共通点があり、最も大きな相同性を有していることが示された。これらの結果は、SAG 2214が、おそらく培養株保存機関で分類分けされているようなChlorella luteoviridis株ではなく、地衣類のalgal symbiontと顕著に大きな23S rRNA
ヌクレオチド同一性を有していることを示している。このゲノム分析と成長特性とを合わせ、SAG 2214は、ショ糖の代謝に関与する遺伝子及びタンパク質の供給源となり得、さらに、このような酵素の正しい局在化に関わるシグナルペプチド及びトランジットペプチドの供給源となり得る。SAG 2214、及びこれとゲノム類似性が高い他の株は、固定炭素源としてショ糖を用いて油を産生するのに有用な株であろう。
【0478】
本発明を、特定の実施形態と関連させて記載してきたが、さらなる改変ができることは理解されるであろう。本明細書は、本発明の原理に一般的に従い、本発明のいかなる変更、応用又は適応をも包含することを意図しており、それらは、本発明が属する技術分野の範囲内にある知られているあるいは慣例の実践範囲内で行われ、また本明細書に記載する本質的な特徴に適用できるような、本開示からの逸脱を含む。
【0479】
本明細書に引用されている全ての参考文献は、特許、特許明細書、刊行物を含め、その内容がすでに特定的に組み込まれているか否かにかかわらず、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で述べられている刊行物は、本発明と組み合わせて使用することが可能な試薬、方法及び概念を記載し、開示する目的で引用されている。これらの引用文献が、本明細書に記載した本発明との関連で従来技術であることを認めたと解釈されるべきではない。特定的には、以下の特許明細書は、あらゆる目的のために、その内容全体が参照により組み込まれる:2007年6月1日に出願した米国仮出願第60/941,581号、名称「Production of Hydrocarbons in Microorganisms」;2007年7月10日に出願した米国仮出願第60/959,174号、名称「Production of Hydrocarbons in Microorganisms」;2007年8月27日に出願した米国仮出願第60/968,291号、名称「Production of Hydrocarbons in Microorganisms」;2008年1月28日に出願した米国仮出願第61/024,069号、名称「Production of Hydrocarbons in
Microorganims」;2008年6月2日に出願したPCT出願番号第PCT/US08/65563号、名称「Production of Oil in Microorganisms」;2008年6月2日に出願した米国特許出願第12/131,783号、名称「Use of Cellulosic Material for
Cultivation of Microorganisms」;2008年6月2日に出願した米国特許出願第12/131,773号、名称「Renewable Diesel and Jet Fuel from Microbial Sources」;2008年6月2日に出願した米国特許出願第12/131,793号、名称「Sucrose Feedstock Utilization for Oil−Based Fuel Manufacturing」;2008年6月2日に出願した米国特許出願第12/131,766号、「Glycerol Feedstock Utilization for Oil−Based Fuel Manufacturing」;2008年6月2日に出願した米国特許出願第12/131,804号、名称「Lipid Pathway Modification in Oil−Bearing Microorganisms」;2008年11月28日に出願した米国特許出願第61/118,590号、名称「Production of Oil in Microorganisms」;2008年12月1日に出願した米国仮出願第61/118,994号、名称「Production of Oil in Microorganisms」;2009年4月3日に出願した米国仮出願第61/174,357号、名称「Production of Oil in Microorganisms」;2009年6月23日に出願した米国仮出願第61/219,525号、名称「Production of Oil in Microorganisms」;2009年11月30日に出願したPCT出願番号第__________号[[代理人管理番号026172−005010PC]]、名称「Manufacturing of Tailored Oils in Recombinant Heterotrophic Microorganisms」。
【0480】
【化18】
【0481】
【化19】
【0482】
【化20】
【0483】
【化21】
【0484】
【化22】
【0485】
【化23】
【0486】
【化24】
【0487】
【化25】
【0488】
【化26】
【0489】
【化27】
【0490】
【化28】
【0491】
【化29】
【0492】
【化30】
【0493】
【化31】
【0494】
【化32】
【0495】
【化33】
【0496】
【化34】
【0497】
【化35】
【0498】
【化36】
【0499】
【化37】
【0500】
【化38】
【0501】
【化39】
【0502】
【化40】
【0503】
【化41】
【0504】
【化42】
【0505】
【化43】
【0506】
【化44】
【0507】
【化45】
【0508】
【化46】
【0509】
【化47】
【0510】
【化48】
【0511】
【化49】
【0512】
【化50】
【0513】
【化51】
【0514】
【化52】
【0515】
【化53】
【0516】
【化54】
【0517】
【化55】
【0518】
【化56】
【0519】
【化57】
【0520】
【化58】
【0521】
【化59】
【0522】
【化60】
【0523】
【化61】
【0524】
【化62】
【0525】
【化63】
【0526】
【化64】
【0527】
【化65】
【0528】
【化66】
【0529】
【化67】
【0530】
【化68】
【0531】
【化69】
【0532】
【化70】
【0533】
【化71】
【0534】
【化72】
【0535】
【化73】
【0536】
【化74】
【0537】
【化75】
【0538】
【化76】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【外国語明細書】
2020072663000001.pdf