【解決手段】ころ軸受は、外輪と、内輪と、保持器と、複数のころと、を備え、保持器は、内輪の回転軸と平行な軸方向に互いに離隔する一対のリム部と、互いに周方向に離隔して配置され、軸方向の両端が一対のリム部に接続する複数の柱部と、一対のリム部と複数の柱部とに囲まれた複数のポケットと、一対のリム部のそれぞれからポケットに向かって突出する一対の突起と、を有し、ころの各端面には、突起が入り込む凹部と、端面の外縁から凹部まで延在し、突起を凹部内に案内する案内溝と、が設けられ、案内溝は、端面の外縁に位置し、ころの回転軸の径方向外側に向かって開放する案内溝入口と、凹部と接続し、凹部に向かって開放する案内溝出口と、を有し、案内溝入口の幅は、突起の幅よりも大きく、案内溝出口の幅は、突起の幅よりも小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ころ軸受が大型化すると、ころの径も大きくなる。よって、ころの端面の外縁から凹部までの距離、言い換えると、突起がころの端面に摺接して弾性変形している距離が長くなってしまう。従って、突起にかかる負荷が大きくなり、組み付け性もよくない。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、大型化された場合であっても、ころの組み付けが容易な自動調心ころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るころ軸受は、外輪と、前記外輪に回転可能に配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置され、周方向に複数のポケットが設けられた環状の保持器と、前記ポケットに収容された複数のころと、を備え、前記保持器は、前記外輪と前記内輪との間を周方向に延在し、前記内輪の回転軸と平行な軸方向に互いに離隔する一対のリム部と、互いに周方向に離隔して配置され、前記軸方向の両端が一対の前記リム部に接続する複数の柱部と、一対の前記リム部と複数の前記柱部とに囲まれた複数の前記ポケットと、一対の前記リム部のそれぞれから前記ポケットに向かって突出する一対の突起と、を有し、前記ころの各端面には、前記突起が入り込む凹部と、前記端面の外縁から前記凹部まで延在し、前記突起を凹部内に案内する案内溝と、が設けられ、前記案内溝は、前記端面の外縁に位置し、前記ころの回転軸の径方向外側に向かって開放する案内溝入口と、前記凹部と接続し、前記凹部に向かって開放する案内溝出口と、を有し、前記案内溝入口の幅は、前記突起の幅よりも大きく、前記案内溝出口の幅は、前記突起の幅よりも小さい。
【0008】
ころを保持器に組み付ける際、保持器の突起が案内溝を通過して凹部に移動するように、ころをポケットに挿入する。これによれば、突起は、案内溝入口に挿入された時点で弾性変形しない。突起は、案内溝に沿って凹部に近づくと案内溝の両側面に押圧され、弾性変形して突起の幅が小さくなる。そして、突起は、案内溝出口を通過して凹部に入った後、元の形状に復帰する。つまり、従来は、突起がころの端面の外縁と対向した時点で弾性変形を開始しているが、本開示のころ軸受によれば、ころの端面の外縁よりも凹部寄りで突起が弾性変形を開始する。従って、ころの径に関わらず、突起が弾性変形する距離を短く設定することができる。そして、ころ軸受が大型化された場合であっても、ころの組み付けを容易に行うことができる。また、突起が弾性変形する距離が短くなるため、突起にかかる負荷が低減する。さらに、ころは、一対の突起により保持されるため、ころばれ防止を強化することができる。
【0009】
上記のころ軸受の一態様として、前記柱部は、各前記ころの中心を通る仮想円よりも内周側に配置している。当該構成によれば、柱部における周方向の幅を大きくしたり、ころの個数を増やしたり、又はころの径を大きくしたりすることができる。
【0010】
上記のころ軸受の一態様として、前記柱部は、前記軸方向に切った断面形状が円弧状を成し、前記軸方向の中央部が外周側から内周側に向かって突出している。当該構成によれば、柱部の中央部における周方向の幅を大きくすることができ、柱部の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示のころ軸受によれば、大型化された場合であっても、ころの組み付けを容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
図1は、実施形態1に係る自動調心ころ軸受の一部を回転軸に沿って切った断面図である。
図2は、球面ころの端面を球面ころの軸方向から視た図である。
図3は、
図2に示す案内溝近傍を抽出し拡大した拡大図である。
図4は、実施形態1の保持器の一部を外周側から視た図である。
図5は、
図1のV−V線矢視端面図である。
図6は、球面ころの組み付け作業において突起が案内溝を通過している段階を示す拡大図である。
図7は、外輪に内輪を挿入した状態を示す断面図である
【0015】
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1の自動調心ころ軸受1は、外輪2と、内輪3と、複数個の球面ころ4と、保持器5A、5Bと、を備える。外輪2の内周面には、球面状凹面である外輪軌道面21が設けられている。内輪3の外周面には、外輪軌道面21と対向する一対の内輪軌道面31A、31Bが設けられている。以下の説明で、内輪3の回転軸Xを単に軸Xを称する。また、軸Xと平行な方向を軸X方向と称する。
【0016】
球面ころ4は、たる形状のころである。よって、球面ころ4の外周面(転動面)は、球面ころ4の回転軸Yが延在する方向の中央部4aが最も径方向外側に膨出している。球面ころ4は、外輪軌道面21と内輪軌道面31Aの間と、外輪軌道面21と内輪軌道面31Bの間と、の2列に分かれている。各列には、複数個の球面ころ4が配置されている。また、各列に配置された球面ころ4の回転軸Yは、内輪3の軸X方向の中央部に近づくにつれて径方向外側に位置するように傾いている。以下の説明で、球面ころ4の回転軸Yを単に軸Yを称する。また、軸Yと平行な方向を軸Y方向と称する。
【0017】
図2に示すように、球面ころ4の端面40には、凹部41と、案内溝42と、が設けられている。凹部41は、端面40の中央部に設けられた窪みである。また、凹部41は、軸Y方向から視て円形状となっている。案内溝42は、球面ころ4の端面40の外縁40aから凹部41まで延在する溝である。凹部41と案内溝42は、同じ深さとなっている。言い換えると、凹部41の端面40から窪み量と、案内溝42の端面40からの窪み量は、同じとなっている。このため、凹部41の底面41aと案内溝42の底面42aとは、同一平面上にあり、面一である。
【0018】
図3に示すように、案内溝42は、軸Yの径方向に延在し、その両端が開放している。以下、案内溝42において軸Yの径方向外側に開放している部分(端面40の外縁40aに位置する部分)を案内溝入口43と称する。また、案内溝42において軸Yの径方向内側に開放している部分(凹部41に接続する部分)を案内溝出口44と称する。
【0019】
案内溝42の両側面42b、42cは、軸Y方向から視て直線状となっている。案内溝42の両側面42b、42cの幅L1は、球面ころ4の端面40の外縁40aから凹部41に向かうにつれて次第に幅狭となっている。よって、案内溝42の最大幅は、案内溝入口43の幅L2である。また、案内溝42の最小幅は、案内溝出口44の幅L3である。
【0020】
また、案内溝42の両側面42b、42cの幅L1は、軸Yの径方向中間時点で、突起53の幅L6(
図4参照)と同じになっている。よって、案内溝入口43の幅L2は、突起53の幅L6(
図4参照)よりも大きい。また、案内溝出口44の幅L3は、突起53の幅L6(
図4参照)よりも小さい。
【0021】
図1に示すように、保持器5Aは、外輪軌道面21と内輪軌道面31Aとの間に配置された球面ころ4を保持する部品である。保持器5Bは、外輪軌道面21と内輪軌道面31Bとの間に配置された球面ころ4を保持する部品である。保持器5Aと保持器5Bとは、仮想平面Sを基準に面対称に形成されている。よって、保持器5Aと保持器5Bについては、代表例として保持器5Aを説明し、保持器5Bの説明を省略する。なお、仮想平面Sとは、軸Xを垂線とし、かつ内輪3の軸X方向の中央部を横切る平面である。
【0022】
保持器5Aは、かご形の保持器である。具体的には、
図4に示すように、保持器5Aは、周方向に延在して環状を成す一対のリム部50、50と、一対のリム部50の間に配置された複数の柱部51と、球面ころ4が配置される空間であるポケット52と、ポケット52に向かって突出する一対の突起53、53と、を備えている。保持器5Aは、金属製である。このような保持器5Aは、例えば、鋼板を径方向に打ち抜く打ち抜き加工により製造される。なお、本開示のころ軸受は、金属製の保持器に限られず、樹脂を成型して成る樹脂製の保持器であってもよい。
【0023】
一対のリム部50、50は、大径状の第1リム部54と、小径状の第2リム部55と、を備える。
図1に示すように、第1リム部54は、外輪軌道面21と内輪軌道面31Aとの間であって内輪3の軸X方向の中央部寄りに配置されている。第2リム部55は、内輪3の軸X方向の端寄りに配置されている。また、第1リム部54の外縁54bは、仮想平面Sに沿った平面となっており、保持器5Bの第1リム部54と摺接可能に当接している。
【0024】
図4に示すように、柱部51は、軸X方向に延在し、両端が一対のリム部50、50に連続している。また、柱部51の縁部51aは、周方向に対向する球面ころ4の転動面に対応し、円弧状になっている。ポケット52は、第1リム部54の内縁54aと、第2リムの内縁55aと、周方向に隣り合う2つの柱部51の縁部51aと、に囲まれて輪郭が形成されている。また、ポケット52は、保持器5Aの外周側及び内周側に開放している。
【0025】
図5に示すように、ポケット52に配置された各球面ころ4は、内輪軌道面31A上で周方向に等間隔で配置されている。また、球面ころ4同士の距離は、各球面ころ4の軸Y同士を結んで成る仮想円C上が最も短くなる(
図5の距離L4を参照)。なお、仮想円Cは、ころピッチ円と呼ばれることがある。そして、球面ころ4同士の距離は、仮想円Cから軸Xの径方向内側又は外側に向かうにつれて次第に長くなる。
【0026】
これに対し、本実施形態の柱部51は、仮想円Cよりも軸Xの径方向内側に配置されている。また、軸X方向から視た柱部51の断面形状は、台形状に形成され、軸Xの径方向内側に向かうにつれて周方向に幅広となっている。つまり、柱部51の周方向の幅L5は、仮想円C上の球面ころ4同士の距離L4よりも大きい。よって、柱部51は、仮想円C上に配置されて周方向の幅が距離L4に制限された場合よりも剛性が高い。
【0027】
なお、実施形態1では、柱部51を仮想円Cよりも軸Xの径方向内側に配置し、かつ周方向の幅L5を距離L4よりも大きくしているが、本開示のころ軸受はこれに限定されない。例えば、柱部51が仮想円Cよりも軸Xの径方向内側に配置され、かつ柱部51の周方向の幅L5が仮想円C上の球面ころ4同士の距離L4と同じに設定されてもよい。これによれば、球面ころ4の径を大きくしたり、又は球面ころ4と柱部51との間隔を詰めて球面ころ4と柱部51との数を増やしたりすることができる。
【0028】
図1に示すように、柱部51は、軸X方向に切った断面形状が円弧状を成し、軸X方向の中央部が外周側から内周側に向かって突出している。これによれば、柱部を真っ直ぐに形成した場合よりも、柱部51の中央部が仮想円Cから軸Xの径方向内側に位置するようになる。つまり、柱部51の中央部を周方向の幅を大きくして剛性を高めることが可能となる。
【0029】
突起53は、球面ころ4の凹部41内に入り込み、球面ころ4がポケット52から離脱することを防止している。
図4に示すように、突起53は、第1リム部54の内縁54aと第2リムの内縁55aとから突出しており、1つのポケット52に対し、一対の突起53が設けられている。そして、一対の突起53は、球面ころ4の両端面40の凹部41に入り込んでいる。よって、球面ころ4は、軸Y方向の両側から突起53により抜け止めされている。突起53の側面53aから側面53bまでの長さ、言い換えると、突起53の幅はL6に設定されている。なお、本実施形態の突起53は、ポケット52を打ち抜き加工で形成する際に同時に形成されている。
【0030】
次に、自動調心ころ軸受1の組み立てについて説明する。自動調心ころ軸受1の組み立ては、保持器5に対する球面ころ4の組み付け、内輪3に対する保持器5A、5Bの組み付け、外輪2に対する内輪3の組み付け、の順で行う。
【0031】
保持器5A、5Bに対する球面ころ4の組み付けは、保持器5A、5Bの各ポケット52の外周側に、球面ころ4を配置する。次に、球面ころ4の案内溝42の案内溝入口43が、保持器5A、5Bの突起53に向かって開口するように、球面ころ4の姿勢を調整する。次に、球面ころ4をポケット52内に移動させ、案内溝入口43に突起53を挿入する。なお、案内溝入口43の幅L3は、突起53の幅L6よりも大きく。よって、案内溝入口43に挿入した時点で突起53は弾性変形しない。
【0032】
次に、球面ころ4がポケット52に向かって押し込まれると、突起53が案内溝42の軸Yの径方向中間部を通過する時、
図6に示すように、突起53の側面53a、53bが案内溝42の両側面42b、42cにより圧縮される(
図6の矢印A参照)。よって、突起53は弾性変形し、突起53の幅が小さくなる。さらに球面ころ4を押圧すると、突起53は、案内溝出口44を通過し、凹部41内に入り込む。そして、凹部41内に入った突起53は元の形状に復帰する。これにより、保持器5A、5Bに対する球面ころ4の組み付けが完了する。
【0033】
内輪3に対する保持器5A、5Bの組み付けは、球面ころ4が組み付けられた保持器5A、5Bを内輪3の外周側に配置し、球面ころ4を内輪軌道面31A、31B上に配置させる。なお、案内溝出口44の幅L2は、突起53の幅L6よりも小さい。よって、突起53が凹部41から案内溝42に移動して球面ころ4が保持器5A、5Bから離脱すること、言い換えると、ころばれが発生しないようになっている。
【0034】
外輪2に対する内輪3の組み付けは、最初に、
図7に示すように、内輪3の軸Xが外輪2の中心軸Zに対し直交するように挿入する。次に、軸Xと中心軸Zとのそれぞれに直交する軸Oを中心に、内輪3が90°回転させる(
図7の矢印B参照)。これにより、保持器5A、5Bに保持された球面ころ4は、外輪軌道面21と内輪軌道面31A、31Bとの間に配置され、自動調心ころ軸受1の組み立てが完了する。
【0035】
以上で説明したように、実施形態1の自動調心ころ軸受1は、外輪2と、外輪2に回転可能に配置された内輪3と、外輪2と内輪3との間に配置され、周方向に複数のポケット52が設けられた環状の保持器5A、5Bと、ポケット52に収容された複数の球面ころ4と、を備える。保持器5A、5Bは、外輪2と内輪3との間を周方向に延在し、内輪3の軸Xと平行な軸X方向に互いに離隔する一対のリム部50、50と、互いに周方向に離隔して配置され、軸X方向の両端が一対のリム部50、50に接続する複数の柱部51と、一対のリム部50、50と複数の柱部51とに囲まれた複数のポケット52と、一対のリム部50、50のそれぞれからポケット52に向かって突出する一対の突起53、53と、を有する。球面ころ4の各端面40には、突起53が入り込む凹部41と、端面40の外縁40aから凹部41まで延在し、突起53を凹部41内に案内する案内溝42と、が設けられている。案内溝42は、端面40の外縁40aに位置し、球面ころ4の軸Yの径方向外側に向かって開放する案内溝入口43と、凹部41と接続し、凹部41に向かって開放する案内溝出口44と、を有する。案内溝入口43の幅L2は、突起53の幅L6よりも大きい。案内溝出口44の幅L3は、突起53の幅L6よりも小さい。
【0036】
実施形態1によれば、球面ころ4を保持器5A、5Bに組み付ける際、球面ころ4の端面40の外縁40aよりも凹部41寄りで、突起53の弾性変形が開始するようになる。つまり、球面ころ4の径に関わらず、突起53が弾性変形する距離を短く設定することができる。よって、自動調心ころ軸受1が大型化された場合であっても、球面ころ4の組み付けを容易に行うことができる。また、突起53が弾性変形する距離が短くなるため、突起53にかかる負荷を低減できる。さらに、球面ころ4は、一対の突起53により保持されるため、ころばれ防止を強化することができる。
【0037】
また、実施形態1の自動調心ころ軸受1において、柱部51は、各球面ころ4の中心を通る仮想円Cよりも内周側に配置している。このため、実施形態1の柱部51のように、周方向の幅を大きく設計することが可能となる。そのほか、上記構成によれば、球面ころの個数を増やしたり、球面ころの径を大きくしたりすることも可能となる。
【0038】
また、実施形態1の自動調心ころ軸受1において、柱部51は、軸X方向に切った断面形状が円弧状を成し、軸X方向の中央部が外周側から内周側に向かって突出している。よって、柱部51の中央部の周方向の幅を大きくして剛性を高めることができる。
【0039】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る自動調心ころ軸受の一部を回転軸に沿って切った断面図である。なお、以下の説明においては、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態2の自動調心ころ軸受1Aは、外輪2に給油孔22が形成されている点で、実施形態1の自動調心ころ軸受1と相違する。給油孔22は、外輪2の外周面と外輪軌道面21とを貫通する孔である。給油孔22は、外輪2の軸X方向の中央部に位置している。また、給油孔22は、外輪2に対して1つ形成されている。
【0040】
実施形態2の自動調心ころ軸受1Aによれば、保持器5Aと保持器5Bとが摺接する第1リム部54の外縁54bに積極的に潤滑油を供給することができ、外縁54bの摩耗を抑制することができる。また、第1リム部54の外縁54b以外には、第1リム部54から突出する突起53、この突起53が入り込む球面ころ4の凹部41、又は、内輪3の軸X方向の中央部にも潤滑油を供給することができる。なお、保持器5Aの第1リム部54と、保持器5Bの第1リム部54と、の外周側に案内リングを設けた場合、外輪2の内周面側に潤滑油を供給しても、案内リングによって妨げられ、外縁54b、突起53、凹部41、及び内輪3の軸X方向の中央部に潤滑油が供給されにくい。よって、給油孔22は、案内リングが設けられた場合に、外縁54b、突起53、凹部41、及び内輪3の軸X方向の中央部に潤滑油を積極的に供給することができ、各部位の摩耗を効果的に抑制できる。
【0041】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係る自動調心ころ軸受の一部を回転軸に沿って切った断面図である。実施形態3の自動調心ころ軸受1Bは、保持器5A、5Bに外向フランジ56、56が設けられている点で、実施形態2の自動調心ころ軸受1Aと相違する。外向フランジ56は、第1リム部54から軸Xの径方向外側に延出している。外向フランジ56は、周方向に延在し、環状となっている。よって、実施形態3の保持器5A、5Bは、外向フランジ56により剛性が向上している。
【0042】
また、保持器5Aの外向フランジ56は、球面ころ4の端面40に対向する第1側面56aと、保持器5Bの外向フランジ56と対向する第2側面56bと、を有している。第1側面56aは、球面ころ4の端面40と近接している。第1側面56aは、軸Yに対して直交する平面となっており、球面ころ4の端面40と平行となっている。よって、球面ころ4が傾いた場合、球面ころ4の端面40が第1側面56aに接触し、球面ころ4の回転が正常に戻るようになっている。なお、保持器5Aの外向フランジ56の第2側面56bと、保持器5Bの外向フランジ56の第2側面56bと、が互いに摺接可能に当接している。
【0043】
以上、実施形態1から実施形態3について説明したが、本開示のころ軸受は、実施形態で示した例に限定されない。つまり、本開示のころ軸受は、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受に適用してもよい。また、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受に適用する場合は、複列でなく単列であってもよい。
【0044】
また、実施形態1の案内溝42の側面42b、42cは、直線状となっているが、本開示のころ軸受においては、側面が円弧状になっていてもよい。若しくは、案内溝42は、軸Yの径方向中間部より外側が一定幅であり、軸Yの径方向中間部から次第に幅狭なるようにしてもよい。