特開2021-103448(P2021-103448A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-103448(P2021-103448A)
(43)【公開日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】解析システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20190101AFI20210618BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20210618BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20210618BHJP
【FI】
   G06N99/00 180
   G01M99/00 Z
   G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-234632(P2019-234632)
(22)【出願日】2019年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 巨樹
(72)【発明者】
【氏名】林 則康
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD08
2G024AD09
2G024BA17
2G024FA06
2G024FA11
(57)【要約】
【課題】機械学習を利用して、産業機器における状態解析において、最適解に収束したか否かを予測することができる解析システムを提供する。
【解決手段】状態解析を行う解析システム20は、反復計算を用いて、解析条件データに基づいて状態解析を行うことにより解析結果データを取得する解析処理部32と、解析結果データ及び反復回数を説明変数とし、解析結果データに関して収束の程度を示す収束度を目的変数とし、説明変数及び目的変数を含む訓練データセットを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部36と、学習済みモデル、評価対象の解析結果データ、評価対象における反復回数、評価対象より少ない反復回数における比較対象の解析結果データ、及び、比較対象の反復回数を用いて、評価対象の解析結果データについての収束度を予測する収束度予測部44とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反復計算により最適解に収束させる手法を適用して産業機器における状態解析を行う解析システムにおいて、
前記状態解析における解析条件データを取得する解析条件データ取得部と、
前記反復計算を用いて、前記解析条件データに基づいて前記状態解析を行うことにより解析結果データを取得する解析処理部と、
前記解析結果データ及び反復回数を説明変数とし、前記解析結果データに関して収束の程度を示す収束度を目的変数とし、前記説明変数及び前記目的変数を含む訓練データセットを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、
前記学習済みモデル、評価対象の前記解析結果データ、前記評価対象における反復回数、前記評価対象より少ない反復回数における比較対象の前記解析結果データ、及び、前記比較対象の反復回数を用いて、前記評価対象の前記解析結果データについての前記収束度を予測する収束度予測部と、
を備える、解析システム。
【請求項2】
前記収束度予測部は、前記学習済みモデル、評価対象の前記解析結果データ、前記評価対象における反復回数、複数の前記比較対象の前記解析結果データ、及び、複数の前記比較対象の反復回数を用いて、前記評価対象の前記解析結果データについての前記収束度を予測する、請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記収束度は、前記収束の程度が低い状態である未収束状態、及び、前記収束の程度が高い状態である収束状態の少なくとも2段階にラベリングされた情報である、請求項1又は2に記載の解析システム。
【請求項4】
前記収束度は、前記収束の程度が低い状態である未収束状態、前記収束の程度が高い状態である収束状態、及び、前記収束の程度が前記未収束状態と前記収束状態の間の状態である中間域状態の少なくとも3段階にラベリングされた情報である、請求項3に記載の解析システム。
【請求項5】
前記解析システムは、さらに、
前記収束度予測部によって予測された前記収束度に基づいて、前記解析処理部における前記反復計算を終了するか継続するかを決定する決定部を備える、請求項1−4の何れか1項に記載の解析システム。
【請求項6】
前記解析システムは、さらに、
前記収束度予測部によって予測された前記収束度に基づいて、前記解析処理部における前記反復計算を終了するか継続するかを決定する決定部を備え、
前記決定部は、
前記収束度予測部によって前記未収束状態と予測された場合に前記解析処理部における前記反復計算を継続し、
前記収束度予測部によって前記収束状態と予測された場合に前記解析処理部における前記反復計算を終了する、請求項3に記載の解析システム。
【請求項7】
前記解析システムは、さらに、
前記収束度予測部によって予測された前記収束度に基づいて、前記解析処理部における前記反復計算を終了するか継続するかを決定する決定部を備え、
前記決定部は、
前記収束度予測部によって前記未収束状態又は前記中間域状態と予測された場合に前記解析処理部における前記反復計算を継続し、
前記収束度予測部によって前記収束状態と予測された場合に前記解析処理部における前記反復計算を終了する、請求項4に記載の解析システム。
【請求項8】
前記状態解析は、流体解析、熱流体解析、伝熱解析、電磁気解析の少なくとも1つである、請求項1−7の何れか1項に記載の解析システム。
【請求項9】
前記状態解析は、流体解析であり、
前記解析条件データは、前記産業機器の形状モデルと、少なくとも流入条件及び流出条件を含む境界条件とを含む、請求項8に記載の解析システム。
【請求項10】
前記解析結果データは、前記形状モデルの複数の節点における流速、前記複数の節点における流体圧力、流入エネルギーと流出エネルギーとの差の少なくとも1つを含む、請求項9に記載の解析システム。
【請求項11】
前記状態解析は、前記産業機器における定常状態の解析である、請求項1−10の何れか1項に記載の解析システム。
【請求項12】
前記産業機器は、工作機械において工具を着脱可能な主軸の装着面であり、
前記状態解析は、前記装着面における流体の定常状態の解析である、請求項11に記載の解析システム。
【請求項13】
前記解析システムは、さらに、
前記説明変数及び前記目的変数を含む訓練データセットを用いて機械学習を行うことにより、前記学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部を備える、請求項1−12の何れか1項に記載の解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機器における状態解析を行う解析システムとして、反復計算により最適解に収束させる手法を適用する方法が知られている。例えば、流体解析、熱流体解析、伝熱解析、電磁気解析等において、反復計算を用いて対象物の状態を解析することが行われる。しかし、最適解に収束したか否かを判定することは容易ではなく、熟練の知識及び経験が必要であった。
【0003】
例えば、熟練者は、現在の反復回数における解析結果データの分布を色彩画像として表示し、過去の反復回数における解析結果データの分布を色彩画像として表示し、2つの色彩画像を視覚的に比較して判定する。そして、2つの色彩画像が近似している場合には、2つの反復回数の間には変化が少ないことと考えられ、評価対象の解析結果データは、収束していると判定される。
【0004】
ところで、特許文献1には、ロボット等における構造物の設計の最適化を行うためのコンピュータ支援方法が記載されている。当該支援方法に、機械学習を用いるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−149818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、最適解に収束したか否かの判定の一つとして色彩画像の近似の判定等は、人間の感覚的な要素に基づいている。このような人間の感覚的な要素を必要とする判定方法は、熟練者でなければ行うことができない。しかし、熟練者の知識や経験を要することなく、最適解に収束したか否かの判定することができることが望まれる。
【0007】
本発明は、機械学習を利用して、産業機器における状態解析において、最適解に収束したか否かを予測することができる解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
解析システムは、反復計算により最適解に収束させる手法を適用して産業機器における状態解析を行うシステムである。当該解析システムは、前記状態解析における解析条件データを取得する解析条件データ取得部と、前記反復計算を用いて、前記解析条件データに基づいて前記状態解析を行うことにより解析結果データを取得する解析処理部と、前記解析結果データ及び反復回数を説明変数とし、前記解析結果データに関して収束の程度を示す収束度を目的変数とし、前記説明変数及び前記目的変数を含む訓練データセットを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、前記学習済みモデル、評価対象の前記解析結果データ、前記評価対象における反復回数、前記評価対象より少ない反復回数における比較対象の前記解析結果データ、及び、前記比較対象の反復回数を用いて、前記評価対象の前記解析結果データについての前記収束度を予測する収束度予測部とを備える。
【0009】
ここで、状態解析における解析結果データは、多数のデータを含む。例えば、解析結果データには、多種のデータを含ませる場合や、それぞれの種類のデータにおいても産業機器における多数の部位のそれぞれについてのデータを含ませる場合がある。そして、状態解析における解析結果データが最適解に収束したか否かは、多数のデータを比較することにより行う必要がある。
【0010】
しかし、上述した解析システムによれば、機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを用いている。当該学習済みモデルにおいて、説明変数は、解析結果データ及び反復回数であり、目的変数は、当該解析結果データに関しての収束度である。つまり、学習済みモデルは、解析結果データ及び反復回数と、収束度との関係を表している。
【0011】
そして、収束度予測部は、学習済みモデルと、解析結果データ及び反復回数とを用いて、収束度を予測している。特に、収束度予測部は、学習済みモデル、評価対象の解析結果データ、評価対象における反復回数、比較対象の解析結果データ、比較対象における反復回数を用いて、評価対象の解析結果データについての収束度を予測している。
【0012】
従って、解析結果データが多数のデータを含んでいたとしても、解析システムは、当該解析結果データについての収束度を予測することができる。つまり、熟練者の知識や経験を要することなく、解析結果データが収束したか否かを判定することができる。また、未熟な作業者が収束したか否かを判定する場合に比べて、解析システムによる判定は、収束判定の正確度を高くでき、収束と判定するまでに要する時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】産業機器の一例である主軸装置の軸方向断面図を示す。
図2】主軸装置において、主軸における工具ユニットの装着面、及び、装着面へ流体を吐出する複数の吐出孔について示す透視斜視図を示す。
図3】解析システムの機能的な構成を示すブロック図である。
図4】訓練データセットを示す図である。
図5】反復回数と流速の収束度を示すグラフである。
図6】決定部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.適用対象)
解析システムは、反復計算により最適解に収束させる手法を適用して、産業機器における状態解析を行う。対象となる状態解析は、流体解析、熱流体解析、伝熱解析、電磁気解析等を含む。また、反復計算の手法は、ニュートン法、ハレー法等、公知の手法を適用することができる。産業機器の例は、工作機械、産業ロボット等の各種生産装置、自動車、電車、航空機等を含み、これらの各種部品を含む。
【0015】
(2.適用対象の例)
解析システムの適用対象として、工作機械の主軸装置10における工具の装着面を例にあげる。また、装着面12aにおける流体解析を対象とする。図1は、工作機械の主軸装置10の軸方向部分断面図を示しており、図1の左側に工具(図示せず)を着脱可能に装着される。
【0016】
図1に示すように、主軸装置10は、筒状のハウジング11、主軸12、主軸モータ13、ドローバ14、クランプユニット15を備える。主軸12は、略円筒状に形成されており、ハウジング11の中空内部において中心軸線回りに回転可能に支持されている。主軸モータ13は、ハウジング11の内周面に取り付けられたステータ、及び、主軸12の外周面に取り付けられたロータを備える。本例では、主軸モータ13は、ハウジング11の内部に配置された、いわゆるビルトインモータを構成するが、ハウジング11の軸方向外部に配置してもよい。
【0017】
ドローバ14は、軸状部材であり、主軸12の貫通孔に挿通されている。ドローバ14は、主軸12と一体回転可能に設けられており、且つ、主軸12に対して軸方向に移動可能に設けられている。クランプユニット15は、ドローバ14の先端(図1の左端)に連結されており、工具ユニットTをクランプ及びアンクランプする。具体的には、クランプユニット15は、工具ユニットTにおけるプルスタッドボルトをクランプ及びアンクランプする。工具ユニットTは、主軸12の内周面における先端側(図1の左端)に装着される。本例では、主軸12の装着面12aは、テーパ状に形成されている。
【0018】
次に、主軸12における工具ユニットTの装着面12a、及び、装着面12aに流体を吐出する複数の吐出孔12b,12cについて、図2を参照して説明する。装着面12aには、装着面12aの先端開口側(図2の左奥側)から工具ユニットTが挿入されることにより、工具ユニットTが装着される。装着面12aは、本例では、先端開口側に拡径するテーパ状に形成されている。
【0019】
主軸12には、装着面12aの基端側に、直進流吐出孔12bが形成されている。直進流吐出孔12bは、装着面12aの基端において主軸12の回転中心に開口を有し、主軸12の中心軸方向に流体を吐出する。直進流吐出孔12bは、例えば、エアを吐出する。
【0020】
また、主軸12には、装着面12aの基端側において、周方向に等間隔に、複数の旋回流吐出孔12cが形成されている。旋回流吐出孔12cは、例えば、装着面12aの内周面に、装着面12aの径方向断面における接線方向に吐出する。旋回流吐出孔12cは、装着面12aにおいて、装着面12aの基端から先端開口に向かって、旋回流を形成することができるように形成されている。旋回流吐出孔12cは、エアを吐出する。
【0021】
なお、直進流吐出孔12bと旋回流吐出孔12cは、上記のように、同種の流体を吐出するようにしてもよいし、異種の流体を吐出するようにしてもよい。例えば、直進流吐出孔12bと旋回流吐出孔12cの一方がエアを吐出し、他方が液体を吐出するようにしてもよい。また、主軸12は、旋回流吐出孔12cのみを有するようにしてもよい。また、旋回流吐出孔12cの吐出方向の角度は、任意に設定できる。
【0022】
(3.解析システム20の構成)
(3−1.ハードウェア構成)
解析システム20は、例えば、プロセッサ、記憶装置、インターフェイスを備える演算処理装置と、演算処理装置のインターフェイスに接続可能な入力機器と、演算処理装置のインターフェイスに接続可能な出力機器とを備える。出力機器は、例えば、表示装置を含むようにしてもよい。また、演算処理装置、入力機器、出力機器が、インターフェイスを介さずに、1つのユニットを構成するようにしてもよい。また、記憶装置の一部は、物理サーバやクラウドサーバを適用することもできる。
【0023】
(3−2.機能的な構成)
解析システム20の機能的な構成について、図3図6を参照して説明する。解析システム20は、機械学習を適用しており、機械学習における学習フェーズの処理(学習処理)及び推論フェーズの処理(予測処理)を実行するようにしてもよいし、学習処理のみを実行してもよいし、予測処理のみを実行するようにしてもよい。
【0024】
本例においては、解析システム20は、学習処理及び予測処理を実行する場合を例にあげる。なお、本例では、解析システム20は、1つの演算処理装置において、学習処理及び予測処理を実行するものとするが、学習処理と予測処理をそれぞれ別々の演算処理装置により実行させるようにしてもよい。
【0025】
解析システム20は、図3に示すように、学習処理を実行する学習装置21と、予測処理を実行する予測装置22とを備える。なお、一部の機能構成において、共通する場合には、同一符号を付す。
【0026】
学習装置21は、解析条件データ取得部31、解析処理部32、収束度取得部33、訓練データセット記憶部34、学習済みモデル生成部35、学習済みモデル記憶部36を備える。
【0027】
解析条件データ取得部31は、状態解析における解析条件データを取得する。解析条件データ取得部31は、入力機器により入力されることにより解析条件データを取得する。解析条件データは、対象の産業機器の形状モデルを含む。本例においては、解析条件データとしての形状モデルは、図2に示すように、工作機械の主軸12における装着面12a及び複数の吐出孔12b,12cを含む。形状モデルとしての装着面12aにおいて、流体の流入部位が吐出孔12b,12cの開口であり、流体の流出部位が装着面12aの先端開口である。
【0028】
解析条件データは、さらに、境界条件を含む。境界条件は、装着面12aにおける流入条件及び流出条件を含む。流入条件とは、装着面12aにおいて流体の流入に関する条件である。例えば、流入条件は、吐出孔12b,12cの位置及び方向、並びに、吐出孔12b,12cにおける流体の流量及び流速を含む。さらに、流入条件は、流体の物性値、例えば、流体の粘度等を含むようにするとよい。例えば、直進流吐出孔12b及び旋回流吐出孔12cはエアを吐出する。従って、直進流吐出孔12bと旋回流吐出孔12cとにおいて、流通する流体の種類が同一である。流出条件とは、装着面12aにおける流出部位に関する条件である。流出条件は、例えば、大気開放であることを含む。
【0029】
解析処理部32は、反復計算を用いて、解析条件データに基づいて対象の産業機器における状態解析を行う。例えば、状態解析は、産業機器における定常状態の解析である。つまり、本例では、状態解析は、定常状態としての流体解析である。そして、解析処理部32は、状態解析による解析結果データを取得する。なお、解析処理部32は、演算処理装置により実行される。
【0030】
解析結果データは、例えば、図4に示すようなデータである。解析結果データは、反復回数毎に、形状モデルの複数の節点における流速及び流体圧力、並びに、エネルギーバランス(インバランスとも称する)を含む。エネルギーバランスとは、流入エネルギーと流出エネルギーとの差である。定常状態においては、エネルギーバランスは、ゼロとなる。
【0031】
図4に示すように、例えば、反復回数が1回の時に、節点No.(1)においては、流速はV1(1)となり、流体圧力はP1(1)となる。そして、反復回数が1回の時のエネルギーバランスは、ΔE1となる。反復回数が1100回の時に、節点No.(2)においては、流速V1100(2)となり、流体圧力P1100(2)となる。そして、反復回数が1100回の時のエネルギーバランスは、ΔE1100となる。
【0032】
収束度取得部33は、解析処理部32による状態解析の解析結果データに関して、最適解への収束の程度を示す収束度を取得する。収束度は、熟練者が解析結果データを確認することによって判定する。なお、収束度取得部33は、入力機器により入力されることにより収束度を取得する。
【0033】
ここで、収束度は、例えば数値で表してもよし、未収束状態と収束状態の2段階のラベリングされた情報としてもよいし、未収束状態と収束状態とこれらの中間域状態の3段階のラベリングされた情報としてもよい。もちろん、収束度は、4段階以上のラベリングされた情報としてもよい。中間域状態は、明らかに未収束であると判定することができず、明らかに収束であるとも判定することができない領域(グレーゾーン)として設定されている。
【0034】
2段階にラベリングされた場合において、未収束状態は、収束度が低い状態を意味し、収束状態は、収束度が高い状態を意味する。換言すると、未収束状態は、収束度の値が第一閾値未満の状態を意味し、収束状態は、収束度の値が第一閾値以上の状態を意味する。
【0035】
また、3段階にラベリングされた場合において、未収束状態は、収束度が低い状態を意味し、収束状態は、収束度が高い状態を意味し、中間域状態とは、収束度が未収束状態と収束状態との間の状態を意味する。換言すると、未収束状態は、収束度の値が第一閾値未満の状態を意味し、収束状態は、収束度の値が第一閾値より大きな第二閾値以上の状態を意味し、中間域状態は、収束度の値が第一閾値以上であり第二閾値未満の状態を意味する。
【0036】
例えば、図5に示す流速の収束度を示すグラフにおいて、反復回数が1回以上1000回未満は未収束状態であると判定され、反復回数が1250回以上は収束状態であると判定される。また、反復回数が1000回以上1250回未満は、明らかに未収束であると判定することができず、明らかに収束であるとも判定することができない中間域状態(グレーゾーン)と判定する。
【0037】
ここで、図5には、一例として、流速の収束度について示している。ただし、実際には、複数の要素、すなわち、流速、流体圧力、エネルギーバランス等を総合的に考慮して、収束度の判定が行われる。そのため、熟練者は、評価対象の解析結果データと、評価対象より少ない反復回数における比較対象の解析結果データとを比較して、評価対象の解析結果データについての収束度を判定する。
【0038】
例えば、形状モデルにおいて、各節点の流速の大きさを色彩で表す。そして、反復回数1000回を評価対象とし、反復回数700回を比較対象とした場合に、熟練者が、1000回の流速に関する色彩分布と、700回の流速に関する色彩分布とを比較する。そして、熟練者によって両者の分布がほぼ一致していると判定された場合には、評価対象である1000回の流速は収束していると判定される。ここで、定常状態で収束したとしても、評価対象と比較対象において、各節点における流速同士が完全に一致するとは限らない。そこで、各節点における流速同士を比較するのではなく、流速の分布で比較することが重要である。そのため、熟練者による収束の判定は、分布を比較することにより行われる。
【0039】
同様に、流体圧力の分布についても、熟練者によって収束度が判定される。また、エネルギーバランスの大きさについては、ゼロとなることが理想となる。従って、ゼロにどれだけ近い値であるかを評価すればよい。そして、熟練者は、複数の要素について総合的に判定して、評価対象の反復回数が、未収束状態であるか、中間域状態であるか、収束状態であるかを判定する。
【0040】
ここで、学習装置21における学習処理において、解析処理部32による状態解析は、熟練者によって解析結果データが収束状態と判定されるまで、継続して反復計算を行う。ただし、収束状態としてのデータ数を十分に確保するために、収束状態と判定された後においても、一定の反復回数を継続して行うのがよい。例えば、図5の流速を示すグラフにおいては、反復回数1250回で収束状態であると判定されたとしても、1500回まで継続して状態解析を行い、解析結果データの取得及び収束度の判定を行っている。
【0041】
訓練データセット記憶部34は、訓練データセットを記憶する。訓練データセットは、図4に示すように、反復回数、解析結果データ、及び、収束度を含む。そして、解析結果データ及び反復回数を説明変数とし、解析結果データに関して収束度を目的変数として、訓練データセットは、説明変数及び目的変数を含むデータセットである。つまり、訓練データセットは、反復回数と解析結果データと収束度とが関連付けられた情報である。なお、訓練データセット記憶部34は、記憶装置の一部として実現される。
【0042】
学習済みモデル生成部35は、訓練データセット記憶部34に記憶された訓練データセットを用いて機械学習を行う。具体的には、学習済みモデル生成部35は、解析結果データを説明変数として、収束度を目的変数とした機械学習を行う。そして、学習済みモデル生成部35は、当該機械学習により、収束度を予測するための学習済みモデルを生成する。
【0043】
機械学習の手法は、例えば、回帰を用いるとよい。例えば、線形回帰、リッジ回帰、Lasso回帰、エラスティックネット、ランダムフォレスト等が有用である。なお、学習済みモデル生成部35は、演算処理装置により実行される。
【0044】
例えば、機械学習において、説明変数を、評価対象の解析結果データ、評価対象における反復回数、評価対象より少ない反復回数における比較対象の解析結果データ、及び、比較対象の反復回数とし、目的変数を、収束度として、機械学習を行うようにしてもよい。この場合、学習済みモデルは、上記の説明変数と収束度との関係性を表す。
【0045】
学習済みモデル生成部35により生成された学習済みモデルは、学習済みモデル記憶部36に記憶される。学習済みモデル記憶部36は、記憶装置の一部として実現される。
【0046】
次に、予測処理を実行する予測装置22は、解析条件データ取得部31、解析処理部32、解析結果データ記憶部43、収束度予測部44、決定部45を備える。解析条件データ取得部31及び解析処理部32は、実質的に、上述した学習装置21における解析条件データ取得部31及び解析処理部32と同様の処理を行う。ただし、学習装置21の学習処理における対象と、予測装置22の予測処理における対象とは異なる。つまり、予測を行うための形状モデル及び解析条件データは、学習に用いた形状モデル及び解析条件データと異なるものである。従って、両者は、機能としては共通するが、対象が異なる。
【0047】
解析結果データ記憶部43は、解析処理部32が予測対象について状態解析を行うことにより得られた解析結果データと反復回数を関連づけて記憶する。解析結果データは、上述したように、例えば、各節点の流速、各節点の流体圧力、エネルギーバランス等である。つまり、解析結果データ記憶部43は、図4における反復回数と解析結果データの欄の情報を記憶する。なお、解析結果データ記憶部43は、記憶装置の一部として実現される。
【0048】
収束度予測部44は、解析結果データ記憶部43に記憶された解析結果データと反復回数とを関連付けられた情報と、学習済みモデル記憶部36に記憶された学習済みモデルとを用いて、評価対象の解析結果データについての収束度を予測する。なお、収束度予測部44は、演算処理装置により実行される。
【0049】
ここで、収束度予測部44は、学習済みモデル、評価対象の解析結果データ、評価対象における反復回数、評価対象より少ない反復回数における比較対象の解析結果データ、及び、比較対象の反復回数を用いて、評価対象の解析結果データについての収束度を予測する。収束度予測部44は、比較対象の解析結果データについて、1つのみを用いてもよいし、複数を用いてもよい。複数を用いる場合には、収束度予測部44は、学習済みモデル、評価対象の解析結果データ、評価対象における反復回数、複数の比較対象の解析結果データ、及び、複数の比較対象の反復回数を用いて、評価対象の解析結果データについての収束度を予測することとなる。
【0050】
収束度予測部44が予測する収束度は、学習処理において用いた訓練データセットにおける収束度に対応する。例えば、学習処理において収束度が3段階の未収束状態、中間域状態、収束状態にラベリングされた情報である場合には、収束度予測部44が予測する収束度も3段階にラベリングされた情報となる。学習処理において収束度が値(例えば、0〜1の値)である場合には、収束度予測部44が予測する収束度も値(例えば、0〜1の値)となる。
【0051】
ここで、学習処理に用いた形状モデル及び解析条件データと、予測処理に用いる形状モデル及び解析条件データとが異なるとしても、収束度予測部44は、十分に収束度を予測することができる。流体解析等の対象の状態解析において、収束である状態とは、反復計算を繰り返し行ったとしても、解析対象である流体等の状態の変化が小さいことを意味する。つまり、収束であるかの判定は、評価対象の反復回数における解析結果データと、比較対象の反復回数における解析結果データとの一致度を評価することにより行われる。従って、形状モデルや解析条件データが学習処理と予測処理とにおいて異なるとしても、収束度の予測を行うことができる。
【0052】
決定部45は、収束度予測部44によって予測された収束度に基づいて、解析処理部32における反復計算を終了するか継続するかを決定する。ここで、決定部45は、演算処理装置により実行される。決定部45による処理について、図6を参照して説明する。
【0053】
図6に示すように、決定部45は、まず、収束度予測部44が予測した予測結果である収束度を取得する(ステップS1)。続いて、決定部45は、取得した収束度が収束状態であるか否かを判定する(ステップS2)。そして、取得した収束度が収束状態である場合には(S2:Yes)、決定部45は、解析処理部32における反復計算を終了させる(ステップS3)。一方、取得した収束度が未収束状態又は中間域状態である場合には(S2:No)、決定部45は、解析処理部32における反復計算を継続させる(ステップS4)。
【0054】
なお、上記の決定部45の処理では、収束度が3段階にラベリングされた場合を対象とした。この他に、収束度が2段階にラベリングされた場合には、ステップS2において、取得した収束度が未収束状態である場合には(S2:No)、決定部45は、解析処理部32における反復計算を継続させることになる(S4)。
【0055】
また、収束度が例えば0〜1の値である場合には、以下のように処理される。収束度の値が収束状態であると判定するための閾値以上である場合には、収束度が収束状態である判定され(S2:Yes)、決定部45は、解析処理部32における反復計算を終了させる(ステップS3)。一方、収束度の値が収束状態であると判定するための閾値未満である場合には、収束度が未収束状態又は中間域状態である判定され(S2:No)、決定部45は、解析処理部32における反復計算を継続させる(ステップS4)。
【0056】
(4.まとめ)
上述したように、例えば流体解析において、状態解析における解析結果データには、流速、流体圧、エネルギーバランス等の多種のデータが含まれており、さらに、流速及び流体圧に関しては形状モデルの各節点におけるデータが含まれている。このように、上述した流体解析における解析結果データは、多数のデータを含んでいる。
【0057】
このことは、流体解析に限らず、熱流体解析、伝熱解析、電磁気解析等の他の状態解析においても同様である。つまり、状態解析における解析結果データは、多数のデータを含む。すなわち、解析結果データには、多種のデータを含ませる場合や、それぞれの種類のデータにおいても産業機器における多数の部位のそれぞれについてのデータを含ませる場合がある。
【0058】
そして、状態解析における解析結果データが最適解に収束したか否かは、上述した多数のデータを比較することにより行う必要がある。しかし、上述した解析システム20によれば、機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを用いている。当該学習済みモデルにおいて、説明変数は、解析結果データ及び反復回数であり、目的変数は、当該解析結果データに関しての収束度である。つまり、学習済みモデルは、解析結果データ及び反復回数と、収束度との関係を表している。
【0059】
そして、収束度予測部44は、学習済みモデルと、解析結果データ及び反復回数とを用いて、収束度を予測している。特に、収束度予測部44は、学習済みモデル、評価対象の解析結果データ、評価対象における反復回数、比較対象の解析結果データ、比較対象における反復回数を用いて、評価対象の解析結果データについての収束度を予測している。
【0060】
従って、解析結果データが多数のデータを含んでいたとしても、解析システム20は、当該解析結果データについての収束度を予測することができる。つまり、熟練者の知識や経験を要することなく、解析結果データが収束したか否かを判定することができる。また、未熟な作業者が収束したか否かを判定する場合に比べて、解析システム20による判定は、収束判定の正確度を高くできる。さらに、解析システム20によれば、収束と判定するまでに要する時間を短くできる。すなわち、解析システム20によれば、反復計算の回数を少なくすることができる。
【0061】
なお、上述した学習処理において、学習に用いる訓練データセットは、形状モデル及び解析条件データを1種とした場合を例にあげた。1種であっても、十分に予測可能であるが、学習に用いる訓練データセットは、形状モデル及び解析条件データを複数種としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10:主軸装置、 11:ハウジング、 12:主軸、 12a:装着面、 12b:直進流吐出孔、 12c:旋回流吐出孔、 13:主軸モータ、 14:ドローバ、 15:クランプユニット、 20:解析システム、 21:学習装置、 22:予測装置、 31:解析条件データ取得部、 32:解析処理部、 33:収束度取得部、 34:訓練データセット記憶部、 35:学習済みモデル生成部、 36:学習済みモデル記憶部、 43:解析結果データ記憶部、 44:収束度予測部、 45:決定部、 T:工具ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6