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特開2021-112959ステアリングコラム装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-112959(P2021-112959A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/185 20060101AFI20210709BHJP
【FI】
   B62D1/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-5996(P2020-5996)
(22)【出願日】2020年1月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 秀典
(72)【発明者】
【氏名】神谷 康憲
(72)【発明者】
【氏名】岩井 聡真
(72)【発明者】
【氏名】岸本 圭司
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC27
3D030DD65
3D030DD76
(57)【要約】
【課題】ステアリングコラム装置の製造時において、外側筒状体と内側筒状体との間に配置される樹脂製の中間筒状体の外周面及び内周面に、軟固体状潤滑油を容易に塗布することが可能なステアリングコラム装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール10が連結されたステアリングシャフト11を回転可能に支持するためのステアリングコラム装置1は、軸方向に相対移動可能な金属線のアッパチューブ2及びロアチューブ3と、アッパチューブ2とロアチューブ3との間に配置された樹脂製のカラー4とを備える。カラー4の外周面4a及び内周面4bとアッパチューブ2及びロアチューブ3との間には、グリスGが配置されている。カラー4には、アッパチューブ2の端部からアッパチューブ2内に挿入されるとき、外周面4a側に塗布されたグリスGの一部を内周面4b側に導出させることが可能な導油孔40が形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールが連結されたステアリングシャフトを回転可能に支持するためのステアリングコラム装置であって、
軸方向に相対移動可能な金属線の外側筒状体及び内側筒状体と、前記外側筒状体と前記内側筒状体との間に配置された樹脂製の中間筒状体とを備え、
前記中間筒状体の外周面及び内周面と前記外側筒状体及び前記内側筒状体との間に軟固体状潤滑油が配置されており、
前記中間筒状体は、前記外側筒状体内に挿入されるとき、前記軟固体状潤滑油を前記外周面側から前記内周面側に導出させることが可能な導油孔が形成されている、
ステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記中間筒状体は、前記外側筒状体への挿入方向の後端部の外周に設けられた環状突起を有しており、
前記外側筒状体には、前記環状突起を収容する膨大部が設けられており、
前記導油孔が前記環状突起における前記膨大部の奥側の端面に開口している、
請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記中間筒状体は、前記環状突起よりも外径が大きい堰部を前記挿入方向の後端部に有しており、
前記導油孔が前記堰部よりも前記挿入方向の前方側における前記環状突起の外周面に開口している、
請求項2に記載のステアリングコラム装置。
【請求項4】
前記導油孔は、その少なくとも一部が、前記外側筒状体の中心軸に対して前記内周面側ほど前記挿入方向の後方側となるように傾斜している、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のステアリングコラム装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のステアリングコラム装置の製造方法であって、
前記外側筒状体の内周面又は前記中間筒状体の前記外周面に軟固体状潤滑油を塗布する第1工程と、
前記中間筒状体を前記外側筒状体内に挿入する第2工程と、
前記前記外側筒状体内に挿入された前記中間筒状体の内側に前記内側筒状体を挿入する第3工程とを有し、
前記第2工程において前記中間筒状体の前記外周面側から前記内周面側に導出された前記軟固体状潤滑油が、前記第3工程において前記中間筒状体の前記内周面と前記内側筒状体との間に配置される、
ステアリングコラム装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングシャフトを回転可能に支持するためのステアリングコラム装置及びその製造方法に関し、特にステアリングホイールの位置を車両前後方向に調整するテレスコピック機能を備えたステアリングコラム装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールの位置を車両前後方向に調整するテレスコピック機能を備えたステアリングコラム装置には、運転者によるテレスコピック調整を円滑に行いやすくするため、外側筒状体としての金属製のアッパチューブと内側筒状体としての金属製のロアチューブとの間に、樹脂製の中間筒状体が配置されたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
テレスコピック調整の際には、ステアリングホイールの車両前後方向への移動に伴ってアッパチューブとロアチューブとの嵌合長さが変化する。特許文献1に記載のものでは、中間筒状体としてのブッシュがロアチューブに一体的に装着されており、テレスコピック調整の際にはアッパチューブの内周面がブッシュの外周面を摺動する。また、特許文献2に記載のものでは、中間筒状体としてのリテーナの外周面に突起が形成されており、この突起がアッパチューブの孔部に係合することにより、リテーナのアッパチューブに対する軸方向の移動及び軸方向周りの回転が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−322552号公報
【特許文献2】特開2019−189047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成されたステアリングコラム装置において、さらに円滑にテレスコピック調整を行えるようにするためには、中間筒状体の摺動が発生する面(特許文献1に記載のものでは外周面、特許文献2に記載のものでは内周面)にグリスを塗布することが望ましい。しかし、中間筒状体の外周面にグリスを塗布した場合には、グリスのチキソトロピー(シキソトロピーあるいは揺変性とも呼称される)により、グリスが収縮すると共に粘度が上がり、中間筒状体が拡径してアッパチューブに張り付きやすくなる。また、中間筒状体の内周面にグリスを塗布した場合には、同じくグリスのチキソトロピーにより、中間筒状体が縮径してロアチューブに張り付きやすくなる。
【0006】
このような張り付きによる固着現象が発生すると、テレスコピック調整の開始時にステアリングホイールを動かしにくくなってしまい、運転者に違和感や不快感を与えてしまうおそれがある。なお、チキソトロピーとは、せん断応力を与えると粘度が低下して液状になるが、応力を除くと徐々に粘度が上昇して固体状となる軟固体状物質の一般的な性質をいう。
【0007】
この対策としては、中間筒状体の外周面とアッパチューブの内周面との間、及び中間筒状体の内周面とロアチューブの外周面との間に、共にグリスを配置することが考えられる。このようにグリスを配置することにより、中間筒状体を拡径させる力と縮径させる力とが打ち消しあい、中間筒状体がアッパチューブもしくはロアチューブに張り付いてしまうことを抑制することが可能となる。しかし、この場合には、グリスを中間筒状体の外周面及び内周面に塗布して組み付けを行う作業が煩雑となり、ステアリングコラム装置の製造時における作業性の低下によりコストの上昇を招来することとなる。
【0008】
そこで、本発明は、ステアリングコラム装置の製造時において、外側筒状体と内側筒状体との間に配置される樹脂製の中間筒状体の外周面及び内周面に、軟固体状潤滑油を容易に塗布することが可能なステアリングコラム装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するため、ステアリングホイールが連結されたステアリングシャフトを回転可能に支持するためのステアリングコラム装置であって、軸方向に相対移動可能な金属線の外側筒状体及び内側筒状体と、前記外側筒状体と前記内側筒状体との間に配置された樹脂製の中間筒状体とを備え、前記中間筒状体の外周面及び内周面と前記外側筒状体及び前記内側筒状体との間に軟固体状潤滑油が配置されており、前記中間筒状体は、前記外側筒状体内に挿入されるとき、前記軟固体状潤滑油を前記外周面側から前記内周面側に導出させることが可能な導油孔が形成されている、ステアリングコラム装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、上記のステアリングコラム装置の製造方法であって、前記外側筒状体の内周面又は前記中間筒状体の前記外周面に軟固体状潤滑油を塗布する第1工程と、前記中間筒状体を前記外側筒状体内に挿入する第2工程と、前記前記外側筒状体内に挿入された前記中間筒状体の内側に前記内側筒状体を挿入する第3工程とを有し、前記第2工程において前記中間筒状体の前記外周面側から前記内周面側に導出された前記軟固体状潤滑油が、前記第3工程において前記中間筒状体の前記内周面と前記内側筒状体との間に配置される、ステアリングコラム装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステアリングコラム装置の製造時において、外側筒状体と内側筒状体との間に配置される樹脂製の中間筒状体の外周面及び内周面に、軟固体状潤滑油を容易に塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るステアリングコラム装置を示す全体図である。
図2】ステアリングコラム装置の構成例を示す断面図である。
図3】ステアリングコラム装置を軸方向に対して垂直な断面で示す断面図である。
図4】カラーを示す斜視図である。
図5】アッパチューブ、ロアチューブ、及びカラーを示す説明図である。
図6】(a)〜(d)は、ステアリングコラム装置の製造方法を示す説明図である。
図7】(a)〜(d)は、図6(a)〜(d)のそれぞれの部分拡大図である。
図8】(a)〜(e)は、比較例に係るステアリングコラム装置の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0014】
(ステアリングコラム装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るステアリングコラム装置を示す全体図である。図2は、ステアリングコラム装置の構成例を示す断面図である。図3は、ステアリングコラム装置を軸方向に対して垂直な断面で示す断面図である。以下、「上」及び「下」とは、ステアリングコラム装置が車両に搭載された状態における車両上下方向の「上」及び「下」をいうものとする。
【0015】
ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイール10と共に回転するステアリングシャフト11を回転可能に支持するためのものであり、軸方向に相対移動可能な金属線のアッパチューブ2及びロアチューブ3と、アッパチューブ2とロアチューブ3との間に配置された樹脂製のカラー4と、アッパチューブ2に固定された第1挟持板51及び第2挟持板52と、車体側に取り付けられるブラケット6と、運転者が操作するロックレバー7と、ロックレバー7の回動によって作動するクランプ機構8と、ステアリングシャフト11に操舵補助トルクを付与する操舵補助装置9とを備えている。アッパチューブ2、ロアチューブ3、及びカラー4は、それぞれ、本発明の外側筒状体、内側筒状体、及び中間筒状体の一態様である。
【0016】
ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイール10が取り付けられた側が上方となるように、水平方向に対して傾斜して車両に搭載される。アッパチューブ2は、ロアチューブ3よりも上方に配置され、ロアチューブ3の一部を収容している。アッパチューブ2及びロアチューブ3は、共に円筒状の金属製である。カラー4は、アッパチューブ2の下端部の内側に配置されている。
【0017】
ステアリングホイール10の車両前後方向(図1及び図2の左右方向)の位置を調整するテレスコピック調整の際には、ステアリングホイール10の車両前後方向への移動に伴って、アッパチューブ2とロアチューブ3との嵌合長さが変化する。カラー4は、アッパチューブ2とロアチューブ3との間に介在することにより、テレスコピック調整の際のロアチューブ3に対するアッパチューブ2の軸方向移動を円滑にする。
【0018】
ステアリングシャフト11は、アッパチューブ2及びロアチューブ3の内側に配置されており、ステアリングホイール10が一端部に取り付けられた筒状のアウタシャフト111と、アウタシャフト111にスプライン嵌合されたインナシャフト112とを有している。アウタシャフト111及びインナシャフト112は、ステアリングホイール10と一体に回転軸線Oを中心として回転する。アッパチューブ2の中心軸は、回転軸線Oと一致している。
【0019】
アウタシャフト111は、玉軸受12によってアッパチューブ2に回転可能に支持されている。インナシャフト112は、ステアリングホイール10側の軸方向一端部の外周面に外周スプライン嵌合部112aが設けられており、この外周スプライン嵌合部112aがアウタシャフト111の内周スプライン嵌合部111aに内嵌されている。アウタシャフト111は、この嵌合状態を保ちながら、インナシャフト112に対して軸方向の所定範囲で相対移動可能である。インナシャフト112の軸方向他端部には、操舵補助装置9の入力軸91が固定されている。
【0020】
操舵補助装置9は、入力軸91及び出力軸92と、入力軸91と出力軸92との間に配置されたトーションバー(捩れ軸)93と、トーションバー93の捩れ量に応じて操舵トルクを検出するトルクセンサ94と、トルクセンサ94によって検出された操舵トルクに応じたモータ電流が図略の制御装置から供給される電動モータ95と、電動モータ95の回転を減速して出力軸92に伝達するウォームギヤ機構と、ウォームギヤ機構等を収容するハウジング90とを備えている。図2では、ウォームギヤ機構のウォームホイール96を図示しており、このウォームホイール96がハウジング90内で電動モータ95のシャフトに取り付けられたウォームに噛み合わされている。
【0021】
ハウジング90から車両前方側(図1及び図2の左側)に突出した出力軸92の端部には、自在継手を介してインタミディエイトシャフトの一端部に連結され、インタミディエイトシャフトの他端部は自在継手を介してピニオンシャフトに連結されている。ピニオンシャフトは、車幅方向に進退移動するラックシャフトのラック歯に噛み合わされ、ラックシャフトの進退移動によって転舵輪である前輪が転舵される。図1及び図2では、出力軸92とインタミディエイトシャフトとを接続する自在継手の出力軸92側のソケット13を図示している。
【0022】
ハウジング90には、車両前方側の端部に一対のアーム部901が設けられており、図1では、このうち一方のアーム部901を図示している。一対のアーム部901には、それぞれ導油孔900が形成されており、この導油孔900に車体側の支持部材であるステアリングメンバに取り付けられた支持軸(図示せず)が挿通される。ハウジング90は、この支持軸に支持されており、ステアリングホイール10の上下方向の位置を調整するチルト調整時には、ハウジング90が支持軸を中心として揺動する。
【0023】
ロアチューブ3は、車両前方側の端部がハウジング90の筒部902に嵌合固定されている。アッパチューブ2の外周面には、図3に示すように、アッパチューブ2の周方向に所定の間隔を有して第1挟持板51及び第2挟持板52が固定されている。アッパチューブ2には、第1挟持板51及び第2挟持板52との間を軸方向に延びるスリット20が形成されている。スリット20は、アッパチューブ2における車両前方側の端面からステアリングホイール10側に向かって軸方向の所定範囲に延在している。
【0024】
ブラケット6は、車体側への取付部611,612を車幅方向両端部に有する取付ステー61と、第1挟持板51及び第2挟持板52を車幅方向に挟む一対の側板621,622及び天板部623を有するホルダ62とを備えている。取付部611,612には、取付ステー61に対して着脱可能なカプセル601,602がそれぞれ取り付けられており、これらのカプセル601,602が車体側の支持部材に例えばボルトにより固定される。
【0025】
クランプ機構8は、ロックレバー7と共に回動する第1カム部材81及びブラケット6の側板621に対して回転規制された第2カム部材82を有するカム機構80と、第1カム部材81及び第2カム部材82を車幅方向に貫通してロックレバー7と共に回動するチルトボルト83と、チルトボルト83の回動を円滑にするスラストベアリング84と、スラストベアリング84から突出したチルトボルト83の雄ねじ部831に螺合したナット85と、チルトボルト83の頭部832に係合してロックレバー7に対するチルトボルト83の回転を規制する座金86とを有して構成されている。
【0026】
チルトボルト83は、ブラケット6の一対の側板621,622にそれぞれ設けられた長穴621a,622a、及び第1挟持板51及び第2挟持板52にそれぞれ設けられた長穴51a,52aに挿通されている。一対の側板611,622の長穴621a,622aは、上下方向に長く形成され、第1挟持板51及び第2挟持板52の長穴51a,52aは、車両前後方向に長く形成されている。
【0027】
ロックレバー7が締付方向に操作されると、第1カム部材81が第2カム部材82に対して回動し、第2カム部材82がチルトボルト83に沿ってナット85側に移動する。クランプ機構8は、このカム機構80の作動により、ブラケット6の一対の側板621,622を第1挟持板51及び第2挟持板52に向かって締め付ける。そして、第1挟持板51及び第2挟持板52が一対の側板621,622に締め付けられて挟持されることにより、アッパチューブ2がブラケット6に対して固定される。
【0028】
一方、ロックレバー7が緩み方向に操作されると、一対の側板621,622の締め付けが解除され、アッパチューブ2がブラケット6に対して車両前後方向及び上下方向に移動可能となる。チルト調整及びテレスコピック調整は、この状態で行われる。チルト調整時には、チルトボルト83が一対の側板621,622の長穴621a,622aを上下方向に移動する。テレスコピック調整時には、チルトボルト83が第1挟持板51及び第2挟持板52の長穴51a,52aを車両前後方向に移動する。
【0029】
(カラー4の構成)
次に、カラー4の構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、カラー4を示す斜視図である。図5は、アッパチューブ2とロアチューブ3との間に配置されたカラー4を、アッパチューブ2を仮想線(二点鎖線)で示す説明図である。
【0030】
カラー4は、円筒状の本体部41と、軸方向一端部に設けられた環状突起42と、環状突起42よりも外径が大きい環状の堰部43と、本体部41から径方向外方に突出して設けられた係止爪44とを一体に有し、全体としてロアチューブ3を挿通させる筒状に形成されている。環状突起42は、本体部41から径方向外方に突出して形成されており、堰部43は、環状突起42からさらに径方向外方に突出して形成されている。
【0031】
また、カラー4には、軸方向の全体にわたってスリット400が形成されており、このスリット400が、図3に示すようにアッパチューブ2のスリット20と連通するように配置される。アッパチューブ2には、係止爪44が係合する係合孔200が形成されており、係止爪44が係合孔200に係合することで、アッパチューブ2に対するカラー4の回転及び軸方向移動が規制されている。
【0032】
カラー4は、アッパチューブ2における車両前方側の端部からアッパチューブ2内に挿入される。環状突起42及び堰部43は、カラー4のアッパチューブ2への挿入方向の後端部に設けられている。アッパチューブ2の車両前方側の端部には、環状突起42を収容する円筒状の膨大部21が設けられている。膨大部21の内径及び外径は、膨大部21よりも車両後方側の部分のアッパチューブ2の内径及び外径よりも大きくなっている。堰部43は、膨大部21の端面2b(図2参照)と軸方向に対向し、アッパチューブ2の外部に配置される。カラー4は、堰部43が膨大部21の端面2bに当接するまで、本体部41及び環状突起42がアッパチューブ2内に挿入される。
【0033】
カラー4には、アッパチューブ2の車両前方側の端部からアッパチューブ2内に挿入されるとき、その外周面4a側から軟固体状潤滑油を内周面4b側に導出させることが可能な導油孔40が形成されている。本実施の形態では、カラー4に六つの導油孔40が周方向等間隔に形成されており、それぞれの導油孔40が外周面4a側に塗布された軟固体状潤滑油の一部を内周面4b側に導出させる。軟固体状潤滑油は、カラー4の外周面4aとアッパチューブ2の内周面2aとの間、及びカラー4の内周面4bとロアチューブ3の外周面3aとの間に配置される。
【0034】
軟固体状潤滑油は、例えば鉱油もしくは合成油からなる液体の基油に増ちょう剤を分散させて半固体状(ゲル状)にした潤滑剤である。カラー4の内周面4bとロアチューブ3の外周面3aとの間に軟固体状潤滑油が配置されることにより、テレスコピック調整時におけるカラー4とロアチューブ3との摺動が円滑となる。また、軟固体状潤滑油をカラー4の外周面4aとアッパチューブ2の内周面2aとの間にも配置することで、上記のチキソトロピーにより、テレスコピック調整の開始時にステアリングホイール10を動かしにくくなってしまうことを抑制することができる。後述する図6及び図7では、この軟固体状潤滑油をグリスGとして示している。
【0035】
導油孔40は、環状突起42における膨大部21の奥側(ステアリングホイール10側)の軸方向端面42a、及び堰部43よりもアッパチューブ2側(挿入方向の前方側)における環状突起42の外周面42bに開口している。次に、このカラー4を用いたステアリングコラム装置1の製造方法について説明する。
【0036】
(ステアリングコラム装置の製造方法)
図6(a)〜(d)は、ステアリングコラム装置1の製造方法を示す説明図である。図7(a)〜(d)は、図6(a)〜(d)のそれぞれの部分拡大図である。図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)では、アッパチューブ2、ロアチューブ3、及びカラー4の一部を回転軸線Oに沿った断面で示している。
【0037】
導油孔40は、その少なくとも一部が、アッパチューブ2の中心軸に対して内周面4b側ほど挿入方向の後方側となるように傾斜している。本実施の形態では、環状突起42の外周面42bと内周面4bとの間で導油孔40がアッパチューブ2の中心軸に対して傾斜しており、図7(c)の矢印A方向にグリスGが流動しやすくなっている。また、本実施の形態では、導油孔40がカラー4における挿入方向の後方側の端面4cの内径側の一部にも開口している。ただし、導油孔40は、端面4cに開口していなくともよい。
【0038】
ステアリングコラム装置1の製造方法は、アッパチューブ2の内周面2a又はカラー4の外周面4aにグリスGを塗布する第1工程と、カラー4をアッパチューブ2内に挿入する第2工程と、アッパチューブ2内に挿入されたカラー4の内側にロアチューブ3を挿入する第3工程とを有している。図6(a)及び図7(a)は、第1工程を示し、図6(b)及び図7(b)は、第2工程を示している。図6(c)及び図7(c)は、第2工程の完了時の状態を示しており、図6(d)及び図7(d)は、第3工程を示している。なお、第1工程、第2工程、及び第3工程は、並行して行われることはなく、第1工程の完了後に第2工程が行われ、第2工程の完了後に第3工程が行われる。
【0039】
図6(a)及び図7(a)では、アッパチューブ2の膨大部21における内周面2aにグリスGを塗布した場合を示しているが、カラー4の挿入方向前方側の端部における外周面4aにグリスGを塗布してもよい。また、グリスGは、アッパチューブ2の内周面2a又はカラー4の外周面4aの周方向全体に塗布することが望ましいが、周方向の複数箇所にグリスGを塗布してもよい。
【0040】
第2工程では、カラー4をアッパチューブ2内に挿入することにより、グリスGがアッパチューブ2の内周面2aとカラー4の外周面4aとの間に配置される。また、第2工程においてカラー4の環状突起42が膨大部21の内側に挿入される際には、図6(c)及び図7(c)に示すように、膨大部21内の潤滑油の一部が導油孔40を介してカラー4の外周面4a側から内周面4b側に導出される。
【0041】
第3工程では、第2工程においてカラー4の外周面4a側から内周面4b側に導出された軟固体状潤滑油が、カラー4の内側にロアチューブ3が挿入されるにつれて、カラー4の内周面4bとロアチューブ3の外周面3aとの間に配置される。また、第3工程では、堰部43が膨大部21の端面2bに当接するまでカラー4がアッパチューブ2内に挿入され、この状態で係止爪44がアッパチューブ2の係合孔200に係合する。
【0042】
(比較例)
図8(a)〜(e)は、比較例に係るアッパチューブ2A及びカラー4Aをロアチューブ3と共に示している。このアッパチューブ2Aには、端部に膨大部21が設けられておらず、アッパチューブ2Aの外径及び内径が軸方向の全体にわたって均一である。カラー4Aは、上記の実施の形態に係るカラー4と同様に円筒状の本体部41を有しているが、アッパチューブ2Aへの挿入方向の後端部に導油孔40は形成されておらず、同後端部に本体部41よりも外径が大きい環状の壁部45が設けられている。
【0043】
アッパチューブ2Aにカラー4A及びロアチューブ3を組み付ける際には、例えば図8(a)に示すようにアッパチューブ2Aの端部の内周面2aにグリスGを塗布し、図8(b)及び(c)に示すようにカラー4Aをアッパチューブ2A内に挿入する。これにより、アッパチューブ2Aの内周面2aとカラー4Aの本体部41の外周面4aとの間にグリスGが配置される。
【0044】
その後、図8(d)に示すようにロアチューブ3の外周面3aにグリスGを塗布し、図8(e)に示すようにロアチューブ3をカラー4Aの内側に挿入する。これにより、ロアチューブ3の外周面3aに塗布されたグリスGがカラー4Aの内周面4bとロアチューブ3の外周面3aとの間に配置される。
【0045】
この比較例では、ロアチューブ3の外周面3aにグリスGを塗布する工程が必要となり、作業工数が増大してしまう。
【0046】
(実施の形態の効果)
以上説明した本実施の形態によれば、カラー4に導油孔40が形成されているので、カラー4をアッパチューブ2に挿入することにより、導油孔40を経てグリスGが外周面4a側から内周面4b側に導出される。これにより、例えば上記の比較例のようにロアチューブ3の外周面3aにグリスGを塗布することなく、グリスGをカラー4Aの内周面4bとロアチューブ3の外周面3aとの間に配置することができ、製造時における工数を削減することが可能となる。
【0047】
また、カラー4は、アッパチューブ2の膨大部21に収容される環状突起42を有しており、この環状突起42の軸方向の端面42aに導油孔40が開口しているので、膨大部21内のグリスGが導油孔40に導入されやすい。また、導油孔40は、環状突起42の外周面42bにも開口しているので、さらにグリスGが導油孔40に導入されやすくなっている。
【0048】
また、カラー4には堰部43が設けられているので、膨大部21内のグリスGがアッパチューブ2から漏れ出すことが抑制される。またさらに、導油孔40がアッパチューブ2の中心軸に対して傾斜して形成されているので、グリスGが外周面4a側から内周面4b側に円滑に流動する。
【0049】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0050】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施形態では、カラー4がアッパチューブ2に固定され、カラー4の内周面4bがロアチューブ3の外周面3aを摺動する場合について説明したが、これに限らず、カラー4がロアチューブ3に固定され、アッパチューブ2の内周面2aがカラー4の外周面4aを摺動するようにしてもよい。
【0051】
また、上記の実施の形態では、ステアリングコラム装置1が操舵補助装置9を有している場合について説明したが、操舵補助装置を有していないステアリングコラム装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…ステアリングコラム装置 10…ステアリングホイール
11…ステアリングシャフト 2…アッパチューブ(外側筒状体)
2a…内周面 2b…端面
21…膨大部 3…ロアチューブ(内側筒状体)
3a…外周面 4…カラー(中間筒状体)
4a…外周面 4b…内周面
40…導油孔 42…環状突起
42a…端面 42b…外周面
43…堰部 G…グリス(軟固体状潤滑油)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8