特開2021-142845(P2021-142845A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-142845(P2021-142845A)
(43)【公開日】2021年9月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20210827BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20210827BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210827BHJP
   D06M 15/41 20060101ALI20210827BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20210827BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20210827BHJP
【FI】
   B60C11/00 D
   B60C9/00 A
   B60C1/00 A
   D06M15/41
   D06M15/693
   D06M13/395
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-42208(P2020-42208)
(22)【出願日】2020年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智江
【テーマコード(参考)】
3D131
4L033
【Fターム(参考)】
3D131AA04
3D131AA31
3D131AA32
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA37
3D131BA02
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA11
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC07
3D131BC13
3D131BC31
3D131BC36
3D131BC44
3D131DA01
3D131DA54
3D131DA56
3D131EA02U
3D131LA28
4L033AA04
4L033AB03
4L033AC11
4L033BA69
4L033CA34
4L033CA68
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機繊維コードにコーティングされる接着剤組成物に、レゾルシンが含まれず、環境への負荷が少ないことに加えて、優れた転がり抵抗性を有する、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明は、ベーストレッドと、該ベーストレッドのタイヤ半径方向外側に位置するキャップトレッドと、を有するトレッド部を備えたタイヤであって、前記タイヤは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされた、有機繊維コードを有し、前記ベーストレッドは、10Hz、30℃におけるtanδ(30℃tanδ)に対する10Hz、0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/30℃tanδ)が、2.90以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーストレッドと、該ベーストレッドのタイヤ半径方向外側に位置するキャップトレッドと、を有するトレッド部を備えたタイヤであって、
前記タイヤは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされた、有機繊維コードを有し、
前記ベーストレッドは、10Hz、30℃におけるtanδ(30℃tanδ)に対する10Hz、0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/30℃tanδ)が、2.90以上であることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記ベーストレッドの0℃tanδ/30℃tanδが、3.00以上であることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ベーストレッドの30℃tanδが、0.075〜0.220であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ベーストレッドの0℃tanδが、0.200〜0.625であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ベーストレッドのゴム成分として、スチレン量が26質量%以上のスチレンブタジエンゴムを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記スチレンブタジエンゴムのスチレン量が、39質量%以上であることを特徴とする、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム成分が、天然ゴムをさらに含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム成分が、ブタジエンゴムをさらに含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記キャップトレッドの貯蔵弾性率E’cと、前記ベーストレッドの貯蔵弾性率E’bとの比率(E’c/E’b)が、0.25〜0.75であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記接着剤組成物が、さらにゴムラテックスを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記接着剤組成物が、さらにイソシアネート化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ポリフェノール類は、3つ以上の水酸基を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記アルデヒド類は、2つ以上のアルデヒド基を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記イソシアネート化合物が、(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物であることを特徴とする、請求項11に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記有機繊維コードが、カーカスプライ及び/又はベルト補強層に用いられることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル繊維等の有機繊維は、高い初期弾性率や、優れた熱時寸法安定性を有しているため、フィラメント、コード、ケーブル、コード織物、帆布等の形態で、タイヤ等のゴム物品の補強材として極めて有用であり、これらの繊維とゴムとの接着性を改良させるため、種々の接着剤組成物が提案されている。接着剤組成物として、例えば、レゾルシンや、ホルマリン、ゴムラテックス等を含むRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)接着剤を用い、該RFL接着剤を熱硬化させることにより接着力を確保する技術が、知られている(例えば、特許文献1〜3等を参照。)。
【0003】
また、接着剤組成物については、レゾルシンとホルマリンを初期縮合させたレゾルシンホルマリン樹脂を用いる技術(特許文献4、5参照)や、エポキシ樹脂でポリエステル繊維等からなるタイヤコードを前処理することにより、接着力の向上を図る技術が知られている。
ただし、上述した接着剤組成物に一般的用いられているレゾルシンは、近年、作業環境を考慮して、使用量の削減が求められている。
【0004】
そのため、レゾルシンを含まず、環境への配慮がされた接着剤組成物や、接着方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献6を参照。)。
しかしながら、レゾルシンを含有しない接着剤組成物は、硬化に時間を要するため、生産性や、接着性の点でさらなる改善が求められている。
また、接着対象の有機繊維としてポリエチレンテレフタラート(PET)繊維を用いる場合、レゾルシンを含有しない接着剤組成物の、接着性能が十分に得られないことが多く、特に改善が望まれていた。これは、熱的寸法性の良いポリエチレンテレフタレートを代表とする主鎖中にエステル結合を有する線状高分子であるポリエステル繊維材料をゴム製品の補強材として使用すると、構造的に緻密であり、また、官能基が少ないポリエステル繊維材料はこのRFL等のラテックスと水溶性フェノールを架橋する原材料を混合させて得られる接着剤組成物では、殆ど接着が得られないためである。
【0005】
また、上述した環境へ配慮した接着剤組成物の要求に加えて、タイヤの寿命を延ばす観点から、転がり抵抗性に優れたタイヤの開発も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−2370号公報
【特許文献2】特開昭60−92371号公報
【特許文献3】特開昭60−96674号公報
【特許文献4】特開昭63−249784号公報
【特許文献5】特公昭63−61433号公報
【特許文献6】特開2010−255153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明の目的は、有機繊維コードにコーティングされる接着剤組成物に、レゾルシンが含まれず、環境への負荷が少ないことに加えて、優れた転がり抵抗性を有する、タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ベーストレッドと、該ベーストレッドのタイヤ半径方向外側に位置するキャップゴムと、を有するトレッド部を備えたタイヤについて、上記目的を達成するべく検討を行った。
その結果、有機繊維コードをコーティングする接着剤組成物中に、特定のポリフェノール類及びアルデヒド類を含有させることによって、レゾルシンを用いない場合でも高い接着力を実現できること、さらに、30℃のtanδに対する0℃のtanδの比を大きく(具体的には、0℃tanδ/30℃tanδを2.90以上に)設定することによって、転がり抵抗の低減につながる低周波数のtanδを低くできるため、環境への負荷低減と優れた転がり抵抗性とを両立できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のタイヤは、ベーストレッドと、該ベーストレッドのタイヤ半径方向外側に位置するキャップトレッドと、を有するトレッド部を備えたタイヤであって、
前記タイヤは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされた、有機繊維コードを有し、
前記ベーストレッドは、10Hz、30℃におけるtanδ(30℃tanδ)に対する10Hz、0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/30℃tanδ)が、2.90以上であることを特徴とする。
上記構成により、有機繊維コードにコーティングされる接着剤組成物に、レゾルシンが含まれず、環境への負荷が少ないことに加えて、優れた転がり抵抗性を実現できる。
【0010】
また、本発明のタイヤでは、前記ベーストレッドの0℃tanδ/30℃tanδが、3.00以上であることが好ましい。転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0011】
さらに、本発明のタイヤでは、前記ベーストレッドの30℃tanδが、0.075〜0.220であることが好ましい。転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0012】
さらにまた、本発明のタイヤでは、前記ベーストレッドの0℃tanδが、0.200〜0.625であることが好ましい。転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0013】
さらに、本発明のタイヤでは、前記ベーストレッドのゴム成分として、スチレン量が26質量%以上のスチレンブタジエンゴムを含むことが好ましく、該スチレンブタジエンゴムのスチレン量が、39質量%以上であることがより好ましい。転がり抵抗性及び通過騒音の改善を、より確実に実現できるためである。
【0014】
また、本発明のタイヤでは、前記ゴム成分が、天然ゴムをさらに含むことが好ましい。タイヤへ適用した際の、転がり抵抗性及び通過騒音の改善を、より確実に実現できるためである。
【0015】
さらに、本発明のタイヤでは、ブタジエンゴムをさらに含むことが好ましい。タイヤへ適用した際の、転がり抵抗性及び通過騒音の改善を、より確実に実現できるためである。
【0016】
さらにまた、本発明のタイヤでは、前記キャップトレッドの貯蔵弾性率E’cと、前記ベーストレッドの貯蔵弾性率E’bとの比率(E’c/E’b)が、0.25〜0.75であることが好ましい。タイヤの転がり抵抗性及び通過騒音のバランスをより高めることができるためである。
【0017】
また、本発明のタイヤでは、前記接着剤組成物が、さらにゴムラテックスを含むことが好ましい。有機繊維とゴム部材とのより優れた接着性が得られるためである。
【0018】
さらにまた、本発明のタイヤでは、前記接着剤組成物が、さらにイソシアネート化合物を含むことが好ましく、該イソシアネート化合物が、(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物であることがより好ましい。有機繊維とゴム部材とのより優れた接着性が得られるためである。
【0019】
また、本発明のタイヤでは、前記ポリフェノール類は、3つ以上の水酸基を有することが好ましい。有機繊維とゴム部材とのより優れた接着性が得られるためである。
【0020】
さらに、本発明のタイヤでは前記アルデヒド類は、2つ以上のアルデヒド基を有することが好ましい。有機繊維とゴム部材とのより優れた接着性が得られるためである。
【0021】
また、本発明のタイヤでは、前記有機繊維コードが、少なくともカーカスプライ及び/又はベルト補強層に用いられることが好ましい。環境への負荷が少ないことに加えて、優れた耐久性を実現できるためである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、有機繊維コードにコーティングされる接着剤組成物に、レゾルシンが含まれず、環境への負荷が少ないことに加えて、優れた転がり抵抗性を有する、タイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のタイヤについて、その実施形態に基づいて詳細に例示説明する。
本発明のタイヤは、ベーストレッドと、該ベーストレッドのタイヤ半径方向外側に位置するキャップトレッドと、を有するトレッド部を備えたタイヤである。
そして、本発明のタイヤでは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされた、有機繊維コードを有し、
前記ベーストレッドは、10Hz、30℃におけるtanδ(30℃tanδ)に対する10Hz、0℃におけるtanδ(0℃tanδ)の比(0℃tanδ/30℃tanδ)が、2.90以上であることを特徴とする。
【0024】
タイヤのカーカスプライや、ベルト等に用いられる有機繊維コードに塗布するための接着剤組成物が、特定のポリフェノール類及びアルデヒド類を含有するものから構成することで、レゾルシンを用いない場合であっても、良好な接着性を実現でき、環境への負荷を低減することが可能となる。
【0025】
また、タイヤのトレッド部を構成するベーストレッドのtanδの低減を図った場合には、タイヤの転がり抵抗の改善を図れるものの、通過騒音レベルが悪化するという問題があり、一方、tanδを高くすると、通過騒音レベルを抑えることができるものの、転がり抵抗が悪化するという問題があった。
そのため、本発明では、転がり抵抗と通過騒音に影響するtanδの周波数領域に着目し、転がり抵抗については、低周波数のtanδを低くした方が良化する傾向にあり、通過騒音の改良には高周波数のtanδを高くすることが好ましいことを見出した。そして、高周波数の粘弾性は装置の仕様上測定することが難しいため、温度周波数換算(WLF則)により、10Hz、30℃のtanδに対する10Hz、0℃のtanδの比を大きく(具体的には、0℃tanδ/30℃tanδを2.90以上に)設定することによって、タイヤの転がり抵抗性を向上でき、さらに通過騒音についても改善が可能となる。
【0026】
ここで、前記ベーストレッドについては、前記0℃tanδ/30℃tanδが2.90以上であることを要するが、前記0℃tanδ/30℃tanδが2.90未満の場合には、転がり抵抗及び通過騒音の周波数の依存性について十分に適正化できていないため、転がり抵抗性と通過騒音の低減とを両立することができない。
同様の観点から、前記0℃tanδ/30℃tanδは、3.00以上であることが好ましく、3.10以上であることがより好ましい。
一方、0℃tanδ/30℃tanδが大きすぎる場合には、十分な転がり抵抗の低減が見込めないため、前記0℃tanδ/30℃tanδは、6.0以下であることが好ましい。
【0027】
なお、前記ベーストレッドの、前記0℃tanδ及び前記30℃tanδの測定については、上島製作所株式会社製スペクトロメーターを用いて測定することができる。ただし、それぞれのtanδの値が正確に得られる方法であれば特に限定はされず、通常使用される測定器を用いて測定することができる。
また、前記0℃tanδ及び前記30℃tanδの測定の際の、初期歪、動歪、周波数の条件としては、例えば、初期歪2%、動歪1%、周波数10Hzの条件が挙げられる。
【0028】
また、前記ベーストレッドの30℃tanδについては、上述した0℃tanδ/30℃tanδの関係を満たすことができれば、特に限定はされない。例えば、タイヤの通過騒音をより改善できる点からは、前記ベーストレッドの30℃tanδを、0.075以上とすることが好ましく、0.100以上とすることがより好ましい。また、タイヤの転がり抵抗性をより改善できる点からは、前記ベーストレッドの30℃tanδを、0.220以下とすることが好ましく、0.170以下とすることがより好ましい。つまり、転がり抵抗性と通過騒音の改善とをより高いレベルで両立させるためには、前記ベーストレッドの30℃tanδを、0.075〜0.220とすることが好ましい。
【0029】
さらに、前記ベーストレッドの0℃tanδについても、上述した0℃tanδ/30℃tanδの関係を満たすことができれば、特に限定はされない。例えば、タイヤの通過騒音をより改善できる点からは、前記ベーストレッドの0℃tanδを、0.200以上とすることが好ましく、0.300以上とすることがより好ましい。また、タイヤの転がり抵抗性をより改善できる点からは、前記ベーストレッドの0℃tanδを、0.625以下とすることが好ましく、0.500以下とすることがより好ましい。つまり、転がり抵抗性と通過騒音の改善とをより高いレベルで両立させるためには、前記ベーストレッドの0℃tanδを、0.200〜0.625とすることが好ましい。
【0030】
なお、前記ベーストレッドの0℃tanδ/30℃tanδの値、前記0℃tanδ及び前記30℃tanδのそれぞれの値を調整するための方法については、特に限定はされない。例えば、前記ベーストレッドを構成するゴム組成物(以下、「ベーストレッド用ゴム組成物」という。)の成分について適正化を図る方法が挙げられる。後述するように、ゴム成分の種類及び含有量を調整したり、充填剤の種類及び含有量を調整することによって、前記0℃tanδ/30℃tanδの値、前記0℃tanδ及び前記30℃tanδのそれぞれの値を、本発明で規定した範囲に設定することが可能である。
【0031】
<ベーストレッド用ゴム組成物>
前記ベーストレッド用ゴム組成物を構成する各成分については、上述した0℃tanδ/30℃tanδの関係を満たすことができるものであれば、特に限定はされない。
ベーストレッドに要求される性能に応じて、ゴム成分、充填剤の種類や含有量を適宜調整することができる。
【0032】
前記ベーストレッド用ゴム組成物のゴム成分については、特に限定はされないが、上述した0℃tanδ/30℃tanδの関係を満たしやすく、タイヤへ適用した際の、転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できる点からは、スチレン量が26質量%以上のスチレンブタジエンゴム(SBR)を含むことが好ましい。また、同様の観点から、前記SBRのスチレン量は、30質量%以上であることがより好ましく、39質量%以上であることがさらに好ましい。
【0033】
なお、前記SBRのスチレン量については、H-NMRスペクトルの積分比より求めることができる。
【0034】
さらに、前記ゴム成分における前記スチレンブタジエンゴムの含有率は、タイヤへ適用した際の、転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できる点からは、10〜80質量%であるであることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましく、15〜60質量%であることがさらに好ましく、20〜45質量%であることが特に好ましい。前記ゴム成分における前記スチレンブタジエンゴムの含有率が、10質量%以上であることによって、上述した0℃tanδ/30℃tanδの関係を満たしやすく、タイヤへ適用した際の、転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できる。
【0035】
また、前記ゴム成分は、前記SBRに加えて、天然ゴム(NR)をさらに含むことが好ましい。上述した0℃tanδ/30℃tanδの関係を満たしやすく、前記ベーストレッドとして適用した際の、タイヤの転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0036】
さらに、前記ゴム成分は、前記SBRや前記NRに加えて、ブタジエンゴム(BR)をさらに含むことが好ましい。上述した0℃tanδ/30℃tanδの関係を満たし、前記ベーストレッドとして適用した際の、転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より高いレベルで両立できるためである。
【0037】
さらにまた、前記ゴム成分は、前記ベーストレッドとして適用した際の、転がり抵抗性と通過騒音の改善とを、より確実に両立するという観点から、前記天然ゴムを10〜75質量%、前記ブタジエンゴムを10〜75質量%、前記スチレンブタジエンゴムを15〜60質量%含むことが好ましく、天然ゴムを20〜70質量%、前記ブタジエンゴムを10〜70質量%、前記スチレンブタジエンゴムを20〜45質量%含むことがより好ましい。
なお、前記SBR、前記NR及び前記BRは、未変性のものであっても、変性されたものであってもよい。
【0038】
なお、前記ゴム成分については、要求される性能に応じて、上述したSBR、NR及びBR以外のゴム(その他のゴム成分)についても含むことができる。前記その他のゴム成分としては、イソプレンゴム(IR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。
【0039】
また、前記ベーストレッド用ゴム組成物に含まれる充填剤の有無、含有量、種類等については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜変更することができる。
例えば、前記充填剤として、カーボンブラックや、シリカ、その他の無機充填剤等を含むことができる。
【0040】
前記カーボンブラックの種類については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。カーボンブラックは、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのものを用いることができる。
【0041】
また、前記ベーストレッド用ゴム組成物に含まれる前記カーボンブラックの含有量については、前記ゴム成分100質量部に対して、25〜65質量部であることが好ましく、30〜45質量部であることがより好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して、25質量部以上とすることで、前記ベーストレッドとして適用した際に、より高い補強性及び耐亀裂進展性を得ることができ、45質量部以下とすることで、低発熱性の劣化を抑えることができる。
【0042】
前記シリカの種類については、例えば、湿式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
上述した中でも、前記シリカは、湿式シリカであることが好ましく、沈降シリカであることがより好ましい。これらのシリカは、分散性が高く、タイヤの転がり抵抗の低減を図ることができる。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性〜アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
【0043】
また、本発明においてシリカは任意ではあるが、シリカを含む場合には、前記シリカの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜60質量部であることが好ましい。前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上であれば、転がり抵抗をより低減でき、60質量部以下とすることで、加工性悪化を抑えることができる。
【0044】
なお、その他の無機充填剤としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・H2O)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(CaSiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように、電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。
【0045】
前記ベーストレッド用ゴム組成物は、樹脂を含むこともできる。前記樹脂としては、C5系樹脂、C5/C9系樹脂、C9系樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、テルペン−芳香族化合物系樹脂、等が挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
なお、前記ベーストレッド用ゴム組成物は、上述したゴム成分及び充填剤の他にも、その他の成分を、発明の効果を損なわない程度に含むことができる。
その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、加硫剤(硫黄)、加硫促進剤、加硫促進助等の、ゴム工業界で通常使用されている添加剤を適宜含むことができる。
【0047】
前記ベーストレッド用ゴム組成物が、前記充填剤としてシリカを含有する場合には、シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。シリカによる補強性及び低発熱性の効果をさらに向上させることができるからである。なお、シランカップリング剤は、公知のものを適宜使用することができる。
【0048】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0049】
前記加硫促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン(1,3−ジフェニルグアニジン等)等のグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0050】
前記加硫促進助剤については、例えば、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸としては、飽和若しくは不飽和、直鎖状若しくは分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数も特に制限されないが、例えば炭素数1〜30、好ましくは15〜30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸;ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸;メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。
【0051】
<接着剤組成物がコーティングされた有機繊維コード>
そして、本発明のタイヤでは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされた、有機繊維コードを有する。
カーカスプライや、ベルト等に用いられる有機繊維コードをコーティングする接着剤組成物が、特定のポリフェノール類及びアルデヒド類を含有するものから構成することで、環境への負荷を考慮してレゾルシンを用いない場合であっても、良好な接着性を実現できる。
【0052】
(ポリフェノール類)
前記接着剤組成物は、樹脂成分としてポリフェノール類を含む。接着剤組成物中にポリフェノール類を含むことで、樹脂組成物の接着性を高めることができる。
ここで、前記ポリフェノール類については、水溶性のポリフェノール類であり、レゾルシン(レゾルシノール)以外のポリフェノールであれば限定はされず、芳香族環の数や、水酸基の数についても、適宜選択することができる。
【0053】
また、前記ポリフェノール類は、より優れた接着性を実現する観点からは、2個以上の水酸基を有することが好ましく、3つ以上の水酸基を有することがより好ましい。3つ以上の水酸基を含むことにより水分を含む接着剤組成物液により前記ポリフェノールあるいは前記ポリフェノールの縮合物は水溶することで接着剤組成物内に均一して分布できるので、より優れた接着性を実現できる。
さらに、前記ポリフェノール類が、複数個(2個以上)の芳香環を含むポリフェノールの場合、それらの芳香環では、各々、2個又は3個の水酸基がオルト、メタ又はパラ位に存在する。
【0054】
上述した3つ以上の水酸基を有するポリフェノール類としては、例えば以下に示すポリフェノール類が挙げられる。
フロログルシノール:
【化1】
モリン(2’,4’,3,5,7−ペンタヒドロキシフラボン):
【化2】
フロログルシド(2,4,6,3,’5’−ビフェニルペントール):
【化3】
【0055】
(アルデヒド類)
前記接着剤組成物は、上述したポリフェノール類に加えて、樹脂成分としてアルデヒド類を含む。接着剤組成物中にアルデヒド類を含有することで、上述したポリフェノール類と共に高い接着性を実現できる。
ここで、前記アルデヒド類については、特に限定はされず、要求される性能に応じて、適宜選択することができる。なお、本発明では、前記アルデヒド類が発生源であるルデヒド類の誘導体も、アルデヒド類の範囲に含まれる。
【0056】
前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロラール、ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド等のモノアルデヒドや、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド類、芳香族環を有するアルデヒド、ジアルデヒドデンプンなどが挙げられる。これらのアルデヒド類は、一種類を用いても、複数種を混合して用いてもよい。
これらの中でも、前記アルデヒド類は、芳香族環を有するアルデヒド類を含有することが好ましい。より優れた接着性を得ることができるためである。
なお、前記アルデヒド類については、ホルムアルデヒドを含まないことが好ましい。なお、本発明において「ホルムアルデヒドを含まない」とは、アルデヒド類の総質量に基づくホルムアルデヒドの質量含有量が0.5質量%未満であることを意味する。
【0057】
また、前記芳香環を有するアルデヒド類は、1分子内に、少なくとも1つの芳香環を含み、少なくとも 1つのアルデヒド基を有する芳香族アルデヒドである。前記芳香環を有するアルデヒド類は、環境への負荷が少なく、また、優れた機械的強度、電気絶縁性、耐酸性、耐水性、耐熱性等を備えた、比較的安価な樹脂を形成することができる。
【0058】
また、前記芳香族環を有するアルデヒド類は、より優れた接着性を実現する観点からは、2つ以上のアルデヒド基を有することが好ましい。前記アルデヒド類が、複数のアルデヒド基により架橋し、縮合することによって、熱硬化性樹脂の架橋度を高くすることができるため、接着性をより高めることができる。
さらに、前記アルデヒド類が、2つ以上のアルデヒド基を有する場合、1つの芳香族環において、2つ以上のアルデヒド基が存在することがより好ましい。なお、各アルデヒド基は、1つの芳香族環において、オルト、メタ又はパラの位置に存在することができる。
【0059】
このようなアルデヒド類としては、例えば、1,2−ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,3−ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,4−ベンゼンジカルボアルデヒド1,4−ベンゼンジカルボアルデヒド、2−ヒドロキシベンゼン−1,3,5−トリカルボアルデヒド、これらの化合物の混合物等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、より優れた接着性を実現できる観点から、前記芳香族環を有するアルデヒド類として、1,4−ベンゼンジカルボアルデヒドを少なくとも用いることが好ましい。
【化4】
【0061】
また、前記芳香族環を有するアルデヒド類については、ベンゼン環を有するものだけでなく、複素芳香族化合物も含まれる。
前記複素芳香族化合物であるアルデヒド類としては、例えば、以下に示すようなフラン環を有するアルデヒド類が挙げられる。
【化5】
(式中、Xは、Oを含み;Rは、−Hまたは−CHOを示す。)
【0062】
上記のフラン環を有するアルデヒド類として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化6】
(式中、Rは、−Hまたは−CHO;R1、R2及びR3は、それぞれ、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を示す。)
【0063】
なお、前記接着剤組成物では、前記ポリフェノール類及び前記アルデヒド類が縮合された状態であり、前記ポリフェノール類と前記芳香環を有するアルデヒド類との質量比(芳香環を有するアルデヒド類の含有量/ポリフェノール類の含有量)は、0.1以上、3以下であることが好ましく、0.25以上、2.5以下であることがより好ましい。前記ポリフェノール類と前記芳香環を有するアルデヒド類との間では、縮合反応が起こるが、その生成物である樹脂の硬度、接着性がより適したものになるからである。
【0064】
また、前記接着剤組成物中の、前記ポリフェノール類及び前記芳香族環を有するアルデヒド類の合計含有量は、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。作業性等を悪化させることなく、より優れた接着性を確保できるためである。
なお、前記ポリフェノール類及び前記芳香族環を有するアルデヒド類の質量比並びに合計含有量は、乾燥物の質量(固形分比)である。
【0065】
(イソシアネート化合物)
前記接着剤組成物は、上述したポリフェノール類及びアルデヒド類に加えて、イソシアネート化合物をさらに含むことが好ましい。ポリフェノール類及びアルデヒド類との相乗効果によって、接着剤組成物の接着性を大きく高めることができる。
【0066】
ここで、前記イソシアネート化合物は、接着剤組成物の被着体である樹脂材料(例えば、ポリフェノール類及びアルデヒド類を縮合させたフェノール/アルデヒド樹脂) への接着を促進させる作用を有する化合物であって、極性官能基としてイソシアネート基を有する化合物である。
【0067】
前記イソシアネート化合物の種類については、特に限定はされないが、接着性をより向上できる観点から、(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物であることが好ましい。前記接着剤組成物中に、前記イソシアネート化合物を含ませると、被着体繊維と接着剤組成物の界面近傍の位置にブロックド)イソシアネート基含有芳香族が分布し、接着促進効果が得られる作用が得られ、この作用効果により、有機コードとの接着をより高度化することができる。
前記(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物は、(ブロックド)イソシアネート基を有する芳香族化合物である。また、「(ブロックド)イソシアネート基」とは、ブロックドイソシアネート基又はイソシアネート基を意味し、イソシアネート基の他、イソシアネート基に対するブロック化剤と反応して生じたブロックドイソシアネート基、イソシアネート基に対するブロック化剤と未反応のイソシアネート基、又はブロックドイソシアネート基のブロック化剤が解離して生じたイソシアネート基等を含む。
【0068】
さらに、前記(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物は、芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造を含むのが好ましく、芳香族類がメチレン結合した分子構造を含むことがより好ましい。芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、又はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物等にみられる分子構造が挙げられる。
【0069】
なお、前記(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤を含む化合物、ジフェニルメタンジイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物、水性ウレタン化合物等が挙げられる。
【0070】
前記芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤とを含む化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネートと公知のイソシアネートブロック化剤を含むブロックドイソシアネート化合物等が好適に挙げられる。上記ジフェニルメタンジイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを、イソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤でブロックした反応生成物が挙げられる。具体的には、エラストロンBN69(第一工業製薬(株)製)、エラストロンBN77(第一工業製薬(株)製)やメイカネートTP−10(明成化学工業(株)製)等の市販のブロックドポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0071】
前記水性ウレタン化合物は、芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造、好ましくは芳香族類がメチレン結合した分子構造を含有する有機ポリイソシアネート化合物(α)と、複数の活性水素を有する化合物(β)と、イソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)とを反応させて得られる。また、水性ウレタン化合物(F)は、その可撓性のある分子構造から、接着改良剤としての作用のみならず、可撓性のある架橋剤として接着剤の高温時流動化を抑止する作用も有する。
なお、「水性」とは、水溶性または水分散性であることを示し、「水溶性」とは必ずしも完全な水溶性を意味するのではなく、部分的に水溶性のもの、あるいは接着剤組成物の水溶液中で相分離しないものを意味する。
【0072】
ここで、前記水性ウレタン化合物(F)としては、例えば、下記一般式(I):
【化7】
(式中、Aは芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造を含有する有機ポリイソシアネート化合物(α)の活性水素が脱離した残基を示し、Yはイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)の活性水素が脱離した残基を示し、Zは化合物(δ)の活性水素が脱離した残基を示し、Xは複数の活性水素を有する化合物(β)の活性水素が脱離した残基であり、nは2〜4の整数であり、p+mは2〜4の整数(m≧0.25)である。)で表される水性ウレタン化合物が好ましい。
【0073】
なお、前記芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造を含有する有機ポリイソシアネート化合物(α)としては、メチレンジフェニルポリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
また、前記複数の活性水素を有する化合物(β)は、好ましくは2〜4個の活性水素を有し、平均分子量が5,000以下の化合物である。かかる化合物(β)としては、(i)2〜4個の水酸基を有する多価アルコール類、(ii)2〜4個の第一級及び/又は第二級アミノ基を有する多価アミン類、(iii)2〜4個の第一級及び/又は第二級アミノ基と水酸基を有するアミノアルコール類、(iv)2〜4個の水酸基を有するポリエステルポリオール類、(v)2〜4個の水酸基を有するポリブタジエンポリオール類及びそれらと他のビニルモノマーとの共重合体、(vi)2〜4個の水酸基を有するポリクロロプレンポリオール類及びそれらと他のビニルモノマーとの共重合体、(vii)2〜4個の水酸基を有するポリエーテルポリオール類であって、多価アミン、多価フェノール及びアミノアルコール類のC2〜C4のアルキレンオキサイド重付加物、C3以上の多価アルコール類のC2〜C4のアルキレンオキサイド重付加物、C2〜C4のアルキレンオキサイド共重合物、又はC3〜C4のアルキレンオキサイド重合物等が挙げられる。
さらに、前記イソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)は、熱処理によりイソシアネート基を遊離することが可能な化合物であり、公知のイソシアネートブロック化剤が挙げられる。
さらにまた、前記化合物(δ)は、少なくとも1つの活性水素とアニオン性及び/又は非イオン性の親水性基を有する化合物である。少なくとも1つの活性水素とアニオン性の親水基を有する化合物としては、例えば、タウリン、N−メチルタウリン、N−ブチルタウリン、スルファニル酸等のアミノスルホン酸類、グリシン、アラニン等のアミノカルボン酸類等が挙げられる。一方、少なくとも1つの活性水素と非イオン性の親水基を有する化合物としては、例えば、親水性ポリエーテル鎖を有する化合物類が挙げられる。
【0074】
また、前記接着剤組成物における、前記イソシアネート化合物の含有量は、特に限定はされないが、より確実に優れた接着性を確保する観点から、5〜65質量%の範囲であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。
なお、前記イソシアネート化合物の含有量は、乾燥物の質量(固形分比)である。
【0075】
(ゴムラテックス)
前記接着剤組成物は、上述したポリフェノール類、アルデヒド類及びイソシアネート化合物に加えて、実質的にはゴムラテックスをさらに含むことができる。ゴム部材との接着性をより高めることができるためである。
【0076】
ここで、前記ゴムラテックスについては、特に限定はされず、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(Vp)等の合成ゴムを用いることができる。これらのゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0077】
また、前記ゴムラテックスについては、前記イソシアネート化合物を配合する前に、前記フェノール類及び前記アルデヒド類と混合させることが好ましい。
さらに、前記接着剤組成物中の前記ゴムラテックスの含有量は、20〜70質量%であることが好ましく、25〜60質量%であることがより好ましい。なお、前記ゴムラテックスの含有量は、乾燥物の質量(固形分比)である。
【0078】
なお、前記有機繊維コード用接着剤組成物の製造方法は、特に限定はされないが、例えば、前記ポリフェノール類、前記アルデヒド類、前記ゴムラテックス等の原材料を混合し、熟成する方法、又は、前記ポリフェノール類と前記アルデヒド類とを混合して熟成した後に、前記ゴムラテックスをさらに加えて熟成する方法、等が挙げられる。また、前記イソシアネート化合物を含む場合には、前記ゴムラテックスを加え、熟成した後に、イソシアネート化合物を加えることができる。
なお、前記多環芳香族炭化水素、前記アルデヒド類、前記ゴムラテックス及び前記イソシアネート化合物の構成や含有量等については、上述した接着剤組成物の中で説明した内容と同様である。
【0079】
(ゴム−有機繊維コード複合体)
そして、本発明のタイヤは、前記接着剤組成物がコーティングされた有機繊維コードを有しており、前記接着剤組成物がコーティングされた有機繊維コードは、コーティングゴム等のゴム部材と接着し、ゴム−有機繊維コード複合体を形成している。
得られたゴム−有機繊維コード複合体は、前記接着剤組成物を用いているため、環境への負荷が小さい。
【0080】
ここで、本発明のタイヤにおいて、前記ゴム−有機繊維コード複合体は、例えば、前記カーカスプライ、前記ベルト層、前記ベルト補強層、フリッパー等のベルト周り補強層等として用いることが可能である。
これらの中でも、前記ゴム−有機繊維コード複合体は、カーカスプライ及び/又はベルト補強層に用いられることが好ましく、カーカスプライ及びベルト補強層の両方に用いられることがより好ましい。前記接着剤組成物がコーティングされた有機繊維コードの環境への負荷低減や、有機繊維とゴム部材との優れた接着性等を、より効果的に発揮できるためである。
【0081】
なお、前記ゴム−有機繊維コード複合体において、前記接着剤組成物は、前記有機繊維コードの少なくとも一部を覆っていればよいが、ゴムと有機繊維コードとの接着性をより向上できる点からは、前記接着剤組成物が前記有機繊維コードの全面にコーティングされていることが好ましい。
【0082】
また、前記有機繊維コードの材料については、特に限定はされず、用途によって適宜選択することができる。例えば、ポリエステル、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン等の脂肪族ポリアミド繊維コード、ポリケトン繊維コード、パラフェニレンテレフタルアミドに代表される芳香族ポリアミド繊維コードに代表される合成樹脂繊維材料に使用することができる。
【0083】
また、前記有機繊維コードについては、特に限定されず、モノフィラメント、又は、複数の単繊維フィラメントを撚り合わせてなる有機繊維コードを用いることができる。低速及び高温時の操縦安定性と、高速耐久性とを高いレベルで両立する観点から、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードであることが好ましい。
【0084】
さらに、高速耐久性をより向上させる観点からは、前記ハイブリッドコードは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が0.20cN/dtex以上であることが好ましく、0.25〜0.40cN/dtexの範囲内であることがより好ましい。
【0085】
さらにまた、低速及び高温時の操縦安定性をより向上させる観点からは、前記ハイブリッドコードは、25℃における1%歪時の引張弾性率が60cN/dtex以下、特には35〜50cN/dtexであることが好ましく、25℃における3%歪時の引張弾性率が30cN/dtex以上、特には45〜70cN/dtexであることが好ましい。
【0086】
前記ハイブリッドコードに用いる2種の有機繊維としては、特に制限されるものではないが、剛性の高い有機繊維として、レーヨン、リヨセルなどを挙げることができ、熱収縮率の高い有機繊維として、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等、ナイロン、ポリケトン(PK)等を挙げることができる。より好適には、レーヨン又はリヨセルと、ナイロンとの組み合わせを用いることができる。
なお、これら有機繊維を用いたハイブリッドコードの熱収縮応力及び引張弾性率を調整する方法としては、ディップ処理時におけるテンションを制御する方法が挙げられ、例えば、高いテンションを掛けながらディップ処理を行うことで、コードの熱収縮応力の値を大きくすることができる。すなわち、各有機繊維において固有の物性値範囲はあるものの、ディップ処理条件を制御することにより、その範囲内で物性値を調整して、所望の物性を有するハイブリッドコードを得ることができる。
【0087】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述したベーストレッド及び有機繊維コード以外の条件については、特に限定はされず、常法に従って製造することができる。
なお、本発明のタイヤが空気入りタイヤの場合、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0088】
なお、本発明のタイヤのトレッド部において、前記ベーストレッド上に形成されるキャップトレッドの構成については、特に限定されない。タイヤに要求される性能に応じて、公知のキャップトレッドを適宜使用することができる。
前記キャップトレッドを構成するゴム組成物は、例えば、ゴム成分と、補強性充填剤と、軟化剤と、ゴム工業界で通常使用される添加剤とを含むことができる。
【0089】
また、本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤの転がり抵抗性及び通過騒音のバランスをより高める観点から、前記ベーストレッド上にキャップトレッドが形成され、該キャップトレッドの貯蔵弾性率E’cと、ベーストレッドの貯蔵弾性率E’bとの比率(E’c/E’b)が、0.25〜0.75であることが好ましく、0.30〜0.70であることがより好ましい。
なお、キャップトレッドの貯蔵弾性率E’cと、ベーストレッドの貯蔵弾性率E’bの測定については、上島製作所株式会社製スペクトロメーターを用いて測定することができる。ただし、それぞれの貯蔵弾性率の値が正確に得られる方法であれば特に限定はされず、通常使用される測定器を用いて測定することができる。
また、前記貯蔵弾性率E’c及び前記貯蔵弾性率E’bの測定の際の、初期歪、動歪、周波数の条件としては、例えば、初期歪2%、動歪1%、周波数10Hzの条件が挙げられる。
【0090】
なお、本発明のタイヤは、各種車輌向けのタイヤとして利用できるが、乗用車用タイヤや、トラック・バス用タイヤとして用いられることが好ましい。転がり抵抗の低減と、通過騒音の改善との両立による利益を、より享受できるためである。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本発明の各実施例及び比較例のサンプルは、過去に測定したデータから予測して算出している。
【0092】
(ベーストレッド用ゴム組成物B及びCの作製)
表1に示す配合処方に従い、通常のバンバリーミキサーを用いて、ベーストレッド用ゴム組成物B及びCを作製する。なお、表1での各成分の配合量は、ゴム成分100質量部に対する量(質量部)を記載している。
また、得られたベーストレッド用ゴム組成物B及びCについて、160℃、15分間の加硫処理を行い、得られた加硫ゴムに対して、上島製作所株式会社製スペクトロメーターを用いて、初期歪2%、動歪1%、周波数10Hzの条件下で、0℃及び30℃における損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(E’)を測定する。測定した0℃及び30℃でのtanδ及びE’、並びに、算出した0℃tanδ/30℃tanδについては、表5に示す。
【0093】
【表1】
*1 JSR株式会社製「BR01」
*2 JSR株式会社製「SL563」、スチレン量:20質量%
*3 JSR株式会社製「HP755B」、スチレン量:40質量%、表1中に括弧で示した数値は油展ゴムとしての配合量(質量部)
*4 JSR株式会社製「0122」、スチレン量:38質量%、表1中に括弧で示した数値は油展ゴムとしての配合量(質量部)
*5 旭カーボン株式会社製「旭♯65」
*6 旭カーボン株式会社製「旭♯70」
*7 N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製「ノクラック 6C」
*8 九州白水製 「ハクスイテック」
*9 ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製「ノクセラーDM−P」
【0094】
(接着剤組成物1〜4の調製)
また、以下の条件で、接着剤組成物1〜4を調製する。
まず、フロログルシノールを、100℃の水に溶解させ、濃度10wt%のフロログルシノール含有溶液を得る。
その後、10wt%フロログルシノール溶液33.5gを、高温下で維持して攪拌しながら、4%水酸化ナトリウム18.2gを加えた後、水206gで希釈し、25%アンモニア水を7.5g加えた。上記溶液に、1,4−ベンゼンジカルボアルデヒド6.4gを漸次的に加え、フロログルシノール・1,4−ベンゼンジカルボアルデヒド含有溶液を得た後、表3に示す温度及び時間で熟成を行い、フェノール/アルデヒド樹脂を得る。
上記フロログルシノール・1,4−ベンゼンジカルボアルデヒド含有溶液の熟成により得たフェノール/アルデヒド樹脂に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(Vp)を加え、27℃で24時間ゴムの熟成を行う。さらに上記フェノール/アルデヒド樹脂およびVpの混合液に、表3の配合比となるよう、特定のイソシアネート化合物を加える。
接着剤組成物1〜4の配合成分については、配合Aとして表4に示す。なお、表2は、固形成分としての配合量(質量%)、表3は、溶液状態での配合量(質量%)を示す。
【0095】
【表2】
【表3】
【0096】
*1: 富士フィルム和光純薬(株)製、10%水溶液として使用
*2: 東京化成工業(株)製、純度98%
*3: 関東化学(株)製、1N NaOH水溶液
*4: 関東化学(株)製、25%アンモニア水溶液
*5: Sime Darby社製、HYTEX HA
*6: JSR(株)製、SBR ラテックス 2108
*7: 日本A&L(株)製、PYRATEX
*8: 第一工業製薬(株)製、BN77、固形分濃度18%となるように希釈して使用
【0097】
<接着性評価>
接着剤組成物1〜4について、以下の条件で接着性を評価する。
天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体からなるゴム成分、カーボンブラック、架橋剤を含む未加硫状態のゴム組成物に、各サンプルの接着剤組成物をコーティングしたタイヤ用ポリエステルコードを埋め込み、これを試験片として、160℃で20分間、20kgf/cmの加圧下で加硫する。
得られた加硫物を室温まで冷却し、該加硫物からコードを掘り起こし、30cm/分の速度でコードを加硫物から剥離する時の抗力(N/cord)を25±1℃の室温雰囲気温度にて測定する。なお、このときの抗力を接着性評価の指標とする。
測定によって得られた接着剤組成物1〜4を用いた際の試験片の剥離時の抗力を表4に示す。その結果、接着剤組成物1〜4は、いずれも良好な接着性を確保できていることがわかる。また、レゾルシンを含んでいないため、環境への負荷も少ないことがわかる。
【0098】
【表4】
【0099】
<実施例1、比較例1>
その後、上述したベーストレッド用ゴム組成物B及びCを、それぞれトレッド部のベーストレッドに用い、さらに、カーカスのプライ及びベルト補強層には、表4に示す接着剤組成物4が表面にコーティングされた有機繊維コードを用い、サイズ195/65R15の乗用車用空気入りラジアルタイヤのサンプルを作製する。
なお、タイヤの条件は、表5に示すキャップトレッドの貯蔵弾性率以外は、いずれのサンプルについても同様の条件で作製を行う。
【0100】
<評価>
得られたタイヤの各サンプルに対して、以下の方法で評価を実施する。
【0101】
(1)転がり抵抗
各サンプルのタイヤについて、国際規格(ECER117)に準拠し、転がり抵抗係数(RRC)の測定を行う。
評価については、測定したRRCの逆数をとり、比較例1のRRCの逆数を100としたときの、指数として表示する。指数値が大きい程、転がり抵抗性に優れる(転がり抵抗が低減されている)ことを示す。評価結果を表5に示す。
【0102】
(2)通過騒音レベル
各サンプルのタイヤについて、国際規格(ECER117)に準拠し、通過騒音(dB)の測定を行う。
評価については、比較例1の通過騒音(dB)との、騒音レベルの差を算出し、通過騒音レベルとする。通過騒音レベルは小さい程、通過騒音が低減されていることを示す。評価結果を表5に示す。
【0103】
【表5】
【0104】
表5の結果から、実施例1のサンプルについては、比較例1のサンプルに比べて、転がり抵抗性及び通過騒音レベルについて、バランス良く優れた効果を示すことがわかった。
なお、比較例1のサンプルは、両方の評価項目で、実施例1よりも劣る値を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、有機繊維コードにコーティングされる接着剤組成物に、レゾルシンが含まれず、環境への負荷が少ないことに加えて、優れた転がり抵抗性を有する、空気入りタイヤを提供することができる。