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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-165092(P2021-165092A)
(43)【公開日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 3/00 20060101AFI20210917BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
   B60C3/00 E
   B60C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-69408(P2020-69408)
(22)【出願日】2020年4月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義隆
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB06
3D131BC39
3D131CB01
3D131CB11
3D131DA03
3D131DA09
3D131EA08U
3D131EA09U
(57)【要約】
【課題】耐発熱性能を低下させずに、車両手押し性能を向上させることのできる自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】自動二輪車用タイヤ100は、一対のビードコア3と、タイヤ子午断面において、一対のビードコア3それぞれの廻りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつ、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側にサイドウォール部まで巻き上げられたカーカス層2と、カーカス層2のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部5と、カーカス層2のタイヤ内腔側に設けられた補強ゴム層7とを有する。タイヤ子午断面において、補強ゴム層7は、凹部と凸部とからなる凹凸形状を有し、凸部は、短辺と長辺とからなる長尺形状であり、長辺は、タイヤ周方向に対して0度以上45度以下の角度の方向に延在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコアと、タイヤ子午断面において、前記一対のビードコアそれぞれの廻りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつ、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側にサイドウォール部まで巻き上げられたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部と、前記カーカス層のタイヤ内腔側に設けられた補強ゴム層とを有する自動二輪車用タイヤであって、
タイヤ子午断面において、前記補強ゴム層は、凹部と凸部とからなる凹凸形状を有し、
前記凸部は、短辺と長辺とからなる長尺形状であり、
前記長辺は、タイヤ周方向に対して0度以上45度以下の角度の方向に延在する自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記補強ゴム層は、前記トレッド部の端部より、タイヤ幅方向内側に設けられている請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記補強ゴム層は、
タイヤ赤道面がタイヤ内面に交差するトレッドセンターにおける、前記カーカス層のタイヤ径方向最外側の位置と、前記トレッド部の端部との間に設けられている請求項1または請求項2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記凸部のタイヤ周方向長さに対応する、タイヤ回転軸を中心とする角度が30度以上360度以下である請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対する、前記トレッド部のセンター領域におけるラジアスRc、の比Rc/TRWは0.57以上0.65以下である請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
タイヤ子午断面において、タイヤ断面高さSHに対する、リム径相当の位置から前記トレッド部の端部までの距離SLHに対する比SLH/SHが、0.67以上0.80以下である請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
タイヤ赤道面上の前記トレッド部の表面から前記トレッド部の端部までのタイヤ径方向の距離Dに対する、前記補強ゴム層の端部から前記トレッド部の端部までのタイヤ径方向の距離Cの比C/Dが、0以上0.25以下である請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
タイヤ子午断面において、前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅をTRWとし、タイヤ赤道面から前記補強ゴム層の端部までのタイヤ幅方向の距離をWとした場合に、比W/(TRW/2)が0.2以上0.8以下である請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記凸部は、前記凹部よりもタイヤ内腔側に突出しており、
前記凸部の最大突出位置と前記カーカス層のタイヤ内腔側の位置との間のゴムゲージを凸部ゴムゲージとした場合に、凸部ゴムゲージの最大値である最大ゴムゲージGamaxは、1.0mm以上10.0mm以下であり、
前記凹部から前記カーカス層のタイヤ内腔側の位置との間のゴムゲージを凹部ゴムゲージとした場合に、前記凸部の両側に隣接する凹部の凹部ゴムゲージの平均値の、前記凸部の凸部ゴムゲージに対する比は0.03以上0.7以下である請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記凹部を挟んで隣り合う2つの前記凸部の最大突出位置同士の間の距離に対する、2つの前記凸部の最大突出位置同士を結んだ第1仮想線と前記凹部との距離との比は、0.1以上2.0以下であり、
前記凹部を挟んで隣り合う2つの凸部の最大突出位置と前記カーカス層のタイヤ内腔側の位置とをそれぞれ結んだ第2および第3仮想線によって囲まれた部分の前記凹部の断面積に対する、前記第2および第3仮想線ならびに前記第1仮想線によって囲まれた部分の前記カーカス層のタイヤ内腔側のゴムの断面積の比は、0.2以上5.0以下である請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項11】
タイヤ赤道面から前記補強ゴム層の端部までのタイヤ幅方向の距離Wに対する、隣り合う凸部の最大突出位置同士の間の距離であるピッチλの比λ/Wは、0.03以上0.3以下である請求項1から請求項10のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項12】
前記補強ゴム層を構成するゴムの硬度は60以上80以下であり、
前記補強ゴム層を構成するゴムの60℃における損失正接tanδが0.10以上0.25以下である請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項13】
前記トレッド部は溝を有し、
前記トレッド部のセンター領域から前記トレッド部のショルダー領域に向かうにしたがって、前記溝の深さは浅くなり、
前記溝の深さの最大値に対する前記溝の深さの最小値の比が0.3以上1.0未満である請求項1から請求項12のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項14】
前記カーカス層は第1および第2のカーカスを含み、前記第1のカーカスのカーカスコードと前記第2のカーカスのカーカスコードとがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しているバイアス構造をなしている請求項1から請求項13のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車は、タイヤに内圧を充填していない状態でも手押しによる移動が可能であるという四輪自動車とは異なる特徴がある。特に、悪路などを走行中にタイヤがパンクして走行できなくなった場合に、手押しによって車両を移動させることがある。
【0003】
手押しが可能であるとはいえ、内圧を充填していない状態では、車両を押し難いという課題がある。この課題の解決策の一つとして、タイヤに補強ゴムを設けるという手法が考えられる。例えば、特許文献1に開示されている技術では、タイヤ内面にゴム材質の強化層を設けている。強化層は、アーチ型を呈して、片側のタイヤサイドウォールから反対側のタイヤサイドウォールまで延伸している。また、特許文献2に開示されている技術では、タイヤサイド部にゴム補強層を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3219314号公報
【特許文献2】特開2002−36835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されている技術については、手押しによって車両すなわち自動二輪車を移動させる際、発熱を抑え、かつ、車両手押し性能を向上させることに関して改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、耐発熱性能を低下させずに、車両手押し性能を向上させることのできる自動二輪車用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様による自動二輪車用タイヤは、一対のビードコアと、タイヤ子午断面において、前記一対のビードコアそれぞれの廻りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつ、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側にサイドウォール部まで巻き上げられたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部と、前記カーカス層のタイヤ内腔側に設けられた補強ゴム層とを有する自動二輪車用タイヤであって、タイヤ子午断面において、前記補強ゴム層は、凹部と凸部とからなる凹凸形状を有し、前記凸部は、短辺と長辺とからなる長尺形状であり、前記長辺は、タイヤ周方向に対して0度以上45度以下の角度の方向に延在する自動二輪車用タイヤである。
【0008】
前記補強ゴム層は、前記トレッド部の端部より、タイヤ幅方向内側に設けられていることが好ましい。
【0009】
前記補強ゴム層は、タイヤ赤道面がタイヤ内面に交差するトレッドセンターにおける、前記カーカス層のタイヤ径方向最外側の位置と、前記トレッド部の端部との間に設けられていることが好ましい。
【0010】
前記凸部のタイヤ周方向長さに対応する、タイヤ回転軸を中心とする角度が30度以上360度以下であることが好ましい。
【0011】
前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対する、前記トレッド部のセンター領域におけるラジアスRc、の比Rc/TRWは0.57以上0.65以下であることが好ましい。
【0012】
タイヤ子午断面において、タイヤ断面高さSHに対する、リム径相当の位置から前記トレッド部の端部までの距離SLHに対する比SLH/SHが、0.67以上0.80以下であることが好ましい。
【0013】
タイヤ赤道面上の前記トレッド部の表面から前記トレッド部の端部までのタイヤ径方向の距離Dに対する、前記補強ゴム層の端部から前記トレッド部の端部までのタイヤ径方向の距離Cの比C/Dが、0以上0.25以下であることが好ましい。
【0014】
タイヤ子午断面において、前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅をTRWとし、タイヤ赤道面から前記補強ゴム層の端部までのタイヤ幅方向の距離をWとした場合に、比W/(TRW/2)が0.2以上0.8以下であることが好ましい。
【0015】
前記凸部は、前記凹部よりもタイヤ内腔側に突出しており、前記凸部の最大突出位置と前記カーカス層のタイヤ内腔側の位置との間のゴムゲージを凸部ゴムゲージとした場合に、凸部ゴムゲージの最大値である最大ゴムゲージGamaxは、1.0mm以上10.0mm以下であり、前記凹部から前記カーカス層のタイヤ内腔側の位置との間のゴムゲージを凹部ゴムゲージとした場合に、前記凸部の両側に隣接する凹部の凹部ゴムゲージの平均値の、前記凸部の凸部ゴムゲージに対する比は0.03以上0.7以下であることが好ましい。
【0016】
前記凹部を挟んで隣り合う2つの前記凸部の最大突出位置同士の間の距離に対する、2つの前記凸部の最大突出位置同士を結んだ第1仮想線と前記凹部との距離との比は、0.1以上2.0以下であり、前記凹部を挟んで隣り合う2つの凸部の最大突出位置と前記カーカス層のタイヤ内腔側の位置とをそれぞれ結んだ第2および第3仮想線によって囲まれた部分の前記凹部の断面積に対する、前記第2および第3仮想線ならびに前記第1仮想線によって囲まれた部分の前記カーカス層のタイヤ内腔側のゴムの断面積の比は、0.2以上5.0以下であることが好ましい。
【0017】
タイヤ赤道面から前記補強ゴム層の端部までのタイヤ幅方向の距離Wに対する、隣り合う凸部の最大突出位置同士の間の距離であるピッチλの比λ/Wは、0.03以上0.3以下であることが好ましい。
【0018】
前記補強ゴム層を構成するゴムの硬度は60以上80以下であり、前記補強ゴム層を構成するゴムの60℃における損失正接tanδが0.10以上0.25以下であることが好ましい。
【0019】
前記トレッド部は溝を有し、前記トレッド部のセンター領域から前記トレッド部のショルダー領域に向かうにしたがって、前記溝の深さは浅くなり、前記溝の深さの最大値に対する前記溝の深さの最小値の比が0.3以上1.0未満であることが好ましい。
【0020】
前記カーカス層は第1および第2のカーカスを含み、前記第1のカーカスのカーカスコードと前記第2のカーカスのカーカスコードとがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しているバイアス構造をなしていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐発熱性能を低下させずに、車両手押し性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態に係る自動二輪車用タイヤの子午断面図である。
図2図2は、図1の自動二輪車用タイヤの内腔側の表面を示す展開図である。
図3図3は、図1の一部を拡大して示す図である。
図4図4は、タイヤ周方向に断続的に延在する凸部を有する補強ゴム層の例を示す図である。
図5図5は、タイヤ回転軸の方向から視た場合の凸部の設置範囲を説明する図である。
図6図6は、タイヤ周方向に対して傾斜して延在する凸部を含む補強ゴム層を示す図である。
図7図7は、補強ゴム層の凸部が曲線形状である場合の例を示す図である。
図8図8は、補強ゴム層の他の変形例を示す図である。
図9図9は、凸部の断面形状の変形例を示す図である。
図10図10は、凸部の断面形状の変形例を示す図である。
図11図11は、凸部の断面形状の変形例を示す図である。
図12図12は、凸部の断面形状の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。また、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0024】
(自動二輪車用タイヤ)
図1は、本実施形態に係る自動二輪車用タイヤ100(以下、適宜、タイヤ100と呼ぶ)の子午断面図である。以下の説明において、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸(図示せず)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義され、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、上記タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交するとともに、タイヤ100のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあってタイヤ100のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0025】
図1において、本実施形態に係るタイヤ100は、一対のビード部1と、カーカス層2と、一対のビードコア3と、インナーライナ4と、トレッド部5と、サイドウォール部6とを備える。ビード部1は、ビードコア3を含む。カーカス層2は、少なくとも1枚のカーカスを含む。本例のカーカス層2は、2枚のカーカスすなわち第1のカーカス21と、第2のカーカス22とを含む。カーカス層2は3枚以上のカーカスを含んでいてもよい。カーカス層2が3枚以上のカーカスを含む場合、隣接する2枚のカーカスが第1のカーカス21、第2のカーカス22である。第1のカーカス21、第2のカーカス22は、いずれも、複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆された構造になっている。カーカスコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。インナーライナ4は、カーカス層2のタイヤ内腔側に設けられる。サイドウォール部6は、ビード部1とトレッド部5との間の領域である。
【0026】
図1においては、左右一対のビード部1、1に第1および第2のカーカス21、22が装架されている。タイヤ100は、ビード部1、1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス21、22のそれぞれの端部がタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられたターンアップ構造を有する。カーカス21および22において、それぞれのカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しているバイアス構造をなしている。このためサイドウォール部6,6では巻き上げられる前のカーカス21、22と巻き上げられた後のカーカス21、22との4枚が重なってそれぞれのカーカス21、22のカーカスコードが互いに交差するクロスプライ構造をなしている。また、トレッド部5では、2枚のカーカス21、22が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差する。タイヤ100は、図示しないリムにリム組みされる。
【0027】
トレッド部5は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、タイヤ100のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がタイヤ100の輪郭となる。トレッド部5の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、溝5Mが設けられている。
【0028】
(ショルダー部の肩落ち量)
タイヤ子午断面において、リム径相当の位置ROからトレッド部5の端部51までの距離をSLHとする。タイヤ断面高さSHに対する、距離SLHの比SLH/SHが、0.67以上0.80以下であることが好ましい。比SLH/SHが0.67未満であると、距離SLHが小さく、タイヤパンク時のトレッド部の変形量が大きくなり、車両手押し性能(以下、手押し性能と略称することがある)が悪化するため好ましくない。比SLH/SHが0.80を超えると、距離SLHが大きく、ショルダー部のゲージが厚くなり、耐剥離性能が低下するため好ましくない。
【0029】
タイヤ断面高さSHは、リム径相当の位置ROからトレッド部5の頂部までの高さである。また、タイヤ断面高さSHは、タイヤの外径とリム径との差の1/2に等しい。タイヤ断面高さSH、距離SLHは、以下の条件によって測定する。すなわち、タイヤ100を正規リムに組んだ後、正規内圧に設定し、24時間放置後、再び空気圧を0kPaに戻した状態でタイヤ断面高さSH、距離SLHを測定する。以下の各項目についても同様の条件で測定する。
【0030】
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。例えば、正規内圧は、250kPaである。
【0031】
(トレッド部のラジアス)
ここで、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅をTRWとした場合に、タイヤ赤道面CLを中心とし、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅TRWの50%(すなわちTRW/2に相当)の領域をセンター領域Wcと定義する。また、センター領域Wcのタイヤ幅方向の両外側の領域をショルダー領域Wsと定義する。トレッド部5のセンター領域WcにおけるラジアスをRc、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅をTRWとした場合に、比Rc/TRWは0.57以上0.65以下であることが好ましい。比Rc/TRWが0.57未満であると、トレッド部5のセンター領域WcにおけるラジアスRcが小さく、タイヤパンク時のトレッド部5の変形量が大きくなる。その場合、車両手押し性能が悪化するため好ましくない。比Rc/TRWが0.65を超えると、トレッド部5のセンター領域WcにおけるラジアスRcが大きくなる。その場合、ショルダー領域Wsのゲージが厚くなり、耐剥離性能が低下するため好ましくない。なお、タイヤ100は、バイアス構造を有するため、トレッド部5のセンター領域WcにおけるラジアスRcが小さい場合であっても、手押し性能を向上させることができる。
【0032】
(補強ゴム層)
図1において、タイヤ100は、補強ゴム層7を備えている。補強ゴム層7は、トレッド部5の両方の端部51、51の間の範囲内において、インナーライナ4に接触して設けられる。本実施形態において、補強ゴム層7は、インナーライナ4のタイヤ内腔側に設けられている。補強ゴム層7は、トレッド部5のタイヤ内腔側のタイヤ赤道面CLを跨ぐ領域に設けられている。トレッド部5のタイヤ内腔側に補強ゴム層7を備えることにより、内圧無充填時のトレッド部5の中央が路面から浮き上がる所謂バックリングを抑止でき、良好な手押し性能を実現できる。
【0033】
自動二輪車用タイヤ100において、トレッド部5のタイヤ赤道面CLに近いタイヤ赤道面CLを跨ぐ位置は、接地時に変形が大きい。そこで、タイヤ赤道面CLを跨ぐ位置に補強ゴム層7を配置することにより、トレッド部5の剛性を高め、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させる。
【0034】
また、補強ゴム層7は、カーカス層2のタイヤ幅方向の最大幅位置P2よりタイヤ径方向外側に設けられている。補強ゴム層7は、タイヤ赤道面CLがタイヤ内面に交差するトレッドセンターにおける、カーカス層2のタイヤ径方向最外側の位置POと、トレッド部5の端部51との間に設けられていることが好ましい。この位置に補強ゴム層7を設けることにより、トレッド部5の接地面の剛性を保ち、手押し性能が向上する。
【0035】
また、補強ゴム層7は、タイヤ周方向に連続して設けられていることが好ましい。補強ゴム層7が途切れることなくタイヤ周方向に連続して設けられていることにより、トレッド部5の接地面の剛性を保ち、手押し性能が向上する。補強ゴム層7が不連続または断続的に設けられていてもよい。
【0036】
タイヤ子午断面において、タイヤ赤道面CLから、補強ゴム層7の端部T1までのタイヤ幅方向の距離を距離Wとした場合、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅TRWに対して、比W/(TRW/2)が0.2以上0.8以下であることが好ましい。補強ゴム層7の端部T2についても同様である。
【0037】
トレッド部5の、接地時に変形が大きいタイヤ赤道面CLを跨ぐ位置に補強ゴム層7を配置することにより、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。比W/(TRW/2)が0.2未満であると、車両手押し性能を向上させる効果が小さくなるため好ましくない。また、比W/(TRW/2)が0.8を超えても車両手押し性能をさらに向上させる効果が期待できない。
【0038】
ここで、タイヤ子午断面において、タイヤ径方向の補強ゴム層7の配置領域は、以下のようになっていることが好ましい。タイヤ赤道面CL上のトレッド部5の表面からトレッド部5の端部51までのタイヤ径方向の距離を距離Dとする。また、補強ゴム層7の端部T1からトレッド部5の端部51までタイヤ径方向の距離を距離Cとする。このとき、距離Dに対する距離Cの比C/Dが、0以上0.25以下であることが好ましい。補強ゴム層7の端部T2についても同様である。なお、補強ゴム層7の端部T1、T2の位置が、トレッド部5の端部51よりタイヤ径方向内側である場合、距離Cは負の値(すなわちマイナスの数値)とする。
【0039】
トレッド部5の、接地時に変形が大きいタイヤ赤道面CLを跨ぐ位置に補強ゴム層7を配置することにより、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。比C/Dが0未満(すなわち負の値)であると、車両手押し性能を向上させる効果が小さくなるため好ましくない。また、比C/Dが0.25を超えても車両手押し性能をさらに向上させる効果が期待できない。
【0040】
(補強ゴム層の凹凸形状)
図1に示すように、タイヤ100の内腔側に補強ゴム層7が設けられている。補強ゴム層7は、凸部7a、7bと、凹部8と、を有する。凹部8は基準となるベース部であり、ベース部からタイヤ内腔側に向かって突出する部分が凸部7a、7bである。タイヤ子午断面において、凸部7a、7bは、タイヤ内腔側への突出形状が半円形の連続になっている。
【0041】
図1において、凸部7aの最大突出位置とカーカス層2のタイヤ内腔側の位置との間のゴムゲージを凸部ゴムゲージと定義する。この場合に、凸部7aの凸部ゴムゲージの最大値すなわち最大ゴムゲージGamaxは、1.0mm以上10.0mm以下であることが好ましい。最大ゴムゲージGamaxが上記範囲を満たすことで、トレッド部5の剛性が上昇し、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。
【0042】
ここで、タイヤ子午断面において、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向の両側の、それぞれ距離W/2の範囲内に、最大ゴムゲージGamaxの位置があることが好ましい。つまり、タイヤ赤道面CLを中心とするタイヤ幅方向の両側の距離W/2以内の距離Wの範囲に、最大ゴムゲージGamaxの位置があることが好ましい。接地時に変形が大きいタイヤ赤道面CLを跨ぐ位置に最大ゴムゲージGamaxの位置があることにより、トレッド部5の剛性が上昇し、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。
【0043】
図2は、図1のタイヤ100の内腔側の表面を示す展開図である。図2において、タイヤ100の内腔側に、ベース部である凹部8と、凸部7a、7bとが設けられている。このため、補強ゴム層7は、図1を参照して説明したように、タイヤ子午断面において凹凸形状を有する。補強ゴム層7に凹部8を設けることにより、補強ゴム層7のゴムの量を低減することができる。補強ゴム層7のゴムの量が低減しても、凸部7a、7bがタイヤ周方向に延在しているため、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保することができる。
【0044】
図2に示すように、凸部7a、7bは短辺と長辺とからなる長尺形状を有する。凸部7a、7bはタイヤ周方向に延在している。本例において、凸部7aの短辺の長さすなわち凸部7aの幅W7は、タイヤ赤道線CLに近い凸部7aにおいて大きく、タイヤ赤道線CLから遠い凸部7bにおいて小さい。このように、タイヤ赤道線CLからの距離によって凸部の幅が異なることにより、接地圧の高いセンター領域Wcにてより効果的にタイヤ周方向の曲げ剛性を確保できるという効果が得られる。
【0045】
また、図2に示すように、凸部同士の間隔すなわちピッチλは、タイヤ赤道線CLに近い位置において大きく、タイヤ赤道線CLから遠い位置において小さい。このように、タイヤ赤道線CLからの距離によってピッチλが異なることにより、接地圧の高いセンター領域Wcにて凹部範囲を広くすることでより効果的に放熱することができ、良好な耐熱性能を確保できるという効果が得られる。
【0046】
ここで、補強ゴム層7の凸部7aと凹部8との関係について、図3を参照して説明する。図3は、図1の一部を拡大して示す図である。図3は、図2中のA−A部の断面図である。
【0047】
図3に示すように、凸部7aは、ベース部である凹部8よりもタイヤ内腔側に突出している。凹部8に対して、凸部7aの突出している輪郭は円弧形状になっている。凸部7aの突出している輪郭に対して、ベース部である凹部8の凹んでいる輪郭も円弧形状になっている。このため、補強ゴム層7の凸部7aのタイヤ内腔側への突出形状の断面は、円弧の連続になっている。
【0048】
ここで、ベース部である凹部8のタイヤ内腔側の位置とカーカス層2のタイヤ内腔側の位置との間のゴムゲージを凹部ゴムゲージと定義する。この場合に、凸部7aの凸部ゴムゲージMに対する、その凸部7aの両側に隣接する凹部8の凹部ゴムゲージm1と凹部ゴムゲージm2との平均値すなわち平均ゴムゲージmの比m/Mは0.03以上0.7以下であることが好ましい。比m/Mが上記範囲より小さい場合は凸部と凹部との剛性差が大きく、補強ゴム層7の耐久性が悪化するため好ましくない。比m/Mが上記範囲より大きい場合は表面積が十分ではなく、耐熱性が悪化するため好ましくない。なお、比m/Mは、0.1以上0.5以下であることがより好ましい。
【0049】
図3において、凹部8aを挟んで隣り合う2つの凸部7a1と凸部7a1’との最大突出位置同士を結んだ第1仮想線H1と凹部8aとの距離yの、2つの凸部7a1と凸部7a1’との最大突出位置同士の間の距離すなわちピッチλに対する比y/λは、0.1以上2.0以下であることが好ましい。補強ゴム層7のすべての凹部を挟んで隣り合う2つの凸部の最大突出位置同士を結んだ第1仮想線についても同様である。比y/λが上記範囲より小さい場合は表面積が十分ではなく耐熱性が悪化するため好ましくない。比y/λが上記範囲より大きい場合は凸部と凹部との剛性差が大きく、補強ゴム層7の耐久性が悪化するため好ましくない。なお、比y/λは、0.5以上1.5以下であることがより好ましい。
【0050】
タイヤ赤道面CLから補強ゴム層7の端部までのタイヤ幅方向の距離Wに対する、ピッチλの比λ/Wは、0.03以上0.3以下であることが好ましい。比λ/Wが0.03未満であると、補強ゴム層7のゴムの量を低減することが難しく、耐発熱性能を向上できないため好ましくない。比λ/Wが0.3より大きいと、手押し性能を向上させることが難しくなるため好ましくない。
【0051】
図3において、凹部8bを挟んで隣り合う2つの凸部の最大突出位置とカーカス層2のタイヤ内腔側の位置とをそれぞれ結んだ第2仮想線H2および第3仮想線H3によって囲まれた部分の凹部8bの断面積maに対する、2つの仮想線H2、H3ならびに第1仮想線H1によって囲まれた部分のカーカス層2のタイヤ内腔側のゴムの断面積Maの比Ma/maは、0.2以上5.0以下であることが好ましい。補強ゴム層7のすべての凹部を挟んで隣り合う2つの凸部についても同様である。比Ma/maが上記範囲より小さい場合は凸部と凹部との剛性差が大きく、補強ゴム層7の耐久性が悪化するため好ましくない。比Ma/maが上記範囲より大きい場合は表面積が十分ではなく耐熱性が悪化するため好ましくない。なお、比Ma/maは、0.5以上2.0以下であることがより好ましい。
【0052】
(凸部が断続的に延在する場合)
補強ゴム層7の凸部7a、7bは、図2に示すようにタイヤ周方向に連続して延在していてもよいし、タイヤ周方向に断続的に延在していてもよい。図4は、タイヤ周方向に断続的に延在する凸部を有する補強ゴム層7の例を示す図である。図4は、タイヤ100の内腔側の表面を示す展開図である。図4を参照すると、本例の補強ゴム層7は、複数の凸部7cを有する。複数の凸部7cは、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向に並んでいる。本例において、各凸部7cのタイヤ周方向の長さはLaである。タイヤ周方向に隣り合う凸部7c同士の距離はLbである。本例では、タイヤ赤道面CLに沿って複数の凸部7cが並んでいる。また、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向の両側に、凸部7cの列が2つずつ並んでいる。
【0053】
1つの凸部7cは、幅W7の短辺(タイヤ幅方向)と長さLaの長辺(タイヤ周方向)とからなる長尺形状を有する。凸部7cは、タイヤ周方向に延在している。図4に示すように、凸部7cのタイヤ周方向長さLaは、タイヤ周方向の1周分より短い長さであってもよい。
【0054】
タイヤ幅方向に隣り合う凸部7cは、タイヤ幅方向に視た場合に、一部分が重なっている。つまり、タイヤ幅方向に隣り合う凸部7cは、オーバラップする状態になっている。タイヤ幅方向に隣り合う凸部7c同士のタイヤ周方向に沿ったオーバラップ長さをLcとする。オーバラップ長さLcは、1mm以上であることが好ましい。オーバラップ長さLcが1mm未満であると、隣り合う凸部7c同士の間に、タイヤ周方向に空隙ができ、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。
【0055】
なお、タイヤ幅方向に隣り合う凸部7c同士の間隔すなわちピッチλの、距離Wに対する比λ/Wは、0.03以上0.3以下であることが好ましい。比λ/Wが0.03未満であると、補強ゴム層7のゴムの量を低減することが難しく、耐発熱性能を向上できないため好ましくない。比λ/Wが0.3より大きいと、手押し性能を向上させることが難しくなるため好ましくない。
【0056】
図5は、タイヤ回転軸Jの方向から視た場合の凸部7cの設置範囲を説明する図である。図5においては、補強ゴム層7全体の図示を省略し、1つの凸部7cだけを示している。図5において、凸部7cについて、タイヤ周方向の1周分連続する場合の配置範囲の角度φを360度とすると、1つの凸部7cの設置範囲の、タイヤ回転軸Jを中心とする角度φは、図4中のタイヤ周方向長さLaに対応する。すなわち、タイヤ周方向長さLaが長くなると角度φが大きくなり、タイヤ周方向長さLaが短くなると角度φが小さくなる。凸部7cのタイヤ周方向長さLaに対応する角度φは、30度以上360度以下であることが好ましい。角度φが30度未満である場合、凸部7cのタイヤ周方向長さLaが短くなる。凸部7cのタイヤ周方向長さLaが短い場合、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。凸部7cがタイヤ周方向に連続して設けられている場合、凸部7cのタイヤ周方向長さLaに対応する角度φは360度である。凸部7cがタイヤ周方向に断続的に設けられている場合、角度φは360度未満になる。
【0057】
(凸部の傾斜角度)
ところで、補強ゴム層7の凸部は、図2または図4に示すようにタイヤ周方向に沿って延在していてもよいし、タイヤ周方向に対して傾斜して延在してもよい。図6は、タイヤ周方向に対して傾斜して延在する凸部7dを含む補強ゴム層7を示す図である。図6においては、凸部7dの中心線を示している。中心線は、凸部7dの延在方向に直交する方向の長さすなわち幅の中点を結んだ線である。
【0058】
ここで、図6中の下から上に向かうタイヤ周方向に沿って凸部7dが延在している場合の傾斜角度を0度とする。また、図6中の下から上に向かうタイヤ周方向に対して時計回りの方向に傾斜する場合をプラスの傾斜角度とし、反時計回りの方向に傾斜する場合をマイナスの傾斜角度とする。凸部7dの延在方向の傾斜角度は、タイヤ周方向に対して±45度の範囲内であることが好ましい。つまり、凸部7dの延在方向の、タイヤ周方向に対する角度θ1は、0度以上45度以下であることが好ましい。角度θ1が0度以上45度以下であることにより、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保することができる。
【0059】
本例においても、隣り合う凸部7d同士の間隔すなわちピッチλの、距離Wに対する比λ/Wは、0.03以上0.3以下であることが好ましい。比λ/Wが0.03未満であると、補強ゴム層7のゴムの量を低減することが難しく、耐発熱性能を向上できないため好ましくない。比λ/Wが0.3より大きいと、手押し性能を向上させることが難しくなるため好ましくない。なお、図6中のA−A部の断面形状については、図3を参照して説明した通りである。
【0060】
本例においても、タイヤ幅方向に隣り合う凸部7d同士のタイヤ周方向に沿ったオーバラップ長さLcは、1mm以上であることが好ましい。オーバラップ長さLcが1mm未満であると、隣り合う凸部7d同士の間に、タイヤ周方向に空隙ができ、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。
【0061】
本例においても、凸部7dのタイヤ周方向長さLaに対応する角度φは、30度以上360度以下であることが好ましい。角度φが30度未満である場合、凸部7dのタイヤ周方向長さLaが短くなる。凸部7dのタイヤ周方向長さLaが短い場合、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。
【0062】
凸部7dの延在方向の、タイヤ周方向に対する角度θ1がわずかな値である場合、例えば1度未満である場合、凸部7dはらせん状に延在しつつタイヤ内腔側に向かって突出した形状になる。なお、図2を参照して説明したように、各凸部7a、7bの延在方向がタイヤ周方向に沿っている場合、角度θ1は0度になる。この場合、各凸部7a、7bは、タイヤ周方向に1周しつつタイヤ内腔側に突出した形状になる。
【0063】
(補強ゴム層の物性など)
補強ゴム層7を構成するゴムの硬度は60以上80以下であり、補強ゴム層7を構成するゴムの60℃における損失正接tanδが0.10以上0.25以下であることが好ましい。補強ゴム層7を構成するゴムの硬度が上記範囲を満たすことで、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。補強ゴム層7を構成するゴムの硬度が上記範囲より小さいと、トレッド部5の剛性が低下し、タイヤパンク時の車両手押し性能が低下するため好ましくない。補強ゴム層7を構成するゴムの硬度が上記範囲より大きいと、補強ゴム層7が剥離しやすくなるため好ましくない。また、損失正接tanδ(60℃)が上記の範囲を満たすことで、タイヤの耐発熱性能が向上する。
【0064】
上記における硬度はJIS−A硬さであり、JIS K−6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度20℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。上記の損失正接tanδはJIS−K6394に準拠して求められる。損失正接tanδは、(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度60[℃]、剪断歪み10[%]、振幅±0.5[%]および周波数20[Hz]の条件で測定される。
【0065】
ところで、図1に示すように、トレッド部5は溝5Mを有することが好ましい。また、トレッド部5の赤道線CL付近のセンター領域Wcからトレッド部5のショルダー領域Wsに向かうにしたがって、溝5Mの深さMDは浅くなることが好ましい。そして、溝5Mの深さMDの最大値に対する溝5Mの深さMDの最小値の比が0.3以上1.0未満であることが好ましい。自動二輪車用のタイヤは、通常、トレッド部5のセンター領域Wcにおいて摩耗しやすい。そのため、摩耗速度が遅いショルダー領域Wsにおいて溝5Mの深さMDを浅くすることによって、トレッド部5の剛性を高め、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。なお、溝5Mの深さMDは、例えば、1mm以上10mm以下である。
【0066】
(変形例1)
凸部は、曲線形状であってもよい。図7は、補強ゴム層7の凸部7fが曲線形状である場合の例を示す図である。図7に示すように、補強ゴム層7は、曲線形状の凸部7fを複数有する。各凸部7fは、湾曲しつつタイヤ周方向に延在している。図7においては、凸部7fの中心線を実線で示している。中心線は、凸部7fの延在方向に直交する方向の長さすなわち幅の中点を結んだ線である。各凸部7fの両方の端部T1、T2を直線で結んだ仮想線H4(図7中の破線)が凸部7fの延在方向である。ここで、仮想線H4の、タイヤ周方向に対する傾斜角度θ1は、0度以上45度以下である。角度θ1が0度以上45度以下であることにより、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保することができる。
【0067】
本例においても、隣り合う凸部7f同士の間隔すなわちピッチλの、距離Wに対する比λ/Wは、0.03以上0.3以下であることが好ましい。比λ/Wが0.03未満であると、補強ゴム層7のゴムの量を低減することが難しく、耐発熱性能を向上できないため好ましくない。比λ/Wが0.3より大きいと、手押し性能を向上させることが難しくなるため好ましくない。なお、図7中の凸部7fの断面形状については、図3を参照して説明した通りである。
【0068】
本例においても、タイヤ幅方向に隣り合う凸部7f同士のタイヤ周方向に沿ったオーバラップ長さLcは、1mm以上であることが好ましい。オーバラップ長さLcが1mm未満であると、隣り合う凸部7f同士の間に、タイヤ周方向に空隙ができ、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。
【0069】
本例においても、凸部7fのタイヤ周方向長さLaに対応する角度φは、30度以上360度以下であることが好ましい。角度φが30度未満である場合、凸部7fのタイヤ周方向長さLaが短くなる。凸部7fのタイヤ周方向長さLaが短い場合、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。
【0070】
(変形例2)
補強ゴム層7は、互いに交差する凸部を有していてもよい。図8は、補強ゴム層7の他の変形例を示す図である。図8に示すように、補強ゴム層7は、凸部7dと、凸部7gとを有する。図8においては、凸部7d、7gの中心線を実線で示している。中心線は、凸部7d、7gの延在方向に直交する方向の長さすなわち幅の中点を結んだ線である。
【0071】
凸部7dと、凸部7gとは、互いに交差しつつタイヤ周方向に延在している。凸部7dはタイヤ周方向に対する傾斜角度がθ1、凸部7gはタイヤ周方向に対する傾斜角度がθ2である。本例においては、角度θ1はプラスの傾斜角度であり、角度θ2はマイナスの傾斜角度である。角度θ1、角度θ2は、いずれも、タイヤ周方向に対する角度が0度以上45度以下である。角度θ1と角度θ2とは異なる角度であるため、互いに交差する。角度θ1、角度θ2は、ともに、0度以上45度以下である。角度θ1、角度θ2が0度以上45度以下であることにより、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保することができる。
【0072】
本例においても、隣り合う凸部7d同士の間隔すなわちピッチλの、距離Wに対する比λ/Wは、0.03以上0.3以下であることが好ましい。凸部7gについても同様である。比λ/Wが0.03未満であると、補強ゴム層7のゴムの量を低減することが難しく、耐発熱性能を向上できないため好ましくない。比λ/Wが0.3より大きいと、手押し性能を向上させることが難しくなるため好ましくない。なお、図8中のA−A部の断面形状については、図3を参照して説明した通りである。図8中のB−B部の断面形状についても、図3を参照して説明したA−A部の断面形状と同様である。
【0073】
本例においても、タイヤ幅方向に隣り合う凸部7d同士のタイヤ周方向に沿ったオーバラップ長さLcは、1mm以上であることが好ましい。凸部7gについても同様である。オーバラップ長さLcが1mm未満であると、隣り合う凸部7d同士の間に、タイヤ周方向に空隙ができ、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。
【0074】
本例においても、凸部7dのタイヤ周方向長さLaに対応する角度φは、30度以上360度以下であることが好ましい。凸部7gについても同様である。角度φが30度未満である場合、凸部7dのタイヤ周方向長さLaが短くなる。凸部7dのタイヤ周方向長さLaが短い場合、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できないため、手押し性能を向上させることが難しい。
【0075】
(変形例3)
上述したように、図1および図3に示す補強ゴム層7の凸部7aのタイヤ内腔側への突出形状の断面は、円弧の連続になっている。もっとも、凸部の断面形状は、図1および図3に示す形状に限定されない。
【0076】
図9から図12は、凸部の断面形状の変形例を示す図である。図9から図12は、凸部の延在方向に直交する方向の長さすなわち幅の中点を結んだ中心線に沿った断面を示す。図9に示す凸部7hは、タイヤ内腔側への突出高さが正弦波状に変化している。図10に示す凸部7jは、タイヤ内腔側への突出高さが矩形波状に変化している。図11に示す凸部7kは、タイヤ内腔側への突出高さが三角波状に変化している。図12に示す凸部7mは、タイヤ内腔側への突出高さがのこぎり波状に変化している。補強ゴム層7の断面形状は、図9から図12に示すいずれの形状であってもよい。
【0077】
(変形例4)
各凸部の短辺すなわち幅は、一定ではなく、変化してもよい(図示せず)。また、タイヤ幅方向またはタイヤ周方向に隣り合う凸部同士の間隔が変化してもよい。
【0078】
(まとめ)
自動二輪車用のタイヤは、トレッドセンター領域の接地圧が高く、トレッドセンター領域におけるゴムの発熱量が大きい。そこで、自動二輪車用タイヤの中でもトレッド部のラジアスが比較的大きなタイヤに対しては、タイヤ周方向に延在する凸部を有する補強ゴム層を設ける。すなわち、少ない体積でかつ表面積が大きい補強ゴム層を用いることにより、タイヤ周方向の曲げ剛性を確保できる。これにより、耐発熱性能を損なうことなくタイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。
【0079】
(実施例)
本実施例では、条件が異なる複数種類の自動二輪車用タイヤについて、車両を押したときの手押し性能および耐発熱性能について評価した。タイヤサイズ90/90−12 54Jの自動二輪車タイヤを、正規リムにリム組みし、試験車両に装着した。本実施例では、ETRTO記載の標準リムが用いられた。
【0080】
車両の手押し性能については、モニターによる押し心地(フィーリング)の官能評価を行った。タイヤを車両に装着し、内圧が無充填状態(0kPa)で、車両を手押しにて100m移動させた際の、押し心地の官能評価を行った。手押し性能は、後述する従来例を基準(100)とした指数評価を行った。数値が大きいほど押し易く、手押し性能が良好である。
【0081】
耐発熱性能に関する評価には、室内ドラム試験機が用いられた。自動二輪車用タイヤを規格空気圧(250kPa)、かつ、規格荷重(2.08kN)とし、速度80km/hにて2時間走行した後のタイヤの発熱量を測定した。タイヤのトレッド表面にトレッドゴムゲージと同じ深さの孔をあけ、孔の最深部の温度を発熱量として測定した。そして、この測定結果に基づいて後述する従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0082】
表1から表6に示す実施例1から実施例44の自動二輪車用タイヤは、凹凸形状を有する補強ゴム層7がタイヤ内面に設けられている自動二輪車用タイヤである。補強ゴム層7の凸部の長辺は、タイヤ周方向に対して0度以上45度以下の角度の方向に延在している。表1から表6においては、補強ゴム層の配置領域が、トレッド部のタイヤ内腔側以外を含む領域である場合を「A」と表記し、トレッド部のタイヤ内腔側の領域のみである場合を「B」と表記している。表1から表6においては、補強ゴム層のタイヤ内腔側の表面が滑らかである場合を「A1」と表記し、凹凸がある場合を「B1」と表記している。
【0083】
また、表1から表6に示す実施例1から実施例44の自動二輪車用タイヤは、補強ゴム層の凸部がタイヤ周方向に連続して延在するものと断続的に延在するもの、1つの凸部の長さに対応する角度φが30度以上360度以下であるものとそうでないもの、比Rc/TRWが0.57以上0.65以下であるものとそうでないもの、比SLH/SHが0.67以上0.80以下であるものとそうでないもの、比C/Dが0以上0.25以下であるものとそうでないもの、比W/(TRW/2)が0.20以上0.80以下であるものとそうでないもの、補強ゴム層7の最大ゴムゲージGamaxが1.0mm以上10.0mm以下であるものとそうでないもの、比m/Mが0.03以上0.7以下であるものとそうでないもの、比y/λが0.1以上2.0以下であるものとそうでないもの、比λ/Wが0.03以上0.3以下であるものとそうでないもの、断面積の比Ma/maが0.2以上5.0以下であるものとそうでないもの、補強ゴム層7のゴムの硬度が60以上80以下であるものとそうでないもの、補強ゴム層7のゴムの60℃におけるtanδが0.10以上0.25以下であるものとそうでないもの、センター領域の溝深さがショルダー領域の溝深さより深いもの(表中の「A2」)とショルダー領域の溝深さがセンター領域の溝深さより深いもの(表中の「B2」)、カーカス構造がバイアス構造であるものとラジアル構造であるもの、である。
【0084】
表1において、従来例1のタイヤは、補強ゴム層を有していない自動二輪車用タイヤである。また、表1において、比較例1および比較例2のタイヤは、凹凸形状を有していない滑らかな補強ゴム層を有する、自動二輪車用タイヤである。比較例3のタイヤは、凹凸形状を有する補強ゴム層を有しており、補強ゴム層の凸部がタイヤ周方向に断続的である、自動二輪車用タイヤである。比較例4から比較例7のタイヤは、凹凸形状を有する補強ゴム層を有しており、補強ゴム層の凸部がタイヤ周方向に連続している、自動二輪車用タイヤである。
【0085】
表1から表6に示す実施例1から実施例44を参照すると、補強ゴム層を有し、1つの凸部の長さに対応する角度φが30度以上360度以下である場合、比Rc/TRWが0.57以上0.65以下である場合、比SLH/SHが0.67以上0.80以下である場合、比C/Dが0以上0.25以下である場合、比W/(TRW/2)が0.20以上0.80以下である場合、補強ゴム層7の最大ゴムゲージGamaxが1.0mm以上10.0mm以下である場合、比m/Mが0.03以上0.7以下である場合、比y/λが0.1以上2.0以下である場合、比λ/Wが0.03以上0.3以下である場合、断面積の比Ma/maが0.2以上5.0以下である場合、補強ゴム層7のゴムの硬度が60以上80以下である場合、補強ゴム層7のゴムの60℃におけるtanδが0.10以上0.25以下である場合、センター領域の溝深さがショルダー領域の溝深さより深い場合、カーカス構造がバイアス構造である場合、に良好な結果が得られることがわかる。補強ゴム層7を設けることによって、自動二輪車用タイヤの重量が増加するものの、内圧が無充填状態においてもトレッド部5のタイヤ周方向の曲げ剛性を保つことができるため、耐発熱性能を低下させずに、車両手押し性能を向上させることができる。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【符号の説明】
【0092】
1 ビード部
2 カーカス層
3 ビードコア
4 インナーライナ
5 トレッド部
5M 溝
6 サイドウォール部
7 補強ゴム層
7a、7a1、7a1’、7b、7c、7d、7f、7g、7h、7j、7k、7m 凸部
8、8a、8b 凹部
21、22 カーカス
100 自動二輪車用タイヤ
CL タイヤ赤道面
J タイヤ回転軸
Wc センター領域
Ws ショルダー領域
θ1、θ2 角度
λ ピッチ
φ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12