特開2021-36158(P2021-36158A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-36158(P2021-36158A)
(43)【公開日】2021年3月4日
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ及び駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/10 20060101AFI20210205BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20210205BHJP
   F16H 3/72 20060101ALI20210205BHJP
   B60K 6/383 20071001ALI20210205BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20210205BHJP
【FI】
   F16D41/10ZHV
   F16D41/08 A
   F16H3/72 A
   B60K6/383
   B60K6/445
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-157759(P2019-157759)
(22)【出願日】2019年8月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大黒 優也
【テーマコード(参考)】
3D202
3J528
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202EE15
3J528EA01
3J528EA28
3J528EB37
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB85
3J528EB96
3J528FA48
3J528FB06
3J528FB13
3J528FC13
3J528FC23
3J528FC62
3J528GA01
3J528HA12
3J528HA26
3J528JA01
3J528JJ01
3J528JL02
(57)【要約】
【課題】入力側機構から入力されるトルクを、回転方向を問わず、出力側機構に伝達し、出力側機構から逆入力されるトルクを、回転方向に応じて、入力側機構に伝達するか又は遮断する、逆入力遮断クラッチを提供する。
【解決手段】逆入力遮断クラッチ1を、入力部材2と、出力部材3と、被押圧面10を有する被押圧部材4と、押圧面11を有する係合子5とから構成する。係合子5は、入力部材2にトルクが入力されると、回転方向を問わず、入力部材2との係合に基づき被押圧面10から離れる方向に移動して出力部材3にトルクを伝達し、出力部材3にトルクが逆入力されると、第1の回転方向では、出力部材3との係合に基づき被押圧面10に押圧面11を摩擦係合させてトルクを遮断し、第2の回転方向では、出力部材3との係合に基づき被押圧面10から離れる方向に移動して入力部材2にトルクを伝達する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの入力側係合部を有する入力部材と、
出力側係合部を有し、前記入力部材と同軸に配置される出力部材と、
被押圧面を有する被押圧部材と、
前記被押圧面に対向する少なくとも1個の押圧面と、前記入力側係合部と係合する入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合する出力側被係合部とを有する、少なくとも1個の係合子と、を備え、
前記係合子は、
前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力部材の回転方向にかかわらず、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面から離隔させるように変位して、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることにより、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力部材の回転方向が第1の回転方向である場合には、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けるように変位して、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させるのに対し、前記出力部材の回転方向が第2の回転方向である場合には、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面から離隔させるように変位して、前記入力側被係合部を前記入力側係合部に係合させることにより、前記出力部材に逆入力された回転トルクを前記入力部材に伝達するものである、
逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記出力側被係合部は、前記出力部材の回転方向が第1の回転方向である場合に前記出力側係合部と係合する、平坦面状の第1被係合面と、前記出力部材の回転方向が第2の回転方向である場合に前記出力側係合部と係合する、前記第1被係合面と対向配置された平坦面状の第2被係合面と、を有する、請求項1に記載した逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記出力側被係合部は、前記出力側係合部の端部を緩く挿入できる、出力側被係合凹部を有している、請求項1〜2のうちのいずれか1項に記載した逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記係合子を1対備えており、前記係合子のそれぞれに備えられた前記出力側被係合凹部の内側に、前記出力側係合部の端部をそれぞれ緩く挿入しており、
前記出力部材の回転方向が前記第1の回転方向である場合に、前記出力側係合部が、前記係合子のそれぞれに備えられた前記出力側被係合凹部の内側で前記第1の回転方向に回転し、前記出力側係合部に備えられた第1の対角線上に存在する1対の角部が、1対の前記係合子が互いに離れるように、前記出力側被係合凹部の内面を構成する前記第1被係合面をそれぞれ押圧する、請求項2に従属する請求項3に記載した逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記係合子を1対備えており、前記係合子のそれぞれに備えられた前記出力側被係合凹部の内側に、前記出力側係合部の端部をそれぞれ緩く挿入しており、
前記出力部材の回転方向が前記第2の回転方向である場合に、前記出力側係合部が、前記係合子のそれぞれに備えられた前記出力側被係合凹部の内側で前記第2の回転方向に回転し、前記出力側係合部に備えられた第2の対角線上に存在する1対の角部が、1対の前記係合子を互いに近づけるように、前記出力側被係合凹部の内面を構成する前記第2被係合面をそれぞれ押圧する、請求項2に従属する請求項3に記載した逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
内燃機関と、逆入力遮断クラッチと、遊星歯車機構と、を備え、前記内燃機関の動力を前記逆入力遮断クラッチを介して前記遊星歯車機構に伝達する、駆動装置であって、
前記遊星歯車機構は、太陽歯車と、前記太陽歯車の周囲に配置されたリング歯車と、前記太陽歯車及び前記リング歯車にそれぞれ噛合した複数の遊星歯車と、前記遊星歯車を回転可能に支持したキャリアとを有するものであり、
前記逆入力遮断クラッチは、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載した逆入力遮断クラッチであり、
前記逆入力遮断クラッチを構成する前記入力部材が、前記内燃機関の出力軸に接続されており、
前記逆入力遮断クラッチを構成する前記出力部材が、前記太陽歯車と、前記リング歯車と、前記キャリアとのうち、いずれかの部材に接続されている、
駆動装置。
【請求項7】
トルクリミッタと、第1回転機と、第2回転機と、駆動軸と、をさらに備え、
前記逆入力遮断クラッチを構成する前記出力部材が、前記トルクリミッタを介して、前記キャリアに接続されており、
前記第1回転機が、前記太陽歯車に接続されており、
前記駆動軸には、前記リング歯車及び/又は前記第2回転機から動力が伝達される、
請求項6に記載した駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
入力部材に入力される回転トルクは、その回転方向を問わず、出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクは、その回転方向に応じて、入力部材に伝達するか又は遮断する、逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018−39433号公報には、クラッチ装置を備えたハイブリッド車両の駆動装置が開示されている。具体的には、エンジンのクランク軸を、一方向クラッチを介して、遊星歯車機構に接続する構造が開示されている。このような構造によれば、クランク軸が正回転する場合には、エンジンの動力を一方向クラッチを介して遊星歯車機構に伝達することができ、クランク軸が負回転しようとした場合には、一方向クラッチがロックすることで、クランク軸が負回転することを防止できる。また、特開2018−39433号公報には、停止中のエンジンを再始動させる際に、モータを利用して遊星歯車機構を回転駆動することで、一方向クラッチを介して、エンジンにクランキングトルクを付与する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−39433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを再始動させる際に必要なクランキングトルクは、シリンダ内でのピストンの上下位置によって変化する。具体的には、クランキングトルクは、ピストンが上昇することでシリンダの圧縮行程が進行すると増大し、ピストンが上死点を過ぎると減少する。このため、クランキングトルクは、エンジンが停止した状態でのクランク角位置によって大きく変化する。
【0005】
そこで、エンジンの再始動を効率的に行うために、モータを利用して、エンジン停止状態でのクランク角位置を所望角度に調整する、プリポジショニング制御を行うことが考えられている。プリポジショニング制御は、モータの出力トルクを減少させることで、エンジンの回転数を低下させ、クランク角位置が所望角度の状態でエンジンを停止させる制御であるが、このような制御を行う際に、モータの出力トルクを急に減少させてしまうと、圧縮行程にあるピストンにコンプレッション反力が作用し、クランク軸を負回転させようとする力が加わる。この結果、一方向クラッチが勢い良くロックし、打音(異音)を発生させるとともに、一方向クラッチの耐久性を大きく損なう可能性がある。このように、ハイブリッド車両の駆動装置に組み込むクラッチ装置として、従来から一般的に知られている一方向クラッチを使用した場合には、クランク軸の負回転を許容できないため、上述したような問題を生じる可能性がある。このような問題を生じないようにするためには、クランク軸の正回転及び負回転をいずれも許容できるとともに、遊星歯車機構からクランク軸に回転トルクを伝達することができる、クラッチ装置が必要になる。
【0006】
本発明の目的は、入力側機構から入力される回転トルクを、その回転方向を問わずに、出力側機構に伝達することができるとともに、出力側機構から逆入力される回転トルクを、その回転方向に応じて、入力側機構に伝達するか又は遮断することができる、逆入力遮断クラッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の逆入力遮断クラッチは、入力部材と、出力部材と、被押圧部材と、少なくとも1個の係合子とを備える。
前記入力部材は、少なくとも1つの入力側係合部を有する。
前記出力部材は、出力側係合部を有し、前記入力部材と同軸に配置されている。
前記被押圧部材は、被押圧面を有する。
前記係合子は、前記被押圧面に対向する少なくとも1個の押圧面と、前記入力側係合部と係合する入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合する出力側被係合部とを有する。
また、前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力部材の回転方向にかかわらず、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面から離隔させるように変位して、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることにより、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達する。
また、前記係合子は、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力部材の回転方向が第1の回転方向である場合には、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けるように変位して、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させるのに対し、前記出力部材の回転方向が第2の回転方向である場合には、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面から離隔させるように変位して、前記入力側被係合部を前記入力側係合部に係合させることにより、前記出力部材に逆入力された回転トルクを前記入力部材に伝達する。
【0008】
本発明の逆入力遮断クラッチでは、前記出力側被係合部を、前記出力部材の回転方向が第1の回転方向である場合に前記出力側係合部と係合する、平坦面状の第1被係合面と、前記出力部材の回転方向が第2の回転方向である場合に前記出力側係合部と係合する、前記第1被係合面と対向配置された平坦面状の第2被係合面と、を有するものとすることができる。
この場合には、前記第1被係合面と前記第2被係合面とを、互いに平行に配置しても良いし、非平行に配置しても良い。
あるいは、前記第1被係合面及び/又は前記第2被係合面を、平坦面に代えて、凹面又は凸面とすることもできる。
【0009】
本発明の逆入力遮断クラッチでは、前記出力側被係合部を、前記出力側係合部の端部を緩く挿入できる、出力側被係合凹部を有するものとすることができる。
前記出力側被係合凹部を設ける場合には、該出力側被係合凹部の内面を構成する1対の対向面を、それぞれ前記第1被係合面及び前記第2被係合面とすることができる。
前記出力側被係合凹部に挿入される前記出力側係合部の端部は、前記係合子の変位方向に対して直交する方向に位置する端部とすることができる。別な言い方をすれば、前記出力側被係合凹部を、前記係合子の変位方向に対して直交する方向に開口させることができる。
【0010】
本発明の逆入力遮断クラッチでは、前記係合子を1対(2つ)備えることができる。
そして、前記係合子のそれぞれに備えられた前記出力側被係合凹部の内側に、前記出力側係合部の端部をそれぞれ緩く挿入することができる。
これにより、前記出力部材の回転方向が前記第1の回転方向である場合に、前記出力側係合部を、前記係合子のそれぞれに備えられた前記出力側被係合凹部の内側で前記第1の回転方向に回転させて、前記出力側係合部に備えられた第1の対角線上に存在する1対の角部により、1対の前記係合子が互いに離れるように、前記出力側被係合凹部の内面を構成する前記第1被係合面をそれぞれ押圧することができる。
さらには、前記出力部材の回転方向が前記第2の回転方向である場合に、前記出力側係合部を、前記係合子のそれぞれに備えられた前記出力側被係合凹部の内側で前記第2の回転方向に回転させて、前記出力側係合部に備えられた第2の対角線上に存在する1対の角部により、1対の前記係合子を互いに近づけるように、前記出力側被係合凹部の内面を構成する前記第2被係合面をそれぞれ押圧することができる。
【0011】
本発明の駆動装置は、内燃機関と、逆入力遮断クラッチと、遊星歯車機構とを備え、前記内燃機関の動力を、前記逆入力遮断クラッチを介して、前記遊星歯車機構に伝達するものである。
前記遊星歯車機構は、太陽歯車と、前記太陽歯車の周囲に配置されたリング歯車と、前記太陽歯車及び前記リング歯車にそれぞれ噛合した複数の遊星歯車と、前記遊星歯車を回転可能に支持したキャリアとを有する。
前記逆入力遮断クラッチは、本発明の逆入力遮断クラッチである。
そして、前記逆入力遮断クラッチを構成する前記入力部材を、前記内燃機関の出力軸に接続し、前記逆入力遮断クラッチを構成する前記出力部材を、前記太陽歯車と、前記リング歯車と、前記キャリアとのうち、いずれかの部材に接続する。
このような本発明の駆動装置は、ハイブリッド車両用の駆動装置として使用することができる。
【0012】
本発明の駆動装置では、トルクリミッタと、第1回転機と、第2回転機と、駆動軸とをさらに備えることができる。
そして、前記逆入力遮断クラッチを構成する前記出力部材を、前記トルクリミッタを介して、前記キャリアに接続し、前記第1回転機を、前記太陽歯車に接続する。そして、前記駆動軸に、前記リング歯車及び/又は前記第2回転機から動力を伝達する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の逆入力遮断クラッチによれば、入力側機構から入力される回転トルクを、その回転方向を問わず、出力側機構に伝達することができるとともに、出力側機構から逆入力される回転トルクを、その回転方向に応じて、入力側機構に伝達するか又は遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかる逆入力遮断クラッチの断面図である。
図2図2は、図1のa−a断面図である。
図3図3は、実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチを構成する入力部材の一部を示す斜視図である。
図4図4は、実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチを構成する出力部材の一部を示す斜視図である。
図5図5は、実施の形態の第1例にかかる逆入力遮断クラッチに関して、入力部材に回転トルクが入力された状態を示す図である。
図6図6は、実施の形態の第1例にかかる逆入力遮断クラッチに関して、出力部材に第1の回転方向の回転トルクが逆入力された状態を示す図である。
図7図7は、実施の形態の第1例にかかる逆入力遮断クラッチに関して、出力部材に第2の回転方向の回転トルクが逆入力された状態を示す図である。
図8図8は、実施の形態の第1例にかかる逆入力遮断クラッチに関して、出力部材に第1の回転方向の回転トルクが逆入力された際に、出力部材から係合子に作用する力の関係を示す、図6の中央部の拡大図である。
図9図9は、実施の形態の第1例にかかる逆入力遮断クラッチに関して、出力部材に第1の回転方向の回転トルクが逆入力された状態での、第1くさび角α及び第2くさび角βを示す図である。
図10図10は、実施の形態の第2例にかかる逆入力遮断クラッチを示す、図2に相当する図である。
図11図11は、実施の形態の第3例にかかるハイブリッド車両を示す、模式図である。
図12図12は、参考例の第1例にかかるハイブリッド車両を示す、模式図である。
図13図13は、参考例の第1例にかかるハイブリッド車両の駆動装置に適用できる、逆入力遮断クラッチの第1例を示す図である。
図14図14は、参考例の第1例にかかるハイブリッド車両の駆動装置に適用できる、逆入力遮断クラッチの第2例を示す図である。
図15図15は、参考例の第2例にかかる電気車両を示す、模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図9を用いて説明する。
なお、以下の説明において、軸方向、径方向及び周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向及び周方向をいう。本例において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向及び周方向は、入力部材2の軸方向、径方向及び周方向と一致し、かつ、出力部材3の軸方向、径方向及び周方向と一致する。
【0016】
[逆入力遮断クラッチ1の構造説明]
本例の逆入力遮断クラッチ1は、ロック式の逆入力遮断クラッチであり、入力部材2と、出力部材3と、被押圧部材4と、1対の係合子5とを備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に入力される回転トルクを、その回転方向にかかわらず、出力部材3に伝達するのに対し、出力部材3に逆入力される回転トルクを、その回転方向に応じて、入力部材2に伝達するか又は遮断(全部を遮断もしくは一部を遮断)する、逆入力遮断機能を有する。
【0017】
入力部材2は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材2は、回転中心軸と、該回転中心軸から径方向に外れた位置に配置された、1対の入力側係合部7とを備える。本例では、入力部材2は、段付円柱形状を有する入力軸部6と、該入力軸部6の大径部の先端面の径方向反対側2箇所位置から軸方向に突出するように形成された、1対の入力側係合部7とを備える。入力軸部6は、小径部が、前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続されるか、又は、前記入力側機構の出力部と一体に形成されている。1対の入力側係合部7は、略楕円柱形状を有しており、入力部材2の径方向に離隔して配置されている。入力側係合部7のそれぞれは、入力軸部6の大径部外周面と同じ円筒面上に存在する径方向外側面と、1対の入力側係合部7の離隔方向に対して直角な平坦面である径方向内側面とを有する。
【0018】
出力部材3は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材3は、入力部材2の回転中心軸と同軸の回転中心軸と、該回転中心軸上に配置された出力側係合部9とを備える。本例では、出力部材3は、円柱形状を有する出力軸部8と、該出力軸部8の先端面中央部から軸方向に突出するように形成された出力側係合部9とを備える。出力軸部8は、基端部が、前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続されるか、又は、前記出力側機構の入力部と一体に形成されている。出力側係合部9は、カム機能を有する。すなわち、出力部材3の回転中心軸から出力側係合部9の外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。本例では、出力側係合部9は、略矩形柱形状を有する。具体的には、出力側係合部9の外周面は、長手方向(図2の左右方向)に関して互いに平行な1対の第1の平坦面と、短手方向(図2の上下方向)に関して互いに平行な1対の第2の平坦面と、第1の平坦面と第2の平坦面とを接続する部分円筒面とからなる。出力側係合部9は、1対の入力側係合部7の径方向内側面同士の間に配置される。
【0019】
被押圧部材4は、たとえばハウジングなどの図示しない他の部材に固定されて、回転が拘束されている。被押圧部材4は、入力部材2の回転中心軸と同軸の中心軸を有し、かつ、該中心軸を中心とする内周面に、円筒面状の凹面である被押圧面10を有する。被押圧部材4は、入力部材2及び出力部材3よりも径方向外側に配置されている。具体的には、逆入力遮断クラッチ1の組立状態において、1対の入力側係合部7及び出力側係合部9が、被押圧部材4の径方向内側に配置される。
【0020】
1対の係合子5は、略半円形板形状を有しており、被押圧部材4の径方向内側に配置されている。また、1対の係合子5は、互いに同じ形状を有しており、それぞれの係合子5は、幅方向中央部を通る中心線に関して非対称形状を有している。本例では、1対の係合子5を、被押圧部材4の径方向内側に回転対称となるように配置している。それぞれの係合子5は、被押圧面10に対向する1対の押圧面11と、入力側係合部7と係合する入力側被係合部12と、出力側係合部9と係合する出力側被係合部13とを備えている。
【0021】
係合子5の外周面は、係合子5の弧に相当する凸円弧状の径方向外側面と、係合子5の弦に相当する凹凸状の径方向内側面から構成されている。係合子5の径方向外側面には、1対の押圧面11と1つの非接触面14とを有している。係合子5の径方向内側面には、その幅方向両側部に、平坦面状の突き合わせ面15を有しており、その幅方向中間部に、出力側被係合部13と収納凹部16とを有している。なお、係合子5に関して径方向とは、突き合わせ面15に対して直交する、図2に矢印Aで示す方向をいう。また、係合子5に関して幅方向とは、突き合わせ面15と平行な、図2に矢印Bで示す方向をいう。
【0022】
本例では、1対の係合子5を、それぞれの径方向外側面を反対側に向け、それぞれの径方向内側面を対向させた状態で、被押圧部材4の径方向内側に配置している。このように1対の係合子5を被押圧部材4の径方向内側に配置した状態で、被押圧面10と押圧面11との間部分に隙間が存在するか、又は、突き合わせ面15同士の間部分、及び、一方の係合子5の出力側被係合部13の先端面(径方向内側面)と他方の係合子5の収納凹部16の底面との間部分にそれぞれ隙間が存在するように、被押圧部材4の内径寸法及び係合子5の径方向寸法を規制している。
【0023】
1対の押圧面11は、出力部材3のロック状態又は半ロック状態で、被押圧面10に対して押し付けられる部分であり、係合子5の径方向外側面の周方向両側部に、周方向に離隔して配置されている。押圧面11のそれぞれは、被押圧面10の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する円筒面状の凸面である。係合子5の径方向外側面の周方向中間部には、被押圧面10に対して接触することのない、非接触面14が配置されている。本例では、非接触面14を、被押圧面10の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する円筒面としている。このような本例では、出力部材3に回転トルクが逆入力された際に、くさび効果によって、被押圧面10と押圧面11との摩擦係合力を大きくすることができる。
【0024】
入力側被係合部12は、係合子5の径方向中間部を軸方向に貫通し、かつ、該係合子5の幅方向に伸長する、略弓形の長孔である。入力側被係合部12の内面のうち、径方向内側に位置する部分は、径方向に直交する平坦面である。入力側被係合部12は、入力側係合部7を緩く挿入できる大きさを有する。具体的には、入力側被係合部12の内側に入力側係合部7を挿入した際に、入力側係合部7と入力側被係合部12の内面との間に、係合子5の幅方向に関する隙間及び係合子5の径方向に関する隙間が存在する。このため、入力側係合部7は、入力側被係合部12の内側に、被押圧面10に対する遠近移動(変位)を可能に、かつ、入力部材2の回転方向に関する相対移動を可能に係合している。
【0025】
出力側被係合部13は、係合子5の径方向内側面のうち、係合子5の幅方向中央部を通る中心線よりも幅方向片側(図2の上側に位置する係合子5にあっては右側、図2の下側に位置する係合子5にあっては左側)に配置されており、幅方向両側に配置された突き合わせ面15及び収納凹部16よりも径方向内方(図2の上側に位置する係合子5にあっては下方、図2の下側に位置する係合子5にあっては上方)に突出している。出力側被係合部13は、鉤型形状を有しており、その先端面(径方向内側面)が、突き合わせ面15と略平行な平坦面になっている。また、出力側被係合部13は、その径方向中間部に、幅方向他側面に開口した出力側被係合凹部17を有している。
【0026】
出力側被係合凹部17は、略矩形の凹部であり、出力側係合部9の長手方向の端部を、その内側に緩く挿入できる大きさ及び形状を有している。具体的には、出力側被係合凹部17は、出力側係合部9の短手方向(図2の上下方向)に関する寸法よりも、少しだけ(1/10〜1倍程度)大きい開口幅を有し、かつ、出力側係合部9の長手方向(図2の左右方向)に関する寸法の1/10〜5倍程度(図示の例では2/5倍)の軸方向深さ(図2の左右方向深さ)を有する。
【0027】
出力側被係合凹部17の内面は、略U字形状を有しており、第1被係合面18と、第1被係合面18と対向配置された第2被係合面19と、第1被係合面18と第2被係合面19とをつなぐ底面20とからなる。第1被係合面18は、平坦面状で、突き合わせ面15と略平行に配置されている。第2被係合面19は、平坦面状で、第1被係合面18と平行に配置されている。
【0028】
収納凹部16は、係合子5の径方向内側面のうち出力側被係合部13の幅方向他側に隣接配置された略矩形の凹部であり、その底面は、突き合わせ面15と略平行な平坦面状で、第1被係合面18よりも径方向外側に位置している。収納凹部16は、出力側被係合部13よりも大きな幅寸法を有しており、径方向に関して反対向きに配置された係合子5が備える出力側被係合部13の先半部を収納可能な径方向深さを有している。具体的には、1対の係合子5を互いに近づけるように変位させた際に、突き合わせ面15同士が当接(面接触)するのと同時に、収納凹部16の底面と出力側被係合部13の先端面とを当接(面接触)させるか、突き合わせ面15同士が当接するよりも先に、収納凹部16の底面と出力側被係合部13の先端面とを当接させるか、又は、収納凹部16の底面と出力側被係合部13の先端面とが当接するよりも先に、突き合わせ面15同士を当接させるように、収納凹部16の径方向深さを出力側被係合部13の径方向高さとの関係で規制している。図示の例では、突き合わせ面15同士が当接するのと同時に、収納凹部16の底面と出力側被係合部13の先端面とが当接するように、収納凹部16の径方向深さと出力側被係合部13の径方向高さとを規制している。
【0029】
係合子5の径方向内側面の幅方向両側部に配置された1対の突き合わせ面15のうち、幅方向片側に配置された突き合わせ面15には、ガイド凹部21を設けている。ガイド凹部21は、係合子5の径方向外方に凹むように形成された略矩形の凹部である。本例では、1対の係合子5のそれぞれの突き合わせ面15を互いに対向させた状態で、それぞれのガイド凹部21の内側にコイル状のばね22を配置している。そして、1対のばね22の弾力により、1対の係合子5を被押圧面10に向けて付勢している。このような構成を有する本例では、1対の係合子5の姿勢を同期させるとともに安定させることが可能であり、1対の係合子5の径方向に関する遠近移動を正確に行わせることが可能になる。また、後述するように、入力部材2に回転トルクが入力された場合及び出力部材3に第2の回転方向の回転トルクが逆入力された場合を除き、1対の係合子5の押圧面11を被押圧面10に対して押し付けておくことができる。
【0030】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、組立状態おいて、軸方向一方側に配置した入力部材2の1対の入力側係合部7を、1対の係合子5のそれぞれの入力側被係合部12に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材3の出力側係合部9を、1対の出力側被係合部13同士の間に軸方向に挿入している。具体的には、出力側係合部9の長手方向の両側の端部を、出力側被係合部13の出力側被係合凹部17の内側に緩く挿入している。これにより、出力側係合部9が、第1の回転方向(図2及び図5図9の反時計方向)及び第2の回転方向(図2及び図5図9の時計方向)に、それぞれわずかに(数度〜数十度程度)回転可能としている。本例では、入力側係合部7の軸方向寸法、出力側係合部9の軸方向寸法、被押圧部材4の軸方向寸法、及び、係合子5の軸方向寸法をそれぞれほぼ同じとしている。
【0031】
[逆入力遮断クラッチ1の動作説明]
本例の逆入力遮断クラッチ1の動作について説明する。
先ず、入力部材2に入力側機構から回転トルクが入力された場合を説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に回転トルクが入力されると、入力部材2の回転方向に関係なく、係合子5のそれぞれが、被押圧面10から離れる方向に移動(変位)する。そして、入力部材2に入力された回転トルクが、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達される。
【0032】
具体的には、入力部材2に回転トルクが入力されると、図5に示すように、入力側被係合部12の内側で、入力側係合部7が入力部材2の回転方向(図5の例では時計方向)に回転する。そして、入力側係合部7の径方向内側面が、入力側被係合部12の内面のうち、径方向内側に位置する部分を径方向内方に向けて押圧する。すると、係合子5のそれぞれが、1対のばね22を弾性的に収縮させて、被押圧面10から離れる方向に移動する。換言すれば、係合子5のそれぞれが、入力部材2との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内方に移動する。すなわち、図5の上側に位置する係合子5が下方に移動し、図5の下側に位置する係合子5が上方に移動する。そして、1対の係合子5のそれぞれの第1被係合面18が、出力部材3の出力側係合部9の短手方向両側面に面接触する。この結果、入力部材2に入力された回転トルクが、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達される。なお、第1被係合面18を出力側係合部9の短手方向両側面に当接させた状態で、突き合わせ面15同士、及び、出力側被係合部13の先端面と収納凹部16の底面とは、それぞれ当接させても良いし、隙間を介して近接対向させても良い。
【0033】
次に、出力部材3に出力側機構から回転トルクが逆入力された場合を説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、出力部材3に回転トルクが逆入力されると、出力部材3の回転方向が第1の回転方向である場合には、係合子5のそれぞれが、被押圧面10に近づく方向に移動する。そして、出力部材3に逆入力された回転トルクが完全に遮断されて入力部材2に伝達されないか、又は、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断される。これに対して、出力部材3の回転方向が、第1の回転方向と逆方向の第2の回転方向である場合には、係合子5のそれぞれが、被押圧面10から離れる方向に移動する。そして、出力部材3に逆入力された回転トルクが、1対の係合子5を介して、入力部材2に伝達される。
【0034】
具体的には、図6に示すように、出力部材3に第1の回転方向(反時計方向)の回転トルクが逆入力された場合には、出力側係合部9が、1対の出力側被係合凹部17の内側で、第1の回転方向に回転する。そして、出力側係合部9に備えられた第1の対角線上に存在する1対の角部が、第1被係合面18を径方向外方に向けて押圧する。すると、係合子5のそれぞれが、被押圧面10に近づく方向に移動する。換言すれば、係合子5のそれぞれが、出力部材3との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外方に移動する。すなわち、図6の上側に位置する係合子5が上方に移動し、図6の下側に位置する係合子5が下方に移動する。そして、係合子5のそれぞれの押圧面11が、被押圧面10に対して押し付けられる。この際、係合子5のそれぞれに関して、周方向に離隔した1対の押圧面11が被押圧面10に摩擦係合する。この結果、出力部材3に逆入力された回転トルクが完全に遮断されて入力部材2に伝達されないか、又は、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断される。出力部材3に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材2に伝達されないようにするには、押圧面11が被押圧面10に対して摺動(相対回転)しないように、1対の係合子5を出力側係合部9と被押圧部材4との間で突っ張らせ、出力部材3をロックする。これに対し、出力部材3に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断されるようにするには、押圧面11が被押圧面10に対して摺動するように、1対の係合子5を出力側係合部9と被押圧部材4との間で突っ張らせ、出力部材3を半ロックする。
【0035】
これに対し、図7に示すように、出力部材3に第2の回転方向(時計方向)の回転トルクが逆入力された場合には、出力側係合部9が、1対の出力側被係合凹部17の内側で、第2の回転方向に回転する。そして、出力側係合部9に備えられた第2の対角線上に存在する1対の角部が、第2被係合面19を径方向内方に向けて(径方向に関して反対側に配置された係合子5に近づく方向に)押圧する。すると、係合子5のそれぞれが、1対のばね22を弾性的に収縮させて、被押圧面10から離れる方向に移動する。換言すれば、係合子5のそれぞれが、出力部材3との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内方に移動する。すなわち、図7の上側に位置する係合子5が下方に移動し、図7の下側に位置する係合子5が上方に移動する。そして、1対の係合子5のそれぞれの入力側被係合部12の内面のうち径方向内側に位置する部分が、入力側係合部7の径方向内側面と係合する。この結果、出力部材3に入力された回転トルクが、1対の係合子5を介して、入力部材2に伝達される。なお、出力部材3に第2の回転方向の回転トルクが逆入力され、1対の係合子5が互いに近づいた状態で、突き合わせ面15同士、及び、出力側被係合部13の先端面と収納凹部16の底面とは、それぞれ当接させても良いし、隙間を介して近接対向させても良い。ただし、当接させた場合の方が、より大きなトルクを伝達する面からは有利になる。
【0036】
また、出力部材3がロックした状態又は半ロックした状態で、入力部材2に回転トルクが入力されると、出力部材3のロック又は半ロックが解除される。つまり、係合子5は径方向内方に移動し、入力部材2から出力部材3に回転トルクが伝達される。
【0037】
なお、本例の逆入力遮断クラッチ1では、以上の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。特に、係合子5の押圧面11が被押圧面10に接触した位置関係において、入力側係合部7の径方向内側面と入力側被係合部12の内面との間に、出力側係合部9の角部が出力側被係合部13(第1被係合面18)を押圧することに基づいて押圧面11を被押圧面10に向けてさらに押し付けることを許容する隙間が存在するようにしている。これにより、出力部材3に第1の回転方向の回転トルクが逆入力された場合に、係合子5が径方向外側に移動するのを入力側係合部7によって阻止されることのないようにし、かつ、押圧面11が被押圧面10に接触した後も、押圧面11と被押圧面10との接触部に作用する面圧が、出力部材3に逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材3のロック又は半ロックが適正に行われるようにしている。
【0038】
上述のように出力部材3に第1の回転方向の回転トルクが逆入力された場合に、出力部材3がロック又は半ロックする原理及び条件について、図6図8及び図9を加えて、より具体的に説明する。
出力部材3に回転トルクが逆入力されることで、出力側係合部9の角部が第1被係合面18に当接すると、図8に示すように、出力部材3の回転中心軸に直交する断面内において、出力側係合部9の角部と第1被係合面18との当接部Xには、当接部Xを通り、かつ、当接部Xと出力部材3の回転中心Oとを結ぶ直線に直交する第2垂線Pの方向に、接線力Ftが作用する。ここで、接線力Ftの作用線の方向である第2垂線Pと第1被係合面18とのなす角度のうち、鋭角側の角度を第2くさび角(摩擦角)βとし、出力側係合部9と第1被係合面18との間の摩擦係数をμとすると、接線力Ftは、第1被係合面18に直交する方向の法線力Fcと、第1被係合面18と平行な方向の摩擦力μFcとの力の釣り合いから、次の(1)式により表すことができる。
Ft=Fc・sinβ+μFc・cosβ ・・・(1)
このため、法線力Fcは、接線力Ftを用いて、次の(2)式により表される。
Fc=Ft/(sinβ+μ・cosβ) ・・・(2)
この法線力Fcが、出力側係合部9が係合子5を径方向外方に向けて押す力に相当し、くさび作用により、第2くさび角βが小さくなるほど大きくなる。
【0039】
また、出力側係合部9の角部が第1被係合面18に当接した際に、出力部材3から係合子5に伝達されるトルクTの大きさは、出力部材3の回転中心Oから当接部Xまでの距離をrとすると、次の(3)式で表される。
T=rFt ・・・(3)
【0040】
一方、出力側係合部9により、法線力Fcの大きさの力で径方向外方に押された係合子5は、1対の押圧面11を被押圧面10に押し付けるため、それぞれの押圧面11は、被押圧面10を法線力Fcの1/2の大きさの力で押すことになる。ここで、押圧面11と被押圧面10との接触部Cにおける接線Yと、第1被係合面18に直角方向の第1垂線Pとのなす角度を第1くさび角αとし、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数をμ´とした場合、接触部Cに作用する法線力Fcの1/2の大きさの力(Fc/2)は、接触部Cの法線方向の力である法線力Fnと、接触部Cの接線方向の力である摩擦力μ´Fnとの力の釣り合いから、次の式(4)により表すことができる。
Fc/2=Fn・sinα+μ´Fn・cosα・・・(4)
このため、法線力Fnは、法線力Fcを用いて、次の(5)式により表される。
Fn=Fc/2(sinα+μ´・cosα)・・・(5)
この法線力Fnが、押圧面11が被押圧面10を接触部Cの法線方向に押す力に相当し、くさび作用により、第1くさび角αが小さくなるほど大きくなる。
なお、本例では、係合子5の径方向外側面を線対称形状としているため、2つの接触部Cにおけるそれぞれの接線Yと第1垂線Pとのなす角度である、2つの第1くさび角αの大きさは互いに等しい。
【0041】
また、摩擦力μ´Fnは、次の式(6)により表すことができる。
μ´Fn=μ´Fc/2(sinα+μ´・cosα)・・・(6)
このため、出力部材3の回転中心Oから接触部Cまでの距離をRとすると、係合子5に作用するブレーキトルクT´の大きさは、次の(7)式で表される。
T´=Rμ´Fc/(sinα+μ´・cosα) ・・・(7)
したがって、より大きなブレーキ力を得るには、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fcを大きくすれば良く、また、第1くさび角αを小さくすれば良いことが分かる。
【0042】
出力部材3を完全にロックするには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、次の(8)式の関係を満たす必要がある。
T<T´ ・・・(8)
また、上記(8)式に上記(1)〜(7)式を代入すると次の(9)式が得られる。
μ´R/(sinα+μ´・cosα)(sinβ+μ・cosβ)>r ・・(9)
上記(9)式からは、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数μ´を大きくすれば、距離Rを小さくしても、出力部材3を完全にロックさせられることが分かる。また、出力部材3の回転中心Oから当接部Xまでの距離rと、出力部材3の回転中心Oから接触部Cまでの距離Rと、第1くさび角α及び第2くさび角βを適切に設定することで、出力部材3をロックさせられることが分かる。
【0043】
これに対し、出力部材3を半ロックして、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断されるようにするためには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、次の(10)式の関係を満たす必要がある。
T>T´ ・・・(10)
したがって、出力側係合部9と第1被係合面18との間の摩擦係数μ、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数μ´、回転中心Oから当接部Xまでの距離r、回転中心Oから接触部Cまでの距離R、第1くさび角α及び第2くさび角βをそれぞれ適切に設定することで、出力部材3を半ロックさせることができる。
【0044】
以上の構成を有し、上述のように動作する本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えられる。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2及び出力部材3のそれぞれの回転を、係合子5の径方向移動に変換する。そして、このように入力部材2及び出力部材3の回転を係合子5の径方向移動に変換することで、係合子5を、該係合子5の径方向内側に位置する出力部材3に係合させたり、あるいは、係合子5を、該係合子5の径方向外側に位置する被押圧部材4に押し付けるようにしている。このように、本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2及び出力部材3のそれぞれの回転によって制御される係合子5の径方向移動に基づき、入力部材2から出力部材3に回転トルクが伝達可能になる状態と、出力部材3の回転が防止又は抑制される出力部材3のロック状態又は半ロック状態、及び、出力部材3から入力部材2に回転トルクが伝達可能になる状態とを切り替えることができるため、逆入力遮断クラッチ1の装置全体の軸方向寸法を短くできる。
【0045】
しかも、係合子5に、入力部材2と出力部材3との間で回転トルクを伝達する機能と、出力部材3をロック又は半ロックする機能との両方の機能を持たせている。このため、逆入力遮断クラッチ1の部品点数を抑えることができ、かつ、両機能をそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、動作を安定させることができる。たとえば、回転トルクを伝達する機能とロック又は半ロックする機能とを別の部材に持たせる場合、ロック解除又は半ロック解除のタイミングと、回転トルクの伝達開始のタイミングとがずれる可能性がある。この場合、ロック解除又は半ロック解除から回転トルクの伝達開始までの間に、出力部材に第1の回転方向の回転トルクが逆入力されると、出力部材が再びロック又は半ロックされてしまう。本例では、係合子5に、回転トルクを伝達する機能と、出力部材3をロック又は半ロックする機能との両方の機能を持たせているため、このような不都合が生じることを防止できる。
【0046】
また、本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、入力側機構から入力される回転トルクを、その回転方向にかかわらず、出力側機構に伝達することができるとともに、出力側機構から逆入力される回転トルクを、その回転方向に応じて、入力側機構に伝達するか又は遮断することができる。このため、本例の逆入力遮断クラッチ1を、特開2018−39433号公報に記載されたハイブリッド車両の駆動装置に組み込めば、エンジンのクランク軸の正回転及び負回転をいずれも許容することができるとともに、遊星歯車機構からクランク軸に回転トルクを伝達することができる。このため、プリポジショニング制御を行う際に、圧縮行程にあるピストンにコンプレッション反力が作用し、クランク軸を負回転させようとする力が加わった場合にも、クランク軸の負回転を許容することができる。したがって、逆入力遮断クラッチ1から打音が発生することを防止できるとともに、逆入力遮断クラッチ1の耐久性を確保することもできる。
【0047】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図10を用いて説明する。
本例は、実施の形態の第1例(図1図9参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ1aは、係合子5aの径方向外側面の形状のみを、実施の形態の第1例の構造とは異ならせている。すなわち、係合子5aの径方向外側面の全体に、被押圧面10の曲率半径よりもわずかに小さな曲率半径を有する単一円筒面状の押圧面11aを設けている。
【0048】
以上のような本例では、係合子5aの径方向外側面が単一円筒面であるため、係合子5aの加工コストを抑えることができる。本例の構造では、係合子5aの押圧面11aを被押圧面10に押し付けた際に、くさび効果を得ることができないため、逆入力遮断クラッチ1aの直径が、実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ1の直径と同じである場合には、出力部材3に第1の回転方向の回転トルクが逆入力された際に発生するブレーキトルクが小さくなる。ただし、係合子5aの径方向外側面の加工が容易であるため、逆入力遮断クラッチ1a全体としてのコストを抑えることができる。また、本例の逆入力遮断クラッチ1aは、発生するブレーキトルクが小さくなるため、出力部材3に逆入力された回転トルクを完全に遮断する用途よりも、回転トルクの一部を遮断する用途に好ましく使用できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0049】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、図11を用いて説明する。
本例は、実施の形態の第1例に示した逆入力遮断クラッチ1を、ハイブリッド車両(HV)の駆動装置に組み込んだ構造を示している。
【0050】
本例のハイブリッド車両23は、大別して、それぞれが駆動源であるエンジン24、第1回転機25及び第2回転機26と、動力伝達装置27と、1対の駆動輪28とを備える。そして、走行状態に応じて、駆動輪28に動力を伝達する駆動源の種類及びその組み合わせを切り替え、複数の走行モードを実現する。
【0051】
エンジン24は、たとえばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど、燃料を燃焼させて発生した燃焼ガスを利用して動力を得る、内燃機関である。第1回転機25及び第2回転機26は、駆動トルクを発生させる電動機(モータ)としての機能と、発電機(ジェネレータ)としての機能とを兼ね備えた、モータジェネレータである。第1回転機25と第2回転機26との定格出力は、互いに同じでも良いし、異なっていても良い。
【0052】
動力伝達装置27は、駆動源で発生した動力を駆動輪28に伝達するもので、逆入力遮断クラッチ1と、フライホイール29と、トルクリミッタ30と、遊星歯車機構31と、トルク伝達軸32と、デファレンシャル機構33と、駆動軸34とを備えている。
【0053】
逆入力遮断クラッチ1は、実施の形態の第1例に示したクラッチ装置であり、入力部材2と、出力部材3と、被押圧部材4と、1対の係合子5とを備える。そして、このうちの入力部材2を、エンジン24の出力軸であるクランク軸35に接続している。また、出力部材3を、フライホイール29に接続している。フライホイール29は、ダンパ機構であるトルクリミッタ30を介して、伝達軸36に接続されている。被押圧部材4は、エンジンケース(ハウジング)、エンジンブロック、又は、トランスミッションケースなどの静止部材37に対して固定している。特に本例では、出力部材3に逆入力された回転トルクを遮断可能になる出力部材3の第1の回転方向を、クランク軸35の負回転の方向と一致させ、出力部材3に逆入力された回転トルクが入力部材2に伝達可能になる出力部材3の第2の回転方向を、クランク軸35の正回転の方向と一致させている。
【0054】
遊星歯車機構31は、シングルピニオン型で、差動作用を生じる差動機構(動力分割機構)として機能する。遊星歯車機構31は、第1回転要素である太陽歯車38と、太陽歯車38の周囲に配置された第2回転要素であるリング歯車39と、太陽歯車38及びリング歯車39にそれぞれ噛合した複数の遊星歯車40と、遊星歯車40を自転可能かつ公転可能に支持した第3回転要素であるキャリア41とを有する。
【0055】
太陽歯車38には、第1回転機25のロータ軸を連結している。これにより、太陽歯車38を、第1回転機25に接続している。また、キャリア41には、伝達軸36を連結している。これにより、キャリア41を、トルクリミッタ30、フライホイール29及び逆入力遮断クラッチ1を介して、エンジン24に接続している。リング歯車39には、その外周面に第1ドライブギヤ42を設けている。なお、キャリア41に連結された伝達軸36には、動力伝達装置27の構成各部に作動油を供給するためのオイルポンプ43が連結されている。
【0056】
リング歯車39の外周面に設けられた第1ドライブギヤ42は、トルク伝達軸32に備えられたドリブンギヤ44と噛合している。また、トルク伝達軸32に備えられたファイナルギヤ45は、デファレンシャル機構33を構成するデファレンシャルギヤ46と噛合している。このため、リング歯車39の回転は、トルク伝達軸32及びデファレンシャル機構33を介して、デファレンシャル機構33に連結された駆動軸34に伝達される。
【0057】
トルク伝達軸32に備えられたドリブンギヤ44には、リング歯車39に備えられた第1ドライブギヤ42だけでなく、第2回転機26のロータ軸に連結された第2ドライブギヤ47を噛合させている。これにより、第2回転機26の動力を、トルク伝達軸32及びデファレンシャル機構33を介して、駆動軸34に伝達可能としている。
【0058】
以上のようなハイブリッド車両23によれば、走行状態に応じて、駆動輪28に動力を伝達する駆動源の種類及びその組み合わせを切り替え、複数の走行モードを実現することができる。たとえば発進時や低速・低負荷走行時などには、エンジン24の運転を停止した状態で、第2回転機26のみを駆動するか、又は、第1回転機25及び第2回転機26をともに駆動することで、駆動輪28に動力を伝達することができる。本例では、逆入力遮断クラッチ1により、キャリア41(伝達軸36)が負回転の方向に回転することを防止できる(エンジンブレーキを効かせずに済む)。このため特に、第1回転機25及び第2回転機26をともに走行用の駆動源として使用するモータ走行モードによれば、高い動力性能を発揮することが可能になり、急加速時など、大きな駆動トルクが必要になる場合にも対応することができる。
【0059】
停止状態のエンジン24を再始動させる際には、第1回転機25又は第2回転機26を駆動して、逆入力遮断クラッチ1などを介して、クランキングトルクをクランク軸35に付与する。この際、第1回転機25又は第2回転機26を、キャリア41の回転方向が、正回転の方向と一致するように回転駆動する。これにより、出力部材3に逆入力された回転トルクを、係合子5を介して、入力部材2に伝達することができるため、クランキングトルクをクランク軸35に伝達することができる。
【0060】
さらに本例では、プリポジショニング制御を行う際に、第1回転機25又は第2回転機26の出力トルクを急に減少させてしまい、圧縮行程にあるピストンにコンプレッション反力が作用した場合にも、逆入力遮断クラッチ1をロックさせずに済み、クランク軸35を負回転させることができる。そして、クランク軸35の回転(負回転)を、ダンパ機能を有するトルクリミッタ30により吸収することができる。したがって、逆入力遮断クラッチ1から打音が発生すること防止できるとともに、逆入力遮断クラッチ1の耐久性を確保することもできる。
なお、本例を実施する場合には、逆入力遮断クラッチ1に代えて、実施の形態の第2例に示した逆入力遮断クラッチ1aを使用することもできる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0061】
[参考例の第1例]
参考例の第1例について、図12図14を用いて説明する。
本参考例は、実施の形態の第3例にかかるハイブリッド車両の駆動装置に、逆入力遮断クラッチ1に代えて、図12に示した逆入力遮断クラッチ48、又は、図13に示した逆入力遮断クラッチ48aを組み込む構成を有している。
【0062】
逆入力遮断クラッチ48、48aの基本的な構成は、実施の形態の第1例及び第2例に示した逆入力遮断クラッチ1、1aと同じであり、入力部材49と、出力部材50と、被押圧部材51と、1対の係合子52とを備えている。
【0063】
逆入力遮断クラッチ48、48aは、入力部材49に入力される回転トルクは、その回転方向を問わず、出力部材50に伝達し、出力部材50に逆入力される回転トルクは、その回転方向を問わず、遮断する(完全に遮断する又は一部を遮断する)、逆入力遮断機能を有している。つまり、実施の形態の第1例及び第2例に示した逆入力遮断クラッチ1、1aは、出力部材3に第2の回転方向の回転トルクが逆入力された場合には、出力部材3から入力部材2に回転トルクを伝達する機能を有するのに対し、逆入力遮断クラッチ48、48aは、回転トルクを入力部材49に伝達する機能は有しない。
【0064】
逆入力遮断クラッチ48、48aは、上述のような機能を発揮するために、係合子52が備える出力側被係合部53、53aの構造を、逆入力遮断クラッチ1、1aを構成する係合子5、5aの出力側被係合部の13の構造とは異ならせている。
【0065】
具体的には、図13に示した逆入力遮断クラッチ48では、出力側被係合部53を、係合子52の径方向内側面の幅方向中間部に、係合子52の径方向外方に凹むように形成された、略矩形の凹部としている。そして、出力側被係合部53の内側に、出力部材50に備えられた出力側係合部54の短手方向の半部を緩く配置している。また、出力側係合部54の角部が当接する出力側被係合部53の底面を、平坦面としている。このような構成により、出力部材50が、時計方向及び反時計方向のいずれの方向に回転する場合にも、出力側係合部54の角部が、出力側被係合部53の底面を径方向外方に向けて押圧するようにしている。この結果、出力部材50に回転トルクが逆入力された場合には、その回転方向を問わずに、1対の係合子52が互いに離れる方向に移動し、それぞれの係合子52の径方向外側面に備えられた押圧面55を、被押圧部材51の内周面に備えられた被押圧面56に対して摩擦係合させる。
【0066】
図14に示した逆入力遮断クラッチ48aでは、出力側被係合部53aを、係合子52の径方向内側面の幅方向中間部に形成された平坦面としている。このような構成により、出力部材50が、時計方向及び反時計方向のいずれの方向に回転した場合にも、出力側係合部54が出力側被係合部53aを径方向外方に向けて押圧するようにしている。この結果、出力部材50に回転トルクが逆入力された場合には、その回転方向を問わずに、1対の係合子52が互いに離れる方向に移動し、それぞれの係合子52の径方向外側面に備えられた1対の押圧面55aを、被押圧部材51の内周面に備えられた被押圧面56に対して摩擦係合させる。
【0067】
本例では、上述のような逆入力遮断機能を有する逆入力遮断クラッチ48、48aを、ハイブリッド車両23の駆動装置に組み込んでいる。このため、プリポジショニング制御を行う際に、第1回転機25又は第2回転機26の出力トルクを急に減少させてしまい、圧縮行程にあるピストンにコンプレッション反力が作用した場合にも、逆入力遮断クラッチ48、48aをロックさせずに済み、クランク軸35を負回転させることができる。そして、クランク軸35の回転を、トルクリミッタ30により吸収することができる。したがって、逆入力遮断クラッチ48、48aから打音が発生することを防止できるとともに、逆入力遮断クラッチ48、48aの耐久性を確保することもできる。
【0068】
また、逆入力遮断クラッチ48、48aは、エンジン24の運転を停止した状態で、キャリア41(伝達軸36)が負回転の方向だけでなく、正回転の方向に回転することも防止できる(エンジンブレーキを効かせずに済む)。このため、エンジン24の引き摺りに伴う駆動力の低下を抑制することができる。また、第1回転機25及び第2回転機26をともに走行用の駆動源として使用するモータ走行モードによれば、高い動力性能を発揮することが可能になる。なお、本例の構造では、停止状態のエンジン24を再始動させる際に、逆入力遮断クラッチ48、48a介して、クランキングトルクをクランク軸35に付与することができないため、第1回転機25及び第2回転機26とは別のスタータモータ57を利用して、クランク軸35にクランキングトルクを付与する。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例〜第3例と同じである。
【0069】
[参考例の第2例]
参考例の第2例について、図15を用いて説明する。
本参考例の電気車両(EV)58は、参考例の第1例の変形例であり、内燃機関であるエンジン24(図11参照)に代えて、第3回転機(モータジェネレータ)59を備えている。
【0070】
以上のような本参考例では、駆動輪28で必要となる駆動力に応じて、第1回転機25と第2回転機26と第3回転機59との3つの回転機の中から使用する回転機を適宜選択して動力源とすることができる。したがって、電費を抑えることが可能になり、航続距離の延長を図ることができる。なお、第1回転機25と第2回転機26と第3回転機59との定格出力は、それぞれ同じとしても良いし、それぞれ異ならせても良い。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例〜第3例及び参考例の第1例と同じである。
【0071】
上述した実施の形態及び参考例の各例の構造は、技術的な矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。
【0072】
本発明を実施する場合に、出力部材に備えられた出力側係合部と係合子に備えられた出力側被係合部との係合態様、並びに、出力側係合部及び出力側被係合部の形状は、実施の形態の各例で示した構造に限定されない。出力部材の回転方向に応じて、係合子に対して異なる向き(実施の形態では径方向に関して反対向き)の力を付与できる構造であれば、実施の形態で示した構造に限定されない。
【0073】
本発明の逆入力遮断クラッチは、たとえば、可変圧縮比装置、電動ドア装置、パワーウィンドウ装置、操舵装置、ジャッキなどの各種機械装置に適用することができる。本発明の逆入力遮断クラッチを構成する係合子の数は、2個に限らず、1個又は3個以上とすることもできる。
【0074】
本発明を実施する場合には、逆入力遮断クラッチを構成する、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び、係合子の材質は、特に問わない。たとえば、これらの材質としては、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金などの金属のほか、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂などでも良い。また、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び、係合子のそれぞれで、同じ材質にしても良いし、異なる材質にしても良い。
【0075】
また、出力部材に第1の回転方向の回転トルクが逆入力した場合に、出力部材がロック又は半ロックする条件さえ満たせば、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び、係合子が相互に接触する部分に、潤滑剤を介在させることもできる。このために、たとえば、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び、係合子のうちの少なくとも1つを含油メタル製とすることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1、1a 逆入力遮断クラッチ
2 入力部材
3 出力部材
4 被押圧部材
5、5a 係合子
6 入力軸部
7 入力側係合部
8 出力軸部
9 出力側係合部
10 被押圧面
11、11a 押圧面
12 入力側被係合部
13 出力側被係合部
14 非接触面
15 突き合わせ面
16 収納凹部
17 出力側被係合凹部
18 第1被係合面
19 第2被係合面
20 底面
21 ガイド凹部
22 ばね
23 ハイブリッド車両
24 エンジン
25 第1回転機
26 第2回転機
27 動力伝達装置
28 駆動輪
29 フライホイール
30 トルクリミッタ
31 遊星歯車機構
32 トルク伝達軸
33 デファレンシャル機構
34 駆動軸
35 クランク軸
36 伝達軸
37 静止部材
38 太陽歯車
39 リング歯車
40 遊星歯車
41 キャリア
42 第1ドライブギヤ
43 オイルポンプ
44 ドリブンギヤ
45 ファイナルギヤ
46 デファレンシャルギヤ
47 第2ドライブギヤ
48、48a 逆入力遮断クラッチ
49 入力部材
50 出力部材
51 被押圧部材
52 係合子
53、53a 出力側被係合部
54 出力側係合部
55、55a 押圧面
56 被押圧面
57 スタータモータ
58 電気車両
59 第3回転機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15