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特開2021-4683ボイラ火炉およびそれに用いられるボイラ炉壁パネル、ならびにボイラ炉壁の硬化処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-4683(P2021-4683A)
(43)【公開日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】ボイラ火炉およびそれに用いられるボイラ炉壁パネル、ならびにボイラ炉壁の硬化処理方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/10 20060101AFI20201211BHJP
   F22B 17/02 20060101ALI20201211BHJP
【FI】
   F22B37/10 602C
   F22B17/02 A
   F22B37/10 N
   F22B37/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-117767(P2019-117767)
(22)【出願日】2019年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡垣内 俊成
(72)【発明者】
【氏名】菊池 悟
(72)【発明者】
【氏名】坂本 誠
(72)【発明者】
【氏名】重森 久典
(72)【発明者】
【氏名】前市 賢治
(57)【要約】
【課題】ボイラ炉壁の摩耗を十分に軽減することが可能なボイラ炉壁パネルおよびそれを備えるボイラ火炉、ならびにボイラ炉壁パネルの硬化処理方法を提供する。
【解決手段】炉底側が絞られた火炉ホッパ(5)を下部に備え、前後壁(21,22)および左右側壁(23,24)を含むボイラ炉壁(2)により囲まれたボイラ火炉(1)であって、火炉ホッパ(5)におけるボイラ炉壁(2)は、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びて内部を流体が流れる伝熱管(31)と、伝熱管(31)が延びる方向に延在する板状のメンブレンバー(32)と、が交互に接合されることにより、スパイラル状に形成されると共に、前後壁(21,22)と左右側壁(23,24)との取合領域(20A〜20D)には、ピーニング処理が施された肉盛溶接部(30,30A)が炉内に面する側に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉底側が絞られた火炉ホッパを下部に備え、前後壁および左右側壁を含むボイラ炉壁により囲まれたボイラ火炉であって、
前記火炉ホッパにおける前記ボイラ炉壁は、
鉛直方向に対して傾斜する方向に延びて内部を流体が流れる伝熱管と、前記伝熱管が延びる方向に延在する板状のメンブレンバーと、が交互に接合されることにより、スパイラル状に形成されると共に、
前記前後壁と前記左右側壁との取合領域には、ピーニング処理が施された肉盛溶接部が炉内に面する側に設けられている
ことを特徴とするボイラ火炉。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラ火炉であって、
前記火炉ホッパは、
前記炉底に形成された開口部に向かって傾斜する傾斜部と、
前記傾斜部の下端から垂下した垂下部と、を有し、
前記肉盛溶接部は、前記傾斜部と前記垂下部との接続領域にも設けられている
ことを特徴とするボイラ火炉。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボイラ火炉に用いられ、
前記火炉ホッパにおける前記取合領域を含んだ前記ボイラ炉壁を構成する
ことを特徴とするボイラ炉壁パネル。
【請求項4】
ボイラ火炉の前後壁および左右側壁を含み、前記ボイラ火炉の下部に備えられて炉底側が絞られた火炉ホッパにおいて、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びて内部を流体が流れる伝熱管と、前記伝熱管が延びる方向に延在する板状のメンブレンバーと、が交互に接合されることにより、スパイラル状に形成されたボイラ炉壁の硬化処理方法であって、
前記ボイラ炉壁のうち、前記火炉ホッパにおける前記前後壁と前記左右側壁との取合領域に対して、前記ボイラ火炉内に面した表面に肉盛溶接層を形成し、前記肉盛溶接層の表面を光沢が現れるまで繰り返し打撃または擦過することにより硬化させる
ことを特徴とするボイラ炉壁の硬化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚きボイラのボイラ火炉およびそれに用いられるボイラ炉壁パネル、ならびにボイラ炉壁の硬化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きボイラのボイラ火炉は、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びて内部を流体が流れる伝熱管と、伝熱管が延びる方向に延在する板状のメンブレンバーと、が交互に接合されることにより、スパイラル状に形成されたボイラ炉壁で囲まれて構成されている。ボイラ火炉の下部には炉底側を絞った略三角柱状の火炉ホッパが備わっており、炉壁や吊り下げ型伝熱管に付着した燃焼灰やクリンカ等が、火炉ホッパに落下した後、炉底に形成された開口から炉外に排出される。
【0003】
このとき、伝熱管がスパイラル状に配置されていることから、燃焼灰の粒子やクリンカ、およびこれらが火炉ホッパの前後壁に衝突することによって生成される破片は、火炉ホッパにおける前後壁と左右側壁との取合部分に集中して落下しやすい。したがって、取合部分では、ボイラ炉壁の表面の摩耗が生じてしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されたボイラ火炉では、ホッパ形状の炉底部の前後壁と側壁との取合コーナー部において、肉盛部、半円リング、およびスタッドといった複数の突起物を伝熱管に対して管軸方向に沿って取り付けて、取合コーナー部に集まった燃焼灰やクリンカの落下速度を遅くして伝熱管の摩耗量を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−265309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、燃焼灰やクリンカ等は前後壁と左右側壁との境目付近の狭い領域に特に集中して落下することから、特許文献1に記載のボイラ火炉の場合、複数の突起物による燃焼灰やクリンカ等の分散効果を得にくく、火炉ホッパにおけるボイラ炉壁の摩耗を軽減する策としては十分な効果が得られない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、ボイラ炉壁の摩耗を十分に軽減することが可能なボイラ火炉およびそれに用いられるボイラ炉壁パネル、ならびにボイラ炉壁の硬化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、炉底側が絞られた火炉ホッパを下部に備え、前後壁および左右側壁を含むボイラ炉壁により囲まれたボイラ火炉であって、前記火炉ホッパにおける前記ボイラ炉壁は、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びて内部を流体が流れる伝熱管と、前記伝熱管が延びる方向に延在する板状のメンブレンバーと、が交互に接合されることにより、スパイラル状に形成されると共に、前記前後壁と前記左右側壁との取合領域には、ピーニング処理が施された肉盛溶接部が炉内に面する側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記の特徴により、落下した燃焼灰の灰粒子やクリンカ等に起因する摩耗あるいは衝撃に対する耐久性を向上させて、ボイラ炉壁の摩耗減肉を十分に軽減することができる。なお、上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るボイラ火炉の一構成例を示す概略模式図である。
図2A】火炉ホッパを上方から見た場合の平面模式図である。
図2B】火炉ホッパを上方から見た平面図である。
図3】火炉ホッパにおけるボイラ炉壁の一部断面図である。
図4】火炉ホッパにおける第1取合領域周辺のボイラ炉壁の拡大斜視図である。
図5】第1取合領域を含んだボイラ炉壁を構成するボイラ炉壁パネルを示す斜視図である。
図6】肉盛溶接層のピーニング処理に使用するエアハンマーの一構成例を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図7】変形例に係るボイラ火炉の火炉ホッパにおけるボイラ炉壁の第1取合領域周辺の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るボイラ火炉について、図1〜6を参照して説明する。
【0012】
(ボイラ火炉1の構成)
まず、ボイラ火炉1の構成について、図1〜5を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るボイラ火炉1の一構成例を示す概略模式図である。図2Aは、火炉ホッパ5を上方から見た場合の平面模式図であり、図2Bは火炉ホッパ5を上方から見た平面図である。図3は、火炉ホッパ5におけるボイラ炉壁2の一部断面図である。図4は、火炉ホッパ5における第1取合領域20A周辺のボイラ炉壁2の拡大斜視図である。図5は、第1取合領域20Aを含んだボイラ炉壁2を構成するボイラ炉壁パネル2Aを示す斜視図である。
【0014】
ボイラ火炉1は、火力発電プラント等で使用される石炭焚きボイラに搭載される。石炭焚きボイラは、例えば瀝青炭や亜瀝青炭等の石炭から生成された微粉炭を固体燃料として燃焼して、燃焼により発生した熱を回収する。
【0015】
ボイラ火炉1は、地面に対して鉛直方向に沿って設置され、ボイラ炉壁2により囲まれた筐体構造を有している。ボイラ火炉1の内部には、微粉炭を燃焼するための燃焼空間が形成されている。燃焼空間で発生した燃焼ガスは、ボイラ火炉1の鉛直方向の下側から上側に向かって流れる。すなわち、ボイラ火炉1内において、鉛直方向の下側が燃焼ガスの流れの上流側であり、鉛直方向の上側が燃焼ガスの流れの下流側である。
【0016】
ボイラ炉壁2は、内部を流体としての冷却水が流れる伝熱管31と、伝熱管31が延びる方向に延在する板状のメンブレンバー32と、が交互に接合されたパネル状の水冷壁である(図3〜5参照)。
【0017】
ボイラ火炉1の上部出口には、ボイラ火炉1に対して交差する方向に延びる煙道11が連結されている。ボイラ火炉1内において燃焼により発生した熱は、主にボイラ炉壁2への輻射による伝熱で伝熱管31内を流れる冷却水を加熱して蒸発させる。発生した水蒸気は、煙道11の内部に搭載された過熱器や再熱器等の熱交換器(不図示)で過熱され、蒸気タービンに送られて発電に供される。また、ボイラ火炉1から排出された燃焼ガスは、脱硝装置や空気予熱器等(不図示)を通った後、処理済みの排ガスとして外部に排出される。
【0018】
図1において、煙道11が延びる方向を「奥行方向」とし、奥行方向におけるボイラ火炉1側を「前側」、その反対側を「後側」とする。また、鉛直方向および奥行方向に交差する方向を「幅方向」とし、後方向に対する左側を「左側」、その反対側を「右側」とする。
【0019】
ボイラ炉壁2は、前側に配置されてボイラ火炉1の前面となる前壁21と、前壁21に対向して配置されてボイラ火炉1の後面となる後壁22と、前壁21と後壁22との間に配置されてボイラ火炉1の左側面となる左側壁23と、左側壁23に対向して配置されてボイラ火炉1の右側面となる右側壁24と、前壁21、後壁22、左側壁23、および右側壁24の上部に配置されてボイラ火炉1の天井となる天井壁25と、を含む。
【0020】
なお、以下において、前壁21および後壁22をまとめて「前後壁21,22」とし、左側壁23および右側壁24をまとめて「左右側壁23,24」とする場合がある。
【0021】
前壁21および後壁22にはそれぞれ、微粉炭および空気をボイラ火炉1内に供給する複数のバーナ4が下部側に設けられている。図1では、前壁21および後壁22のそれぞれにおいて、8つのバーナ4が4つずつ鉛直方向に二段に分かれて配置されている。
【0022】
また、ボイラ火炉1は、炉底側が絞られた漏斗状の火炉ホッパ5を、複数のバーナ4が設けられた位置よりも下部に備える。ボイラ火炉1の炉底には下方に向かって開口する開口部10が形成されており、火炉ホッパ5は、開口部10に向かって傾斜する傾斜部51と、傾斜部51の下端から垂下した垂下部52と、を有する。ボイラ火炉1内における燃焼によって生成した燃焼灰や燃焼灰が焼結して固化したクリンカ等は、火炉ホッパ5に落下して開口部10から炉外に排出される。傾斜部51では、前後壁21,22が炉内側に向かってそれぞれ傾斜している。なお、図2Bでは、傾斜部51における左右側壁23,24についても、説明の便宜上、炉内側に傾斜した状態で示されているが、実際には、図1に示すように、水平面(地面)に対して垂直に、すなわち鉛直方向に沿って設けられている。
【0023】
図2Aおよび図2Bに示すように、火炉ホッパ5では、ボイラ炉壁2は、複数の伝熱管31および複数のメンブレンバー32が鉛直方向に対して傾斜する方向に延びてスパイラル状に形成されている。これにより、前壁21と左側壁23との取合領域である第1取合領域20A、左側壁23と後壁22との取合領域である第2取合領域20B、後壁22と右側壁24との取合領域である第3取合領域20C、および右側壁24と前壁21との取合領域である第4取合領域20Dではそれぞれ、複数の伝熱管31の角度および複数のメンブレンバー32の角度が大きく変化している。
【0024】
なお、第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Cでは、火炉ホッパ5の最下部より引き出された複数の伝熱管31を管寄せに接合させるため、第2取合領域20Bおよび第4取合領域20Dと比べて左右側壁23,24の周辺部において複数の伝熱管31の傾斜角度および複数のメンブレンバー32の傾斜角度が大きくなっている。
【0025】
したがって、ボイラ火炉1内の左右側壁23,24で生成された燃焼灰の粒子やクリンカ等は、第1〜第4取合領域20A〜20Dの近傍に落下しやすくなる。特に、図2Bに示すように、第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Cでは、コーナー部分に集まった燃焼灰の粒子やクリンカ等の流れ(図2Bにおいて矢印で示す)が鉛直方向に沿って配置された左右側壁23,24に阻まれて濃縮した状態となるため、第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Cにおける摩耗が顕著となる。
【0026】
そこで、火炉ホッパ5におけるボイラ炉壁2は、第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Bにおいて、例えばAlloy22やAlloy625といったニッケル基合金で形成された肉盛溶接部30が、ボイラ火炉1内に面する側の表面に設けられている。
【0027】
この肉盛溶接部30は、図3に示すように、ボイラ火炉1内に面する側における複数の伝熱管31の外周面および複数のメンブレンバー32の表面に亘って層をなして設けられている。そして、当該肉盛層の表面に後述するピーニング処理が施されることにより、肉盛溶接部30の表面はボイラ炉壁2の他の領域よりも硬くなっている。
【0028】
これにより、燃焼灰の粒子やクリンカ等が、前後壁21,22と左右側壁23,24との取合部付近の狭い領域に集中して落下した場合であっても、第1〜第4取合領域20A〜20Dが、ピーニング処理が施された肉盛溶接部30によって覆われているため、落下した燃焼灰の粒子やクリンカ等による摩耗を十分に軽減することが可能となっている。
【0029】
なお、図4および図5では、火炉ホッパ5における第1取合領域20A周辺のボイラ炉壁2の構成を例に挙げて示しており、ピーニング処理が施された肉盛溶接部30を太線で示している。また、「肉盛溶接部30」は、肉盛溶接層の表面にピーニング処理が施された状態のものを示す。
【0030】
第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Cでは、前述したように火炉ホッパ5の構造上、第2取合領域20Bおよび第4取合領域20Dよりも燃焼灰の粒子やクリンカ等が集まりやすく、表面の摩耗が生じやすい。したがって、第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Cでは、特に、ピーニング処理が施された肉盛溶接部30をボイラ火炉1内に面する側の表面に設けておくことが望ましい。
【0031】
また、ボイラ炉壁2は、複数の小さなボイラ炉壁パネル2Aを例えば溶接により繋ぎ合わせて構成されており、図5に示すように、第1取合領域20Aを含むボイラ炉壁2を構成するボイラ炉壁パネル2Aには、第1取合領域20Aに位置する領域に、ピーニング処理が施された肉盛溶接部30が予め形成されている。したがって、ボイラ火炉1の長期使用により火炉ホッパ5における第1取合領域20A周辺のボイラ炉壁2の修繕が必要となった場合であっても、ボイラ火炉1全体もしくは火炉ホッパ5を丸ごと取り替えることなく、ボイラ炉壁パネル2Aのみを取り替えればよい。
【0032】
(ボイラ炉壁2の硬化処理方法)
次に、火炉ホッパ5におけるボイラ炉壁2の硬化処理方法、具体的には肉盛溶接層のピーニング処理について、図6を参照して説明する。
【0033】
図6(a)および図6(b)は、肉盛溶接層のピーニング処理に使用するエアハンマー6の一構成例を示し、図6(a)は側面図、図6(b)は正面図である。
【0034】
本実施形態では、まず、ボイラ炉壁2のうち、火炉ホッパ5における第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Cに対して、ボイラ火炉1内に面した表面に厚さ約2.0mmの肉盛溶接層を形成する。そして、形成された肉盛溶接層の表面を図6(a)および図6(b)に示すエアハンマー6で繰り返し打撃することによりピーニング処理を施す。
【0035】
エアハンマー6は、図6(a)に示すように、鋼で形成された先細りの棒状ツールであり、図6(b)に示すように、先端部が球状に形成されている。このエアハンマー6をエアとバネの力とにより振動させて、先端を肉盛溶接層の表面に繰り返し衝突させて打痕を形成する。
【0036】
本実施形態では、エアハンマー6の先端部は、外径φが3.0mmに設定されている。なお、エアハンマー6の先端部の外径φが1.5mmよりも小さい場合には、研削力が強くなって肉盛溶接層の表面に傷が入りやすくなると共に、肉盛溶接層に対する圧力が過大になってエアハンマー6が摩耗しやすく、また、肉盛溶接層が削り取られてしまう。他方、エアハンマー6の先端部の外径φが5.0mmよりも大きい場合には、硬化処理に必要な圧力が得られず、また、肉盛溶接層における溶接ビードの隙間等に先端部が入らず肉盛溶接層の表面全体をピーニングできなくなってしまう。したがって、エアハンマー6の先端部の外径φは、1.5mm以上5.0mm以下である(1.5≦φ≦5.0)ことが望ましい。
【0037】
また、本実施形態では、肉盛溶接層の表面の硬さが400HV(試験荷重10kgにおけるビッカース硬さ)以上になるまでピーニング処理を施している。ボイラ炉壁2は、複数の伝熱管31の内部をそれぞれ流れる冷却水により冷却されており、その表面温度は例えば450℃程度に保たれている。一方、火炉ホッパ5に落下してくる燃焼灰の粒子やクリンカ等は燃焼ガスにより約1000℃に熱せられている。燃焼灰の粒子やクリンカ等として二酸化ケイ素(SiO)を例に挙げると、このようなボイラ火炉1内の温度環境下ではその硬さは400HV程度となる。そこで、ピーニング処理が施された肉盛溶接部30の表面は、燃焼灰の粒子やクリンカ等の硬さ400HVと同等以上に硬化させることが望ましい。
【0038】
なお、ピーニング処理において、肉盛溶接層の表面の硬さが目標値である400HV以上となると金属光沢が現れる。これは、ボイラ炉壁2に対して肉盛溶接を行った直後や応力除去焼鈍後においてはボイラ炉壁2の最表面は薄い酸化被膜に覆われているが、ピーニング処理を施すことにより酸化被膜が除去されると共に、ピーニングによる硬化によって表面の凹凸が均されるからである。したがって、肉盛溶接層の表面に現れる金属光沢を簡易な指標として、ピーニング処理を行うことができる。
【0039】
本実施形態では、肉盛溶接層の形成にニッケル基合金であるAlloy22やAlloy625を用いており、これにより肉盛層の剥離や熱疲労による損傷リスクを低減している。また、ニッケル基合金はピーニング処理を施した後でも延性があるため、第1〜第4取合領域20A〜20Dにおける曲げに対して割れを生じにくい。
【0040】
さらに、肉盛溶接層にニッケル基合金を用いた場合、目標値である400HV以上になるまでピーニング処理を施すことによって表面に形成される凹み(打痕の深さ)は0.05mm以下となり、肉盛溶接層の厚みが概ね2.0mm以上であるのに対して硬化に寄与する範囲は狭い。したがって、ピーニング処理部分がプラント運転に伴う繰り返し変形を受けたとしても、表面の凹凸を起点とした疲労損傷を生じにくい。
【0041】
なお、本実施形態では、ボイラ炉壁2の硬化処理方法として、肉盛溶接層に対してエアハンマー6を用いたピーニング処理について説明したが、肉盛溶接層の表面を硬化させることができれば、例えば、肉盛溶接層の表面に対して高圧ガスを噴射して硬質の粒子を高速で衝突させるショットピーニングによる研掃や、硬質のワイヤを撚り合わせて形成されたワイヤカップブラシによる擦過といった硬化処理方法であってもよい。これらの方法を用いた場合、エアハンマー6を用いた場合と比べて肉盛溶接層の表面の凹凸をより微細に形成することができるため、過度な凹凸形状による応力集中を低減して肉盛溶接層の損傷を防止することができる。
【0042】
(変形例)
次に、本発明の実施形態に係るボイラ火炉1の変形例について、図7を参照して説明する。なお、図7において、実施形態に係るボイラ火炉1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図7は、変形例に係るボイラ火炉1の火炉ホッパ5におけるボイラ炉壁2の第1取合領域20A周辺の拡大斜視図である。
【0044】
本変形例に係るボイラ火炉1では、肉盛溶接部30Aは、火炉ホッパ5の傾斜部51と垂下部52との接続領域50にも設けられている。例えば、図7に示すように、肉盛溶接部30Aは、前壁21と左側壁23との取合領域である第1取合領域20Aから接続領域50のうちの前壁21および左側壁23に相当する領域の一部に亘って連続して設けられている。
【0045】
接続領域50では、複数の伝熱管31および複数のメンブレンバー32が火炉ホッパ5内に向かって折れ曲がっているため、上方から落下してきた燃焼灰の粒子やクリンカ等が衝突しやすい。そこで、ボイラ炉壁2は、この接続領域50にも肉盛溶接部30Aを設けることで炉内に面する側を硬化し、耐久性を向上させて摩耗の軽減を図っている。
【0046】
なお、図7では、ボイラ炉壁2は、接続領域50のうち、第1取合領域20A周辺の領域のみに肉盛溶接部30Aが設けられているが、これに限らず、接続領域50全体に亘って設けられていてもよい。
【0047】
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、他の様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態および変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0048】
例えば、上記実施形態では、第1取合領域20Aおよび第3取合領域20Cを例に挙げて説明したが、これに限らず、少なくとも第1〜第4取合領域20A〜20Dのいずれかにおいて、ピーニング処理が施された肉盛溶接部30,30Aが炉内に面する側に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ボイラ火炉
2 ボイラ炉壁
2A ボイラ炉壁パネル
5 火炉ホッパ
10 開口部
20A 第1取合領域
20B 第2取合領域
20C 第3取合領域
20D 第4取合領域
21 前壁
22 後壁
23 左側壁
24 右側壁
30,30A 肉盛溶接部
31 伝熱管
32 メンブレンバー
50 接続領域
51 傾斜部
52 垂下部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7