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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-65143(P2021-65143A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】生体粒子捕集装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20210402BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   C12M1/26
   G01N1/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-192797(P2019-192797)
(22)【出願日】2019年10月23日
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープ福山セミコンダクター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】満仲 健
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】幡井 徹也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】金 秀▲弦▼
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD29
2G052AD52
2G052DA05
2G052DA09
2G052ED14
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029DG08
4B029HA05
4B029HA10
(57)【要約】
【課題】生体粒子を、窪みに安定的に保持することができ、生体粒子を観察し易くすることができる。
【解決手段】生体粒子捕集装置(1a)は、電極(11)と第1保護膜(16)とを備え、第1保護膜(16)には、窪み(12)と第1壁(13)が形成されており、窪み(12)の側面(12a)と第1壁(13)における窪み(12)側の壁面(13a)との水平方向の距離が、ゼロまたは窪み(12)による細胞(15)の保持が継続する程度まで離れている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に埋設された、前記半導体基板上に流れてきた溶媒中の生体粒子に誘電泳動力を作用させるための信号を出力する電極と、
前記半導体基板上に形成された、前記半導体基板が前記溶媒と接触するのを防ぐための第1保護膜と、を備えており、
前記第1保護膜には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を保持するための窪みが、前記第1保護膜における前記電極の配置位置と対応する箇所に形成されており、
前記第1保護膜上には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を前記窪みに保持させるための第1壁が形成されており、
前記窪みの側面と、前記第1壁における前記窪み側の壁面との水平方向の距離が、ゼロまたは前記窪みによる前記生体粒子の保持が継続する程度まで離れている、生体粒子捕集装置。
【請求項2】
前記電極と前記窪みと前記第1壁とで1つのユニットが形成されており、
前記半導体基板には、複数の前記ユニットがアレイ状に配置されており、
前記電極による前記信号の出力を、複数の前記ユニットのそれぞれに含まれる前記電極ごとに制御する制御回路をさらに備えている、請求項1に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項3】
前記生体粒子が流れる方向において互いに隣り合う2つの前記ユニットは、前記生体粒子が流れる方向から該2つの前記ユニットを見た場合に、手前に見える一方の前記ユニットの後に配置された他方の前記ユニットについて、該他方のユニットの少なくとも一部が見える、請求項2に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項4】
アレイ状に配置された複数の前記ユニットは、複数のユニット群で構成されており、
前記ユニット群は、前記生体粒子が流れる方向と交差する方向に並んで配置された複数の前記ユニットで構成されており、
互いに隣り合う2つの前記ユニット群は、
前記生体粒子が流れる方向から該2つの前記ユニット群を見た場合に、手前に見える一方の前記ユニット群の配置位置と、該一方の前記ユニット群の後に配置された他方の前記ユニット群の配置位置とが、前記生体粒子が流れる方向と交差する方向において異なっている、請求項2に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項5】
前記1つのユニットの周囲には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を前記窪みに保持させるための第2壁が形成されている、請求項2から4のいずれか1項に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項6】
前記第1壁と前記第2壁とは、同一の材料で一体的に形成されている、請求項5に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項7】
前記第1壁は、前記生体粒子が流れる方向から見て、前記窪みよりも下流側に形成されており、
前記第1壁には、前記生体粒子よりも粒径が小さい他の生体粒子が通過できる空間が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項8】
前記電極は、前記半導体基板内における前記窪みの底面の直下の箇所に配置されており、
前記窪みの底面上には、厚さが1μm以下である、前記電極が前記溶媒と接触するのを防ぐための第2保護膜が形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項9】
前記第1壁は、前記電極の配置位置よりも前記半導体基板の底面側の反対側に形成された配線層にて構成され、かつ、前記半導体基板と対向する面以外の表面が、前記第2保護膜を形成する材料と同じ材料で形成された膜で覆われている、請求項8に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項10】
前記第2保護膜は、二酸化シリコンにて形成される、請求項8または9に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項11】
前記第1壁は、感光性の樹脂材料で形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体粒子捕集装置。
【請求項12】
前記半導体基板内における前記電極の直下の箇所には、前記生体粒子から放射される光を受光するフォトダイオードが埋設されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の生体粒子捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体粒子捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体粒子の1つである細胞には様々な種類があり、種類ごとに複数の評価・分析方法が存在する。中でも血液中に存在する循環がん細胞のような希少な細胞においては、単一細胞レベルで行う評価・分析が近年注目されている。様々な種類のがん細胞の診断は、予備診断や術後診断にとって重要である。
【0003】
従来、がん細胞の識別を行うために、酵素結合免疫吸着法(ELIZA法)などに向けた免疫染色法が広く利用されている。しかしながら、免疫染色法は、染色を行う際に、試薬を変更する回数を増やす場合、都度、遠心分離器に掛けて分別することが多く、希少な細胞を失うことが多い。そのため、例えば、非特許文献1に開示されるような装置を用いて、単一細胞レベルで行う評価分析法などが普及している。
【0004】
ここで、前記評価分析法、特に免疫染色を行うための装置の一従来例を図10に示す。図10の符号601から符号603で示す図は、非特許文献1に開示された装置内において、溶媒中の細胞が一旦窪みに保持された後、窪みから離れるまでの様子を示した模式図であり、符号604で示す図は、非特許文献1に開示された装置の上面図である。
【0005】
図10に示す装置200は、効率的に細胞を免疫染色するための装置である。図10の符号601で示す図のように、装置200は、ガラス基板100上に電極101が配置され、該電極101上に樹脂などがガラス基板上にコーティングされた層104が配置されている。
【0006】
電極101は、例えば酸化インジウムと酸化スズとの混合物で生成されたITOに代表される透明電極である。層104には、評価分析対象となる細胞106(図10の符号602および符号603で示す図参照)を保持することができる程度の大きさの窪み102が形成されている。また、層104の窪み102の周辺領域における、流れ方向の下流側の領域には、窪み102から離れた細胞106を物理的に止めるための微小壁103が形成されている。
【0007】
さらに、装置200は、基板100に対して、ジメチルポリシロキサン樹脂(以下、PDMSと記載する)で作製されたマイクロ流体路110が接着されている。これにより、基板100とマイクロ流体路110との間に空間が形成され、該空間に溶媒105(図10の符号602および符号603で示す図参照)などの液体を流すことが可能になる。
【0008】
次に、生体粒子を捕集し、溶媒の置換を行うまでの一連の過程について説明する。図10の符号602で示す図のように、まず、低い導電率を有する溶媒105とともに、単一の細胞106を装置200に形成された空間に流し、電極101に生じた誘電泳動力FDEPを細胞106に作用させて細胞106を窪み102に捕集する。
【0009】
その後、図10の符号603で示す図のように、免疫染色に用いられる試薬107を前記装置200に形成された空間に流すことで、溶媒105を試薬107へ置換する。免疫染色に用いられる試薬107の多くは、高い導電率を有する。ここで、溶媒105を試薬107へ置換すると細胞106に作用する誘電泳動力FDEPが弱まってしまい、窪み102から細胞106が離れてしまう。しかしながら、窪み102の下流側に形成された微小壁103によって細胞106が物理的に止められることから、結果、窪み102から細胞106が離れるのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M. Takeuchi, et.al., ”Highly efficient trapping and analysis of rare cells using an electroactive microwell array with barriers”, Proceeding of 21st International conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (microTAS)2017, pp880-881.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1に開示された装置200は、窪み102の側面と微小壁103における細胞106の流れの上流側の壁面との距離が離れている。従って、窪み102に保持された細胞106が、上流から流れてきた溶媒107と接触して窪み102から離れたときに、細胞106が窪み102に戻りにくくなるという問題点があった。具体的には、窪み102から離れた細胞106が微小壁103に止められた後、窪み102と微小壁103との間に形成された空間に留まったままになるという問題点があった。
【0012】
さらに、非特許文献1に開示された装置200は、ガラス基板100上に電極101が形成されているものの、この電極101は積層配線構造にすることができない。そのため、装置200は、複数の電極101をガラス基板100上でアレイ状に配置することができないという問題点もあった。また、装置200は、複数の窪み102ごとに電極101の動作を制御することができないという問題点もあった。
【0013】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、生体粒子を、窪みに安定的に保持することができ、生体粒子を観察し易くすることができる生体粒子捕集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体粒子捕集装置は、半導体基板に埋設された、前記半導体基板上に流れてきた溶媒中の生体粒子に誘電泳動力を作用させるための信号を出力する電極と、前記半導体基板上に形成された、前記半導体基板が前記溶媒と接触するのを防ぐための第1保護膜と、を備えており、前記第1保護膜には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を保持するための窪みが、前記第1保護膜における前記電極の配置位置と対応する箇所に形成されており、前記第1保護膜上には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を前記窪みに保持させるための第1壁が形成されており、前記窪みの側面と、前記第1壁における前記窪み側の壁面との水平方向の距離が、ゼロまたは前記窪みによる前記生体粒子の保持が継続する程度まで離れている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、生体粒子を、窪みに安定的に保持することができ、生体粒子を容易に観察できる生体粒子捕集装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】符号511で示す図は、半導体基板上に形成された電極、窪みおよび第1壁の配置の一例を示した、本発明の実施形態1に係る生体粒子捕集装置の上面図である。符号512で示す図は、符号511で示す図におけるA−A’線の矢視断面図である。符号513および符号514で示す図は、半導体基板上に形成された電極、窪みおよび第1壁の配置の他の例を示した、本発明の実施形態1に係る生体粒子捕集装置の上面図である。
図2】符号521で示す図は、半導体基板上に形成された電極、窪みおよび第1壁の配置の別の一例を示した、本発明の実施形態1に係る生体粒子捕集装置の上面図である。符号522で示す図は、符号521で示す図におけるA−A’線の矢視断面図である。
図3】符号531から符号536で示す図は、半導体基板より上側に形成される各層の形成過程の一例を示す概略図である。
図4】符号541から符号545で示す図は、半導体基板より上側に形成される各層の形成過程の別の一例を示す概略図である。
図5】符号551および符号552で示す図は、本発明の実施形態1に係る生体粒子捕集装置の上面図である。
図6】符号561および符号602で示す図は、免疫染色に用いられる試薬へ溶媒を置換するまでの流れを示す概略図である。
図7】本発明の実施形態2に係る、生体粒子捕集装置の構成を示す断面図である。
図8】符号581で示す図は、本発明の実施形態3に係る生体粒子捕集装置の上面図である。符号582で示す図は、符号581で示す図におけるB−B’線の矢視断面図である。符号583で示す図は、本発明の実施形態3に係る生体粒子捕集装置の上面図である。符号584で示す図は、符号583で示す図におけるC−C’線の矢視縦断面図である。
図9】符号591から符号593で示す図は、免疫染色に用いられる試薬へ溶媒を置換し、細胞を閉じ込めるまでの流れを示す概略図である。
図10】符号601から符号603で示す図は、非特許文献1に開示される装置内において、溶媒中の細胞が一旦窪みに保持された後、窪みから離れるまでの様子を示した模式図であり、符号604で示す図は、非特許文献1に開示される装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
本実施形態に係る生体粒子捕集装置1aについて、図1から図6に基づいて説明すれば以下のとおりである。本明細書において、「生体粒子捕集装置」とは、半導体基板10上に流れてきた溶媒34中の細胞15を捕集する装置である。
【0018】
まず、図1を用いて、本実施形態に係る生体粒子捕集装置1aの構成を説明する。図1の符号511で示す図は、半導体基板10上に形成された電極11、窪み12および第1壁13の配置の一例を示した、生体粒子捕集装置1aの上面図である。図1の符号512で示す図は、図1の符号511で示す図におけるA−A’縦断面図である。図1の符号513および符号514で示す図は、半導体基板10上に形成された電極11、窪み12および第1壁13の配置の他の例を示した、生体粒子捕集装置1aの上面図である。
【0019】
図1の符号512で示す図のように、生体粒子捕集装置1aは、電極11、半導体基板10、第1保護膜16、第2保護膜18、第1壁13、窪み12およびマイクロ流体路30を備えている。電極11は、半導体基板10上に流れてきた溶媒中の細胞(生体粒子)15(詳細は後述:図6等参照)に誘電泳動力FDEPを作用させるための信号を出力する。電極11は、半導体基板10において、配線層を形成する材料であるアルミニウムまたは銅などで形成することができる。電極11は、図1の符号511で示す図などに示される通り、複数の電極11が形成されてもよいし、図1の符号514で示す図のように、単一の電極11が形成されてもよい。
【0020】
第1保護膜16は、半導体基板10が溶媒と接触するのを防ぐ。第2保護膜18は、電極11が前記溶媒34と接触するのを防ぐ。電極11のような配線層は、銅やアルミニウムなどで形成されているため、溶媒34などの液体が電極11に直接接触すると腐食などが起こるためである。第1保護膜16を形成する材料としては、二酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)などで形成される。ジメチルポリシロキサン(PDMS)などで形成されるマイクロ流体路30との接合に関して有利なことから、第1保護膜16は、二酸化シリコンで形成されることが好ましい。
【0021】
第2保護膜18の厚さは、第1保護膜16の厚さよりも薄いことが好ましい。第2保護膜18の厚さが薄いほど、電極11から細胞15にかかる誘電泳動力FDEP(詳細は後述:図6の符号561で示す図等参照)が大きくなるためである。第2保護膜18の厚さは、例えば、厚さが1μm以下であることがより好ましい。
【0022】
第1保護膜16のまま形成された場合、細胞15にかかる誘電泳動力FDEPが低減する。一方、第2保護膜18が形成されない場合に比べて、第2保護膜18が形成されることにより、細胞15にかかる誘電泳動力FDEPは小さくなるが、漏電や電極11の腐食を防ぐことができる。さらに、第2保護膜18の厚さが上述の厚さまで薄く形成されることにより、細胞15に作用する誘電泳動力FDEPが小さくなるのを極力防ぐことができる。
【0023】
第1壁13は、前記誘電泳動力FDEPが作用した細胞15を窪み12に保持させる。第1壁13の形状は特に限定されず、例えば、図1の符号511で示す図のように、窪み12の外周の壁に沿うような形状(例えば、アーチ型)に第1壁13が形成される。また、図1の符号513で示す図のように、第1壁13は多角形状に形成されてもよい。この場合、窪み12の形状を円形状に形成すると、窪み12の外形と第1壁13の一部とが直線上に形成される。
【0024】
第1壁13は、感光性の樹脂材料により形成されることが好ましい。垂直方向へのエッチングが、感光性の樹脂材料に対して行われる際、略直線状に感光性の樹脂材料をエッチングしやすいためである。
【0025】
窪み12は、前記誘電泳動力FDEPが作用した細胞15を保持する。窪み12は、半導体基板10の表面を、例えばエッチングすることにより形成される。窪み12の形状は角形でもよいが、細胞15に代表される生体粒子は球状のものが多いため、窪み12の形状は円形状であることが望ましい。また、窪み12は、細胞15の有する最大の径の長さと略同一の粒径を有する。
【0026】
また、図1の符号511・513・514で示す図のように、第1壁13には、細胞15は通過できないものの、細胞15よりも粒径が小さい他の生体粒子が通過できる空間17が形成される。
【0027】
次に、図2を用いて、本実施形態に係る別の構成からなる生体粒子捕集装置1bの構成を説明する。図2の符号521で示す図は、半導体基板10上に形成された電極11が、該半導体基板10上に構成される配線層の中でも下層に形成された配線層で構成された場合を例示した、生体粒子捕集装置1bの上面図である。具体的には、窪み12および第1壁131の配置の一例を示している。図2の符号522で示す図は、図2の符号521で示す図におけるA−A’縦断面図である。
【0028】
図2の符号522で示す図の通り、生体粒子捕集装置1bは、電極11、半導体基板10、第1保護膜16、第2保護膜18、第1壁131、窪み12およびマイクロ流体路30を備えている。第1壁131は、生体粒子捕集装置1aの第1壁13と同じ形状である。なお、第1壁131の形状は、図1の符号513で示す図中の第1壁13の形状、または図1の符号514で示す図中の第1壁13と同じ形状でもよい。第1壁131は、半導体基板10上に形成される配線層中における、他の配線層(電極11が形成される配線層を含む)よりも膜厚が大きい最上位配線層132で形成されている。最上位配線層132は、言い換えれば、電極11の配置位置よりも半導体基板10の底面側の反対側に形成された配線層を指す。電極11は、アルミニウムまたは銅などで形成され、最もマイクロ流体路30との距離が近い配線層でなく、かつ、最上位配線層132でもない配線層で形成されている。
【0029】
第1保護膜16は、半導体基板10上の配線層と配線層との間を絶縁する層間絶縁膜161で形成されている。層間絶縁膜161は、半導体基板10が前記溶媒34と接触するのを防ぐ。第2保護膜18は、電極11および半導体基板10のそれぞれにおけるマイクロ流体路30と対向する表面、ならびに、第1壁131における半導体基板10と対向する面以外の表面を覆っている。第2保護膜18は、電極11および最上位配線層132が前記溶媒34と接触するのを防ぐ。電極11のような配線層は、銅またはアルミニウムなどで形成されているため、前記溶媒34などの液体が電極11に直接接触すると腐食などが起こる。従って、電極11等の前記表面を第2保護膜18で覆うのが好ましい。
【0030】
なお、第1壁131における半導体基板10と対向する面以外の表面は、第2保護膜18で覆われていなくてもよい。前記表面は、少なくとも、第2保護膜18を形成する材料と同じ材料で形成された膜で覆われていればよい。
【0031】
第1保護膜16を形成する材料としては、二酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)などを例示することができる。これらの材料の中でも、ジメチルポリシロキサン(PDMS)などで形成されるマイクロ流体路30との接合が良好なことから、第1保護膜16は二酸化シリコンで形成されることが好ましい。
【0032】
第2保護膜18を形成する材料としては、二酸化シリコンなどを例示することができる。第2保護膜18を形成する材料についても、上述した理由と同様の理由により二酸化シリコンで形成されることが好ましい。
【0033】
第2保護膜18の厚さは、層間絶縁膜161で形成された第1保護膜16の厚さよりも薄いことが好ましい。第2保護膜18の厚さが第1保護膜16の厚さよりも薄ければ薄いほど、電極11から細胞15にかかる誘電泳動力FDEP(詳細は後述:図5の符号551で示す図参照)が大きくなるためである。第2保護膜18の厚さは、例えば、厚さが1μm以下であることがより好ましい。
【0034】
層間絶縁膜161には、細胞15に作用する誘電泳動力FDEPを維持するため、電極11におけるマイクロ流体路30と対向する表面の直上に窪み12が形成されている。また、第2保護膜18における窪み12の底面を覆っている部分の厚さが、他の部分の厚さよりも薄くなっている。第2保護膜18の厚さをこのように形成することにで、細胞15に作用する誘電泳動力FDEPが小さくなるのを極力防ぐことができる。
【0035】
第1壁131は、前記誘電泳動力FDEPが作用した細胞15を窪み12に保持させる。第1壁131は、上述したように最上位配線層132で形成されている。第1壁131が最上位配線層132で形成されていた方が、最上位配線層132を垂直方向(紙面向かって上下方向)にエッチングする際、略直線状にエッチングしやすいためである。
【0036】
窪み12は、前記誘電泳動力FDEPが作用した細胞15を保持する。窪み12は、半導体基板10の表面を、例えばエッチングすることにより形成される。窪み12の形状は角形でもよいが、細胞15に代表される生体粒子は球状のものが多いため、円形状であることが望ましい。また、窪み12は、細胞15の有する最大の径の長さと略同一の粒径を有する。
【0037】
また、図2の符号521で示す図のように、第1壁131には、細胞15は通過できないものの、細胞15よりも粒径が小さい他の生体粒子が通過できる空間17が形成されている。
【0038】
次に、図3を用いて、図1に示した構成の半導体基板10より上側に形成される各層の形成過程の一例を示す。図3は、半導体基板10より上側に形成される各層の形成過程の一例を示す概略図である。
【0039】
まず、通常の半導体集積回路の形成方法において、メタル層(例えば、最上位配線層132:図3に不図示)により形成された電極11を半導体基板10に埋設する(図3の符号531で示す図)。その後、第1保護膜16を、半導体基板10および電極11上に形成する(図3の符号532で示す図)。その後、第1保護膜16における電極11の配置位置と対応する箇所に、エッチングを第1保護膜16に対して行う。これにより、電極11は、前記半導体基板10内における前記窪み12の底面の直下の箇所に配置される(図3の符号533で示す図)。
【0040】
エッチングにより窪み12を形成した後、第2保護膜18を所望の厚さ(例えば、1μm以下)となるように、半導体基板10、電極11および第1保護膜16上に形成する(図3の符号534で示す図)。その後、第2保護膜18上に感光性樹脂19を塗布した(図3の符号535で示す図)後、光を感光性樹脂19へ照射し、感光性樹脂19をエッチングすることで、第1壁13を形成する(図3の符号536で示す図)。
【0041】
図3の符号536で示す図の工程において、窪み12の側面12aと、第1壁13における窪み12側の壁面13aとの水平方向の距離がゼロとなるように、第1壁13を形成する。
【0042】
なお、図3の符号536で示す図に図示されるのは、前記距離がゼロである場合の例であるが、前記距離の長さは、前記細胞15の保持が継続する程度まで離れているのであれば、特に限定されない。また、本明細書において「細胞15の保持が継続する」とは、溶媒34中の細胞15が誘電泳動力FDEPによって電極11に引き寄せられ、窪み12に細胞15が収まった後、細胞15が窪み12に収まった状態を維持して窪み12から離れないことを指す。
【0043】
また、「細胞15の保持が継続する」との概念には、窪み12に収まった細胞15が溶媒34の流れによって一旦窪み12から離れても、窪み12から離れた細胞15が第1壁13によって物理的に止められ、窪み12に戻されることも含むものとする。
【0044】
その後、PDMSなどで作成したマイクロ流体路30(図3に不図示)を第1壁13より上層に形成することで、細胞15などが混在した溶媒34(図3に不図示)を流すことができる生体粒子捕集装置1aとなる。なお、マイクロ流体路30を形成するPDMSを、生体粒子捕集装置1aの側壁(不図示)へ接着するためには、接着表面は二酸化シリコンであることが望ましい。
【0045】
次に、図4を用いて、図2に示した構成の半導体基板10より上側に形成される各層の形成過程の一例を示す。図4は、半導体基板10より上側に形成される各層の形成過程の別の一例を示す概略図である。
【0046】
まず、通常の半導体集積回路の形成方法において、中間メタル層(例えば、最上位配線層より一層〜数層下の配線層)により形成された電極11を半導体基板10に埋設する(図4の符号541で示す図)。その後、層間絶縁膜161を、半導体基板10および電極11上に形成する(図4の符号542で示す図)。その後、層間絶縁膜161における電極11の配置位置と対応する箇所に、エッチングを層間絶縁膜161に対して行う。これにより、電極11は、前記半導体基板10内における前記窪み12の底面の直下の箇所に配置される(図4の符号543で示す図)。
【0047】
エッチングにより窪み12を形成した後、層間絶縁膜161上に、最上位配線層132を形成する(図4の符号544で示す図)。この工程において、窪み12の側面12aと、最上位配線層132における窪み12側の壁面132aとの水平方向の距離がゼロとなるように、最上位配線層132を形成する。その後、第2保護膜18が所望の厚さ(例えば、1μm以下)となるように、第2保護膜18を、電極11、層間絶縁膜161および最上位配線層132上に形成することで、第1壁131を形成する(図4の符号545で示す図)。
【0048】
なお、図4の符号545で示す図に図示した形状は、前記距離がゼロである場合の例であるが、前記距離の長さは、窪み12による細胞15の保持が継続する程度まで離れているのであれば、特に限定されない。
【0049】
図5の符号551および符号552で示す図は、生体粒子捕集装置1aの上面図である。なお、図5に示す生体粒子捕集装置1aの内部では、図示しないものの溶媒34(溶媒34中の細胞15)がB方面からC方面に流れるものとする。なお、生体粒子捕集装置1bの上面視の構成も、図5に示す生体粒子捕集装置1aの上面視の構成と同様である。
【0050】
図5の符号551で示す図および符号552で示す図の通り、電極11、窪み12、および第1壁13とで1つのユニット21が形成される。また、複数のユニット21は、ユニット21aからユニット21cのように、半導体基板10にアレイ状に配置される。
【0051】
複数のユニット21は、次のように配置されているのが好ましい。つまり、細胞15などが流れる方向において互いに隣り合う2つのユニット21を、細胞15などが流れる方向から該2つのユニット21を見た場合に、手前に見える一方のユニット21の後に配置された他方のユニット21の少なくとも一部が見えるのが好ましい。ユニット21aおよびユニット21bを例に挙げると、細胞15などが流れる方向からユニット21aおよびユニット21bを見た場合に、手前に見えるユニット21aの後に配置されたユニット21bの少なくとも一部が見えるのが好ましい。
【0052】
ここで、アレイ状に配置された複数のユニット21は、図5の符号551および符号552で示す図のように、複数のユニット群を構成している。具体的には、1つのユニット群は、細胞15が流れる方向と交差する方向に並んで配置された複数のユニット21で構成されている。このユニット群を用いて前記した複数のユニット21の配置を説明すると、次のようになる。つまり、細胞15が流れる方向から2つのユニット群を見た場合に、手前に見える一方のユニット群の配置位置と、該一方のユニット群の後に配置された他方のユニット群の配置位置とが、細胞15が流れる方向と交差する方向において異なっている。
【0053】
また、図5の符号552で示す図中の矢印Xで示されるように、半導体基板10上に流れてきた細胞15は、ユニット21aに含まれる窪み12に捕集される。しかし、上記図中の矢印Yで示されるように、細胞15の位置がユニット21aの窪み12からずれていると、窪み12に捕集できない。しかし、ユニット21aの位置に対し少しずれている位置にユニット21bが配置されることにより、ユニット21aへ捕集されなかった細胞15を窪み12に捕集しやすくなる。従って、細胞15の捕集率を上げることができる。
【0054】
生体粒子捕集装置1aは、半導体基板10上に制御回路22が形成される。制御回路22は、接続部材2を介して、ユニット21ごとの電極11へ接続される。制御回路22は、電極11による前記信号の出力を、複数のユニット21のそれぞれに含まれる電極11ごとに個別に制御する。
【0055】
上述した非特許文献1に開示されている装置200は、電極101が、ガラス基板100上に、ITOで形成された透明電極で作成されている。そのため、複数の電極101をガラス基板100上に、アレイ状に並べた場合、窪み102内にある電極101を同一の配線で形成することになる。これにより、電極101は、複数のアレイ状に電極101が並べられたとしても、全て同一の信号が与えられることにより、所望の窪み102のみに細胞106を捕集することができない。一方、生体粒子捕集装置1aは、制御された特定のユニット21だけに前記信号を与えることができるため、所望の位置のみに細胞15を捕集できる。
【0056】
次に、生体粒子捕集装置1aを用いて、細胞15を、単一細胞として捕集し、細胞15に対して免疫染色を行うまでの一連の流れを説明する。なお、生体粒子捕集装置1bの構成でも同様である。図6の符号561および符号562で示す図は、免疫染色に用いられる試薬35へ溶媒34を置換するまでの流れを示す概略図である。なお、生体粒子捕集装置1bにおいても、図5の符号551および符号552で示す図に示す構成と同様である。
【0057】
図6の符号561で示す図のように、誘電泳動力FDEPを利用して、細胞15を電極11に捕集するためには、低い導電率を有し、かつ、細胞15に対し浸透圧が適切な溶媒34を選ぶ必要がある。
【0058】
ここで、電極11が細胞15に対して及ぼす誘電泳動力FDEPは、下記の数式1にて示される。
【0059】
【数1】
【0060】
dは細胞15の直径、εおよびεはそれぞれ、細胞15および溶媒34の複素誘電率、Eは電極11により与えられる電界である。
【0061】
上記の数式1、および下記の数式2で示されるCMファクタの実数成分の正負により、誘電泳動力FDEPによって細胞15が電極11に引き寄せられるか、または反発して離れていくか、のいずれかを計算することができる。
【0062】
【数2】
【0063】
上記の数式1中のRe[(ε−ε/(ε+2ε)]の値が正の場合、細胞15に対して、電極11により与えられる電界へ向かう力、すなわち、正の誘電泳動力FDEPが働く。一方、上記の数式1中のRe[(ε−ε)/(ε+2ε)]の値が負の場合、細胞15に対して、電極11により与えられる電界に対して反発してはなれていく力、すなわち、負の誘電泳動力FDEPが働く。
【0064】
生体粒子捕集装置1aの構成の場合、電圧源(不図示)から、正の誘電泳動力FDEPが発生するような電圧信号を電極11に印加することで、電極11の近傍に存在する細胞15を、電極11に引きつけて、窪み12へ捕集することが可能である。
【0065】
一方、信号源(不図示)から、負の誘電泳動力FDEPが発生するような電圧信号を電極11に印加することで、電極11の近傍に存在する細胞15を、電極11から遠ざけることが可能である。
【0066】
まず、溶媒34とともに細胞15を生体粒子捕集装置1a内へ流す。電極11は誘電泳動力FDEPを作用させることで、細胞15を電極11へ引き寄せ、細胞15を捕集する。次に図6の符号562で示す図のように、免疫染色を行う試薬35を生体粒子捕集装置1a内へ流すことで溶媒34が試薬35に置換される。免疫染色に用いられる試薬35の多くは、高い導電率を有する。そのため、溶液を試薬35へ置換すると細胞15に作用する誘電泳動力FDEPが弱まり、電極11から細胞15は離れてしまう。しかしながら細胞15を捕集した窪み12の近傍に形成された第1壁13により、細胞15が窪み12に保持される。また、制御回路22で電極11ごとに個別に制御することにより、アレイ状に配置された複数のユニット21のうち、所望の箇所のみに細胞15を捕集できる。
【0067】
〔実施形態2〕
本実施形態に係る生体粒子捕集装置1cについて図7に基づいて説明すれば以下のとおりである。図7は、本実施形態に係る生体粒子捕集装置1cの構成を示す断面図である。図7に示す通り、本実施形態に係る生体粒子捕集装置1cは、電極11の直下の箇所に、細胞15から放射される光を受光するフォトダイオード40が埋設される。前記構成によれば、フォトダイオード40が細胞15から受光した光を評価することにより、細胞15の特徴を分析できる。
【0068】
前記光の例としては、例えば、細胞15に対して免疫染色が行われる場合、フォトダイオード40は、蛍光を受光する。該蛍光の特徴(例えば蛍光波長、蛍光寿命、蛍光強度など)を評価することにより、該蛍光を発する細胞の有する特徴を分析できる。なお、フォトダイオード40の種類は特に限定されず、用いられる生体粒子の種類に応じて適宜選択される。
【0069】
〔実施形態3〕
本実施形態に係る生体粒子捕集装置1dについて、図8および図9に基づいて説明すれば以下のとおりである。まずは、図8を用いて、本実施形態に係る生体粒子捕集装置1dの構成を説明する。図8の符号581で示す図は、生体粒子捕集装置1dの上面図である。図8の符号582で示す図は、符号581で示す図におけるB−B’断面図である。図8の符号583で示す図は、生体粒子捕集装置1dの上面図である。図8の符号584で示す図は、図8の符号583で示す図におけるC−C’縦断面図である。
【0070】
図8の符号581から符号583で示す図のように、生体粒子捕集装置1dは、上述したユニット21に加えて、さらにユニット21の周囲に第2壁50が形成されている。第2壁50は、誘電泳動力FDEPが作用した細胞15(図8にて不図示)を窪み12に保持させる。また、第2壁50によって、領域51がユニット21の周囲を囲むように形成されている。第1壁13は、生体粒子捕集装置1aと同一のものでもよく、あるいは図4で説明した最上位配線層132で形成されていてもよい。
【0071】
図8の符号581・582で示す図の生体粒子捕集装置1dの例では、第1壁13と第2壁50とが異なる樹脂材料で形成されている。一方、図8の符号583・584で示す図の生体粒子捕集装置1dの例では、第1壁13と第2壁50とが同一の樹脂材料で一体的に形成されている。なお、製造工程の簡易化および製造コストの低減の観点からは、第1壁13と第2壁50とが同一の樹脂材料で一体的に形成されていることが好ましい。
【0072】
また、第2壁50の側壁の高さH’は、のちにユニット21内に細胞15を閉じ込めて解析することから、第1壁13の高さHと同じ高さ、または高さHよりも高く形成されることが好ましい。また、第2壁50の側壁の形状は特に限定されない。
【0073】
次に、生体粒子捕集装置1dを用いて、細胞15を、単一細胞として捕集し、免疫染色に用いられる試薬35へ溶媒34を置換するまでの流れを、図9を用いて説明する。図9の符号591から符号593で示す図は、免疫染色に用いられる試薬35へ溶媒34を置換するまでの流れを示す概略図である。
【0074】
図9の符号591で示す図に示すように、まず、溶媒34とともに細胞15を生体粒子捕集装置1d内へ流し、細胞15を電極11へ引き寄せ、細胞15を捕集する。次に、図9の符号592で示す図に示すように、バイオマーカーなどを含んだ酵素標識抗体と蛍光発生基質とが含まれる試薬35を、生体粒子捕集装置1d内へ流すことで、溶媒34が試薬35へ置換される。このとき、第1壁13および第2壁50により、細胞15は窪み12および領域51に保持される。
【0075】
次に、図9の符号593で示す図に示すように、領域51の上側に配置されたマイクロ流体路30を図中の矢印の方向に押し付けることで、特定の領域51内に存在する細胞15を該領域51内に止まらせて他の領域51への細胞15の移動を防ぐ。その後、細胞15を破壊して破壊後の細胞15へ励起光(不図示)を照射する。その結果、細胞15から発生する光が検知可能な検知手段により検出されることで、細胞15の内部に存在するRNAやDNAの特徴を評価できる。
【0076】
上述の方法により、微小量の細胞15を用いてのELISA法を実現できる。これは、1つの領域51内に生体試料を納めることで、検出感度をより高めることができるためである。なお、本実施形態における微小量の細胞15を用いてのELISA法は、領域51の上側に配置されたマイクロ流体路30を押し付けることにより実現されている。しかし、領域51の上側を何らかの方法で覆うことによって領域51を分離できるのであれば、上述の方法に限定されない。
【0077】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0078】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、半導体基板(10)に埋設された、前記半導体基板上に流れてきた溶媒(34)中の生体粒子(細胞15)に誘電泳動力(FDEP)を作用させるための信号を出力する電極(11)と、前記半導体基板上に形成された、前記半導体基板が前記溶媒と接触するのを防ぐための第1保護膜(16)と、を備えており、前記第1保護膜には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を保持するための窪み(12)が、前記第1保護膜における前記電極の配置位置と対応する箇所に形成されており、前記第1保護膜上には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を前記窪みに保持させるための第1壁(13)が形成されており、前記窪みの側面(12a)と、前記第1壁における前記窪み側の壁面(13a)との水平方向の距離が、ゼロまたは前記窪みによる前記生体粒子の保持が継続する程度まで離れている。
【0079】
前記構成によれば、窪みの側面と第1壁における窪み側の壁面との水平方向の距離が、ゼロまたは著しく近いことから、溶媒に置換されることで生体粒子が窪みから離れても、第1壁によって生体粒子が窪みに溜まり易い。従って、溶媒に置換されても、窪みに収納された溶媒中の生体粒子を、窪みに安定的に保持することができる。また、窪みに生体粒子を安定的に保持できることにより、生体粒子を観察し易くすることができる。
【0080】
本発明の態様2に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、前記態様1において、前記電極と前記窪みと前記第1壁とで1つのユニット(21、21a、21b、21c)が形成されており、前記半導体基板には、複数の前記ユニットがアレイ状に配置されており、前記電極による前記信号の出力を、複数の前記ユニットのそれぞれに含まれる前記電極ごとに制御する制御回路(22)をさらに備えている。
【0081】
前記構成によれば、制御回路による制御によって、ユーザが所望する特定のユニットの電極だけが信号出力することができる。従って、ユーザが所望する特定の窪みのみに生体粒子を保持することができる。
【0082】
本発明の態様3に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、前記態様2において、前記生体粒子が流れる方向において互いに隣り合う2つの前記ユニットは、前記生体粒子が流れる方向から該2つの前記ユニットを見た場合に、手前に見える一方の前記ユニットの後に配置された他方の前記ユニットについて、該他方のユニットの少なくとも一部が見える。
【0083】
前記構成によれば、誘電泳動力による生体粒子の進行方向が所望の方向からずれて特定のユニットの窪みに収まらなかった場合でも、生体粒子が流れる方向において特定のユニットと隣り合う他のユニットの窪みに収まる可能性が高くなる。従って、生体粒子の窪みへの捕集率を向上させることができる。
【0084】
本発明の態様4に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、前記態様2において、アレイ状に配置された複数の前記ユニットは、複数のユニット群で構成されており、前記ユニット群は、前記生体粒子が流れる方向と交差する方向に並んで配置された複数の前記ユニットで構成されており、互いに隣り合う2つの前記ユニット群は、前記生体粒子が流れる方向から該2つの前記ユニット群を見た場合に、手前に見える一方の前記ユニット群の配置位置と、該一方の前記ユニット群の後に配置された他方の前記ユニット群の配置位置とが、前記生体粒子が流れる方向と交差する方向において異なっている。
【0085】
前記の構成によれば、アレイ状に配置された複数のユニットが複数のユニット群で構成されている生体粒子捕集装置について、本発明の態様3に係る生体粒子捕集装置と同様の効果を奏する。
【0086】
本発明の態様5に係る生体粒子捕集装置(1d)は、前記態様2から4のいずれかにおいて、前記1つのユニットの周囲には、前記誘電泳動力が作用した前記生体粒子を前記窪みに保持させるための第2壁(50)が形成されている。
【0087】
前記構成によれば、微小量または単一の細胞を用いてのELISA法を実現することができる。微小量または単一の細胞を用いてELISA法を行うことにより、1つの領域51内に生体試料を納めることによる検出感度をより高めることができる。
【0088】
本発明の態様6に係る生体粒子捕集装置(1d)は、前記態様5において、前記第1壁と前記第2壁とは、同一の樹脂材料で一体的に形成されている。前記構成によれば、第1壁と第2壁とを、例えば1つのマスクでエッチングなどにて同時に形成することが可能となる。従って、製造工程の簡素化および製造コストの低減を図ることができる。
【0089】
本発明の態様7に係る生体粒子捕集装置(1d)は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記第1壁は、前記生体粒子が流れる方向から見て、前記窪みよりも下流側に形成されており、前記第1壁には、前記生体粒子よりも粒径が小さい他の生体粒子が通過できる空間(17)が形成されている。
【0090】
前記構成によれば、捕集対象となる生体粒子の粒径以上の粒径を有する生体粒子が、第1壁によって物理的に止められる。また、第1壁によって物理的に止められた生体粒子の粒径が捕集対象の生体粒子の粒径よりも大きい場合、その生体粒子は窪みに収まらない可能性が高い。従って、第1壁によって窪みに戻される生体粒子が捕集対象の生体粒子となる確率が高くなり、窪みから離れた捕集対象の生体粒子をより確実に窪みに留めることができる。
【0091】
本発明の態様8に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、前記態様1から5のいずれかにおいて、前記電極は、前記半導体基板内における前記窪みの底面の直下の箇所に配置されており、前記窪みの底面上には、厚さが1μm以下である、前記電極が前記溶媒と接触するのを防ぐための第2保護膜(18)が形成されている。
【0092】
前記構成によれば、第2保護膜によって電極が溶媒と接触するのを防ぐことができる。また、第2保護膜の厚さが1μm以下であることから、生体粒子の窪みへの収納に支障がない程度まで、電極から発せられる誘電泳動力を生体粒子に作用させることができる。
【0093】
本発明の態様9に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、前記態様8において、前記第1壁は、前記電極の配置位置よりも前記半導体基板の底面側の反対側に形成された配線層(132)にて構成され、かつ、前記半導体基板と対向する面以外の表面が、前記第2保護膜を形成する材料と同じ材料で形成された膜で覆われている。
【0094】
前記構成によれば、電極の配置位置よりも半導体基板の底面側の反対側に形成された配線層を垂直方向(紙面向かって上下方向)にエッチングする際、略直線状にエッチングしやすくなる。
【0095】
本発明の態様10に係る生体粒子捕集装置(1b)は、前記態様8または9において、前記第2保護膜は、二酸化シリコンにて形成される。前記構成によれば、ジメチルポリシロキサン(PDMS)などで形成されるマイクロ流体路との接合が良好になる。
【0096】
本発明の態様11に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、前記態様1から6のいずれかにおいて、前記第1壁は、感光性の樹脂材料で形成されている。感光性の樹脂材料は、垂直方向へのエッチングが容易である。その点、前記構成によれば、第1壁における窪み側の側面と窪みの側面とを略直線状に形成することが容易にできる。
【0097】
本発明の態様12に係る生体粒子捕集装置(1a、1b、1c、1d)は、前記態様1から11のいずれかにおいて、前記半導体基板内における前記電極の直下の箇所には、前記生体粒子から放射される光を受光するフォトダイオード(40)が埋設されている。前記構成によれば、フォトダイオードが生体粒子から受光した光の特徴を評価することにより、生体粒子の特徴を分析できる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、主として生物学・医学における研究、臨床検査などに利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1a、1b、1c、1d 生体粒子捕集装置
10 半導体基板
11 電極
12 窪み
12a 側面
13、131 第1壁
13a、132a 壁面
15 細胞(生体粒子)
16 第1保護膜
18 第2保護膜
21、21a、21b、21c ユニット
34 溶媒
132 最上位配線層(電極の配置位置よりも基板の底面側の反対側に形成された配線層)
DEP 誘電泳動力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10