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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-67571(P2021-67571A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】故障判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20060101AFI20210402BHJP
【FI】
   G01F1/66 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-193530(P2019-193530)
(22)【出願日】2019年10月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏
(72)【発明者】
【氏名】小原 太輔
(72)【発明者】
【氏名】夏 園
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA10
2F035DA14
2F035DA23
(57)【要約】
【課題】超音波流量計の故障が、より早期に発見できるようにする。
【解決手段】故障判定装置100は、処理部101,判定部102,表示部103を備える。処理部101は、超音波信号の、最大振幅の位置より前の、予め設定されている位置の振幅のピーク値と、最大振幅のピーク値との比(ピーク比)を求める。判定部102は、処理部101が求めた比を元に故障を判定する。実施の形態1では、判定部102は、処理部101が求めたピーク比と、予め設定されている基準(正常値)との差が予め設定されている判定値を超えると、故障と判定する。判定部102により故障が判定されると、この旨が表示部103に表示される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の超音波送受信器の間で、配管中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信することで計測した前記超音波信号の伝搬時間差に基づいて、前記流体の流量を計測する超音波流量計の故障判定装置であって、
前記超音波信号の、最大振幅の位置より前の、予め設定されている位置の振幅のピーク値と、最大振幅のピーク値との比を求めるように構成された処理部と、
前記処理部が求めた比を元に故障を判定するように構成された判定部と
を備える故障判定装置。
【請求項2】
一対の超音波送受信器の間で、配管中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程をN(Nは2以上の整数)回実施し、これら計測工程により計測した前記超音波信号の伝搬時間差に基づいて、前記流体の流量を計測する超音波流量計の故障判定装置であって、
前記超音波信号を受信した超音波送受信器から出力される計測電圧Vin#i(iは1〜Nの整数)と予め設定されている閾値電圧Vsとを比較し、前記計測電圧Vin#iが前記閾値電圧Vsと交差したトリガー点以降に、前記計測電圧Vin#iが最初にゼロ電圧と交差するゼロクロス点を計測し、前記ゼロクロス点のゼロクロス時刻を前記計測電圧Vin#iと対応する時刻配列D#iに順次格納するように構成された計測部と、
前記時刻配列D#iから予め設定されている複数の目標ゼロクロス点に関する目標ゼロクロス時刻をそれぞれ抽出し、これら目標ゼロクロス時刻から求めた前記伝搬時間差に基づいて、前記流体の流量を計測するように構成された流量計算部と、
前記計測電圧Vin#iのうち、最初に計測された先頭ゼロクロス点が、予め定めた周期分だけ前記目標ゼロクロス点の前に位置する追従ゼロクロス点に相当する、前記計測電圧Vin#iの度合を計算し、前記度合と予め設定されている閾値との比較結果に基づいて前記閾値電圧Vsを調整するように構成された閾値調整部と、
前記閾値電圧Vsと、前記超音波信号の最大振幅のピーク値との比を求めるように構成された処理部と、
前記処理部が求めた比を元に故障を判定するように構成された判定部と
を備える故障判定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の故障判定装置において、
前記判定部は、前記処理部が求めた比と予め設定されている基準との差が、予め設定されている判定値を超えると、故障と判定することを特徴とする故障判定装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の故障判定装置において、
前記処理部は、一方の方向の比と、他方の方向の比とを求め、
前記判定部は、前記処理部が求めた、一方の方向の比と、他方の方向の比との差が、予め設定されている判定値を超えると、故障と判定することを特徴とする故障判定装置。
【請求項5】
一対の超音波送受信器の間で、配管中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信することで計測した前記超音波信号の伝搬時間差に基づいて、前記流体の流量を計測する超音波流量計の故障判定装置であって、
前記超音波信号の最大振幅の位置より後の減衰する領域の振幅のピーク値の状態を求めるように構成された処理部と、
前記処理部が求めた状態により、故障を判定するように構成された判定部と
を備える故障判定装置。
【請求項6】
請求項5記載の故障判定装置において、
前記処理部は、前記減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超える回数を、ピーク値の状態として求め、
前記判定部は、前記処理部が求めた回数が、設定されている基準回数を超えると、故障と判定することを特徴とする故障判定装置。
【請求項7】
請求項5記載の故障判定装置において、
前記処理部は、前記減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超えている状態が継続する時間を、ピーク値の状態として求め、
前記判定部は、前記処理部が求めた時間が、設定されている基準時間を超えると、故障と判定することを特徴とする故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計の故障を判定する故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計は、流体の流れを横切るように2つの超音波送受信器を向かい合わせて配置し、順逆方向のそれぞれで超音波信号を送受信して、2つの超音波送受信器の間における超音波伝搬時間を測定し、順逆方向における超音波伝搬時間の伝搬時間差に基づいて流体の流量を求める。
【0003】
ところで、超音波流量計では、例えば、受信した超音波信号の波形には、種々の状況において振幅異常をきたすことがある。このようなことが起こると、超音波信号の計測が正常に行えなくなり、流量の計測を正確に行えないなどの問題が発生する。このような、流量計測が正確に行えない異常状態に対し、受信信号強度が所定の範囲を外れ、また、伝搬時間が長すぎたら、警告を発することで、異常な状態を把握することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4673950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、受信した超音波信号の大きな変化をとらえる指標としては有効だが、超音波流量計の故障を早期に発見するためには不十分である。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、超音波流量計の故障が、より早期に発見できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る故障判定装置は、一対の超音波送受信器の間で、配管中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信することで計測した超音波信号の伝搬時間差に基づいて、流体の流量を計測する超音波流量計の故障を判定するものであり、超音波信号の、最大振幅の位置より前の、予め設定されている位置の振幅のピーク値と、最大振幅のピーク値との比を求めるように構成された処理部と、処理部が求めた比を元に故障を判定するように構成された判定部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る故障判定装置は、一対の超音波送受信器の間で、配管中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程をN(Nは2以上の整数)回実施し、これら計測工程により計測した超音波信号の伝搬時間差に基づいて、流体の流量を計測する超音波流量計の故障を判定するものであり、超音波信号を受信した超音波送受信器から出力される計測電圧Vin#i(iは1〜Nの整数)と予め設定されている閾値電圧Vsとを比較し、計測電圧Vin#iが閾値電圧Vsと交差したトリガー点以降に、計測電圧Vin#iが最初にゼロ電圧と交差するゼロクロス点を計測し、ゼロクロス点のゼロクロス時刻を計測電圧Vin#iと対応する時刻配列D#iに順次格納するように構成された計測部と、時刻配列D#iから予め設定されている複数の目標ゼロクロス点に関する目標ゼロクロス時刻をそれぞれ抽出し、これら目標ゼロクロス時刻から求めた伝搬時間差に基づいて、流体の流量を計測するように構成された流量計算部と、計測電圧Vin#iのうち、最初に計測された先頭ゼロクロス点が、予め定めた周期分だけ目標ゼロクロス点の前に位置する追従ゼロクロス点に相当する、計測電圧Vin#iの度合を計算し、度合と予め設定されている閾値との比較結果に基づいて閾値電圧Vsを調整するように構成された閾値調整部と、閾値電圧Vsと、超音波信号の最大振幅のピーク値との比を求めるように構成された処理部と、処理部が求めた比を元に故障を判定するように構成された判定部とを備える。
【0009】
上記故障判定装置の一構成例において、判定部は、処理部が求めた比と予め設定されている基準との差が、予め設定されている判定値を超えると、故障と判定する。
【0010】
上記故障判定装置の一構成例において、処理部は、一方の方向の比と、他方の方向の比とを求め、判定部は、処理部が求めた、一方の方向の比と、他方の方向の比との差が、予め設定されている判定値を超えると、故障と判定する。
【0011】
本発明に係る故障判定装置は、一対の超音波送受信器の間で、配管中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信することで計測した超音波信号の伝搬時間差に基づいて、流体の流量を計測する超音波流量計の故障を判定するものであり、超音波信号の最大振幅の位置より後の減衰する領域の振幅のピーク値の状態を求めるように構成された処理部と、処理部が求めた状態により、故障を判定するように構成された判定部とを備える。
【0012】
上記故障判定装置の一構成例において、処理部は、減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超える回数を、ピーク値の状態として求め、判定部は、処理部が求めた回数が、設定されている基準回数を超えると、故障と判定する。
【0013】
上記故障判定装置の一構成例において、処理部は、減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超えている状態が継続する時間を、ピーク値の状態として求め、判定部は、処理部が求めた時間が、設定されている基準時間を超えると、故障と判定する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したことにより、本発明によれば、超音波流量計の故障が、より早期に発見できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る故障判定装置100の構成を示す構成図である。
図2図2は、超音波流量計130の構成を示す構成図である。
図3図3は、検出電圧とゼロクロス点との関係(片側閾値)を示す信号波形図である。
図4図4は、先頭ゼロクロス時刻を示すヒストグラムである。
図5図5は、本発明の実施の形態1に係る故障判定装置100の動作(故障判定方法)を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施の形態2に係る故障判定装置110の構成を示す構成図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係る故障判定装置110の動作(故障判定方法)を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、本発明の実施の形態3に係る故障判定装置200の構成を示す構成図である。
図9図9は、本発明の実施の形態3に係る故障判定装置200の動作(故障判定方法)を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施の形態4に係る故障判定装置210の構成を示す構成図である。
図11図11は、本発明の実施の形態4に係る故障判定装置210の動作(故障判定方法)を説明するためのフローチャートである。
図12図12は、本発明の実施の形態に係る故障判定装置のハードウエア構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る故障判定装置について説明する。
【0017】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る故障判定装置100について、図1を参照して説明する。故障判定装置100は、一対の超音波送受信器の間で、配管中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信することで計測した超音波信号の伝搬時間差に基づいて、流体の流量を計測する超音波流量計130の故障を判定する。
【0018】
ここで、超音波流量計130について、図2を参照して説明する。超音波流量計130は、一対の超音波送受信器131,132の間で、配管133中を流れる計測対象となる流体134を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程をN(Nは2以上の整数)回実施し、これら計測工程により計測した超音波信号の伝搬時間差に基づいて、流量演算装置140において、流体134の流量を計測する。
【0019】
超音波送受信器131は、配線を介して接続された流量演算装置140からの超音波駆動信号に応じて、配管133内に向けて超音波信号U1を送信する。同様に、超音波送受信器132は、配線を介して接続された流量演算装置140からの超音波駆動信号に応じて、配管133内に向けて超音波信号U2を送信する。超音波送受信器132(超音波送受信器131)は、配管133内を流れる流体を通過した、超音波送受信器131(超音波送受信器132)からの超音波信号U1(U2)を受信し、その受信結果を示す測定信号を、配線を介して流量演算装置140へ出力する。
【0020】
この際、超音波信号U1,U2との間でやり取りされる超音波信号の伝搬時間t1,t2は、流体134の流れから受ける影響が異なるため、流体134の流量Qに応じた分だけ伝搬時間t1と伝搬時間t2の間に差、すなわち伝搬時間差Δtが生じる。超音波流量計130は、このΔtに基づいて流量Qを導出する。なお、本実施の形態に係る流量演算装置140で用いる、伝搬時間差Δtから流量Qを求める演算方法については、一般的な超音波流量計130で用いられている公知の計算式を用いればよく、ここでの詳細な説明は省略する。
【0021】
流量演算装置140は、入出力I/F部141、記憶部142、制御部143、計測部144、流量計算部145、閾値調整部147、および出力部146を備える。
【0022】
入出力I/F部141は、配線を介して超音波送受信器131,超音波送受信器132と接続されて、超音波送受信器131,超音波送受信器132との間で計測に用いる各種信号をやり取りする。記憶部142は、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、流量演算装置140での流量計測動作に用いる各種処理データやプログラムを記憶する。
【0023】
計測部144は、超音波信号を受信した超音波送受信器131,132から出力される計測電圧Vin#i(iは1〜Nの整数)と予め設定されている閾値電圧Vsとを比較し、計測電圧Vin#iが閾値電圧Vsと交差したトリガー点以降に、計測電圧Vin#iが最初にゼロ電圧と交差するゼロクロス点を計測し、ゼロクロス点のゼロクロス時刻を計測電圧Vin#iと対応する時刻配列D#iに順次格納する。
【0024】
流量計算部145は、時刻配列D#iから予め設定されている複数の目標ゼロクロス点に関する目標ゼロクロス時刻をそれぞれ抽出し、これら目標ゼロクロス時刻から求めた伝搬時間差に基づいて、流体134の流量を計測する。
【0025】
閾値調整部147は、計測電圧Vin#iのうち、最初に計測された先頭ゼロクロス点が、予め定めた周期分だけ目標ゼロクロス点の前に位置する追従ゼロクロス点に相当する、計測電圧Vin#iの度合を計算し、度合と予め設定されている閾値との比較結果に基づいて閾値電圧Vsを調整する。
【0026】
出力部146は、通信ネットワーク150を介して上位装置(図示せず)と接続し、定期的あるいは上位装置からの出力指示に応じて、記憶部142から流量Qを取得して上位装置へ出力する。
【0027】
制御部143は、予め設定されている周期的な計測タイミングの到来、あるいはオペレータや上位装置(図示せず)からの任意のタイミングにおける指示に応じて、入出力I/F部141から、超音波送受信器131,超音波送受信器132に対して超音波駆動信号を出力し、超音波送受信器131,超音波送受信器132間で計測対象となる流体134を介して超音波信号U1,U2を両方向で交互に送受信する計測工程を、N回繰り返し実施する。
【0028】
次に、図3および図4を参照して、流量演算装置140における流体134の流量を計測の原理について説明する。図3は、計測電圧とゼロクロス点との関係(片側閾値)を示す信号波形図である。図4は、先頭ゼロクロス時刻を示すヒストグラムである。なお、図3は、超音波信号U1もしくはU2のいずれか1つの超音波信号を受信した際の計測電圧を表している。超音波信号U1とU2に対応する計測電圧は振幅や伝搬時間が異なる。
【0029】
超音波送受信器131,超音波送受信器132から流量演算装置140へ入力される測定信号を示す計測電圧Vinは、図3に示すように、振幅が時間経過に従って増減する複数の正弦波様信号からなる。前述のように超音波信号U1,U2に対応する計測電圧の振幅は異なり、超音波信号U1,U2に対応して計測電圧に対する閾値電圧を別々に調整するため、一般に超音波信号U1,U2に対応する計測電圧の閾値電圧は異なる。
【0030】
流量演算装置140は、Vinが予め設定した閾値電圧Vsと交差した(超えたまたは達した)トリガー点を検出した後に初めてゼロ電圧Vz(0V)と交差する複数のゼロクロス点のうちから目標ゼロクロス点を検出して、目標ゼロクロス点のゼロクロス時刻から計測電圧Vinと対応する超音波信号U1,U2の受信時刻として特定し、得られた受信時刻により超音波信号U1,U2の伝搬時間t1,伝搬時間t2さらには伝搬時間差Δtを計算して、流量Qを導出する。
【0031】
計測電圧Vinは測定するごとに振幅が変化する。図3では平均的な振幅の計測電圧をVin#0、小さい振幅の計測電圧をVin#1、大きい振幅の計測電圧をVin#2として示している。後述する閾値電圧の調整手段により、Vin#0の先頭からNm個目の波を目標波として特定し、この目標波の1つ前の波のピーク電圧と閾値電圧とが同じ値になるように閾値調整部147により調整がなされている。この目標波の1つ前の波を追従波と呼ぶ。追従波に対応する有効ゼロクロス点を追従ゼロクロス点と呼ぶ。同様に目標波に対応する有効ゼロクロス点を目標ゼロクロス点と呼ぶ。この目標ゼロクロス点以降に検出されたゼロクロス点を計測ゼロクロス点として特定している。
【0032】
なお、ここでは、計測電圧Vinが、予め設定した閾値電圧Vsと交差した(超えたまたは達した)トリガー点を基準として、トリガー点と交差するごとに、それ以降に最初にゼロ電圧と交差する点を有効ゼロクロス点と呼ぶこととする。例えば、閾値電圧Vsが正側電圧である場合、トリガー点以降に最初にゼロ電圧と立下がりで交差した点が有効ゼロクロス点となる。また、閾値電圧Vsが負側電圧である場合、トリガー点以降に最初にゼロ電圧と立ち上がりで交差した点が有効ゼロクロス点となる。なお、有効ゼロクロス点以降において、計測電圧がトリガー点と交差する前にゼロ電圧と交差しても、その点は有効ゼロクロスにはあたらないこととする。
【0033】
図3では、Nm=2の場合が例として示されている。前述のように、閾値電圧Vsを、平均的な振幅の計測電圧Vin#0における、先行波のピーク電圧とほぼ等しい値に設定した場合、計測電圧Vinの振幅が小さくなったり(Vin#1)、計測電圧Vinの振幅が大きくなったり(Vin#2)することで、先頭ゼロクロスが追従ゼロクロス(Z1)となったり目標ゼロクロス(Z2)となったりする。
【0034】
この際、計測電圧Vinに対して閾値電圧Vsが適切に設定されていれば、先頭ゼロクロスは、時刻T1の追従ゼロクロスZ1か時刻T2の目標ゼロクロスZ2のいずれかとなる。これにより、図4に示すように、時刻T1,T2において、両者の先頭ゼロクロスが検出される度数N(T1),N(T2)はほぼ等しくなり、両者の確率はほぼ50%となる。また、これら度合はVsに対する計測電圧Vinの強度変動に応じて変化する。
【0035】
流量演算装置140では、先頭ゼロクロス点が追従ゼロクロスになったり目標ゼロクロスになったりすることを使い、追従ゼロクロスが先頭ゼロクロスとなる度合に基づいて、計測電圧Vinの強度変動に追従するようVsを調整する。ここでは、追従波は目標波の1周期前としたが、それに限ったことではなく、予め定めた周期分だけ前としてもよい。なお、周期とは、計測電圧Vinを示す波の周期であり、超音波周期に相当する。
【0036】
また、目標波で最初のトリガー点が発生した場合、時刻配列D#iの先頭には目標ゼロクロス点の時刻が格納されるのに対して、追従波で最初のトリガー点が発生した場合には、目標ゼロクロス点以前に位置する追従ゼロクロス点を示す時刻がD#iの先頭に格納されることになる。
【0037】
図3に示すように、計測電圧Vinが計測電圧Vin#1である場合、目標波であるP3の計測電圧Vin#1が時刻Ts1にて初めてVsを超えているため、Ts1以降に検出されたゼロクロス点Z2,Z3,Z4に対応するゼロクロス時刻T2,T3,T4が、時刻配列D#1に対して格納されることになる。これにより、最初のトリガー点以降に最初に検出されたゼロクロス点、すなわちD#1の先頭に格納されている先頭ゼロクロス点Z2が、目標ゼロクロス点に相当することになる。
【0038】
一方、ノイズ成分の重畳などの影響で計測電圧Vinの信号強度が増大し、図3に示すように、計測電圧Vinが計測電圧Vin#2のように変化した場合、P3の手前の追従波であるP2の計測電圧Vin#2が時刻Ts2にVsを超える。このため、Ts1より手前のTs2以降に検出されたゼロクロス点Z1,Z2,Z3,Z4に対応するゼロクロス時刻T1,T2,T3,T4が、時刻配列D#2に対して格納されることになる。これにより、最初のトリガー点以降に最初に検出されたゼロクロス点、すなわちD#2の先頭に格納されている先頭ゼロクロス点Z1が、追従ゼロクロス点に相当することになる。
【0039】
流量演算装置140は、上述したような追従波または目標波でのトリガー点の発生状況と、D#iの先頭ゼロクロス点に対応するゼロクロス点の位置との関連性を用い、D#iのうち、トリガー点以降に最初に検出された先頭ゼロクロス点が、追従ゼロクロス点に相当する度合Rを計算し、得られた度合Rと予め設定されている閾値(度合閾値)との比較結果に基づいて閾値電圧Vsを調整する。
【0040】
次に、故障判定装置100について説明する。故障判定装置100は、処理部101,判定部102,表示部103を備える。処理部101は、超音波信号の、最大振幅の位置より前の、予め設定されている位置の振幅のピーク値(指標ピーク値)と、最大振幅のピーク値との比(ピーク比)を求める。判定部102は、処理部101が求めた比を元に故障を判定する。実施の形態1では、判定部102は、処理部101が求めたピーク比と、予め設定されている基準(正常値)との差が予め設定されている判定値を超えると、故障と判定する。判定部102により故障が判定されると、この旨が表示部103に表示される。
【0041】
ここで、超音波信号が振幅異常をきたす場合について説明する。第1に、送信が行われていないのに、基準レベル以上の超音波信号が常時受信される場合がある。これは超音波送受信器131,132の取り付け状態の不備によって、流量演算装置140がノイズによって誤動作しているときに発生する。
【0042】
第2に、超音波の送信が行われても、基準レベル以上の波形の超音波信号が得られない場合がある。これは、超音波送受信器131,132、流量演算装置140に異常が生じていることによって生じ、原因としては、流体の流れに含まれる塵などが超音波送受信器131,132の箇所の配管133内壁に付着する場合が考えられる。また、上述した状態の原因として、配管133への超音波送受信器131,132の取り付け不備が生じていることなども考えられる。
【0043】
上述したように、超音波流量計130に故障が発生していると、超音波信号に振幅異常が見られるようになる。この振幅異常は、超音波信号の、最大振幅の位置より前の、予め設定されている位置の振幅のピーク値と、最大振幅のピーク値との比(ピーク比)と、正常値との差により判定することができる。言い換えると、処理部101が求めたピーク比と正常値との差が、判定値を超える場合、超音波流量計130に故障が発生しているものと判断できる。
【0044】
ところで、正常値は、以下に示すことにより決定することができる。測定環境の温度や、音速(流体組成)などに基づいて正常な状態で期待される比率を正常値とすることができる。正常な状態で期待される比率は、出荷時などに設定した特性値と、計測中に取得可能な値から求めることができる。温度や音速を用いて関数またはテーブルで求めることもできる。
【0045】
超音波信号の波形は、測定対象の流体温度や、測定対象の流体の組成などによって変化する。このため、超音波送受信器131,132が正常な状態であっても、受信される超音波信号の最大振幅に対する指標ピーク電圧の比は、温度や流体の組成により変化する。超音波流量計では、伝搬時間から流体の音速を求め、音速を求めた時の流体温度と比較することにより流体の組成を推定することができる。推定した流体組成と流体温度に応じて、センサが正常な状態で期待される、受信波の最大振幅に対する指標ピーク電圧を求め、正常値とすることで、測定の状況に対応させることができる。
【0046】
次に、実施の形態1に係る故障判定装置100の動作例について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
まず、ステップS101で、処理部101が、指標ピーク値と、最大振幅のピーク値との比(ピーク比)を求める。次に、ステップS102で、判定部102が、処理部101が求めたピーク比と正常値との差が、判定値を超えたか否かを判定する。ピーク比と正常値との差が、判定値を超えている場合(ステップS102のyes)、ステップS103で、判定部102が、超音波流量計130か故障していると判定し、この旨が表示部103に表示される。
【0048】
ところで、超音波信号の波形は、測定対象の流体温度や、測定対象の流体の組成などによって変化する。このため、超音波送受信器131,132が正常な状態であっても、受信される超音波信号の最大振幅に対する指標ピーク電圧の比は、温度や流体の組成により変化する。従って、予め設定されている基準(正常値)を、上述した環境などの条件の変化による波形変化が反映されるように更新することができる。この更新を、例えば、ピーク比を求めた後に実施し、更新した後、判定部102による判定(ステップS102)を実施することができる。
【0049】
例えば、温度による波形変化を反映させる場合、事前に各温度におけるピーク比の正常値を測定し、温度とピーク比の正常値との関係を記憶しておく。実際の故障判定においては、測定対象の流体の温度測定結果に応じた正常値を、上記関係より求め、求めた正常値を設定して故障判定動作に用いる。
【0050】
また、音速による波形変化を反映させる場合、事前に各音速におけるピーク比の正常値を測定し、音速とピーク比の正常値との関係を記憶しておく。実際の故障判定においては、伝搬時間から求めた音速に応じた正常値を、上記関係より求め、求めた正常値を設定して故障判定動作に用いる。
【0051】
また、超音波流量計では、伝搬時間から流体の音速を求め、その時の流体温度と比較することにより流体の組成を推定することができる。流体組成による波形変化を反映させる場合、伝搬時間から求めた音速と、測定される測定対象の流体の温度とから、対象流体の種類を推定し、推定された種類に応じたピーク比の正常値を故障動作判定に用いる。
【0052】
超音波流量計測中に取得できる順逆方向の伝搬時間、音速、温度情報などに基づいて、ピーク比の正常値を逐次更新することで、計測対象流体の組成や温度が変化した場合でも、正確な故障判定動作が可能になる。
【0053】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る故障判定装置110について、図6を参照して説明する。故障判定装置110は、処理部111,判定部112,表示部103を備える。処理部111は、超音波信号の、最大振幅の位置より前の、予め設定されている位置の振幅のピーク値(指標ピーク値)と、最大振幅のピーク値との比(ピーク比)を求める。実施の形態2において、処理部111は、一方の方向(超音波信号U1)の比と、他方の方向(超音波信号U2)の比とを求める。
【0054】
判定部112は、処理部111が求めた比を元に故障を判定する。実施の形態2では、判定部112は、処理部111が求めた、一方の方向の比と、他方の方向の比との差が、予め設定されている判定値を超えると、故障と判定する。判定部112により故障が判定されると、この旨が表示部103に表示される。
【0055】
故障が発生するのは、超音波送受信器131,超音波送受信器132のどちらか一方であることが多い。この場合、超音波送受信器131,超音波送受信器132の故障した方が送受のいずれに使われるかで、超音波信号の波形に差異が生じる。超音波送受信器131,超音波送受信器132のいずれも故障していなければ、両者で計測される超音波信号の波形は、ほぼ等しい。従って、処理部111が求めた、一方の方向の比と、他方の方向の比との差が、予め設定されている判定値を超えることにより、超音波送受信器131,超音波送受信器132のいずれかが故障が発生しているものと判断できる。
【0056】
次に、実施の形態2に係る故障判定装置110の動作例について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
まず、ステップS111で、処理部111が、指標ピーク値と、最大振幅のピーク値との比(ピーク比)を、一方の方向(超音波信号U1)、および他方の方向(超音波信号U2)の各々について求める。次に、ステップS112で、判定部112が、処理部111が求めた、一方の方向の比と、他方の方向の比との差が、判定値を超えたか否かを判定する。ピーク比と正常値との差が、判定値を超えている場合(ステップS112のyes)、ステップS113で、判定部112が、超音波流量計130(超音波送受信器131,超音波送受信器132のいずれか)か故障していると判定し、この旨が表示部103に表示される。
【0058】
ところで、上述した実施の形態では、処理部が、超音波信号の、最大振幅の位置より前の、予め設定されている位置の振幅のピーク値(指標ピーク値)と、最大振幅のピーク値との比(ピーク比)を求めるようにしたが、これに限るものではない。指標ピーク値として閾値電圧Vsを用い、処理部が、閾値電圧Vsと、超音波信号の最大振幅のピーク値との比を求めるようにすることもできる。
【0059】
閾値電圧Vsは、同方向の連続した複数回の超音波送受信で得らえた超音波受信波形を平均した波形の特定の位置に存在する波のピーク電圧に追従する性質を持っているものと考えられる。従って、閾値電圧Vsを、指標ピーク値として用いることができる。閾値電圧Vsは、閾値調整部により流量計測動作中の超音波受信波形に追従する形で逐次更新される値である。従って、閾値電圧Vsを指標ピーク値とすることで、ピーク電圧を把握するために回路部品を追加したり、ピーク確認用の動作を追加したりすることなしに、計測動作と並行してリアルタイムに指標ピーク値が取得できる。
【0060】
所定の位置の振幅のピーク値を取得するためには、一般的に、超音波受信波の電圧波形をAD変換などにより数値化し、極値を抽出することなどが考えられる。この取得方法を実現するためには、高性能な演算回路(CPU)やAD変換回路が必要となり、装置のコスト増を招き、また、故障判定動作に必要な消費電流が増大する場合がある。また、ピークの電圧の把握には一定の時間を要し、ピーク電圧の把握に時間を要している間は、通常の流量計測動作ができない場合もある。閾値電圧Vsを利用すれば、これらの問題が抑制できる。
【0061】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る故障判定装置200について、図8を参照して説明する。故障判定装置200は、超音波流量計130の故障を判定する。故障判定装置200は、処理部201、判定部202、表示部203を備える。
【0062】
処理部201は、超音波信号の最大振幅の位置より後の減衰する領域の振幅のピーク値の状態を求める。実施の形態3において、処理部201は、減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超える回数を、ピーク値の状態として求める。
【0063】
判定部202は、処理部201が求めた状態により、故障を判定する。実施の形態3において、判定部202は、処理部201が求めた回数が、設定されている基準回数を超えると、故障と判定する。
【0064】
超音波流量計130の故障発生時の特徴は、受信(計測)された超音波信号の減衰側(超音波信号の最大振幅の位置より後の減衰する領域)の波形の変化としても現れる。減衰側の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超える回数が多い場合、故障が発生しているものと判定できる。
【0065】
次に、実施の形態3に係る故障判定装置200の動作例(故障判定方法)について、図9のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS201で、処理部201が、減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超える回数を求める。次に、ステップS202で、判定部202が、処理部201が求めた回数が、設定されている基準回数を超えた否かを判定する。処理部201が求めた回数が、設定されている基準回数を超えている場合(ステップS202のyes)、ステップS203で、判定部202が、超音波流量計130か故障していると判定し、この旨が表示部203に表示される。
【0066】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4に係る故障判定装置210について、図10を参照して説明する。故障判定装置210は、超音波流量計130の故障を判定する。故障判定装置200は、処理部211、判定部212、表示部203を備える。
【0067】
処理部211は、超音波信号の最大振幅の位置より後の減衰する領域の振幅のピーク値の状態を求める。実施の形態4において、処理部211は、減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超えている状態が継続する時間を、ピーク値の状態として求める。
【0068】
判定部212は、処理部211が求めた状態により、故障を判定する。実施の形態4において、判定部212は、処理部211が求めた時間が、設定されている基準時間を超えると、故障と判定する。
【0069】
超音波流量計130の故障発生時の特徴は、受信(計測)された超音波信号の減衰側(超音波信号の最大振幅の位置より後の減衰する領域)の波形の変化としても現れる。減衰側の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超えて継続している時間が長い場合、故障が発生しているものと判定できる。
【0070】
次に、実施の形態4に係る故障判定装置210の動作例(故障判定方法)について、図11のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS211で、処理部211が、減衰する領域の振幅のピーク値が、設定されている基準ピーク値を超えている状態が継続する時間を測定する。次に、ステップS212で、判定部212が、処理部201が求めた回数が、設定されている基準回数を超えた否かを判定する。処理部211が測定した時間が、設定されている基準時間を超えている場合(ステップS212のyes)、ステップS213で、判定部212が、超音波流量計130か故障していると判定し、この旨が表示部203に表示される。
【0071】
なお、上述した実施の形態に係る故障判定装置は、図12に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)301と主記憶装置302と外部記憶装置303とネットワーク接続装置304となどを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置302に展開されたプログラムによりCPU301が動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能(故障判定方法)が実現されるようにすることもできる。上記プログラムは、上述した実施の形態で示した故障判定方法をコンピュータが実行するためのプログラムである。ネットワーク接続装置304は、ネットワーク305に接続する。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。
【0072】
以上に説明したように、本発明によれば、超音波信号の波形の状態より故障を判定するので、超音波流量計の故障が、より早期に発見できるようになる。本発明によれば、特別な故障判定の動作を必要とせずに、通常の流量計測で得られたデータを用い、常時故障判定が実施できる。
【符号の説明】
【0073】
100…故障判定装置、101…処理部、102…判定部、103…表示部、130…超音波流量計。
図1
図2
図3
図4
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図6
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