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特開2021-69137回転電機制御方法及び回転電機制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-69137(P2021-69137A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】回転電機制御方法及び回転電機制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/22 20060101AFI20210402BHJP
   H02P 21/06 20160101ALI20210402BHJP
【FI】
   H02P25/22
   H02P21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-190498(P2019-190498)
(22)【出願日】2019年10月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505CC04
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HB01
5H505HB05
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ12
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505JJ26
5H505LL07
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】多重多相回転電機において一の制御系における電圧指令値の変化に起因した他の制御系におけるd軸及びq軸電流への干渉をより確実に抑制する。
【解決手段】
多重多相回転電機において、トルク指令値及び多重多相回転電機の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータに基づいて、第1の多相巻線に対する第1d軸電圧指令値及び第1q軸電圧指令値と、第2の多相巻線に対する第2d軸電圧指令値及び第2q軸電圧指令値と、を算出し、第2の多相巻線に供給される第2d軸電流及び第2q軸電流における第1d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて第2d軸電圧指令値と第2q軸電圧指令値を補正し、第1の多相巻線に供給される第1d軸電流及び第1q軸電流における第2d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて第1d軸電圧指令値と第1q軸電圧指令値を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機において、複数の前記多相巻線に設定された電圧指令値に応じた電圧を供給することで前記多重多相回転電機の作動を制御する回転電機制御方法であって、
外部負荷の要求に基づくトルク指令値及び前記多重多相回転電機の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータに基づいて、第1の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第1d軸電圧指令値及びq軸成分である第1q軸電圧指令値と、第2の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第2d軸電圧指令値及びq軸成分である第2q軸電圧指令値と、を算出し、
前記第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流及びq軸成分である第2q軸電流における前記第1d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第2d軸電圧指令値と前記第2q軸電圧指令値を補正し、
前記第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流及びq軸成分である第1q軸電流における前記第2d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第1d軸電圧指令値と前記第1q軸電圧指令値を補正する、
回転電機制御方法。
【請求項2】
固定子に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機において、複数の前記多相巻線に設定された電圧指令値に応じた電圧を供給することで前記多重多相回転電機の作動を制御する回転電機制御方法であって、
外部負荷の要求に基づくトルク指令値及び前記多重多相回転電機の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータに基づいて、第1の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第1d軸電圧指令値及びq軸成分である第1q軸電圧指令値と、第2の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第2d軸電圧指令値及びq軸成分である第2q軸電圧指令値と、を算出し、
前記第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流及びq軸成分である第2q軸電流における前記第1q軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第2d軸電圧指令値と前記第2q軸電圧指令値を補正し、
前記第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流及びq軸成分である第1q軸電流における前記第2q軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第1d軸電圧指令値と前記第1q軸電圧指令値を補正する、
回転電機制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機制御方法であって、
前記第2d軸電圧指令値及び前記第2q軸電圧指令値の補正を、前記第1d軸電圧指令値をフィルタリング処理した信号と、前記回転状態パラメータ及び前記多重多相回転電機の特性を表す特性パラメータの少なくとも何れか一方と、を用いて実行し、
前記第1d軸電圧指令値及び前記第1q軸電圧指令値の補正を、前記第2d軸電圧指令値をフィルタリング処理した信号と、前記回転状態パラメータ及び前記特性パラメータの少なくとも何れか一方と、を用いて実行する、
回転電機制御方法。
【請求項4】
固定子に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機において、複数の前記多相巻線に設定された電圧指令値に応じた電圧を供給することで前記多重多相回転電機の作動を制御する回転電機制御システムであって、
外部負荷の要求に基づくトルク指令値及び前記多重多相回転電機の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータに基づいて、第1の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第1d軸電圧指令値及びq軸成分である第1q軸電圧指令値と、第2の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第2d軸電圧指令値及びq軸成分である第2q軸電圧指令値と、を算出する電圧指令値算出部と、
前記電圧指令値算出部で算出される前記電圧指令値を補正する電圧指令値補正部と、有し、
前記電圧指令値補正部は、
前記第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流及びq軸成分である第2q軸電流における前記第1d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第2d軸電圧指令値と前記第2q軸電圧指令値を補正し、
前記第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流及びq軸成分である第1q軸電流における前記第2d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第1d軸電圧指令値と前記第1q軸電圧指令値を補正する、
回転電機制御システム。
【請求項5】
固定子に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機において、複数の前記多相巻線に電圧指令値に応じた電圧を供給することで前記多重多相回転電機の作動を制御する回転電機制御システムであって、
外部負荷の要求に基づくトルク指令値及び前記多重多相回転電機の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータに基づいて、第1の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第1d軸電圧指令値及びq軸成分である第1q軸電圧指令値と、第2の多相巻線に対する前記電圧指令値のd軸成分である第2d軸電圧指令値及びq軸成分である第2q軸電圧指令値と、を算出する電圧指令値算出部と、
前記電圧指令値算出部で算出される前記電圧指令値を補正する電圧指令値補正部と、有し、
前記電圧指令値補正部は、
前記第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流及びq軸成分である第2q軸電流における前記第1q軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第2d軸電圧指令値と前記第2q軸電圧指令値を補正し、
前記第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流及びq軸成分である第1q軸電流における前記第2q軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第1d軸電圧指令値と前記第1q軸電圧指令値を補正する、
回転電機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機制御方法及び回転電機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、2組の3相巻線を有する3相2重巻線型のモータを駆動する制御装置が提案されている。この制御装置では、2組の3相巻線に対して別個に第1の電流制御系と第2の電流制御系を設け、第1の電流制御系の電圧指令による第2の電流制御系への第1干渉電圧と、第2の電流制御系の電圧指令による第1の電流制御系への第2干渉電圧とを算出し、算出した第1及び第2干渉電圧に基づいて第1の電流制御系と第2の電流制御系相互の干渉を補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3938486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多重多相回転電機においては、一の制御系においてd軸電圧指令値を変化させると当該制御系においてd軸電流だけなくq軸電流への干渉(変化)をもたらす。そして、この一の制御系におけるd軸電圧指令値の変化に対するq軸電流の変化の影響が、他の制御系のd軸及びq軸電流への干渉を強める要因となる。しかしながら、上記特許文献1の制御装置では、このような状況を解決する対策がされていない。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明は、多重多相回転電機において一の制御系における電圧指令値の変化に起因した他の制御系におけるd軸及びq軸電流への干渉をより確実に抑制することのできる回転電機制御方法及び回転電機制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、固定子に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機において、複数の多相巻線に設定された電圧指令値に応じた電圧を供給することで多重多相回転電機の作動を制御する回転電機制御方法が提供される。この回転電機制御方法では、外部負荷の要求に基づくトルク指令値及び前記多重多相回転電機の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータに基づいて、第1の多相巻線に対する電圧指令値のd軸成分である第1d軸電圧指令値及びq軸成分である第1q軸電圧指令値と、第2の多相巻線に対する電圧指令値のd軸成分である第2d軸電圧指令値及びq軸成分である第2q軸電圧指令値と、を算出する。
【0007】
そして、第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流及びq軸成分である第2q軸電流における第1d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第2d軸電圧指令値と第2q軸電圧指令値を補正し、第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流及びq軸成分である第1q軸電流における第2d軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて第1d軸電圧指令値と第1q軸電圧指令値を補正する。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流及びq軸成分である第2q軸電流における第1q軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて前記第2d軸電圧指令値と第2q軸電圧指令値を補正し、第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流及びq軸成分である第1q軸電流における第2q軸電圧指令値の変化に対する各振動成分を算出し、算出した各振動成分に基づいて第1d軸電圧指令値と第1q軸電圧指令値を補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多重多相回転電機において一の制御系における電圧指令値の変化に起因した他の制御系におけるd軸及びq軸電流への干渉をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御システムの構成を説明するブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。
図3図3は、比較例1のモータ制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
図4図4は、比較例2のモータ制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
図5図5は、実施例のモータ制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態による回転電機制御方法(モータ制御方法)を実行するためのモータ制御システム100の構成を説明するブロック図である。
【0013】
本実施形態のモータ制御システム100は、固定子(ステータ)に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機としてのモータ101の動作を制御するシステムである。
【0014】
モータ101は、種々の駆動力要求装置の動力源として用いることができる。特に、モータ101は、電気自動車(EV)又はハイブリッド自動車(HEV)等の電動モータの駆動力で走行する任意の車両における駆動源としての用途が想定される。
【0015】
ここで、本実施形態における多相巻線とは、各相(例えば、三相交流の場合、U相、V相、及びW相の各相)のそれぞれに対応する一組の巻線を組み合わせて成る巻線組を意味する。
【0016】
また、以下の説明において、上記複数の多相巻線の内の特定の巻線組への通電を制御する一組の構成要素の単位を「系統」と称する。例えば、モータ101がいわゆる三相二重巻線型のモータで構成される場合には、ステータに2つの三相巻線が設けられる。したがって、この場合、モータ101の動作を制御するモータ制御システム100には、2つの巻線組へのそれぞれの通電を制御する2つの系統が存在することとなる。
【0017】
そして、本実施形態では、特に、モータ101が三相二重巻線型の永久磁石同期モータとして構成されることを前提としたモータ制御システム100におけるモータ制御方法について説明する。しかしながら、このことは、本発明のモータ制御方法を、三相二重巻線型の永久磁石同期モータ以外の多重多相回転電機を有するシステムに適用することを妨げるものではない。
【0018】
さらに、以下の説明においては、三相二重巻線型永久磁石同期モータとして構成されるモータ101を備えるモータ制御システム100において、上述した2つの系統をそれぞれ「系統1」及び「系統2」と称する。特に、系統1における各制御量(電流など)及び系統2における各制御量を区別する必要がある場合には、これら各制御量に「1」又は「2」という下付きの添え字を付する。
【0019】
また、これら系統1及び系統2における各制御量を包括して説明する場合には、各制御量に「n」(n=1又は2)という下付きの添え字を付する。例えば、系統1における三相電圧の指令値「三相電圧指令値(v*u1,v*v1,v*w1)」及び系統2における三相電圧の指令値「三相電圧指令値(v*u2,v*v2,v*w2)」を包括して、「三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)」などと表記する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のモータ制御システム100は、PWM変換器102と、三相電圧型のインバータ103と、直流電源104と、電流センサ105と、A/D変換器106と、磁極位置検出器107と、パルスカウンタ108と、3相/dq交流座標変換部109と、角速度演算部110と、先読み補償部111と、電圧指令値算出部112と、電圧指令値補正部113と、dq/3相交流座標変換器114と、を有している。なお、これらの各構成の機能は、適宜、当該機能を実行するようにプログラムされたコンピュータにより実現される。
【0021】
PWM変換器102は、2系統の三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)に基づいて、2系統の三相電圧型のインバータ103のスイッチング素子(IGBTなど)のPWM_Duty駆動信号(D*uun,D*uln,D*vun,D*vln,D*wun,D*wln)を生成する。
【0022】
インバータ103は、PWM変換器102によって生成されるPWM_Duty駆動信号(D*uun,D*uln,D*vun,D*vln,D*wun,D*wln)に基づいてスイッチング素子を操作し、直流電源104からの直流電圧を三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)に応じた三相交流電圧(vun,vvn,vwn)に変換し、モータ101に供給する。
【0023】
直流電源104は、積層型リチウムイオンバッテリなどの蓄電デバイスにより構成される。
【0024】
電流センサ105は、モータ101の各多相巻線に流れる三相交流電流(iun,ivn,iwn)を検出する。なお、以下では、この検出値を「三相交流電流検出値(iuns,ivns,iwns)」とも表記する。具体的に、電流センサ105は、三相交流電流(iun,ivn,iwn)のうち、少なくとも2相の電流(例えば、u相電流iun、v相電流ivn)を検出する。例えば、電流センサ105をu相とv相の2相のみに取り付ける場合、残りの1相であるw相の電流検出値iwnsは、次式(1)により求めることができる。
【数1】
【0025】
A/D変換器106は、電流センサ105による三相交流電流検出値(iuns,ivns,iwns)をデジタル信号に変換する。
【0026】
磁極位置検出器107は、モータ101の回転子位置に応じたA相B相Z相のパルスをパルスカウンタ108に出力する。
【0027】
パルスカウンタ108は、磁極位置検出器107からのA相B相Z相のパルスに基づいて、モータ101の電気角度θreを演算する。この電気角度θreは、機械角度θrm及びモータ101の構造により定まるモータ極対数p(磁極の対の数)に基づいて定まる、モータ101の電気角の実値に相当する値である。すなわち、電気角度θreはモータ101の回転子(ロータ)の回転状態を表す回転状態パラメータに相当する。パルスカウンタ108は、演算した電気角度θreを3相/dq交流座標変換部109、角速度演算部110、及び先読み補償部111に出力する。
【0028】
3相/dq交流座標変換部109は、パルスカウンタ108で演算される電気角度θreを用いて、A/D変換器106でデジタル信号に変換された三相交流電流検出値(iuns,ivns,iwns)を3相交流座標系(uvw軸)から直交2軸直流座標系(dq軸)に変換する。
【0029】
具体的に、先ず、3相/dq交流座標変換部109は、以下の式(2)及び式(3)に基づいて電気角度θreから系統nごとの電気角θnを算出する。
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
【0032】
なお、式(2)及び式(3)中の「θoffset」は電気角度θreと系統1の位相差を意味する。また、「θ12」は、系統1に対する系統2の位相差を意味する。すなわち「θ12」は、「θ2−θ1」に相当する。
【0033】
さらに、3相/dq交流座標変換部109は、以下の式(4)に基づき、電気角θnを用いて上記三相交流電流検出値から系統1のdq軸電流(id1,iq1)及び系統2のdq軸電流(id2,iq2)を算出する。
【0034】
【数4】
【0035】
3相/dq交流座標変換部109は、算出した系統1のdq軸電流(id1,iq1)及び系統2のdq軸電流(id2,iq2)を、適宜、モータ制御システム100内における図示しない制御要素にフィードバックする。
【0036】
なお、以下では、適宜、電流等の制御量に関してd軸成分及びq軸成分を包括する符号「x」(x=d又はq)を、上述した系統1及び2を包括する符号「n」とともに用いる。具体的には、dq軸電流(ixn)などの表示を用いる。
【0037】
角速度演算部110は、パルスカウンタ108からの電気角度θreを時間微分して電気角速度ωreを演算する。また、角速度演算部110は、電気角速度ωreをモータ極対数pで除して機械角速度ωrmを演算する。角速度演算部110は、演算した電気角速度ωreを先読み補償部111に出力するとともに、機械角速度ωrmを電圧指令値算出部112に出力する。
【0038】
先読み補償部111は、パルスカウンタ108からの電気角度θre及び角速度演算部110からの電気角速度ωreに基づいて、電気角速度ωreと制御系が持つむだ時間との乗算値を加算することにより、各系統の先読み補償後電気角θ´nを求める。
【0039】
電圧指令値算出部112は、図示しないメモリに記憶された予め定められたマップに基づいて、外部負荷などから要求される要求駆動力に基づいて定まるトルク指令値T*、モータ回転数(機械角速度ωrm)、及び直流電源104からの供給電圧の大きさである直流電圧Vdcを入力情報として、電圧指令値の基本値である基本dq軸電圧指令値(v*xn)を算出する。
【0040】
電圧指令値補正部113は、電圧指令値算出部112からの基本dq軸電圧指令値(v*xn)を補正して補正dq軸電圧指令値(v**xn)を求める。具体的に、電圧指令値補正部113は、基本dq軸電圧指令値(v*xn)の変化に起因したdq軸電流(ixn)の振動成分を除去するように、補正dq軸電圧指令値(v**xn)を演算する。特に、本実施形態では、基本dq軸電圧指令値(v*xn)に電圧指令値補正フィルタCmmf(s)を施すことで補正dq軸電圧指令値(v**xn)を演算する。なお、電圧指令値補正部113における補正dq軸電圧指令値(v**xn)の演算の詳細については後述する。
【0041】
dq/3相交流座標変換器114は、先読み補償部111からの先読み補償後電気角θ´n及び電圧指令値補正部113からの補正dq軸電圧指令値(v**xn)を入力情報として、三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)を算出する。
【0042】
具体的に、dq/3相交流座標変換器114は、以下の式(5)に基づき、補正dq軸電圧指令値(v**xn)を直交2軸直流座標系(dq軸)から3相交流座標系(uvw軸)に変換して三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)を求める。
【0043】
【数5】
【0044】
そして、dq/3相交流座標変換器114は、算出した三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)をPWM変換器102に出力する。
【0045】
図2は、本実施形態のモータ制御システム100で実行されるモータ制御方法の流れを説明するためのフローチャートである。
【0046】
図示のように、先ず、ステップS110において、電気角度θreを検出する(磁極位置検出器107及びパルスカウンタ108)。
【0047】
ステップS120において、電気角度θre及び機械角速度ωrmを演算する(角速度演算部110)。
【0048】
ステップS130において、基本dq軸電圧指令値(v*xn)を演算する(電圧指令値算出部112)。
【0049】
ステップS140において、補正dq軸電圧指令値(v**xn)を演算する(電圧指令値補正部113)。
【0050】
ステップS150において、補正dq軸電圧指令値(v**xn)に基づいてモータ101を駆動する。具体的には、補正dq軸電圧指令値(v**xn)を三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)に変換し(dq/3相交流座標変換器114)、三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn)からPWM_Duty駆動信号(D*uun,D*uln,D*vun,D*vln,D*wun,D*wln)を生成し(PWM変換器102)、当該駆動信号に基づいたスイッチング操作により三相交流電圧(vun,vvn,vwn)をモータ101に供給する(インバータ103)。
【0051】
以下、電圧指令値補正部113の詳細について説明する。
【0052】
[電圧指令値補正部の詳細]
本実施形態の電圧指令値補正部113は、電圧指令値補正フィルタCmmf(s)を設定し、これを基本dq軸電圧指令値(v*xn)に施すプログラムとして構成される。電圧指令値補正フィルタCmmf(s)は、モータ101の電圧から電流までの特性における振動成分を適切に除去する観点から設定される。以下では、この電圧指令値補正フィルタCmmf(s)を定めるための具体的な方法を説明する。
【0053】
先ず、三相二重巻線型永久磁石同期モータとして構成された本実施形態のモータ101に関する電圧方程式は以下の式(6)で表される。
【0054】
【数6】
【0055】
式(6)中の各パラメータの定義は、既に説明したものも含めて以下のように定められる。
【0056】
d1:第1系統のd軸電流(第1d軸電流)
q1:第1系統のq軸電流(第1q軸電流)
d2:第2系統のd軸電流(第2d軸電流)
q2:第2系統のq軸電流(第2q軸電流)
d1:第1系統のd軸電圧(第1d軸電圧)
q1:第1系統のq軸電圧(第1q軸電圧)
d2:第2系統のd軸電圧(第2d軸電圧)
q2:第2系統のq軸電圧(第2q軸電圧)
a1:第1系統の固定子巻線抵抗
a2:第2系統の固定子巻線抵抗
φa1:第1系統の回転子磁石磁束
φa2:第2系統の回転子磁石磁束
d1:第1系統のd軸静的インダクタンス
q1:第1系統のq軸静的インダクタンス
d2:第2系統のd軸静的インダクタンス
q2:第2系統のq軸静的インダクタンス
d:第1系統と第2系統間のd軸静的相互インダクタンス
q:第1系統と第2系統間のq軸静的相互インダクタンス
L’d1:第1系統のd軸動的インダクタンス
L’q1:第1系統のq軸動的インダクタンス
L’d2:第2系統のd軸動的インダクタンス
L’q2:第2系統のq軸動的インダクタンス
M’d:第1系統と第2系統間のd軸動的相互インダクタンス
M’q:第1系統と第2系統間のq軸動的相互インダクタンス
ωre:電気角速度
s:微分演算子(微分演算子「d/dt」をラプラス変換した演算子)
【0057】
なお、以下では、式(6)中の静的インダクタンスLxn、動的インダクタンスL’xn、静的相互インダクタンスMx、動的相互インダクタンスM’x、固定子巻線抵抗Ran、及び回転子磁石磁束φanは、何れも公知の方法で検出又は推定可能なパラメータである。本実施形態では、これらパラメータが特性パラメータに相当する。以下、必要に応じてこれらを包括し、「特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]」とも称する。
【0058】
次に、上記式(6)の右辺第2項を左辺に移項して、以下の式(7)を得る。
【0059】
【数7】
【0060】
さらに、式(7)の左辺の「vq1−ωreφa1」及び「vq2−ωreφa2」をそれぞれ「v´q1」及び「v´q2」に置き換えると、以下の式(8)が得られる。
【0061】
【数8】
【0062】
なお、式(8)中のA(s)は式(7)の右辺の4次正方行列(4×4行列)に相当する。すなわち、行列A(s)は以下の式(9)で表される。
【0063】
【数9】
【0064】
さらに、式(8)の両辺に対して、左側から行列A(s)の逆行列であるA-1(s)を乗算すると、以下の式(10)が得られる。
【0065】
【数10】
【0066】
ここで、A-1(s)は以下の式(11)により表すことができる。
【数11】
【0067】
式(11)中の「detA」は、A(s)の行列式を意味する。また、右辺の行列のi行j列成分[bij]は行列A(s)の余因子である。なお、行列A(s)の余因子とは、行列A(s)からそのi行j列成分を除いた成分からできる小行列式に(−1)i+jを乗じたものである。
【0068】
ここで、式(9)で定められた行列A(s)は4次の正方行列であり、少なくとも全ての対角成分に演算子sの1次の項が含まれている。このため、行列式detAは演算子sに関する4次の多項式となる。具体的に、行列式detAは、以下の式(12)のように表すことができる。
【0069】
【数12】
【0070】
式(12)中の係数δ4、δ3、δ2、δ1、及びδ0は何れも、特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]及び電気角速度ωreを用いて表すことができる。より詳細には、係数δ4、δ3、δ2、δ1、及びδ0は、以下の式(13)のように定まる。
【0071】
【数13】
【0072】
さらに、上記式(11)の右辺の余因子[bij]は、4次正方行列である行列A(s)の小行列式(すなわち、3次正方行列の行列式)で表されるため、演算子sに関する3次以下の多項式となる。具体的に、余因子[bij]は、以下の式(14)により表すことができる。
【0073】
【数14】
【0074】
さらに、式中の係数c3ij、c2ij、c1ij、及びc0ijは、特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]及び電気角速度ωreを用いて表すことができる。より詳細には、以下の式(15)〜式(18)により表すことができる。
【0075】
【数15】
【0076】
【数16】
【0077】
【数17】
【0078】
【数18】
【0079】
ここで、式(12)に示されたように、detAは演算子sに関する4次の多項式であるため、その逆数である1/detAは、分母に演算子sの2次以上の項(特に4次の項)を含むこととなる。したがって、式(10)で表される電圧から電流までの伝達特性において、1/detAが振動要素として作用する。すなわち、三相二重巻線型永久磁石同期モータであるモータ101の電圧から電流までの特性は振動系となる。
【0080】
さらに、モータ101における系統1と系統2の間においてd軸とq軸が相互に干渉する。具体的に、式(10)及び式(11)を用いると、第1d軸電流id1、第1q軸電流iq1、第2d軸電流id2、及び第2q軸電流iq2を計算すると、以下の式(19)のように表される。
【0081】
【数19】
【0082】
式(19)から理解されるように、第1d軸電圧vd1(第1基本d軸電圧指令値v*d1)が変化した場合には、第1d軸電流id1だけでなく、第1q軸電流iq1、第2d軸電流id2、及び第2q軸電流iq2にも逆起電圧による変化が生じる。また、第1q軸電圧vq1(第1基本q軸電圧指令値v*q1)が変化した場合には、第1q軸電流iq1だけでなく、第1d軸電流id1、第2d軸電流id2、及び第2q軸電流iq2にも逆起電圧による変化が生じる。さらに、第2d軸電圧vd2(第2基本d軸電圧指令値v*d2)が変化した場合には、第2d軸電流id2だけでなく、第1d軸電流id1、第1q軸電流iq1、及び第2q軸電流iq2にも逆起電圧による変化が生じる。また、第2q軸電圧vq2(第2基本q軸電圧指令値v*q2)が変化した場合には、第2q軸電流iq2だけでなく、第1d軸電流id1、第1q軸電流iq1、及び第2d軸電流id2にも逆起電圧による変化が生じる。
【0083】
特に、第2d軸電流id2及び第2q軸電流iq2における第1基本d軸電圧指令値v*d1の変化に対する各振動成分は、それぞれ、式(19)の第3式と第4式により「b31/detA」及び「b41/detA」となる。また、第1d軸電流id1及び第1q軸電流iq1における第2基本d軸電圧指令値v*d2の変化に対する各振動成分は、それぞれ、式(19)の第1式と第2式により「b13/detA」及び「b23/detA」となる。
【0084】
さらに、第2d軸電流id2及び第2q軸電流iq2における第1基本q軸電圧指令値v*q1の変化に対する各振動成分は、それぞれ、式(19)の第3式と第4式により「b32/detA」及び「b42/detA」となる。また、第1d軸電流id1及び第1q軸電流iq1における第2基本q軸電圧指令値v*q2の変化に対する各振動成分は、それぞれ、式(19)の第1式と第2式により「b14/detA」及び「b24/detA」となる。
【0085】
したがって、系統1及び系統2の一方において、d軸又はq軸の電圧指令値に変化が生じると、他方のd軸及びq軸の電流に振動成分が生じることとなる。このため、各系統1、2において個別に電流振動成分を除去するだけでは、系統間及びd軸−q軸間に跨って生じる電流振動成分まで除去することはできない。したがって、本実施形態では、電圧指令値補正部113は、基本dq軸電圧指令値(v*xn)に対して、このような系統間及びd−q軸間に跨る電流振動成分を除去し得る電圧指令値補正フィルタCmmf(s)を施して、補正dq軸電圧指令値(v**xn)を求める。
【0086】
すなわち、補正dq軸電圧指令値(v**xn)は、Cmmf(s)・(v*xn)を演算することで定まることとなる。そして、式(10)における右辺の電圧部分に補正dq軸電圧指令値(v**xn)を当てはめることで、以下の式(20)が得られる。
【0087】
【数20】
【0088】
したがって、電流振動成分を除去する観点から、逆行列A-1(s)に含まれる1/detAの分母における演算子sの2次以上の項を打ち消すように電圧指令値補正フィルタCmmf(s)を設定する。
【0089】
具体的には、電圧指令値補正フィルタCmmf(s)は以下の式(21)のように定めることができる。
【0090】
【数21】
【0091】
ここで、式(21)中のτmは、d軸電流及びq軸電流の規範応答時の時定数である。また、δ0は、特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]及び電気角速度ωreを用いて表すことができる。より詳細には、以下の式(22)で定まる定数である。
【0092】
【数22】
【0093】
さらに、式(21)中の右辺の行列のi行j列成分[cij]は、特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]及び電気角速度ωreを用いて、以下の式(23)〜式(26)のように定まる。
【0094】
【数23】
【0095】
【数24】
【0096】
【数25】
【0097】
【数26】
【0098】
上記式(21)〜式(26)により定められる電圧指令値補正フィルタCmmf(s)を基本dq軸電圧指令値(v*xn)に施して得られる補正dq軸電圧指令値(v**xn)を、最終的な電圧指令値として用いることで、モータ101の電圧から電流までの特性における振動成分をより確実に除去することができる。
【0099】
次に、本実施形態の回転電機制御方法を実行した場合(実施例)の作用効果について、比較例1、2と対比しつつ説明する。特に、実施例、比較例1、及び比較例2のシステムの所定の条件下でシミュレーションを行った結果について説明する。
【0100】
(シミュレーション条件)
実施例、比較例1、及び比較例2の何れに対しても、同一のトルク指令値T*(>0)をステップで印加した。
【0101】
(比較例1)
電圧指令値補正部113を備えていない以外はモータ制御システム100と同じ構成のシステム(以下では、「比較例システムref1」と称する)を用意してシミュレーションを行った。
【0102】
図3には、比較例1のシミュレーション結果を示す。図示のように、時刻t0では、トルク指令値T*がステップで印加されることに伴い、基本dq軸電圧指令値(v*xn)がステップ状に変化した。そして、この時刻t0以降において、d軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)は振動した。さらに、時刻t1及び時刻t2を経てd軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)は振動しながら定常値に収束へ向かい、時刻t3においてほぼ定常値に収束した。
【0103】
このように、電流振動を抑制するための構成を備えていない比較例システムref1では、制御対象であるモータ101の共振特性及び系統1,2間を含むd軸とq軸の相互干渉特性により、d軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)が振動することとなる。
【0104】
(比較例2)
電圧指令値補正部113に代えて、基本dq軸電圧指令値(v*xn)をローパスフィルタ処理する構成を備えたシステム(以下では、「比較例システムref2」と称する)を用意してシミュレーションを行った。
【0105】
図4には、比較例2のシミュレーション結果を示す。図示のように、比較例システムref2では、印加されたステップ状のトルク指令値T*に対して、基本dq軸電圧指令値(v*xn)をローパスフィルタ処理した電圧指令値は、当該ローパスフィルタに定められる時定数に応じたプロフィールで変化した。これに応じて、d軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)はほぼ振動することなく、漸次、定常値に近づいた。
【0106】
このように、基本dq軸電圧指令値(v*xn)をローパスフィルタ処理する比較例システムref2では、d軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)の振動を抑制することができる。一方で、トルク指令値T*の印加に対してd軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)の変化が比較的緩慢となる。すなわち、制御応答性が低くなる。
【0107】
(実施例)
本実施形態で説明したモータ制御システム100を用意してシミュレーションを行った。
【0108】
図5には、実施例のシミュレーション結果を示す。図示のように、実施例では、印加されたステップ状のトルク指令値T*に対して、補正dq軸電圧指令値(v**xn)が比較例2よりも応答性の高いプロフィールで変化した。これに応じて、d軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)はほぼ振動することなく、比較例2よりも早く定常値に収束した。
【0109】
このように、補正dq軸電圧指令値(v**xn)を用いるモータ制御システム100では、d軸電流(idn)及びq軸電流(iqn)の振動を抑制しつつ、ローパスフィルタ処理を行う比較例システムref2に比べて制御応答性が高くなる。すなわち、実施例のモータ制御システム100では、電流振動を好適に抑制しつつ高い制御応答性が確保されることとなる。
【0110】
以上説明した本実施形態の回転電機制御方法の構成及びそれによる作用効果について説明する。
【0111】
本実施形態では、固定子に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機としてのモータ101において、複数の多相巻線に設定された電圧指令値(三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn))に応じた電圧を供給することでモータ101の作動を制御する回転電機制御方法が提供される。
【0112】
この回転電機制御方法では、外部負荷の要求に基づくトルク指令値T*及びモータ101の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータ(電気角度θre)に基づいて、第1の多相巻線に対する電圧指令値のd軸成分である第1d軸電圧指令値(第1基本d軸電圧指令値v*d1)及びq軸成分である第1q軸電圧指令値(第1基本q軸電圧指令値v*q1)と、第2の多相巻線に対する電圧指令値のd軸成分である第2d軸電圧指令値(第2基本d軸電圧指令値v*d2)及びq軸成分である第2q軸電圧指令値(第2基本q軸電圧指令値v*q2)と、を算出する。
【0113】
そして、第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流id2及びq軸成分である第2q軸電流iq2における第1基本d軸電圧指令値v*d1の変化に対する各振動成分(式(19)の第3式第1項と第4式第1項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第2基本d軸電圧指令値v*d2と第2基本q軸電圧指令値v*q2を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第3列と第4列)。
【0114】
さらに、第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流id1及びq軸成分である第1q軸電流iq1における第2基本d軸電圧指令値v*d2の変化に対する各振動成分(式(19)の第1式第3項と第2式第3項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第1基本d軸電圧指令値v*d1と第1基本q軸電圧指令値v*q1を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第1列と第2列)。
【0115】
これにより、第1基本d軸電圧指令値v*d1の変化に起因する第2d軸電流id2及び第2q軸電流iq2の振動成分、並びに第2基本d軸電圧指令値v*d2の変化に起因する第1d軸電流id1及び第1q軸電流iq1の振動成分を抑制することができる。すなわち、多重多相回転電機として構成されるモータ101において、一の系統において電圧指令値のd軸成分が変化した際に当該変化に起因して同じ系統で生じる電流のq軸成分の振動を抑制して、他の系統の電流のd軸成分及びq軸成分への干渉をより確実に抑制することができる。
【0116】
さらに、本実施形態の回転電機制御方法では、第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流id2及びq軸成分である第2q軸電流iq2における第1基本q軸電圧指令値v*q1の変化に対する各振動成分(式(19)の第3式第2項と第4式第2項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第2基本d軸電圧指令値v*d2と第2基本q軸電圧指令値v*q2を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第3列と第4列)。また、第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流id1及びq軸成分である第1q軸電流iq1における第2基本q軸電圧指令値v*q2の変化に対する各振動成分(式(19)の第1式第4項と第2式第4項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第1基本d軸電圧指令値v*d1と第1基本q軸電圧指令値v*q1を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第1列と第2列)。
【0117】
これにより、第1基本q軸電圧指令値v*q1の変化に起因する第2d軸電流id2及び第2q軸電流iq2の振動成分、並びに第2基本q軸電圧指令値v*q2の変化に起因する第1d軸電流id1及び第1q軸電流iq1の振動成分を抑制することができる。すなわち、多重多相回転電機として構成されるモータ101において、一の系統において電圧指令値のq軸成分が変化した際に当該変化に起因して同じ系統で生じる電流のd軸成分の振動を抑制して、他の系統の電流のd軸成分及びq軸成分への干渉をより確実に抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態では、第2基本d軸電圧指令値v*d2及び第2基本q軸電圧指令値v*q2の補正を、第1基本d軸電圧指令値v*d1をフィルタリング処理した信号(式(21)中の(1/τms+1))、電気角度θre、及びモータ101の特性を表す特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]を用いて実行する(式(21)〜式(26)参照)。さらに、第1基本d軸電圧指令値v*d1及び第1基本q軸電圧指令値v*q1の補正を、第2基本d軸電圧指令値v*d2をフィルタリング処理した信号(式(21)中の(1/τms+1))、電気角度θre、及びモータ101の特性を表す特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]を用いて実行する(式(21)〜式(26)参照)。
【0119】
これにより、モータ101の仕様などにより定まる特性に応じて、同じ系統のd−q軸間及び異なる系統間を跨って生じ得る電流振動の抑制効果を実現することができる。すなわち、本実施形態の回転電機制御方法を適用可能なモータの仕様を拡大し、その汎用性をより向上させることができる。なお、適宜演算の簡素化などの目的に応じて、第2基本d軸電圧指令値v*d2及び第2基本q軸電圧指令値v*q2の補正を、第1基本d軸電圧指令値v*d1をフィルタリング処理した信号と回転状態パラメータである電気角度θre及び特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]の内のいずれか一方とにより実行しても良い。また、第1基本d軸電圧指令値v*d1及び第1基本q軸電圧指令値v*q1の補正を、第2基本d軸電圧指令値v*d2をフィルタリング処理した信号と回転状態パラメータである電気角度θre及び特性パラメータ[Lxn,L’xn,Mx,M’x,Ran,φan]の内のいずれか一方とにより実行しても良い。
【0120】
さらに、本実施形態では、上記回転電機制御方法が実行される回転電機制御システムとしてのモータ制御システム100が提供される。
【0121】
モータ制御システム100は、固定子に複数の多相巻線が設けられた多重多相回転電機としてのモータ101において、複数の多相巻線に設定された電圧指令値(三相電圧指令値(v*un,v*vn,v*wn))に応じた電圧を供給することでモータ101の作動を制御する。
【0122】
特に、モータ制御システム100は、トルク指令値T*及びモータ101の回転子の回転状態を表す回転状態パラメータ(電気角度θre)に基づいて、第1の多相巻線に対する電圧指令値(基本dq軸電圧指令値(v*xn))のd軸成分である第1d軸電圧指令値(第1基本d軸電圧指令値v*d1)及びq軸成分である第1q軸電圧指令値(第1基本q軸電圧指令値v*q1)と、第2の多相巻線に対する電圧指令値のd軸成分である第2d軸電圧指令値(第2基本d軸電圧指令値v*d2)及びq軸成分である第2q軸電圧指令値(第2基本q軸電圧指令値v*q2)と、を算出する電圧指令値算出部112を有する。また、モータ制御システム100は、電圧指令値算出部112で算出される前記電圧指令値を補正する電圧指令値補正部113を有する。
【0123】
そして、電圧指令値補正部113は、第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流id2及びq軸成分である第2q軸電流iq2における第1基本d軸電圧指令値v*d1の変化に対する各振動成分(式(19)の第3式第1項と第4式第1項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第2基本d軸電圧指令値v*d2と第2基本q軸電圧指令値v*q2を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第3列と第4列)。
【0124】
さらに、電圧指令値補正部113は、第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流id1及びq軸成分である第1q軸電流iq1における第2基本d軸電圧指令値v*d2の変化に対する各振動成分(式(19)の第1式第3項と第2式第3項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第1基本d軸電圧指令値v*d1と第1基本q軸電圧指令値v*q1を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第1列と第2列)。
【0125】
また、電圧指令値補正部113は、第2の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第2d軸電流id2及びq軸成分である第2q軸電流iq2における第1基本q軸電圧指令値v*q1の変化に対する各振動成分(式(19)の第3式第2項と第4式第2項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第2基本d軸電圧指令値v*d2と第2基本q軸電圧指令値v*q2を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第3列と第4列)。
【0126】
さらに、電圧指令値補正部113は、第1の多相巻線に供給される電流のd軸成分である第1d軸電流id1及びq軸成分である第1q軸電流iq1における第2基本q軸電圧指令値v*q2の変化に対する各振動成分(式(19)の第1式第4項と第2式第4項参照)を算出し、算出した各振動成分に基づいて第1基本d軸電圧指令値v*d1と第1基本q軸電圧指令値v*q1を補正する(式(20)の右辺の列ベクトルの第1列と第2列)。
【0127】
これにより、本実施形態の回転電機制御方法を実行するための好適なシステム構成が実現される。
【0128】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0129】
例えば、上記実施形態では、モータ101の回転子の種類が永久磁石型回転子である場合を前提としている。しかしながら、これに限られず、モータ101の回転子として、巻線型回転子、又は籠型回転子などの他の種類の回転子を採用しても良い。
【0130】
また、本実施形態のモータ制御システム100では、電圧指令値の設定に関してフィードフォワード構成をとることを前提とし、電圧指令値補正部113を採用する例について説明した。しかしながら、これに限らず、モータ101の作動状態を表す各検出値(電流、電力、又はトルクなど)を所定のフィードバック制御器にフィードバックさせて電圧指令値(基本電圧指令値)を出力するシステムに、電圧指令値補正部113を採用しても良い。
【0131】
なお、フィードバック構成をとるシステムにおいては、フィードバック制御器が出力する電圧指令値から電流への応答性は当該フィードバック制御器の設計応答時定数に応じて変わってくる。この点を考慮し、フィードバック構成をとるシステムに電圧指令値補正部113を採用する場合において、システムにおける制御応答性の低下を抑制するための手段を採用することが好ましい。
【0132】
このような手段の一例としては、式(21)の時定数τmを上記設計応答時定数よりも十分に小さい値とすることが挙げられる。また、この手段の他の例としては、式(21)における規範応答フィルタ部(1/(τm+1))に代えて、フィードバック制御器の電圧指令値から電流検出値までの伝達特性をプロパー(特に厳密にプロパー)にすることが挙げられる。
【0133】
また、上記各実施形態では、系統数が2つである場合について説明したが、適宜、系統数が3以上のシステムにおいて、任意の2つの系統間に本発明の構成に係る電圧指令値の補正を適用しても良い。
【符号の説明】
【0134】
100 モータ制御システム
101 モータ
102 PWM変換器
103 インバータ
104 直流電源
105 電流センサ
106 A/D変換器
107 磁極位置検出器
108 パルスカウンタ
109 3相/dq交流座標変換部
110 角速度演算部
111 先読み補償部
112 電圧指令値算出部
113 電圧指令値補正部
114 dq/3相交流座標変換器
図1
図2
図3
図4
図5