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特開2021-70216金型の温度調整装置、射出成形装置、及び射出成形品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-70216(P2021-70216A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】金型の温度調整装置、射出成形装置、及び射出成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/73 20060101AFI20210409BHJP
【FI】
   B29C45/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-197754(P2019-197754)
(22)【出願日】2019年10月30日
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 隆正
(72)【発明者】
【氏名】平石 正和
(72)【発明者】
【氏名】八色 隆
(72)【発明者】
【氏名】榎本 武弘
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AP05
4F202AR06
4F202AR14
4F202CA11
4F202CB01
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN14
4F202CN15
4F202CN22
(57)【要約】
【課題】射出成形用金型の温度プロファイルを多様化することで、金型温度を精密に調整する。
【解決手段】金型の温度調整装置1は、射出成形用の金型10の内部に互いに独立して設けられた第1通路P及び第2通路Qに高温媒体Hを供給する高温媒体供給装置20と、第1通路P及び第2通路Qに低温媒体Cを供給する低温媒体供給装置30と、第1通路Pに流れる媒体として高温媒体Hと低温媒体Cとを選択的に切り替え、且つ、第2通路Qに流れる媒体として高温媒体Hと低温媒体Cとを選択的に切り替える、切り替え機構40と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用の金型の内部に互いに独立して設けられた第1通路及び第2通路に高温媒体を供給する高温媒体供給装置と、
前記第1通路及び前記第2通路に低温媒体を供給する低温媒体供給装置と、
前記第1通路に流れる媒体として前記高温媒体と前記低温媒体とを選択的に切り替え、且つ、前記第2通路に流れる媒体として該高温媒体と該低温媒体とを選択的に切り替える、切り替え機構と、を備える、金型の温度調整装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1通路及び前記第2通路は、互いに隣合う状態で同一方向に延びる、金型の温度調整装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記切り替え機構は、前記第1通路における媒体の流れ方向及び前記第2通路における媒体の流れ方向それぞれを、選択的に切り替える、金型の温度調整装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1通路を流れる媒体の流量及び前記第2通路を流れる媒体の流量それぞれを調整する、流量調整機構をさらに備える、金型の温度調整装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記金型の温度を測定する金型温度センサをさらに備え、
前記金型温度センサが測定した温度に基づいて、前記金型の温度が所定の値になるように、前記切り替え機構及び前記流量調整機構を制御する、第1制御装置をさらに備える、金型の温度調整装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記第1通路及び前記第2通路の少なくともいずれか一方の入口側及び出口側における媒体の温度を測定する媒体温度センサをさらに備え、
前記媒体温度センサが測定した媒体の温度に基づいて、前記入口側における媒体温度と前記出口側における媒体温度のとの差が小さくなるように、前記切り替え機構及び前記流量調整機構を制御する、第2制御装置をさらに備える、金型の温度調整装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の金型の温度調整装置によって温度を調整しながら射出成形を行う、射出成形装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記金型の内部に前記第1通路及び前記第2通路に対して独立した第3通路をさらに備え、
前記第1通路及び前記第2通路は、前記金型の転写面に沿って、配列されており、
前記金型の内部において、前記第1通路及び前記第2通路それぞれと前記転写面との間には、前記第3通路が設けられており、
前記第1通路には、前記高温媒体及び前記低温媒体のうちのいずれか一方が流れており、
前記第2通路には、前記高温媒体及び前記低温媒体のうちのいずれか他方が流れており、
前記第3通路には、前記高温媒体及び前記低温媒体のいずれも流れない、射出成形装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の射出成形装置によって射出成形を行う、射出成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型の温度調整装置、射出成形装置、及び射出成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形の方法として、ヒートアンドクール法が知られている。ヒートアンドクール法では、樹脂等の材料を金型へ押し込む前に、金型を加熱して温度を上げる。これにより、材料の流動性が高まり、成形品にウエルドラインが目立たない等、成形品の外観品質が向上する。また、金型へ材料を押し込んだ直後に、金型を冷却する。これにより、成形品の冷却固化が促進される。
【0003】
ヒートアンドクール法に関して、種々の発明が開示されている。例えば、特許文献1に係る射出成形システムでは、金型の内部に設けられた1つの通路に媒体を流すことによって、金型の加熱及び冷却が行われる。すなわち、当該通路に、高温媒体供給装置から供給された高温媒体が流れることで、金型の加熱が行われる。一方、当該通路に、低温媒体供給装置から供給された低温媒体が流れることで、金型の冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レンズ等の光学デバイスを射出成形する場合、成形品には高い形状精度が要求される。したがって、射出成形時、金型温度を精密に調整する必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1に係る射出成形システムでは、金型の内部に、高温媒体及び低温媒体の両方を共存させることができない。すなわち、金型の温度プロファイルを高温/低温の2段階しか設定することができず、金型温度の微妙な調整を行うことが困難であった。
【0007】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、射出成形用金型の温度プロファイルを多様化することで、金型温度を精密に調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る金型の温度調整装置は、射出成形用の金型の内部に互いに独立して設けられた第1通路及び第2通路に高温媒体を供給する高温媒体供給装置と、上記第1通路及び上記第2通路に低温媒体を供給する低温媒体供給装置と、上記第1通路に流れる媒体として上記高温媒体と上記低温媒体とを選択的に切り替え、且つ、上記第2通路に流れる媒体として上記高温媒体と上記低温媒体とを選択的に切り替える、切り替え機構と、を備える。
【0009】
本開示に係る射出成形装置は、上記金型の温度調整装置によって温度を調整しながら射出成形を行う。
【0010】
本開示に係る射出成形品の製造方法は、上記射出成形装置によって成形される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、射出成形用金型の温度プロファイルを多様化することで、金型温度を精密に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態に係る射出成形用の金型を模式的に示す断面図である。
図2図2は、金型の温度調整装置を模式的に示す図である。
図3A図3Aは、金型の温調パターン1(高温−高温)を示す図である。
図3B図3Bは、金型の温調パターン2(低温−低温)を示す図である。
図3C図3Cは、金型の温調パターン3(高温−低温)を示す図である。
図3D図3Dは、金型の温調パターン4(低温−高温)を示す図である。
図3E図3Eは、金型の温調パターン5(高温−高温:対向)を示す図である。
図3F図3Fは、金型の温調パターン6(低温−低温:対向)を示す図である。
図4A図4Aは、第1通路及び第2通路の配置パターン1(転写面に沿って配列)を示す図である。
図4B図4Bは、第1通路及び第2通路の配置パターン2(転写面に直交する方向に配列)を示す図である。
図4C図4Cは、第1通路及び第2通路の配置パターン3(千鳥配置)を示す図である。
図4D図4Dは、第1通路及び第2通路の配置パターン4(媒体を流さない第3通路をさらに配置)を示す図である。
図5図5は、金型の温度プロファイルを示すグラフである。
図6図6は、実施例3において、第1通路及び第2通路における媒体の流れ方向を示す図である。
図7図7は、従来の金型の温度調整装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示に至った経緯)
本開示を説明する前に、本開示に至った経緯を説明する。
【0014】
図7は、従来の金型の温度調整装置100を模式的に示す。金型110の内部には、通路Rが1系統のみ設けられる。高温媒体供給装置120は、通路Rに高温媒体Hを供給する。低温媒体供給装置130は、通路Rに低温媒体Cを供給する。切り替えバルブ150,150は、通路Rの入口側R1及び出口側R2に設けられる。切り替えバルブ150,150は、通路Rを流れる媒体として、高温媒体Hと低温媒体Cとを選択的に切り替える。通路Rには、高温媒体Hと低温媒体Cのいずれか一方しか流れない。すなわち、金型110の内部において、高温媒体H及び低温媒体Cは、共存しない。
【0015】
かかる構成によれば、金型の温度プロファイルは、高温/低温の2段階しか設定することができない。すなわち、高温と低温との間の中間温度を設定することができず、金型温度の微妙な調整を行うことが困難である。
【0016】
ここで、通路Rを流れる媒体の流量を調整することで、金型温度の微妙な調整を行うことが考えられる。しかし、金型110の冷却工程において、小流量の低温媒体Cを通路Rに流した場合、小流量の低温媒体Cと金型110との熱交換によって、低温媒体Cの温度は、入口側R1から出口側R2にかけて次第に高くなる。すなわち、出口側R2における金型110の冷却量は、入口側R1における金型110の冷却量よりも、小さくなる。したがって、入口側R1と出口側R2との間で、金型温度のバラツキが発生してしまう。
【0017】
また、金型110の内部には通路が1系統(通路R)しか設けられないので、金型110の内部に流せる高温媒体Hの流量には、限界がある。したがって、金型110の加熱工程において、金型110を昇温するのに時間がかかってしまい、成形タクトを短縮することができない。
【0018】
本願発明者らは、上記諸課題を解決するために、鋭意検討した結果、金型の内部に2系統以上の通路を設け、当該複数の通路それぞれに流す媒体として、高温媒体及び低温媒体のいずれかを、通路ごとに適宜選択する構成を、想到した。
【0019】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0020】
(本開示の実施形態の構成)
図1は、本開示の実施形態に係る射出成形用の金型を模式的に示す断面図である。図1に示すように、金型10は、固定側金型11及び可動側金型14で構成される。可動側金型14は、射出成形装置における射出部(図示せず)に連結される。可動側金型14は、金型10の開閉時において、固定側金型11に対して相対移動する。
【0021】
固定側金型11は、型板12と、入れ子13で構成される。具体的には、型板12に形成された凹部に、入れ子13が嵌め込まれる。同様に、可動側金型14は、型板15と、入れ子16で構成される。具体的には、型板15に形成された凹部に、入れ子16が嵌め込まれる。
【0022】
固定側金型11と可動側金型14とを合わせたときに形成される空間は、射出成形品の成形領域17である。成形領域17には、加熱溶融した材料が射出部から押し込まれる。成形領域17に押し込まれた材料は、冷却・固化して成形品となる。なお、固定側金型11及び可動側金型14それぞれにおいて、成形領域17に臨む面18は、転写面である(以下、「転写面18」という)。なお、図1に示すように、転写面18は、曲面である。
【0023】
成形領域17へ材料を押し込む前に、金型10を加熱して温度を上げる。これにより、ウエルドラインが目立たない等、成形品の外観品質が向上する。また、成形領域17へ材料を押し込んだ直後に、金型10を冷却する。これにより、成形品の冷却固化が促進される。
【0024】
上述した金型10の加熱及び冷却は、金型10の内部に設けられた通路に媒体が流れることによって行われる。詳細は後述するが、固定側入れ子13及び可動側入れ子16それぞれの内部には、高温媒体H及び低温媒体Cを流すための互いに独立した第1通路P及び第2通路Qが設けられる。第1通路P及び第2通路Qそれぞれに、高温媒体H及び低温媒体Cのいずれかが流れることによって、金型10(具体的には各入れ子13,16)の加熱及び冷却が行われ、金型10(各入れ子13,16)の温度が調整される。
【0025】
図2は、金型の温度調整装置1を模式的に示す。温度調整装置1は、金型10を加熱及び冷却することによって、金型10の温度を調整する。具体的には、温度調整装置1は、金型10における固定側入れ子13及び可動側入れ子16を加熱及び冷却する。ここで、固定側入れ子13及び可動側入れ子16の温度調整方法は、互いに同じである。したがって、以下、固定側入れ子13の温度調整方法を例示することとして、可動側入れ子16の温度調整方法の説明を省略する。また、固定側入れ子13のことを単に「金型10」という。
【0026】
金型10の内部には、第1通路P及び第2通路Qが設けられる。第1通路P及び第2通路Qは、互いに独立している。また、第1通路P及び第2通路Qは、互いに隣合う状態で同一方向に延びる。第1通路P及び第2通路Qそれぞれには、高温媒体H(図1において実線で図示)及び低温媒体C(図1において点線で図示)のいずれかが流れる。これにより、金型10の加熱及び冷却が行われて、金型10の温度が調整される。
【0027】
温度調整装置1は、高温媒体供給装置20を備える。高温媒体供給装置20は、第1通路P及び第2通路Qに高温媒体Hを供給する。また、温度調整装置1は、低温媒体供給装置30を備える。低温媒体供給装置30は、第1通路P及び第2通路Qに低温媒体C供給する。
【0028】
なお、高温媒体供給装置20は、高温媒体Hの媒体温度自体を調整することができる。同様に、低温媒体供給装置30は、低温媒体Cの媒体温度自体を調整することができる。また、高温媒体H及び低温媒体Cの各温度は特に限定されず、低温媒体Cの温度が高温媒体Hの温度よりも低ければよい。
【0029】
温度調整装置1は、切り替え機構としての切り替えバルブ40を備える。切り替えバルブ40は、第1通路Pに流れる媒体として高温媒体Hと低温媒体Cとを選択的に切り替え、且つ、第2通路Qに流れる媒体として高温媒体Hと低温媒体Cとを選択的に切り替える。なお、図1に示す切り替えバルブ40は、第1通路Pに流れる媒体として高温媒体Hを、第2通路Qに流れる媒体として低温媒体Cを、選択した状態が例示されている。
【0030】
また、切り替えバルブ40は、第1通路Pにおける媒体の流れ方向及び第2通路Qにおける媒体の流れ方向それぞれを、選択的に切り替える。
【0031】
温度調整装置1は、流量調整機構41を備える。流量調整機構41は、第1通路Pを流れる媒体の流量及び第2通路Qを流れる媒体の流量それぞれを調整する。流量調整機構41は、第1通路Pを流れる媒体の流量及び第2通路Qを流れる媒体の流量それぞれをゼロにすることもできる。なお、本実施形態において、流量調整機構41は、図2に示すように、切り替えバルブ40に設けられる。
【0032】
温度調整装置1は、金型温度センサ60を備える。金型温度センサ60は、金型10の温度を測定する。温度調整装置1は、制御装置70を備える。制御装置70は、第1制御装置71と、第2制御装置72と、を有する。第1制御装置71は、金型温度センサ60が測定した温度に基づいて、金型10の温度が所定の値になるように、切り替えバルブ40及び流量調整機構41を制御する。また、第1制御装置71は、金型温度センサ60が測定した温度に基づいて、金型10の温度が上記所定の値になるように、高温媒体供給装置20及び低温媒体供給装置30を制御する。
【0033】
温度調整装置1は、4つの媒体温度センサ61,61,…を備える。媒体温度センサ61は、第1通路Pの入口側P1及び出口側P2における媒体の温度を測定する、また、媒体温度センサ61は、第2通路Qの入口側Q1及び出口側Q2における媒体の温度を測定する。
【0034】
第2制御装置72は、媒体温度センサ61が測定した媒体温度に基づいて、第1通路Pにおける入口側P1の媒体温度と出口側P2の媒体温度との差ΔPが小さくなるように、切り替えバルブ40及び流量調整機構41を制御する。また、第2制御装置72は、第2通路Qにおける入口側Q1の媒体温度と出口側Q2の媒体温度との差ΔQが小さくなるように、切り替えバルブ40及び流量調整機構41を制御する。また、第2制御装置72は、媒体温度センサ61が測定した媒体温度に基づいて、上記温度差ΔP,ΔQが小さくなるように、高温媒体供給装置20及び低温媒体供給装置30を制御する。
【0035】
(金型の温調パターン)
温度調整装置1は、切り替えバルブ40によって、様々な、金型の温調パターンを実現することができる。
【0036】
図3Aは、金型の温調パターン1(高温−高温)を示す。図3Aに示すように、温調パターン1において、切り替えバルブ40は、第1通路Pを流れる媒体として高温媒体Hを、第2通路Qを流れる媒体として高温媒体Hを選択する。すなわち、第1通路P及び第2通路Qの両方に、高温媒体Hが流れる。
【0037】
図3Bは、金型の温調パターン2(低温−低温)を示す。図3Bに示すように、温調パターン2において、切り替えバルブ40は、第1通路Pを流れる媒体として低温媒体Cを、第2通路Qを流れる媒体として低温媒体Cを選択する。すなわち、第1通路P及び第2通路Qの両方に、低温媒体Cが流れる。
【0038】
図3Cは、金型の温調パターン3(高温−低温)を示す。図3Cに示すように、温調パターン3において、切り替えバルブ40は、第1通路Pを流れる媒体として高温媒体Hを、第2通路Qを流れる媒体として低温媒体Cを選択する。すなわち、第1通路P及び第2通路Qには、互いに異なる媒体が流れる。
図3Dは、金型の温調パターン4(低温−高温)を示す。図3Dに示すように、温調パターン4において、切り替えバルブ40は、第1通路Pを流れる媒体として低温媒体Cを、第2通路Qを流れる媒体として高温媒体Hを選択する。すなわち、温調パターン3と同様に、第1通路P及び第2通路Qには、互いに異なる媒体が流れる。
【0039】
図3Eは、金型の温調パターン5(高温−高温:対向)を示す。図3Eに示すように、温調パターン5において、切り替えバルブ40は、温調パターン1と同様に、第1通路Pを流れる媒体として高温媒体Hを、第2通路Qを流れる媒体として高温媒体Hを選択する。ここで、温調パターン5では、温調パターン1と異なり、切り替えバルブ40は、第2通路Qを流れる高温媒体Hの流れ方向を、第1通路Pを流れる高温媒体Hの流れ方向とは反対方向にする。すなわち、第1通路P及び第2通路Qには、互いに逆方向に高温媒体Hが流れる。
【0040】
図3Fは、金型の温調パターン6(低温−低温:対向)を示す。図3Fに示すように、温調パターン6において、切り替えバルブ40は、温調パターン2と同様に、第1通路Pを流れる媒体として低温媒体Cを、第2通路Qを流れる媒体として低温媒体Cを選択する。ここで、温調パターン6では、温調パターン2と異なり、切り替えバルブ40は、第2通路Qを流れる低温媒体Cの流れ方向を、第1通路Pを流れる低温媒体Cの流れ方向とは反対方向にする。すなわち、第1通路P及び第2通路Qには、互いに逆方向に低温媒体Cが流れる。
【0041】
温度調整装置1は、上記温調パターン1〜6以外にも、様々な、温調パターンを実現することができる。例えば、流量調整機構41によって、第1通路P及び第2通路Qを流れる媒体の流量をそれぞれ調整することで、温調パターンのバリエーションを増やすことができる。
【0042】
また、高温媒体供給装置20及び低温媒体供給装置30によって、高温媒体H及び低温媒体Cの媒体温度自体をそれぞれ調整することで、温調パターンのバリエーションをさらに増やすことができる。
【0043】
図4A図4Cに示すように、第1通路P及び第2通路Qの配置として、様々なパターンが考えられる。なお、図4A図4Cは、温調パターン3を適用した場合、すなわち、第1通路Pに高温媒体H、第2通路Qに低温媒体Cを流した場合を例示する。
【0044】
図4Aは、第1通路P及び第2通路Qの配置パターン1(転写面に沿って配列)示す。配置パターン1において、第1通路P及び第2通路Qは、金型10の転写面18に沿って(周方向に)配列する。
【0045】
図4Bは、第1通路P及び第2通路Qの配置パターン2(転写面に直交する方向に配列)を示す。図4Bに示すように、配置パターン2において、第1通路P及び第2通路Qは、金型10の転写面18に直交する方向に(径方向)配列する。
【0046】
図4Cは、第1通路P及び第2通路Qの配置パターン3(千鳥配置)を示す。図4Cに示すように、配置パターン3において、第1通路P及び第2通路Qは、転写面18に沿って(周方向に)、所謂千鳥配置される。転写面18に近い側には、通路Pが配置される。転写面18に沿う方向(周方向)に隣合う第1通路P,P同士の中間位置に、第2通路Qが配置される。第2通路Qは、転写面18に直交する方向(径方向)において、第1通路Pよりも転写面18から遠い側に位置する。
【0047】
図5は、金型の温度プロファイルを示す。横軸は時間、縦軸は金型温度を示す。最適な温度プロファイルは、材料の種類や成形品の形状等の条件によって異なる。したがって、温度調整装置1は、条件に応じて適宜最適な温度プロファイルを作成する必要がある。図5に示すaは、昇温時における金型の温度プロファイルである。図5に示すb〜dは、材料の押し込み直後の降温1の範囲における温度プロファイルである。降温1の範囲における温度プロファイルは、成形品の形状精度等に影響を与えるので重要である。温度調整装置1は、降温1の範囲において、複数の温度プロファイルb〜dを設定可能である。図5に示すeは、降温1の後の降温2の範囲における温度プロファイルである。降温2の範囲では、金型10の降温がほぼ終了し、温度がほぼ平衡している。
【0048】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、金型10の内部に設けられた通路を、第1通路P及び第2通路Qの2系統とし、切り替えバルブ40によって、各通路P,Qそれぞれを流れる媒体として、高温媒体Hと低温媒体Cとを選択的に切り替える。これにより、例えば温調パターン1〜6に例示するように、各通路P,Qを流れる媒体の組み合わせを自由に設定することができる。したがって、金型の温度プロファイルを多様化することができる。すなわち、温度プロファイルを高温/低温の2段階だけではなく、高温と低温との中間温度(温調パターン3,4)も含めた多段階に設定することができる。これにより、金型温度を精密に調整することができる。
【0049】
さらに、金型10の内部に通路が2系統(第1通路P及び第2通路Q)設けられることで、通路が1系統の場合に比べて、金型10の内部を流れる媒体の全体の流量を大きくすることができる。これにより、例えば温調パターン1を適用することで、第1通路P及び第2通路Qの両方に高温媒体Hが流れるので、加熱時における金型10の昇温速度を速くして、成形タクトを短縮することができる。
【0050】
第1通路P及び第2通路Qは、互いに隣合う状態で同一方向に延びるので、温調パターン3,4を適用した場合に、第1通路P及び第2通路Qを流れる高温媒体H及び低温媒体C同士の熱交換が促進されて、中間温度を得やすくなる。
【0051】
切り替えバルブ40によって、第1通路Pにおける媒体の流れ方向と第2通路Qにおける媒体の流れ方向とを、互いに逆向きにすることができる(温調パターン5,6)。これにより、第1通路Pにおける入口側P1と出口側P2との間の金型温度(媒体温度)の差と、第2通路Qにおける入口側Q1と出口側Q2との間の金型温度(媒体温度)の差が、互いに相殺される。したがって、金型温度のバラツキを抑制することができる。
【0052】
流量調整機構41によって、各通路P,Qを流れる媒体の流量を調整することで、温度プロファイルをより多様化することができる。また、流量調整機構41によって、各通路P,Qを流れる媒体の流量をゼロにすることで、各通路P,Qに媒体を流さないこともできる。
【0053】
さらに、高温媒体供給装置20及び低温媒体供給装置30によって、高温媒体H及び低温媒体Cの媒体温度自体を調整することで、温度プロファイルをさらに多様化することができる。
【0054】
金型温度センサ60が測定した温度に基づいて、金型10の温度が所定の値になるように、切り替えバルブ40及び流量調整機構41にフィードバックすることで、金型の温度プロファイルを安定させることができる。
【0055】
媒体温度センサ61が測定した媒体温度に基づいて、各通路P,Qにおける入口側P1,Q1と出口側P2,Q2との間の媒体温度の差が少なくなるように、切り替えバルブ40及び流量調整機構41にフィードバックすることで、金型温度のバラツキをより抑制することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0057】
上記実施形態では、金型10の内部に設けられた通路は、第1通路P及び第2通路Qの2系統であったが、これに限定されない。金型10の内部に設けられる通路は、2系統以上であれば、いくつあってもよい。通路の系統を多くすればするほど、金型の温度プロファイルをより多様化することができる。
【0058】
温調パターンは、上記1〜6に限定されない。例えば、第1通路Pに高温媒体Hを、第2通路Qに低温媒体Cを、互いに流れ方向を逆にして流してもよい。すなわち、切り替えバルブ40の切り替えによって、上記1〜6以外の様々な温調パターンが実現可能である。
【0059】
配置パターンは、上記1〜3に限定されない。例えば、後述する配置パターン4でもよい。
【0060】
媒体温度センサ61は、第1通路Pの入口側P1及び出口側P2、並びに第2通路Qの入口側Q1及び出口側Q2に、必ずしも計4つ設けらなくてもよい。媒体温度センサ61は、第1通路P及び第2通路Qの少なくともいずれか一方の入口側P1、Q1及び出口側P2,Q2に設けられればよい。なお、媒体温度センサ61は、必須の構成要素ではない。
【0061】
第1制御装置71及び第2制御装置72は、切り替えバルブ40及び流量調整機構41の両方を、必ずしも、制御する必要はなく、例えば、切り替えバルブ40及び流量調整機構41のうちのいずれか一方のみを制御してもよい。
【0062】
本開示に係る射出成形装置は、上記実施形態に係る金型の温度調整装置1によって温度を調整しながら射出成形を行う。
【0063】
ここで、図4Dは、上記射出成形装置の好適な実施形態として、第1通路P及び第2通路Qの配置パターン4(媒体を流さない第3通路19を配置)を示す。配置パターン4では、図4Dに示すように、上記射出成形装置において、金型10の内部に第1通路P及び第2通路Qに対して独立した第3通路19をさらに備え、第1通路P及び第2通路Qは、金型10の転写面18に沿って(周方向に)、配列されており、金型10の内部において、第1通路P及び第2通路Qそれぞれと転写面18との間には、第3通路19が設けられており、第1通路Pには、高温媒体H及び低温媒体Cのうちのいずれか一方が流れており、第2通路Qには、高温媒体H及び低温媒体Cのうちのいずれか他方が流れており、第3通路19には、高温媒体H及び低温媒体Cのいずれも流れない。
【0064】
具体的には、図4Dに示すように、転写面18に直交する方向(径方向)において、転写面18から遠い側に位置する第1通路Pに高温媒体Hを、同様に転写面18から遠い側に位置する第2通路Qに低温媒体Cを流す。第1通路P及び第2通路Qを転写面18に沿う方向(周方向)に配列する。そして、転写面18に直交する方向(径方向)において、第1通路P及び第2通路Qよりも、転写面18に近い側に、第3通路19を設ける。ここで、第3通路19には、高温媒体H及び低温媒体Cのいずれも流さない。具体的には、流量調整機構41によって、第3通路19を流れる媒体の流量をゼロにする。すなわち、転写面18と第1通路P及び第2通路Qとの間に空気の断熱層が形成される。これにより、転写面18の近傍において、第3通路19における互いに隣合う部分同士の間で、高温と低温とが混ざり合うので、転写面18の温度を、中間温度に近づけることができる。なお、高温媒体供給装置20及び低温媒体供給装置30から第3通路19に、高温媒体H及び低温媒体Cを流すこと自体は可能である。しかし、上記構成では、第3通路19に、高温媒体H及び低温媒体Cのいずれも、あえて流さないようにしている。
【0065】
本開示に係る射出成形品の製造方法は、上記射出成形装置によって射出成形を行う。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
本実施形態に係る温度調整装置1を用いて、金型10の温度調整を行った。具体的には、配置パターン1,2(図4A,4B参照)において、第1通路Pに高温媒体Hを、第2通路Qに低温媒体Cを流した。金型10の表面温度、具体的には転写面18の温度を赤外放射温度計で測定した結果を表1に示す。
【0067】
配置パターン1(図4A参照)では、第1通路P及び第2通路Qは、転写面18までの距離が互いに等しい。したがって、表1に示すように、第1通路Pを流れる高温媒体Hと第2通路Qを流れる低温媒体Cとの流量比が1:1の場合、高温150℃/低温100℃の組合せにおいて、金型10の表面温度(転写面18の温度)は125℃、高温150℃/低温80℃の組合せにおいて、金型10の表面温度(転写面18の温度)は115℃となり、ともに両者の平均温度となった。
【0068】
一方、配置パターン2(図4B参照)では、第1通路P(高温媒体H)は、第2通路Q(低温媒体C)よりも転写面18に近い。したがって、表1に示すように、高温媒体Hと低温媒体Cとの流量比を1:1にした場合、高温150℃/低温100℃の組合せにおいて、金型10の表面温度(転写面18の温度)は128℃、高温150℃/低温80℃の組合せにおいて、金型10の表面温度(転写面18の温度)は117℃となり、ともに両者の平均温度よりもやや高い温度となった。
【0069】
上記の通り、高温媒体H及び低温媒体Cの媒体温度、並びに高温媒体Hと低温媒体Cとの流量比を調整することによって、金型10の表面温度(転写面18の温度)を細かく調整することができることが分かった。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例2)
温度調整装置1による金型の昇温速度を測定した。初期金型温度を100℃とし、温度160℃の高温媒体Hを、複数の通路における全ての通路に流して、20秒後の金型の表面温度を測定した。比較例1として、従来の温度調整装置(1系統、図7参照)で加熱した金型の表面温度を、同様の条件で測定した。測定結果を表2に示す。
【0072】
表2に示すように、実施例2に係る金型の昇温速度は、比較例1に係る金型の昇温速度に比べて、大幅に速くなった。具体的には、実施例2に係る金型の20秒後の表面温度は、通路が2系統の場合、比較例1に係る金型の20秒後の表面温度に比べて、15℃高くなった。また、実施例2に係る金型の20秒後の表面温度は、通路が4系統の場合、比較例1に係る金型の20秒後の表面温度に比べて、25℃高くなった。通路が3系統の場合も同様の結果が得られた。
【0073】
【表2】
【0074】
(実施例3)
本実施形態に係る温度調整装置1と、従来の温度調整装置100とを比較するために、金型の表面温度のバラツキを測定した。実施例3において、外形200×100mmの金型入れ子に、図6に示すように、互いに隣合う状態で同一方向に延びる通路を2系統(第1通路P及び第2通路Q)設けた。比較例2において、外形200×100mmの金型入れ子に、通路を1系統(通路R)設けた(図7参照)。
【0075】
図6に示すように、実施例3において、温調パターン6を適用することで、第1通路Pを流れる低温媒体Cの流れ方向と、第2通路Qを流れる低温媒体Cの流れ方向とは、互いに逆方向となる。
【0076】
実施例3において、初期金型温度を150℃に設定し、金型10を冷却するために、120℃及び100℃の低温媒体Cを、第1通路P及び第2通路Qに、互いに逆方向に流した(図6参照)。また、低温媒体Cの流量は、100%、70%、及び40%とした。低温媒体Cを第1通路P及び第2通路Qに流し始めてから、30秒後における金型10の表面温度を測定した。なお、金型10の表面温度の測定位置は、図6に示すように、第1通路Pの入口側P1から出口側P2にかけて並ぶ、T1,T2,T3とした。
【0077】
比較例2においても、実施例3と同様の条件で、金型110の通路Rに低温媒体Cを流した。なお、金型110の表面温度の測定位置は、図6に示すように、通路Rの入口側R1から出口側R2にかけて並ぶ、T1,T2,T3とした。測定結果を表3に示す。
【0078】
表3に示すように、比較例1において、T1からT3にかけて、金型110の表面温度にバラツキが発生していることが分かる。さらに、低温媒体Cの媒体温度が低いほど、また低温媒体Cの流量%が小さいほど、金型110の表面温度のバラツキは、大きくなり、最大で12℃となった。
【0079】
一方、表3に示すように、実施例3では、比較例2に比べて、金型10の降温効率が高く、低温媒体Cの媒体温度と金型10の表面温度との差が小さい。また、低温媒体Cの流量%を40%と小さくしても、T1からT3にかけて、金型10の表面温度のバラツキは最大3℃であり、比較例2に比べて大幅に小さくなった。
【0080】
【表3】
【0081】
(実施例4)
本実施形態に係る温度調整装置1を備えた射出成形装置によって、厚肉レンズを射出成形した。厚肉レンズを射出成形するために、外形100×60mm、最大厚み20mmの自由曲面レンズ用の金型を用いた。材料には、シクロオレフィンポリマー(COP)を用いた。高温媒体Hの温度を160℃、低温側媒体Cの温度を100℃に設定して射出成形した。
【0082】
ヒートアンドクール法によって、成形タクトを5分として厚肉レンズを射出成形した後、超高精度3次元測定機(UA3P)によって、厚肉レンズの形状を測定した。その結果、形状精度のズレ量のピークトゥバレー(P−V値)は32umであった。比較のため、従来の温度調整装置100を備えた射出成形装置によって、同様の条件で、厚肉レンズを射出成形した。その結果、同じ成形タクトにおいて、厚肉レンズの形状は、P−V190umと大きく崩れた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示は、金型の温度調整装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0084】
P 第1通路
P1 入口側
P2 出口側
Q 第2通路
Q1 入口側
Q2 出口側
H 高温媒体
C 低温媒体
1 温度調整装置
10 金型
18 転写面
19 第3通路
20 高温媒体供給装置
30 低温媒体供給装置
40 切り替えバルブ(切り替え機構)
41 流量調整機構
60 金型温度センサ
61 媒体温度センサ
70 制御装置
71 第1制御装置
72 第2制御装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7