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特開2021-71287被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置、並びに原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-71287(P2021-71287A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置、並びに原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01Q 60/24 20100101AFI20210409BHJP
   G01Q 80/00 20100101ALI20210409BHJP
   G01N 19/00 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
   G01Q60/24
   G01Q80/00 121
   G01N19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-195736(P2019-195736)
(22)【出願日】2019年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】ザン ハン
(72)【発明者】
【氏名】王 洪欣
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大介
(72)【発明者】
【氏名】花方 信孝
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
(72)【発明者】
【氏名】ダ ボ
(57)【要約】
【課題】 迅速な細胞又は組織の力学特性の計測を可能とする、空間分解能の高い被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】 探針の先端形状に応じて定められた形状パラメータと、被測定細胞の変形量(d)と探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式を用いて、探針押圧位置での細胞の変形量(d)と探針の押圧力(F)の関係を計算するステップと、実測された細胞の変形量と探針の押圧力を対応付けた実測値と、前記モデル式により計算された計算値とを用いて、適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値となる形状パラメータを演算するステップと、最小値となる形状パラメータを用いて、被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方を作成するステップを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法であって、
被測定細胞の表面に原子間力顕微鏡の探針を押し当てた際に得られる、細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を、前記探針が接触した前記被測定細胞の測定位置座標と共に取得するステップであって、前記被測定細胞の測定位置座標は、前記被測定細胞の核の上層と前記核の周囲となる部位に配置された前記ステップと、
前記探針の先端形状に応じて定められた形状パラメータと、前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式を用いて、前記探針の押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を計算するステップと、
前記実測された細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値と、前記モデル式により計算された計算値とを用いて、適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値となる形状パラメータを演算するステップと、
前記最小値となる形状パラメータを用いて、前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方を作成するステップと、
作成された前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方に基づいて、前記被測定細胞の核及び核周辺の、応力分布マップ又は弾性値分布マップの少なくとも一方を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
さらに、前記被測定細胞の核及び核周辺の測定された、応力分布マップ又は弾性値分布マップの少なくとも一方が、悪性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるか、若しくは正常細胞又は良性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるかの閾値と比較する表示を生成するステップを有する請求項1に記載の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法。
【請求項3】
前記探針の押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式は、
【数1】
である請求項1又は2に記載の細胞の弾性特性分布を解析する方法。
ここで、Rは探針の先端半径、σは探針押圧位置での前記細胞の応力、νは細胞のポアソン比、Eは細胞の弾性率である。
【請求項4】
前記探針の押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式は、
【数2】
である請求項1又は2に記載の細胞の弾性特性分布を解析する方法。
ここで、Rは探針の先端半径、νは細胞のポアソン比、Eは弾性率である。
【請求項5】
被測定細胞の弾性特性分布を解析する解析システムであって、
被測定細胞の表面に原子間力顕微鏡の探針を押し当てた際に得られる、細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を、前記探針が接触した前記被測定細胞の測定位置座標と共に取得する手段であって、前記被測定細胞の測定位置座標は、前記被測定細胞の核の上層と前記核の周囲となる部位に配置された前記手段と、
前記探針の先端形状に応じて定められた形状パラメータと、前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式を用いて、前記探針の押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を計算する手段と、
前記実測された細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値と、前記モデル式により計算された計算値とを用いて、適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値となる形状パラメータを演算する手段と、
前記最小値となる形状パラメータを用いて、前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方を作成する手段と、
作成された前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方に基づいて、前記被測定細胞の核及び核周辺の、応力分布マップ又は弾性値分布マップの少なくとも一方を生成する手段と、
を備える解析システム。
【請求項6】
さらに、前記被測定細胞の核及び核周辺の測定された、応力分布マップ又は弾性値分布マップの少なくとも一方が、悪性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるか正常細胞又は良性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるかの閾値と比較する表示を生成する手段を有する請求項5に記載の被測定細胞の弾性特性分布を解析する解析システム。
【請求項7】
コンピュータに、
被測定細胞の表面に原子間力顕微鏡の探針を押し当てた際に得られる、細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を、前記探針が接触した前記被測定細胞の測定位置座標と共に取得するステップであって、前記被測定細胞の測定位置座標は、前記被測定細胞の核の上層と前記核の周囲となる部位に配置された前記ステップと、
前記探針の先端形状に応じて定められた形状パラメータと、前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式を用いて、前記探針の押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を計算するステップと、
前記実測された細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値と、前記モデル式により計算された計算値とを用いて、適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値となる形状パラメータを演算するステップと、
前記最小値となる形状パラメータを用いて、前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方を作成するステップと、
作成された前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方に基づいて、前記被測定細胞の核及び核周辺の、応力分布マップ又は弾性値分布マップの少なくとも一方を生成するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
細胞の弾性特性を解析するための原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法であって、
被測定細胞の表面上の測定点(x、y)に前記探針を押し当てた際に得られる、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を取得するステップと、
複数個の取得された前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値に対して、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けたモデル式による計算値を演算するステップと、
前記実測値と前記計算値の適合誤差(Δx,y)を求める適合誤差演算ステップと、
前記探針の先端半径Rをパラメータとする最小適合誤差(Δx,ymin)を演算する最小値演算ステップと、
前記最小値演算ステップで計算された最小適合誤差(Δx,ymin)がパラメータRについて最小値か判定する最小値判定ステップと、
前記最小値判定ステップで最小値でないと判断された時は、前記モデル式の接触応力パラメータを変更するステップと、
前記適合誤差演算ステップに初期値の接触応力パラメータ又は最小値判定ステップで更新された接触応力パラメータを前記適合誤差演算ステップに設定する接触応力パラメータ設定ステップと、
前記最小値判定ステップで最小値と判定すれば、適合誤差分散値演算ステップに前記測定点(x、y)の最小適合誤差(Δx,ymin)を送る単一測定点の最小適合誤差の送付ステップと、
前記実測値を取得するステップから前記単一測定点の最小適合誤差の送付ステップまでを、前記被測定細胞の全測定点を対象として繰り返すステップと、
被測定細胞の全測定点を対象として適合誤差の分散値(Δ)を求める適合誤差分散値演算ステップと、
前記適合誤差分散値演算ステップの演算した適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値か判定する適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップと、
前記適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップで、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値でないと判断されれば、残差演算ステップに前記適合誤差の分散値Δを送るステップと、
モンテカルロ法によって前記探針の先端半径Rのパラメータを変更して、接触応力パラメータ設定ステップに送る残差演算ステップと、
を備え、前記適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップで、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値と判断されたパラメータRを前記探針の先端形状パラメータとして決定する方法。
【請求項9】
前記原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータは、先端半径Rであって、前記先端半径Rを表す式は、
【数3】
ここで、Rは探針の先端半径、a、b、c、rは適合パラメータ、zは細胞の高さ方向座標、∂z/∂xは細胞のx軸方向の傾斜、∂z/∂yは細胞のy軸方向の傾斜、dは探針の押圧された細胞の場所における窪み量である、
請求項8に記載の探針の先端形状パラメータの決定方法。
【請求項10】
前記モデル式は、
【数4】
ここで、Fは探針の押圧力、Rは探針の先端半径、dは探針押圧位置での細胞の窪み量、σは細胞の膜応力、νは細胞のポアソン比、Eは細胞の弾性率である、
請求項8又は9に記載の探針の先端形状パラメータの決定方法。
【請求項11】
前記モデル式の接触応力パラメータは、細胞の弾性率Eと細胞の膜応力σを含んでおり、
前記適合誤差(Δx,y)を求める式は、
【数5】
ここで、計算値の押圧力Fcalは、ヘルツ+膜応力モデルの押圧力Fを用い、実測値の押圧力FExpは、窪み量dをパラメータとする、
請求項10に記載の探針の先端形状パラメータの決定方法。
【請求項12】
細胞の弾性特性を解析するための原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める解析システムであって、
被測定細胞の表面上の測定点(x、y)に前記探針を押し当てた際に得られる、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を取得する実測値取得部と、
複数個の取得された前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値に対して、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けたモデル式による計算値を演算する計算値演算部と、
前記実測値と前記計算値の適合誤差(Δx,y)を求める適合誤差演算部と、
前記探針の先端半径Rをパラメータとする最小適合誤差(Δx,ymin)を演算する最小値演算部と、
前記最小値演算部で計算された最小適合誤差(Δx,ymin)がパラメータRについて最小値か判定する最小値判定部と、
前記最小値判定部で最小値でないと判断された時は、前記モデル式の接触応力パラメータを変更する部と、
前記適合誤差演算部に初期値の接触応力パラメータ又は最小値判定部で更新された接触応力パラメータを前記適合誤差演算部に設定する接触応力パラメータ設定部と、
前記最小値判定部で最小値と判定すれば、適合誤差分散値演算部に前記測定点(x、y)の最小適合誤差(Δx,ymin)を送る単一測定点の最小適合誤差の送付部と、
前記実測値取得部から前記単一測定点の最小適合誤差の送付部までを、前記被測定細胞の全測定点を対象として繰り返す全体測定点管理部と、
被測定細胞の全測定点を対象として適合誤差の分散値(Δ)を求める適合誤差分散値演算部と、
前記適合誤差分散値演算部の演算した適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値か判定する適合誤差分散値の最小値判定部演算部と、
前記適合誤差分散値の最小値判定部演算部で、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値でないと判断されれば、残差演算部に前記適合誤差の分散値Δを送る部と、
モンテカルロ法によって前記探針の先端半径Rのパラメータを変更して、接触応力パラメータ設定部に送る残差演算部と、
を備え、前記適合誤差分散値の最小値判定部演算部で、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値と判断されたパラメータRを前記探針の先端形状パラメータとして決定する解析システム。
【請求項13】
コンピュータに、細胞の弾性特性を解析するための原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法を実行させるためのプログラムであって、
被測定細胞の表面上の測定点(x、y)に前記探針を押し当てた際に得られる、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を取得するステップと、
複数個の取得された前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値に対して、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けたモデル式による計算値を演算するステップと、
前記実測値と前記計算値の適合誤差(Δx,y)を求める適合誤差演算ステップと、
前記探針の先端半径Rをパラメータとする最小適合誤差(Δx,ymin)を演算する最小値演算ステップと、
前記最小値演算ステップで計算された最小適合誤差(Δx,ymin)がパラメータRについて最小値か判定する最小値判定ステップと、
前記最小値判定ステップで最小値でないと判断された時は、前記モデル式の接触応力パラメータを変更するステップと、
前記適合誤差演算ステップに初期値の接触応力パラメータ又は最小値判定ステップで更新された接触応力パラメータを前記適合誤差演算ステップに設定する接触応力パラメータ設定ステップと、
前記最小値判定ステップで最小値と判定すれば、適合誤差分散値演算ステップに前記測定点(x、y)の最小適合誤差(Δx,ymin)を送る単一測定点の最小適合誤差の送付ステップと、
前記実測値を取得するステップから前記単一測定点の最小適合誤差の送付ステップまでを、前記被測定細胞の全測定点を対象として繰り返すステップと、
被測定細胞の全測定点を対象として適合誤差の分散値(Δ)を求める適合誤差分散値演算ステップと、
前記適合誤差分散値演算ステップの演算した適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値か判定する適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップと、
前記適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップで、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値でないと判断されれば、残差演算ステップに前記適合誤差の分散値Δを送るステップと、
モンテカルロ法によって前記探針の先端半径Rのパラメータを変更して、接触応力パラメータ設定ステップに送る残差演算ステップと、
を備え、前記適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップで、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値と判断されたパラメータRを前記探針の先端形状パラメータとして決定することを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置に関し、特に固形がんの手術の際に、切除する組織ががん化しているか判断するのに役立つ組織情報をえるのに好適な、被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置に関する。
また、本発明は、上記の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置に用いて好適な、原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がん、特に固形がんの手術の際に、切除する組織ががん化しているかどうか、術前にイメージング情報等で判断できると好ましい。またがんと判断された組織を適切に切除することで、転移の可能性も含めた完治の可能性を高めるためにも、がんと思われる組織の切除術中に短時間で、判断または診断できる医療診断機器の登場が望まれている。
【0003】
他方で、原子力顕微鏡(AFM)は細胞の局所的な力学物性計測に広く用いられている。特許文献1及び非特許文献1では、AFMを用いて乳癌のがん細胞の生理検査方法が提案されている。
特許文献2では、細胞力学診断装置の実現に必要とされる計測精度を損なうことなく、多数の細胞の複素弾性率を高速に計測することができる細胞の複素弾性率の計測方法および計測するシステムが提案されている。細胞は、形状を維持する弾性と変形流動する粘性の両方の性質を併せ持つ粘弾性体であるため、細胞の複素弾性率は一定ではなく、時間や周波数の関数となるからである。
【0004】
他方、特許文献3では、がん細胞の弾性特性を精密に解析する技術が提案されている。医療現場のニーズとしては、がん細胞の転移能とがん細胞の硬さの間に負の相関があることがわかってきており、これを受けて、細胞硬化作用を持つ緑茶カテキンなどの物質を使用してがんの転移を抑制するための研究がなされている。このような研究において、候補物質の薬効を精密に評価するためには、候補物質の作用を受けたがん細胞の弾性特性を精密に解析するのに適したAFMを用いた細胞の局所的な力学物性計測技術が提案されている。
【0005】
しかし、従来公知のAFMを用いた細胞の局所的な力学物性計測技術では、がん細胞の摘出手術中の現場で、細胞又は組織の力学特性を計測するには手術中に求められる短時間、例えば5分以内、での組織検査により良性腫瘍か悪性腫瘍かの診断の手助けとなる力学物性情報を得ることが困難であった。
そこで、このような迅速な細胞又は組織の力学特性の計測を可能とする、空間分解能の高い細胞の弾性特性を解析する方法及び装置が必要とされていた。
また、空間分解能の高い細胞の弾性特性を解析する方法及び装置を実現するためには、原子間力顕微鏡の探針形状を非常に正確に知る必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5809707号公報
【特許文献2】特許第6360735号公報
【特許文献3】特開2019−53019号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Maria Plodinec, et. al.: “The nanomechanical signature of breast cancer”, NATURE NANOTECHNOLOGY, Vol.7, pages 757-765 (2012-10-21)
【非特許文献2】K. L. Johnson: “Contact Mechanics“, Cambridge University Press (1987)
【非特許文献3】中嶋健、他、『原子間力顕微鏡によるソフトマテリアルの弾性率定量評価法の開発』日本真空学会誌(2013年、第56巻第7号p.258−266)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するもので、迅速な細胞又は組織の力学特性の計測を可能とする、空間分解能の高い被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、原子間力顕微鏡の探針形状を非常に正確に知ることができる、原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法は、例えば図4に示すよう、被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法であって、
被測定細胞の表面に原子間力顕微鏡の探針を押し当てた際に得られる、細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を、前記探針が接触した前記被測定細胞の測定位置座標と共に取得するステップ(201)であって、前記被測定細胞の測定位置座標は、前記被測定細胞の核の上層と前記核の周囲となる部位に配置された前記ステップと、
前記探針の先端形状に応じて定められた形状パラメータと、前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式を用いて、前記探針の押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を計算するステップ(201)と、
前記実測された細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値と、前記モデル式により計算された計算値とを用いて、適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値となる形状パラメータを演算するステップ(202〜205)と、
前記最小値となる形状パラメータを用いて、前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方を作成するステップと、
作成された前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方に基づいて、前記被測定細胞の核及び核周辺の、応力分布マップ又は弾性値分布マップの少なくとも一方を生成するステップと、
を含む方法。
【0010】
[2]本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法において、さらに、前記被測定細胞の核及び核周辺の測定された、応力分布マップと弾性値分布マップの少なくとも一方が、悪性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるか正常細胞又は良性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるかの閾値と比較する表示を生成するステップを有するとよい。
[3]本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法において、好ましくは、探針押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式は、
【数1】
である請求項1又は2に記載の細胞の弾性特性分布を解析する方法。
ここで、Rは探針の先端半径、σは探針押圧位置での前記細胞の応力、νは細胞のポアソン比、Eは弾性率である。
[4] 本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法において、好ましくは、探針押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式は、
【数2】
であるとよい。
【0011】
[5]本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する装置は、被測定細胞の弾性特性分布を解析する解析システムであって、
被測定細胞の表面に原子間力顕微鏡の探針を押し当てた際に得られる、細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を、前記探針が接触した前記被測定細胞の測定位置座標と共に取得する手段であって、前記被測定細胞の測定位置座標は、前記被測定細胞の核の上層と前記核の周囲となる部位に配置された前記手段と、
前記探針の先端形状に応じて定められた形状パラメータと、前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を表すモデル式を用いて、前記探針の押圧位置での前記細胞の変形量(d)と前記探針の押圧力(F)の関係を計算する手段と、
前記実測された細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値と、前記モデル式により計算された計算値とを用いて、適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値となる形状パラメータを演算する手段と、
前記最小値となる形状パラメータを用いて、前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方を作成する手段と、
作成された前記被測定細胞の応力分布又は弾性値分布の少なくとも一方に基づいて、前記被測定細胞の核及び核周辺の、応力分布マップ又は弾性値分布マップの少なくとも一方を生成する手段と、
を備える解析システムである。
【0012】
[6]本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する解析システムにおいて、さらに、前記被測定細胞の核及び核周辺の測定された、応力分布マップと弾性値分布マップの少なくとも一方が、悪性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるか正常細胞又は良性腫瘍の弾性特性範囲に含まれるかの閾値と比較する表示を生成する手段を有するとよい。
【0013】
[8]本発明の細胞の弾性特性を解析するための原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法は、例えば図12図13に示すよう、被測定細胞の表面上の測定点(x、y)に前記探針を押し当てた際に得られる、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値を取得するステップと、
複数個の取得された前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けた実測値に対して、前記細胞の変形量と前記探針の押圧力を対応付けたモデル式による計算値を演算するステップと、
前記実測値と前記計算値の適合誤差(Δx,y)を求める適合誤差演算ステップ(301)と、
前記探針の先端半径Rをパラメータとする最小適合誤差(Δx,ymin)を演算する最小値演算ステップ(302)と、
前記最小値演算ステップで計算された最小適合誤差(Δx,ymin)がパラメータRについて最小値か判定する最小値判定ステップ(303)と、
前記最小値判定ステップで最小値でないと判断された時は、前記モデル式の接触応力パラメータを変更するステップ(303)と、
前記適合誤差演算ステップに初期値の接触応力パラメータ又は最小値判定ステップで更新された接触応力パラメータを前記適合誤差演算ステップに設定する接触応力パラメータ設定ステップ(304)と、
前記最小値判定ステップで最小値と判定すれば、適合誤差分散値演算ステップに前記測定点(x、y)の最小適合誤差(Δx,ymin)を送る単一測定点の最小適合誤差の送付ステップ(303)と、
前記実測値を取得するステップから前記単一測定点の最小適合誤差の送付ステップまでを、前記被測定細胞の全測定点を対象として繰り返すステップと、
被測定細胞の全測定点を対象として適合誤差の分散値(Δ)を求める適合誤差分散値演算ステップ(305)と、
前記適合誤差分散値演算ステップの演算した適合誤差の分散値(Δ)がパラメータRについて最小値か判定する適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップ(306)と、
前記適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップで、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値でないと判断されれば、残差演算ステップに前記適合誤差の分散値Δを送るステップ(306)と、
モンテカルロ法によって前記探針の先端半径Rのパラメータを変更して、接触応力パラメータ設定ステップに送る残差演算ステップ(307)と、
を備え、前記適合誤差分散値の最小値判定部演算ステップで、前記適合誤差の分散値(Δ)が最小値と判断されたパラメータRを前記探針の先端形状パラメータとして決定する(306)ものである。
【0014】
[9]本発明の細胞の弾性特性を解析するための原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法において、好ましくは、前記原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータは、先端半径Rであって、前記先端半径Rを表す式は、次式で表されるとよい。
【数3】
ここで、Rは探針の先端半径、a、b、c、rは適合パラメータ、zは細胞の高さ方向座標、∂z/∂xは細胞のx軸方向の傾斜、∂z/∂yは細胞のy軸方向の傾斜、dは探針の押圧された細胞の場所における窪み量である、
[10]本発明の細胞の弾性特性を解析するための原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法において、好ましくは、前記モデル式は、次式で表されるとよい。
【数4】
ここで、Fは探針の押圧力、Rは探針の先端半径、dは探針押圧位置での細胞の窪み量、σは細胞の膜応力、νは細胞のポアソン比、Eは細胞の弾性率である、
[11]本発明の細胞の弾性特性を解析するための原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法において、好ましくは、モデル式の接触応力パラメータは、細胞の弾性率Eと細胞の膜応力σを含んでおり、
前記適合誤差(Δx,y)を求める式は、次式で表されるとよい。
【数5】
ここで、計算値の押圧力Fcalは、ヘルツ+膜応力モデルの押圧力Fを用い、実測値の押圧力FExpは、窪み量dをパラメータとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置は、カンチレバー探針の先端形状に応じて定められた最適なモデル式を用いているので、高い空間分解能でデータ解析ができる。そこで、カンチレバー探針の移動を1回だけとして測定しても、被測定細胞の弾性特性分布を解析が正確に行えるため、迅速な細胞又は組織の力学特性の計測が可能となる。
本発明の原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法及び装置は、モンテカルロ法等を用いた機械学習により、カンチレバー探針の先端形状に応じて定められたモデル式の形状パラメータを定めているので、原子間力顕微鏡の探針形状を非常に正確に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例を示す、細胞の弾性解析システムのシステム構成図である。
図2】押圧力・窪み量の測定データを取得する処理を説明するフローチャートである。
図3】被測定細胞の核の直上の表面に格子点状に配置された測定位置を定義する説明図である。
図4】被測定細胞の応力分布と弾性値分布を計算により求める処理を説明するフローチャートである。
図5】AFMチップの探針と細胞体の間の力の相互作用を説明する要部構成図である。
図6】AFMチップの探針と細胞体の間の各種の力学的モデルを説明する要部拡大図で、力学的な解析情報を含めてある。
図7】AFMチップの先端が細胞体の表面形状の傾きに依存した力学的な関係を有することを説明する要部拡大図である。
図8】AFMチップの探針と細胞体の間の各種の力学的モデルに応じた測定値分布を説明する図である。
図9】AFMチップの探針と細胞体の間の各種の力学的モデルに応じた予測値誤差分布を説明する図である。
図10】AFMによって形成されたストレスマップによる細胞の生死状態の評価図である。
図11】(A)被測定細胞の三次元高さ分布状態図と、(B)応力分布、(C)弾性値分布、及び(D)力スペクトルの一例を示す図である。
図12】本発明の一実施例を示す、AFMチップ形状を最適化するための、細胞体のプレストレスを計算する機械学習アルゴリズムの機能ブロック図である。
図13図12の機械学習アルゴリズムの機能ブロック図において、弾性率Eと応力σから適合誤差(フィッティングエラー)Δを計算する第1ループの要部拡大図である。
図14】様々な接触圧力モデルの細胞の変形量(窪み量:nm)と探針の押圧力(nN)を対応付けの関係を説明する図である。
図15】モンテカルロ法で生成された探針形状パラメータを使用した応力の進化マップである。
図16】モンテカルロ法で生成された探針形状パラメータを使用した分散の進化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
図1は、本発明の一実施例を示す、細胞の弾性解析システムのシステム構成を模式的に示す。図1に示すように、本実施形態の細胞解析は、原子力間力顕微鏡20(AFM: Atomic Force Microscope)と、コンピュータ10とを含んで構成されている。併せて、細胞とカンチレバーの探針との相対的な位置を調整する位置調整機構として、位置調整駆動部32とコントローラ34を設けてある。
【0018】
原子力間力顕微鏡20は、半導体レーザー22と、先端にピラミッド型の探針24を備えたカンチレバー23と、フォトディテクタ25と、プリアンプ26とを含んで構成されている。原子力間力顕微鏡20においては、半導体レーザー22から出射したレーザー光がカンチレバー23の背面に照射され、その反射光が4分割された受光面を有するフォトディテクタ25に入射する。これを受けて、フォトディテクタ25から入射光のパワーに比例した電流が出力され、これがプリアンプ26を介して電圧値に変換される。
プリアンプ26は、フォトディテクタ25が有する4分割された各受光面に対応する電圧値のうち、上側2つの受光面に対応する電圧値の和と、下側2つの受光面に対する電圧値の和をとり、さらに、上側2つの受光面に対する電圧値の和と下側2つの受光面に対する電圧値の和の差をとることで、カンチレバー23のたわみ量を電圧値として出力し、出力されたたわみ量を表す電圧値をコンピュータ10に入力する。
【0019】
位置調整駆動部32は、例えばXYZの3軸方向にミリオーダーの移動量を持つXYZ軸ステージと、XYZ軸ステージの上に配置され、XYZの3軸方向にnm精度の位置調整が可能なピエゾ駆動素子とで構成される。コントローラ34は、XYZ軸ステージおよびピエゾ駆動素子を制御するもので、例えば被測定細胞を探針24に対して、ラスタースキャンするように位置制御する。プレート40は、解析対象となる細胞を載置したもので、位置調整駆動部32のXYZ軸ステージ上に設置される。コントローラ34は、位置調整駆動部32を制御するとともに、位置調整駆動部32の移動量(変位量)をコンピュータ10に入力する。位置調整駆動部32の移動量(変位量)は、プレート40、即ち測定対象となる細胞の移動量に相当する。
【0020】
コンピュータ10は、コントローラ34を介して位置調整駆動部32を制御するとともに、プリアンプ26およびコントローラ34からの入力に基づいて後述する細胞の解析処理を実行する情報処理装置である。なお、コンピュータ10は、その態様を限定するものではなく、パーソナルコンピュータであってもよいし、本発明の用途に特化した組み込みコンピュータやワークステーションであってもよい。
【0021】
以上、細胞解析システムのシステム構成について説明してきたが、続いて、コンピュータ10が実行する細胞の解析処理について説明する。なお、以下の説明においては、図1を適宜参照するものとする。
【0022】
本実施形態では、コンピュータ10が、大きく分けて2つの処理を実行する。第1の処理では、プレート40に載置された細胞に対して、カンチレバー23の探針24を押し当てるという作業を繰り返して複数の探針押圧点について押圧力窪み量の測定データを取得する。続く第2の処理では、取得した押圧力窪み量の測定データと、に基づいて、解析対象となる細胞の弾性特性を可視化して表示用画面に表示する。
【0023】
ここでは、まず、図2に示すフローチャートに基づいて、押圧力・窪み量の測定データを取得する処理の一例を説明する。
ステップ101では、位置調整駆動部32を制御して、プレート40に載置された測定対象となる細胞の測定領域に探針24を位置づける。ここで、本実施形態では、図3に示すように、細胞の核の直上の表面に格子点状に配置された測定位置を定義する。図3に示す例では、細胞の表面に、核の中心を中心とする40μm×40μmの範囲を測定領域として定義し、この測定領域を256×256画素の正方形で分割した各区画の中心を探針24が押圧する先端の測定位置として定義している。この座標系としては、例えば(i、j);i=1〜256、j=1〜256を用いるとよく、またXYZ軸ステージのXY軸平面と一致させるとよい。
【0024】
続くステップ102では、位置調整駆動部32のXYピエゾ素子を駆動して、カンチレバー23の探針24を256×256個の測定位置の中の1番目の測定位置(i、j)に合わせる。
【0025】
続くステップ103では、位置調整駆動部32のZピエゾ素子を駆動して、所定単位量だけ上方に移動させる。
【0026】
続くステップ104では、下記(1)〜(3)を算出し、これらを要素とする組データを所定の記憶領域に保存する。
(1)Zピエゾ素子の原点から細胞高さ方向への移動量z(以下、移動量zという)
(2)カンチレバー23のたわみ量Δ(以下、たわみ量Δという)
(3)探針24にかかる力F(以下、力Fという)
【0027】
続くステップ105では、力Fが所定の閾値を超えているか否かを判断し、力Fが所定の閾値を超えるまで(ステップ105、No)、ステップ103〜104を繰り返し実行する。
【0028】
本実施形態では、上述したステップ103〜104が繰り返し実行されることにより、Zピエゾ素子が上方へ一定速度で移動し、これに伴って、Zピエゾ素子の上に配置されたプレート40が上方に移動する。すると、ある時点で、カンチレバー23の探針24が、先のステップ102で位置合わせした1番目の測定位置において細胞の表面に接触し、その後、プレート40がさらに上方に移動することに伴って、細胞表面が探針24に押し当てられて弾性変形し、これに伴って、カンチレバー23にたわみが生じる。
【0029】
この間、コンピュータ10は、コントローラ34からの入力に基づいて「移動量z」を算出し、プリアンプ26から入力される電圧値に基づいて「たわみ量Δ」を取得し、取得した「たわみ量Δ」にカンチレバー23のバネ定数を乗じることにより「力F」を算出する。
【0030】
その後、力Fが所定の閾値を超えた時点で(ステップ105、Yes)、処理はステップ106に進み、組データ(移動量z、たわみ量Δ、力F)の保存を終了するとともに、位置調整駆動部32のZピエゾ素子を原点復帰して、探針24を細胞から引き離す。この時点で、所定の記憶領域には、複数の組データ(移動量z、たわみ量Δ、力F)からなるデータセットが保存されることになる。
【0031】
続くステップ107では、所定の記憶領域に保存された複数の組データ(移動量z、たわみ量Δ、力F)からなるデータセットに基づいてF-z曲線を取得する。具体的には、所定の記憶領域に保存された複数の組データ(移動量z、たわみ量Δ、力F)から複数の組データ(移動量z、力F)を抽出し、抽出した複数の組データ(移動量z、力F)を、移動量zをX軸とし、力FをY軸とする直交座標上にプロットしてF-z曲線を取得する。
【0032】
続くステップ108では、先のステップ107で取得したF-z曲線を利用して、以下の手順で、F-d曲線を取得する。
【0033】
カンチレバー23が細胞表面に接触した時点におけるZピエゾの原点からの移動量z、細胞の変形量d、移動量z、たわみ量Δの間には、下記式(5)が成り立つ。
【数6】
【0034】
そこで、ステップ108では、まず、カンチレバー23が細胞表面に接触した時点に対応するF-z曲線上のプロット点(以下、接触点という)を特定し、特定した接触点のX座標値から移動量zを求める。次に、所定の記憶領域に保存された複数の組データ(移動量z、たわみ量Δ、力F)の各々について、その要素である移動量zおよびたわみ量Δと、求めた移動量zを上記式(5)に代入して変形量dを算出した上で、算出した変形量dと、組データのもう一つの要素である力Fとを対応付けた組データ(変形量d、力F)を生成する。最後に、このようにして生成された複数の組データ(変形量d、力F)を、変形量dをX軸とし、力FをY軸とする直交座標上にプロットしてF-d曲線を取得する。
【0035】
続くステップ109では、先のステップ108で取得したF-d曲線を、1番目の測定位置()に係る“押圧力窪み量の測定データ”として、所定の記憶領域に保存する。その後、処理は、再びステップ102に戻り、位置調整駆動部32のXYピエゾを駆動して、カンチレバー23の探針24を2番目の測定位置(i、j+1)等に合わせる。その後、上述したステップ103〜108を実行してF-d曲線を取得し、続くステップ109で、取得したF-d曲線を、2番目の測定位置に係る押圧力窪み量の測定データとして、所定の記憶領域に保存する。以降、被測定対象の細胞の表面に定義された全ての測定位置に係る押圧力窪み量の測定データを取得するまで、上述したステップ102〜109を繰り返す。
以上、押圧力窪み量の測定データ取得処理について説明した。
【0036】
続いて、探針の先端形状と被測定対象の細胞の膜構造に応じて定められたモデル式により、被測定細胞の応力分布と弾性値分布を計算により求める処理について説明する。
図4は、被測定細胞の応力分布と弾性値分布を計算により求める処理を説明するフローチャートである。
ステップ200に示すように、被測定細胞の測定領域としては、例えば256×256画素の正方形で分割された各区画の中央部に配置された格子点状の測定位置+が定義される。この測定位置+に探針24を押圧する。
【0037】
ステップ201では、測定位置+での実測値ExpとAFMチップの探針と細胞体の間の力学的モデルに応じた計算値Calを用いて、押圧力・窪み量の測定データ図表にプロットする。この力学的モデルに関しては、AFMチップの探針形状に関しては図5図9を用いて、後で詳細に説明する。また、機械学習による実測値Expと計算値Calを用いたフローチャートに関しては、図12図13を用いて、後で詳細に説明する。
ステップ202では、単一の測定位置(i、j)=(x、y)について、窪み量dをパラメータとする押圧力Fについて、実測値Expと計算値Calの適合誤差(Fitting Error)Δx,yを求める。
【数7】
【0038】
ここで、探針の先端半径Rは次の式で表される。
【数8】
ここで、a、b、c、rは適合パラメータ、zは細胞の高さ方向座標、∂z/∂xは細胞のx軸方向の傾斜、∂z/∂yは細胞のy軸方向の傾斜、dは探針の押圧された細胞の場所における窪み量である。
探針の先端半径Rにかかる機械学習による最適化に関しては、図12に示す適合誤差分散値演算部305、適合誤差分散値の最小値判定部演算部306、残差演算部307を用いて、後で詳細に説明する。
そして、適合誤差Δx,yが最小になる最小適合誤差Δx,yminを求める。
【0039】
ステップ203では、全ての測定位置(i、j);i=1〜256、j=1〜256について、実測値Expと計算値Calの適合誤差(Fitting Error)が最小になる最小適合誤差Δx,yminを求める。
ステップ204では、全ての測定位置(i、j);i=1〜256、j=1〜256についての最小適合誤差Δx,yminから平均適合誤差Δx,ymeanを求める。
ステップ205では、適合誤差の分散値Δを求める。
【数9】
【0040】
図5は、AFMチップの探針と細胞体の間の力の相互作用を説明する要部構成図である。
AFMチップの探針24は、先端半径がRの先端部を有し、被測定細胞に圧接される。被測定細胞は、探針24の先端位置に対して窪み量としての変形量dが発生する。探針24の先端が、被測定細胞の表面に対して垂直方向に作用する押圧力Fに応じて、被測定細胞の表面に応力σが発生する。探針24の押圧力Fは、被測定細胞の表面の引張応力σ(プレストレス)による抗力Fと、通常のヘルツモデルで考察する変形量dによるFの二つの成分の和とバランスが取れている。
本発明の細胞の弾性解析システムでは、探針24と被測定細胞の位置関係を変えることで、押圧力Fと変形量dの関係を示す測定データが得られる。
【0041】
図6は、AFMチップの探針と細胞体の間の各種の力学的モデルを説明する要部拡大図で、(A)は放物線型のヘルツモデル(Hertz Model Parabolic)、(B)は円錐型のスネッドンモデル(Sneddon Model Cone)、(C)は皮膚性殻液体核モデル(Cortical shell−liquid core model)、(D)はヘルツ+膜応力モデル(Hertz Model + stress membrane)である。
【0042】
ヘルツモデルは、古典的なもので、球面と球面、円柱面と円柱面、任意の曲面と曲面などの弾性接触部分に掛かる応力あるいは圧力のことで、ヘルツの接触応力とも呼ばれる。接触面の摩擦を考慮せず、接触面の圧力分布を仮定している点が特徴である。放物面の場合、次の式が成立する。
【数10】
ここで、Fは探針の押圧力、νは細胞のポアソン比、Eは細胞の弾性率、Rは探針の先端半径、dは探針押圧位置での細胞の窪み量である。
【0043】
スネッドンモデルは、軸対称探針が弾性体に圧入するときの接触力学である。凝着の効果がない測定の場合、この式を用いることで試料の弾性率が得られる。
【数11】
ここで、Fは探針の押圧力、νは細胞のポアソン比、Eは細胞の弾性率、θは探針の先端円錐面の傾斜角、dは探針押圧位置での細胞の窪み量である。
【0044】
皮膚性殻液体核モデルは、例えば卵のような球形細胞と、円管形の触針との接触における力学的変形を扱うもので、例えば次の式が成立する。
【数12】
ここで、Fは探針の押圧力、Tは皮膚の引張応力(cortex tension)、rは細胞の半径、Eは細胞の弾性率、Rは探針の先端半径、θは探針の先端円錐面の傾斜角、dは探針押圧位置での細胞の窪み量である。
【0045】
ヘルツ+膜応力モデルは、ヘルツモデルに細胞の膜応力を考慮して、探針と細胞の接触面の摩擦を考慮したものである。例えばJKR(Johnson−Kendall−Roberts)モデルやDMT(Derjaguin−Muller−Toporov)モデルが知られている。探針先端が放物面の場合、次の式が成立する。
【数13】
ここで、Fは探針の押圧力、Rは探針の先端半径、dは探針押圧位置での細胞の窪み量、σは細胞の膜応力、νは細胞のポアソン比、Eは細胞の弾性率、である。
【0046】
図7は、AFMチップの先端が細胞体の表面形状の傾きに依存した力学的な関係を有することを説明する要部拡大図である。
図7(A)は、探針24の先端半径Rと、細胞体の表面形状の傾き(∂z/∂x、∂z/∂y)の関係を示している。図7(B)は、探針24の先端半径Rと、探針押圧位置での細胞の変形量dの関係を示している。図7(A)、(B)では、表面トポグラフィ勾配へのチップ半径の依存性が表される。
図7(C)は、探針24の先端半径Rと、探針押圧位置での細胞体の表面形状の傾きと細胞の変形量(∂z/∂x、∂z/∂y、d)の関係を示している。図7(D)は、探針24の先端半径Rと、探針押圧位置での細胞体の表面形状の傾きと細胞の変形量(∂z/∂x、∂z/∂y、d)の別の関係を示すもので、細胞の変形量が大きいため、細胞体の表面形状が深く窪んでいる状態を示している。図7(C)、(D)では、細胞の変形量dに対するチップ先端半径の依存性が表される。
【0047】
図8は、AFMチップの探針と細胞体の間の各種の力学的モデルに応じた測定値分布を説明する図である。力学的モデルとしては、前述の(A)放物線型のヘルツモデル(Hertz Model Parabolic)、(B)円錐型のスネッドンモデル(Sneddon Model Cone)、(C)皮膚性殻液体核モデル(Cortical shell−liquid core model)、(D)ヘルツ+膜応力モデル(Hertz Model + stress membrane)を用いた。
【0048】
図9はAFMチップの探針と細胞体の間の各種の力学的モデルに応じた予測値誤差分布を説明する図である。最も小さな予測値誤差分布を示すのは、(D)ヘルツ+膜応力モデルで、その中央値は0.005%で、信頼範囲も±0.0005%と狭い範囲である。次に小さな予測値誤差分布を示すのは(A)放物線型のヘルツモデルで、その中央値は0.30%であるが、信頼範囲は±0.02%と広い範囲に分散している。
【0049】
他方、大きな予測値誤差分布を示すのは、(C)皮膚性殻液体核モデルと(B)円錐型のスネッドンモデルである。(C)皮膚性殻液体核モデルは、予測値誤差分布の中央値が0.09%で、信頼範囲も±0.01%である。(B)円錐型のスネッドンモデルは、予測値誤差分布の中央値が0.10%で、信頼範囲も±0.03%である。
従って、(D)ヘルツ+膜応力モデルが最も好ましく、次善のものは(A)放物線型のヘルツモデルである。
【0050】
図10は、AFMによって形成されたストレスマップによる細胞の状態の評価図で、図10(a)〜図10(f)を用いて示してある。
図10(a)は生きているがん細胞の光学顕微鏡画像である。
図10(b)は生きているがん細胞のAFM高さマップである。
図10(c)は生きているがん細胞のAFMストレスマップである。
図10(d)は死んだ癌細胞の光学顕微鏡画像である。
図10(e)は死んだ癌細胞のAFM高さマップである。
図10(f)は死んだ癌細胞のAFMストレスマップである。
生きている細胞の核領域の周りのプレストレスは、死んだ細胞のプレストレスそれよりも高い。
【0051】
図11は、(A)被測定細胞の三次元高さ分布状態図と、(B)応力分布、(C)弾性値分布、及び(D)力スペクトルの一例を示す図である。(E)はヘルツ+膜応力モデルの計算式を示している。
【0052】
図12は、本発明の一実施例を示す、AFMチップ形状を最適化するための、細胞体のプレストレスを計算する機械学習アルゴリズムの機能ブロック図である。
図13図12の機械学習アルゴリズムの機能ブロック図において、弾性率Eと応力σから適合誤差(フィッティングエラー)Δを計算する第1ループの要部拡大図である。
【0053】
図12図13において、適合誤差演算部301は、単一の測定位置(i、j)=(x、y)について、窪み量dをパラメータとする押圧力Fについて、実測値Expと計算値Calの適合誤差(Fitting Error)Δx,yを求める。
【数14】
ここで、計算値の押圧力Fcalは、例えばヘルツ+膜応力モデルの押圧力Fを用いるが、放物線型のヘルツモデルや他のモデルでもよい。実測値の押圧力FExpは、窪み量dをパラメータとしている。
【0054】
最小値演算部302は、探針24の先端半径Rをパラメータとする最小適合誤差Δx,yminを演算する。最小値判定部303は、最小値演算部302で計算された最小適合誤差Δx,yminがパラメータRについて最小値か判定し、否であれば細胞の弾性率Eと細胞の膜応力σを変更して、弾性率E・膜応力σ設定部304に送る。
弾性率E・膜応力σ設定部304は、適合誤差演算部301に初期値の弾性率E・膜応力σ又は最小値判定部303で更新された弾性率E・膜応力σを適合誤差演算部301に設定する。
【0055】
次に、図12に示された、パラメータRをモンテカルロ法で変更して適合誤差の分散値Δを求める第2ループを説明する。本明細書におけるモンテカルロ法とは、マルコフ連鎖モンテカルロ法(Markov chain Monte Carlo method)のことで、事後確率のサンプリングは、乱数を使用して実行される。本明細書ではこの方法を使用して、事後確率の最大化因子を検索した。これは、最適なフィッティングが達成されるように設定されたパラメータである。
図12において、最小値判定部303がパラメータRについて最小値と判定すれば、適合誤差分散値演算部305に当該測定点(x、y)の最小適合誤差Δx,yminを送る。
適合誤差分散値演算部305では、被測定細胞の全測定点を対象として適合誤差の分散値Δを求める。
【数15】
【0056】
適合誤差分散値の最小値判定部演算部306では、適合誤差分散値演算部305の演算した適合誤差の分散値ΔがパラメータRについて最小値か判定し、否であれば、残差演算部307に送る。残差演算部307では、モンテカルロ法によって探針24の先端半径Rを変更して、弾性率E・膜応力σ設定部304に送る。
適合誤差分散値の最小値判定部演算部306で最小値と判定されれば、予測値誤差P(N)が得られ、終了となる。
【0057】
本発明においては、測定データを機械学習して、ヘルツ+膜応力モデルのパラメータの最適化を行っている。スーパーコンピューターを使用して、最適化されたチップ形状のモンテカルロ検索の適合度指標値(フィッティングスコア)を比較する。
【0058】
図14は、様々な接触圧力モデルの細胞の変形量(窪み量:nm)と探針の押圧力(nN)を対応付けの関係を説明する図である。図中、点○線は、AFMによって直接取得される実験データを意味する。4本の曲線は、異なるモデルで計算されたフィッティングデータを意味する。最適な曲線はヘルツ+膜応力モデルである。
この結果は、図10と一致している。
【0059】
図15は、モンテカルロ法で生成された探針形状パラメータを使用した応力の進化マップである。
モンテカルロ法によって自動的に生成された先端パラメータにより、応力の分布は核、糸状仮足、および葉状仮足を明確に示す。最適なストレスマップは、(e)最適化された探針形状パラメータによるものである。
【0060】
図16は、モンテカルロ法で生成された探針形状パラメータを使用した分散の進化マップで、(a)は全体図、(b)は(a)の要部拡大図である。
反復回数が増加すると、適合誤差が減少する。適合誤差の最小値は、最適化された探針形状パラメータが生成されることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置によれば、カンチレバー探針の先端形状に応じて定められる最適なモデル式を用いているので、高い空間分解能でデータ解析ができ、迅速な細胞又は組織の力学特性の計測が可能となり、例えば臨床現場での術中組織検査装置に用いることができる。
本発明の原子間力顕微鏡の探針の形状パラメータを定める方法及び装置は、原子間力顕微鏡の探針形状を非常に正確に知ることができ、被測定細胞の弾性特性分布を解析する方法及び装置に用いて好適である。
【符号の説明】
【0062】
10 コンピュータ
20 原子力間力顕微鏡
22 半導体レーザー
23 カンチレバー
24 探針
25 フォトディテクタ
26 プリアンプ
32 位置調整駆動部
34 コントローラ
40 プレート
301 適合誤差演算部
302 最小値演算部
303 最小値判定部
304 弾性率E・膜応力σ設定部
305 適合誤差分散値演算部
306 適合誤差分散値の最小値判定部演算部
307 予測誤差記憶部
308 残差演算部

図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12
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図16