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特開2021-74801等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法及びホーニング加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-74801(P2021-74801A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法及びホーニング加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/05 20060101AFI20210423BHJP
【FI】
   B23F19/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-201334(P2019-201334)
(22)【出願日】2019年11月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】野口 慈仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 凌
(72)【発明者】
【氏名】坂東 武夫
(57)【要約】
【課題】良好な歯当り状態の確保とサイクルタイムの短期化とを両立することができる等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法及びホーニング加工装置を提供する。
【解決手段】等高歯が形成されたリングギヤ30と、このリングギヤ30に噛合すると共に等高歯が形成されたピニオンギヤ20とからなる等高歯ハイポイドギヤ10のホーニング加工方法であって、基準形状を有するリングギヤ30及びピニオンギヤ20に砥粒をコートして基準リングギヤ31及び基準ピニオンギヤ21を準備する準備工程S1と、基準ピニオンギヤ21とこの基準ピニオンギヤ21に対応した歯切加工後のワークリングギヤ32とを噛み合わせた状態で回転させるホーニング工程S5と、基準リングギヤ31とこの基準リングギヤ31に対応した歯切加工後のワークピニオンギヤ22とを噛み合わせた状態で回転させるホーニング工程S15とを有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等高歯が形成されたリングギヤと、このリングギヤに噛合すると共に等高歯が形成されたピニオンギヤとからなる等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法において、
基準形状を有するリングギヤ及びピニオンギヤに砥粒をコートして基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤを準備する準備工程と、
前記基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤのうち一方の基準ギヤとこの基準ギヤに対応した歯切加工後のワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させる第1研磨工程と、
前記基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤのうち他方の基準ギヤとこの基準ギヤに対応した歯切加工後のワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させる第2研磨工程と、
を有することを特徴とする等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法。
【請求項2】
前記第1,第2研磨工程では、基準ギヤとワークギヤの歯当り位置が移動するように前記基準ギヤとワークギヤの相対位置を変化させることを特徴とする請求項1に記載の等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法。
【請求項3】
ワークギヤがリングギヤの場合、前記リングギヤを回転駆動可能に支持してこのリングギヤに噛合される基準ピニオンギヤをその回転軸心に平行方向及び直交方向に移動させ、基準ギヤがリングギヤの場合、前記基準リングギヤを回転駆動可能に支持してこの基準リングギヤに噛合されるワークギヤであるピニオンギヤをその回転軸心に平行方向及び直交方向に移動させることを特徴とする請求項2に記載の等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法。
【請求項4】
前記第1,第2研磨工程では、加工油を供給しないドライ加工で研磨することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法。
【請求項5】
前記基準リングギヤの歯幅がワークギヤであるリングギヤの歯幅よりも長いことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法。
【請求項6】
等高歯が形成されたリングギヤと、このリングギヤに噛合すると共に等高歯が形成されたピニオンギヤとからなる等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工装置において、
基準形状を有するリングギヤとピニオンギヤのうち砥粒がコートされた基準ギヤを回転駆動可能に支持する第1駆動手段と、
リングギヤとピニオンギヤのうち前記基準ギヤと噛合可能なワークギヤを回転駆動可能に支持する第2駆動手段と、
前記第1,第2駆動手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記基準ギヤとワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させることを特徴とする等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等高歯が形成されたリングギヤと等高歯が形成されたピニオンギヤとからなる等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法及びホーニング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイポイドギヤは、耐久性が高く、歯当り音が小さいという優位性を有するため、動力伝達を行う車両用差動装置の主要構成部品として広く実用に供されている。
このようなハイポイドギヤは、歯面形状の熱処理変形ばらつきがあるため、歯切工程、熱処理やショットピーニング等の表面処理工程を経て、1組のピニオンギヤとリングギヤとを砥粒と一緒に噛み合わせながら歯面を削るラッピング工程にて各々の歯面形状を仕上げている。そして、ラッピング工程を行ったピニオンギヤとリングギヤが1組のギヤセットとして差動装置に組み込まれる。
【0003】
ハイポイドギヤの製造では、歯丈が歯筋に沿って徐々に変化する勾配歯を前提としたグリーソン方式が主流である。それ故、勾配歯を備えたハイポイドギヤについては、仕上加工方法やこれに使用する加工装置について、既に実用に適した技術が確立されている。
一方、歯丈が歯筋に沿って変化しない(均一に形成された)等高歯ハイポイドギヤは、勾配歯ハイポイドギヤに比べて、歯切加工が容易であり、製造に使用される歯切装置の段取り調整が少なく製造できる利点があるため、近年、注目されている。
【0004】
仕上加工において加工対象である歯面精度は、軽中負荷運転時、ギヤノイズに対して影響が大きく、最大負荷運転時、ギヤ強度に対して影響が大きい重要な評価要素である。
しかし、等高歯ハイポイドギヤは、具体的な仕上加工方法やこれに使用する加工装置について十分には研究されておらず、殆ど技術的提案がなされていないのが実情である。
特許文献1の等高歯ハイポイドギヤの歯研方法は、歯切刃具に砥石をコートして歯切刃具に砥石層を形成する砥石層形成工程と、この砥石層が形成された歯切刃具を等高歯ハイポイドギヤ素材の歯の軌跡に沿って摺動させて研磨する歯研工程とを有している。
これにより、歯切工程で行う成形歯切用制御及び歯切装置を応用して仕上加工を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−147333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラッピング加工を用いた場合、歯当り検査を行うことにより、セットにされた1組のピニオンギヤとリングギヤについて、良好な歯当り状態を担保することが可能である。
しかし、ラッピング加工は、ラッピング時において、セットとして噛み合っているピニオンギヤとリングギヤとの歯当り状態をセット管理するものであって、各ギヤについて各々単独の歯面精度を管理するものではない。
それ故、セット管理された特定のピニオンギヤと特定のリングギヤのうち一方のギヤが破損等によって別のギヤと交換する必要が生じた場合、新たなセットとして組み合わされたピニオンギヤとリングギヤについては噛み合い時における歯当り状態の管理が成されておらず、良好な歯当り状態を確保できない虞がある。
【0007】
一方、特許文献1の等高歯ハイポイドギヤの歯研方法は、砥石層が形成された歯切刃具を各々のギヤについて歯の軌跡に沿って摺動させているため、個々のギヤの歯面精度が高く、ピニオンギヤとリングギヤとの組み合わせに拘らず歯当り状態を良好に保つことができる。しかし、特許文献1の技術では、砥石層が形成された歯切刃具と歯切工程で使用する歯切装置とを用いているため、歯切刃具の移動軌跡が歯切工程の創成研削用軌跡と略同様の軌跡になることから、歯の表面加工及び裏面加工毎に歯切刃具の調整管理が必要とされ、仕上加工時間が長期化してサイクルタイムが長くなる虞がある。
即ち、等高歯ハイポイドギヤについて、良好な歯当り状態の確保とサイクルタイムの短期化とを両立することは容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、良好な歯当り状態の確保とサイクルタイムの短期化とを両立可能な等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法及びホーニング加工装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法は、等高歯が形成されたリングギヤと、このリングギヤに噛合すると共に等高歯が形成されたピニオンギヤとからなる等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法において、基準形状を有するリングギヤ及びピニオンギヤに砥粒をコートして基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤを準備する準備工程と、前記基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤのうち一方の基準ギヤとこの基準ギヤに対応した歯切加工後のワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させる第1研磨工程と、前記基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤのうち他方の基準ギヤとこの基準ギヤに対応した歯切加工後のワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させる第2研磨工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
この等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法では、等高歯が形成されたリングギヤと等高歯が形成されたピニオンギヤとからなる等高歯ハイポイドギヤを対象とするため、勾配歯ハイポイドギヤに比べて、歯切加工が容易であり、歯切装置の段取り調整を少なくできることから、ハイポイドギヤの製造工程全体のサイクルタイムを短縮化することができる。基準形状を有するリングギヤ及びピニオンギヤに砥粒をコートして基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤを準備する準備工程を有するため、最終製品の基準形状を有するリングギヤ及びピニオンギヤを用いて研磨砥石に相当する基準ギヤを形成することができる。
前記基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤのうち一方の基準ギヤとこの基準ギヤに対応した歯切加工後のワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させる第1研磨工程と、前記基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤのうち他方の基準ギヤとこの基準ギヤに対応した歯切加工後のワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させる第2研磨工程とを有するため、専用刃具による特別な移動操作を必要とすることなく、基準リングギヤ及び基準ピニオンギヤと各々に対応したワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させることでワークリングギヤ及びワークピニオンギヤの歯の表面及び裏面を夫々同時に研磨することができる。また、リングギヤ及びピニオンギヤをセット管理ではなくギヤ毎に独立して歯面精度管理できるため、一方のギヤが破損等によって交換された場合であっても、良好な歯当り状態を確保することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1,第2研磨工程では、基準ギヤとワークギヤの歯当り位置が移動するように前記基準ギヤとワークギヤの相対位置を変化させることを特徴としている。
この構成によれば、基準ギヤとワークギヤとの歯面仕上げが行われる歯当り領域を拡大することができ、新たにセットにされたピニオンギヤとリングギヤについて良好な歯当り状態を確実に確保することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、ワークギヤがリングギヤの場合、前記リングギヤを回転駆動可能に支持してこのリングギヤに噛合される基準ピニオンギヤをその回転軸心に平行方向及び直交方向に移動させ、基準ギヤがリングギヤの場合、前記基準リングギヤを回転駆動可能に支持してこの基準リングギヤに噛合されるワークギヤであるピニオンギヤをその回転軸心に平行方向及び直交方向に移動させることを特徴としている。
この構成によれば、小型の部材である基準ピニオンギヤまたはワークピニオンギヤの移動により、基準リングギヤとワークリングギヤとの歯当り領域を拡大することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記第1,第2研磨工程では、加工油を供給しないドライ加工で研磨することを特徴としている。
この構成によれば、研磨効率向上により、一層サイクルタイムの短縮化を図ることができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記基準リングギヤの歯幅がワークギヤであるリングギヤの歯幅よりも長いことを特徴としている。
この構成によれば、リングギヤに比べて歯幅の長いピニオンギヤの歯面を広範囲研磨することができる。
【0015】
請求項6の発明は、等高歯が形成されたリングギヤと、このリングギヤに噛合すると共に等高歯が形成されたピニオンギヤとからなる等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工装置において、基準形状を有するリングギヤとピニオンギヤのうち砥粒がコートされた基準ギヤを回転駆動可能に支持する第1駆動手段と、リングギヤとピニオンギヤのうち前記基準ギヤと噛合可能なワークギヤを回転駆動可能に支持する第2駆動手段と、前記第1,第2駆動手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記基準ギヤとワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させることを特徴としている。
この構成によれば、等高歯が形成されたリングギヤと等高歯が形成されたピニオンギヤとからなる等高歯ハイポイドギヤを対象とするため、勾配歯ハイポイドギヤに比べて、歯切工程が容易であり、歯切装置の段取り調整が少なくなることから、ハイポイドギヤの製造工程全体のサイクルタイムを短縮化することができる。
基準形状を有するリングギヤとピニオンギヤのうち砥粒がコートされた基準ギヤを回転駆動可能に支持する第1駆動手段と、リングギヤとピニオンギヤのうち前記基準ギヤと噛合可能なワークギヤを回転駆動可能に支持する第2駆動手段と、前記第1,第2駆動手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記基準ギヤとワークギヤとを噛み合わせた状態で回転させるため、最終製品の基準形状を有するリングギヤ及びピニオンギヤを用いて研磨砥石である基準ギヤを形成することができ、専用刃具による特別な移動操作を必要とすることなく、ワークギヤの歯の表面及び裏面を夫々同時に研磨することができる。また、リングギヤ及びピニオンギヤをセット管理ではなくギヤ毎に独立して歯面精度管理できるため、一方のギヤが破損等によって交換された場合であっても、良好な歯当り状態を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法及びホーニング加工装置によれば、最終製品の基準形状を有するリングギヤ及びピニオンギヤを用いて研磨砥石である基準ギヤを形成することにより、良好な歯当り状態の確保とサイクルタイムの短期化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係る等高歯ハイポイドギヤを備えたRDUを搭載したパワープラントユニットの斜視図である。
図2】RDUの破断説明図である。
図3】ハイポイドギヤの製造方法に係るステップチャートである。
図4】ホーニング装置の斜視図である。
図5】バイアスイン方向の歯当り調整の説明図である。
図6】バイアスアウト方向の歯当り調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1図6に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る等高歯ハイポイドギヤ10は、例えば、4輪駆動車両のパワープラントユニット1に装備される差動装置、具体的には、FDU(Front Differential Unite)2とRDU(Rear Differential Unite)3の主要な構成部品である。パワープラントユニット1は、エンジン4から出力された駆動力を変速機5によって変速し、変速された駆動力をFDU2及びRDU3を介して前後ドライブシャフト6,7に伝達している。
【0020】
図2に示すように、RDU3は、ピニオンギヤ20とリングギヤ30とを備えている。
ピニオンギヤ20は、歯丈が歯筋に沿って変化しない等高歯を有し、変速機5から出力された駆動力を下流側に伝達するリヤ側駆動軸8の先端(後端)に取り付けられている。
リングギヤ30は、歯丈が歯筋に沿って変化しない等高歯を有し、RDU3のケース3aの内側に取り付けられている。
【0021】
等高歯ピニオンギヤ20と等高歯リングギヤ30は、各々の回転中心軸が捩れ位置関係、つまり、相互に交差せず且つ非平行状態で噛合している。即ち、等高歯ハイポイドギヤ10は、ピニオンギヤ20とリングギヤ30が噛合された歯車対によって構成されている。
FDU2は、RDU3と同様に、ハイポイドギヤを構成するピニオンギヤとリングギヤとを備えている(何れも図示略)。
【0022】
次に、図3に基づき、完成品(最終製品)であるピニオンギヤ20とリングギヤ30の製造工程について説明する。尚、Si(i=1,2…)は各工程を示すステップである。
また、ピニオンギヤ製造ステップ(S12〜S15)は、リングギヤ製造ステップ(S2〜S5)と同時並行的に行われている。
【0023】
図3に示すように、準備工程S1では、基準ピニオンギヤ21と基準リングギヤ31とを夫々製作する。最初に、完成品の寸法形状を備え且つ個別に歯面精度が確保されたピニオンギヤ20とリングギヤ30を夫々形成する。これらピニオンギヤ20とリングギヤ30の歯面に硬質砥粒、或いは超砥粒を夫々被覆して基準ピニオンギヤ21と基準リングギヤ31を夫々作成する。具体的には、CBN(立方晶ホウソ)砥粒、TiN砥粒或いはダイヤモンド砥粒をピニオンギヤ20とリングギヤ30の歯面に夫々電着して基準ピニオンギヤ21及び基準リングギヤ31を作成している。尚、コーティング厚さは、砥粒の直径と略同等に設定されている。
【0024】
まず、リングギヤ製造ステップ(S2〜S5)について説明する。
歯切工程S2では、リングギヤ素材に完成品における歯の寸法形状を形成する。
リングギヤ素材は、焼入用合金鋼(機械構造用炭素鋼)であり、例えば、球状黒鉛鋳鉄(FCD45)である。歯は、ホブ盤によるホブ切り、或いはピニオンカッタ等を用いた歯切りによって切削加工され、リングギヤ素材からワークリングギヤ32を形成する。ホブの回転と共に一定比率でリングギヤ素材を回転させ、同時にホブをギヤ軸方向に送り出すことで創成歯切りが行われる。歯筋が捩れた曲線であるハイポイドギヤでは、環状カッタを用いた創成歯切りにより歯切り加工している。
【0025】
熱処理工程S3では、浸炭焼入れを行う。
歯切工程S2を終えたワークリングギヤ32を、例えば、900〜950℃の温度範囲に加熱し、1.5〜4時間保持して浸炭及び拡散処理を行う。その後、850℃まで温度を下げて所定時間温度を保持した後、200〜250℃のソルトバスに所定時間浸漬させて焼入れを行う。尚、この焼入れ後、130〜170℃の温度範囲で1〜2時間保持した後、空冷する焼き戻しを行うことで、ワークリングギヤ32の圧縮残留応力を更に高めることも可能である。
【0026】
図3に示すように、ショットピーニング工程S4では、歯面に対する圧縮残留応力付与を主目的としたショットピーニングを行う。
熱処理工程S3を終えたワークリングギヤ32の外周位置に、ショットピーニング装置(図示略)を配置している。ワークリングギヤ32を軸心回りに回転させながら鋼球粒子を歯及び歯底に向かって投射する。投射条件は、例えば、粒子の平均直径が0.1〜1.0mm、粒子の硬度が600〜800HV、投射速度が50〜100m/secに設定されている。粒子の平均直径が0.1mm未満では、圧縮残留応力が殆ど付与されず、1.0mm超では、歯面粗さが大きくなるためである。尚、投射速度を50〜60m/secのコンベンショナルショットと、50〜100m/secのハードショットの2段ショットピーニングにしても良い。
【0027】
ホーニング工程S5(第1研磨工程)は、ホーニング装置40と基準ピニオンギヤ21を用いてワークリングギヤ32の仕上げ加工としてホーニング加工を行う。
ホーニング工程S5では、マスタギヤである基準ピニオンギヤ21とショットピーニング工程S4を終えたワークリングギヤ32とを噛み合わせた状態において、両ギヤ21,32をギヤ比に応じて同期回転させて研磨している。また、このホーニング加工は、加工油を供給することなく、研磨(ドライ加工)を行うことにより、研磨効率を高め、サイクルタイムの短縮化を図っている。
【0028】
図4に示すように、ホーニング装置40は、ピニオンヘッド41と、リングギヤヘッド42と、基準ピニオンギヤ21とワークリングギヤ32との歯当り状態を制御するコントローラ43(制御手段)等を主な構成要素としている。
ピニオンヘッド41は、基準ピニオンギヤ21を回転駆動可能に保持するピニオン保持軸44(第1駆動手段)と、このピニオン保持軸44を回転駆動するピニオン駆動モータ44aを備えている。リングギヤヘッド42は、ワークリングギヤ32を回転駆動可能に保持するリングギヤ保持軸45(第2駆動手段)と、このリングギヤ保持軸45を回転駆動するリングギヤ駆動モータ45aを備えている。
【0029】
ホーニング装置40は、ピニオンヘッド41を基準ピニオンギヤ21の回転軸心方向(以下、X軸方向と言う。)に移動するX軸移動機構46と、ピニオンヘッド41を基準ピニオンギヤ21の回転軸心直交方向(以下、Y軸方向と言う。)に移動するY軸移動機構47と、リングギヤヘッド42をワークリングギヤ32の回転軸心方向(以下、Z軸方向と言う。)に移動するZ軸移動機構48等を有している。
【0030】
X軸移動機構46は、X軸移動モータ46aによって基準ピニオンギヤ21をワークリングギヤ32の回転中心に接近する方向(X軸負方向)及びワークリングギヤ32の回転中心から離隔する方向(X軸正方向)に移動する。Y軸移動機構47は、Y軸移動モータ47aによって基準ピニオンギヤ21をワークリングギヤ32の回転中心から離隔する下方向(Y軸正方向)及びワークリングギヤ32の回転中心に接近する上方向(Y軸負方向)に移動する。Z軸移動機構48は、Z軸移動モータ48aによってワークリングギヤ32を基準ピニオンギヤ21の回転中心に接近する方向(Z軸負方向)及び基準ピニオンギヤ21の回転中心から離隔する方向(Z軸正方向)に移動する。コントローラ43は、各モータ44a〜48aに対して設計諸元に基づく指令信号を出力している。
【0031】
このホーニング工程S5では、基準ピニオンギヤ21とワークリングギヤ32の歯当り領域を拡大するため、基準ピニオンギヤ21とワークリングギヤ32の歯当り位置をバイアスイン方向及びバイアスアウト方向に移動するように処理している。
尚、図5(b),図6(b)は、ワークリングギヤ32の歯当りの移動例である。
図5(a),図5(b)に示すように、ワークリングギヤ32を回転駆動可能に支持した状態で、基準ピニオンギヤ21を基準位置からX軸負方向に所定距離(例えば、50μm)移動した場合、ワークリングギヤ32の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)外側下方に移動する(Sx1)。また、基準ピニオンギヤ21を基準位置からX軸正方向に所定距離(例えば、50μm)移動した場合、ワークリングギヤ32の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)内側上方に移動する(Sx2)。本実施形態では、基準ピニオンギヤ21によるX軸方向の上記移動(バイアスイン方向の移動)を3往復行っている。
【0032】
図6(a),図6(b)に示すように、ワークリングギヤ32を回転駆動可能に支持した状態で、基準ピニオンギヤ21を基準位置からY軸負方向に所定距離(例えば、50μm)移動した場合、ワークリングギヤ32の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)内側下方に移動する(Sy2)。また、基準ピニオンギヤ21を基準位置からY軸正方向に所定距離(例えば、50μm)移動した場合、ワークリングギヤ32の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)外側上方に移動する(Sy1)。本実施形態では、基準ピニオンギヤ21によるY軸方向の上記移動(バイアスアウト方向の移動)を3往復行っている。以上のように、基準ピニオンギヤ21とワークリングギヤ32の歯当り位置をバイアスイン方向及びバイアスアウト方向に移動させることにより、ワークリングギヤ32の歯研領域を拡大し、歯面精度が高いリングギヤ30を得ている。
【0033】
次に、ピニオンギヤ製造ステップ(S12〜S15)について説明する。
図3に示すように、歯切工程S12では、ピニオンギヤ素材に対して完成品に対応した歯の寸法形状を形成する。ピニオンギヤ素材は、リングギヤ素材と同様である。歯は、環状カッタを用いた歯切りによって切削加工され、ピニオンギヤ素材からワークピニオンギヤ22を形成している。
熱処理工程S13では、熱処理工程S3と同様の浸炭焼入れを行い、ショットピーニング工程S14では、ショットピーニング工程S4と同様のショットピーニングを行う。
【0034】
次に、ホーニング工程S15は、ホーニング工程S5と同様のホーニング装置40(図4参照)と基準リングギヤ31を用いてワークピニオンギヤ22のホーニング加工を行う。ホーニング工程S15では、マスタギヤである基準リングギヤ31とショットピーニング工程S14を終えたワークピニオンギヤ22とを噛み合わせた状態において、両ギヤ22,31をギヤ比に応じて同期回転させて研磨する。
【0035】
このホーニング工程S15では、基準リングギヤ31とワークピニオンギヤ22の歯当り領域を拡大するため、基準リングギヤ31とワークピニオンギヤ22の歯当り位置をバイアスイン方向及びバイアスアウト方向に移動させている。
尚、図5(b),図6(b)は、基準リングギヤ31の歯当りの移動例である。
図5(a),図5(b)に示すように、基準リングギヤ31を回転駆動可能に支持した状態で、ワークピニオンギヤ22を基準位置からX軸負方向に所定距離(例えば、50μm)移動させることにより、基準リングギヤ31の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)外側下方に移動する(Sx1)。また、ワークピニオンギヤ22を基準位置からX軸正方向に所定距離(例えば、50μm)移動させることにより、基準リングギヤ31の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)内側上方に移動する(Sx2)。それ故、ワークピニオンギヤ22の歯当り位置は、基準リングギヤ31の歯当り位置の移動に伴って移動する。このホーニング工程S15は、ワークピニオンギヤ22によるX軸方向の上記移動を3往復行っている。
【0036】
図6(a),図6(b)に示すように、基準リングギヤ31を回転駆動可能に支持した状態で、ワークピニオンギヤ22を基準位置からY軸負方向に所定距離(例えば、50μm)移動させることにより、基準リングギヤ31の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)内側下方に移動する(Sy2)。また、ワークピニオンギヤ22を基準位置からY軸正方向に所定距離(例えば、50μm)移動させることにより、基準リングギヤ31の歯当り位置は、初期位置Sから所定距離(例えば、20mm)外側上方に移動する(Sy1)。それ故、ワークピニオンギヤ22の歯当り位置は、基準リングギヤ31の歯当り位置の移動に伴って移動する。このホーニング工程S15は、ワークピニオンギヤ22によるX軸方向の上記移動を3往復行っている。以上のように、ワークピニオンギヤ22と基準リングギヤ31の歯当り位置をバイアスイン方向及びバイアスアウト方向に移動させることにより、ワークピニオンギヤ22の歯研領域を拡大し、歯面精度が高いピニオンギヤ20を得ている。
【0037】
ホーニング工程S5が終了したリングギヤ30及びホーニング工程S15が終了したピニオンギヤ20は、1セットにされハイポイドギヤ10を構成する。
これらピニオンギヤ20及びリングギヤ30は、テスタによる歯当り等の品質検査後、RDU3に組み付けられる。
【0038】
次に、上記等高歯ハイポイドギヤのホーニング加工方法の作用、効果について説明する。
このホーニング加工方法によれば、等高歯が形成されたリングギヤ30と等高歯が形成されたピニオンギヤ20とからなる等高歯ハイポイドギヤ10を対象とするため、勾配歯ハイポイドギヤに比べて、歯切加工が容易であり、歯切装置の段取り調整が少なくなることから、ハイポイドギヤ10の製造工程全体のサイクルタイムを短縮化することができる。
基準形状を有するリングギヤ30及びピニオンギヤ20に砥粒をコートして基準リングギヤ31及び基準ピニオンギヤ21を準備する準備工程S1を有するため、最終製品の基準形状を有するリングギヤ30及びピニオンギヤ20を用いて研磨砥石に相当する基準ギヤ21,31を形成することができる。基準ピニオンギヤ21とこの基準ピニオンギヤ21に対応した歯切加工後のワークリングギヤ32とを噛み合わせた状態で回転させるホーニング工程S5と、基準リングギヤ31とこの基準リングギヤ31に対応した歯切加工後のワークピニオンギヤ22とを噛み合わせた状態で回転させるホーニング工程S15とを有するため、専用刃具による特別な移動操作を必要とすることなく、基準リングギヤ31及び基準ピニオンギヤ21と各々に対応したワークギヤ22,32とを噛み合わせた状態で回転させることでワークリングギヤ32及びワークピニオンギヤ22の歯の表面及び裏面を夫々同時に研磨することができる。また、リングギヤ及びピニオンギヤをセット管理ではなくギヤ毎に独立して歯面精度管理できるため、一方のギヤが破損等によって交換された場合であっても、良好な歯当り状態を確保することができる。
【0039】
ホーニング工程S5,S15では、基準ギヤ21,31とワークギヤ22,32の歯当り位置が移動するように基準ギヤ21,31とワークギヤ22,32の相対位置を変化させるため、基準ギヤ21,31とワークギヤ22,32との歯研が行われる歯当り領域を拡大することができ、ギヤ交換時、新たにセットにされたピニオンギヤ20とリングギヤ30について良好な歯当り状態を確実に確保することができる。
【0040】
ワークギヤがワークリングギヤ32の場合、ワークリングギヤ32を回転駆動可能に支持してこのワークリングギヤ32に噛合される基準ピニオンギヤ21をその回転軸心に平行方向及び直交方向に移動させ、基準ギヤが基準リングギヤ31の場合、基準リングギヤ31を回転駆動可能に支持してこの基準リングギヤ31に噛合されるワークピニオンギヤ22をその回転軸心に平行方向及び直交方向に移動させるため、小型の部材である基準ピニオンギヤ21またはワークピニオンギヤ22の移動により、基準ギヤ21(31)とワークギヤ32(22)との歯当り領域を拡大することができる。
【0041】
ホーニング工程S5,S15では、加工油を供給しないドライ加工で研磨するため、研磨効率向上により、一層サイクルタイムの短縮化を図ることができる。
【0042】
このホーニング装置40によれば、等高歯が形成されたリングギヤ30と等高歯が形成されたピニオンギヤ20とからなる等高歯ハイポイドギヤ10を対象とするため、勾配歯ハイポイドギヤに比べて、歯切工程が容易であり、歯切装置の段取り調整が少なくなることから、ハイポイドギヤ10の製造工程全体のサイクルタイムを短縮化することができる。
基準形状を有するリングギヤ30とピニオンギヤ20のうち砥粒がコートされた基準ピニオンギヤ21を回転駆動可能に支持するピニオン保持軸44と、基準ピニオンギヤ21と噛合可能なワークリングギヤ32を回転駆動可能に支持するリングギヤ保持軸45と、ピニオン保持軸44とリングギヤ保持軸45を制御するコントローラ43とを有し、コントローラ43は、基準ピニオンギヤ21とワークリングギヤ32とを噛み合わせた状態で回転させるため、最終製品の基準形状を有するリングギヤ30及びピニオンギヤ20を用いて研磨砥石である基準ピニオンギヤ21を形成することができ、専用歯具による特別な移動操作を必要とすることなく、ワークリングギヤ32の歯の表面及び裏面を夫々同時に夫々研磨することができる。また、リングギヤ30及びピニオンギヤ20をセット管理ではなく歯面精度管理できるため、一方のギヤが破損等によって交換された場合であっても、良好な歯当り状態を確保することができる。
【0043】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、完成品であるリングギヤ30を砥粒で被覆して基準リングギヤ31を形成した例を説明したが、基準リングギヤ31の歯幅をリングギヤ30の歯幅よりも径方向外側に大きく形成しても良い。
通常、ピニオンギヤ20の歯幅は、構造上、リングギヤ30の歯幅よりも長くなるように構成されている。それ故、完成品であるリングギヤ30と同寸法の基準リングギヤ31を駆動して歯当り位置を移動させても、ワークピニオンギヤ22の歯面に対して広い歯当り領域を形成することが困難である。そこで、基準リングギヤ31の歯幅をリングギヤ30の歯幅よりも径方向外側に大きく形成することにより、ワークピニオンギヤ22の歯面上に広範囲の歯当り領域を形成することができる。
【0044】
2〕前記実施形態においては、ホーニング工程S5,S15の前に、歯面に対する圧縮残留応力付与を主目的としたショットピーニング工程S4,S14を行う例を説明したが、ホーニング工程S5,S15の後に、砥粒の圧着による歯筋方向に延びる筋目状の加工痕を除去するショットピーニング工程を追加しても良い。
【0045】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0046】
10 ハイポイドギヤ
20 ピニオンギヤ
21 基準ピニオンギヤ
22 ワークピニオンギヤ
30 リングギヤ
31 基準リングギヤ
32 ワークリングギヤ
40 ホーニング装置
44 ピニオン保持軸
45 リングギヤ保持軸
S1 準備工程
S5 (リングギヤ)ホーニング工程
S15 (ピニオンギヤ)ホーニング工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6