特開2021-84324(P2021-84324A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-84324(P2021-84324A)
(43)【公開日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20210507BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20210507BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   C23C16/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2019-214903(P2019-214903)
(22)【出願日】2019年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】大関 美保
(72)【発明者】
【氏名】山川 勝平
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】花岡 秀典
【テーマコード(参考)】
4F100
4K030
【Fターム(参考)】
4F100AA01C
4F100AH00B
4F100AK01A
4F100AK41A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100EH66C
4F100EJ54B
4F100GB41
4F100JB14A
4F100JD02
4F100JD04
4F100JK00
4F100JK17A
4F100JL04
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA13
4K030AA16
4K030AA18
4K030AA24
4K030BA35
4K030BA37
4K030BA44
4K030CA07
4K030CA17
4K030DA02
4K030DA09
4K030FA01
4K030GA14
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA12
4K030JA16
4K030JA18
4K030LA16
4K030LA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反り抑制効果に優れ、好ましくは、緻密性の高い無機薄膜層を含むことにより高いガスバリア性を有する積層フィルムの提供。
【解決手段】可撓性基材を含む基材層1、有機層2および無機薄膜層3をこの順に含む積層フィルム4であって、基材層1と有機層2とからなる積層体を、130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される有機層2の内部応力が0.2GPa以上である積層フィルム4。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基材を含む基材層、有機層および無機薄膜層をこの順に含む積層フィルムであって、前記基材層と前記有機層とからなる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記有機層の内部応力が0.2GPa以上である積層フィルム。
【請求項2】
前記基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とからなる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記無機薄膜層の内部応力が2.0GPa以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記基材層、前記有機層および前記無機薄膜層からなる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される、前記有機層および前記無機薄膜層からなる積層膜の内部応力が0.030GPa以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記基材層と前記有機層とからなる積層体を180℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される有機層の内部応力が0.8GPa以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とからなる積層体を180℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される無機薄膜層の内部応力が3.0GPa以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
無機薄膜層が基材層の一方の面側のみに存在する、請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
基材層の前記有機層とは反対側の面に有機層をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
無機薄膜層はプラズマ化学気相成長法により形成された層である、請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
無機薄膜層は、珪素原子、酸素原子および炭素原子を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、連続的に変化する、請求項9に記載の積層フィルム。
【請求項11】
ガスバリア性を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性基材を含む基材層、有機層および無機薄膜層をこの順に含む積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性を付与した積層フィルムは、食品、工業用品、医薬品などの包装用途において広く使用されている(例えば、特許文献1)。近年、太陽電池および有機ELディスプレイ、有機EL照明等の電子デバイスのフレキシブル基板等において、上記食品用途等と比較してさらに向上したガスバリア性を有する積層フィルムが求められている。このような積層フィルムのガスバリア性等を高めるために、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる可撓性基材上に、有機層を介して薄膜層を積層させた積層フィルムが開発されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−68267号公報
【特許文献2】特開2016−68383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、電子デバイス等に用いられる積層フィルムには、食品や医薬品用途等に用いられる積層フィルムと比較して高いガスバリア性が要求される。かかる求めに応じて、例えば、特許文献2に記載される積層フィルムは、特許文献1に記載されるような従来のガスバリア性積層フィルムを構成する無機層と比較して、より緻密性の高い薄膜層を積層することによって高いガスバリア性を実現している。
しかしながら、本発明者等の検討によれば、緻密性の高い薄膜層では層内に高い圧縮応力が生じやすく、該薄膜層に生じる圧縮応力に起因して積層フィルム全体に反りが発生しやすくなるという問題があることがわかった。特に、可撓性基材を用いる積層フィルムでは、その製造過程における可撓性基材の膨張・収縮変化によって積層フィルム全体の反りがより大きくなる傾向にあり、高い緻密性を確保したまま積層フィルムの反りを抑制する技術が必要とされている。
【0005】
従って、本発明は、反り抑制効果に優れ、好ましくは、緻密性の高い無機薄膜層を含むことにより高いガスバリア性を有する積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
【0007】
[1]可撓性基材を含む基材層、有機層および無機薄膜層をこの順に含む積層フィルムであって、前記基材層と前記有機層とからなる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記有機層の内部応力が0.2GPa以上である積層フィルム。
[2]前記基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とからなる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記無機薄膜層の内部応力が2.0GPa以上である、前記[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記基材層、前記有機層および前記無機薄膜層からなる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される、前記有機層および前記無機薄膜層からなる積層膜の内部応力が0.030GPa以下である、前記[1]または[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記基材層と前記有機層とからなる積層体を180℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記有機層の内部応力が0.8GPa以上である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5]前記基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とからなる積層体を180℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記無機薄膜層の内部応力が3.0GPa以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]無機薄膜層が基材層の一方の面側のみに存在する、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]基材層の前記有機層とは反対側の面に有機層をさらに含む、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
[8]無機薄膜層はプラズマ化学気相成長法により形成された層である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
[9]無機薄膜層は、珪素原子、酸素原子および炭素原子を含有する、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
[10]無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、連続的に変化する、前記[9]に記載の積層フィルム。
[11]ガスバリア性を有する、前記[1]〜[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反り抑制効果に優れ、緻密性の高い無機薄膜層を含むことにより高いガスバリア性を有する積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の積層フィルムの一例を示す断面模式図である。
図2】本発明の積層フィルムの他の一例を示す断面模式図である。
図3】本発明の積層フィルムのさらに他の一例を示す断面模式図である。
図4】実施例および比較例で使用した積層フィルムの製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0011】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、可撓性基材を含む基材層(以下、単に「基材層」ともいう)、有機層および無機薄膜層をこの順に含む。
本発明において、積層フィルムを構成する前記基材層と前記有機層とかるなる積層体を、130℃以上の温度で30分間加熱した後、25℃で10分間放冷して測定される、前記有機層の内部応力は0.2GPa以上である。ガスバリア性を向上させるために緻密性を高めた無機薄膜層では、該層内に生じる高い圧縮応力に起因して該無機薄膜層を形成する面に対して凸状の反りが生じやすくなる。本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムを構成する基材層と有機層とからなる積層体を、130℃以上に加熱した後測定される上記有機層の内部応力(以下、「有機層内部応力A」ともいう)を0.2GPa以上とすることで、基材層と薄膜無機層との間に存在する有機層に無機薄膜層で生じる高い圧縮応力に起因する反りを解消し得る適度な引張応力を付与し、これによって積層フィルム全体の反りを抑制することができる。有機層内部応力Aが0.2GPa未満であると、無機薄膜層が高い圧縮応力を有する場合に無機薄膜層の反りを十分に抑制し難くなり、反り抑制効果の観点において、緻密性が高くガスバリア性に優れる無機薄膜層を有する積層フィルムの構成として適さない場合がある。有機層内部応力Aは、好ましくは0.25GPa以上、より好ましくは0.3GPa以上である。通常、有機層内部応力Aが高くなるほど、無機薄膜層で生じる圧縮応力を打ち消す効果は高まる傾向にある。有機層内部応力Aは、積層フィルムを構成する無機薄膜層の圧縮応力に応じて適宜調整すればよいが、無機薄膜層形成時の反り調整のしやすさ、無機薄膜層のクラック発生抑制の観点から、その上限値は通常7.5GPa以下であり、好ましくは5.0GPa以下である。
【0012】
上記有機層内部応力Aは、対象となる積層フィルムを構成する基材層と有機層とからなる積層体において測定される。本発明の積層フィルムが基材層の両面に有機層を有する場合、上記有機層内部応力Aは、基材層と、無機薄膜層が積層される側に位置する有機層(無機薄膜層が両面にある場合には、基材層と一方の無機薄膜層との間に位置する有機層)とからなる積層体における内部応力を意味する。また、基材層と無機薄膜層との間に複数の有機層が存在する場合には、上記有機層内部応力Aは、基材層と、基材層と無機薄膜層との間に存在する全ての有機層とからなる積層体における内部応力を意味する。基材層の両面に有機層と無機薄膜層とがそれぞれ存在する場合には、基材層の少なくとも一方の面に積層される有機層が上記範囲の内部応力を有すればよいが、基材層を中心としてそれぞれの側に積層される有機層が、該層に積層される無機薄膜層に生じる圧縮応力に起因する反りを解消するのに十分な内部応力(引張応力)を有していることが好ましく、基材層を中心にバランスよく反り抑制効果が発現し得るため、それぞれの側の有機層と基材層とからなる積層体が、それぞれ上記範囲の内部応力を有することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、本発明の積層フィルムは、基材層と有機層とからなる積層体を130℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される有機層の内部応力(以下、「有機層内部応力A(130℃)」ともいう)が0.2GPa以上であることが好ましい。有機層内部応力A(130℃)が0.2GPa以上であると、高い圧縮応力に起因して生じる無機薄膜層の反りを解消し得る十分に高い引張応力を有機層で確保しやすく、これにより積層フィルム全体の反りを抑制することができる。有機層内部応力A(130℃)は、好ましくは0.25GPa以上、より好ましくは0.3GPa以上であり、また、無機薄膜層形成時の反り調整のしやすさ、無機薄膜層のクラック発生抑制の観点から、その上限値は通常7.5GPa以下であり、好ましくは5.0GPa以下である。
【0014】
本発明の別の一態様において、本発明の積層フィルムは、基材層と有機層とからなる積層体を180℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される有機層の内部応力(以下、「有機層内部応力A(180℃)」ともいう)が0.8GPa以上であることが好ましい。有機層内部応力A(180℃)が0.8GPa以上であると、高い圧縮応力に起因して生じる無機薄膜層の反りを解消し得る十分に高い引張応力を有機層で確保しやすく、これにより積層フィルム全体の反りを抑制することができる。有機層内部応力A(180℃)は、好ましくは0.9GPa以上、より好ましくは1.0GPa以上であり、また、無機薄膜層形成時の反り調整のしやすさ、無機薄膜層のクラック発生抑制の観点から、その上限値は通常7.5GPa以下であり、好ましくは5.0GPa以下である。
【0015】
また、本発明のさらなる別の一態様においては、有機層内部応力A(130℃)が0.2GPa以上であり、かつ、有機層内部応力A(180℃)が0.8GPa以上であることが好ましく、有機層内部応力A(130℃)および(180℃)がそれぞれ先の段落に記載した範囲内の内部応力を有することがより好ましい。有機層内部応力A(130℃)および(180℃)がそれぞれ上記範囲内であると、高い圧縮応力に起因して生じる無機薄膜層の反りを解消し得る十分に高い引張応力を有機層でより確保しやすくなり、積層フィルムの反り抑制効果がより効果的に向上し得る。
【0016】
有機層内部応力Aは、有機層の組成、基材層の構成、可撓性基材の種類、有機層および/または基材層の厚み、有機層を形成する際の塗布方法、張力・温度・滞留時間などの乾燥条件、温度・UV照射条件などの硬化条件等を適宜選択することにより制御することができる。
【0017】
前記有機層内部応力Aを測定する際の積層体の加熱温度は130℃以上である。一般に、積層フィルムを太陽電池および有機ELディスプレイ、有機EL照明等の電子デバイスに貼り合わせて用いる場合、積層フィルム表面に吸着した水分や貼り合わせる際に用いる接着剤や接着シートの脱水のため、例えば130℃以上の高温環境下に曝されることがあり、その工程で大きな反りを生じた場合、電子デバイスに貼り合わせる際に、気泡やシワ、クラックなどの張り合わせ不良を生じることがある。有機層を含む前記積層体を130℃以上に加熱した際に、該積層体が上記範囲の有機層内部応力を有すれば、130℃以上の高温環境下に曝される工程を経るような積層フィルムにおいても高い反り抑制効果を期待できる。したがって、上記加熱温度は130℃以上であればよく、好ましくは130℃以上200℃以下であり、より好ましくは130℃または180℃であり、本発明の一態様においては130℃であり、別の一態様においては180℃である。
【0018】
本発明において、前記有機層内部応力Aは、測定対象とする基材層と有機層とからなる積層体を室温(25℃)から130℃以上の温度で30分間加熱した後、25℃で10分間放冷した際の積層体の変形量に基づき算出することができる。具体的には、適当な大きさの四角形に切り出した測定対象となる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱し、次いで25℃で10分間放冷した後水平面上に載置し、水平面から四隅までの距離(高さ)を測定し、それらの平均値から曲率半径を算出する。なお、放冷後の積層体が筒状である場合は、筒内部の直径を測定し、曲率半径を算出する。算出された曲率半径、基材層および有機層の各厚み、基材層のヤング率およびポアゾン比から、下記式(1):
有機層内部応力A(GPa)=Eh/6(1−v)Rt (1)
〔式中、
tは有機層の厚み(m)、Rは曲率半径(m)、hは基材層の厚み(m)、Eは基材層のヤング率(Pa)、vは基材層のポアソン比を表す。〕
に従い、有機層の内部応力を算出することができる。より詳細には、有機層内部応力Aは、例えば後述する実施例に記載の方法に従い測定、算出することができる。
【0019】
本発明において、積層フィルムを構成する基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とかるなる積層体を、130℃以上の温度で30分間加熱した後、25℃で10分間放冷して測定される無機薄膜層の内部応力は2.0GPa以上であることが好ましい。積層フィルムを構成する基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とからなる積層体を、130℃以上に加熱した後測定される上記無機薄膜層の内部応力(以下、「無機薄膜層内部応力B」ともいう)が2.0GPa以上であると、無機薄膜層の緻密性を十分に高めやすく、積層フィルムの高いガスバリア性を実現しやすい。無機薄膜層内部応力Bは、より好ましくは2.1GPa以上、さらに好ましくは2.2GPa以上である。通常、無機薄膜層内部応力Bが高くなるほど、無機薄膜層の緻密性が高くなり、ガスバリア性が向上する傾向にある。無機薄膜層内部応力Bは、通常、所望するガスバリア性を確保し得るよう無機薄膜層の構成に応じて変化するものであるが、無機薄膜層の十分な緻密性を確保でき、かつ、過剰な圧縮応力を生じ難い範囲として、その上限値は通常15GPa以下であり、好ましくは10GPa以下である。なお、無機薄膜層内部応力Bは、通常、圧縮応力である。
【0020】
本発明の一態様において、本発明の積層フィルムは、基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とかるなる積層体を130℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記無機薄膜層の内部応力(以下、「無機薄膜層内部応力B(130℃)」ともいう)が2.0GPa以上であることが好ましい。無機薄膜層内部応力B(130℃)が2.0GPa以上であると、無機薄膜層の緻密性を十分に高めやすく、積層フィルムの高いガスバリア性を実現しやすい。無機薄膜層内部応力B(130℃)は、より好ましくは2.1GPa以上、さらに好ましくは2.2GPa以上であり、また、無機薄膜層の十分な緻密性を確保でき、かつ、過剰な圧縮応力の発生を抑制する観点から、その上限値は通常10GPa以下であり、好ましくは15GPa以下である。
【0021】
本発明の別の一態様において、本発明の積層フィルムは、基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とかるなる積層体を180℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される前記無機薄膜層の内部応力(以下、「無機薄膜層内部応力B(180℃)」ともいう)が3.0GPa以上であることが好ましい。無機薄膜層内部応力B(180℃)が3.0GPa以上であると、無機薄膜層の緻密性を十分に高めやすく、積層フィルムの高いガスバリア性を実現しやすい。無機薄膜層内部応力B(180℃)は、より好ましくは3.2GPa以上、さらに好ましくは3.5GPa以上であり、また、無機薄膜層の十分な緻密性を確保でき、かつ、過剰な圧縮応力の発生を抑制する観点から、その上限値は通常15GPa以下であり、好ましくは10GPa以下である。
【0022】
また、本発明のさらなる別の一態様においては、無機薄膜層内部応力B(130℃)が2.0GPa以上であり、かつ、無機薄膜層内部応力B(180℃)が3.0GPa以上であることが好ましく、無機薄膜層内部応力B(130℃)および(180℃)がそれぞれ先の段落に記載した範囲内の内部応力を有することがより好ましい。無機薄膜層内部応力B(130℃)および(180℃)がそれぞれ上記範囲内であると、無機薄膜層の緻密性をより高めやすくなり、積層フィルムのガスバリア性がより効果的に向上し得る。
【0023】
無機薄膜層内部応力Bは、無機薄膜層の組成、無機薄膜層を構成する無機材料/化合物の分布(密度)、基材層の構成、可撓性基材の種類、無機薄膜層および/または基材層の厚み、無機薄膜層を形成する際の成膜条件等を適宜選択することにより制御することができる。
【0024】
上記無機薄膜層内部応力Bは、対象となる積層フィルムを構成する基材層と該基材層上に直接積層された無機薄膜層とかるなる積層体において測定される。本発明の積層フィルムは、基材層と無機薄膜層との間に有機層を含むため、無機薄膜層内部応力Bの測定は、例えば、測定対象となる積層フィルムと同じ基材層上に、測定対象となる積層フィルムを構成する無機薄膜層と同じ方法で無機薄膜層を形成した測定用の積層体において測定される。基材層の両側に無機薄膜層が存在する場合、上記無機薄膜層内部応力Bは、基材層と基材層の一方の側に積層される無機薄膜層とからなる積層体における内部応力を意味する。積層フィルムが基材層の両側に無機薄膜層を有する場合、2つの無機薄膜層の無機薄膜層内部応力Bは互いに同程度であっても、異なっていてもよく、少なくとも一方の側の無機薄膜層が上記範囲の内部応力を有することが好ましい。
【0025】
本発明において、前記無機薄膜層内部応力Bは、測定対象とする基材層と無機薄膜層とからなる積層体を室温(25℃)から130℃以上の温度で30分間加熱した後、25℃で10分間放冷した際の積層体の変形量に基づき算出することができる。具体的には、先に記載の有機層内部応力Aの測定方法と同様の方法に従い、適当な大きさの四角形に切り出した測定対象となる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱し、次いで25℃で10分間放冷した後水平面上に載置し、水平面から四隅までの距離(高さ)を測定し、それらの平均値から曲率半径を算出する。なお、放冷後の積層体が筒状である場合は、筒内部の直径を測定し、曲率半径を算出する。算出された曲率半径、基材層および無機薄膜層の各厚み、基材層のヤング率およびポアゾン比から、下記式(2):
無機薄膜層内部応力B(GPa)=Eh/6(1−v)Rt’ (2)
〔式中、
t’は無機薄膜層の厚み(m)、Rは曲率半径(m)、hは基材層の厚み(m)、Eは基材層のヤング率(Pa)、vは基材層のポアソン比を表す。〕
に従い、無機薄膜層の内部応力を算出することができる。
【0026】
前記無機薄膜層内部応力Bを測定する際の積層体の加熱温度は130℃以上である。上記加熱温度は130℃以上であればよいが、好ましくは130℃以上200℃以下であり、より好ましくは130℃または180℃であり、本発明の一態様においては130℃であり、別の一態様においては180℃である。無機薄膜層に生じる内部応力(圧縮応力)に起因して起こる無機薄膜層の反りを、該無機薄膜層と基材層との間に位置する有機層に生じる内部応力(引張応力)によって解消することにより、積層フィルムの反り抑制効果を向上させ得るため、無機薄膜層において前記有機層内部応力Aと同じ温度で上記特定範囲の無機薄膜層内部応力Bが生じることが好ましい。したがって、無機薄膜層内部応力Bを測定する際の上記加熱温度は、測定対象とする有機層の有機層内部応力Aを測定する際に適用する加熱温度と同じ温度とすることが好ましい。
より具体的には、無機薄膜層内部応力Bは、例えば後述する実施例に記載の方法に従い測定、算出することができる。
【0027】
本発明の積層フィルムにおいて有機層は、無機薄膜層内部応力B(130℃)の8%以上の有機層内部応力A(130℃)を有することが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは12%以上の有機層内部応力A(130℃)を有する。また、本発明において有機層は、無機薄膜層内部応力B(180℃)の15%以上の有機層内部応力A(180℃)を有することが好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上の有機層内部応力A(180℃)を有する。無機薄膜層内部応力Bに対して有機層内部応力Aが上記下限値以上であると、無機薄膜層に生じる内部応力(圧縮応力)に起因して生じる無機薄膜層の反りを抑制するのに適した有機層となり得る。通常、有機層の厚みは無機薄膜層の厚みよりも大きく設計されるため、本発明の積層フィルムにおいて、有機層内部応力Aは無機薄膜層内部応力Bよりも小さいことが好ましく、上記無機薄膜層内部応力Bに対する有機層内部応力Aの上限値は、通常50%以下であり、好ましくは40%以下である。
【0028】
本発明の積層フィルムは、比較的高い有機層内部応力Aを有することにより、緻密性が高く、ガスバリア性に優れる無機薄膜層を含む場合であっても、該無機薄膜層に生じる高い圧縮応力に起因する反りを抑制する効果に優れる。したがって、本発明の積層フィルムは、該積層フィルムを構成する基材層と有機層と無機薄膜層とからなる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される、前記有機層と前記無機薄膜層とからなる積層膜の内部応力(以下、「積層膜内部応力C」ともいう)が0.030GPa以下であることが好ましい。積層膜内部応力Cが0.030GPa以下であると、高い圧縮応力に起因して生じる無機薄膜層の反りが、特定の範囲の内部応力を有する有機層によって抑制されていると考えられ、無機薄膜層の緻密性が高く優れたガスバリア性を確保しながら、積層フィルム全体として反りの抑制された積層フィルムを得ることができる。上記積層膜内部応力Cは、より好ましくは0.025GPa以下であり、さらに好ましくは0.020GPa以下である。通常、積層膜内部応力Cの値が小さいほど積層フィルムの反り抑制効果は高くなるため、積層膜内部応力Cの下限値は特に限定されず、0GPaであってよい。
なお、積層フィルムが基材層と有機層および/または有機層と無機薄膜層の間に複数の有機層や他の層を含む場合、上記積層膜内部応力Cは、基材層と、無機薄膜層が積層される側に位置する基材層と無機薄膜層までの間に含まれる全ての層と、無機薄膜層とからなる積層体における内部応力を意味する。
【0029】
本発明の一態様において、本発明の積層フィルムは、該積層フィルムを構成する基材層と有機層と無機薄膜層とからなる積層体を130℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される、前記有機層と前記無機薄膜層とからなる積層膜の内部応力(以下、「積層膜内部応力C(130℃)」ともいう)が0.030GPa以下であることが好ましい。積層膜内部応力C(130℃)が0.030GPa以下であると、無機薄膜層の緻密性が高く優れたガスバリア性を確保しながら、積層フィルム全体として反りの抑制された積層フィルムが得られやすい。積層膜内部応力C(130℃)は、より好ましくは0.025GPa以下であり、さらに好ましくは0.020GPa以下であり、また、その下限値は0GPaであってよい。
【0030】
本発明の別の一態様において、本発明の積層フィルムは、該積層フィルムを構成する基材層と有機層と無機薄膜層とからなる積層体を180℃で30分間加熱後、25℃で10分間放冷して測定される、前記有機層と前記無機薄膜層とからなる積層膜の内部応力(以下、「積層膜内部応力C(180℃)」ともいう)が0.020GPa以下であることが好ましい。積層膜内部応力C(180℃)が0.020GPa以下であると、無機薄膜層の緻密性が高く優れたガスバリア性を確保しながら、積層フィルム全体として反りの抑制された積層フィルムが得られやすい。積層膜内部応力C(180℃)は、より好ましくは0.015GPa以下であり、さらに好ましくは0.010GPa以下であり、また、その下限値は0GPaであってよい。
【0031】
また、本発明のさらなる別の一態様においては、積層膜内部応力C(130℃)が0.030GPa以下であり、かつ、積層膜内部応力C(180℃)が0.020GPa以下であることが好ましく、積層膜内部応力C(130℃)および(180℃)がそれぞれ先の段落に記載した上限値以下の内部応力を有することがより好ましい。積層膜内部応力C(130℃)および(180℃)がそれぞれ上記上限値以下であると、無機薄膜層の緻密性が高く優れたガスバリア性を確保しながら、積層フィルムの反り抑制効果がより向上し得る。
【0032】
本発明において、前記積層膜内部応力Cは、測定対象とする積層体を室温(25℃)から130℃以上の温度で30分間加熱した後、25℃で10分間放冷した際の積層体の変形量に基づき算出することができる。具体的には、適当な大きさの四角形に切り出した測定対象となる積層体を130℃以上の温度で30分間加熱し、次いで25℃で10分間放冷した後水平面上に載置し、水平面から四隅までの距離(高さ)を測定し、それらの平均値から曲率半径を算出する。なお、放冷後の積層体が筒状である場合は、筒内部の直径を測定し、曲率半径を算出する。算出された曲率半径、基材層の厚み、有機層と無機薄膜層との合計厚み、基材層のヤング率およびポアゾン比から、下記式(3):
積層膜内部応力C(GPa)=Eh/6(1−v)Rt’’ (3)
〔式中、
t’’は有機層と無機薄膜層との合計厚み(m)、Rは曲率半径(m)、hは基材層の厚み(m)、Eは基材層のヤング率(Pa)、vは基材層のポアソン比を表す。〕
に従い、積層膜の内部応力を算出することができる。
【0033】
前記積層膜内部応力Cを測定する際の積層体の加熱温度は130℃以上である。上記加熱温度は130℃以上であればよいが、好ましくは130℃以上200℃以下であり、より好ましくは130℃または180℃であり、本発明の一態様においては130℃であり、別の一態様においては180℃である。積層膜内部応力Cを測定する際の上記加熱温度は、測定対象とした積層フィルムの有機層内部応力Aおよび無機薄膜層内部応力Bを測定する際に適用する加熱温度と同じ温度とすることが好ましい。
より具体的には、積層膜内部応力Cは、例えば後述する実施例に記載の方法に従い測定、算出することができる。
【0034】
本発明の積層フィルムは、目視で観察した場合に透明であることが好ましい。具体的には、積層フィルムの全光線透過率(Tt)は、好ましくは78.0%以上、より好ましくは80.0%以上、さらに好ましくは83.0%以上、特に好ましくは85.0%以上、きわめて好ましくは87.0%以上である。本発明の積層フィルムの全光線透過率が上記下限値以上であると、該フィルムを画像表示装置等の電子デバイスに組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。本発明の積層フィルムの全光線透過率の上限値は特に限定されず、100%以下であればよい。
【0035】
本発明の積層フィルムのヘイズ(曇価)は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%以下である。本発明の積層フィルムのヘイズが上記の上限値以下であると、該フィルムを画像表示装置等の電子デバイスに組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。なお、本発明の積層フィルムのヘイズの下限値は特に限定されず、通常0%以上となる。視認性の観点から、ヘイズはその数値が小さいほど好ましい。また、60℃で相対湿度90%の環境下に250時間曝露後の積層フィルムが、上記範囲のヘイズをなお有することが好ましい。
【0036】
全光線透過率およびヘイズは、例えば、ヘイズコンピューターを用いて測定することができ、積層フィルムがない状態でバックグランド測定を行った後、積層フィルムをサンプルホルダーにセットして測定を行うことにより、積層フィルムの全光線透過率およびヘイズ値を求めることができる。
【0037】
本発明の積層フィルムの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよい。積層フィルムの取扱性が良好であり、適度な表面硬度を確保しながら屈曲特性を高めやすい観点から、例えば5〜550μmであってよく、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μmである。なお、積層フィルムの厚みは、膜厚計によって測定できる。
【0038】
高い緻密性に起因して比較的高い圧縮応力が生じるような無機薄膜層を有する積層フィルムにおいては、例えば、同程度の圧縮応力を有する無機薄膜層を基材層の両側に設けることにより、基材層を介して存在する2つの無機薄膜層同士で互いの内部応力を打ち消し合うことによって積層フィルムの反りを抑制することができる。しかしながら、一般的に、積層フィルムのガスバリア性を高めるためには無機薄膜層に無機材料が高密度に存在している必要があり、そのような緻密性の高い無機薄膜層を基材層の両側に有する積層フィルムは生産性や生産コストの観点において十分に満足し得ない場合がある。これに対して、本発明の積層フィルムは、基材層と無機薄膜層との間に存在する有機層が、無機薄膜層で生じる内部応力に起因して生じ得る反りを解消するのに十分な内部応力を有するため、無機薄膜層が基材層の一方の面側のみに存在する場合であっても積層フィルムの反りを抑制する効果に優れ、基材層の片側にのみ無機薄膜層を形成すればよいため、生産性や生産コストの面において有利となり得る。したがって、本発明の好ましい一態様において、本発明の積層フィルムは、基材層の一方の面側のみに無機薄膜層を有する。
【0039】
以下、本発明の積層フィルムの各構成成分について詳細に説明する。
【0040】
〔基材層〕
本発明の積層フィルムを構成する基材層は可撓性基材を含む。可撓性基材は、無機薄膜層を保持することができる可撓性の基材を意味する。例えば、樹脂成分として少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムを用いることができる。可撓性基材は透明な樹脂基材であることが好ましい。
【0041】
可撓性基材において用い得る樹脂としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルサルファイド(PES)、二軸延伸および熱アニール処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。可撓性基材として、上記樹脂の1種を使用してもよいし、2種以上の樹脂を組み合せて使用してもよい。これらの中でも、得られる積層フィルムの有機層内部応力Aや無機薄膜層内部応力Bを制御しやすく、反り抑制効果を向上させやすい観点、および高い透明性を有する観点等から、ポリエステル樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群から選択される樹脂を用いることが好ましく、PENおよび環状ポリオレフィンからなる群から選択される樹脂を用いることがより好ましく、PENを用いることがさらに好ましい。
【0042】
可撓性基材は、未延伸の樹脂基材であってもよいし、未延伸の樹脂基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、樹脂基材の流れ方向(MD方向)、および/または、樹脂基材の流れ方向と直角方向(TD方向)に延伸した延伸樹脂基材であってもよい。可撓性基材は、上述した樹脂の層を2層以上積層した積層体であってもよい。
【0043】
可撓性基材のガラス転移温度(Tg)は、積層フィルムの耐熱性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。また、ガラス転移温度の上限は好ましくは250℃以下である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定(DMA)装置または示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0044】
可撓性基材の厚みは、積層フィルムを製造する際の安定性等を考慮して適宜設定してよいが、積層フィルムの製造工程で真空中における可撓性基材の搬送を容易にしやすい観点から、5〜500μmであることが好ましい。さらに、後述するようなプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)により無機薄膜層を形成する場合、可撓性基材の厚みは10〜200μmであることがより好ましく、15〜150μmであることがさらに好ましい。なお、可撓性基材の厚みは、膜厚計により測定できる。
【0045】
可撓性基材は、λ/4位相差フィルム、λ/2位相差フィルムなどの、面内における直交2成分の屈折率が互いに異なる位相差フィルムであってもよい。位相差フィルムの材料としては、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、液晶化合物の配向固化層などを例示することができる。製膜方法としては、溶剤キャスト法やフィルムの残留応力を小さくできる精密押出法などを用いることができるが、均一性の点で溶剤キャスト法が好ましく用いられる。延伸方法は、特に制限なく、均一な光学特性が得られるロール間縦一軸延伸、テンター横一軸延伸などを適用できる。
【0046】
可撓性基材がλ/4位相差フィルムである場合の波長550nmでの面内位相差Re(550)は、通常100〜180nmであり、好ましくは110〜170nmであり、さらに好ましくは120〜160nmである。
【0047】
可撓性基材がλ/2位相差フィルムである場合の波長550nmでの面内位相差Re(550)は、通常220〜320nmであり、好ましくは240〜300nmであり、さらに好ましくは250〜280nmである。
【0048】
可撓性基材が位相差フィルムである場合に、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆波長分散性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0049】
可撓性基材が逆波長分散性を示す位相差フィルムである場合、可撓性基材の波長λでの位相差をRe(λ)と表記したときに、可撓性基材は、Re(450)/Re(550)<1およびRe(650)/Re(550)>1を満たすことができる。
【0050】
可撓性基材は、光を透過させたり吸収させたりすることができるという観点から、無色透明であることが好ましい。より具体的には、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、曇価(ヘイズ)が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。可撓性基材の全光線透過率およびヘイズは、積層フィルムにおける全光線透過率およびヘイズの測定方法として先に記載したのと同様の方法により測定できる。
【0051】
可撓性基材は、有機デバイスやエネルギーデバイスの基材に使用することかできるという観点から、絶縁性であることが好ましく、電気抵抗率が10Ωcm以上であることが好ましい。
【0052】
可撓性基材の表面には、有機層等との密着性の観点から、その表面を清浄するための表面活性処理を施してもよい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
【0053】
可撓性基材は、アニール処理を施していてもよいし、アニール処理を施していなくてもよいが、有機層内部応力Aや無機薄膜層内部応力Bを制御しやすく、積層フィルムにおける反り抑制効果を向上させやすい観点から、アニール処理を施すことが好ましい。アニール処理は可撓性基材を二軸延伸しながら使用上限温度(例えば200℃)以上の温度で熱する、可撓性基材を二軸延伸した後に、オフラインで使用上限温度(例えば200℃)以上の温度の加熱炉に通す等が挙げられる。なお、可撓性基材をアニール処理してもよいし、後述するプライマー層等が片面または両面に積層された状態の基材層をアニール処理してもよい。
【0054】
本発明の積層フィルムを構成する基材層は可撓性基材のみからなってもよく、また、可撓性基材の他に、該可撓性基材の片面または両面に形成されたプライマー層を含んでいてもよい。プライマー層を有することで、可撓性基材と有機層との密着性が向上し得る。また、可撓性基材の両面にプライマー層を有し、その一方の面側のプライマー層の外側に層が存在しない、すなわち、該プライマー層が最外層である場合、該プライマー層は積層フィルムの保護層として機能するとともに、製造時の滑り性を向上させ、かつブロッキングを防止する機能も果たす。なお、本発明の積層フィルムは、可撓性基材に接して存在するプライマー層に加えて、別の部分に積層されたさらなるプライマー層を有していてもよい。
【0055】
基材層がプライマー層を含む場合、プライマー層は130℃以上の軟化温度を有することが好ましい。このような軟化温度を有することで、高温環境下においても可撓性基材と有機層とを十分に密着させることができ、積層フィルムの反り抑制効果を十分に高めやすくなる。プライマー層の軟化温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。プライマー層の軟化温度が上記の下限値以上であると、反り抑制効果をより向上できる。また、プライマー層の軟化温度の上限値は通常250℃以下である。
【0056】
プライマー層は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂およびアミノ樹脂から選択される少なくとも1種を含んでなることが好ましい。これらの中でも、主成分としてポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。
【0057】
プライマー層は、上記樹脂以外に添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、プライマー層を形成するために公知の添加剤を用いることができ、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭酸カルシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、硫酸バリウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、クレイ、タルク等の無機粒子が挙げられる。これらの中でも、積層フィルムの反り抑制効果の観点から、シリカ粒子が好ましい。
【0058】
プライマー層がシリカ粒子を含む場合、その平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下、特に好ましくは40nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、積層フィルムの透明性および反り抑制効果を向上し得る。また、プライマー層が最外層となる場合に、シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲であると、製造時における積層フィルムの滑り性をより向上させ、かつブロッキングを有効に防止し得る。なお、シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET法や粒子断面のTEM観察により測定できる。
【0059】
シリカ粒子の含有量は、プライマー層の質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1.5〜40質量%、さらに好ましくは2〜30質量%である。シリカ粒子の含有量が上記の下限値以上であると、積層フィルムの反り抑制効果を向上しやすい。シリカ粒子の含有量が上記の上限値以下であると、低いヘイズや高い全光線透過率等の光学特性を向上しやすい。
【0060】
プライマー層の厚みは、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下であり、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上である。プライマー層の厚みが上記範囲であると、プライマー層と有機層との密着性および積層フィルムの反り抑制効果を向上しやすい。なお、プライマー層の厚みは膜厚計によって測定できる。可撓性基材の両面にプライマー層が存在する場合、それらの厚みは同一であっても、異なっていてもよいが、積層フィルムの反り抑制効果を向上しやすい観点から、2つのプライマー層の厚みは同じであることが好ましい。なお、本発明の積層フィルムが3つ以上のプライマー層を有する場合、各プライマー層が上記の厚みを有することが好ましい。
【0061】
プライマー層は、樹脂および溶剤、並びに必要に応じて添加剤を含む樹脂組成物を可撓性基材上に塗布し、塗膜を乾燥することで成膜して得ることができる。可撓性基材の両面にプライマー層が存在する場合、それらを形成する順は特に限定されない。
【0062】
溶剤としては、前記樹脂を溶解可能なものであれば特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤等が挙げられる。溶剤は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0063】
プライマー層を可撓性基材に塗布する方法としては、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレー塗布、スピン塗布、バーコート、カーテンコート、浸漬法、エアーナイフ法、スライド塗布、ホッパー塗布、リバースロール塗布、グラビア塗布、エクストリュージョン塗布等の方法が挙げられる。
【0064】
塗膜を乾燥する方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法が挙げられるが、加熱乾燥を好適に使用できる。乾燥温度は、樹脂や溶剤の種類にもよるが、通常50〜350℃程度であり、乾燥時間は、通常30〜300秒程度である。
【0065】
上記のように、可撓性基材の片面または両面にプライマー層を形成してもよいが、可撓性基材の片面または両面にプライマー層を有する市販のフィルム、例えば帝人フィルムソリューション社製の「テオネックス(登録商標)」等を使用することもできる。
【0066】
基材層がプライマー層を有する場合、プライマー層は単層であっても、2層以上の多層であってもよい。また、可撓性基材が両面にプライマー層を有する場合、2つのプライマー層は同じ組成からなってもよく、互いに異なる組成からなってもよいが、積層フィルムの反り抑制効果を向上しやすい観点から、同じ組成からなる層であることが好ましい。また、本発明の積層フィルムがさらなるプライマー層を有する場合、複数のプライマー層は同一または異なる組成からなる層であってもよい。
【0067】
基材層は可撓性基材を含む限り、単層であっても、2層以上の多層であってもよい。本発明においては、可撓性基材上にプライマー層などの他の層が存在している場合、可撓性基材から該可撓性基材に最も近い有機層までの間に存在する層を、基材層を構成する層とみなす。可撓性基材の両面にプライマー層等の他の層が形成されている場合、上記有機層内部応力Aや無機薄膜層内部応力Bを測定する際の基材層としては、可撓性基材と無機薄膜層との間に位置し、該可撓性基材に最も近い有機層までの間に存在する層と、該可撓性基材を介して対称または非対称に存在する同様の層(プライマー層や上記他の層)とが含まれる。すなわち、例えば、図3において、基材層1は、可撓性基材1−1とその両面に隣接する2つのプライマー層1−2とからなる。基材層が可撓性基材以外に他の層を含む場合、基材層の総厚みは、有機層内部応力や無機薄膜層内部応力に影響を与え難く、積層フィルムの反り抑制効果に優れる観点から、例えば5〜550μmであってよく、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μmである。
【0068】
〔有機層〕
本発明の積層フィルムは、基材層と無機薄膜層との間に位置する、上記特定の有機層内部応力Aを有する有機層(以下、「第1有機層」ともいう)を有する。また、本発明の一態様においては、本発明の積層フィルムは、基材層の前記第1有機層とは反対側の面にさらに有機層(以下、「第2有機層」ともいう)を有する。第2有機層を有することで、例えば可撓性基材の樹脂成分などの析出または可撓性基材の変形が抑制されやすくなるため、積層フィルムを高温環境下に曝露してもそのヘイズの上昇が抑制されるなどの効果が期待できる。
【0069】
本発明の積層フィルムが第1有機層および/または第2有機層を含む場合、第1有機層および第2有機層はそれぞれ、平坦化層としての機能を有する層であってもよいし、アンチブロッキング層としての機能を有する層であってもよいし、これらの両方の機能を有する層であってもよい。特に、無機薄膜層が基材層の片面側にのみ存在する積層フィルムにおいては、フィルム搬送時の滑り性確保の観点から、無機薄膜層を積層しない第2有機層がアンチブロッキング層としての機能を有することが好ましく、無機薄膜層の均質化によるガスバリア性の向上とフィルム搬送時の滑り性確保の両立の観点から、第1有機層が平坦化層としての機能を有し、第2有機層がアンチブロッキング層としての機能を有することがより好ましい。
【0070】
本発明の積層フィルムが第1有機層および第2有機層を含む場合、第1有機層が先に記載した特定範囲の有機層内部応力Aを満たしていれば、第2有機層の有機層内部応力Aの値は特に限定されないが、第2有機層の基材層とは反対側に無機薄膜層が存在しない場合には第2有機層の有機層内部応力は低いほど好ましい。また、第1有機層および第2有機層はそれぞれ単層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。また、第1有機層および第2有機層は、同じ組成からなる層であっても、異なる組成からなる層であってもよいが、積層フィルムの反り抑制効果を向上しやすい観点から、同じ組成からなる層であることが好ましい。また、本発明の積層フィルムが第1有機層および第2有機層以外の有機層を有する場合、複数の有機層は同じ組成からなる層であっても、異なる組成からなる層であってもよい。
以下、本明細書の有機層の説明においては、明記しない限り、「有機層」とは第1有機層および第2有機層の両者を意味する。
【0071】
有機層は、有機化合物を含む層であって、先に記載した特定の有機層内部応力Aを満たすものである限り、その構成成分は特に限定されず、例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物を含む組成物を、基材層上に塗布し、硬化することにより形成することができる。有機層を形成するための組成物に含まれる光硬化性化合物としては、紫外線または電子線硬化性の化合物が挙げられ、このような化合物としては、重合性官能基を分子内に1個以上有する化合物、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられる。有機層を形成するための組成物(以下、「有機層形成用組成物」ともいう)は、1種類の光硬化性化合物を含有してもよいし、2種以上の光硬化性化合物を含有してもよい。有機層形成用組成物に含まれる重合性官能基を有する光硬化性化合物を硬化させることにより、光硬化性化合物が重合して、光硬化性化合物の重合物を含む有機層が形成される。
【0072】
有機層における該重合性官能基を有する光硬化性化合物の重合性官能基の反応率は、外観品質を高めやすい観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。前記反応率の上限は特に限定されないが、外観品質を高めやすい観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。反応率が上記の下限値以上であると無色透明化しやすい。また、反応率が上記の上限値以下であると、耐屈曲性を向上させやすい。反応率は、重合性官能基を有する光硬化性化合物の重合反応が進むにつれて高くなるため、例えば光硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、照射する紫外線の強度を高くしたり、照射時間を長くしたりすることにより、高めることができる。上記のような硬化条件を調整することにより、反応率を上記の範囲内にすることができる。
【0073】
反応率は、有機層形成用組成物を基材上に塗布し、必要に応じて乾燥させて得た硬化前の塗膜、および、該塗膜を硬化後の塗膜について、塗膜表面から全反射型FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを測定し、重合性官能基に由来するピークの強度の変化量から測定することができる。例えば、重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である場合、(メタ)アクリロイル基中のC=C二重結合部分が重合に関与する基であり、重合の反応率が高くなるにつれてC=C二重結合に由来するピークの強度が低下する。一方、(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合部分は重合に関与せず、C=O二重結合に由来するピークの強度は重合前後で変化しない。そのため、硬化前の塗膜について測定した赤外吸収スペクトルにおける(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合に由来するピークの強度(ICO1)に対するC=C二重結合に由来するピークの強度(ICC1)の割合(ICC1/ICO1)と、硬化後の塗膜について測定した赤外吸収スペクトルにおける(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合に由来するピークの強度(ICO2)に対するC=C二重結合に由来するピークの強度(ICC2)の割合(ICC2/ICO2)とを比較することで、反応率を算出することができる。この場合、反応率は、式(4):
反応率[%]=[1−(ICC2/ICO2)/(ICC1/ICO1)]×100 (4)
により算出される。なお、C=C二重結合に由来する赤外吸収ピークは通常1350〜1450cm−1の範囲、例えば1400cm−1付近に観察され、C=O二重結合に由来する赤外吸収ピークは通常1700〜1800cm−1の範囲、例えば1700cm−1付近に観察される。
【0074】
有機層の赤外吸収スペクトルにおける1000〜1100cm−1の範囲の赤外吸収ピークの強度をIとし、1700〜1800cm−1の範囲の赤外吸収ピークの強度をIとすると、IおよびIは式(5):
0.05≦I/I≦1.0 (5)
を満たすことが好ましい。ここで、1000〜1100cm−1の範囲の赤外吸収ピークは、有機層に含まれる化合物および重合物(例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物および/またはその重合物)中に存在するシロキサン由来のSi−O−Si結合に由来する赤外吸収ピークであり、1700〜1800cm−1の範囲の赤外吸収ピークは、有機層に含まれる化合物および重合物(例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物および/またはその重合物)中に存在するC=O二重結合に由来する赤外吸収ピークであると考えられる。そして、これらのピークの強度の比(I/I)は、有機層中のシロキサン由来のSi−O−Si結合に対するC=O二重結合の相対的な割合を表すと考えられる。ピークの強度の比(I/I)が上記所定の範囲である場合、有機層の均一性を高めやすいと共に、層間の密着性、特に高湿環境下での密着性を高めやすくなる。ピークの強度の比(I/I)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上である。ピーク強度の比が上記の下限値以上である場合、有機層の均一性を高めやすい。これは、以下のメカニズムに何ら限定されるものでないが、有機層に含まれる化合物および重合物中に存在するシロキサン由来のSi−O−Si結合が多くなりすぎると有機層中に凝集物が生じ、層が脆化する場合があり、このような凝集物の生成を低減しやすくなるためであると推測される。ピークの強度の比(I/I)は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。ピーク強度の比が上記の上限値以下である場合、有機層の密着性を高めやすい。これは、以下のメカニズムに何ら限定されるものでないが、有機層に含まれる化合物および重合物中にシロキサン由来のSi−O−Si結合が一定量以上存在することにより、有機層の硬さが適度に低減されるためであると推測される。有機層の赤外吸収スペクトルは、ATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光製、FT/IR−460Plus)により測定できる。
【0075】
有機層形成用組成物に含まれる光硬化性化合物は、紫外線等により重合が開始し、硬化が進行して重合物である樹脂となる化合物である。光硬化性化合物は、硬化効率の観点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単官能のモノマーまたはオリゴマーであってもよいし、多官能のモノマーまたはオリゴマーであってもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを表し、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを表す。
【0076】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル系化合物が挙げられ、具体的には、アルキル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ならびに、その重合体および共重合体等が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、並びにその重合体および共重合体等が挙げられる。
【0077】
有機層形成用組成物に含まれる光硬化性化合物は、上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物に代えて、または、上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物に加えて、例えば、メテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、およびトリフェニルエトキシシラン等を含有することが好ましい。これら以外のアルコキシシランを用いてもよい。
【0078】
上記に述べた重合性官能基を有する光硬化性化合物以外の光硬化性化合物としては、重合によりポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、スチレン樹脂、およびアルキルチタネート等の樹脂となる、モノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0079】
有機層形成用組成物は、プライマー層に含まれ得る無機粒子として記載の無機粒子、好ましくはシリカ粒子を含むことができる。有機層形成用組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜75nmである。無機粒子を含有すると、積層フィルムの反り抑制効果を向上しやすい。
【0080】
無機粒子、好ましくはシリカ粒子の含有量は、有機層形成用組成物の固形分の質量に対して、好ましくは20〜90%であり、より好ましくは40〜85%である。無機粒子の含有量が上記範囲であると、積層フィルムの反り抑制効果をより向上しやすい。なお、有機層形成用組成物の固形分とは、有機層形成用組成物に含まれる溶剤等の揮発性成分を除いた成分を意味する。
【0081】
有機層形成用組成物は、有機層の硬化性の観点から、光重合開始剤を含んでいてよい。光重合開始剤の含有量は、有機層の硬化性を高める観点から、有機層形成用組成物の固形分の質量に対して、好ましくは2〜15%であり、より好ましくは3〜11%である。
【0082】
有機層形成用組成物は、塗布性の観点から、溶剤を含んでいてよい。溶剤としては、重合性官能基を有する光硬化性化合物の種類に応じて、該化合物を溶解可能なものを適宜選択でき、例えば、プライマー層を形成する際に使用し得るものとして先に記載した溶剤等が挙げられる。溶剤は単独または二種以上組み合わせて使用してよい。
【0083】
前記重合性官能基を有する光硬化性化合物、前記無機粒子、前記光重合開始剤および前記溶剤の他に、必要に応じて、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、カール抑制剤等の添加剤を含んでもよい。
【0084】
有機層形成用組成物を構成する光硬化性化合物や無機粒子、光重合開始剤や溶剤等の種類、配合量およびそれらの組み合わせを適宜選択することにより、得られる有機層の有機層内部応力Aを制御することができる。例えば有機層を形成する際、有機層形成用組成物から形成される塗膜を乾燥する温度を高めたり、塗膜を乾燥する時間を長くしたり、塗膜をUV照射により硬化する際にUV照射量を上げるなどして有機層形成用組成物の硬化度を高めることにより、有機層内部応力Aは高くなる傾向にある。一方、有機層を形成する際の温度が低かったり、滞留時間が短かったりすることで、有機層中に溶媒が残留してしまったり、塗膜をUV照射により硬化する際にUV照度やUV積算光量が少ないことにより、有機層の硬化度が十分に高められない場合に有機層内部応力Aは低くなる傾向にある。
【0085】
有機層は、例えば、光硬化性化合物を含む有機層形成用組成物(光硬化性組成物)を基材層上に塗布し、必要に応じて乾燥後、紫外線もしくは電子線を照射することにより、光硬化性化合物を硬化させて形成することができる。
【0086】
塗布方法としては、上記プライマー層を可撓性基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。
【0087】
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、該有機層は、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、スチレン樹脂、およびアルキルチタネート等を含有してよい。有機層はこれらの樹脂を1種類または2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0088】
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、該有機層は、剛体振り子型物性試験機(例えばエー・アンド・デイ株式会社製RPT−3000W等)により前記有機層表面の弾性率の温度変化を評価した場合に、前記有機層表面の弾性率が50%以上低下する温度が150℃以上であることが好ましい。
【0089】
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、該有機層を白色干渉顕微鏡で観察して測定される面粗さは、好ましくは3nm以下、より好ましくは2nm以下、さらに好ましくは1nm以下である。有機層の面粗さが上記の上限値以下であると、該有機層面上に積層される無機薄膜層の欠陥が少なくなり、ガスバリア性がより高められる効果がある。面粗さは、有機層を白色干渉顕微鏡で観察し、サンプル表面の凹凸に応じて、干渉縞が形成されることにより測定される。
【0090】
有機層がアンチブロッキング層としての機能を有する場合、有機層は、特に上記に述べた無機粒子を含有することが好ましい。
【0091】
本発明において、第1有機層および第2有機層の厚みは、用途に応じて適宜調整してよいが、それぞれ好ましくは0.1〜15μm、より好ましくは0.5〜12μm、さらに好ましくは0.7〜10μmである。有機層の厚みは、膜厚計によって測定することができる。厚みが上記の下限値以上であると、積層フィルムの表面硬度を向上しやすい。また、厚みが上記の上限値以下であると、屈曲性が向上しやすい。第1有機層および第2有機層の厚みは同じであっても、異なっていてもよい。本発明の積層フィルムが3つ以上の有機層を有する場合、各有機層が上記の厚みを有することが好ましい。
【0092】
〔無機薄膜層〕
本発明の積層フィルムは、少なくとも第1有機層の基材層とは反対側の面に無機薄膜層を有する。無機薄膜層を有することで、積層フィルムに優れたガスバリア性を付与することができる。本発明においては、積層フィルムを構成する基材層の両側に無機薄膜層が設けられていてもよいが、基材層と無機薄膜層との間に存在する有機層が、無機薄膜層で生じる内部応力に起因して生じ得る反りを解消するのに十分な内部応力を有する本発明の積層フィルムでは、無機薄膜層が基材層の一方の面側のみに存在する場合であっても積層フィルムの反りを抑制する効果に優れるため、基材層の片側にのみ無機薄膜層を形成することにより、生産性や生産コストの面において有利な積層フィルムを提供し得る。なお、本発明の積層フィルムが基材層の両側に2つの、またはそれ以上の無機薄膜層を有する場合、これらの無機薄膜層は同じ構成であっても、異なる構成であってもよい。
【0093】
無機薄膜層は、先に記載した特定の無機薄膜層内部応力Bを満たすよう構成されていることが好ましく、該無機薄膜層内部応力Bを発現し得る高い緻密性を有し、ガスバリア層としての機能を有する層であることが好ましい。そのようなガスバリア性を有する無機薄膜層は、ガスバリア性を有する無機材料の層であれば特に限定されず、公知のガスバリア性を有する無機材料の層を適宜利用することができる。無機材料の例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物およびこれらのうちの少なくとも2種を含む混合物が挙げられる。無機薄膜層は単層膜であってもよいし、上記薄膜層を少なくとも含む2層以上が積層された多層膜であってもよい。
【0094】
無機薄膜層は、より高度なガスバリア性(特に水蒸気透過防止性)を発揮しやすい観点、ならびに、耐屈曲性、製造の容易性および低製造コストといった観点から、珪素原子(Si)、酸素原子(O)、および炭素原子(C)を少なくとも含有することが好ましい。
【0095】
この場合、無機薄膜層は、一般式がSiOαβで表される化合物が主成分であることができる。式中、αおよびβは、それぞれ独立に、2未満の正の数を表す。ここで、「主成分である」とは、材質の全成分の質量に対してその成分の含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることをいう。無機薄膜層は一般式SiOαβで表される1種類の化合物を含有してもよいし、一般式SiOαβで表される2種以上の化合物を含有してもよい。前記一般式におけるαおよび/またはβは、無機薄膜層の膜厚方向において一定の値でもよいし、変化していてもよい。
【0096】
さらに無機薄膜層は珪素原子、酸素原子および炭素原子以外の元素、例えば、水素原子、窒素原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、リン原子、イオウ原子、フッ素原子および塩素原子のうちの一以上の原子を含有していてもよい。
【0097】
無機薄膜層は、無機薄膜層中の珪素原子(Si)に対する炭素原子(C)の平均原子数比をC/Siで表した場合に、緻密性を高くし、微細な空隙やクラック等の欠陥を少なくする観点から、C/Siの範囲は式(6):
0.02<C/Si<0.50 (6)
を満たすことが好ましい。
C/Siは、同様の観点から、0.03<C/Si<0.45の範囲にあるとより好ましく、0.04<C/Si<0.40の範囲にあるとさらに好ましく、0.05<C/Si<0.35の範囲にあると特に好ましい。
【0098】
また、無機薄膜層は、薄膜層中の珪素原子(Si)に対する酸素原子(O)の平均原子数比をO/Siで表した場合に、緻密性を高くし、微細な空隙やクラック等の欠陥を少なくする観点から、1.50<O/Si<1.98の範囲にあると好ましく、1.55<O/Si<1.97の範囲にあるとより好ましく、1.60<O/Si<1.96の範囲にあるとさらに好ましく、1.65<O/Si<1.95の範囲にあると特に好ましい。
【0099】
なお、平均原子数比C/SiおよびO/Siは、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、得られた珪素原子、酸素原子および炭素原子の分布曲線から、それぞれの原子の厚み方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子数比C/SiおよびO/Siとして算出できる。
<XPSデプスプロファイル測定>
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.027nm/秒
スパッタ時間:0.5分
X線光電子分光装置:アルバック・ファイ(株)製、機種名「Quantera SXM」
照射X線:単結晶分光AlKα(1486.6eV)
X線のスポットおよびそのサイズ:100μm
検出器:Pass Energy 69eV,Step size 0.125eV
帯電補正:中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)
【0100】
無機薄膜層の表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、1240〜1290cm−1に存在するピーク強度(I2)との強度比(I/I)が式(7):
0.01≦I/I<0.05 (7)
を満たすことが好ましい。
【0101】
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−O−Siに対するSi−CHの相対的な割合を表すと考えられる。式(7)で表される関係を満たす無機薄膜層は、緻密性が高く、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすいため、ガスバリア性および耐衝撃性を高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iは、無機薄膜層の緻密性を高く保持しやすい観点から、0.02≦I/I<0.04の範囲がより好ましい。
【0102】
無機薄膜層が上記ピーク強度比I/Iの範囲を満たす場合、本発明の積層フィルムが適度に滑りやすくなり、ブロッキングを低減しやすい。上記ピーク強度比I/Iが大きすぎると、Si−Cが多すぎることを意味し、この場合、屈曲性が悪く、かつ滑りにくくなる傾向がある。また、上記ピーク強度比I/Iが小さすぎると、Si−Cが少なすぎることにより屈曲性が低下する傾向がある。
【0103】
無機薄膜層の表面の赤外分光測定は、例えば、プリズムにゲルマニウム結晶を用いたATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光製、FT/IR−460Plus)によって測定できる。
【0104】
無機薄膜層の表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)との強度比(I/I)が式(87):
0.25≦I/I≦0.50 (8)
を満たすことが好ましい。
【0105】
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−O−Siに対するSi−CやSi−O等の相対的な割合を表すと考えられる。式(8)で表される関係を満たす無機薄膜層は、高い緻密性を保持しつつ、炭素が導入されることから耐屈曲性を高めやすく、かつ耐衝撃性も高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iは、無機薄膜層の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、0.25≦I/I≦0.50の範囲が好ましく、0.30≦I/I≦0.45の範囲がより好ましい。
【0106】
前記薄膜層は、薄膜層表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)と、870〜910cm−1に存在するピーク強度(I)との強度比が式(9):
0.70≦I/I<1.00 (9)
を満たすことが好ましい。
【0107】
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−Cに関連するピーク同士の比率を表すと考えられる。式(9)で表される関係を満たす無機薄膜層は、高い緻密性を保持しつつ、炭素が導入されることから耐屈曲性を高めやすく、かつ耐衝撃性も高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iの範囲について、無機薄膜層の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、0.70≦I/I<1.00の範囲が好ましく、0.80≦I/I<0.95の範囲がより好ましい。
【0108】
無機薄膜層の厚みは、用途に応じて適宜調整してよいが、好ましくは5〜3000nm、より好ましくは10〜2000nm、さらに好ましくは50〜1000nmである。無機薄膜層の厚みは、膜厚計によって測定することができる。厚みが上記の下限値以上であると、ガスバリア性が向上しやすい。また、厚みが上記の上限値以下であると、屈曲性が向上しやすい。特に、後述するように、グロー放電プラズマを用いて、プラズマCVD法により薄膜層を形成する場合には、基材を通して放電しつつ前記無機薄膜層を形成することから、10〜2000nmであることがより好ましく、50〜1000μmであることがさらに好ましい。
【0109】
無機薄膜層は、好ましくは1.8g/cm以上の高い平均密度を有し得る。ここで、無機薄膜層の「平均密度」は、ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)で求めた珪素の原子数、炭素の原子数、酸素の原子数と、水素前方散乱法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS)で求めた水素の原子数とから測定範囲の無機薄膜層の重さを計算し、測定範囲の無機薄膜層の体積(イオンビームの照射面積と膜厚との積)で除することで求められる。無機薄膜層の平均密度が上記下限値以上であると、緻密性が高く、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすい構造となるため好ましい。無機薄膜層が珪素原子、酸素原子、炭素原子および水素原子からなる本発明の好ましい一態様において、無機薄膜層の平均密度が2.22g/cm未満であることが好ましい。
【0110】
無機薄膜層が少なくとも珪素原子(Si)、酸素原子(O)、および炭素原子(C)を含有する本発明の好ましい一態様において、該無機薄膜層の膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における珪素原子の原子比との関係を示す曲線を珪素分布曲線という。ここで、無機薄膜層表面とは、本発明の積層フィルムの表面となる面を指す。同様に、膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における酸素原子の原子比との関係を示す曲線を酸素分布曲線という。また、膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における炭素原子の原子比との関係を示す曲線を炭素分布曲線という。珪素原子の原子比、酸素原子の原子比および炭素原子の原子比とは、無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対するそれぞれの原子数の比率を意味する。
【0111】
屈曲によるガスバリア性の低下を抑制しやすい観点からは、前記無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化することが好ましい。ここで、上記炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向において連続的に変化するとは、例えば上記の炭素分布曲線において、炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを表す。
【0112】
前記無機薄膜層の炭素分布曲線が8つ以上の極値を有することが、積層フィルムの屈曲性およびガスバリア性の観点から好ましい。
【0113】
前記無機薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線および炭素分布曲線が、下記の条件(i)および(ii)を満たすことが、積層フィルムの屈曲性およびガスバリア性の観点から好ましい。
(i)珪素の原子数比、酸素の原子数比および炭素の原子数比が、前記無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、下記式(10)で表される条件を満たす、および、
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比) (10)
(ii)前記炭素分布曲線が好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは8つ以上の極値を有する。
【0114】
無機薄膜層の炭素分布曲線は、実質的に連続であることが好ましい。炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことである。具体的には、膜厚方向における前記薄膜層表面からの距離をx[nm]、炭素の原子比をCとしたときに、式(11):
|dC/dx|≦0.01 (11)
を満たすことが好ましい。
【0115】
また、無機薄膜層の炭素分布曲線は少なくとも1つの極値を有することが好ましく、8つ以上の極値を有することがより好ましい。ここでいう極値は、膜厚方向における無機薄膜層表面からの距離に対する各元素の原子比の極大値または極小値である。極値は、膜厚方向における無機薄膜層表面からの距離を変化させたときに、元素の原子比が増加から減少に転じる点、または元素の原子比が減少から増加に転じる点での原子比の値である。極値は、例えば、膜厚方向において複数の測定位置において、測定された原子比に基づいて求めることができる。原子比の測定位置は、膜厚方向の間隔が、例えば20nm以下に設定される。膜厚方向において極値を示す位置は、各測定位置での測定結果を含んだ離散的なデータ群について、例えば互いに異なる3以上の測定位置での測定結果を比較し、測定結果が増加から減少に転じる位置または減少から増加に転じる位置を求めることによって得ることができる。極値を示す位置は、例えば、前記の離散的なデータ群から求めた近似曲線を微分することによって、得ることもできる。極値を示す位置から、原子比が単調増加または単調減少する区間が例えば20nm以上である場合に、極値を示す位置から膜厚方向に20nmだけ移動した位置での原子比と、極値との差の絶対値は例えば0.03以上である。
【0116】
前記のように炭素分布曲線が好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは8つ以上の極値を有する条件を満たすように形成された無機薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、前記条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、前記条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素分布曲線の極値の数が2つ以上になるように前記薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が1つである場合と比較して、前記の増加量が少なくなる。また、炭素分布曲線の極値の数が3つ以上になるように前記薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が2つである場合と比較して、前記の増加量が少なくなる。炭素分布曲線が2つ以上の極値を有する場合に、第1の極値を示す位置の膜厚方向における前記薄膜層表面からの距離と、第1の極値と隣接する第2の極値を示す位置の膜厚方向における前記薄膜層表面からの距離との差の絶対値が、1nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましく、1nm以上100nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0117】
また、前記無機薄膜層の炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が0.01より大きいことが好ましい。前記条件を満たすように形成された無機薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、前記条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、前記条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が0.02以上であると前記の効果が高くなり、0.03以上であると前記の効果がさらに高くなる。
【0118】
珪素分布曲線における珪素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が低くなるほど、無機薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、前記の絶対値は、0.05未満(5at%未満)であることが好ましく、0.04未満(4at%未満)であることがより好ましく、0.03未満(3at%未満)であることが特に好ましい。
【0119】
また、酸素炭素分布曲線において、各距離における酸素原子の原子比および炭素原子の原子比の合計を「合計原子比」としたときに、合計原子比の最大値および最小値の差の絶対値が低くなるほど、前記薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、前記の合計原子比は、0.05未満であることが好ましく、0.04未満であることがより好ましく、0.03未満であることが特に好ましい。
【0120】
前記無機薄膜層面内方向において、無機薄膜層を実質的に一様な組成にすると、無機薄膜層のガスバリア性を均一にするとともに向上させることができる。実質的に一様な組成であるとは、酸素分布曲線、炭素分布曲線および酸素炭素分布曲線において、前記無機薄膜層表面の任意の2点で、それぞれの膜厚方向に存在する極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは0.05以内の差であることをいう。
【0121】
前記条件を満たすように形成された無機薄膜層は、例えば有機EL素子を用いたフレキシブル電子デバイスなどに要求されるガスバリア性を発現することができる。
【0122】
無機薄膜層が少なくとも珪素原子、酸素原子、および炭素原子を含有する本発明の好ましい一態様において、このような原子を含む無機材料の層は、緻密性を高めやすく、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすい観点から、化学気相成長法(CVD法)で形成されることが好ましく、中でも、グロー放電プラズマなどを用いたプラズマ化学気相成長法(PECVD法)で形成されることがより好ましい。
【0123】
化学気相成長法において使用する原料ガスの例は、珪素原子および炭素原子を含有する有機ケイ素化合物である。このような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンである。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られる無機薄膜層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。原料ガスとして、これらの有機ケイ素化合物の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0124】
また、上記原料ガスに対して、上記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物を形成可能とする反応ガスを適宜選択して混合することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組合せて使用することができる。原料ガスと反応ガスの流量比は、成膜する無機材料の原子比に応じて適宜調節できる。
【0125】
上記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
【0126】
また、真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
【0127】
例えば、成膜時の真空度や成膜時の基材温度、成膜電力、電極内の磁場を制御することにより、無機薄膜層内部応力Bを制御することができる。例えば、真空度を低くしたり、成膜時の基材温度を高めたり、成膜電力を高めたり、磁場密度を上げることにより、無機薄膜層内部応力Bは高くなる傾向にある。一方、真空度を高くしたり、成膜時の基材温度を低くしたり、成膜電力を低くしたり、磁場密度を下げることにより、無機薄膜層内部応力Bは低くなる傾向にある。
【0128】
本発明の積層フィルムの一実施態様における構成を図1に基づいて説明すると、本発明の積層フィルム4は、基材層1、有機層2および無機薄膜層3をこの順に積層してなる。本発明の積層フィルムは、基材層、有機層および無機薄膜層をこの順に有していれば、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて、各層の間や最外層に他の層を有していてよいが、本発明の一態様においては、前記基材層、前記有機層および前記無機薄膜層はこの順に隣接して存在する。他の層としては、例えば、さらなる有機層および無機薄膜層、保護層、易滑層、ハードコート層、透明導電膜層、カラーフィルター層、易接着層、カール調整層、応力緩和層、耐熱層、耐擦傷層、耐押し込み層等が挙げられる。
【0129】
他の層を含む積層フィルムとして、例えば、本発明の別の一態様である図2に示される積層フィルム4においては、基材層1の一方の面に第1有機層2−1および無機薄膜層3が積層され、基材層1の第1有機層2−1とは逆の面に第2有機層2−2が積層されている。図2に記載される積層フィルム4において、本発明における有機層内部応力Aを測定する際の積層体は、基材層1と第1有機層2−1とからなる積層体である。また、本発明における無機薄膜層内部応力Bを測定する際の積層体は、基材層1と、該基材層1上に直接形成された無機薄膜層3とからなる積層体である。
【0130】
さらに、図3に示す本発明の積層フィルム4は、可撓性基材1−1の両面にプライマー層1−2を有する基材層1を含む。該積層フィルム4において、一方のプライマー層1−2上には第1有機層2−1が積層されており、無機薄膜層3が前記第1有機層2−1のプライマー層1−2とは逆の面側に形成されている。また、可撓性基材1−1の第1有機層2−1が積層されたプライマー層1−2とは反対側のプライマー層1−2の可撓性基材1−1とは反対側の面に第2有機層2−2が積層されている。図3に記載される積層フィルム4において、本発明における有機層内部応力Aを測定する際の積層体は、可撓性基材1−1とその両側に積層されたプライマー層1−2とからなる基材層1と、第1有機層2−1とからなる積層体である。また、本発明における無機薄膜層内部応力Bを測定する際の積層体は、可撓性基材1−1とその両側に積層されたプライマー層1−2とからなる基材層1と、該基材層1上に直接形成された無機薄膜層3とからなる積層体である。
【0131】
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムの製造方法は、各層を上記の順に形成できれば、特に限定されないが、その例としては、可撓性基材を含む基材層の一方の面に有機層を形成した後、該有機層上に無機薄膜層を形成する方法が挙げられる。基材層がプライマー層を有する場合、可撓性基材の一方の面にプライマー層を形成した後、該プライマー層上に有機層を形成することができる。また、本発明の積層フィルムが、前記基材層の前記有機層(第1有機層)とは反対側の面に有機層(第2有機層)をさらに含む場合、上記方法と同様に基材層の第1有機層とは反対側の面に第2有機層を形成することができる。なお、本発明の積層フィルムは、各層を別々に作製した後、これらを貼り合わせて製造してもよい。
【0132】
無機薄膜層の緻密性を高めやすく、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすい観点からは、無機薄膜層は、上述したように、有機層上にグロー放電プラズマを用いて、CVD法等の公知の真空成膜手法で形成することが好ましい。無機薄膜層は、連続的な成膜プロセスで形成させることが好ましく、例えば、長尺の積層体を連続的に搬送しながら、その上に連続的に無機薄膜層を形成させることがより好ましい。具体的には、該積層体を送り出しロールから巻き取りロールへ搬送しながら無機薄膜層を形成させてよい。その後、送り出しロールおよび巻き取りロールを反転させて、逆向きに該積層体を搬送させることで、さらに無機薄膜層を形成させてもよい。
【0133】
本発明の積層フィルムは、積層フィルムの反り抑制効果に優れ、高いガスバリア性を有するため、例えば、高いガスバリア性が要求される電子デバイス用途に好適である。電子デバイスとしては、例えば、高いガスバリア性が要求される液晶表示素子、太陽電池、有機ELディスプレイ、有機ELマイクロディスプレイ、有機EL照明および電子ペーパー等のフレキシブル電子デバイス(フレキシブルディスプレイ)が挙げられる。本発明の積層フィルムは、該フレキシブル電子デバイスのフレキシブル基板として好適に使用できる。該積層フィルムをフレキシブル基板として用いる場合、積層フィルム上に直接素子を形成してもよいし、また別の基板上に素子を形成させた後で、該積層フィルムを接着層や粘着層を介して上から重ね合せてもよい。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記しない限り、質量%および質量部である。
【0135】
1.実施例1
基材として、可撓性基材の両面にプライマー層を有する二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)製、Q65HWA、厚み100μm、幅350mm)の片面に、有機層を形成するための有機層形成用組成物として、コーティング組成物1(日本化工塗料(株)、TOMAX(登録商標)FA−3376−2)をグラビアコーティング法にて塗布した。該塗膜を100℃で1分間乾燥させた後、高圧水銀ランプを用いて、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線照射し、厚み4μmの有機層を積層させて、有機層付き基材を得た。
【0136】
得られた有機層付き基材の有機層側の表面に、以下に記載する無機薄膜層の製造方法に従い、無機薄膜層(厚み400nm)を積層させて、基材層/有機層/無機薄膜層からなる積層フィルム1を得た。
【0137】
なお、積層フィルム1の基材層、有機層および無機薄膜層の各膜厚は、膜厚計〔(株)小坂研究所製:サーフコーダET200)を用いて、無成膜部と成膜部の段差測定を行い、各層の膜厚(T)を求めた。
【0138】
〔無機薄膜層の製造方法〕
図4に示すような製造装置を用いて、有機層付き基材上に無機薄膜層を積層させた。具体的には、真空チャンバー内に設置した図4に示すような製造装置において、上記有機層付き基材フィルム18を送り出しロ−ル10に装着し、真空チャンバー内を1×10−3Pa以下にした後、搬送ロール11により前記基材フィルム18を搬送しながら、基材フィルム上に積層された有機層上に無機薄膜層の成膜を行った。無機薄膜層を形成させるために用いるプラズマCVD装置においては、成膜ロール12と成膜ロール13とからなる一対のロール状電極表面にそれぞれ前記有機層付き基材フィルム18を密接させながら搬送させ、一対の電極間でプラズマを発生させて、プラズマ中で原料を分解させて前記有機層上に無機薄膜層を形成させた。前記の一対のロール状電極は、磁束密度が電極および搬送される有機層付き基材表面で高くなるように電極内部に磁石が配置されており、プラズマ発生時に電極および前記有機層付き基材上でプラズマが高密度に拘束される。無機薄膜層の成膜にあたっては、成膜領域となる電極(成膜ロール12および成膜ロール13)間の空間に向けてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス、酸素ガスを導入し、電極ロール間に交流電力を供給し、放電してプラズマを発生させた。次いで、真空チャンバー内の排気口周辺における圧力が1Paになるように排気量を調節した後、プラズマCVD法により有機層付き基材上に緻密な無機薄膜層を形成し、巻取りロール17によりロール状に巻き取った。
【0139】
〈成膜条件1〉
原料ガスの供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:1Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.6m/分
パス回数:2回
【0140】
得られた積層フィルム1について、以下の方法に従い、平面性、内部応力および水分透過率等を測定および/または評価した。
【0141】
〔積層フィルムの平面性の評価〕
積層フィルム1を、50mm×50mmの正方形となるよう切り出して測定用サンプルを得た。次いで、測定用サンプルを室温(25℃)から130℃または180℃まで熱風循環オーブンで加熱して30分間保持した後、室温(25℃)で10分間放冷した。次に、水平面上に、測定用サンプルの中央部が水平面に接するようにサンプルを載置し、水平面から4隅までの距離(高さ)をそれぞれ測定し、得られた4つの距離から平均値を算出した。表1に算出した値を反りの値として記載した。
【0142】
〔有機層内部応力および無機薄膜層内部応力の測定〕
基材層として可撓性基材の両面にプライマー層が形成された二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)製、Q65HWA、厚み100μm)を用い、上記実施例1に従い、前記基材上にコーティング組成物1(日本化工塗料(株)、TOMAX FA−3376−2)から形成される有機層を積層させて、有機層内部応力測定用積層体を得た。上記平面性の評価方法と同様に測定用サンプルを室温(25℃)から130℃または180℃まで熱風循環オーブンで加熱して30分間保持した後、室温(25℃)で10分間放冷し、得られた積層体の変形量(水平面から4隅までの各距離の平均値、筒状であった場合は筒内部の直径)を測定した。測定された変形量から算出した曲率半径、および有機層の膜厚、基材の厚み、基材のヤング率、基材のポアソン比を用いて、下記式(12)から有機層の内部応力を算出した。基材として用いた二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムでは、基材のヤング率Eは6.1×10Pa、基材のポアソン比vは0.33であった。
さらに、有機層付き基材の代わりに、有機層が積層されていない上記二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを基材として搬送させた以外は上記実施例1に記載の無機薄膜層の形成方法と同様にして、上記基材層上に直接無機薄膜層を積層させて、無機薄膜層内部応力測定用積層体を作製した。有機層内部応力の測定・算出方法と同様に、得られた積層体の変形量を用いることで、無機薄膜層の内部応力を算出した。
【0143】
内部応力(GPa)=Eh2/6(1−v)Rt (12)
〔式(11)中、tは有機層または無機薄膜層の厚み(m)、Rは曲率半径(m)、hは基材の厚さ(m)、Eは基材のヤング率(Pa)、vは基材のポアソン比である。〕
【0144】
積層フィルム1に対応する有機層内部応力測定用積層体において、上記測定方法に従い有機層の内部応力を算出した。130℃に加熱した後の曲率半径は11.8mmであり、内部応力は0.32GPaであった。また、180℃に加熱した後の曲率半径は3.6mmであり、内部応力は1.05GPaであった。
【0145】
積層フィルム1に対応する無機薄膜層内部応力測定用積層体において、上記測定方法に従い無機薄膜層の内部応力を算出した。130℃に加熱した後の曲率半径は17.0mmであり、内部応力は2.23GPaであった。また、180℃に加熱した後の曲率半径は9.8mmであり、内部応力は3.89GPaであった。
【0146】
〔積層膜の内部応力の測定〕
積層膜1(積層フィルム1における有機層および無機薄膜層からなる積層膜)の内部応力は、上記平面性の評価方法と同様に測定用サンプルを室温(25℃)から130℃または180℃まで熱風循環オーブンで加熱して30分間保持した後、室温(25℃)で10分間放冷し、得られた積層フィルム1の変形量(水平面から4隅までの各距離の平均値、筒状であった場合は筒内部の直径)を測定した。測定された変形量から算出した曲率半径、および有機層と無機薄膜層との合計膜厚、基材の厚み、基材のヤング率、基材のポアソン比を用いて、下記式(13)から積層膜1の内部応力を算出した。基材として用いた二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムでは、基材のヤング率Eは6.1×10Pa、基材のポアソン比vは0.33であった。
【0147】
内部応力(GPa)=Eh2/6(1−v)Rt (13)
〔式(13)中、tは有機層と無機薄膜層との合計膜厚(m)、Rは曲率半径(m)、hは基材の厚さ(m)、Eは基材のヤング率(Pa)、vは基材のポアソン比である。〕
【0148】
積層フィルム1において、130℃に加熱した後の曲率半径は200mmであり、内部応力は0.017GPaであった。また、180℃に加熱した後の曲率半径は417mmであり、内部応力は0.0083GPaであった。
【0149】
〔無機薄膜層の膜厚方向のX線光電子分光測定〕
積層フィルム1の無機薄膜層の膜厚方向の原子数比を、走査型X線光電子分光分析装置(ULVAC PHI(株)製、QuanteraSXM)を用いて、X線光電子分光法により、下記測定条件に従って測定した。X線源としてはAlKα線(1486.6eV、X線スポット100μm)を用い、また、測定時の帯電補正のために、中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)を使用した。測定後の解析は、MultiPak V6.1A(ULVAC PHI(株))を用いてスペクトル解析を行い、測定したワイドスキャンスペクトルから得られるSiの2p、Oの1s、Nの1s、およびCの1sそれぞれのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて、Siに対するCの表面原子数比(C/Si)およびSiに対するOの表面原子数比(O/Si)を算出した。表面原子数比としては、5回測定した値の平均値を採用した。この結果から、炭素分布曲線を作成した。
<XPSデプスプロファイル測定条件>
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.027nm/秒
スパッタ時間:0.5分
X線光電子分光装置:ULVAC PHI社製、機種名「Quantera SXM」
照射X線:単結晶分光AlKα(1486.6eV)
X線のスポットおよびそのサイズ:100μm
検出器:Pass Energy 69eV,Step size 0.125eV
帯電補正:中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)
【0150】
上記XPSデプスプロファイル測定の結果から、得られた積層フィルム1の無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、原子数比が大きい方から酸素、珪素および炭素の順であることが確認された。また、得られた珪素原子、酸素原子および炭素原子の分布曲線から、それぞれの原子の厚み方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子数比C/SiおよびO/Siを算出した結果、平均原子数比C/Si=0.30、O/Si=1.73であることが確認された。さらに、無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化していた。
【0151】
〔無機薄膜層表面の赤外分光測定(ATR法)〕
積層フィルム1の無機薄膜層表面の赤外分光測定を、プリズムにゲルマニウム結晶を用いたATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光(株)製、FT/IR−460Plus)を用いて行った。
【0152】
得られた赤外吸収スペクトルから、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、1240〜1290cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.03であった。また、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.36であった。また、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)と、870〜910cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.84であった。
【0153】
〔積層フィルムの水蒸気透過度〕
水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件において、ISO/WD 15106−7(Annex C)に準拠してCa腐食試験法で測定した。
【0154】
得られた積層フィルム1の、温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は3.5×10−3g/(m・day)であった。
【0155】
2.比較例1
基材層として、可撓性基材の片面にプライマー層を有する二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)製、Q65HA、厚み100μm、幅350mm)を用い、該フィルムの片面に実施例1と同様の方法で無機薄膜層(400nm)を積層させ、基材層/無機薄膜層からなる積層フィルム2を得た。
【0156】
得られた積層フィルム2について、実施例1と同様の方法で、無機薄膜層の内部応力を算出した。130℃に加熱した後の曲率半径は17.0mmであり、内部応力は2.23GPaであった。また、180℃に加熱した後の曲率半径は9.8mmであり、内部応力は3.89GPaであった。なお、積層フィルム2においては、加熱放冷後の測定用サンプルが筒状になったため、その筒内部の直径を測定し、曲率半径とした。
【0157】
また、積層フィルム2の平面性を、実施例1と同様の方法に従い評価し、得られた筒内部の直径を、反りの値として表1に記載した。
【0158】
3.比較例2
基材層として、可撓性基材の両面にプライマー層を有する二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)製、Q65HWA、厚み100μm、幅350mm)の片面に、有機層を形成するための有機層形成用組成物として、コーティング組成物2(日本化工塗料(株)、TOMAX FA−3298−1)をグラビアコーティング法にて塗布した。該塗布膜を100℃で1分間乾燥させた後、高圧水銀ランプを用いて、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線照射し、厚み4μmの有機層を積層させて、有機層付き基材を得た。
得られた有機層付き基材の有機層側の表面に、実施例1と同様の方法で無機薄膜層(400nm)を積層させて、基材層/有機層/無機薄膜層からなる積層フィルム3を得た。
【0159】
得られた積層フィルム3について、実施例1と同様の方法で水蒸気透過度を測定したところ、温度40℃、湿度90%RHの条件において3.7×10−3g/(m・day)であった。
【0160】
基材層として可撓性基材の両面にプライマー層が形成された二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)製、Q65HWA、厚み100μm)を用い、上記実施例3に従い、前記基材上にコーティング組成物2(日本化工塗料(株)、TOMAX FA−3298−1)から形成される有機層を積層させて、有機層内部応力測定用積層体を得た。
積層フィルム3に対応する有機層内部応力測定用積層体において、実施例1と同様の測定方法に従い有機層の内部応力を算出した。130℃に加熱した後の曲率半径は23.8mmであり、内部応力は0.16GPaであった。また、180℃に加熱した後の曲率半径は7.5mmであり、内部応力は0.51GPaであった。
【0161】
積層フィルム3に対応する無機薄膜層内部応力測定用積層体は、実施例1の無機薄膜層内部応力測定用積層体と同じであり、130℃に加熱した後の曲率半径は17.0mmであり、内部応力は2.23GPaであった。また、180℃に加熱した後の曲率半径は9.8mmであり、内部応力は3.89GPaであった。
【0162】
また、積層フィルム3の平面性を、実施例1と同様の方法に従い評価し、得られた4隅までの距離(高さ)の平均値を、反りの値として表1に記載した。
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示すように、実施例1で得られた積層フィルムは緻密性が高く内部応力が大きな無機薄膜層を積層しているが、有機層内部応力が高く、130℃および180℃のいずれの温度で加熱した場合にも積層フィルムの反りを抑制する効果に優れていた。一方、有機層を含まない、または、有機層の内部応力が十分でない比較例1および2で得られた積層フィルムでは、いずれの温度条件においても積層フィルムの大きな反りが生じた。
【符号の説明】
【0165】
1:基材層
1−1:可撓性基材
1−2:プライマー層
2:有機層
2−1:第1有機層
2−2:第2有機層
3:無機薄膜層
4:積層フィルム
10:送り出しロール
11:搬送ロール
12:成膜ロール
13:成膜ロール
14:ガス供給管
15:プラズマ発生用電源
16:磁場発生装置
17:巻取りロール
18:基材フィルム
図1
図2
図3
図4