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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-84445(P2021-84445A)
(43)【公開日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/20 20060101AFI20210507BHJP
   B60T 17/02 20060101ALI20210507BHJP
   B60T 17/04 20060101ALI20210507BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20210507BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20210507BHJP
【FI】
   B60T13/20
   B60T17/02
   B60T17/04 Z
   F04B49/06 321A
   H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-212130(P2019-212130)
(22)【出願日】2019年11月25日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】船瀬 貴広
(72)【発明者】
【氏名】宮田 好洋
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3H145
5H501
【Fターム(参考)】
3D048BB32
3D048HH15
3D048HH61
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR06
3D048RR13
3D049BB22
3D049CC02
3D049HH12
3D049HH43
3D049HH47
3D049HH48
3D049RR04
3D049RR06
3H145AA05
3H145AA12
3H145AA24
3H145AA42
3H145BA38
3H145CA09
3H145DA08
3H145EA13
3H145EA16
3H145EA17
3H145EA26
3H145EA38
3H145EA42
5H501AA05
5H501AA20
5H501BB05
5H501CC04
5H501DD01
5H501EE05
5H501FF03
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501LL37
5H501LL42
(57)【要約】
【課題】ブレーキ液を吐出するポンプの電動モータを制御する液圧制御装置に関して、ポンプの作動に起因する振動を車両の搭乗者に伝わりにくくする。
【解決手段】液圧制御装置10は、ブレーキ液を吐出するポンプ71と、ブレーキ液が流れる配管73と、を有する制動装置80に適用される。液圧制御装置10は、ポンプ71の動力源である電動モータ72の駆動を制御する。液圧制御装置10は、ポンプ71から吐出されて配管73内を流れるブレーキ液の脈動に起因して当該配管73が共振を起こす際の脈動の周波数である共振周波数を、ブレーキ液の温度および圧力のうち一つ以上に基づいて導出する共振周波数導出部13を備えている。液圧制御装置10は、脈動の周波数が共振周波数から離れるように、電動モータ72の回転数を調整するモータ制御部11を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液を吐出するポンプと、該ポンプから吐出される前記ブレーキ液が流れる配管と、を有する制動装置に適用され、前記ポンプの動力源である電動モータの駆動を制御する液圧制御装置であって、
前記ポンプから吐出されて前記配管内を流れる前記ブレーキ液の脈動に起因して当該配管が共振を起こす際の前記脈動の周波数である共振周波数を、前記ブレーキ液の温度および圧力のうち一つ以上に基づいて導出する共振周波数導出部と、
前記脈動の周波数が前記共振周波数から離れるように、前記電動モータの回転数を調整するモータ制御部と、を備える
液圧制御装置。
【請求項2】
前記モータ制御部は、
前記温度が変動したときには、前記電動モータの回転数を低下させることによって前記脈動の周波数を低くする、または、前記電動モータの回転数を上昇させることによって前記脈動の周波数を高くし、
前記圧力が変動したときには、前記電動モータの回転数を低下させることによって前記脈動の周波数を低くする、または、前記電動モータの回転数を上昇させることによって前記脈動の周波数を高くし、
請求項1に記載の液圧制御装置。
【請求項3】
ブレーキ液を吐出するポンプと、該ポンプから吐出される前記ブレーキ液が流れる配管と、を有する制動装置に適用され、前記ポンプの動力源である電動モータの駆動を制御する液圧制御装置であって、
前記ポンプから吐出されて前記配管内を流れる前記ブレーキ液の脈動によって発生する音波の速さである音速を、前記ブレーキ液の温度および圧力のうち一つ以上に基づいて導出する音速導出部と、
前記ポンプから前記配管内への前記ブレーキ液の吐出によって発生するものであって、前記配管内で前記ポンプから離れる方向に進む入射波と前記配管内で前記入射波の進む方向とは反対方向に進む反射波とを合成した波である定在波の腹が、前記配管のうち締結具を介して車両に固定されている部分である締結部から離れるように、前記音速に基づいて前記電動モータの回転数を調整するモータ制御部と、を備える
液圧制御装置。
【請求項4】
前記モータ制御部は、
前記温度が変動したときには、前記電動モータの回転数を低下させることによって前記定在波の波長を長くする、または、前記電動モータの回転数を上昇させることによって前記定在波の波長を短くし、
前記圧力が変動したときには、前記電動モータの回転数を低下させることによって前記定在波の波長を長くする、または、前記電動モータの回転数を上昇させることによって前記定在波の波長を短くする
請求項3に記載の液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブレーキ液を吐出するポンプを備える制動装置に適用される制御装置が開示されている。この制御装置は、車両の動力源で発生する振動の周波数と、ポンプから吐出されるブレーキ液の脈動の周波数とに基づいて、脈動の振幅が大きくなるタイミングを動力源の振動が大きくなるタイミングと一致させることでポンプの作動に起因する振動を目立たなくさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−65495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている制御装置は、車両の動力源が作動していることを前提としてポンプの作動に起因する振動を目立たなくさせる。このため、動力源が作動していないときには、ポンプの作動に起因する振動が目立つ場合がある。すなわち、動力源が作動していないときには、ポンプの作動に起因する振動が車両の搭乗者に伝わることによって当該搭乗者に不快感を与えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための液圧制御装置の一態様は、ブレーキ液を吐出するポンプと、該ポンプから吐出される前記ブレーキ液が流れる配管と、を有する制動装置に適用され、前記ポンプの動力源である電動モータの駆動を制御する液圧制御装置であって、前記ポンプから吐出されて前記配管内を流れる前記ブレーキ液の脈動に起因して当該配管が共振を起こす際の前記脈動の周波数である共振周波数を、前記ブレーキ液の温度および圧力のうち一つ以上に基づいて導出する共振周波数導出部と、前記脈動の周波数が前記共振周波数から離れるように、前記電動モータの回転数を調整するモータ制御部と、を備えることをその要旨とする。
【0006】
配管内を流れるブレーキ液の脈動の周波数が上記共振周波数に近いと、配管の共振によって脈動が大きくなり配管の振動が大きくなることがある。ここで、共振周波数と、ポンプから吐出されて配管内を流れるブレーキ液の脈動によって発生する音波の速さである音速と、の間には相関がある。そのため、音速が変化すると、音速の変化に応じて共振周波数も変化する。なお、音速は、ブレーキ液の温度や圧力の影響を受ける。すなわち、ブレーキ液の温度や圧力が変化すると、共振周波数が変化する。
【0007】
上記構成によれば、ポンプを作動させる場合、その時点でのブレーキ液の温度および圧力のうち一つ以上に基づいて導出された共振周波数から脈動の周波数が離れるように、電動モータの回転数が調整される。このため、配管内を流れるブレーキ液の脈動に起因して配管で共振が発生することを抑制できる。すなわち、ポンプから吐出されたブレーキ液が配管内を流れる際に、配管の振動が大きくなることを抑制できる。これによって、ポンプの作動に起因する振動を小さく抑えることができ、当該振動が車両の搭乗者に伝わりにくくなる。
【0008】
上記課題を解決するための液圧制御装置の一態様は、ブレーキ液を吐出するポンプと、該ポンプから吐出される前記ブレーキ液が流れる配管と、を有する制動装置に適用され、前記ポンプの動力源である電動モータの駆動を制御する液圧制御装置であって、前記ポンプから吐出されて前記配管内を流れる前記ブレーキ液の脈動によって発生する音波の速さである音速を、前記ブレーキ液の温度および圧力のうち一つ以上に基づいて導出する音速導出部と、前記ポンプから前記配管内への前記ブレーキ液の吐出によって発生するものであって、前記配管内で前記ポンプから離れる方向に進む入射波と前記配管内で前記入射波の進む方向とは反対方向に進む反射波とを合成した波である定在波の腹が、前記配管のうち締結具を介して車両に固定されている部分である締結部から離れるように、前記音速に基づいて前記電動モータの回転数を調整するモータ制御部と、を備えることをその要旨とする。
【0009】
定在波の腹が配管の締結部に近いほど、ポンプから吐出されて配管内を流れるブレーキ液の脈動によって発生する配管の振動が車両に伝わりやすい。ここで、定在波の腹および節が現れる間隔は、定在波の波長に応じて変化する。そして、定在波の波長と、音速との間には相関がある。このため、音速が変化すると、定在波の波長が変化する。なお、音速は、ブレーキ液の温度や圧力の影響を受ける。すなわち、ブレーキ液の温度や圧力が変化すると、定在波の腹および節が現れる間隔が変わる。
【0010】
上記構成によれば、ポンプを作動させる場合、その時点でのブレーキ液の温度および圧力のうち一つ以上に基づいて音速が導出され、定在波の腹が締結部から離れるように、音速に基づいて電動モータの回転数が調整される。定在波の腹が締結部から離れるように波長を調整することによって、定在波の節と締結部とが近くなりやすい。すなわち、締結部を介して配管の振動が車両に伝わりにくくなる。これによって、ポンプの作動に起因する振動が車両の搭乗者に伝わりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の液圧制御装置と、同液圧制御装置の制御対象である車両の制動装置と、を示す模式図。
図2】第1実施形態の液圧制御装置によって制御される制動装置のポンプから配管内に吐出されたブレーキ液の脈動の周波数と共振周波数とを示す図。
図3】ポンプから配管内に吐出されたブレーキ液の脈動に起因して配管で共振が発生する場合を説明する図。
図4】第1実施形態の液圧制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
図5】第1実施形態の液圧制御装置によって脈動の周波数が調整された状態を示す図。
図6】第1実施形態の液圧制御装置によって脈動の周波数が調整された状態を示す図。
図7】第2実施形態の液圧制御装置を示すブロック図。
図8】第2実施形態の液圧制御装置によって制御される制動装置の配管と、配管内で発生する定在波と、の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の液圧制御装置10について、図1図6を参照して説明する。
図1は、液圧制御装置10と、液圧制御装置10の制御対象である制動装置80と、を示す。制動装置80は、車両の各車輪に対応する制動機構92を備えている。図1には、制動装置80を搭載する車両が有する複数の車輪のうち一つの車輪91を示している。
【0013】
車両の各車輪には、制動機構92の作動によって制動力が付与される。各制動機構92は、ホイールシリンダ93内の液圧が高いほど、車輪と一体回転する回転体95に摩擦材94を押し付ける力が大きくなるように構成されている。そして、回転体95に摩擦材94を押し付ける力が大きいほど、大きな制動力を車輪に付与することができる。
【0014】
制動装置80は、液圧発生装置82と、液圧発生装置82からブレーキ液が供給される制動アクチュエータ70と、制動アクチュエータ70とホイールシリンダ93とを繋ぐ配管73と、を備えている。液圧発生装置82には、ブレーキペダルなどの制動操作部材81が連結されている。液圧発生装置82では、車両の運転者による制動操作部材81の操作量である制動操作量に応じた液圧が発生する。液圧発生装置82において液圧が発生すると、発生した液圧に応じた量のブレーキ液が、制動アクチュエータ70および配管73を介して各制動機構92のホイールシリンダ93に供給される。これによって、各車輪に制動力が付与される。
【0015】
制動アクチュエータ70は、電動モータ72と、電動モータ72によって駆動されるポンプ71と、を備えている。ポンプ71は、電動式のギヤポンプである。電動モータ72を駆動させると、ポンプ71から吐出されたブレーキ液が、制動アクチュエータ70内の液圧回路を通過して、配管73を介してホイールシリンダ93に供給される。これによって、各車輪に制動力が付与される。
【0016】
制動装置80は、ブレーキ液の温度を検出する温度センサ83と、ブレーキ液の圧力を検出する圧力センサ84と、を備えている。たとえば、温度センサ83は、ポンプ71から吐出されるブレーキ液の温度を検出する。圧力センサ84は、ポンプ71から吐出されたブレーキ液が流動する制動アクチュエータ70における液圧回路内の圧力を検出する。
【0017】
温度センサ83および圧力センサ84からの検出信号は、液圧制御装置10に入力される。液圧制御装置10は、温度センサ83からの検出信号に基づいてブレーキ液の温度Tbを導出する。液圧制御装置10は、圧力センサ84からの検出信号に基づいてブレーキ液の圧力Pbを導出する。
【0018】
図1に示すように液圧制御装置10は、機能部として、モータ制御部11と、音速導出部12と、共振周波数導出部13と、を備えている。なお、液圧制御装置10は、以下(a)〜(c)のいずれかの構成であればよい。
【0019】
(a)コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える。プロセッサは、CPU並びに、RAMおよびROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。(b)各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備える。専用のハードウェア回路は、たとえば、特定用途向け集積回路すなわちASIC(Application Specific Integrated Circuit)、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等である。(c)各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路と、を備える。
【0020】
音速導出部12は、ポンプ71から吐出されて配管73内を流れるブレーキ液の脈動によって発生する音波の速さを、音速Cbとして導出する。音速導出部12は、周知の計算式に基づいて音速Cbを導出する。このため、音速導出部12では、温度Tbが低いほど音速Cbが大きく導出される。また、圧力Pbが低いほど音速Cbが大きく導出される。
【0021】
共振周波数導出部13は、ポンプ71から吐出されて配管73内を流れるブレーキ液の脈動に起因して配管73が共振を起こす際の脈動の周波数を、共振周波数として導出する。共振周波数導出部13は、配管73の長さ、配管73の容積、配管73における開口の断面積および音速導出部12によって導出される音速Cb等を用いて、周知の計算式に基づいて、一次共振周波数、二次共振周波数といった複数の共振周波数を導出する。このため、共振周波数導出部13では、音速Cbが大きいほど各共振周波数が高く導出される。
【0022】
モータ制御部11は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、電動モータ72を駆動させる。すなわち、モータ制御部11は、駆動信号を生成し、電動モータ72の駆動素子に当該駆動信号を出力することによって、電動モータ72を駆動させる。モータ制御部11は、電動モータ72の回転数Npの要求値として要求回転数NpTを設定し、要求回転数NpTに基づいて駆動信号におけるデューティ比を算出する。そして、モータ制御部11は、デューティ比に基づいて駆動信号を生成する。
【0023】
モータ制御部11は、要求回転数NpTの設定に際して第1調整制御を実施する。モータ制御部11は、第1調整制御の実施によって、ポンプ71から吐出されて配管73を流れるブレーキ液の脈動の周波数が共振周波数から離れるように要求回転数NpTを設定し、電動モータ72の回転数Npを調整する。
【0024】
図2は、第1調整制御による回転数Npの調整を経た脈動の周波数の一例を示す。図2には、脈動の周波数を脈動周波数Fpとして表示している。なお、脈動周波数Fpは、ポンプ71の歯車の歯数および回転数Npから算出できる。また、図2には、共振周波数として周波数が低いものから順に、共振周波数Fr1、Fr2、Fr3を表示している。図2に示す例では、脈動周波数Fpが共振周波数Fr1とFr2との間に位置するように、脈動周波数Fpが調整されている。この場合の脈動の大きさは、ピーク値p1となる。モータ制御部11は、第1調整制御において、共振周波数Fr1と共振周波数Fr2との間に脈動周波数Fpが位置する状態を実現するように、ポンプ71の要求回転数NpTを設定する。
【0025】
なお、図2では、脈動周波数Fpを中心とした周波数の領域を共振領域FpAと示している。共振周波数が共振領域FpAに含まれる場合、ポンプ71から吐出されたブレーキ液が配管73内を流れる際に、ブレーキ液の脈動に起因して配管73で共振が発生する。一方、共振周波数が共振領域FpAから外れている場合、ポンプ71から吐出されたブレーキ液が配管73内を流れる際に配管73で共振が発生しにくい。
【0026】
次に図3を用いて、図2に示した例よりも音速Cbが低下した場合の共振周波数について説明する。図3には、音速Cbが低下した場合の共振周波数の例である低共振周波数Fr1d、Fr2d、Fr3dを一点鎖線で示している。図3に二点鎖線で示す共振周波数Fr1、Fr2、Fr3は、図2における各共振周波数と等しい。低共振周波数Fr1d、Fr2d、Fr3dは、音速Cbの低下による影響で、それぞれ共振周波数Fr1、Fr2、Fr3よりも周波数が低くなっている。このため、仮に、共振周波数Fr1と共振周波数Fr2との間に位置するように脈動周波数Fpが調整されていると、低共振周波数Fr2dが共振領域FpAに含まれるようになる。この場合、配管73で共振が発生して、脈動の大きさが、ピーク値p1よりも大きい共振ピーク値p2になる。
【0027】
こうした共振の発生を抑制するため、モータ制御部11は、音速Cbが小さくなる場合には、回転数Npを低下させることによって脈動周波数Fpを低くして、脈動周波数Fpが共振周波数から離れるようにする。一方で、音速Cbが大きくなる場合には、モータ制御部11は、回転数Npを上昇させることによって脈動周波数Fpを高くして、脈動周波数Fpが共振周波数から離れるようにする。
【0028】
図4を用いて、モータ制御部11が実施する第1調整制御の処理ルーチンについて説明する。モータ制御部11は、本処理ルーチンを繰り返し実行する。
モータ制御部11は、本処理ルーチンを開始すると、まず、ステップS11において、温度Tbおよび圧力Pbのうち少なくとも一方が変動したか否かを判定する。たとえば、モータ制御部11は、本処理が前回実施された時点での温度Tbおよび圧力Pbをそれぞれの前回値として記憶して、当該前回値と現在の温度Tbおよび圧力Pbとを比較する。温度Tbおよび圧力Pbがいずれも変動していない場合(S11:NO)、モータ制御部11は、本処理ルーチンを終了する。
【0029】
一方、温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方が変動した場合(S11:YES)、モータ制御部11は、処理をステップS12に移行する。ステップS12では、モータ制御部11は、共振周波数導出部13によって導出される共振周波数、すなわち現在の温度Tbおよび圧力Pbに応じた共振周波数から脈動周波数Fpが離れるように回転数Npを調整する。
【0030】
具体的には、モータ制御部11は、温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方の変動によって音速Cbが小さくなる場合には、共振周波数導出部13によって導出される二つの共振周波数の間に脈動周波数Fpが位置するように、要求回転数NpTを低下させる。この場合、要求回転数NpTの低下によって、要求回転数NpTに基づいて駆動される電動モータ72の回転数Npが低下され、脈動周波数Fpが低くされる。一方で、温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方の変動によって音速Cbが大きくなる場合には、モータ制御部11は、共振周波数導出部13によって導出される二つの共振周波数の間に脈動周波数Fpが位置するように、要求回転数NpTを上昇させる。この場合、要求回転数NpTの上昇によって、要求回転数NpTに基づいて駆動される電動モータ72の回転数Npが上昇され、脈動周波数Fpが高くされる。回転数Npが調整されると、モータ制御部11は、本処理ルーチンを終了する。
【0031】
第1実施形態の作用および効果について説明する。
液圧制御装置10では、第1調整制御による回転数Npの調整によって、脈動周波数Fpが共振周波数から離される。
【0032】
温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方の変動によって音速Cbが小さくなると、図2に示した各共振周波数Fr1、Fr2、Fr3が低くなる。図5には、音速Cbの低下によって、図2に示した各共振周波数Fr1、Fr2、Fr3が低くなった場合の例を示している。そして、音速Cbの低下によって低くなった各共振周波数Fr1、Fr2、Fr3が、各低共振周波数Fr1d、Fr2d、Fr3dとして示されている。この場合、第1調整制御によって回転数Npが低下されることで、低共振周波数Fr1dと低共振周波数Fr2dとの間に位置するように脈動周波数Fpが調整される。このため、温度Tbが上昇したり、圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなっても、配管73で共振が発生することを抑制できる。
【0033】
図6には、音速Cbの上昇によって、図2に示した各共振周波数Fr1、Fr2、Fr3が高くなる場合の例を示している。図6には、音速Cbが上昇した場合の共振周波数の例である高共振周波数Fr1i、Fr2iを一点鎖線で示している。このように共振周波数が高くなると、第1調整制御によって回転数Npが上昇される。すなわち、高共振周波数Fr1iと高共振周波数Fr2iとの間に位置するように脈動周波数Fpが調整される。このため、温度Tbが低下したり、圧力Pbが低下したりすることによって音速Cbが大きくなっても、配管73で共振が発生することを抑制できる。
【0034】
以上のように、液圧制御装置10によれば、共振周波数が変化しても、ポンプ71から吐出されて配管73内を流れるブレーキ液の脈動に起因して配管73で共振が発生することを抑制できる。すなわち、配管73内をブレーキ液が流れる際に、配管73の振動が大きくなることを抑制できる。これによって、ポンプ71の作動に起因する振動を小さく抑えることができる。すなわち、ポンプ71の作動に起因する振動が車両の車室内に伝わりにくい。したがって、ポンプ71の作動に起因する振動による不快感を搭乗者に与えにくい。
【0035】
また、回転数Npの調整によってポンプ71の作動に起因する振動が伝わりにくくなるため、車両の動力源の状態にかかわらず、ポンプ71の作動に起因する振動を車両の搭乗者に伝わりにくくすることができる。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態の液圧制御装置110について、図7および図8を用いて説明する。
図7に示すように、液圧制御装置110は、音速導出部12を備えている。液圧制御装置110の音速導出部12は、第1実施形態における液圧制御装置10の音速導出部12と同じ機能を有している。さらに、液圧制御装置110は、機能部としてモータ制御部111を備えている。
【0037】
液圧制御装置110の制御対象である制動装置は、図1に示した第1実施形態における制動装置80と同じ構成である。
なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成の部分についての詳細な説明を省略する。
【0038】
モータ制御部111は、モータ制御部11と同様に、PWM制御によって、電動モータ72を駆動させる。モータ制御部111は、モータ制御部11と異なり、要求回転数NpTの設定に際して第2調整制御を実施する。モータ制御部111は、第2調整制御の実施によって、音速Cbに基づいて要求回転数NpTを設定し、電動モータ72の回転数Npを調整する。
【0039】
図8を用いて、モータ制御部111が実施する第2調整制御について説明する。
図8の(a)は、ポンプ71とホイールシリンダ93と配管73とを模式的に示している。配管73は、締結部73Fにおいて、締結具73Aを介して車両に固定されている。図8の(a)では、二箇所の締結部73Fを例示している。
【0040】
図8の(b)は、ポンプ71から配管73内へのブレーキ液の吐出によって発生する定在波の一例を示している。定在波は、配管73内でポンプ71から離れる方向に進む入射波と、入射波がホイールシリンダ93において反射して配管73内で入射波の進む方向とは反対方向に進む反射波と、を合成した波である。定在波は、実線と破線との間を振動する。定在波では、波が振動しない部分である節と、波の振幅が最大となる部分である腹と、が交互に等間隔で現れる。節と腹との間隔は、定在波の波長λによって決まる。波長λは、音速Cbおよび脈動周波数Fpに相関する値である。音速Cbが大きいほど波長λが長くなり、音速Cbが小さいほど波長λが短くなる。また、脈動周波数Fpが低いほど波長λが長くなり、脈動周波数Fpが高いほど波長λが短くなる。
【0041】
第2調整制御では、図8の(a)および(b)に示すように、定在波の節が締結部73Fに一致するように、定在波の波長λを調整する。なお、配管73における締結部73Fの位置は、定在波の波長λが規定の基準波長である場合の定在波の節の位置に基づいて設定されている。モータ制御部111は、具体的には、回転数Npの調整によって脈動周波数Fpを変化させることで、定在波の節を締結部73Fに一致させる。たとえば、モータ制御部111は、次のように回転数Npを調整する。モータ制御部111には、定在波の節が締結部73Fに一致する波長λとして目標波長λTが予め設定されている。モータ制御部111は、音速導出部12によって導出された音速Cbおよび目標波長λTに基づいて要求回転数NpTを設定する。モータ制御部111は、要求回転数NpTに基づいて電動モータ72を駆動させることによって回転数Npを調整する。なお、図8の(b)に示す定在波の波長λが目標波長λTに等しい。また、目標波長λTは、締結部73Fの位置の設定に用いられる基準波長に等しい。
【0042】
図8の(c)には、図8の(b)に示した定在波よりも波長λが長い定在波の一例を示している。温度Tbが低下したり、圧力Pbが低下したりして音速Cbが大きくなると、定在波の波長λが長くなる。図8の(c)に示すように、波長λが長くなると、定在波の節が締結部73Fから離れるようになる。こうした場合、モータ制御部111は、第2調整制御によって回転数Npを上昇させる。回転数Npの上昇によって脈動周波数Fpが高くなることで、波長λが短くなる。この結果、波長λが目標波長λTに追従すると、定在波と締結部73Fとの関係が図8の(b)に示した状態に戻る。すなわち、定在波の節が締結部73Fに一致し、定在波の腹が締結部73Fから離れるようになる。
【0043】
一方、図8の(d)には、図8の(b)に示した定在波よりも波長λが短い定在波の一例を示している。温度Tbが上昇したり、圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなると、定在波の波長λが短くなる。図8の(d)に示すように、波長λが短くなると、定在波の節が締結部73Fから離れるようになる。こうした場合、モータ制御部111は、第2調整制御によって回転数Npを低下させる。回転数Npの低下によって脈動周波数Fpが低くなることで、波長λが長くなる。この結果、波長λが目標波長λTに追従すると、定在波と締結部73Fとの関係が図8の(b)に示した状態に戻る。すなわち、定在波の節が締結部73Fに一致し、定在波の腹が締結部73Fから離れるようになる。
【0044】
なお、モータ制御部111が実施する第2調整制御の処理ルーチンは、図4に示した処理ルーチンと同様の流れで進行する。すなわち、モータ制御部111は、温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方が変動した場合には(S11:YES)、上記のように、定在波の節が締結部73Fに一致するように音速Cbに基づいて回転数Npを調整する(S12)。
【0045】
第2実施形態の作用および効果について説明する。
液圧制御装置110では、第2調整制御による回転数Npの調整によって、定在波の節を締結部73Fに一致させるようにしている。定在波の腹が配管73の締結部73Fに近いほど、配管73内を流れるブレーキ液の脈動によって発生する締結部73Fでの振動が大きくなりやすいが、定在波の節が締結部73Fに近い場合には、締結部73Fの振動を小さく抑えることができる。すなわち、液圧制御装置110によれば、締結部73Fの振動を小さく抑えることができる。
【0046】
たとえば、図8の(c)に示すように温度Tbが低下したり圧力Pbが低下したりすることによって音速Cbが大きくなる場合、モータ制御部111によって回転数Npが上昇される。回転数Npの上昇によって脈動周波数Fpを高くすることで、音速Cbが大きくなる前後で波長λの変動を小さく抑えることができ、定在波の節と腹とが現れる間隔の変化を抑制できる。
【0047】
また、たとえば、図8の(d)に示すように温度Tbが上昇したり圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなる場合、モータ制御部111によって回転数Npが低下される。回転数Npの低下によって脈動周波数Fpを低くすることで、音速Cbが小さくなる前後で波長λの変動を小さく抑えることができ、定在波の節と腹とが現れる間隔の変化を抑制できる。
【0048】
以上のように、液圧制御装置110によれば、温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方が変動しても、定在波の腹が締結部73Fに接近することを抑制できる。すなわち、定在波の節が締結部73Fから離れることを抑制できる。これによって、配管73の締結部73Fでの振動を小さく抑えることができる。この結果、配管73の振動が、締結具73Aを介して車両に伝わりにくくなる。すなわち、ポンプ71の作動に起因する振動が車両の車室内に伝わりにくい。したがって、ポンプ71の作動に起因する振動による不快感を搭乗者に与えにくい。
【0049】
また、回転数Npの調整によってポンプ71の作動に起因する振動が伝わりにくくなるため、車両の動力源の状態にかかわらず、ポンプ71の作動に起因する振動を車両の搭乗者に伝わりにくくすることができる。
【0050】
第1実施形態および第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態、第2実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・上記第1実施形態における第1調整制御では、温度Tbが上昇したり圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなることで共振周波数が低くなる場合に、回転数Npを低下させることで脈動周波数Fpを低くする例を示した。第1調整制御としては、これに限らず、温度Tbが上昇したり圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなることで共振周波数が低くなる場合に、回転数Npを上昇させることで脈動周波数Fpを高くすることもできる。この場合、低共振周波数Fr2dと低共振周波数Fr3dとの間に位置するように脈動周波数Fpを調整することによって、上記第1実施形態と同様に、温度Tbが上昇したり、圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなっても、配管73で共振が発生することを抑制できる。
【0052】
また、上記第1実施形態における第1調整制御では、温度Tbが低下したり圧力Pbが低下したりすることによって音速Cbが大きくなることで共振周波数が高くなる場合に、回転数Npを上昇させることで脈動周波数Fpを高くする例を示した。第1調整制御としては、これに限らず、温度Tbが低下したり圧力Pbが低下したりすることによって音速Cbが大きくなることで共振周波数が高くなる場合に、回転数Npを低下させることで脈動周波数Fpを低くすることもできる。この場合、高共振周波数Fr1iよりも脈動周波数Fpを低く調整することによって、上記第1実施形態と同様に、温度Tbが低下したり、圧力Pbが低下したりすることによって音速Cbが大きくなっても、配管73で共振が発生することを抑制できる。
【0053】
すなわち、温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方の変動によって音速Cbが変化する場合、回転数Npを低下させることによって脈動周波数Fpを低くしてもよいし、回転数Npを上昇させることによって脈動周波数Fpを高くしてもよい。
【0054】
・上記第2実施形態では、定在波の節が締結部73Fに一致するように回転数Npを調整している。定在波の節と締結部73Fとが完全に一致していない場合でも、定在波の腹を締結部73Fから離すことができれば、配管73の振動を抑制する効果を奏することができる。すなわち、第2調整制御では、定在波の腹を締結部73Fから離すように回転数Npを調整すればよい。
【0055】
・上記第2実施形態における第2調整制御では、温度Tbが低下したり圧力Pbが低下したりすることによって音速Cbが大きくなる場合に、回転数Npの上昇によって脈動周波数Fpを高くすることで、音速Cbが大きくなる前後で波長λの変動を小さく抑える例を示した。第2調整制御としては、これに限らず、温度Tbが低下したり圧力Pbが低下したりすることによって音速Cbが大きくなる場合に、回転数Npの低下によって脈動周波数Fpを低くすることで波長λを長くして、定在波の腹を締結部73Fから離すこともできる。
【0056】
また、上記第2実施形態における第2調整制御では、温度Tbが上昇したり圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなる場合に、回転数Npの低下によって脈動周波数Fpを低くすることで、音速Cbが小さくなる前後で波長λの変動を小さく抑える例を示した。第2調整制御としては、これに限らず、温度Tbが上昇したり圧力Pbが上昇したりすることによって音速Cbが小さくなる場合に、回転数Npの上昇によって脈動周波数Fpを高くすることで波長λを短くして、定在波の腹を締結部73Fから離すこともできる。
【0057】
すなわち、温度Tbおよび圧力Pbの少なくとも一方の変動によって音速Cbが変化する場合、回転数Npを低下させることによって波長λを長くしてもよいし、回転数Npを上昇させることによって波長λを短くしてもよい。
【0058】
・上記第1実施形態および第2実施形態では、音速導出部12は、ブレーキ液の温度および圧力の影響を反映させた値として音速Cbを導出している。音速導出部12は、温度Tbおよび圧力Pbのうち一方に基づいて音速Cbを導出することもできる。
【0059】
・上記第1実施形態および第2実施形態では、温度Tbまたは圧力Pbが変動した場合に、回転数Npを調整している。温度Tbおよび圧力Pbのうち一方が変動した場合に回転数Npを調整してもよい。
【0060】
・車両には複数のホイールシリンダ93が設けられているため、制動アクチュエータ70には、複数の配管73が接続されている。各配管73の長さが異なる場合、複数の配管73のうち、第1配管内でのブレーキ液の脈動によって共振が発生する際の共振周波数である第1共振周波数と、第2配管内でのブレーキ液の脈動によって共振が発生する際の共振周波数である第2共振周波数とが互いに異なることがある。この場合、上記第1実施形態においては、第1共振周波数および第2共振周波数の双方から脈動周波数Fpが離れるように回転数Npを調整することが好ましい。
【0061】
また、第2実施形態においては、各配管73で、定在波の腹が締結部73Fから離れるように回転数Npを調整することが好ましい。
・上記第1実施形態において、配管73内で発生する定在波の腹の位置と配管73の締結部73Fとの位置をも考慮しつつ、脈動周波数Fpが共振周波数から離れるように回転数Npを調整するようにしてもよい。すなわち、定在波の腹の位置と締結部73Fとの距離が規定距離未満にならない範囲で、脈動周波数Fpが共振周波数から離れるように回転数Npを調整するようにしてもよい。
【0062】
・上記第1実施形態および第2実施形態に例示した制動装置80では、ポンプ71としてギヤポンプが採用されているが、ブレーキ液を吐出するポンプはギヤポンプに限らない。たとえば、ピストンポンプが採用されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…液圧制御装置
11…モータ制御部
12…音速導出部
13…共振周波数導出部
71…ポンプ
72…電動モータ
73…配管
73A…締結具
73F…締結部
80…制動装置
83…温度センサ
84…圧力センサ
93…ホイールシリンダ
110…液圧制御装置
111…モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8