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特開2021-89875非水電解液、半固体電解質層、二次電池用シート及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-89875(P2021-89875A)
(43)【公開日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】非水電解液、半固体電解質層、二次電池用シート及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20210514BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20210514BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20210514BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20210514BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/0568
   H01M10/056
   H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-220841(P2019-220841)
(22)【出願日】2019年12月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇根本 篤
(72)【発明者】
【氏名】關 栄二
(72)【発明者】
【氏名】上野 和英
(72)【発明者】
【氏名】獨古 薫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正義
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AK15
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL15
5H029AL16
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM10
5H029AM11
5H029AM12
5H029BJ02
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ06
5H029DJ16
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】二次電池の放電容量を向上させ得る非水電解液を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の非水電解液は、スルホラン及び/又はその誘導体、第一の電解質塩並びに第二の電解質塩を含み、前記第一の電解質塩はフッ素を有し、前記第一の電解質塩に含まれるカチオンの自己拡散係数は、前記スルホラン及び/又はその誘導体の自己拡散係数の0.79倍以上であり、(電解質塩に含まれるフッ素原子量)/(電解質塩の分子量)をフッ素密度としたとき、前記第二の電解質塩のフッ素密度が前記第一の電解質塩のフッ素密度より小さく、前記スルホラン及び/又はその誘導体に対する前記第一の電解質塩のモル比をX、前記スルホラン及び/又はその誘導体に対する前記第二の電解質塩のモル比をYとしたとき、0<Y/(X+Y)×100≦64であることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホラン及び/又はその誘導体、第一の電解質塩並びに第二の電解質塩を含み、
前記第一の電解質塩はフッ素を有し、
前記第一の電解質塩に含まれるカチオンの自己拡散係数は、前記スルホラン及び/又はその誘導体の自己拡散係数の0.79倍以上であり、
(電解質塩に含まれるフッ素原子量)/(電解質塩の分子量)
をフッ素密度としたとき、前記第二の電解質塩のフッ素密度が前記第一の電解質塩のフッ素密度より小さく、
前記スルホラン及び/又はその誘導体に対する前記第一の電解質塩のモル比をX、前記スルホラン及び/又はその誘導体に対する前記第二の電解質塩のモル比をYとしたとき、0<Y/(X+Y)×100≦64である非水電解液。
【請求項2】
7<Y/(X+Y)×100≦57である請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
18<Y/(X+Y)×100≦46である請求項1に記載の非水電解液。
【請求項4】
請求項1に記載の非水電解液、担持粒子及び半固体電解質バインダを含む半固体電解質層。
【請求項5】
正極及び/又は負極と、請求項4に記載の半固体電解質層とが積層されてなる二次電池用シート。
【請求項6】
正極と、
負極と、
前記正極及び前記負極の間に配置される請求項4に記載の半固体電解質層と、
を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液、半固体電解質層、二次電池用シート及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
各種二次電池に用いる非水電解液に関する従来技術として、特許文献1には、高いエネルギー密度と優れた充電レート特性を両立するリチウムイオン二次電池であって、リチウム複合酸化物からなる正極活物質と、添加剤としてLiイオンの拡散経路を有するナノカーボンとを含む正極と、電解質として0.5mol/l以上のLi[(FSON]と、添加剤としてLiPOと、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)の三元系を含む電解液とを備えるリチウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/217408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のリチウムイオン二次電池における電解液は、二次電池の放電容量を向上させるには不十分であり、なお改良の余地があった。
【0005】
本発明は、二次電池の放電容量を向上させ得る非水電解液を提供することを目的とする。また、その非水電解液を用いた半固体電解質層、二次電池用シート及び二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の非水電解液は、スルホラン及び/又はその誘導体、第一の電解質塩並びに第二の電解質塩を含み、前記第一の電解質塩はフッ素を有し、前記第一の電解質塩に含まれるカチオンの自己拡散係数は、前記スルホラン及び/又はその誘導体の自己拡散係数の0.79倍以上であり、(電解質塩に含まれるフッ素原子量)/(電解質塩の分子量)をフッ素密度としたとき、前記第二の電解質塩のフッ素密度が前記第一の電解質塩のフッ素密度より小さく、前記スルホラン及び/又はその誘導体に対する前記第一の電解質塩のモル比をX、前記スルホラン及び/又はその誘導体に対する前記第二の電解質塩のモル比をYとしたとき、0<Y/(X+Y)×100≦64であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の非水電解液により、二次電池の放電容量を向上させ得る非水電解液が提供される。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の二次電池の一実施形態を示す断面図である。
図2】実施例及び比較例におけるY/(X+Y)と放電容量(mAh/g)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0010】
本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として有する意味で使用する。上限値又は下限値が0の場合は、上限値又は下限値を含まない。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的に記載されている上限値又は下限値に置き換えても良い。本明細書に記載される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示されている値に置き換えても良い。
【0011】
本発明に係る二次電池の一実施形態として、リチウムイオン二次電池を例にして以下説明する。リチウムイオン二次電池とは、電解質中における電極へのリチウムイオンの吸蔵・放出により、電気エネルギーを貯蔵又は利用可能とする電気化学デバイスである。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオン電池、非水電解質二次電池、非水電解液二次電池等の別の名称でも呼ばれており、いずれの電池も本発明の対象である。本発明の技術的思想は、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池、亜鉛二次電池、アルミニウムイオン二次電池等に対しても適用できる。
【0012】
以下で例示している材料群から材料を選択する場合、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、材料を単独で選択しても良く、複数組み合わせて選択しても良い。また、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、以下で例示している材料群以外の材料を選択しても良い。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の断面図である。図1は積層型のリチウムイオン二次電池を示しており、リチウムイオン二次電池1000は、正極100、負極200、外装体500及び絶縁層300を有する。外装体500は、絶縁層300、正極100及び負極200を収容する。外装体500は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等、非水電解液に対し耐食性のある材料群から選択される。リチウムイオン二次電池は、捲回型の構成にすることもできる。
【0014】
リチウムイオン二次電池1000内では、正極100、絶縁層300及び負極200で構成される電極体400が積層して電極群を構成する。以下では、正極100又は負極200を電極と称する場合がある。また、正極100又は負極200あるいはその両方と、絶縁層300とが積層したものを二次電池用シートと称する場合がある。絶縁層300及び電極を一体構造とした場合、二次電池用シートを積層するだけで電極群を作製できる。
【0015】
正極100は、正極集電体120及び正極合剤層110を有する。正極集電体120の両面に正極合剤層110が形成されている。負極200は、負極集電体220及び負極合剤層210を有する。負極集電体220の両面に負極合剤層210が形成されている。正極合剤層110又は負極合剤層210を電極合剤層、正極集電体120又は負極集電体220を電極集電体と称する場合がある。
【0016】
正極集電体120は正極タブ130を有する。負極集電体220は負極タブ230を有する。正極タブ130又は負極タブ230を電極タブと称する場合がある。電極タブ上には電極合剤層が形成されていない。ただし、リチウムイオン二次電池1000の性能に悪影響を与えない範囲で電極タブ上に電極合剤層を形成しても良い。正極タブ130及び負極タブ230は、外装体500の外部に突出しており、突出した複数の正極タブ130同士、複数の負極タブ230同士が、例えば超音波接合等で接合されることで、リチウムイオン二次電池1000内で並列接続が形成される。本発明に係るリチウムイオン二次電池は、二次電池内に電気的な直列接続を備えるバイポーラ型の構成にすることもできる。
【0017】
正極合剤層110は、正極活物質、正極導電剤及び正極バインダを含む。負極合剤層210は、負極活物質、負極導電剤及び負極バインダを含む。正極活物質又は負極活物質を電極活物質、正極導電剤又は負極導電剤を電極導電剤、正極バインダ又は負極バインダを電極バインダと称する場合がある。
【0018】
<電極導電剤>
電極導電剤は、電極合剤層の導電性を向上させる。電極導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0019】
<電極バインダ>
電極バインダは、電極中の電極活物質や電極導電剤等を結着させる。電極バインダとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロ−ス(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体(P(VdF−HFP))等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0020】
<正極活物質>
貴な電位を示す正極活物質は、充電過程においてリチウムイオンが脱離し、放電過程において負極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入される。正極活物質としては、遷移金属を有するリチウム複合酸化物が望ましい。具体的には、LiMO、Li過剰組成のLi[LiM]O、LiM、LiMPO、LiMVO、LiMBO、LiMSiO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Cr、Zn、Ta、Al、Mg、Cu、Cd、Mo、Nb、W、Ru等から選択される少なくとも1種である)が挙げられる。また、これら材料における酸素の一部を、フッ素等の他の元素に置換しても良い。さらに、正極活物質は、TiS、MoS、Mo、TiSe等のカルコゲナイドや、V等のバナジウム系酸化物、FeF等のハライド、ポリアニオンを構成するFe(MoO、Fe(SO、LiFe(PO等、キノン系有機結晶、酸素等の材料群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0021】
<正極集電体120>
正極集電体120としては、厚さが1〜100μmのアルミニウム箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの孔を有するアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板、ステンレス鋼、チタン等の材料等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0022】
<負極活物質>
卑な電位を示す負極活物質は、放電過程においてリチウムイオンが脱離し、充電過程において正極合剤層110中の正極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入される。負極活物質としては、炭素系材料(黒鉛、易黒鉛化炭素材料、非晶質炭素材料、有機結晶、活性炭等)、導電性高分子材料(ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレン等)、リチウム複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12やLiTiO等)、金属リチウム、リチウムと合金化する金属(アルミニウム、シリコン、スズ等を少なくとも1種類以上有する)やこれらの酸化物等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0023】
<負極集電体220>
負極集電体220としては、厚さが1〜100μmの銅箔、厚さが1〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板、ステンレス鋼、チタン、ニッケル等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0024】
<電極>
電極活物質、電極導電剤、電極バインダ及び溶剤を混合した電極スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等の塗工方法によって電極集電体へ付着させることで電極合剤層が作製される。溶剤は、Nメチルピロリドン(NMP)、水等の材料群から選択される。その後、溶剤を除去するために電極合剤層を乾燥し、ロールプレスによって電極合剤層を加圧成形することにより電極が作製される。
【0025】
電極合剤層に非水電解液が含まれている場合、電極合剤層中の非水電解液の含有量は20〜40体積%であることが望ましい。非水電解液の含有量が少ない場合、電極合剤層内部でのイオン伝導経路が十分に形成されずレート特性が低下する可能性がある。また、非水電解液の含有量が多い場合には、電極合剤層から非水電解液が漏れ出す可能性があることに加え、電極活物質の相対的な量が不十分となりエネルギー密度の低下を招く可能性がある。
【0026】
電極合剤層に非水電解液を含有させるためには、外装体500の開いている一辺や注液孔からリチウムイオン二次電池1000に非水電解液を注入し、電極合剤層の細孔に非水電解液を充填させて行うことができる。また、非水電解液、電極活物質、電極導電剤及び電極バインダを混合したスラリーを調製し、調製したスラリーを電極集電体上に一緒に塗布して、電極合剤層の細孔に非水電解液を充填させても良い。これにより、半固体電解質に含まれるような担持粒子を要せず、電極合剤層中の電極活物質や電極導電剤等の粒子が担持粒子として機能し、それらの粒子により非水電解液を保持することができる。
【0027】
電極合剤層の厚さは、電極活物質の平均粒径以上とすることが望ましい。電極合剤層の厚さが小さいと、隣接する電極活物質間の電子伝導性が悪化する可能性がある。電極活物質粉末中に電極合剤層の厚さ以上の平均粒径を有する粗粒がある場合、ふるい分級、風流分級等により粗粒を予め除去し、電極合剤層の厚さ以下の粒子とすることが望ましい。
【0028】
<絶縁層300>
絶縁層300は、正極100と負極200の間にイオンを伝達させる媒体となる。絶縁層300は電子の絶縁体としても働き、正極100と負極200の短絡を防止する。絶縁層300は、半固体電解質層を有することができる。絶縁層300として、セパレータ及び半固体電解質層を併用しても良い。
【0029】
<セパレータ>
セパレータとして、多孔質シートを用いることができる。多孔質シートは、セルロース、セルロースの変成体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等)、ポリオレフィン(ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の樹脂、ガラス等の材料群から選択することができる。セパレータを正極100又は負極200よりも大面積にすることで、正極100と負極200の短絡を防止できる。
【0030】
セパレータ粒子、セパレータバインダ及び溶剤を有するセパレータ形成用混合物を電極合剤層に塗布することにより、セパレータを形成しても良い。あるいは、セパレータ形成用混合物を上記の多孔質シートに塗布しても良い。
【0031】
セパレータ粒子は、γ−アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)等の材料群から選択される。セパレータ粒子の平均粒子径は、セパレータの厚さの1/100〜1/2とすることが望ましい。セパレータバインダは、ポリエチレン(PE)、PP、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PVDF、P(VdF−HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアルギン酸、ポリアクリル酸等の材料等から適宜選択して用いることができる。
【0032】
絶縁層300がセパレータを含む場合、外装体500の開いている一辺や注液孔からリチウムイオン二次電池1000に非水電解液を注入することで、セパレータ中に非水電解液を充填することができる。
【0033】
<半固体電解質層>
半固体電解質層は、半固体電解質バインダ及び半固体電解質を有する。半固体電解質は、担持粒子及び非水電解液を有する。半固体電解質は、担持粒子の集合体によって形成される細孔を有し、その中に非水電解液が保持されている。半固体電解質中に非水電解液が保持されることによって、半固体電解質はリチウムイオンを透過させる。絶縁層300として半固体電解質層を用い、電極合剤層に非水電解液が充填される場合、リチウムイオン二次電池1000への非水電解液の注入は不要になる。
【0034】
半固体電解質層は、非水電解液等の液体成分を含んでいながら、固体のような取扱いができ、半透明な自立膜であり得る。局所的には、非水電解液等の液体成分がリチウムイオン伝導を担うために高イオン伝導性を示す。すなわち、半固体電解質層は、固体が持つ高い安全性と液体が持つ高いイオン伝導特性の、両者の長所を併せ持つ。
【0035】
半固体電解質層の作製方法として、半固体電解質の粉末を成型ダイス等でペレット状に圧縮成型する方法や、半固体電解質バインダを半固体電解質の粉末に添加・混合し、シート化する方法等がある。半固体電解質バインダを半固体電解質の粉末に添加・混合することにより、柔軟性の高いシート状の半固体電解質層を作製することができる。分散溶媒に半固体電解質バインダを溶解させた結着剤の溶液を、半固体電解質に添加・混合し、電極等の基材上に混合物を塗布し、乾燥により分散溶媒を留去することで、半固体電解質層を作製しても良い。
【0036】
<担持粒子>
担持粒子としては、電気化学的安定性の観点から、絶縁性粒子であり非水電解液に不溶であることが好ましい。担持粒子は、SiO粒子、Al粒子、セリア(CeO)粒子、ZrO粒子等の酸化物無機粒子、固体電解質等の材料群から適宜選択して用いることができる。担持粒子として酸化物無機粒子を用いることにより、半固体電解質層内で非水電解液を高濃度で保持することができる。また、酸化物無機粒子からガスが発生することがないため、大気中でのロールtoロールプロセスにより半固体電解質層を作製することができる。固体電解質は、Li−La−Zr−O等の酸化物系固体電解質や、Li10GePS12等の硫化物系固体電解質等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0037】
非水電解液の保持量は担持粒子の比表面積に比例すると考えられるため、担持粒子の一次粒子の平均粒径は、1nm〜10μmであることが好ましい。担持粒子の一次粒子の平均粒径が大きいと、担持粒子が十分な量の非水電解液を適切に保持できず半固体電解質の形成が困難になる可能性がある。また、担持粒子の一次粒子の平均粒径が小さいと、担持粒子間の表面間力が大きくなって担持粒子同士が凝集し易くなり、半固体電解質の形成が困難になる可能性がある。担持粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜50nmの範囲がより好ましく、1〜10nmの範囲がさらに好ましい。担持粒子の一次粒子の平均粒径は、TEMを用いて測定することができる。
【0038】
<非水電解液>
非水電解液は、スルホラン及び/又はその誘導体、任意の低粘度有機溶媒、任意の負極界面安定化材、及び電解質塩を含む。スルホラン及び/又はその誘導体は、電解質塩とともに溶媒和イオン液体を構成する。以下の説明では、スルホラン及び/又はその誘導体を主溶媒と称する場合がある。非水電解液に含まれる成分はNMR等で測定することができる。
【0039】
イオン液体とは、常温でカチオンとアニオンに解離する化合物であって、液体の状態を保持するものである。イオン液体は、イオン性液体、低融点溶融塩あるいは常温溶融塩と称されることがある。非水溶媒は、大気中での安定性や二次電池内での耐熱性の観点から、低揮発性であり、具体的には室温における蒸気圧が150Pa以下であるものが望ましいが、これに限られない。非水電解液が難揮発性の溶媒和イオン液体を含むことにより、半固体電解質層からの非水電解液の揮発を抑制することができる。
【0040】
半固体電解質層中の非水電解液の含有量は特には限定されないが、40〜90体積%であることが望ましい。非水電解液の含有量が小さい場合、電極と半固体電解質層との界面抵抗が増加する可能性がある。また、非水電解液の含有量が大きい場合、半固体電解質層から非水電解液が漏れ出してしまう虞がある。半固体電解質層がシート状である場合、半固体電解質層中の非水電解液の含有量は50〜80体積%、さらには60〜80体積%であることが望ましい。半固体電解質と分散溶媒に半固体電解質バインダを溶解させた溶液との混合物を電極上に塗布することによって半固体電解質層を形成する場合、半固体電解質層中の非水電解液の含有量は40〜60体積%であることが望ましい。
【0041】
非水電解液における主溶媒の重量比率は、特には限定されないが、リチウムイオン二次電池の安定性の観点から、また高速充放電を可能にするため、非水電解液における主溶媒の重量比率は30〜70重量%、特に40〜60重量%、さらには45〜55重量%であることが望ましい。
【0042】
<溶媒和イオン液体>
溶媒和イオン液体は、スルホラン及び/又はその誘導体と、電解質塩とを有する。スルホラン及び/又はその誘導体を含む溶媒和イオン液体を用いると、スルホラン及び/又はその誘導体とリチウムイオンとで固有の配位構造をとるため、半固体電解質層中でのリチウムイオンの輸送速度が速くなる。したがって、粘度を高くするにつれて二次電池の入出力特性が低下するエーテル系溶媒及び電解質塩を有する溶媒和イオン液体とは異なり、溶媒和イオン液体の粘度を高くしても、溶媒和イオン液体を有する二次電池の入出力特性の低下を抑制することができる。
【0043】
スルホランの誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子やアルキル基等により置換されたものが挙げられる。具体例として、フルオロスルホラン、ジフルオロスルホラン、メチルスルホラン等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0044】
<電解質塩>
非水電解液は、第一の電解質塩、第二の電解質塩を含む。第一の電解質塩は、フッ素を有する。フッ素を高濃度で含むアニオンを含有することにより、黒鉛等の負極活物質に対する安定性をより高めることができる。第一の電解質塩に含まれるリチウムイオン、ナトリウムイオン等の電極への挿入/脱離が可能なカチオンの自己拡散係数は、スルホラン及び/又はその誘導体の自己拡散係数の0.79倍以上であることが望ましい。これにより、上記の第一の電解質塩が負極活物質に対して安定となり、リチウムイオン二次電池1000の容量を向上させることができる。
【0045】
第一の電解質塩に含まれるカチオンの自己拡散係数、非水電解液中の第一の電解質塩等に含まれるアニオンの自己拡散係数、スルホラン及び/又はその誘導体の自己拡散係数は、パルス磁場勾配スピンエコー法による核磁気共鳴分析により求めることができる。
【0046】
フッ素密度を以下:
(電解質塩に含まれるフッ素原子量)/(電解質塩の分子量)
のように定義したとき、第二の電解質塩のフッ素密度は第一の電解質塩のフッ素密度より小さいことが望ましい。これにより、リチウムイオン二次電池1000の充電初期に第二の電解質塩が優先的に分解して負極200表面の皮膜を安定化し、リチウムイオン二次電池1000の容量を向上させることができる。また、フッ素密度が高い第一の電解質塩が持つ、黒鉛等の負極活物質に対する安定性を活かすことができる。フッ素密度は、核磁気共鳴分析により求めることができる。
【0047】
非水電解液に第一の電解質塩や第二の電解質塩以外の電解質塩が含まれる場合、第一の電解質塩や第二の電解質塩以外の電解質塩をS(nは3以上の整数)、当該電解質塩のモル濃度をM(S)、当該電解質塩のフッ素密度をD(S)、第二の電解質塩のモル濃度をM(S)、フッ素密度をD(S)としたとき、第二の電解質塩のフッ素密度を{ΣM(S)×D(S)}/ΣM(S)(m=2〜n)として、上記の第一の電解質塩との関係を満たすことが望ましい。
【0048】
スルホラン及び/又はその誘導体に対する第一の電解質塩のモル比をX、スルホラン及び/又はその誘導体に対する第二の電解質塩のモル比をYとしたとき、0<Y/(X+Y)×100≦64である。好ましくは7<Y/(X+Y)×100≦57、より好ましくは18<Y/(X+Y)×100≦46を満たすことが望ましい。Y/(X+Y)の値が大き過ぎると、第二の電解質塩の分解が顕著になり、抵抗が大きくなり、二次電池の放電容量が低下する可能性がある。
【0049】
第一の電解質塩及び第二の電解質塩としては、低粘度有機溶媒に均一に分散できるものが望ましく、カチオンがリチウムである場合、各種のリチウム塩を用いることができる。第一の電解質塩、及び第二の電解質塩として、LiBF、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClO、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSA)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)等の材料群から上記の条件を満たす材料を適宜選択して用いることができる。第一の電解質塩としてLiBFを用いることが望ましい。LiBFは黒鉛等の負極活物質に対して安定であり、二次電池の容量を高めることができる。
【0050】
スルホラン及び/又はその誘導体と電解質塩とを有する溶媒和イオン液体は、見かけ上の組成として一体的に表記することができる。例えば、スルホランとLiTFSIからなる溶媒和イオン液体は、見かけ上の組成としてLi(SL)TFSI(x=2〜3)と表記し、この組成を有する単一の物質としてモル数を算出する。
【0051】
電解質塩に対するスルホラン及び/又はその誘導体の混合比は、特に限定されるものではないが、(スルホラン及び/又はその誘導体)/電解質塩のモル比が、1.0〜3.5の範囲内であることが好ましい。
【0052】
<低粘度有機溶媒>
低粘度有機溶媒は、非水電解液の粘度を下げ、イオン伝導率を向上させる。非水電解液の内部抵抗が大きい場合、低粘度有機溶媒を添加して非水電解液のイオン伝導率を高めることにより、非水電解液の内部抵抗を下げることができる。
【0053】
低粘度有機溶媒の室温(25℃)での平衡蒸気圧は1Pa以上であることが望ましい。これにより、低粘度有機溶媒の揮発が抑制され、安全性が向上し、リチウムイオン二次電池1000の高温動作時の寿命が向上する。平衡蒸気圧は、蒸気圧測定装置等により評価することができる。
【0054】
低粘度有機溶媒のドナー数は12以上であることが望ましい。これにより、低粘度有機溶媒とリチウムイオンとの相互作用が強くなり、低粘度有機溶媒が揮発しにくくなる。ドナー数はNMR等により評価できる。
【0055】
室温(25℃)での平衡蒸気圧が1Pa以上、ドナー数が12以上である低粘度有機溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチレンカーボネート(EC)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、亜リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(TFP)、γ−ブチロラクトン(GBL)、メチルホスホン酸ジメチル(DMMP)等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0056】
<負極界面安定化材>
非水電解液が負極界面安定化材を含むことにより、二次電池のレート特性の向上や電池寿命の向上を図ることができる。負極界面安定化材は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等の材料群から適宜選択して用いることができる。
【0057】
<腐食防止剤>
非水電解液は、必要に応じて腐食防止剤を含んでいても良い。腐食防止剤により、正極集電体120が高い電気化学電位に晒されても金属が溶出しにくい皮膜が形成される。腐食防止剤としては、PFやBFといったアニオン種を含み、且つ、水分を含んだ大気で安定な化合物を形成するための強い化学結合を有するカチオン種を含む材料が望ましい。
【0058】
大気で安定な化合物であることを示す一指標としては、水に対する溶解度や加水分解の有無を挙げることができる。腐食防止剤が固体である場合、水に対する溶解度が1%未満であることが望ましい。また、加水分解の有無は、水と混合後の試料の分子構造解析で評価することができる。ここで、加水分解しない、とは、腐食防止剤が吸湿あるいは水と混和した後、100℃以上で加熱して水分を除去し、残留物の95%が当初の腐食防止剤と同じ分子構造を示していることを意味する。
【0059】
腐食防止剤は、(M−R)Anと表される。(M−R)Anのカチオンは(M−R)である。Mは、窒素(N)、ホウ素(B)、リン(P)又は硫黄(S)から選択される。Rは炭化水素基から構成される。
【0060】
(M−R)AnのアニオンはAnである。Anとしては、BFやPFが好適に用いられる。腐食防止剤のアニオンをBFやPFにすることで、正極集電体120の溶出を効率的に抑制できる。これは、BFやPFのFアニオンが電極集電体のSUSやアルミニウムと反応し、不動態皮膜を形成することが影響するためと考えられる。
【0061】
腐食防止剤は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TBABF)等の4級アンモニウム塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMI−BF)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(EMI−PF)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(BMI−BF)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(BMI−PF)等のイミダゾリウム塩等の材料群から適宜選択して用いることができる。特に、アニオンがPFであれば、正極集電体120の溶出を好適に抑制できる。
【0062】
腐食防止剤の含有量は、非水電解液の総重量に対して、0.5〜20重量%であることが望ましく、より好ましくは1〜10重量%である。腐食防止剤の含有量が少ないと、電極集電体の溶出を抑制する効果が低下し、充放電に伴い電池容量が低下する可能性がある。また、腐食防止剤の含有量が多いと、リチウムイオン伝導度が低下し、さらに、腐食防止剤を分解させるために多くの蓄電エネルギーが消費されてしまい、結果として電池容量が低下する可能性がある。
【0063】
<半固体電解質バインダ>
半固体電解質バインダとしては、フッ素系の樹脂が好適に用いられる。フッ素系の樹脂は、PTFE、PVDF、P(VdF−HFP)等の材料群から適宜選択して用いることができる。PVDFやP(VdF−HFP)を用いることで、絶縁層300と電極集電体の密着性が向上するため、電池性能が向上する。
【0064】
<半固体電解質>
非水電解液が担持粒子に担持又は保持されることにより半固体電解質が構成される。半固体電解質の作製方法として、非水電解液と担持粒子とを特定の体積比率で混合し、メタノール等の有機溶媒を添加し・混合して、半固体電解質のスラリーを調合した後、スラリーをシャーレ等に広げ、有機溶媒を留去して半固体電解質の粉末を得る方法等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
<半固体電解質層の作製>
第一の電解質塩としてLiBF、第二の電解質塩としてLiFSA、主溶媒としてスルホラン(SL)、低粘度有機溶媒として1,2−ブチレンカーボネート(BC)、負極界面安定化材としてビニレンカーボネート(VC)、及び腐食防止剤としてTBAPFをそれぞれ秤量して混合し、非水電解液とした。この非水電解液と、粒子径7nmのヒュームドシリカナノ粒子とを体積比80:20となるよう秤量して混合し、粉末状の半固体電解質を得た。
【0067】
半固体電解質の粉末と、半固体電解質バインダであるPTFEが、重量比95:5となるよう、それぞれ秤量して乳鉢に投入し、均一混合した。この混合物を、PTFEシートを介して油圧プレス機にセットし、厚みが200μmとなるようプレスし、絶縁層300(半固体電解質層)を得た。半固体電解質層に含まれる液体の混合比をNMRで評価したところ、SLとLiBFのモル比が3:1(溶媒和イオン液体1)、SLとLiFSAのモル比が2:1(溶媒和イオン液体2)であり、溶媒和イオン液体1と溶媒和イオン液体2の総和に対する溶媒和イオン液体2の濃度は10mоl%、溶媒和イオン液体1と溶媒和イオン液体2の総和に対するBCの濃度は20重量%、溶媒和イオン液体1、溶媒和イオン液体2及び低粘度有機溶媒に対するVC及びTBAPFの濃度はそれぞれ3重量%と2.5重量%であった。この半固体電解質層を直径16mmで打ち抜いた。
【0068】
<正極100の作製>
正極活物質としてのLi(Ni,Co,Mn)O系酸化物、正極導電剤としてのアセチレンブラック、及び、N−メチルピロリドンへ溶解させた正極バインダとしてのPVDFを所定の割合で混練機を用いて均一混合した。この混合物にNMPを投入してスラリーを得た。卓上コーターにて、正極集電体120であるAl箔上にスラリーを塗布し、120℃で乾燥することで正極100を得た。この正極100を所定の圧力でプレスし、直径13mmで切り取った。
【0069】
<負極200の作製>
負極活物質としての黒鉛と、負極バインダとしてのSBR及びCMCとを所定の割合で混練機を用いて均一混合した。この混合物に水を投入してスラリーを得た。卓上コーターにて、負極集電体220であるCu箔上にスラリーを塗布し、100℃で乾燥することで負極200を得た。この負極200を所定の圧力でプレスし、直径13mmで切り取った。
【0070】
<リチウムイオン二次電池1000の作製>
半固体電解質層を、正極100及び負極200でサンドウィッチし、CR2032型コインセル内に封入した後、最終的な半固体電解質層、正極100、及び負極200中の非水電解液の組成が表1の内容になるよう、非水電解液をCR2032型コインセルに注液し、リチウムイオン二次電池1000を作製した。なお、表1において、「自己拡散係数の比」は、スルホラン(A)の自己拡散係数に対する第一の電解質塩(C)に含まれるカチオン(リチウムイオン)の自己拡散係数の比を意味する。また、「(B)濃度」の項目は、第一の電解質塩、第二の電解質塩、スルホラン及び低粘度有機溶媒の合計量に対する低粘度有機溶媒の濃度を意味する。さらに、Xはスルホランに対する第一の電解質塩のモル比であり、Yはスルホランに対する第二の電解質塩のモル比である。
【0071】
<放電容量の評価方法>
リチウムイオン二次電池1000を、0.05Cにて定電流モードで4.2Vまで充電し、電圧が4.2Vに到達した後、電流値が0.005Cとなるまで定電位で保持した。その後、0.05Cにて定電流モードで電圧が2.7Vとなるまで放電し、その容量を計測した。上記測定は25℃で行った。
【0072】
(実施例2〜13、及び比較例1〜5)
非水電解液の組成を表1に示すように調整した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池1000を作製し、リチウムイオン二次電池1000の放電容量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
<結果と考察>
実施例1〜13、及び比較例1〜5に示した非水電解液について、パルス磁場勾配スピンエコーNMR法により、SL溶媒とLiイオンの自己拡散係数を評価した。SL溶媒とLiイオンの相互作用が強く、LiイオンにSL溶媒が配位しているため、SL溶媒の自己拡散係数に対するLiイオンの自己拡散係数の比はいずれも0.79以上であった。以上より、本発明の非水電解液は、Liイオンが拡散し易く、電解質抵抗を低減する上で有効であることが分かった。
【0075】
実施例1〜13、及び比較例1〜5に示した非水電解液を用い、リチウムイオン電池の放電容量を評価した。非水電解液に含まれるLi塩のフッ素密度は、LiBFは81.1、LiTFSAは39.7、LiFSAは20.3、及びLiClOは0である。実施例1〜13、比較例1〜5について、フッ素密度の高い第一の電解質塩を含む溶媒和イオン液体を、溶媒和イオン液体1、フッ素密度の低い第二の電解質塩を含む溶媒和イオン液体を、溶媒和イオン液体2とし、放電容量と溶媒和イオン液体2の濃度との関係を調べた。
【0076】
図2に、Y/(X+Y)と放電容量との関係を示す。Y/(X+Y)の値が0から大きくなるにしたがって放電容量は増加し、Y/(X+Y)=0.32で最大となった。これは、溶媒和イオン液体2の濃度が高まるにしたがって、黒鉛負極表面の皮膜が安定化して低抵抗化し、高容量となったものと考えられる。一方、Y/(X+Y)の値が0.32よりも大きい組成では、放電容量は低下した。これは、黒鉛皮膜安定化を狙って導入した溶媒和イオン液体2の濃度が過剰となり、分解反応が進行して高抵抗を誘発した結果、容量が低下したためと考えられる。この傾向はLi塩の組成、及び検討した組み合わせの違いに依存しなかった。
【0077】
放電容量と、Y/(X+Y)との関係は、以下の式(1)に従った。
放電容量=−0.048261{Y/(X+Y)×100}+3.0988{Y/(X+Y)×100}+99.71 (1)
式(1)によると、0<Y/(X+Y)×100≦64では、放電容量が100mAh/g以上であった。また、7<Y/(X+Y)×100≦57では、放電容量が120mAh/g以上であり、さらに、18<Y/(X+Y)×100≦46では、放電容量が140mAh/g以上であった。このことから、フッ素密度の異なる電解質塩を混合し、還元安定性に優れる溶媒和イオン液体と、安定な黒鉛皮膜形成を促す溶媒和イオン液体とを混合することで、高容量が実現できることが分かった。
【符号の説明】
【0078】
100 正極
110 正極合剤層
120 正極集電体
130 正極タブ
200 負極
210 負極合剤層
220 負極集電体
230 負極タブ
300 絶縁層
400 電極体
500 外装体
1000 リチウムイオン二次電池
図1
図2