特開2021-91297(P2021-91297A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-91297(P2021-91297A)
(43)【公開日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】人工衛星
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/66 20060101AFI20210521BHJP
   H01Q 7/02 20060101ALI20210521BHJP
   H01Q 1/28 20060101ALI20210521BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20210521BHJP
【FI】
   B64G1/66 C
   H01Q7/02
   H01Q1/28
   H01Q1/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-223065(P2019-223065)
(22)【出願日】2019年12月10日
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】能見 公博
(72)【発明者】
【氏名】大井 克己
(72)【発明者】
【氏名】大川 庫弘
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AA07
5J046AA12
5J046AB11
5J046KA03
5J046KA04
5J046TA03
(57)【要約】
【課題】良好な通信状態を維持できる人工衛星を提供する。
【解決手段】人工衛星1は、衛星本体10と、衛星本体10の暴露壁11Aに配置されたアンテナ20と、を備える。アンテナ20は、弧状に形成されると共に暴露壁11Aから起立するループアンテナである。アンテナ20は、弾性変形が可能であり、暴露壁11Aに沿う非展開形態から暴露壁11Aから起立する展開形態へアンテナ20が有する復元力によって切り替わる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星本体と、
前記衛星本体の少なくとも1つの主面に配置されたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、弧状に形成されると共に前記主面から起立するループアンテナである、
人工衛星。
【請求項2】
前記アンテナは、弾性変形が可能であり、
前記アンテナは、前記主面に沿う第1形態から、前記主面から起立する第2形態へ、前記アンテナが有する復元力によって切り替わる、請求項1に記載の人工衛星。
【請求項3】
前記第1形態を維持するアンテナ保持部をさらに備える、請求項2に記載の人工衛星。
【請求項4】
前記アンテナは、アンテナ機能を奏するアンテナエレメントを含み、
前記アンテナエレメントの長さは、送信及び/又は受信する電波の波長よりも短い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工衛星。
【請求項5】
前記アンテナは、
前記アンテナエレメントに対する電力の授受を行うアンテナ入出力部と、
前記アンテナエレメントと前記アンテナ入出力部との間に接続されるマッチング部と、さらに有する、請求項4に記載の人工衛星。
【請求項6】
前記アンテナエレメントの長さは、前記電波の波長(λ)に対して、0.6λより大きく0.8λより小さい、請求項4または5に記載の人工衛星。
【請求項7】
前記アンテナエレメントの長さは、前記電波の波長(λ)に対して、0.7λである、請求項4又は5に記載の人工衛星。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星は、地上局との間でデータを送受信するためのアンテナを備える。特許文献1〜4は、人工衛星に搭載されるアンテナを開示する。例えば、特許文献1のアンテナは、小型の人工衛星に好適に搭載可能な構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5991578号
【特許文献2】特開平10−270923号公報
【特許文献3】特開平11−186825号公報
【特許文献4】特開平11−186840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアンテナが搭載されるような小型衛星は、大学といった研究機関などにおいて盛んに検討されている。例えば、小型衛星の一例であるキューブサットの形状は、一辺が10cm程度の立方体である。このような衛星の筐体容積は限られているので、姿勢制御装置を搭載することは困難である。姿勢制御装置を搭載しない人工衛星は、その姿勢が常に変化することになる。人工衛星の姿勢が変化するということは、人工衛星に搭載されたアンテナの向きも常に変化する。従って、アンテナの向きによっては、地上局との間で良好な通信状態を維持できない場合も生じ得る。
【0005】
そこで、本発明は、良好な通信状態を維持できる人工衛星を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である人工衛星は、衛星本体と、衛星本体の少なくとも1つの主面に配置されたアンテナと、を備え、アンテナは、弧状に形成されると共に主面から起立するループアンテナである。
【0007】
この人工衛星は、ループアンテナを備えている。ループアンテナは、弧状に形成された部分の長さに応じて、アンテナの指向性を所望の態様に設定することができる。つまり、放射角を広げることが可能である。そうすると、アンテナの向きが一定でない場合であっても、地上局との間で良好な通信状態を維持することができる。
【0008】
上記の人工衛星において、アンテナは、弾性変形が可能であり、アンテナは、主面に沿う第1形態から、主面から起立する第2形態へ、アンテナが有する復元力によって切り替わることとしてよい。この構成によれば、第1形態とすることにより人工衛星の外形寸法を小さくすることができる。また、第2形態とすることにより、良好な通信状態を確保することができる。
【0009】
上記の人工衛星は、第1形態を維持するアンテナ保持部をさらに備えてもよい。この構成によれば、外形寸法が小さくされた状態を好適に維持することができる。従って、ロケットなどに搭載される際に、人工衛星の外形寸法を所望の寸法に収めることができる。
【0010】
上記の人工衛星において、アンテナは、アンテナ機能を奏するアンテナエレメントを含み、アンテナエレメントの長さは、送信及び/又は受信する電波の波長よりも短くてもよい。この構成によれば、アンテナの放射角を広げることができる。
【0011】
上記の人工衛星において、アンテナは、アンテナエレメントに対する電力の授受を行うアンテナ入出力部と、アンテナエレメントとアンテナ入出力部との間に接続されるマッチング部と、さらに有してもよい。この構成によれば、アンテナとアンテナに接続される機器との間のマッチングを調整することが可能になる。従って、地上局との間でさらに良好な通信状態を維持することができる。
【0012】
上記の人工衛星において、アンテナエレメントの長さは、電波の波長(λ)に対して、0.6λより大きく0.8λより小さくてもよい。この構成によれば、アンテナの放射角と放射強度とのバランスを良好に設定することができる。
【0013】
上記の人工衛星において、アンテナエレメントの長さは、電波の波長(λ)に対して、0.7λであってもよい。この構成によれば、アンテナの放射角と放射強度とのバランスをさらに良好に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、良好な通信状態を維持できる人工衛星が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る人工衛星が展開形態であるときの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る人工衛星が展開形態であるときの平面図である。
図3図3は、実施形態に係る人工衛星が展開形態であるときの断面を拡大した側面図である。
図4図4は、実施形態に係る人工衛星が非展開形態であるときの斜視図である。
図5図5の(a)部〜(d)部は、比較例のアンテナの指向性を解析した結果を示す図である。
図6図6の(a)部〜(d)部は、実施形態のアンテナの指向性を解析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る人工衛星の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0017】
図1は、人工衛星1の斜視図である。図1では、軌道上に投入された人工衛星1の運用中の様子を示している。人工衛星1は、キューブサットと呼ばれる超小型の人工衛星である。人工衛星1は、いわゆるピギーバック衛星であり、大型ロケットの打ち上げ余剰能力を利用することにより、主衛星と共に軌道に投入される。また、人工衛星1は、ペイロードとして軌道上の宇宙ステーションへ送られ、当該宇宙ステーションから軌道へ放出されることもある。
【0018】
人工衛星1は、衛星本体10と、アンテナ20と、を有する。
【0019】
衛星本体10は、所定のミッションを実現する機能部を有する。機能部として、電源、通信装置、制御装置などを含む。なお、制御装置とは、人工衛星1の電気的な動作を制御するものである。つまり、人工衛星1は、衛星本体10の姿勢を能動的に制御する装置及び機能を必須の要素としない。姿勢制御装置を備えない人工衛星1は、慣性の法則に従い、慣性系に対して運動状態を維持する。換言すると、人工衛星1の姿勢は、時間の経過と共に、常に変わり得る。
【0020】
衛星本体10は、略直方体であり、さらに具体的には略立方体としてよい。衛星本体10のサイズは、例えば、外形が10cm×10cm×10cm、10cm×10cm×20cm、10cm×10cm×30cm等である。立方体であるときの衛星本体10は、6つの暴露壁11A〜11Fを有する。これらの暴露壁11A〜11Fには、それぞれ、発電パネル12が設けられている。なお、発電パネル12は、すべての暴露壁11A〜11Fに設けられている必要はなく、必要に応じて幾つかの暴露壁に設けることとしてよい。そして、暴露壁11A〜11Fのうち、ひとつの暴露壁11Aには、アンテナ20が設けられる。
【0021】
アンテナ20は、いわゆるループアンテナである。アンテナ20は、所定の放射角と放射強度とを実現するように設計されている。具体的には、前述したように、人工衛星1の姿勢は、時間の経過と共に常に変わり得る。つまり、地上局に対するアンテナ20の向きも時間の経過と共に常に変化する。このような運用において、アンテナ20の指向性が強い場合に、地上局に対するアンテナ20の向きによっては、良好な通信状態が実現できるときがある。その一方で、地上局に対するアンテナ20の向きによっては、良好な通信状態が実現できないときもある。そこで、人工衛星1では、放射角と放射強度とのバランスを取ることにより、継続的に良好な通信状態を実現する。換言すると、アンテナ20は、人工衛星1の姿勢がどのような向きであっても、地上局との通信を維持可能な放射角と放射強度とに設定されている。
【0022】
図2及び図3に示すように、アンテナ20は、いくつかの構成要素によって構成されている。具体的には、アンテナ20は、アンテナエレメント21と、マッチング部22と、アンテナ入出力部23と、を有する。
【0023】
アンテナエレメント21は、アンテナとしての機能を発揮する部分である。アンテナエレメント21は、多層構造を有する線材によって構成されており、当該線材が後述する条件によって定められる直径となるように、円弧状に形成されている。
【0024】
アンテナエレメント21は、主線部21mと、導電被覆部21nと、絶縁被覆部21pと、を有する。主線部21mは、例えば、バネ鋼を採用してよい。導電被覆部21nは、例えば、銅メッキ層である。絶縁被覆部21pは、電気的な絶縁性を有する樹脂材料によって構成されており、例えば、テフロン(登録商標)製のチューブを採用してよい。
【0025】
アンテナエレメント21の主要寸法は、送受信する電波の周波数(λ)に基づいて設定されている。例えば、電波の周波数は、437MHzである。このような電波の周波数(λ)に対して、一般的なループアンテナでは、アンテナエレメント21の一周の長さ(円周長:L)は、1λに設定される。例えば、周波数が437MHzであるとすると、円周長(L)は、約68.6cmである。この状態は、いわゆる共振状態である。一方、本実施形態の人工衛星1では、アンテナエレメント21の円周長(L)は、電波の波長より短くなるように設定されている。つまり、アンテナエレメント21の円周長(L)は、0.6λ以上0.8λ以下に設定される。一例として、アンテナエレメント21の円周長(L)は、0.7λに設定してよい。この状態は、アンテナエレメント21の円周長(L)は、1λである共振状態に対して、非共振状態である。
【0026】
アンテナエレメント21は、エレメント本体21aと、エレメント端部21bと、を含む。エレメント本体21aは、暴露壁11Aから起立して、円弧状を呈する部分である。エレメント端部21bは、暴露壁11Aの貫通穴を介して暴露壁11Aの裏面11A2に延びる。エレメント端部21bは、ボルト41及び暴露壁11Aに挟持されることにより、暴露壁11Aに対して固定されている。つまり、エレメント端部21bは、ボルト41及び暴露壁11Aに挟持された第1の部分と、当該第1の部分から略90度(略直角)に折れ曲がる第2の部分と、第2の部分から暴露壁11Aの厚み方向に延びて暴露壁11Aの貫通穴を通りエレメント本体21aに連続する第3の部分と、を有する。
【0027】
マッチング部22は、アンテナエレメント21と外部機器(例えば、通信制御装置)とのインピーダンスマッチングを図る。マッチング部22は、暴露壁11Aに沿って延びる一対の導線部22aと、一方の導線部22aの端部を他方の導線部22aの端部に接続するU字状の接続部22bと、を含む。アンテナエレメント21と外部機器とのマッチングは、導線部22aの長さに応じて設定されている。例えば、マッチング部22の長さは、1λからアンテナエレメント21の円周長0.7λを引いた0.3λより少し短い長さに設定することとしてよい。また、マッチング部22の長さの短い程度は、太陽光パネル等、周りの部材の影響を考慮して設定してよい。導線部22aは、暴露壁11Aの裏側(つまり、衛星本体10の内部側)に配置されている。導線部22aは、例えば、アンテナエレメント21と同様に、多層構造を有する線材によって構成されてよい。マッチング部22のマッチング端部22tは、導線部22aの一方の端部である。マッチング端部22tは、アンテナエレメント21側に配置されている。マッチング端部22tは、暴露壁11Aの貫通穴を介して暴露壁11Aの裏面11A2から表面11A1(主面)に引き出されている。そして、マッチング端部22tは、ナット42によって暴露壁11Aの表面11A1側に固定されている。このナット42及びボルト41は、上述したように、暴露壁11Aの裏面11A2側においてエレメント端部21bを固定している。従って、マッチング端部22tは、ボルト41及びナット42を介して、エレメント端部21bのそれぞれに電気的に接続されている。
【0028】
マッチング部22の他方の端部は、アンテナエレメント21が配置された位置とは逆側に配置される。マッチング部22の他方の端部は、接続部22bである。具体的には、接続部22bは、暴露壁11Aの貫通穴を介して暴露壁11Aの裏面11A2から表面11A1に引き出されている。そして、引き出された接続部22bは、それぞれU字状の連結部によって互いに電気的に接続されている。
【0029】
アンテナ入出力部23は、マッチング部22の他方の端部側に設けられる。つまり、本実施形態では、アンテナ入出力部23は、マッチング部22の一部である。アンテナ入出力部23は、マッチング部22を介して接続されたアンテナエレメント21へ信号を提供すると共にアンテナエレメント21から信号を受け取る。アンテナ入出力部23には、例えば、同軸ケーブル43が接続されている。従って、信号は、同軸ケーブル43を介して衛星本体10に収容された通信装置に送受信される。
【0030】
アンテナ20は、2種類の形態を取り得る。具体的には、アンテナ20は、非展開形態と展開形態と、を取り得る。これら2つの形態は、非展開形態から展開形態へ不可逆に切り替えられる。
【0031】
<非展開形態(第1形態)>
図4は、非展開形態である人工衛星1を示す。非展開形態は、例えば、人工衛星1がロケットに搭載される際に取り得る形態である。非展開形態とは、アンテナ20が展開されていない形態であるともいえる。従って、人工衛星1が非展開形態であるとき、人工衛星1の外形寸法は、概ね衛星本体10の外形寸法と同じであるとみなせる。
【0032】
非展開形態であるとき、アンテナエレメント21は、暴露壁11Aに沿って曲げられている。より詳細には、アンテナエレメント21は、二重巻き又は三重巻きとされて、展開時の直径(D)よりも小さい直径(D1)となっている。さらに、アンテナエレメント21は、貫通穴から表面11A1側に突出している第3の部分において、略直角に曲げられている。つまり、アンテナエレメント21は、延在方向における曲げ変形と、延在方向を中心としたねじり変形と、を生じている。これらの曲げ変形及びねじり変形は、主線部21mを構成するバネ鋼の降伏点を示す応力及び歪みよりも小さくなる範囲とされている。曲げ変形及びねじり変形をこのような範囲に収めることにより、曲げ変形及びねじり変形はいわゆる弾性域にとどまる。その結果、変形を維持する力を解放すると、アンテナエレメント21は、元の形状に戻ることができる。そのため、アンテナエレメント21の主線部21mの材料としては、弾性域が広い材料を選択するとよい。
【0033】
非展開形態であるときのアンテナエレメント21は、弾性変形としての曲げ変形及びねじり変形を生じている。従って、この変形状態を維持するためには、曲げ変形及びねじり変形によって生じる復元力に対抗する力を与える必要がある。そこで、人工衛星1は、変形状態を維持するためのアンテナ保持部30を有する。アンテナ保持部30は、曲げ変形により生じる復元力に対抗する。この復元力は、例えば、暴露壁11Aの表面11A1に沿っていると言える。また、アンテナ保持部30は、ねじり変形により生じる復元力に対抗する。この復元力は、例えば、暴露壁11Aの表面11A1の法線方向に沿っていると言える。
【0034】
例えば、アンテナ保持部30は、3個のピン31A、31B、31Cと、2本の保持糸32A、32Bと、糸切断部33と、を有する。ピン31A、31B、31Cは、暴露壁11Aの表面11A1から起立する。ピン31A、31B、31Cは、平面視して正三角形又は二等辺三角形の頂点の位置に配置される。例えば、ピン31Cは、エレメント端部21bの間に配置される。ピン31A、31Bは、発電パネル12の間において、互いに離間して配置される。保持糸32Aは、ピン31A、31Cの間に張られる。保持糸32Bは、ピン31B、31Cの間に張られる。保持糸32A、32Bは、上記の2つの復元力に対抗する力を生じる。なお、曲げ変形したアンテナエレメント21がピン31A、31Bに接することとしてもよい。この場合には、ピン31A、31Bも、暴露壁11Aの表面11A1に沿った復元力に対抗する力を生じるものとして扱うことができる。
【0035】
そして、糸切断部33は、それぞれ保持糸32A、32Bを切断する。糸切断部33が保持糸32A、32Bを切断するタイミングは、所望の定義によって定めてよい。例えば、衛星本体10に搭載された制御装置が動作を開始してからの時間をカウントし、所定時間経過後に切断動作を行うこととしてよい。この所定時間とは、ロケットに搭載された人工衛星1に電源が投入されてから、ロケットから軌道に投入されるまでの時間としてよい。また、その他の例として、人工衛星1がロケットから分離されるときに生じる変化(例えば、衝撃、機械的スイッチのON/OFF)などに基づいて、切断動作を行うこととしてよい。切断動作の結果、復元力に対抗する力が解放されるので、アンテナエレメント21は、復元力によって、展開形態へ移行する。
【0036】
なお、上記の構成は、アンテナ保持部30の一例である。アンテナ保持部30として、これらの抵抗力を生じさせると共に、所定のタイミングで抵抗力を解放できる機構であれば、上記の例に限定されない。例えば、保持糸32A、32Bを切断する構成は種々の構成を採用し得る。例えば、保持糸32A、32Bを切断する構成は、カッター等で機械的に切断する構成であってもよいし、ニクロム線をタイマー制御で熱して保持糸32A、32Bを切断する構成であってもよい。
【0037】
さらに、アンテナ保持部において、ピン31A、31Bに代えてクリップ等の弾性部材によって非展開形態のアンテナエレメント21を保持する構成を採用してもよい。具体的には、クリップ等の弾性部材は、衛星本体10側に向かう荷重によって弾性変形させられている。この変形は、保持糸32A、32Bによって維持される。そして、保持糸32A、32Bを切断すると、クリップ等の弾性部材の変形が解放される。保持糸32A、32Bは、軌道に到達する予定時刻の経過をタイマーでカウントし、予定時刻に達したときに、切断を行うこととしてよい。切断は、ニクロム線の加熱を利用してよい。その結果、アンテナエレメント21の変形状態も解放されることになる。
【0038】
なお、この非展開形態である場合にも、アンテナエレメント21は、アンテナとしての機能を奏することが可能である。この場合には、アンテナエレメント21を展開した状態であるときの性能と比べると、性能は低下するものの、アンテナとしての機能は維持できる。その結果、仮に、何らかの理由でアンテナエレメント21の展開が失敗した場合であっても、アンテナエレメント21は、アンテナとしての機能を失うことがない。従って、アンテナエレメント21の展開の成否にかかわらず、アンテナとしての機能を奏することができる。その結果、アンテナエレメント21の展開が失敗した場合でも、通信機能が喪失せず、限定された範囲内で運用を継続することができる。
【0039】
<展開形態(第2形態)>
図1は、展開形態である人工衛星1を示す。非展開形態から展開形態へは、アンテナエレメント21の復元力によりなされる。つまり、アンテナエレメント21そのものが、展開形態の形状を復元する機能を有する。具体的には、アンテナエレメント21を構成する主線部21mが復元力を発揮する。アンテナ20は、アンテナエレメント21を展開するために、付加的なアクチュエータを必要としない。このようにアンテナエレメント21を展開する機構を単純化する、具体的には、アンテナ20の構成部品の数を少なくすることにより、アンテナエレメント21を展開する際の成功率を高めることができる。
【0040】
<作用効果>
人工衛星1は、衛星本体10と、衛星本体10の暴露壁11Aに配置されたアンテナ20と、を備える。アンテナ20は、弧状に形成されると共に暴露壁11Aの表面11A1から起立するループアンテナである。
【0041】
この人工衛星1は、ループアンテナを備えている。ループアンテナは、弧状に形成された部分の長さに応じて、アンテナ20の指向性を所望の態様に設定することができる。つまり、放射角を広げることが可能である。そうすると、アンテナ20の向きが一定でない場合であっても、地上局との間で良好な通信状態を維持することができる。
【0042】
アンテナ20は、弾性変形が可能である。アンテナ20は、暴露壁11Aに沿う非展開形態から、暴露壁11Aから起立する展開形態へ、アンテナ20が有する復元力によって切り替わる。この構成によれば、非展開形態とすることにより人工衛星1の外形寸法を小さくすることができる。また、展開形態とすることにより、良好な通信状態を確保することができる。
【0043】
人工衛星1は、非展開形態を維持するアンテナ保持部30をさらに備えている。この構成によれば、外形寸法が小さくされた状態を好適に維持することができる。従って、ロケットなどに搭載される際に、人工衛星1の外形寸法を所望の寸法に収めることができる。
【0044】
アンテナ20は、アンテナ機能を奏するアンテナエレメント21を含む。アンテナエレメント21の長さは、送信及び/又は受信する電波の波長よりも短い。この構成によれば、アンテナ20の放射角を広げることができる。
【0045】
アンテナ20は、アンテナエレメント21に対する電力の授受を行うアンテナ入出力部23と、アンテナエレメント21とアンテナ入出力部23との間に接続されるマッチング部22と、さらに有する。この構成によれば、アンテナ20とアンテナに接続される機器との間のマッチングを調整することが可能になる。従って、地上局との間でさらに良好な通信状態を維持することができる。
【0046】
上記の人工衛星において、アンテナエレメント21の長さ(L)は、電波の波長(λ)に対して、0.6λより大きく0.8λより小さい。さらには、一例として、アンテナエレメントの長さ(L)は、電波の波長(λ)に対して、0.7λである。この構成によれば、アンテナの放射角と放射強度とのバランスをさらに良好に設定することができる。
【0047】
例えば、図5の(a)部〜(d)部は、アンテナエレメントを1λとしたときのアンテナ120の指向性を示す解析結果の例である。図5の(a)部は、人工衛星100と放射強度S100とを斜め方向から見た図である。図5の(b)部は、人工衛星100と放射強度S100とを平面視した図である。図5の(c)部は、人工衛星100と放射強度S100とを正面視した図である。図5の(d)部は、人工衛星100と放射強度S100とを側面視した図である。図5の(a)部〜(d)部に示すように、アンテナエレメントを1λとした場合には、放射強度S100の分布に偏り(符号SP参照)が生じていることがわかる。つまり、アンテナエレメントを1λとした場合には、指向特性がドーナッツ状になってしまい、利得が出ない方向が生じてしまう。
【0048】
前述のとおり、姿勢制御のためのアクチュエータを備えない人工衛星は、絶えず回転している。従って、地上との通信には全方位に対して、電波の受信ができなくなる谷間となってしまうような指向性がないことが重要である。
【0049】
一方、図6の(a)部〜(d)部は、アンテナエレメント21を0.7λとしたときの指向性を示す解析結果の例である。図6の(a)部〜(d)部に示すように、放射強度Sが特に強い方向及び特に弱い方向は生じていない。放射強度Sは、いずれの方向においても概ね一様であることがわかった。つまり、本実施形態の人工衛星1のアンテナ20は、全天全周利得を得ることができることがわかった。つまり、本実施形態の人工衛星1は、姿勢制御ができない小型衛星に必要な、3次元で全ての方向に対しての利得(全天全周利得)が低下しない指向特性を確保できていることがわかった。このような図6に示される全天全周利得は、アンテナ20の特性として、非共振アンテナを採用したことによる。
【0050】
さらに、人工衛星1は、以下のような更なる作用効果を奏する。
【0051】
人工衛星1のアンテナ20は、ループアンテナである。従って、人工衛星1からアンテナ20の他に、構成物(例えば、テザー)が延びる場合に、アンテナ20が弧状であるために、当該構成物が引っ掛かりにくい。従って、人工衛星1のミッションの成功率を高めることができる。
【0052】
ループアンテナであるアンテナ20は、放射角と放射強度とのバランスを調整可能な点が有利である。通信可能状態を連続的に維持する必要性が高い場合には、上記のように、放射角を放射強度より優先させる設定とすることができる。その逆に、通信可能状態を連続的に維持する必要性が低い場合には、放射角よりも放射強度を優先させる設定とすることができる。また、人工衛星がスラスタやリアクションホイールといった姿勢制御装置を搭載した場合には、能動的に姿勢を制御できる。つまり、地上局に対するアンテナ20の向きを所望の状態とすることが可能である。このような場合にも、放射角よりも放射強度を優先させる設定とすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…人工衛星、11A〜11F…暴露壁、11A1…表面、11A2…裏面、12…発電パネル、20…アンテナ、21…アンテナエレメント、21b…エレメント端部、21m…主線部、21n…導電被覆部、21p…絶縁被覆部、22…マッチング部、22a…導線部、22b…接続部、22t…マッチング端部、23…アンテナ入出力部、30…アンテナ保持部、31A,31B,31C…ピン、32A,32B…保持糸、33…糸切断部、41…ボルト、42…ナット、43…同軸ケーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6