(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654355
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】パーム油製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 7/00 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
C11B7/00
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-538463(P2010-538463)
(86)(22)【出願日】2008年12月18日
(65)【公表番号】特表2011-506710(P2011-506710A)
(43)【公表日】2011年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2008010837
(87)【国際公開番号】WO2009080288
(87)【国際公開日】20090702
【審査請求日】2011年10月5日
(31)【優先権主張番号】07255005.6
(32)【優先日】2007年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510169387
【氏名又は名称】ロデルス クロクラーン ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】ウェインガールデン,レーンデルト
(72)【発明者】
【氏名】ヒームストラ,ニンケ マルフレート
【審査官】
桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−030295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)溶媒の不存在下でパーム油又はその留分を部分的に結晶化する工程;(ii)部分的に結晶化されたパーム油又は留分を溶媒と混合する工程;(iii)得られた混合物をより結晶化度を高めて結晶化する工程;及び(iv)分離機中で、得られた固体を液体から分離する工程を含むパーム油製品の製造方法であって、工程(ii)の前に液体から固体を分離することなく、工程(i)で形成される部分的に結晶化されたパーム油又はその留分が、工程(ii)において溶媒と直接混合され、かつ溶媒がアセトン及び水を含み、前記水は溶媒の少なくとも0.3重量%の量で存在する、方法。
【請求項2】
工程(i)で形成される部分的に結晶化されたパーム油又はその留分が、5〜25%の結晶性固体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)において溶媒と混合する直前の部分的に結晶化されたパーム油又はその留分の温度が、10〜25℃である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)において、部分的に結晶化されたパーム油又はその留分と混合する直前の溶媒の温度が5〜17℃であり、前記溶媒の温度は、部分的に結晶化されたパーム油又はその留分の温度より低い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
混合直後の溶媒及び部分的に結晶化されたパーム油又はその留分の混合物の温度が、8〜20℃である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)及び(iii)が別々の管内で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)の混合がライン内で行なわれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(iii)が晶析装置内で行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)が、2つの分離タンク内で行なわれる2段階プロセスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
分離後に固体として得られるパーム油製品が、次のトリグリセリド含有物:
2.5〜4.0重量%のPPP;
65重量%を超えるPOP;及び
3重量%未満のPOO
を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
パーム油又はその留分がパーム油オレインである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
パーム油オレインが乾燥分別により得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
パーム油オレインが35〜65のヨウ素価を有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)における溶媒:パーム油又はその留分の重量比が、1.5:1〜1:1.5の範囲である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
パーム油又はその留分:溶媒の比が、0.8:1〜1.1:1である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が回収されて再利用される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
シア油の分別と平行して行なわれる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
パーム油製品の製造方法及び前記方法により得ることができる
パーム油製品に関する。
【背景技術】
【0002】
パーム油は、食品を含む複数の異なる用途で用いるために大規模で製造される。典型的には、
パーム油は、
パーム果実(Elaeis guineensis)の果肉から得られる。普通は、
パームの木は、3,000個程度の小果実を含む約1個の果房を毎月生産する。普通は、各
パームの木は、経済的に最高25年間果物を生産し続ける。これは、
パーム油の良好な供給を確保する。
【0003】
通常、
パーム油は、特定の性質を有する製品を得るために加工される。例えば、より低い融点の成分(通常はパームオレインという)からより高い融点の成分(通常はパームステアリンという)を分離するために、
パーム油は分画され得る。留分の組成は、分別が行われる条件に応じて決まる。
【0004】
一般に、
パーム油の分別は、3つの方法(すなわち、乾燥分別、溶媒分別及び洗剤の存在下での分別)の1つにより行われる。乾燥分別では、結晶としての固体の形成を制御するための温度を用いて、溶媒の不存在下で、ステアリンが油から結晶化される。溶媒分別は、オレインからのステアリンの分離を達成するために、溶媒(例えば、アセトンなど)の追加を伴う。
【0005】
脂肪及び油の分別は、例えば、ティムズ(Timms)のhttp://www.soci.org/SCI/groups/oil/2006/reports/pdf/Timms LP.pdfにより、再検討された。
【0006】
ドイツ特許第1455581号明細書には脂肪混合物が開示されている。混合物に使用される脂肪の1つは、アセトンを用いる脂肪の湿式分別により得られる
パーム系油である。
【0007】
ドイツ特許第1499333号明細書には、水又はポリヒドロキシ化合物及び極性有機溶媒を含む溶媒の混合物を用いる植物、動物及び魚油のオレイン−ステアリン分離が記述されている。
【0008】
ドイツ特許出願公開第2023636号明細書は、溶媒分別と、その次の得られた流体留分のエステル化と、そしてさらなる分別による天然脂肪物質からの4つの食用留分の製造方法に関する。
【0009】
米国特許出願公開第2007/0160739号明細書には、第一留分を得る工程、並びにそれを液体脂肪又は油と混合して、さらなる分別を行なう工程を伴う脂肪及び油の乾燥分別法が記述されている。
【0010】
Wong Soon, Speciality Fats Versus Cocoa Butter, 1991年, 232頁には、4:1の溶媒:油の比を利用する
パーム油の分別のための一般化されたスキームが示されている。
【0011】
ドイツ特許出願公開第2747765号明細書には、高含有量の1,3−ジパルミトイル−2−オレオイルグリセロールを有する脂肪、その製造及びその使用のためのプロセスが開示されている。
【0012】
欧州特許出願公開第1120455号明細書は、分画された
パーム油及びその製造のためのプロセスに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
改良された分別プロセスが未だに必要とされている。具体的には、湿式分別においてほとんど有機溶媒を使わないこと、並びに、水の量をあまり気にかけなくてよいので、十分に乾燥される必要が無い(それによって、全体的な費用を減少させる)が、さらに比較的高い収率の良好な製品を製造する溶媒を使用することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、(i)溶媒の不存在下で
パーム油又はその留分を部分結晶化する工程;(ii)部分的に結晶化された
パーム油又は留分を溶媒と混合する工程;(iii)得られた混合物をより結晶化度を高めて結晶化する工程;及び(iv)分離機中で、得られた固体を液体から分離する工程を含む、
パーム油製品の製造方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、
パーム油製品、好ましくは、本発明の方法により得られるか、又は得ることができる
パーム油中間留分を提供する。
【発明の効果】
【0016】
比較的少ない量の溶媒、及び水分含量が比較的低い濃度まで慎重に制御される必要の無い溶媒を用いて、比較的高いPOP含有量及び比較的低いPPP含有量に関する良好な性質を有する、
パーム油留分(例えば
パーム油中間留分など)である
パーム油製品を製造することが可能であることが分かっている。これは、本プロセスが、シア油などの他の非
パーム脂肪及び油(すなわち、
パーム油に由来しない脂肪及び油)の分別に適した溶媒及び加工ラインを使用できることを意味する。それ故に、本プロセスは、他の非
パーム脂肪及び油の加工と平行して行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に使用してよいプロセスを示す図である。
【
図2】本発明のプロセスのさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、不完全な(又は部分的な)結晶化を伴う第一の乾燥分別工程を有する、乾式及び湿式分別の組み合わせを使用する。
【0019】
本発明のプロセスのための出発材料は、
パーム油又はその留分である。好ましくは、出発材料は
パーム油オレインであり;より好ましくは、この
パーム油オレインは乾燥分別により製造される。好ましくは、
パーム油オレインは、35〜65、より好ましくは50〜60のヨウ素価(IV)を有する。
【0020】
本発明のプロセスは、
パーム油又はその留分(例えば、
パーム油オレインなど)を部分的に結晶化する第一の工程(i)を含む。本明細書では、好ましくは、用語「部分結晶化」及び「部分的に結晶化する」及び関連用語は、本プロセスの関連する段階(すなわち、工程(i)の直後)では、本プロセスの終了時(例えば、工程(iv)における分離後)に得られる固体の全てが結晶化されているわけではない、すなわち、得られる結晶化された固体の重量が、本プロセスの終了時に得られるもの未満であることを意味する。湿式分別前の
パーム油オレインのこの部分結晶化は、本プロセスが、余り乾燥される必要の無い低量の溶媒を用いて行なわれるようにすることが分かっている。
【0021】
当然のことながら、用語「結晶化された固体」及び本明細書で使用される関連用語とは、一般的に得られる固体をいい、固体が完全に結晶性であることを意味しない。例えば、固体は、結晶性である幾つかの材料及び結晶性でない幾つかの材料を含んでよい。典型的には、固体は、化合物の混合物を含むであろう。
【0022】
好ましくは、工程(i)で形成される、部分的に結晶化された
パーム油又は
パーム油の留分は、5〜25%の結晶性固体、より好ましくは10〜24%の結晶性固体、例えば、15〜22%、又は17〜21%の結晶性固体を含む。当然のことながら、本プロセスのこの段階で得られる結晶性固体の割合は、例えば、脂肪の固形分(SFC)を分析するための標準的なNMR技術(例えば、ISO8292による)により決定できる。一方で、工程(iv)で分離される固体の量は、本プロセスのための出発材料として使用される
パーム油又はその留分の重量を基準として、一般に22重量%を超え、かつ35重量%以下、より好ましくは23〜30重量%、例えば、23.5〜29重量%又は24〜28重量%である。
【0023】
工程(i)は、単一工程又は2つ以上の工程で行なってよい。好ましくは、工程(i)は、2つの分離タンク内で行なわれる2段階プロセス(それぞれの工程は乾燥分別の工程を伴う)である。好ましくは、工程(i)は、12〜20℃の範囲の温度で行われる。工程(i)が2段階プロセスであるならば、第二の乾燥分別工程は、好ましくは、第一の乾燥分別工程よりも低い温度で行われる。例えば、好ましくは、第一の工程は、15〜20℃の範囲の温度で行われ、第二の工程は、13〜17℃の温度で行われる。
【0024】
所望により、より低い融点の
パーム留分(例えば、60〜70のヨウ素価(IV)を有する
パーム油オレインなど、例えば、POfIV65)が、好ましくは出発材料の
パーム油又はその留分の10重量%以内の量で、工程(i)の前又は工程(i)中に、本プロセスの出発材料として使用される
パーム油又はその留分と混合され得る。
【0025】
工程(i)で形成される部分的に結晶化された
パーム油又はその留分は、液体から固体を除去するために分離されることはないが、工程(ii)において溶媒と混合される。したがって、好ましくは、工程(i)で形成される固体及び液体の混合物は、工程(ii)の前に液体から固体を分離することなく、工程(ii)において溶媒と直接混合される。工程(i)で形成される部分的に結晶化された
パーム油又はその留分は、固体及び液体の混合物であり、典型的にはスラリーの形態を取る。
【0026】
好ましくは、工程(ii)において溶媒と混合する直前の部分的に結晶化された
パーム油又はその留分の温度は、10〜25℃、より好ましくは12〜22℃、さらに好ましくは15〜20℃、例えば約17〜18℃である。工程(ii)において、部分的に結晶化された
パーム油又はその留分と混合する直前の溶媒の温度は、好ましくは、部分的に結晶化された
パーム油又はその留分の温度よりも低く、好ましくは18℃未満、より好ましくは5℃〜17℃、さらに好ましくは10℃〜15℃である。好ましくは、工程(ii)において溶媒と混合する直前の部分的に結晶化された
パーム油又はその留分の温度は、10〜25℃、より好ましくは12〜22℃、より好ましくは15〜20℃、例えば約17〜18℃であり、そして工程(ii)において、部分的に結晶化された
パーム油又はその留分と混合する直前の溶媒の温度は、18℃未満、より好ましくは5℃〜17℃、さらに好ましくは10℃〜15℃であり、任意のさらに好ましい性質は、工程(ii)において、部分的に結晶化された
パーム油又はその留分と混合する直前の溶媒の温度が、好ましくは、部分的に結晶化された
パーム油又はその留分の温度より低いことである。
【0027】
工程(ii)における混合の直後には、混合物の温度は、好ましくは8〜20℃、より好ましくは9〜18℃、さらに好ましくは10〜16℃である。
【0028】
好ましくは、工程(ii)における溶媒:
パーム油又はその留分の重量比は、1.5:1〜1:1.5、より好ましくは1.4:1〜1:1.4、さらに好ましくは1.3:1〜1:1.3、例えば1.2:1〜1:1.2の範囲である。例えば、溶媒:
パーム油又はその留分の重量比は、通常は0.8:1〜1.5:1、例えば0.8:1〜1.1:1、又は約1:1である。
【0029】
好ましくは、工程(ii)における部分的に結晶化された
パーム油又はその留分と溶媒の混合は、ライン内(in-line)で行なわれる。例えば、部分的に結晶化された
パーム油又はその留分は、工程(i)が行われるタンクから送り出され、それが次に通過する導管(例えば、パイプ)内で溶媒と混合され得る。
【0030】
好ましくは、溶媒はアセトン及び水を含み、その水は、溶媒の少なくとも0.3重量%、例えば、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%又は少なくとも0.6重量%の量で存在する。通常は、溶媒中の水の量は、2%未満、例えば1.5%未満、1.2%未満又は1%未満であろう。それ故に、典型的には、溶媒は、0.3%〜1.5重量%の水、より好ましくは0.4%〜1.2重量%の水、例えば0.6%〜1.0重量%の水を含む。好ましくは、溶媒は、少なくとも90重量%のアセトン、例えば、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99重量%のアセトンを含む。好ましい溶媒は、0.6%〜1.2重量%の水及び少なくとも98.5重量%のアセトンを含む。
【0031】
溶媒と混合した後、得られた混合物は、工程(iii)において、工程(i)より結晶化度を高めて結晶化される。好ましくは、工程(iii)の結晶化は、冷却によって行われる。工程(iii)中に、好ましくは、混合物は、少なくとも2℃まで冷却される。例えば、混合物は、2℃〜10℃まで冷却され得る。晶析装置の通過後、好ましくは、混合物は5℃〜10℃の温度を有する。典型的には、結晶化は、工程(i)より低い温度、例えば、工程(i)より少なくとも3℃低いか、又は少なくとも5℃低い温度で行われる。好ましくは、工程(iii)は、晶析装置内で、より好ましくは、混合物の連続的通過を可能にするかきとり面形晶析装置内で行われ;これは、本発明のプロセスが工程(iii)において継続的に行われることを可能にする。かきとり面形晶析装置は、晶析装置の壁から冷却された固体を除去するものであって、かつ技術分野でよく知られているローターを含む。
【0032】
典型的には、工程(ii)及び(iii)は、別々の管内で行われる。例えば、好ましくは、工程(ii)の混合は、ライン内の導管(例えば、パイプなど)中で行なわれるが、好ましくは、工程(iii)は、個別の晶析装置内で行われる。
【0033】
混合物が、工程(iii)において工程(i)より結晶化度を高めて(すなわち、混合物中の結晶性固体の量が、出発材料として使用される
パーム油又はその留分の重量を基準として、工程(i)より工程(iii)において多くなるように)結晶化された後、得られた固体は、工程(iv)において分離機中で液体から分離される。好ましくは、混合物は、分離機に直接送達される。好ましい分離機はベルトフィルターである。液体がフィルターを通過する間は、固体(時には、ステアリン留分とも呼ばれる)は、フィルターのベルト上に保持される。液体からの固体の分離を達成するための適切な装置(例えば、ベルトフィルターなど)が、当技術分野でよく知られている。
【0034】
本発明のプロセスは、工程(i)〜(iv)の前、間又は後に、1つ以上の工程を含んでよい。例えば、工程(iv)で得られる製品は、溶媒の除去によってさらに精製されることができる。
【0035】
好ましくは、溶媒は、固体が分離された後に残る液体から回収され、本プロセスに戻されて再利用される。好ましくは、溶媒は、分離後の固体から回収されて、再利用される。より好ましくは、溶媒は、前記の液体及び固体から回収されて、再利用される。
【0036】
本発明のプロセスは、回分式で行われるか、又は連続的に操作されることができる。好ましくは、本プロセスは連続的である。好ましくは、出発材料の
パーム油又はその留分の投入は、0.5〜100トン/時間(t/h)である。
【0037】
好ましくは、分離後の固体として得られる
パーム油製品(又は留分)は、
パーム油中間留分である。好ましくは、
パーム油製品は、次のトリグリセリド含有物:
2.5〜4.0重量%のPPP;
65重量%を超えるPOP;及び
3重量%未満のPOO
(P=パルミチン酸及びO=オレイン酸)
を有する。
【0038】
パーム油製品は、微量の溶媒(アセトン)及び水を含んでよく、洗剤を実質的に含まないか、又は洗剤を含まない。
【0039】
また、溶媒の除去後に得られる液体(オレイン)留分は、有用な生成物である。工程(iv)における分離後、かつ溶媒の除去後に液体として本発明のプロセスで製造される好ましい
パーム油オレインは、60〜70のヨウ素価(IV)、例えば約65のヨウ素価(IV)を有する。
【0040】
本発明のプロセスは、シア油の分別と平行して行なわれることができる。本発明は、2つの分別プロセスに同一溶媒を用いる工程を行なわせる。これは有意な利点である。
【0041】
本プロセスにおいて製造される
パーム油製品は、各種の用途、例えば食料品、例えばエステル交換により他の脂肪及び油を製造するプロセスにおいて使用されることができる。
【0042】
本明細書における明確に先行開示された文献の列挙及び議論は、必ずしも前記文献が本技術の状態の一部であるか、又は一般知識であるという確認を取るものではない。
【実施例】
【0043】
次の非限定的な実施例は、本発明を示しているが、その範囲に何らかの制限を加えるものではない。本実施例及び本明細書の全体に亘って、全ての百分率(%)、部及び比は、特に明記しない限り、重量を基準とする。
【0044】
実施例
アセトン加熱器1(必要に応じて、その温度は上下に調整される)にアセトンを通過させる。POfIV55(55のヨウ素価を有するパームオレイン)を管2に沿って送達し、3においてライン内のより冷たいアセトンと混合する。
【0045】
得られたアセトン/POfIV55混合物をかきとり面形晶析装置4(その温度は下げられている)に直接送達する。冷却された混合物を管5に沿ってベルトフィルター6(固体(iPOm)が液体(POfIV65+溶媒)から分離される)に送達する。
【0046】
図2に示された本プロセスは、工程(i)における2つの乾燥分別工程を含み、アセトン溶媒の再利用を示す。
【0047】
図2では、固体の部分結晶化を達成するために、POfIV55を第一及び第二の分離タンク10、11内の2つの逐次乾燥分別工程に供する。これらの2つの工程後、固体及び液体の得られた混合物(スラリーの形態である)は、15℃の温度を有する。このスラリーを第二のタンクから送り出し、混合点12で0.6〜1.2重量%の水を含むアセトンとライン内で混合する。得られた混合物は、12℃の温度を有する。次に、この混合物をかきとり面形晶析装置13(結晶化が、より結晶化度を高めて行なわれ、かつ完了される)に通す。得られた混合物をベルトフィルター14(固体(iPOm)が、液体(POfIV65)から分離される)に通す。固体及び液体の両方はアセトンを含むので、これを蒸留工程15及び16での蒸留により分離して、本プロセスに戻して再利用する。
【0048】
実施例1
乾燥分別によりPOfIV55を得た。POfIV55を乾燥分別晶析装置内で部分的に結晶化したところ、混合物は(結晶として)18〜19重量%の固体を含んでいた。乾燥分別晶析装置内で10重量%以下のPOfIV65をPOfIV55と混合した。
【0049】
晶析装置から得られた混合物をライン内で送達し、冷アセトンと混ぜて、12℃の得られた混合物の温度を得た。アセトンは0.4%の水を含んでおり、アセトン(その水を含む):混合物の重量比は1:1であった。POfIV55/アセトン混合物をかきとり面形晶析装置(それは9℃に冷却されていた)に送達した。晶析装置の通過にかかる時間は、13分であった。得られた冷却混合物をベルトフィルターに送達した。
【0050】
POfIV55の投入は、試験全体を通して1.6t/hであった。
【0051】
結果を表1に示す。
【0052】
この試験の結果は良好である:アセトン中の水分は、標準的なプロセスよりも品質に対する影響がはるかに少ない。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例2
かきとり面形晶析装置内で混合物を6℃に冷却するという変更を加えて、実施例1を繰り返した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例3
使用された溶媒が0.74重量%の水分を含むアセトンであるという変更を加えて、実施例2を繰り返した。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例4
シアステアリンと混ぜられた実施例2の
パーム油中間留分でココアバター代用脂(CBE)混合物を形成した。両方の混合物(60/40並びに55/45の
パーム油中間留分/シアステアリン)は良好な結果を示した。