(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項3において、上記第1および第2の嵌合面のそれぞれは、対応する環状ストッパがルーズに嵌合されるルーズフィット部と、対応するストッパがタイトに嵌合されるタイトフィット部と、を有し、
各タイトフィット部が対応するルーズフィット部よりも、対応するストッパの、対応する嵌合面への嵌合ストロークの奥側に配置されている車両用操舵装置。
請求項8において、上記本嵌合工程において、転舵軸の駆動を停止するタイミングは、転舵軸の軸力を検出する荷重センサの出力に基づいて決定されるように構成されている車両用操舵装置の製造方法。
請求項8から10の何れか1項において、上記本嵌合工程において、転舵軸の駆動を停止するタイミングは、電動モータのロータの回転角を検出する回転角センサの出力に基づいて決定されるように構成されている車両用操舵装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えばフォークリフト等の荷役車両において、後輪を転舵輪とする場合、最大転舵角が例えば80°程度と非常に大きいため、特許文献1,2,3では、ハウジング外において、転舵軸の移動量の規制する規制機構をレイアウトすることは非常に困難である。
また、特許文献4,5のように、ハウジング内に、規制機構をレイアウトする場合、ハウジングが大型化しないようにする必要がある。
【0007】
また、ハウジング自体にストッパを設けるとすると、例えば最大転舵角で転舵された状態にある転舵輪が縁石等と衝突する場合にも、耐え得るように、ハウジングとして十分な強度を確保する必要がある。
一方、仮に、筒状のハウジングとは別体に設けられたストッパをハウジングの奥に装着するとすると、組立の作業性が悪くなることが予想される。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ハウジング内で転舵軸の移動量を規制することができ、しかも小型で強度に優れた車両用操舵装置を提供することである。また、本発明の目的は、組立性に優れた車両用操舵装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、電動モータ(21,22)の回転動力をボールねじ機構(23)を介して転舵軸(6)の軸方向(X1)の移動に変換する、ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置(1)において、転舵軸の中間部に設けられたねじ軸(32)と、ボール(34)を介して上記ねじ軸と螺合し、上記電動モータのロータ(26)と同伴回転可能なボールナット(33)と、上記電動モータおよび上記ボールナットを収容し、転舵軸が挿通された筒状のハウジング(5)と、上記ハウジングの第1および第2の端部(51,52)にそれぞれ配置された第1および第2のストッパ(47,48;470,480;147,148)と、を備え、転舵軸は、ねじ軸の第1および第2の端部に、それぞれ、第1および第2の当接部(45,46)を有し、各当接部の外周と上記ロータの内周との間に径方向隙間(S1,S2)が設けられて、各当接部がロータ内を挿通可能とされ、転舵軸の軸方向移動に伴って、上記ロータ内を挿通した移動方向側の当接部が、対応するストッパに当接することにより、転舵軸の軸方向の移動量を規制するように構成されている車両用操舵装置を提供する。
【0010】
また、請求項2のように、各ストッパと対応する当接部との当接面は、円錐状テーパ面を含む場合がある。
また、請求項3のように、各ストッパは環状であり、上記ハウジングの第1および第2の端部のそれぞれに、対応するストッパの外周(47a,48a)が嵌合された環状の嵌合面(53,54)と、対応するストッパを上記軸方向に受ける受け部(55,56)と、が設けられている場合がある。
【0011】
また、請求項4のように、上記第1および第2の嵌合面のそれぞれは、対応する環状ストッパがルーズに嵌合されるルーズフィット部(53a,54a)と、対応するストッパがタイトに嵌合されるタイトフィット部(53b,54b)と、を有し、各タイトフィット部が対応するルーズフィット部よりも、対応するストッパの、対応する嵌合面への嵌合ストロークの奥側に配置されている場合がある。
【0012】
また、請求項5のように、上記第1および第2のストッパは、それぞれ、軸方向に延びる被案内突起(471,481)を有し、上記ハウジングの第1および第2の端部のそれぞれに、対応するストッパの被案内突起が挿入される案内孔(57,58)が設けられ、各ストッパの被案内突起を対応する案内孔に挿入するに伴って、各ストッパの、対応する嵌合面への嵌合が案内されるように構成されている場合がある。
【0013】
また、請求項6のように、上記ハウジングおよび各ストッパは、単一の材料で一体に形成されている場合がある。
また、請求項7の発明は、電動モータ(21,22)の回転動力をボールねじ機構(23)を介して転舵軸(6)の軸方向(X1)の移動に変換する、ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置の製造方法において、転舵軸の軸方向の移動量を規制するための第1および第2のストッパ(47,48;470,480)を、筒状のハウジング(5)の第1および第2の端部(51,52)にそれぞれ設けられた嵌合面のルーズフィット部(53a,54a)にルーズフィットさせる仮嵌合工程と、転舵軸を軸方向に往復動させる動作で、転舵軸のねじ軸の第1および第2の端部に配置された第1および第2の当接部(45,46)によって、対応するストッパを、対応する嵌合面のタイトフィット部(53b,54b)にタイトフィットさせる本嵌合工程と、を含む車両用操舵装置の製造方法を提供する。
【0014】
また、請求項8のように、上記本嵌合工程では、上記電動モータによって、ボールねじ機構を介して転舵軸を軸方向に駆動する場合がある。
また、請求項9のように、上記本嵌合工程では、車両用操舵装置の外部のアクチュエータ(60)によって、転舵軸を軸方向に駆動する場合がある。
また、請求項10のように、上記本嵌合工程において、転舵軸の駆動を停止するタイミングは、転舵軸の軸力を検出する荷重センサ(61)の出力に基づいて決定されるように構成されている場合がある。
【0015】
また、請求項11のように、上記本嵌合工程において、転舵軸の駆動を停止するタイミングは、電動モータのロータの回転角を検出する回転角センサ(42)の出力に基づいて決定されるように構成されている場合がある。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、転舵軸の移動方向に応じて、転舵軸の対応する当接部が、ロータ内を挿通して、対応するストッパに当接することにより、転舵軸の移動量を規制する。ストッパをハウジングとは別部材で構成するので、ストッパをハウジングよりも強度の強い材料で構成することができ、車両用操舵装置としての強度を向上することができる。また、ロータ内に収まる第1および第2の当接部を、転舵軸の中間部のねじ軸の第1および第2の端部に、それぞれ設けたので、軸方向および径方向の小型化を図りつつ、ハウジング内で転舵軸の移動量を規制することができる。また、ストッパがねじ軸に乗り上げることもない。
【0017】
また、請求項2の発明によれば、各ストッパと対応する当接部との当接面が円錐状テーパ面を含むので、各ストッパが対応する当接部と当接して衝突荷重を受けるときの受圧面積を広く確保することができる。その結果、小型でも十分な強度を発揮することができる。
また、請求項3の発明によれば、環状の各ストッパをハウジングの対応する嵌合面にそれぞれ嵌合し、且つ各ストッパをハウジングの対応する受け部によって軸方向に受けているので、組立が容易であり、また、各ストッパの保持も確実である。
【0018】
また、請求項4の発明によれば、各ストッパを対応する嵌合面に嵌合させるときに、まず、各ストッパを対応する嵌合面のルーズフィット部に仮嵌合した後、対応する嵌合面のタイトフィット部に本嵌合することができる。したがって、各ストッパを対応する嵌合面に仮嵌合させた後、転舵軸を軸方向に駆動することにより、各ストッパを対応する当接部によって、軸方向に押圧して、対応する嵌合面に本嵌合させることも可能となる。
【0019】
また、請求項5の発明によれば、各ストッパの被案内突起を対応する案内孔に挿入するに伴って、各ストッパの、対応する嵌合面への嵌合が案内されるので、各ストッパを容易に仮嵌合させることができる。したがって、組立性が格段に向上する。
また、請求項6の発明によれば、各ストッパがハウジングと単一の材料で一体に形成されているので、構造を簡素化することができる。
【0020】
また、請求項7の発明によれば、筒状のハウジングの端部に設けられた嵌合面のルーズフィット部に、ストッパを仮嵌合させた後、転舵軸を軸方向に移動させる動作で、転舵軸の中間部のねじ軸の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の当接部によって、対応するストッパを対応する嵌合面のタイトフィット部に本嵌合させることができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、本嵌合工程において、ハウジングに収容された電動モータによって、ボールねじ機構を介して転舵軸を軸方向に駆動することにより、各ストッパを対応する嵌合面に本嵌合させることができる。
請求項9の発明によれば、本嵌合工程において、車両用操舵装置の外部のアクチュエータによって、転舵軸を軸方向に駆動することにより、各ストッパを対応する嵌合面に本嵌合させることができる。
【0022】
請求項10の発明によれば、本嵌合が終了しているにも拘らず、不必要にアクチュエータが駆動され続けることがない。したがって、各部の破損を防止することができ、また、アクチュエータの過負荷を確実に防止することができる。
請求項11の発明によれば、本嵌合が終了しているにも拘らず、不必要に電動モータが駆動され続けることがない。したがって、各部の破損を防止することができ、また、電動モータの過負荷を確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、本車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と転舵輪3との機械的な結合が解除された、いわゆるステアバイワイヤシステムを構成している。
操舵部材2の回転操作に応じて駆動される、転舵アクチュエータ4の動作を、ハウジング5に支持された転舵軸6の車幅方向の直線運動に変換し、この転舵軸6の直線運動を舵取り用の左右の転舵輪3の転舵運動に変換することにより転舵が達成される。
【0025】
転舵アクチュエータ4の駆動力(出力軸の回転力)は、転舵軸6に関連して設けられた運動変換機構(たとえば、ボールねじ機構)により、転舵軸6の軸方向X1(車幅方向)の直線運動に変換される。この転舵軸6の直線運動は、転舵軸6の両端から突出して設けられたタイロッド7に伝達され、ナックルアーム8の回動を引き起こす。これにより、ナックルアーム8に支持された転舵輪3の転舵が達成される。
【0026】
転舵軸6、タイロッド7およびナックルアーム8などにより、転舵輪3を転舵するための転舵機構100が構成されている。転舵軸6を支持するハウジング5は、図示しないブラケット等を介して車体に固定されている。
操舵部材2は、車体に対して回転可能に支持された回転シャフト9に連結されている。この回転シャフト9には、操舵部材2に操作反力を与えるための反力アクチュエータ10が付設されている。反力アクチュエータ10は、回転シャフト9と一体の出力シャフトを有するブラシレスモータ等の電動モータを含む。
【0027】
回転シャフト9の操作部材2とは反対側の端部には、例えば渦巻きばね等からなる弾性部材11が車体との間に結合されている。この弾性部材11は、反力アクチュエータ10が操舵部材2にトルクを付加していないときに、その弾性力によって、操舵部材2を直進操舵位置に復帰させる。
操舵部材2の操作入力値を検出するために、回転シャフト9に関連して、操舵部材2の操舵角θ
h を検出するための操舵角センサ12が設けられている。また、回転シャフト9には、操舵部材2に加えられた操舵トルクTを検出するためのトルクセンサ13が設けられている。一方、転舵軸6に関連して、転舵輪3の転舵角δ
W (タイヤ角)を検出するための転舵角センサ14が設けられている。
【0028】
これらのセンサの他にも、車速Vを検出する車速センサ15と、車体60の上下加速度G
Z を検出する悪路状態検出センサとしての上下加速度センサ16と、車両の横加速度G
y を検出する横加速度センサ17と、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ18とが設けられている。
上記のセンサ類12〜18の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む構成の電子制御ユニット(ECU)からなる車両制御手段としての制御装置19に入力されるようになっている。
【0029】
制御装置19は、操舵角センサ12によって検出された操舵角θ
h および車速センサ15によって検出された車速Vに基づいて、目標転舵角を設定し、この目標転舵角と転舵角センサ14によって検出された転舵角δ
W との偏差に基づいて、駆動回路20Aを介し、転舵アクチュエータ4を駆動制御(転舵制御)する。
一方、制御装置19は、センサ類12〜18が出力する検出信号に基づいて、操舵部材2の操舵方向と逆方向の適当な反力が発生されるように、駆動回路20Bを介して、反力アクチュエータ10を駆動制御(反力制御)する。
【0030】
図2を参照して、転舵軸6の途中部は、筒状のハウジング5内に挿入されている。ハウジング5の内周5aとハウジング5内に挿入された転舵軸6との間に、転舵用アクチュエータ4を構成する第1および第2の電動モータ21,22と、これら電動モータ21,22の出力回転を転舵軸6の軸方向移動に変換する運動変換機構としてのボールねじ機構23とが配置されている。
【0031】
第1の電動モータ21および第2の電動モータ22は、ハウジング5内に、軸方向X1に並んで配置されている。第1の電動モータ21は、ハウジング5の内周5aに固定された第1のステータ24を備えており、第2の電動モータ22は、ハウジング5の内周5aに固定された第2のステータ25を備えている。第1の電動モータ21および第2の電動モータ22は、転舵軸6の周囲を取り囲む共通の筒状のロータ26を有している。
【0032】
ロータ26は、転舵軸6の周囲を取り囲む筒状のロータコア27と、ロータコア27の外周27aに同伴回転可能に嵌合された第1および第2の永久磁石28,29とを有している。第1の永久磁石28および第2の永久磁石29は、軸方向X1に並んで配置されている。第1の永久磁石28は第1のステータ24に対向し、第2の永久磁石29は第2のステータ25に対向している。
【0033】
ハウジング5は、第1の端部51および第2の端部52を有している。ハウジング5の第1の端部51に支持された第1の軸受30によって、ロータコア27の第1の端部271が、回転可能に支持されている。また、ハウジング5の第2の端部52に支持された第2の軸受31によって、ロータコア27の第2の端部272が、回転可能に支持されている。第1および第2の軸受30,31は、互いに逆向きの接触角を有するアンギュラコンタクト玉軸受からなる。
【0034】
第1の軸受30および第2の軸受31の各外輪は、ハウジング5に対する軸方向移動が規制され、また、第1の軸受30および第2の軸受31の各内輪は、ロータコア27に対する軸方向移動が規制されている。これにより、ハウジング5に対するロータコア27の軸方向移動が規制されている。
ボールねじ機構23は、転舵軸6の軸方向X1の中間部に形成されたねじ軸32と、ねじ軸32の周囲を取り囲み、上記ロータコア27と同伴回転するボールナット33と、列をなす多数のボール34とを備えている。上記ボール34は、ボールナット33の内周に形成された螺旋状のねじ溝35(雌ねじ溝)と、ねじ軸32の外周に形成されたらせん状のねじ溝36(雄ねじ溝)との間に介在している。
【0035】
ボールナット33は、ロータコア27の内周27bに同伴回転可能に嵌合されている。また、ボールナット33は、ロータコア27の内周27bに形成された凹部27cに嵌合されており、これにより、ボールナット33とロータコア27の軸方向相対移動が規制されている。一方、前述したように、ハウジング5に対するロータコア27の軸方向移動が第1および第2の軸受30,31を介して規制されている。したがって、ハウジング5に対するボールナット33の軸方向移動が規制されることになる。
【0036】
ハウジング5は、第1のハウジング37と第2のハウジング38を組み合わせて構成されている。具体的には、第1のハウジング37に設けられた第1の環状フランジ39と第2のハウジング38に設けられた第2の環状フランジ40とが突き合わされている。これら第1および第2の環状フランジ39,40が締結ねじ41を用いて締結されることにより、第1のハウジング37および第2のハウジング38が互いに結合されている。締結ねじ41による締め付けによって、第1および第2のハウジング37,38から、アンギュラコンタクト玉軸受である第1および第2の軸受30,31に対して予圧が与えられている。
【0037】
ハウジング5内には、ロータ26の回転角を検出する、例えばレゾルバ等の回転角センサ42が配置されている。具体的には、回転角センサ42は、ハウジング5の内周5aに固定されたセンサステータ43と、ロータ26の外周(ロータコア27の外周27a)に同伴回転可能に連結されたセンサロータ44とを有している。
転舵軸6の軸方向X1の中間部には、上記のねじ軸32が設けられている。転舵軸6は、ねじ軸32の第1の端部321に隣接して第1の当接部45を有し、ねじ軸32の第2の端部322に隣接して第2の当接部46を有している。第1および第2の当接部45,46は、転舵軸6と単一の材料で一体に形成されている。各当接部45,46の外径は、ねし軸32のねじ部の外径と、概ね等しくされている。
【0038】
第1の当接部45の外周45aとロータ26の内周(ロータコア27の内周27bに相当)との間には、径方向隙間S1が設けられている。また、第2の当接部46の外周46aとロータ26の内周(ロータコア27の内周27bに相当)との間には、径方向隙間S2が設けられている。したがって、転舵軸6の軸方向X1の移動に伴って、各当接部45,46は、ロータコア27内をスムーズに移動することができる。
【0039】
一方、ハウジング5内において、ハウジング5の第1の端部51に設けられた嵌合面53に、第1のストッパ47が取り付けられている。また、ハウジング5内において、ハウジング5の第2の端部52に設けられた嵌合面54に、第2のストッパ48が取り付けられている。第1および第2のストッパ47,48は、ハウジング5を構成する例えば鉄鋳物よりも強度のある材料で形成されている。第1および第2のストッパ47,48は、強度のある炭素鋼、例えばS45Cにより形成されている。
【0040】
拡大図である
図3(a)に示すように、ハウジング5の第1の端部51の嵌合面53は、第1のストッパ47の外周47aがルーズに嵌合されるルーズフィット部53aと、第1のストッパ47の外周47aがタイトに嵌合されるタイトフィット部53bとを有している。タイトフィット部53bはルーズフィット部53aよりも、第1のストッパ47の嵌合ストロークの奥側(図においての左方)に配置されている。また、ハウジング5の第1の端部51は、第1のストッパ47を軸方向X1に受ける受け部55を有している。
【0041】
拡大図である
図3(b)に示すように、ハウジング5の第2の端部52の嵌合面54は、第2のストッパ48の外周48aがルーズに嵌合されるルーズフィット部54aと、第2のストッパ48の外周48aがタイトに嵌合されるタイトフィット部54bとを有している。タイトフィット部54bはルーズフィット部54aよりも、第2のストッパ48の嵌合ストロークの奥側(図においての右方)に配置されている。また、ハウジング5の第2の端部52は、第2のストッパ48を軸方向X1に受ける受け部56を有している。
【0042】
転舵軸6が軸方向X1の左方(
図2における左方)に移動するときには、ロータ26のロータコア27内を挿通した移動方向側の当接部である第1の当接部45の、当接面としての端面45bが、
図3(a)に示すように、第1のストッパ47の、当接面としての端面47bに当接することにより、転舵軸6の軸方向X1の移動量が規制される。当接面としての端面45b,47bは、軸方向X1に対して直交する面である。
【0043】
また、転舵軸6が軸方向X1の右方(
図2における右方)に移動するときには、ロータ26のロータコア27内を挿通した移動方向側の当接部である第2の当接部46の、当接面としての端面46bが、
図3(b)に示すように、第2のストッパ48の、当接面としての端面48bに当接することにより、転舵軸6の軸方向X1の移動量が規制される。当接面としての端面46b,48bは、軸方向X1に対して直交する面である。
【0044】
ハウジング5は、第1および第2のハウジング37,38を組み合わせて構成されている。このため、第1のストッパ47は、筒状の第1のハウジング37の奥部まで挿入して取り付ける必要がある。同様に、第2のストッパ48は、筒状の第2のハウジング38の奥部まで挿入して取り付ける必要がある。このため、奥部での作業は困難であり、組立性が悪くなることが懸念される。
【0045】
そこで、
図4に示すように、各ストッパ47,48を、それぞれ対応する嵌合面53,54に仮嵌合した状態で(具体的には、ルーズフィット部53a,54aのみに嵌合した状態で)、電動モータ21,22によって、転舵軸6をストロークエンドまで、軸方向X1に往復動させることにより、各ストッパ47,48を転舵軸6の対応する当接部45,46によって、対応する嵌合面53,54に本嵌合させる。本嵌合工程の終了のタイミングは、例えば回転角センサ42の出力に基づいて検出した、電動モータ21,22のロータ26の回転の停止のタイミングから、所定時間経過後のタイミングとすることができる。
【0046】
第2のストッパ48の取付構造は、第1のストッパ47の取付構造に対して、左右対称の関係にあるので、第1のストッパ47の取付動作を主として、車両用操舵装置1の製造方法を説明する。
まず、
図5(a)に示す仮嵌合工程では、筒状のハウジング5(第1のハウジング37)の嵌合面53のルーズフィット部53aのみに、第1のストッパ47が嵌合するように、第1のストッパ47を嵌合面53に仮嵌合させる。
【0047】
図示していないが、第2のストッパ48の仮嵌合工程も、第1のストッパ47の仮嵌合工程と同様である。すなわち、筒状のハウジング5(第2のハウジング38)の嵌合面54のルーズフィット部54aのみに、第2のストッパ48が嵌合するように、第2のストッパ48を嵌合面54に仮嵌合させる。
次いで、転舵軸6の両側から第1および第2のハウジング37,38を組み立てて、
図4に示す状態とする。
【0048】
次いで、第1のストッパ47の本嵌合工程では、
図5(b)〜(c)に示すように、電動モータ21,22によってボールナット33を回転駆動して、転舵軸6を軸方向X1に移動させる動作で、ねじ軸32の第1の端部321の第1の当接部45によって、第1のストッパ47を嵌合面53のタイトフィット部53bに本嵌合させる。
第1のストッパ47がハウジング5の受け部55に当接すると、転舵軸6が軸方向X1に移動不能となる。このため、電動モータ21,22のロータ26が回転不能となる。ロータ26が回転不能となったことを、回転角センサ42の出力に基づいて検出し、その検出したタイミングから所定時間経過後のタイミングで、電動モータ21,22の駆動を停止することにより、本嵌合工程を終了する。
【0049】
具体的には、
図6のフローに示すように、転舵アクチュエータ4を構成する電動モータ21,22の駆動を開始する(ステップS1)。次いで、回転角センサ42の信号を入力し、回転角センサ42の検出結果に基づいて、ロータ26が停止しているかか否かを監視する(ステップS2,S3)。ステップS3において、ロータ26の停止が検出されると(ステップS3においてNOの場合)、タイマーのカンウトを開始し(ステップS4)、所定時間の経過を待って、タイマーがカウントアップすると(ステップS5においてYESの場合)、電動モータ21,22の駆動を停止し(ステップS6)、処理を終了することになる。
【0050】
第2のストッパ48の取付動作についても、第1のストッパ47の取付動作と同様である。
本実施の形態の車両用操舵装置1によれば、転舵軸6の移動方向に応じて、転舵軸6の対応する当接部45,46が、ロータ26内を挿通して、対応するストッパ47,48に当接することにより、転舵軸6の移動量を規制する。両ストッパ47,48をハウジング5とは別部材で構成するので、両ストッパ47,48をハウジング5よりも強度の強い材料で構成することができ、車両用操舵装置1としての強度を向上することができる。
【0051】
また、ロータ26内に収まる第1および第2の当接部45,46を、転舵軸6の中間部のねじ軸32の第1および第2の端部321,322に、それぞれ設けたので、軸方向X1および径方向の小型化を図りつつ、ハウジング5内で転舵軸6の移動量を規制することができる。また、各ストッパ47,48がねじ軸32に乗り上げることもない。
また、各当接部45,46が転舵軸6と単一の材料で一体に形成されているので、構造を簡素化することができる。また、当接部を転舵軸と別部材で構成する場合と比較して、軸方向X1および径方向の小型化を図りつつ、十分な強度を持つ当接部45,46を実現することができる。
【0052】
また、環状の各ストッパ47,48を、ハウジング5の対応する嵌合面53,54にそれぞれ嵌合し、且つ各ストッパ47,48を、ハウジング5の対応する受け部55,56によって軸方向X1に受けているので、組み立てが容易であり、また、各ストッパ47,48の保持も確実である。
また、各ストッパ47,48を対応する嵌合面53,54に嵌合させるときに、まず、各ストッパ47,48を対応する嵌合面53,54のルーズフィット部53a,54aに仮嵌合した後、対応する嵌合面53,54のタイトフィット部53b,54bに本嵌合することができる。したがって、各ストッパ47,48を対応する嵌合面53,54に仮嵌合させた後、転舵軸6を軸方向に駆動することにより、各ストッパ47,48を対応する当接部45,46によって、軸方向X1に押圧して、対応する嵌合面53,54に本嵌合させることが可能となる。
【0053】
すなわち、
図4および
図5(a)〜(c)に示した、本実施の形態の車両用操舵装置1の製造方法に示すように、筒状のハウジング5の各端部51,52に設けられた嵌合面53,54のルーズフィット部53a,54aに、対応するストッパ47,48を仮嵌合させた後〔
図5(a)に示す仮嵌合工程〕、転舵軸6を軸方向X1に移動させる動作で、転舵軸6の中間部のねじ軸32の第1および第2の端部321,322にそれぞれ設けられた第1および第2の当接部45,46によって、対応するストッパ47,48を、対応する嵌合面53,54のタイトフィット部53b,54bに本嵌合させることができる〔
図5(b)〜(c)に示す本嵌合工程〕。
【0054】
また、本嵌合工程において、ハウジング5に収容された電動モータ21,22によって、ボールねじ機構23を介して転舵軸6を軸方向X1に駆動することにより、各ストッパ47,48を対応する嵌合面53,54に本嵌合させることができる。
また、本嵌合工程において、各ストッパ47,48が対応する受け部55,56に当接して転舵軸6が軸方向X1に移動不能となるタイミングを、回転角センサ42の出力に基づいて、ロータ26が実際に停止するタイミング(
図6のステップS2,S3を参照)として検出することができるので、その検出したタイミングから所定時間経過後のタイミングで(
図6のステップS4,S5を参照)、電動モータ21,22の駆動を停止して(
図6のステップS6を参照)、本嵌合工程を終了することができる。
【0055】
したがって、本嵌合が終了しているにも拘らず、不必要に電動モータ21,22が駆動され続けることがない。したがって、各当接部45,46や各ストッパ47,48やハウジング5の破損を未然に防止することができ、また、電動モータ21,22の過負荷を確実に防止することができる。
図3(a),(b)の実施の形態では、第1の当接部45の当接面としての端面45bが、第1のストッパ47の当接面としての端面47bに当接することにより、転舵軸6の軸方向X1の移動量を規制していた。当接面としての端面45b,47bは軸方向X1に直交する面であった。また、第2の当接部46の当接面としての端面46bが、第2のストッパ48の当接面としての端面48bに当接することにより、転舵軸6の軸方向X1の移動量を規制していた。当接面としての端面45b,47bは軸方向X1に直交する面であった。
【0056】
これに対して、
図7(a),(b)は本発明の別の実施の形態を示している。本実施の形態では、
図7(a)に示すように、第1の当接部45に設けられた当接面としての円錐状テーパ面45cが、第1のストッパ47の端面47bに設けられた当接面としての円錐状テーパ面47cに当接することにより、転舵軸6の軸方向X1の移動量を規制する。第1のストッパ47の端面47bに対する円錐状テーパ面47cの傾斜角は、45°以下であることが、第1のストッパ47が第1の当接部45を受けるときに、過度な拡径力を受けないようにするうえで好ましい。
【0057】
また、
図7(b)に示すように、第2の当接部46に設けられた当接面としての円錐状テーパ面46cが、第2のストッパ48の端面48bに設けられた当接面としての円錐状テーパ面48cに当接することにより、転舵軸6の軸方向X1の移動量を規制する。第2のストッパ48の端面48bに対する円錐状テーパ面48cの傾斜角は、45°以下であることが、第2のストッパ48が第1の当接部46を受けるときに、過度な拡径力を受けないようにするうえで好ましい。
【0058】
本実施の形態では、各ストッパ47,48と対応する当接部45,46との当接面が円錐状テーパ面47c,45c;48c,46cを含むので、各ストッパ47,48が対応する当接部45,46と当接して衝突荷重を受けるときの受圧面積を広く確保することができる。その結果、小型でも十分な強度を発揮することができる。
また、
図8(a),(b)は、本発明のさらに別の実施の形態を示している。本実施の形態が
図3(a),(b)の実施の形態と異なるのは下記である。すなわち、
図8(a)に示すように、第1のストッパ470の端面47bから軸方向X1に突出する被案内突起471が設けられ、ハウジング5の第1の端部51に、被案内突起471が挿入される案内孔57を設けられている。これにより、第1のストッパ470の被案内突起471を、対応する案内孔57に挿入するに伴って、嵌合面53への第1のストッパ470の嵌合が案内される。
【0059】
また、
図8(b)に示すように、第2のストッパ48の端面48bから軸方向X1に突出する被案内突起481を設けられ、ハウジング5の第2の端部52に、被案内突起481が挿入される案内孔58を設けられている。これにより、第2のストッパ480の被案内突起481を、対応する案内孔58に挿入するに伴って、嵌合面54への第2のストッパ480の嵌合が案内される。
【0060】
また、
図9は本発明の別の実施の形態を示している。本実施の形態が
図4の実施の形態と異なるのは、下記である。すなわち、
図4の実施の形態では、転舵アクチュエータ4を構成する第1および第2の電動モータ21,22によって、転舵軸4を軸方向X1に駆動して、本嵌合工程を実施していた。これに対して、本実施の形態では、転舵アクチュエータ4(電動モータ21,22)を用いずに、車両用操舵装置1の外部に設けられたアクチュエータ60によって、転舵軸6を軸方向X1に駆動して、本嵌合工程を実施する。ただし、アクチュエータ60と転舵軸6との間に、ロードセル等の荷重検出センサ61を介在し、荷重検出センサ61を介して転舵軸6を駆動する。
【0061】
制御装置190は、
図10のフローに示すように、外部のアクチュエータ60の駆動を開始する(ステップT1)。次いで、荷重センサ61の信号を入力するとともに(ステップT2)、回転角センサ42の信号を入力する(ステップT3)。
ステップT4では、回転角センサ42の検出結果に基づいて、ロータ26が停止しているか否かを判定する。ロータ26が停止している場合(ステップT4のYESの場合)には、タイマーのカンウトを開始し(ステップT5)、所定時間の経過を待って、タイマーがカウントアップすると(ステップT6においてYESの場合)、アクチュエータ60の駆動を停止し(ステップT7)、処理を終了する。
【0062】
ステップT8において、検出された荷重が閾値未満である場合(ステップT8でNOの場合)には、ステップST2に戻り、ステップT2〜T4,T8の処理を繰り返す。
一方、ステップT4において、ロータ26が停止していないと判定された場合(ステップT4でYESの場合)には、ステップT8に進み、荷重センサにより検出された荷重(転舵軸の軸力に相当)が閾値以上か否かが判定される。検出された荷重が閾値以上である場合(ステップT8でYESの場合)には、ステップT7に進み、直ちに、外部のアクチュエータ60の駆動を停止し、処理を終了する。
【0063】
本実施の形態では、
図6の実施の形態と同じ効果を奏することができる。さらに、ロータ26が実際に停止していなくても(すなわち、
図10のステップT4でNOの場合でも)、転舵軸6の軸力に基づいて(すなわち、
図10のステップT8での判断結果に基づいて)、転舵軸6の移動を停止(すなわち、
図10のステップT7に示すようにアクチュエータの駆動を停止)できるので、本嵌合が終了しているにも拘らず、不必要に外部のアクチュエータ60が駆動され続けることがない。したがって、各当接部45,46や各ストッパ47,48に過度な荷重が負荷されることがなく、これらの部品やハウジング5の損傷を未然に防止することができる。また、外部のアクチュエータ60の過負荷を確実に防止することができる。
【0064】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上記各実施の形態では、第1のストッパ47;470および第2のストッパ48;480を、ハウジング5のそれぞれ対応する第1および第2ハウジング37,38に取り付けていたが、これに代えて、
図11に示すように、第1および第2のストッパ147,148を、ハウジング5のそれぞれ対応する第1および第2のハウジング37,38と単一の材料で一体に形成してもよい。この場合、構造を簡素化することができる。その他、本発明は、請求項記載の範囲内で、種々の変更を施すことができる。