特許第5658022号(P5658022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダンロップスポーツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000008
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000009
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000010
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000011
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000012
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000013
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000014
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000015
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000016
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000017
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000018
  • 特許5658022-ゴルフボール 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658022
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
   A63B37/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-286929(P2010-286929)
(22)【出願日】2010年12月24日
(65)【公開番号】特開2012-130588(P2012-130588A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】504017809
【氏名又は名称】ダンロップスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓尊
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−134175(JP,A)
【文献】 特開2008−043518(JP,A)
【文献】 特開2008−000389(JP,A)
【文献】 特開2008−043517(JP,A)
【文献】 特開昭61−056668(JP,A)
【文献】 特開平02−152475(JP,A)
【文献】 特開平04−231079(JP,A)
【文献】 特開2004−267278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に、互いに直径が異なる複数種類のディンプルを備えており、全てのディンプルの面積の合計値の、その仮想球の表面積に対する比率が、81.8%以上95%以下であるゴルフボールであって、
全てのディンプルの断面の曲率半径の標準偏差が、0.90mm以下であり、
全てのディンプルの断面の曲率半径の平均値が、上記ゴルフボールの直径の40%を超えて50%以下であるゴルフボール。
【請求項2】
全てのディンプルの容積の合計値が280mm以上350mm以下である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記合計値が290mm以上330mm以下である請求項2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
全てのディンプルの直径の平均値が3.9mm以上4.5mm以下である請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記平均値が4.0mm以上4.4mm以下である請求項4に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、ゴルフボールのディンプルの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。この現象は、「乱流化」と称される。乱流化によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流化によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。優れたディンプルは、よりよく空気の流れを乱す。優れたディンプルは、大きな飛距離を生む。
【0003】
ゴルフボールの仮想球の表面積に対する、ディンプルの合計面積の比率は、占有率と称されている。一般に、占有率が大きいゴルフボールでは、乱流化の程度が大きい。占有率が大きいゴルフボールは、飛行性能に優れる。
【0004】
ディンプルの直径のバラツキが少ないゴルフボールにおいて乱流化の程度が大きいことが、知られている。このゴルフボールは、飛行性能に優れる。
【0005】
占有率が高められるには、複数のディンプルによって囲まれた狭いゾーンに、小径のディンプルが配置される必要がある。小径ディンプルの存在は、ディンプルの直径のバラツキの増大を招く。占有率が高められることと、直径のバラツキが抑制されることとは、相反する事項である。
【0006】
乱流化の程度は、ディンプルの断面形状にも依存する。ディンプルが深すぎるゴルフボールでは、乱流化が不十分である。ディンプルが浅すぎるゴルフボールでも、乱流化が不十分である。
【0007】
ディンプルの断面形状に関する種々の提案がなされている。特開昭62−192181号公報には、大きな直径及び大きな深さを有するディンプルと、小さな直径及び小さな深さを有するディンプルとを備えたゴルフボールが開示されている。
【0008】
特開平2−134175号公報には、あるディンプルの直径を深さで除した値と、他のディンプルの直径を深さで除した値との差が0.3以下であるゴルフボールが開示されている。
【0009】
特開平3−198875号公報には、大きな直径及び小さな深さを有するディンプルと、小さな直径及び大きな深さを有するディンプルとを備えたゴルフボールが開示されている。
【0010】
特開平4−231079号公報には、深さを直径で除した値が全てのディンプルにおいて同一であるゴルフボールが開示されている。
【0011】
特開平5−237202号公報には、エッジアングルが全てのディンプルにおいて同一であるゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭62−192181号公報
【特許文献2】特開平2−134175号公報
【特許文献3】特開平3−198875号公報
【特許文献4】特開平4−231079号公報
【特許文献5】特開平5−237202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゴルフボールに対するゴルファーの最大の関心事は、飛距離である。飛行性能の観点から、ディンプルの形状には改良の余地がある。本発明の目的は、飛行性能に優れたゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るゴルフボールは、その表面に、互いに直径が異なる複数種類のディンプルを備える。全てのディンプルの断面の曲率半径の標準偏差は、0.9mm以下である。全てのディンプルの断面の曲率半径の平均値は、ゴルフボールの直径の40%を超えて50%以下である。
【0015】
好ましくは、全てのディンプルの容積の合計値は、280mm以上350mm以下である。好ましくは、この合計値は、290mm以上330mm以下である。
【0016】
好ましくは、全てのディンプルの直径の平均値は、3.9mm以上4.5mm以下である。好ましくは、この平均値は、4.0mm以上4.4mm以下である。
【0017】
好ましくは、全てのディンプルの面積の合計値の、ゴルフボール仮想球の表面積に対する比率は、75%以上95%以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るゴルフボールでは、曲率半径の標準偏差が0.9mm以下なので、乱流化の程度が大きい。このゴルフボールでは、曲率半径の平均値がゴルフボールの直径の40%を超えて50%以下なので、そのヘッドスピードが40m/s以上45m/s以下であるドライバーで打撃されたときに、乱流化の程度が特に大きい。このゴルフボールが、そのヘッドスピードが40m/s以上45m/s以下であるドライバーで打撃されたとき、大きな飛距離が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された断面図である。
図2図2は、図1のゴルフボールが示された拡大平面図である。
図3図3は、図2のゴルフボールが示された正面図である。
図4図4は、図1のゴルフボールの一部が示された拡大断面図である。
図5図5は、本発明の実施例3に係るゴルフボールが示された平面図である。
図6図6は、図5のゴルフボールが示された正面図である。
図7図7は、比較例5に係るゴルフボールが示された平面図である。
図8図8は、図7のゴルフボールが示された正面図である。
図9図9は、比較例6に係るゴルフボールが示された平面図である。
図10図10は、図9のゴルフボールが示された正面図である。
図11図11は、比較例7に係るゴルフボールが示された平面図である。
図12図12は、図11のゴルフボールが示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、カバー6とを備えている。カバー6の表面には、多数のディンプル8が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル8以外の部分は、ランド10である。このゴルフボール2は、カバー6の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。コア4とカバー6との間に、中間層が設けられてもよい。
【0022】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0023】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0024】
コア4の架橋には、共架橋剤が好適に用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物が、共架橋剤と共に有機過酸化物を含むことが好ましい。好ましい有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0025】
コア4のゴム組成物には、充填剤、硫黄、加硫促進剤、硫黄化合物、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、合成樹脂粉末又は架橋されたゴム粉末が配合されてもよい。
【0026】
コア4の直径は30.0mm以上が好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。コア4の直径は42.0mm以下が好ましく、41.5mm以下が特に好ましい。コア4が2以上の層から構成されてもよい。コア4が、その表面にリブを備えてもよい。コア4が中空であってもよい。
【0027】
カバー6に好適なポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0028】
アイオノマー樹脂に代えて、カバー6に他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンが例示される。スピン性能及び耐擦傷性能の観点から、ポリウレタンが好ましい。2種以上のポリマーが併用されてもよい。
【0029】
カバー6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0030】
カバー6の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。カバー6の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。カバー6の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。カバー6の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。カバー6が2以上の層から構成されてもよい。
【0031】
図2及び3に示されるように、ディンプル8の輪郭は円である。このゴルフボール2は、直径が4.50mmであるディンプルAと、直径が4.40mmであるディンプルBと、直径が4.30mmであるディンプルCと、直径が4.10mmであるディンプルDと、直径が3.60mmであるディンプルEとを備えている。ディンプル8の種類数は、5である。
【0032】
ディンプルAの数は108個であり、ディンプルBの数は78個であり、ディンプルCの数は20個であり、ディンプルDの数は100個であり、ディンプルEの数は18個である。ディンプル8の総数TNは、324個である。
【0033】
図4には、ディンプル8の中心及びゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った断面が示されている。図4における上下方向は、ディンプル8の深さ方向である。図4において二点鎖線12で示されているのは、仮想球の表面である。仮想球12の表面は、ディンプル8が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。ディンプル8は、仮想球12の表面から凹陥している。ランド10は、仮想球12の表面と一致している。本実施形態では、ディンプル8の断面形状は、実質的には円弧である。
【0034】
図4において両矢印Dmで示されているのは、ディンプル8の直径である。この直径Dmは、ディンプル8の両側に共通の接線Tgが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル8のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル8の輪郭を画定する。図4において両矢印Dpで示されているのは、ディンプル8の深さである。この深さDpは、ディンプル8の最深部と接線Tgとの距離である。
【0035】
図4において矢印CRで示されているのは、ディンプル8の曲率半径である。曲率半径CRは、下記数式(1)によって算出される。
CR = (Dp + Dm / 4) / (2 * Dp) (1)
【0036】
本実施形態では、ディンプルAの曲率半径CRは18.1mmであり、ディンプルBの曲率半径CRは18.1mmであり、ディンプルCの曲率半径CRは18.1mmであり、ディンプルDの曲率半径CRは18.1mmであり、ディンプルEの曲率半径CRは18.1mmである。換言すれば、全てのディンプル8において、曲率半径CRは実質的に同一である。ゴルフボール2の加工誤差並びに直径Dm及び深さDpの測定誤差により、個々のディンプル8の曲率半径CRが18.1mmから多少ずれることがある。このような状態が、本発明では、「実質的に同一」と称される。
【0037】
本発明者が得た知見によれば、全てのディンプル8において曲率半径CRが実質的に同一であるゴルフボール2では、乱流化の程度が大きい。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。曲率半径CRが統一される場合でも、各ディンプル種類の直径Dmは任意に決定されうる。従って、ディンプル8が密に配置されうる。統一された曲率半径CRと、密なディンプル8との相乗効果により、優れた飛行性能が達成される。
【0038】
ディンプル種類ごとに、曲率半径CRが異なってもよい。この場合でも、曲率半径CRのバラツキは、なるべく小さいことが好ましい。具体的には、全てのディンプル8の曲率半径CRの標準偏差σは、0.90mm以下が好ましい。標準偏差σが0.90mm以下であるゴルフボール2では、乱流化の程度が大きい。乱流化の観点から、標準偏差σは0.80mm以下が好ましく、0.70mm以下がより好ましく、0.60mm以下が特に好ましい。
【0039】
曲率半径CRのバラツキが小さいゴルフボール2が飛行性能に優れる理由は、詳細には不明である。剥離点の近傍においてバックスピンに起因して生じる現象が規則的であることが、乱流化を促進すると推測される。
【0040】
曲率半径CRの標準偏差σ及び平均曲率半径Avの決定のための第一の方法では、全てのディンプル8の直径Dmと深さDpとが測定される。上記数式(1)に基づき、全てのディンプル8の曲率半径CRが算出される。これらの曲率半径CRに基づき、標準偏差σ及び平均曲率半径Avが算出される。
【0041】
この第一の方法に代えて、便宜的に、第二の方法が用いられてもよい。第二の方法では、まず、下記数式(2)に基づいて、平均曲率半径Avが算出される。
Av = (Ca * 108 + Cb * 78 + Cc * 20 + Cd * 100 + Ce * 18) / 324 (2)
この数式(2)において、CaはディンプルAの曲率半径であり、CbはディンプルBの曲率半径であり、CcはディンプルCの曲率半径であり、CdはディンプルDの曲率半径であり、CeはディンプルEの曲率半径である。Caは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルAの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Cbは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルBの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Ccは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルCの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Cdは無作為にサンプリングされた複数個のディンプルDの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Ceは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルEの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。ディンプル種類ごとの好ましいサンプリング数は、4以上6以下である。
【0042】
この第二の方法では、下記数式(3)に基づいて、標準偏差σが算出される。
σ = (((Ca - Av) * 108 + (Cb - Av) * 78 + (Cc - Av) *20 +
(Cd - Av) * 100 + (Ce - Av) * 18) / (324 - 1))1/2 (3)
【0043】
本発明者の得た知見によれば、ゴルフボール2の直径に対する平均曲率半径Avの比率PCは、乱流化の程度に影響を与える。ゴルフボール2の飛行速度に応じて、適正な比率PCが存在する。飛行速度は、ヘッド速度に依存する。本発明者の得た知見によれば、比率PCが40%を超えて50%以下であるゴルフボール2は、ドライバー(W#1)のヘッド速度が40m/s以上45m/s以下であるプレーヤーに適している。このプレーヤーが、比率PCが40%を超えて50%以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、比率PCが40%を超えて50%以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。飛距離の観点から、この比率PCは42.2%以上が特に好ましい。飛距離の観点から、この比率PCは46.9%以下がより好ましく、46.0%以下が特に好ましい。
【0044】
前述の通り、このゴルフボール2は、互いに直径が異なる5種類のディンプル8を備えている。ディンプル8が密に配置されうるとの観点から、ディンプル8の種類数は2以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が特に好ましい。
【0045】
それぞれのディンプル8の直径Dmは、2.0mm以上6.0mm以下が好ましい。直径Dmが2.0mm以上であるディンプル8は、乱流化に寄与する。この観点から、直径Dmは2.4mm以上がより好ましく、2.8mm以上が特に好ましい。直径Dmが6.0mm以下であるゴルフボール2では、実質的に球であるという本来的特徴が損なわれない。この観点から、直径Dmは5.6mm以下がより好ましく、5.2mm以下が特に好ましい。
【0046】
ドライバーのヘッド速度が40m/s以上45m/s以下であるプレーヤーには、それぞれのディンプル8の直径Dmが3.3mm以上5.0mm以下であるゴルフボール2が適している。このプレーヤーが、直径Dmが3.3mm以上5.0mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、直径Dmが3.3mm以上5.0mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。
【0047】
ディンプル8の平均直径は、3.9mm以上4.5mm以下が好ましい。平均直径がこの範囲内であるゴルフボール2は、ドライバーのヘッド速度が40m/s以上45m/s以下であるプレーヤーに適している。このプレーヤーが、平均直径が3.9mm以上4.5mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、平均直径が3.9mm以上4.5mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。飛距離の観点から、平均直径は4.0mm以上が特に好ましい。飛距離の観点から、平均直径は4.4mm以下が特に好ましい。
【0048】
ディンプル8の面積sは、無限遠からゴルフボール2の中心が見られたときの、輪郭線に囲まれた領域の面積である。円形ディンプル8の場合、面積sは下記数式によって算出される。
s = (Dm / 2) ・ π
図2及び3に示されたゴルフボール2では、ディンプルAの面積は15.90mmであり、ディンプルBの面積は15.21mmであり、ディンプルCの面積は14.52mmであり、ディンプルDの面積は13.20mmであり、ディンプルEの面積は10.18mmである。
【0049】
全てのディンプル8の面積sの合計の、仮想球12の表面積に対する比率は、占有率と称される。乱流化の観点から、占有率は75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、81.8%以上が特に好ましい。占有率は、95%以下が好ましい。図2及び3に示されたゴルフボール2では、ディンプル8の合計面積は4697.2mmである。このゴルフボール2の仮想球12の表面積は5741.5mmなので、占有率は81.8%である。
【0050】
本発明において「ディンプルの容積」とは、ディンプル8の輪郭を含む平面とディンプル8の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル8の総容積は250mm以上が好ましく、280mm以上がより好ましく、290mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、総容積は380mm以下が好ましく、350mm以下がより好ましく、330mm以下が特に好ましい。
【0051】
ドライバーのヘッド速度が40m/s以上45m/s以下であるプレーヤーには、総容積が290mm以上330mm以下であるゴルフボール2が適している。このプレーヤーが、総容積が290mm以上330mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、総容積が290mm以上330mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。
【0052】
乱流化に寄与しうるとの観点から、深さDpは0.05mm以上が好ましく、0.06mm以上がより好ましく、0.07mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、深さDpは0.24mm以下が好ましく、0.21mm以下がより好ましく、0.19mm以下が特に好ましい。
【0053】
ドライバーのヘッド速度が40m/s以上45m/s以下であるプレーヤーには、ディンプル8の総数TNが240個以上450個以下であるゴルフボール2が適している。このプレーヤーが、総数TNが240個以上450個以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、総数TNが240個以上450個以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。総数TNは、270個以上が特に好ましい。総数は、400個以下がより好ましく、350個以下が特に好ましい。
【0054】
好ましいディンプル8の断面形状は、内向きに凸な円弧である。但し、エッジEdの近傍において、外向きに凸な曲面をディンプル8が有してもよい。ディンプル8の表面積の90%以上のゾーンにおいて、断面形状が内向きに凸な円弧であることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0056】
[実施例1]
100質量部のポリブタジエン(ジェイエスアール社の商品名「BR−730」)、30質量部のアクリル酸亜鉛、6質量部の酸化亜鉛、10質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.5質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃で18分間加熱して、直径が39.75mmであるコアを得た。50質量部のアイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1605」)、50質量部の他のアイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1706」)及び3質量部の二酸化チタンを混練し、樹脂組成物を得た。上記コアを、内周面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に投入し、コアの周囲に上記樹脂組成物を射出成形法により注入して、厚みが1.5mmであるカバーを成形した。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが形成された。このカバーに、二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.75mmであり質量が約45.4gである実施例1のゴルフボールを得た。このゴルフボールのPGAコンプレッションは、約85である。このゴルフボールは、図2及び3に示されたディンプルパターンを有する。ディンプルの仕様の詳細が、下記の表1に示されている。
【0057】
[実施例2から6及び比較例1から7]
ファイナル金型を変更した他は実施例1と同様にして、実施例2から6及び比較例1から7のゴルフボールを得た。ディンプルの仕様の詳細が、下記の表1から3に示されている。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
[飛距離テスト]
ツルテンパー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「XXIO」、シャフト硬度:S、ロフト角:10.0°)を装着した。ヘッド速度が45m/secである条件でゴルフボールを打撃して、発射地点から静止地点までの距離を測定した。テスト時は、ほぼ無風であった。12回の測定で得られたデータの平均値が、下記の表4から6に示されている。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
表4から6に示されるように、各実施例のゴルフボールは飛行性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
前述のディンプルは、ツーピースゴルフボールのみならず、ワンピースゴルフボール、マルチピースゴルフボール及び糸巻きゴルフボールにも適用されうる。
【符号の説明】
【0067】
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・カバー
8、A、B、C、D、E・・・ディンプル
12・・・仮想球
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12