【文献】
Chemical & Pharmaceutical Bulletin,2005年,53(2),pp. 199-206
【文献】
Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry,1997年,9,pp. 1391-1393
【文献】
Bulletin of the Chemical Society of Japan,1995年,68(6),pp. 1655-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフェノール性水酸基化合物は、下記一般式(I)
【0023】
【化5】
[式中Xは、下記構造式
(x1)
【0024】
【化6】
{式(x1
)中、
R1はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜3の整
数である。
lが2以上の場合、複数の
R1は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、kは1〜3の
整数であり、Arは下記構造式(Ar1)
【0025】
【化7】
(式中、R
3は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、R
3は2つの芳香核のうちどちらに結合していてもよく、sは0〜6の整数である。sが2以上の場合、複数のR
3は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、rは1又は2である。)
で表される構造部位である。
kが2以上の場合、複数のArは同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。}
で表される構造部位である。]
で表される分子構造を有することを特徴とする。
【0026】
前記一般式(I)で表される本発明のフェノール性水酸基含有化合物は、メチレン鎖を介さずに芳香核同士が結合した構造を有することから、分子量が低く、かつ、芳香環及び水酸基濃度が高い特徴を有する。このような化合物は硬化物の耐熱性に優れる反面、易燃性の水酸基濃度が高くなり、多数の反応性基が近接して存在するため難燃性に劣る傾向がある。これに対し本発明のフェノール性水酸基含有化合物は、ビフェニル骨格或いはターフェニル骨格を有すること、前記構造式(x1
)中、芳香核のパラ位に位置する2つの水酸基が反応性に優れることから、硬化物における耐熱性と難燃性との両方に優れる特徴を有する。
【0027】
前記一般式(I)で表される化合物は、例えば、
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)と、ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)とを、無触媒又は酸触媒条件下、40〜180℃の温度範囲で反応させる方法により製造されるものが挙げられる。このような方法により本発明のフェノール性水酸基含有化合物を製造する場合、反応条件により任意の成分を選択的に製造したり、複数種のフェノール性水酸基含有化合物の混合物であるフェノール樹脂として製造したりすることが出来る。また、混合物であるフェノール樹脂から任意の成分のみを単離して用いても良い。
【0028】
前記
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)は、例えば、下記構造式(Q1
)
【0029】
【化8】
[式(Q1
)中、
R1はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜3の整
数である。
lnが2以上の場合、複数の
R1は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。]
で表される化合物が挙げられ、具体的には、パラベンゾキノン、2−メチルベンゾキノン、2,3,5−トリメチル−ベンゾキノ
ン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0030】
前記分子構造中にナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)は、例えば、下記構造式(P1)
【0031】
【化9】
[式(P1)中、R
3は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、sは0〜6の整数である。sが2以上の場合、複数のR
3は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、rはそれぞれ1又は2である。]
で表される化合物が挙げられ、具体的には、1−ナフトール、2−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0032】
中でも、硬化物における耐熱性と難燃性とに優れることから、前記構造式(P1)中のrが2であるジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物が好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンがより好ましく、2,7−ジヒドロキシナフタレンが特に好ましい。
【0033】
前記
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)とナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)との反応は、反応性が高いことから無触媒条件下でも進行するが、適宜酸触媒を用いて行っても良い。ここで用いる酸触媒は例えば、塩酸、硫酸、リン酸、などの無機酸や、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。これら酸触媒を用いる場合は、前記
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)と前記ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)との合計質量に対し、5.0質量%以下の量で用いることが好ましい。
【0034】
また、該反応は無溶剤条件下で行うことが好ましいが、必要に応じ有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる有機溶媒は例えば、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これら有機溶剤を用いる場合は、反応効率が向上することから、
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)とナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)との合計100質量部に対し、有機溶剤が50〜200質量部の範囲となる割合で用いることが好ましい
【0035】
前記
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)と前記ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)との反応終了後は、減圧乾燥するなどして目的のフェノール性水酸基含有化合物或いはフェノール樹脂を得ることが出来る。
【0036】
本発明のフェノール性水酸基含有化合物は、前記一般式(I)で表される構造を有するものであればいずれも、硬化物における耐熱性及び難燃性に優れるという本願発明の効果を奏するものである。以下、前記一般式(I)で表される構造を有するフェノール性水酸基含有化合物のより好ましいものについて詳述する。
【0037】
前記一般式(I)で表されるフェノール性水酸基含有化合物の代表的なものとして、下記構造式(I−1)
又は(I−
2)
【0038】
【化10】
[式(I−1)
又は(I−
2)中、kは1〜3の整
数であり、Arは下記構造式(Ar1)
【0039】
【化11】
(式中、R
3は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、R
3は2つの芳香核のうちどちらに結合していてもよく、sは0〜6の整数である。sが2以上の場合、複数のR
3は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、rは1又は2である。)
で表される構造部位である。
kが2以上の場合、複数のArは同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。]
の何れかで表されるフェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。
【0040】
前記構造式(I−1)で表されるフェノール性水酸基含有化合物は、更に具体的には、下記構造式(1)又は(2)
【0041】
【化12】
[式(1)又は(2)中kは1〜3の整数である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0042】
前記構造式(1)で表されるフェノール性水酸基含有化合物は、例えば、前記
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)としてナフトールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとナフトールとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性及び難燃性に一層優れるフェノール樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1モルに対し、ナフトールが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0043】
前記構造式(1)で表されるフェノール性水酸基含有化合物の中でも、硬化物における耐熱性及び難燃性に特に優れることから、前記構造式(1)においてkの値が1である2核体化合物(x1)と、前記構造式(1)においてkの値が2である3核体化合物(x2)とを含有するフェノール樹脂として用いることが好ましく、フェノール樹脂中の前記2核体化合物(x1)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜70%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(x2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜50%の範囲であることがより好ましい。
【0044】
なお、本発明において、フェノール樹脂中の前記2核体化合物(x1)、前記3核体化合物(x2)及びその他の成分の含有率とは、下記の条件によるGPC測定データから算出される、フェノール樹脂の全ピーク面積に対する前記各成分のピーク面積の割合である。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0045】
前記構造式(1)で表される化合物は、例えば、下記構造式(1−1)〜(1−10)
【0046】
【化13】
の何れかで表される化合物などが挙げられる。
【0047】
前記構造式(2)で表されるフェノール性水酸基含有化合物は、前記一般式(I)で表されるフェノール性水酸基含有化合物の中でも、特に硬化物における耐熱性及び難燃性に特に優れる特徴を有する。
【0048】
中でも、硬化物における耐熱性及び難燃性に一層優れることから、前記構造式(2)においてkの値が1である2核体化合物(x1)と、前記構造式(2)においてkの値が2である3核体化合物(x2)とを含有するフェノール樹脂として用いることが好ましく、フェノール樹脂中の前記2核体化合物(x1)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜70%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(x2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜50%の範囲であることがより好ましい。
【0049】
前記構造式(2)の何れかで表されるフェノール性水酸基含有化合物は、例えば、前記
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)としてジヒドロキシナフタレンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとジヒドロキシナフタレンとの反応割合は、硬化物における耐熱性及び難燃性に一層優れるフェノール樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1モルに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0050】
ここで用いるジヒドロキシナフタレンは、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等何れの位置異性体のものでも良い。中でも、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性及び難燃性にも優れるフェノール樹脂が得られることから、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0051】
前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、下記構造式(2−1)〜(2−24)
【0054】
【化16】
の何れかで表される化合物などが挙げられる。
【0055】
前記構造式(I−2)で表されるフェノール性水酸基含有化合物は、更に具体的には、下記構造式(3)
【0056】
【化17】
[式(3)中rは1又は2である。]
で表されるフェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。
【0057】
前記構造式(3)で表されるフェノール性水酸基含有化合物は、例えば、前記
ベンゾキノン構造を有する化合物(Q)として2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンを、前記ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)としてナフトール又はジヒドロキシナフタレンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、前記ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)との反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性及び難燃性に一層優れるフェノール樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1モルに対し、前記ナフトール又はジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物(P)0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0058】
前記構造式(3)で表される化合物は、例えば、下記構造式(3−1)〜(3−12)
【0059】
【化18】
の何れかで表される化合物等が挙げられる。
【0060】
以上例示した本発明のフェノール性水酸基含有化合物のうち、溶融粘度と硬化物の耐熱性及び難燃性とのバランスに優れる点では前記構造式(2
)で表されるフェノール性水酸基含有化合物が好ま
しい。
【0061】
前記本発明のフェノール性水酸基含有化合物を含むフェノール樹脂は、硬化性に優れることからその水酸基当量が60〜150g/当量の範囲であることが好ましい。また、軟化点が80〜150℃の範囲であることが好ましい。
【0062】
本発明の硬化性組成物は、以上詳述したフェノール性水酸基含有化合物又はこれを含むフェノール樹脂と、硬化剤とを必須成分とするものである。該硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0063】
ここで用いるエポキシ樹脂は、具体的には、1,6−ジグリシジルオキシナフタレン、2,7−ジグリシジルオキシナフタレン、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテル、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、フェノール系化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂;前記本発明の変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0064】
硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合、フェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂とエポキシ樹脂との配合割合は、フェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂中のフェノール性水酸基と、エポキシ樹脂中のエポキシ基との当量比(フェノール性水酸基/エポキシ基)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが、反応性及び硬化物における耐熱性に優れることから好ましい。
【0065】
また、硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合、本発明のフェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂に併せて、その他のエポキシ樹脂用硬化剤を併用しても良い。その他のエポキシ樹脂用硬化剤は、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの各種の公知の硬化剤が挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF
3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0066】
前記その他のエポキシ樹脂用硬化剤を用いる場合、本発明のフェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂と、その他のエポキシ樹脂用硬化剤との配合割合は、硬化物における耐熱性及び難燃性に優れる本願フェノール性水酸基含有化合物の特徴が活かされる範囲であれば特に制限されるものではなく、例えば、両者の合計質量100質量部中、本発明のフェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂が5〜95質量部の範囲であることが好ましい。
【0067】
また、その他のエポキシ樹脂用硬化剤を用いる場合、前記エポキシ樹脂との配合割合は、本発明のフェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂と、その他のエポキシ樹脂用硬化剤とが含有する活性水素原子の合計と、エポキシ樹脂が含有するエポキシ基との当量比(活性水素原子/エポキシ基)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが、反応性及び硬化物における耐熱性に優れることから好ましい。
【0068】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0069】
以上詳述した本発明の硬化性組成物は、用途や所望の性能に応じて、更に、その他の添加剤成分を含有していても良い。具体的には、難燃性をさらに向上させる目的で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0070】
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても、複数種を併用しても良い。
【0071】
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系の何れも使用でき、無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0072】
前記赤リンは加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法は、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0073】
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0074】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、フェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂、硬化剤、及びその他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0075】
それらの配合量は、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0076】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0077】
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0078】
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0079】
前記シアヌル酸化合物は、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0080】
前記窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0081】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0082】
前記シリコーン系難燃剤は、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0083】
前記シリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0084】
前記無機系難燃剤は、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0085】
前記金属水酸化物は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0086】
前記金属酸化物は、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0087】
前記金属炭酸塩化合物は、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0088】
前記金属粉は、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0089】
前記ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0090】
前記低融点ガラスは、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO
2−MgO−H
2O、PbO−B
2O
3系、ZnO−P
2O
5−MgO系、P
2O
5−B
2O
3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V
2O
5−TeO
2系、Al
2O
3−H
2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0091】
前記無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物100質量部中、0.5〜50質量部の範囲で配合することが好ましく、特に5〜30質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0092】
前記有機金属塩系難燃剤、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0093】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい
【0094】
この他、本発明の硬化性組成物は必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0095】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。本発明で用いるフェノール性水酸基含有化合物及びフェノール樹脂は溶融粘度が低い特徴を有することから、無機質充填剤の配合量を高めることが可能であり、このような硬化性組成物は特に半導体封止材料用途に好適に用いることが出来る。
【0096】
前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0097】
この他、本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0098】
本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用ワニスに調整する場合には、有機溶剤を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0099】
本発明の硬化性組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。フェノール性水酸基含有化合物又は樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0100】
本発明のフェノール性水酸基含有化合物及びフェノール樹脂は硬化物における耐熱性及び難燃性に優れることから、各種電子材料用途に用いることが出来る。中でも、特に半導体封止材料用途として好適に用いることが出来る。
【0101】
該半導体封止材料は、例えば、本発明のフェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂を含むフェノール成分、硬化剤、及び充填材等の配合物を、押出機、ニーダー、ロール等を用いて均一になるまで十分に混合する方法により調整することが出来る。ここで用いる充填材は前記した無機充填材が挙げられ、前述の通り、硬化性組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で用いることが好ましい。中でも、難燃性や耐湿性、耐半田クラック性が向上し、線膨張係数を低減できることから、70〜95質量部の範囲で用いることが好ましく、80〜95質量部の範囲で用いることが特に好ましい。
【0102】
得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50〜200℃の温度条件下で2〜10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【0103】
また、本発明のフェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂を用いてプリント回路基板を製造するには、本発明のフェノール性水酸基含有化合物又はフェノール樹脂、硬化剤、有機溶剤、その他添加剤等を含むワニス状の硬化性組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
【実施例】
【0104】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、軟化点及びGPC、NMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0105】
軟化点測定法:JIS K7234に準拠。
【0106】
GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0107】
13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45°パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
【0108】
MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」
【0109】
実施例1 フェノール樹脂(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン240質量部(1.5モル)、パラベンゾキノン162質量部(1.5モル)、イソプロピルアルコール268質量部、シュウ酸8質量部を仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達した後、2時間攪拌して反応させた。反応終了後、180℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール中間体(5)359質量部を得た。得られたフェノール中間体のGPCチャートを
図1に、
13CNMRスペクトルを
図2、およびMSスペクトルを
図3に示す。フェノール中間体(5)の水酸基当量は68g/当量であり、軟化点は126℃であった。MSスペクトルから下記構造式(a−1)で表される2核体化合物(x1)に相当する268のピーク、下記構造式(b−1)で表される3核体化合物(x2)に相当する426のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール樹脂中の2核体化合物(x1)相当成分の含有量は43.6%、3核体化合物(x2)相当成分の含有量は30.7%であった。
【0110】
【化19】
【0111】
実施例2及び比較例1
先で得たフェノール樹脂(1
)及び比較対象用フェノール樹脂(1’)[トリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製「MEH−7500」水酸基当量98g/当量)]について下記の要領で耐熱性及び難燃性の評価試験を行った。
【0112】
<耐熱性の評価>
1)評価サンプルの作成
前記フェノール樹脂(1)
又は(1’
)と、硬化剤としてナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EXA−4750」エポキシ基当量188g/当量)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(以下「TPP」と略記する。)を用い、下記表2に示す組成で配合して硬化性組成物を得た。これを11cm×9cm×2.4mmの型枠に流し込み、プレスで150℃の温度で10分間成型した後、型枠から成型物を取り出し、次いで、175℃の温度で5時間後硬化させて評価サンプルを得た。
【0113】
2)ガラス転移温度の測定
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用い、前記評価サンプルについて弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度を測定し、これをガラス転移温度として評価した。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
<難燃性の評価>
1)評価サンプルの作成
前記
フェノール樹脂(1)
又は(1’
)と、硬化剤としてナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EXA−4750」エポキシ基当量188g/当量)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(以下「TPP」と略記する。)、無機充填材として球状シリカ(電気化学株式会社製「FB−5604」)、シランカップリング剤としてカップリング剤(信越化学株式会社製「KBM−403」)、カルナウバワックス(株式会社セラリカ野田製「PEARL WAX No.1−P」)、カーボンブラックを、下記表3に示す組成で配合し、2本ロールを用いて85℃の温度で5分間溶融混練して硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物を用い、トランスファー成形機にて幅12.7mm、長さ127mm、厚み1.6mm大のサンプルを175℃の温度で90秒成形した後、175℃の温度で5時間後硬化して評価用サンプルを得た。
【0116】
2)難燃性の評価
先で得た厚さ1.6mmの評価用サンプル5本を用い、UL−94試験法に準拠して燃焼試験を行った。結果を表2に示す。
難燃試験クラス
*1:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
*2:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
【0117】
【表2】